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ものづくりに係る能力開発施策

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ものづくりに係る能力開発施策
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
第2節
1
ものづくりに係る能力開発施策
ものづくり労働者の育成のための取組
を対象とした訓練を実施しているところである。在職者を
対象とした訓練としては、
「難削材・新素材の最新切削加
工技術」
、
「鉛フリーはんだ付け作業の実際」
、
「油圧システ
(1)公共職業訓練
ムにおけるトラブルの原因究明と改善」
、
「効率的な生産の
要な技能及びこれに関する知識を習得することができるよ
ための実践的現場運営と改善」等のコース例がある(図
うに、職業能力開発促進法に基づいて、国(独立行政法人
321-1)
。
雇用・能力開発機構)又は都道府県が設置する公共職業能
また、離職者訓練は、雇用のセーフティネットとして機
力開発施設等において実施されている。
能しており、国民生活の安心・安全のために公共職業訓練
自動車、電機、機械等ものづくり分野では、職業訓練を
として実施すべき最も重要な政策の1つである。昨今の急
実施する民間教育訓練機関がほとんど存在せず、公共職業
速な景気後退による離職者の急増に対しても、迅速かつ柔
訓練に特に期待される分野として挙げられる。最近のもの
軟に対応しているところである。
づくり分野の現場においては、製品の品質の高度化、納期
これらの職業訓練は、独立行政法人雇用・能力開発機構
の短縮、価格競争に応じ、高精度の機械が導入され、中核
が設置するポリテクカレッジやポリテクセンターを中心に
人材は、新技術への対応に加え、設備や品質の不具合、ト
実施されてきたところであるが、同機構について、2008
ラブル発生、効率的な生産ラインの構築等に対応できる能
年 12 月の閣議決定により、法人の廃止や、同機構が実施
力が重視されている。そのため、国が実施する公共職業訓
している職業能力開発業務の独立行政法人高齢・障害者雇
練においては、高精度な機械を装備したうえ、ものづくり
用支援機構への移管等が決定されたところである。また、
産業において将来の中核人材となる高度な技能を有する労
都道府県等が移管を希望した場合、①ポリテクセンターに
働者の養成を目的とした訓練を実施するとともに、新たな
ついては可能な限り、②ポリテクカレッジについてはブ
技術への対応、生産工程の改善・改良等、高度かつ幅広い
ロックごとに水準を維持して運営・実施できることを前提
分野にわたる知識、技能についてコースを設定し、在職者
に移管することとされた。
第 節
公共職業訓練は、労働者が段階的かつ体系的に職業に必
2
新たな技術に対応した訓練コース
(例)「難削材・新素材の最新切削加工技術」
国際競争激化による技術
革新、工業製品の高性能化
に伴う素材の多様化
質的に多様化している難削材(ステン
レス鋼、チタン合金等)や新素材
(形状記憶合金等)の加工、新製品等
の生産に即応可能な技術の習得
(例)「鉛フリーはんだ付け作業の実際」
鉛はんだを含む機器等の廃業
は土壌汚染の原因となるため
国際的に輸出規制
鉛はんだから、鉛フリーはんだへの
技術革新に対応し、鉛フリーはんだ
付けのシステム構築に即応可能な技術
の習得
「難削材・新素材の最新切削加工技術」
〔訓練時間〕18 時間
〔訓練内容〕難削材等の特性理解、適した
切削工具の選択法、切削加工技術、
トラブル対策 等
「鉛フリーはんだ付け作業の実際」
〔訓練時間〕12 時間
〔訓練内容〕はんだ付けの科学的知識、
鉛フリーはんだの課題、温度変化測定、
不良発生の原因と対策 等
生産工程の改善・改良に関する訓練コース
(例)「油圧システムにおけるトラブル原因究明と改善」
油圧装置のトラブルが原因と
なった工作機器の作動停止
が生産性の低下に直結
日常的に生じるトラブルに係る原因究明
と改善策の習得
(例)「効率的な生産のための実践的現場運営と改善」
多品種少量、短納期に対応
できる効率的な生産体制を
素早く構築する必要
工程改善を原価低減に結びつけ、
他品種、短納期、低コストに対応できる
生産性の高いラインづくりのための
生産技術の習得
「油圧システムにおけるトラブルの原因究明
と改善」
〔訓練時間〕30 時間
〔訓練内容〕構成機器の分解組立・特殊
実習、実用回路作成実習、
トラブルシュー
ティング実習 等
「効率的な生産のための実践的現場運営と
改善」
〔訓練時間〕12 時間
〔訓練内容〕ライン構築実習(効率性の評
価等)、工作機械を用いた現場改善実習
等
資料:厚生労働省
149
ものづくりに係る能力開発施策
図 321-1 技術革新への対応や生産工程改善に係る在職者訓練の例
コ ラ ム 「ものづくり」を行う地域の総合相談窓口
職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)は、全国に 10 校設置されており、高校卒業者等を対象に、2∼4年
間の高度な技能・知識を習得するための職業訓練を行い、将来、生産部門のリーダーとなる我が国の産業基盤を支
える人材を養成しているが、若年技能者の養成以外にも、そのノウハウを活かし、ものづくりに関する技能・技術
や教育訓練全般に関する相談、在職労働者に対する職業訓練や共同研究などにより、中小企業を中心とした地域の
ものづくり企業への支援を行っている。
●事例
北陸職業能力開発大学校では、2008 年度から、地域のものづくりと人材育成の総合相談窓口として『地域支援
センター』を設置し、地域のものづくり企業等を支援する体制整備を図った。地域支援センターでは、企業からの
