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第61回島根画像診断研究会症例集

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第61回島根画像診断研究会症例集
第61回島根画像診断研究会
2010年11月
ホテル宍道湖
症例1
松江赤十字病院 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
症例 : 10歳代 女性
主訴 : 左片麻痺・左半身感覚鈍麻
現病歴 : 発熱あり。同時期に
左半身のしびれ、左手足の脱力が出現したために
当院脳神経内科に受診となる。
既往歴 : 小児期より口内アフタ・関節症状などあり。
血液所見
血液一般
WBC 5.7×103
RBC 2.51×106
Hgb
7.6
Hct
22.7
Plat
25.5×104
CRP
1.63
生化学検査
/mm3
/mm3
g/dl
↓
↓
↓
/mm3
髄液所見
特に異常を認めず。
↑
特に異常を認めず。
T1WI
T2WI
DWI
ADC map
考えられる疾患は?
解説
Diagnosis : Neuro-Behcet’s disease
Behcet’s disease
概念:
原因丌明の全身疾患。主に皮膚・粘膜・眼を障害する。
慢性非肉芽腫性炎症を生じ、閉塞性血管炎を主体とする
変化を生じる。
疫学:
人口100万人あたり、約15人程度とされるが、日本では
近年減少傾向にある。
Behcet’s disease
主症状:
① 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
② 皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、血栓性静脈炎)
③ 眼症状(虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎)
④ 外陰部潰瘍
副症状
① 変形や硬直を伴わない関節炎
② 副睾丸炎
③ 回盲部潰瘍で代表される消化器病変
④ 血管病変
⑤ 中等度以上の中枢神経病変 (4~49%)
病型診断の基準
完全型 : 経過中に4主症状が出現
丌完全型 : a. 経過中に3主症状、あるいは2主症状と
2副症状が出現
b. 経過中に定型的眼症状とその他の
1主症状、あるいは2副症状が出現
疑い : 主症状の一部が出没するが、丌完全型の
条件を満たさないもの、定型的な副症状が
反復、増悪するもの
特殊病型:
a. 腸管型Behcet病
b. 血管型Behcet病
c. 神経型Behcet病
Neuro-Behcet’s disease
疫学
: 3:1の割合で男性に多い。
初発年齢は31~35歳
組織学的所見 : 細動脈・毛細血管・小静脈などの血管壁、
血管周囲に炎症細胞が浸潤する血管炎
好発部位 : 中脳間脳移行部、橋
視床下部・視床・大脳基底核・内包
側頭葉~後頭葉皮質下白質
Neuro-Behcet’s disease
MRI所見
T2WI : 高信号を呈する病変が中脳間脳移行部に好発
急性期 : 錘体路に沿って浮腫が広がる
病変に造影効果が見られる。
慢性期 : 脱髄性変化・gliosisを反映した変化
Neuro-Behcet’s disease
神経型ベーチェット病では
ADC値は上昇する
炎症性血管性浮腫
>
小静脈閉塞による細胞毒性浮腫
Kunimatsu A et al. Neuroradiology(2003) 45: 524-527
1ヵ月後
初発時MRI
T2WI
DWI
ADC
T2WI
鑑別疾患
・ MS
橋病変は第四脳室周囲に多い
・ SLE
皮質病変が多く、脳幹病変は少ない
・ sarcoidosis
髄膜病変を併発することが多い
・ brain tumor etc.
Neuro-Behcet’s disease
HLA-B51の陽性率が高い。
(HLA-B51遺伝子が好中球機能亢進に関不し、
これに伴う全身性の小血管炎が生じる)
・ Behcet’s diseaseの陽性率:53.8%
・ 健常人の陽性率:約15%
症例2
松江市立病院 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
30歳代女性
•
•
•
•
•
主訴、下腹部腫瘤
既往歴 10年前、左卵巣未分化胚細胞腫
G2P2
下腹部腫瘤感があり受診。
臍上二横指の可動性不良の腫瘤がある。
CA125:10.6. LDH:46. Hb:6.1
考えられる疾患は?
解説
所見のまとめ
• 子宮腫瘍
• 内部はほぼ均一
• T1WIでは筋層と等信号、T2WIではやや高信号、
Gdによる造影効果は中等度で均一
• 病巣の形はovalな部分と不定形・舌状の部分から
なる。
• 両者の間に明瞭なflow voidを認める。
• 病巣は子宮内に限局しているのか、いないのか?
