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レーザ微細孔明機 - JSW日本製鋼所
製品・技術紹介 レ ーザ 微 細 孔 明 機 表 1 装置仕様 1. はじめに レーザによる孔明加工機は、フレキシブル基板やインク レーザ ジェットノズル等の工程に使われ広く普及している。加工孔 の大きさはレーザ波長が短いほど小さくすることが可能で、 前者には CO2 レーザ(波長 10.6μm)、後者にはエキシマ 光学系 レーザ(波長 248nm)が使われ、各々の加工孔の大きさ は、20μm 以上、4 ~ 20μm である。今後、加工孔の大 きさは、フレキシブル基板の性能向上、半導体工程での 採用,化粧品や医薬品をはじめするバイオ分野への適用等 により、益々微細化が進むことが予想される。このように、 微細孔を形成する加工機は今後需要が見込まれるため、当 社では数μm 以下の微細孔加工が可能な、レーザ微細孔 ステージ リーラ 項目 波長 周波数 パルス幅 ビームサイズ 最大エネルギー密度 マスクサイズ 投影レンズ倍率 投影レンズ NA 位置精度 ストローク 最大速度 最大テープ幅 荷重コントロール 仕様 248nm(KrF) 250Hz 25ns 4mm □ 800mJ/cm2 6inch 1/5 0.12 ± 2μm 550mm 350mm/s 70mm 空気圧 加工機 ELD-A-D4-550(写真1)を開発し、客先に納入し た。本稿ではこの装置の概要について説明する。 写真1 ELD-A-D4-550 の外観 2. 装置構成 装置は、レーザ発振器、光学系、マスク・試料台のステ ージ、ポリイミドフィルムのリーラ、観察系、システムコント 図1 マニュアル動作画面(リーラ制御画面) ローラ、で構成され、その主な仕様は表1の通りである。 レーザ発振器は波長 248nm を発振するエキシマレーザ 発振器を採用し、光学系はレーザを均一強度に整形する照 明光学系と、マスクを 1/5 倍に縮小投影する投影光学系、 ロール状のポリイミドフィルムを巻き取るリーラ、ポリイミド フィルムを吸着して所定の位置に移動する精密ステージ、レ ーザの出力、強度プロファイル、マスク位置をアライメント するカメラ等の観察系、で構成される。システムコントロー ラの操作画面を図1、2に示す。装置の個別機器は図1のマ ニュアル動作の画面で操作することができる。また試料作 製など繰返し同じ動作を実行する場合には、図2のマクロ プログラム画面でユーザがプログラムできる。 図2 マクロプログラム画面 (131) 製品・技術紹介 3. 特 徴 (1)エキシマレーザによる加工 5. おわりに エレクトロニクス分野をはじめ、多くの分野で微細加工へ レーザ加工は熱処理プロセスと光化学プロセスに大別さ の需要は高まっており、本装置をベースにして、更に微細な れ、本装置は光化学プロセスに適した装置である。レーザ 加工や、加工品質の向上、生産性の向上等の技術開発を が材料に照射され吸収されると、照射された部位の温度が 行い、適応材料を広げて新規分野へと展開していきたい。 上昇して沸点に達すれば気化状態になり、蒸発飛散する。 熱処理プロセスはこのような材料の温度を上げて加工するプ ロセスで、加工部周辺の温度が上昇するために熱変位層が 発生し、加工跡は明瞭にならず精密加工には向かない。一 方、光化学プロセスは光子エネルギーの高い光を材料に照 射して、分子骨格を形成している化学結合を切断するプロセ スで、周辺の熱影響が小さく品質の良い加工が可能である。 尚、熱影響を小さくするには照射時間が短いことも重要で ある。採用したエキシマレーザは、レーザ加工に広く採用さ れている CO2 レーザ(波長:9.4 ~ 10.6μm)や、固体レー ザ(波長:355 ~ 1,064m)と比べて、波長 248nm(光子エ ネルギー:5eV)と短く、パルス幅も 25ns のため、熱影響の 少ない加工が可能である。 (2)マスク投影方式 レーザ加工の光学系は、集光ビームをスキャンして順次加 工する方式と、マスクにレーザを照射して、マスクパターンを 照射面に投影して加工する方式がある。前者はビームの利用 効率が高いが、照射位置精度はビームをスキャンするため十 分でない。一方、マスク投影方式は、マスクで遮光されるた め光利用効率は低下するが、マスクパターンが精密に照射面 に投影されるため、照射位置精度はステージ精度に依存し、 2μm 以下の精密位置合わせが可能である。また、マスクの 写真2 加工孔形状 パターンにより円形以外の複雑形状の加工が可能なこと、複 数のマスクパターンを組み合わせることで、深さ方向の加工 孔形状を変えることができる等の特長がある。 4. 加工例 (1)加工孔形状 50μm のポリイミドテープに、照射エリア 4mm □内に、 直径 4μm の加工孔を均一に形成したときの加工孔形状を写 真2に示す。写真のように真円度の良好な加工孔が均一に形 成されることがわかる。 (2)複数のマスクによる多段階照射 写真 3 は 2 種類のマスクを使ってポリイミドフィルムを2段 に加工したときの断面形状である。まず小径パターンを使っ て貫通孔を形成し、その後2段目の孔を形成した。 (132) 写真3 加工孔の断面 日本製鋼所技報 No.65(2014.10)