相談・支援等の依頼を一元的に受けるとともに、大学・高校など教育機関との連携や研究発表会等イベントの開催
を通した企業・団体等との交流を行うなど、地域におけるものづくりネットワークを構築し精力的に活動を行って
いる。
アルミ建材加工・組立メーカー㈱三和製作所(高岡市)は、組立作業の管理機能が不十分なため、組立工からの
合図を現場管理者が把握し難く、作業者に手待時間が発生したり、あるいは持ち場を離れるといった現場ルールの
乱れが発生するという生産効率に悩んでいた。この相談に対し、北陸職業能力開発大学校の機械、電子、情報分野
の指導員を相談企業に派遣し、それぞれの指導員の専門的な立場からの検討を行った。この結果、作業状況を一元
管理できる情報端末を作業台に設置することにより、問題解決の道を探ることとなった。さらに電子技術・情報技
術を駆使して生産情報を収集し、これを解析することで、リードタイムの短縮、製造計画の高精度化を図ることも
見込まれている。また、このような現場改善を行う
【情報端末】
と現場管理者が生産管理システムに精通する必要性
を生じることから、システムに関連する分野の教育
訓練計画の策定・実施に関する相談も受けている。
このように職業能力開発大学校で受ける相談・支
援の依頼内容は、製品の開発から生産システムの改
善など「ものづくり」現場の様々な課題解決から現
場の労働者の人材育成にいたるまで企業の要望に対
応している。
コ ラ ム
ポリテクセンターによる人材育成支援
アルケア株式会社(東京都墨田区)は、資本金 9,000 万円、従業員数 500 名(2008 年 7 月 1 日現在)の創業
54 年目を迎える医療・福祉関連製品メーカーである。主な業務内容は、メディカルケア、ホームヘルスケア、スポー
ツケア用品の開発・製造 ・ 販売・輸出入であり、国内初の石膏ギプス及び医療器具のストーマなど約 200 件の特許・
実用新案を取得している。
同社の製造工程を受け持つ工場は、千葉鉄工団地内に設置され、約 230 名が勤務しており、創造型・発信型の
生産体制を目指し、
社員のスキルアップのための「モノづくり創造道場」の開設や各種フォーラムの実施、
ミーティ
ングや勉強会などに使用する多目的ラウンジの設置など、創意工夫による新しいものづくり技術への挑戦に取り
組んでいる。
同社千葉工場には生産設備保全に関する専門的部門がなく(生産設備担当者が毎月保全を実施)
、近年の生産設
備の高度化が進む中、体系的な設備保全技能・技術の向上を図るための人材育成の必要性が問題提起され、改善
の経営判断がなされた。
千葉職業能力開発促進センター(ポリテクセンター千葉)に相談したところ、当該センターにおいて同社が求
める人材育成の分野を在職者訓練として実施していたことから、当該訓練に社員を受講させた。
現在では、在職者訓練を受講した社員の保全技術が向上し、従来の事後保全から、予防保全への展開、生産停
止による機会損失の削減などにより、設備総合効率が 75 ∼ 80%台となり、結果として生産性の向上が図られて
きている。
150
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
また、保全以外の分野でも生産管理や職場改善、設備改造
などに関する支援を受けており、作業改善が図られると同時
に社員の知識・技能・技術の向上がなされ、職業能力開発に
関する自己啓発に強い関心を持つ社員も多くなっている。
第 節
2
積極的に取り組む中小企業やその団体に対し、経済面、
「キャリア」とは、一般に「経歴」
、
「経験」
、
「発展」
、
技術面等多岐にわたる支援を行うことが重要な課題と
さらには「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的
なっている。
持続性ないしは継続性を持った概念である。
「キャリア」
具体的には、まず、中小企業の活力活性化を図り、技
を積んだ結果として、職業能力が蓄積されていく。
能の継承を可能にするため、一定の要件を満たす職業能
力開発の取組を実施する中小企業の事業主及びその団体
①事業主が行うキャリア形成の取組に対する支援の充実
に対し、キャリア形成促進助成金等による支援を行って
中核人材等を育成していくために必要な実践的な職業
いる。特に、年間職業能力開発計画に基づき、その雇用
能力開発を進める上で、企業が果たすべき役割は極めて
する労働者に職業訓練を受けさせる中小企業事業主等に
重大で、広範囲にわたるものである。とりわけ、大企業
支給される訓練等支援給付金は、計画的な人材の育成に
に比べ経営基盤が脆弱な場合が多い中小企業にあって
資するものである。
は、教育訓練投資が困難な場合もあり、職業能力開発に
コ ラ ム
人材投資促進税制について
人材投資促進税制は、人材育成に積極的に取り組む企業について、教育訓練費の一定割合を法人税額等から控
除する制度である。
同制度によって、中小企業における人材育成の取組が後押しされ、我が国の人材の質の向上、経済基盤の強化
の促進が期待される。
〈税額控除割合のイメージ〉
︵税額控除割合︶
<人材投資促進税制の概要>
中小企業者について、教育訓練費割合が 0.15%以上の場合に、教育訓練
費の額に、次に示す教育訓練費割合に応じた税額控除割合(8%∼ 12%)
を乗じた金額の税額控除ができる。
①教育訓練費割合が 0.25%以上の場合
税額控除額=教育訓練費× 12%
②教育訓練費割合が 0.15%以上 0.25%未満の場合
税額控除額=教育訓練費×{8%+(教育訓練費割合− 0.15%)× 40}
③教育訓練費割合が 0.15%未満の場合
税額控除することはできない。
<適用期間>