手術記録
• 腹式単純子宮全摘術施行
•
• 開腹所見
右卵巣、および卵管は広間膜と癒着していたが、存在しており前回の手術は
左付属器摘出術と考えられた。
左卵巣は認めず。
子宮後壁~左壁にかけて腸管との癒着が認められ、これを剥離すると子宮
左壁に約3~4cm径の腫瘤を複数個認めた
この部位を迅速組織診に提出。筋腫と矛盾しないとの診断をいただき、子宮
および右卵管を摘出し手術を終了した。
腫瘍は、富細胞
性平滑筋腫であ
り、筋層内の病
巣から子宮左表
面の子宮広間膜
内に発育しいて
た。出血・壊死は
認めなかった。
病理診断
• 解離性平滑筋腫dissecting leiomyoma
• 子宮外に進展しているので
cotylednoid dissecting leiomyoma
grape-like leiomyoma
子宮筋腫の分類について
•


子宮の平滑筋由来の腫瘍として、良性-悪性の分類から:
子宮筋腫 ・ 悪性度不明の平滑筋腫瘍STUMP ・ 平滑筋肉腫
組織学的変異による分類:
通常型平滑筋腫 ・ 富細胞性平滑筋腫 ・ 類上皮平滑筋腫 ・ 粘液性
平滑筋腫 ・ 脂肪平滑筋腫
発育様式による変異亜型
び慢性平滑筋腫症 ・ 解離性平滑筋腫 ・ 静脈内平滑筋腫症 ・ 良性
転移性平滑筋腫 ・ 播種性腹膜筋種症
また、通常型でもヒアリン変性、石灰化、浮腫、粘液変性、赤色変性などの修飾
がみられる。
子宮筋腫の組織学変異
• 類上皮平滑筋腫瘍:まれ。画像所見に特徴なし。
• 粘液性平滑筋腫瘍:水腫様変性と同じ所見。T2WIで高信号、索状
の濃染と遷延する造影効果が特徴。
• 富細胞平滑筋腫:細胞密度は高いが、細胞異型や分裂像は少ない。
T2WIで軽度低信号-軽度高信号を呈し、早期より均一に強く濃船す
ることが多い。
• 脂肪平滑筋腫:まとまった脂肪組織を伴う筋腫。高齢者に多い。
T1WIでの高信号を出血と鑑別するため脂肪抑制画像を確認するこ
とが肝要である。
臨床画像2010、vol26、11月増刊号、泌尿器・生殖器腫瘍まるわかり辞典
発育様式による変異亜型
•
•
び慢性平滑筋腫症
1cm以下の平滑筋種が子宮内に無数にみられ、子宮は左右対称性に腫
大する。出血を伴うことがあるが通常経過良性。
解離性平滑筋腫
平滑筋種が筋層内あるいは子宮広間膜内や骨盤内に進展する。子宮外
に進展した場合に肉眼上胎盤に類似しcotylednoid dissecting
leiomyomaとよばれることもある。ぶどうの房状の表現もある。富細
胞性平滑筋腫が最も多い。
•
•
•
静脈内平滑筋腫症
良性の平滑筋種が子宮外の静脈内に浸潤する。連続して下大静脈・右
房に進展することもある。内膜間質肉腫との鑑別が重要である。
良性転移性平滑筋腫
良性の平滑筋種が肺やリンパ節なとに転移を示すもの。数年後の発生も
あるので、子宮筋腫と同じ組織型であることを証明することが肝要である。
播種性腹膜筋種症
骨盤や腹腔内の腹膜表面に無数の金主が播種するように出現した状態。
妊娠中、傾向避妊薬服用、卵巣顆粒膜細胞腫の存在などに関連して起こり、
内分泌環境の変化により消失する。
画像診断2006、vol26、no2、ちょっとハイレベルの日常遭遇する婦人科疾患
子宮平滑筋腫の診断は意外と難しい
• 非常に多い疾患ではあるが、常に肉腫との鑑別を要請さ
れる。
• 良性の筋腫でも組織学的variationが多い。
• 今回稀な発育形式をしめした症例を提示した。診断時に
は、この発育様式に関する知識がなかったので形態から
悪性を疑ってしまった。
• しかし、子宮筋層の疾患としては、やはり筋腫を第一に
鑑別すべきである。
症例3
出雲市立総合医療センター病院 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
症例
患者: 50歳代 女性
現病歴 : 6ヶ月前、バレーボール中に転倒し右肩を打撲。
その頃より徐々に右上肢挙上困難となった。
家族歴・既往歴 : 特記すべきことなし
理学所見 :
passive ROM
外転 180°, 屈曲 180°
挙上 80~100°で drop arm test 陽性
棘下筋の筋力低下あり
肩関節単純写(外旋位)
T1強調冠状断像
T2強調横断像
T2強調冠状断像
考えられる疾患は?