2008 年4月1日から 2011 年3月 31 までの間に開始する各事業年度
12%
8%
②
①
③
0.15%
0.25%
(教育訓練費割合)
151
ものづくりに係る能力開発施策
(2)キャリア形成を支援する仕組みの整備
コ ラ ム
キャリア形成促進助成金
事業主が、 その雇用する労働者等について、 職業訓練等の実施、 自発的な職業能力開発の支援又は職業能力評
価の実施を行った場合に支給する助成金。
1 助成金の種類
(1)訓練等支援給付金
①事業主が、
事業内職業能力開発計画に基づき作成した年間職業能力開発計画(以下「計画」という。
)等に基づき、
その雇用する労働者等に職業訓練等を受けさせた場合、
イ 中小企業事業主がその雇用する労働者に職業訓練を受けさせた場合、訓練に要した費用の一部を助成。
ロ 短時間等労働者に職業訓練を受けさせた場合、訓練に要した費用の一部を助成。
ハ 新たに雇い入れた労働者に認定実践型人材養成システムによる訓練を受けさせた場合、訓練に要した費
用の一部等を助成。
二 職業能力形成促進者※1に有期実習型訓練を受けさせた場合、訓練に要した費用の一部
②計画に基づき、労働協約または就業規則に定めるところによって、その雇用する労働者の申出により、職業
訓練等、職業能力検定若しくはキャリア・コンサルティングを受けるために必要な経費を負担する又は休暇
を与える場合、要した費用の一部等を助成。
(2)職業能力評価推進給付金
事業主が計画に基づき、その雇用する労働者に一定の資格試験等を受けさせた場合、受検に要した費用の一部
を助成。
(3)地域雇用開発能力開発助成金
地域雇用開発促進法の規定に該当する一定の地域内に所在する事業所の事業主が、計画に基づき、その雇用す
る労働者に職業訓練等を受けさせた場合、訓練に要した費用の一部を助成。
(4)中小企業雇用創出等能力開発助成金
中小企業労働力確保法に基づく改善計画の認定を受けた事業主が、計画に基づき、その雇用する労働者に職業
訓練等を受けさせ又は労働者の自発的な職業訓練等の受講に対する支援を行った場合、訓練又は労働者の自発的
な職業訓練等の受講に対する支援に要した費用の一部を助成。
2 キャリア形成促進助成金支給実績
2003 年度 6,139 百万円、37 万人
2004 年度 6,440 百万円、40 万人
2005 年度 6,054 百万円、38 万人
2006 年度 5,951 百万円、38 万人
2007 年度 4,303 百万円、26 万人
※1 安定的な雇用に就くために有期実習型訓練に参加することが必要であると認められた職業能力形成機会
に恵まれなかった者であって、新たに雇い入れられた労働者、短時間等労働者又は派遣労働者をいう。
また、
「高度熟練技能者」を始めとして一級技能士等継
用を図ることで、中核人材を始めとする技能者の育成に苦
承すべき優れた熟練技能や指導能力を有する人材を登録
慮する中小企業における円滑な人材育成や技能継承に役立
し、中小企業等の技能継承支援や若年技能者の実技指導・
つことが期待できる(図 321-2)
。さらに、中小企業等に
育成支援を行ってもらう熟練技能人材登録・活用事業を実
対し、技能継承や現場力強化の取組についての情報提供や
施している。2009 年3月現在、14 業種 31 職種について
相談援助を実施する「技能継承等支援センター」を各都道
5,194 名が高度熟練技能者として認定されている。今後、
府県職業能力開発協会内に設置している。
団塊の世代を積極的に認定し、ネットワーク化等により活
152
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
図 321-2 熟練技能人材登録・活用事業
都道府県職業能力開発協会
中央職業能力開発協会
熟練技能人材
高度熟練技能者を認定
高度熟練技能者をはじめ全技連マイスター
など団塊世代を積極的に登録・活用
企画・立案・連絡調整
専 門 家 派 遣
企 業
業界団体
2
∼ものづくり人材育成アドバイ
ザー∼
ものづくりに係る能力開発施策
①技能指導:技術・技能のスキルアップ
②技能継承支援:高度な熟練技能を実践
③後継者等育成支援:若年技能者を養成
資料:厚生労働省
第 節
∼豊富な実務経験(概ね 20 年以
上)を有した技能者∼
職業訓練校等
資料:厚生労働省
コ ラ ム
高度熟練技能者の認定・活用
現役のみならず現役を退く熟練技能者の中から、豊富な実務経験を有し、自他共に認める高度な熟練技能を有
する者(機械では代替できない高度な技能を駆使して、高精度・高品質の製品・試作品等を作り出すことができ
る技能者、または、機械が作り出す製品と同等以上の高精度・高品質の製品の製造や整備ができる技能者)を「高
度熟練技能者」として認定している。
【高度熟練技能者認定証(見本)
】
【高度熟練技能者章(バッジ・見本)と認定者】
「高度熟練技能者」として認定された方々は、工業高校、公共
職業訓練校、中小企業等からの要請により、2、3級技能検定
合格レベルの実技講習等を行うなど後継技能者の確保・育成や
熟練技能の維持・継承に大きく貢献している。
【
企業からの要請により、高度熟練技能者から国家技能
検定「フライス盤作業」の実技指導を受けている様子
】
153
②「ジョブ・カード制度」の創設
場の中核人材を育成するための訓練
フリーター、子育て終了後の女性、母子家庭の母等の職
日本版デュアルシステム:フリーターや子育て終了
業能力形機会に恵まれない方が、その能力を向上させ、安
後の女性等に対して、標準で4か月間、民間教育訓練
定した雇用へと移行できるようにするため、2008 年 4 月
機関等に委託して行う訓練
に「ジョブ・カード制度」が創設された(図 321-3)
。こ
があり、ものづくり分野においても、職業能力開発機会
の制度は、フリーター等に対して、きめ細かなキャリア・
を提供し、安定雇用への移行を促進することにより、中小
コンサルティングを通じた意識啓発や課題の明確化を行っ
企業等におけるものづくり労働者の育成・確保を図ってい
た上で、企業実習と座学を組み合わせた実践的な職業訓練
る。
の機会を提供し、
企業からの評価結果や職務経歴等を「ジョ
また、昨今の急速な景気後退により正社員でない労働
ブ・カード」として取りまとめることにより、就職活動等
者が一層厳しい状況に置かれつつあることを踏まえれば、
に活用するものである。
ジョブ・カード制度の職業訓練を通じた正社員化の取組強
化は喫緊の課題となっている。そのため、
企業が主体となっ
本制度における職業訓練には、
有期実習型訓練:フリーター等の正社員経験が少な
て行う雇用型訓練(有期実習型訓練と実践型人材養成シス
い方に対して、3か月超から6か月までの間で、企業
テム)に取り組む訓練実施企業への助成措置の拡充や、民
が雇用して行う実践的な訓練
間教育訓練機関等を活用した委託型訓練(日本版デュアル
実践型人材養成システム:主として新規学卒者に対
システム)の受講者に対する訓練期間中の生活保障給付制
して、6か月から2年までの間で、企業が雇用して現
度の創設・拡充などの制度改正を行ったところである。
図 321-3 ジョブ・カード制度
ハローワーク・
ジョブカフェ等
職業能力形成プログラム
有期実習型訓練
【利用者の例】
ジョブ・カードの
作成
(1)
職務経歴、学習歴、
取得資格等を記載
実践型人材養成システム
日本版デュアルシステム
母子家庭の
母 等
●実習+座学を委託形態
(企業、教育訓
練機関)
で実施
●訓練の標準期間は4ヶ月
●対象は、
フリーター、子育て終了後の女
性、母子家庭の母等の就職困難者
キャリア・コンサルタン
トによる就業希望・訓
練希望等の確認
情報提供
による紹介
支援
新卒者
官民共同の
構想委員会
コ ラ ム
職業選択や職業キャ
リアの方向付け
職業能力
証明書
交 付
実践型教育プログラム
ジョブ・カードの
作成
(1)
大学・専門学校等
●大学・専門学校等において職業能力形成に資するプログラム提供
●プログラム履修者に
「履修証明」
を発行
支援
職業能力、
キャリア形
成上の課題、希望等
を再整理
履修
証明書
就職活動に活用
訓練を要せず就職
職業能力
証明書
他の企業で雇用
●企業実習+教育訓練機関での座学で
実施
[厚生労働大臣認定]
●訓練期間は6ヶ月超2年以下
●40歳未満の者を対象として想定
職業能力、
キャリア形
成上の課題、希望等
を整理
ジョブ・カードの
作成
(2)
キャリア・コンサルティング
企業評価
︵評価シートの記入︶
子育て終了後の
女性
キャリア・コンサルティング
フリーター
●企業実習+教育訓練機関での座学で
実施
[雇用・能力開発機構認定]
●訓練期間は3ヶ月超6ヶ月以内
(資格取得等の場合は1年以内)
●対象は、
フリーター、子育て終了後の女
性、母子家庭の母等の就職困難者
訓練実施企業で正式採用
ハローワーク・
ジョブカフェ等
職業能力形成機会に
恵まれない者
推進協議会
国
産業界
労働界
教育界
等
企業における雇用型訓練(ジョブ・カード制度)の取組
日本金型工業会では、金型製造事業者は、①中小企業が大半であること、②技術・技能教育は徒弟制度的な現
場教育が中心となっていること、③技術・技能継承に時間がかかり、技術が属人的になりがちであること、その他、
④我が国には、長期にわたり金型教育を体系的に学ぶことが少ないことなどを背景に、厚生労働省からの委託事
業を活用しつつ、職業能力開発総合大学校東京校(以下「総合大東京校」という。
)とタイアップして 2007 年度
から実践型人材養成システムの導入に向けた取組を開始した。
これらの取組としては、2007 年度に訓練計画を作成し、2008 年に同工業会加盟企業においてこれらの訓練計
画に基づいて実践型人材養成システムを実施するというものである。2007 年度に策定された訓練計画の内容とし
ては、1年コースと2年コースの2つがあり、そのうち、1年コースについては、次のとおりである。
① 訓練期間 2008 年4月∼ 2009 年3月までの1年間
② 訓練時間 1,404 時間(Off-JT(総合大東京校)
:792 時間、OJT:612 時間)
③ 座学等及び実習等で習得する技能
154
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
第 節
金型等の製作に必要な機械設計(CAD / CAM、CAE 等)
、
機械加工(汎用工作機械、
NC 工作機械等)
、
制御技術(シー
ケンス制御、油空圧等)に必要な技能及びこれに関する知識を習得 A 社(神奈川県)は、日本金型工業会の加盟企業であり、プラスチック・マグネシウム合金精密金型の設計・製
造を行う中小企業である。
A 社では、日本金型工業会と総合大学校東京校で作成した訓練計画(1年コース)に基づき、2008 年4月から、
訓練生1名を対象に実践型人材養成システムを開始した。この訓練システムの成果として、総合大東京校で座学
や実技を実施するため、これらの実施に関する負担軽減が図られるほか、OJT 実施前に座学等を終えているため、
OJT での訓練生の理解力や応用力が格段と高まっていること、OJT は各部門のチームリーダーが実施しているが、
事前に指導内容を整理して指導するため、指導者の技能も向上したことなどを挙げている。また、訓練生に対し
ても同社の将来的な中核人材としての活躍への期待が大きい。
2
ものづくりに係る能力開発施策
③キャリア・コンサルティング推進体制の整備
キャリア・コンサルティングとは、
「個人が、その適性
図 321-4 キャリア・コンサルティングの流れ
キャリア・コンサルティングの流れ
や職業経験等に応じて自ら職業生活設計を行い、これに即
①自己理解 ②仕事理解 ③啓発的経験
した職業選択や職業訓練等の職業能力開発を効果的に行う
ことができるよう個別の希望に応じて実施される相談その
・興味・適性・能力等の明確化
他の支援」とされている。
・職業経験の棚卸し
・労働市場、企業等に関する情報提供
社会の高齢化・長寿化に伴い、労働者の職業生涯が長期
・職務に求められる能力、キャリアルート等の理解
化する一方、企業経営の多様な展開や、急激な技術革新等
により必要な職務・職業能力が変化し、労働者の離転職の
今後の職業生活設計、目標の明確化等に
可能性が増大しており、生涯の中で何回か転職を経験する
係る④意思決定
ことも珍しくない時代になりつつある。こうした状況に応
・キャリアプランの作成
じて自ら職業能力開発していくことがますます重要になっ
・中長期的目標及び短期的目標の設定
ている。
・能力開発・教育訓練等に関する情報提供
そのため、労働者の職業生涯を通じた持続的な職業キャ
職業選択・求職活動、能力開発等の⑤方策の実行
リア形成を支援するため、キャリア・コンサルティングの
方策の実行(活動)状況を把握しつつ、
重要性が指摘され、教育訓練、能力評価、職業情報と並び
必要に応じてサポート
労働市場の4つのインフラストラクチャー(社会基盤)の
新たな仕事への⑥適応
1つとして位置づけられているところである。
具体的には、企業、需給調整機関、教育機関等を活動の
異動、昇進、就職、転職、…
場とし、職業選択や職業に係るキャリア、職業能力開発等
の課題・問題の解決等に向けて、次のような一連のプロセ
スを通じて必要な相談・支援を行うものである(図 3214)
。
職業経験や教育訓練の受講等を積み重ねて
いくことによる、段階的な職業能力の形成
=
キャリア形成
資料:厚生労働省
155
(ア)自らの職業経験の棚卸し(振り返ること)や適性検
査等を通じた自己理解の促進
(イ)労働市場や企業(雇用管理、キャリア支援等を含む)
に関する情報提供等を通じた仕事理解の促進
(ウ)職業体験等を通じた仕事に対する動機づけを行った
このような役割を担う専門的なキャリア・コンサルタン
ト制度の整備は重要な課題となってきている。そのため、
各養成機関等で養成が進められている「標準レベル」の能
力よりも上の「熟練レベル」等の能力を統一的に公証する
こととし、2008 年に後述する技能検定の対象職種とした
上で、職業生活や職業能力に関する目標設定を行い、
ところである。
職業選択や職業能力開発のための主体的な行動に結び
キャリア・コンサルタント制度は歴史が浅いが、専門職
つけていくこと
制度としての確立と企業等におけるキャリア・コンサル
企業においてはコンサルティング結果を活かすためのキャ
ティングの普及を早急に図っていくことが望まれる。ジョ
リア支援制度の提案を、教育機関においてはキャリア教育
ブ・カード制度の推進に際してもキャリア・コンサルタン
プログラムを作成するための提案を行うことも期待されてお
トの充実の必要性が指摘されているところである。
り、カウンセリング理論等のほか、人的資源管理や企業組織
に係る知識や経験に裏打ちされた能力も求められる。
コ ラ ム
製造業におけるキャリア・コンサルティングの取組
A 社(東京都)は、明治初年に創業した印刷会社である。
現在、同社では、自立的なキャリア開発の支援を専門的な立場から提供し、活力ある人材の育成と組織作りを
図るため、人事部の提案により、グループ企業にキャリア相談室を設置し、グループ全社員を対象に、対面での
カウンセリングによるキャリア相談を実施している。
キャリア相談の実施体制は、キャリア・コンサルタント資格を保有する社員を配置している。相談業務に当たっ
て内部の社員が対応しているメリットとしては、社内の制度を十分熟知しており、会社固有の風土や状況を理解
した上で対応できるということを挙げることができる。相談内容に応じて、
個人的な困り事全般に対応している
「相
談室」
、年金・社会保険などの質問に対応している「ライフプラン相談室」
、メンタルヘルス相談室等、他の相談
窓口の利用をアドバイスすることもある。
キャリア相談室では、日常の相談業務の他、希望者対象の集合研修であるキャリアデザイン実践講座を開催し、
また、研修部主催の e ラーニングでのキャリアデザイン入門講座の教材開発等を行っている。さらには、キャリ
ア相談室を認知してもらうための啓発活動も展開している。
本社人事部に対しては、毎月、キャリア相談の件数、利用者の属性(男女比、役職区分)
、相談内容(キャリア
デザイン、メンタルヘルス、ワーク・ライフ・バランス、人間関係等)の数量的データと傾向を報告している。
製造職は営業・事務・技術・研究職などに比較して、職場環境の改善や人間関係などについての相談が多いため、
本人の同意を得た上で、管轄総務部門と連携しながら問題解決に対応している。
156
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
(3)技能検定その他技能の能力評価のための取組
進に貢献している。
労働市場の特殊性について述べられる時、①労働力の売
ること、②通常、取引が長期化すること、と並んで挙げら
職業能力評価基準は、業界団体との連携の下、能力評価
れるのが、③労働力の買い手からみて、その質を見極める
の「ものさし」や「共通言語」となり、職業能力が適正に
ことが難しいことである。
評価されるための社会基盤として機能するよう、仕事をこ
これらの条件が重なると様々な問題が生じ、不利な立場
なすために必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要と
に立たされる労働者も出てくる。そのため、様々な労働政
される能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能
策が採られているところである。ここで、3つの条件のう
力水準までレベルごとに整理体系化したものである。
ち最初の2つは人為的に操作することは難しいが、最後の
製造業関係では、電気機械器具製造業、自動車製造業、
労働力の質を見極めることは、能力評価システムを充実さ
金属プレス加工業等で職業能力評価基準が策定されてい
せることにより、
かなりの程度実現が可能になる。したがっ
る。
て、能力評価システムの充実は、多岐に渡る労働問題の多
くに影響する極めて根源的かつ重要な課題である。
特に、昨今は、急速な景気後退のほか、産業構造の変化
2
ものづくり立国に向けた基盤整備
や労働者の就業意識の変化に伴い労働移動又はその必要性
我が国のものづくり立国としての基盤を確かなものとし
が増大する中で、労働市場における職業能力のミスマッチ
ていくためには、中核人材を始めとして広くものづくりに
を解消し、マッチング機能の強化を図るため、労働者の職
携わる技能者の処遇面を含めた社会的評価の向上を図ると
業能力が適切に評価されることが重要である。また、職業
ともに、若者も進んでそれを目指すような環境を整備する
能力評価制度の整備は、労働者の社会的な評価向上にも重
ことが重要である。
要な役割を果たすほか、技能・知識習得意欲を増進させる
そのためには、子供から大人までの国民各層が技能、も
という効果も期待される。
のづくりの素晴らしさや社会経済におけるその重要性を
さらに、昨今は、正社員とそれ以外の労働者の間で、同
広く認識する社会を形成することが求められる。こうした
じ仕事をしているのに給料が違うなどといういわゆる格差
観点から、技能五輪全国大会を始めとする各種イベント等
問題が論じられることがあるが、職業能力評価制度が整備
により国民各層で技能尊重気運を醸成し、ものづくり立国
されるとこのような問題にも取り組みやすくなるのではな
への意識を高める取組がますます求められているといえよ
いかと考えられる。
う。
ものづくり人材に係る我が国の代表的な能力評価システ
ムには次のようなものがあるが、ほかにも民間資格等様々
(1)現代の名工等技能尊重のための取組
な職業能力評価制度が存在する。それに加えて、新規成長
卓越した技能者(現代の名工)を表彰することにより、
分野等必要な分野において職業能力評価制度が整備・活用
広く社会一般に技能尊重の気風を浸透させ、もって技能者
されているか、個々の制度を連携させて全体として有機的
の地位及び技能水準の向上を図るとともに、青少年がその
に機能するような体系が構築できないかなど、検討を進め
適性に応じ、誇りと希望を持って技能労働者となり、その
ていく必要があると考えられる。
職業に精進する気運を高めることを目的とした表彰制度で
あり、1967 年度に第1回の表彰が行われて以来、2008
①技能検定
年度で本制度施行 42 年目を迎え、2008 年 11 月 11 日、
技能検定は、労働者の有する技能を一定の基準によって
表彰授与式が執り行われた。
検定し、これを公証する国家検定制度であり、職業能力
被表彰者は、都道府県知事、全国的な規模の事業を行う
開発促進法に基づいて実施されている。技能検定職種は、
事業主団体その他の推薦者から推薦(一般推薦)があり、
136 職種から成っている。特級、1∼3級等の等級に区分
次のすべての要件を満たす人のうちから、厚生労働大臣が
して行っているほか、等級に区分せず単一等級で行ってい
る職種もある。2009 年で制度開始以来 50 年を迎える。
技能者表彰審査委員の意見を聴いて決定している。
(ア)きわめてすぐれた技能を有する人
(イ)現に表彰に係る技能を要する職業に従事している人
②社内検定認定
社内検定認定は、事業主、事業主団体その他の連合団体
が労働者の職業能力を検定する制度のうち技能振興上奨励
(ウ)技能を通じて労働者の福祉の増進及び産業の発展に
寄与した人
(エ)他の技能者の模範と認められる人
すべきものを厚生労働省が認定する制度である。技能検定
表彰は、厚生労働大臣が毎年1回、概ね 150 名の被表
ではカバーし切れない職域に従事する人々の能力評価の促
彰者に表彰状、卓越技能章(楯及び徽章)及び褒賞金(10
2
ものづくりに係る能力開発施策
③職業能力評価基準
第 節
り手は、取引に失敗すると失業者となり生活の危機に瀕す
157
万円)を授与して行われている。
4,838 名が表彰された(1995 年度までは毎年度概ね 100
第1回の表彰が行われて以来、第 42 回の表彰までで
名を表彰し、
1996 年度からは概ね 150 名を表彰している)
。
コ ラ ム
2008 年度「現代の名工」の技
福川 賀皓(ふくかわ よしつぐ)
氏(62 歳)
大径管を内側から押し広げ真円にする拡管機の改善に努め、工場の生産性、品質を世界最高レベルに向上
【造管工 住友金属工業(株)鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)
】
大径溶接鋼管の製造設備改善に努めて精励し、幾多の考案、改善の実行により、生産性、品質を世界最高レベ
ルとすることに大きく貢献した。また後進の育成にも力を注いでいる。特に拡管機については、鋼管の曲がりを
コントロールできる装置を考案・実機化し、科学技術長官賞を受賞している。
拡管機を含め特許 21 件、実用新案 11 件を提案し、工場の各設備の改善に貢献した。
【作業風景写真】
【拡管機】
國村 次郎(くにむら じろう)
氏(63 歳)
新幹線0系から 700 系までの先頭車両(オデコ部)をハンマーで打ち出す板金工
【板金工 (株)山下工業所(山口県下松市)
】
新幹線をはじめとする鉄道先頭車両のオデコ部のハンマー打ち出しによる板金技能に卓越し、新幹線0系から
700 系まで 300 両を越える車両の製作に携わり、鉄道車両製作技術の発展に大きく貢献した。また、絞り用クラ
フトフォーマーを改良し、ハンマー打ち出し作業の機械化をも考案し、作業効率の向上及び鉄道車両生産効率の
増進に寄与するとともに、後進技能者の指導・育成により、技能の伝承にも努めている。
【作業風景写真】
158
【新幹線の先頭車両のオデコ部】
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
くり体験を実施したり、高度熟練技能者により若年者に対
(2)
「ものづくり立国」の推進
①企業の工場・訓練校の開放等によるものづくり体験
して派遣指導を実施したりするなど、若年者に対し、技能
若年ものづくり人材の育成を推進するため、企業の工場・
やものづくりの素晴らしさ、重要性の理解の促進を図って
訓練校、公共職業能力開発施設、学校の開放によりものづ
いる。
コ ラ ム
ものづくり技能への魅力づくり−ものづくり体験の場の提供−
第 節
若年者のものづくり技能への理解の促進を図るためには、小中高校生のみならず父兄を含めた地域社会の理解
が不可欠であり、これら親子等が一緒になってものづくり技能を体験することがより効果的である。
このため、企業の工場・訓練校、公共職業能力開発施設等が地域に開放され、ものづくり体験の場が広く提供
されるよう、各都道府県職業能力開発団体、企業、業界団体、官公庁等の連携のもと、開放に向けた取組が行わ
れている。
【
コ ラ ム
ものづくりに係る能力開発施策
自動車部品製造会社の工場開放による工業高校
生の「ものづくり体験」
。熟練技能者の指導を
受け、精密部品の手仕上げ作業に挑戦 !!
2
産業支援センターの開放による
「夏休み子供ものづくり教室」で
「恐竜工作」に挑戦 !!
】
【
】
2007 年ユニバーサル技能五輪国際大会の成果等の普及啓発事業
2007 年に開催された 2007 年ユニバーサル技能五輪国際大会(第 39 回技能五輪国際大会)により高まった技
能尊重気運の更なる醸成と中学生、高校生等の若年層に向けて「ものづくり」
「技能」への関心を高めることを目
的とし、技能五輪メダリストが母校やものづくり関連イベントで技能実演、トークショーを全国 47 都道府県で実
施した。併せて、第 39 回技能五輪国際大会に出場した選手の活躍を紹介する冊子及び DVD「若メダリスト達の
挑戦∼技能五輪がひらく未来∼」を作成し、中学校、工業高校等に配布した。
【メダリスト母校(中学校)での実演風景】
【自動車工の実演風景】
159
【冊子表紙及び紙面】
コ ラ ム
現場に強い実践的な技能・技術者の育成
ものつくり大学(埼玉県行田市)は、現場で役立つ実践的な理論と技能・技術
を兼ね備えた高度技能技術者を育て、ものづくり現場で中核となる人材の輩出を
目指し、生産現場で即戦力として活躍できるテクノロジストを育成している。
国をはじめ、県や市及び産業界と連携し、充実した教育・実習設備を備えると
ともに、現場経験の豊富な教員を登用し、実習・実験に力を入れた実践的な教育
を行っている。特に、インターンシップを正課として位置づけ、企業での実際の
生産現場におけるものづくり体験を実働 40 日以上実施することとしている。
ものつくり大学の実践的教育は、多方面で成果を上げており、そのひとつとし
て、技能検定や若年者ものづくり競技大会での在学生及び卒業生の活躍がある
(写真)
。また、技能検定については、大学の施設を会場として設備や機器の提供
を行うとともに、大学の教員がその検定委員として数多く活躍している。また、
実践的教育に共感し、定年退職後に技能・技術の修得のために入学する学生や、
企業に在職している若い技術者が科目等履修生として、専門的な技術・技能を学
ぶために一定期間入学するなどの実績がある。その他、委託事業として、求職者
への職業訓練も行っている。
若年者ものづくり競技大会において
厚生労働大臣賞(金メダル)を受賞
した学生
【
②「ものづくり立国」の社会基盤の整備 】
(3)各種技能競技大会の開催等技能の振興
「ものづくり立国」の社会経済基盤を維持、発展させて
①技能五輪全国大会
いくため、優れた技能を持った方々やものづくり体験教室
「ものづくり立国」に向け、子供から大人まで国民各層
等魅力ある技能についてインターネットで情報提供するな
で技能尊重気運を醸成し、ものづくり及びそれを支えるも
ど広く国民に紹介することにより、国民各層がものづくり
のづくり人材育成の重要性が再認識されることが重要である。
技能の重要性を認識し、そのことによって社会における技
そのため、国内の青年技能者の技能レベルを競うことに
能尊重気運が醸成するよう図っている。
より、青年技能者に努力目標を与えることを目的として、
技能五輪全国大会が 1963 年から毎年開催されている。
第 46 回大会は、2008 年 10 ∼ 11 月に千葉県千葉市を
中心に開催され、39 職種に 953 名の選手が参加し、技能
を競い合った。
大会の成績優秀者は、一部の職種を除き 2009 年9月に
160
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
カナダのカルガリーで開催される「第 40 回技能五輪国際
して静岡県静岡市及び沼津市で史上初の同時開催となり、
大会」の日本代表選手として選考された。前回の技能五輪
金メダル獲得数で世界第 1 位、総メダル数で第2位に輝く
国際大会は、障害のある人が技能を競う国際アビリンピッ
など、素晴らしい成果を挙げたが、引き続き日本選手団の
クとともに「2007 年ユニバーサル技能五輪国際大会」と
活躍が期待される。
コ ラ ム
輝く技能−技能五輪全国大会−
第 節
国内の青年技能者の技能レベルを競うことにより青年技能者に努力目標を与えるとともに、技能を身近に触れ
る機会を提供するなど、広く国民一般に対して技能の重要性、必要性をアピールし、技能尊重気運の醸成を図る
ことを目的として 1963 年から毎年 10 ∼ 11 月に開催している。また、同大会は技能五輪国際大会(隔年開催)
に派遣する選手の予選大会も兼ねている(地方における一層の技能振興を図るため、1998 年の第 36 回の群馬大
会以降は、可能な限り都道府県との共催で開催している)
。
2008 年度は 2008 年 10 月 31 日から 11 月 3 日にかけて千葉県の幕張メッセを中心とする 11 会場において、
39 の競技職種に 953 名もの選手の参加を得て盛大に開催された。大会期間中は、中・高校生を始めとする多くの
来場者を迎え、技能に身近に触れてもらうことで、技能の大切さ、素晴らしさを強くアピールすることができた。
2009 年度においては、10 月に茨城県で開催する予定となっている。
【競技風景(抜き型職種)
】
【閉会式(電工職種の表彰)
】
【閉会式(自動車板金職種の表彰)
】
ものづくりに係る能力開発施策
【競技風景(構造物鉄工職種)
】
2
161
②全国障害者技能競技大会
に関わらず誰もが社会に参加し支え合う「ユニバーサル社
第 30 回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)は、
会」の実現の基盤形成に大きく寄与しているものである。
2008 年 10 月に千葉県千葉市で開催された。障害の有無
コ ラ ム
障害を乗り越えて−全国障害者技能競技大会−
全国障害者技能競技大会(アビリンピック)は、障害者が技能労働者として社会に参加する自信と誇りを持つ
ことができるよう、その職業能力の向上を図るとともに、広く障害者に対する社会の理解と認識を深め、その雇
用の促進と地位の向上を図ることを目的として開催されている。
2008 年度は、10 月 24 日から 26 日までの3日間にわたり、千葉市幕張メッセにおいて第 30 回全国障害者技
能競技大会(アビリンピック)
「2008 なの花アビリンピック in ちば」が開催された。
大会には、技能競技 20 種目に全国から 243 名の選手が参加し、日頃培った技能を競い合うとともに、先駆的
又は雇用拡大が期待される清掃、事務・販売等、ITの3職種による技能デモンストレーションが新たに実施さ
れた。
会場では、第 30 回アビリンピックの開催に併せて、障害者の雇用に関わる展示、実演、体験など複合的なイベ
ントである「障害者ワークフェア 2008」が同時開催され、今大会が 30 回を数える節目の大会であることから、
第 30 回記念シンポジウム、国際アビリンピックメダリストにチャレンジ、アビリンピック・ワークフェアサテラ
イト展示等の記念事業や多彩なイベントを実施し、大会期間中は、約 39,000 人(サテライト展示来場者を含む)
を超える方々が来場し、盛大な大会となった。
【課題に取り組む選手達】
③技能グランプリ
された。大会には、554 名の選手が参加して、旋盤、表具、
技能グランプリは、優れた技能を有する 1 級技能士等が
日本料理、レストランサービス等 31 職種について競技が
参加する技能競技大会であり、隔年で開催されている。第
行われた。2001 年度の島根県開催以来、2回目となる地
25 回大会は、2009 年 3 月に兵庫県神戸市を中心に開催
方開催であった。
コ ラ ム 「技能」の祭典−技能グランプリ−
特に優れた技能を有する1級技能士等が参加する技能競技大会であり、技能士の技能の一層の向上を図るとと
もに、その熟練した技能を広く国民に披露することにより、その地位の向上と技能の振興を図ることを目的とし
て隔年で開催している。
直近では、第 21 回島根大会以来の史上2回目の地方開催である第 25 回大会が、2009 年 3 月に兵庫県の神戸
国際展示場他6会場で開催され、31 職種、過去最多の 554 名が参加して開催された。
162
● ものづくり中核人材の育成による製造基盤の強化
【競技風景(機械組立て職種)
】
【閉会式(表彰風景)
】
第 節
2
年者ものづくり競技大会を実施している。第3回大会は、
公共職業能力開発施設、認定職業訓練施設、工業高等
2008 年8月に神奈川県相模原市及び東京都小平市で開催
学校において技能を習得中の 20 歳以下の者を対象に若
された。
コ ラ ム
意識を高める−若年者ものづくり競技大会−
若年者のものづくり技能に対する意識を高め、若年者を一人前の技能労働者に育成していくためには、技能習
得の目標を付与するとともに、技能を競う場が必要である。
このため、職業能力開発施設、認定職業訓練施設、工業高等学校等において技能を習得中の 20 歳以下の者を対
象に「若年者ものづくり競技大会」を開催し、これら若年者に目標を付与し、技能を向上させることにより若年
者の就業促進を図り、併せて若年技能者の裾野の拡大を図っている。
直近では、第 3 回大会が 2008 年 8 月 6 日から 8 日にかけて、職業能力開発総合大学校(神奈川県相模原市)
及び職業能力開発総合大学校東京校(東京都小平市)の2会場において、14 職種に 208 名が参加して開催された。
【競技風景(メカトロニクス職種)
】
【競技風景(木材加工職種)
】
163
ものづくりに係る能力開発施策
④若年者ものづくり競技大会
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