解説
T1強調冠状断像
T2強調横断像
T2強調冠状断像
診断:
1.肩甲切痕部のガングリオンによる肩甲上神経圧迫
2.上腕骨頭のsubchondral cyst (または骨内ガングリオン)
治療:
関節鏡下ガングリオン ドレナージ術施行
考察
肩甲上神経麻痺
肩甲上神経
肩甲切痕と横靱帯
原因 : 絞扼性神経障害 62%
ガングリオン
26%
直達外傷
12%
症状: 肩痛、だるさ
筋力低下、筋萎縮
棘窩切痕と横靱帯
ガングリオン
・ 内部にゼリー状の粘稠な液体を入れた嚢胞
・ 単房性あるいは多房性
・ 関節包や腱鞘に接していることが多いが内腔との連続性はない
・ 嚢胞壁は線維性組織からなる
・ synovial lining cell はない
・ 好発部位 : 手関節背側部
ガングリオン と Baker嚢胞
嚢胞壁の粘液貯留
ガングリオン
synovial lining cell
Baker嚢胞
肩関節のガングリオン
・ 関節唇損傷と連続しているものが多い
・ paralabral cystとも呼ばれる
T1強調冠状断像
T2強調横断像
T2強調冠状断像
subchondral cyst
・ 同義語 :
synovial cyst
subarticular pseudocyst
necrotic pseudocyst
geode
・ osteoarthritis に伴うことが多い
・ synovial lining cellはない
・ サイズ : 2~20mm
Pathogenesis of subchondral cysts
The theory of synovial intrusion states that abnormal stress on cartilage (arrow) leads to cartilaginous degeneration. Synovial fluid is driven into the subchondral bone
through gaps in the chondral surface and bone plate (arrowhead), producing cysts that initially communicate with the joint and subsequently may become occluded with
fibrous tissue.
The theory of bony contusion also holds that cartilage loss occurs owing to abnormal stress (arrow). Subsequently, fracture and vascular insufficiency of the bone itself
(arrowhead) produce cysts, which may communicate with the joint secondarily.
骨内ガングリオン
・ subchondral cyst との同異には議論がある
・ 画像上大きな違いなし
・ あえて相違点:
関節の non-pressure area に発生する
関節腔との連続は通常ない
比較的大きい
変性・炎症性変化のない関節にも発生する
Humeral head cyst
•
•
•
•
一般人の70%に存在する
94%は関節腔と交通している
前面 : 後面 = 1 : 7
前面の病変
腱板損傷に伴う、高齢者に多い
• 後面の病変
腱板損傷の有無や年齢と関係ない
Williams M et al.
Humeral head cysts and rotator cuff tears: an MR arthrographic study.
Skeletal Radiol. 2006 ;35:909-14.
T1強調冠状断像
T2強調横断像
T2強調冠状断像
解答
肩甲切痕部ガングリオン圧迫
による肩甲上神経麻痺
症例4
松江生協病院 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
60歳代、女性
無症状、他疾患のスクリーニングCTで発見
Plain CT
CE-CT
T1WI
CE-T1WI
FS-T2WI
考えられる疾患は?
解説
所見1
• Size 5*4*8cm
• 境界比較的明瞭
• CT内部濃度
単純:均一 造影効果:有り不均一
• MRI内部信号
FS-T2WI:不均一 造影効果:有り不均一
• 脂肪成分・石灰化巣ともになし
所見2
• 動脈相:増生した供血血管
• 右下腹部腫瘤:右腸骨動静脈を巻き込む様な形態(腫瘍内
を血管走行)。上行結腸が腹側に圧排/偏位し、後腹膜由来
と考える。
• 隣接する右腸腰筋が圧迫され変形するほどのmass effect、
右外腸骨静脈は怒張(flow limitter)
考察1
• 後腹膜腫瘍、増大傾向あり
→悪性疾患 疑う(後腹膜発生腫瘍80%以上)
• 発生・由来候補
→腸腰筋・血管(腸骨動静脈)・神経系
• 造影効果・vascularity
→中等度 傍神経節細胞腫、Castleman病ま
ではない
考察2
• 後腹膜悪性腫瘍(成人)
脂肪肉腫
平滑筋肉腫
MFH
転移性腫瘍
ML
神経原性腫瘍
→脂肪成分指摘できないが否定不可
→発生 ○ 形態 ○ 造影効果 ○
→否定的な所見がない
→他臓器に原発巣が認められない
→内部濃度不均一 ×
→傍神経節腫にしては増強効果弱 ×
ただし変性した悪性神経鞘腫は可
以上から平滑筋肉腫・MFH 疑いとreportし手術へ
術後組織診断
• Leiomyosarcoma, peritoneum
(extraluminal type)
周囲と癒着強 ただし境界明瞭
Desmin・caldesmon・α SMA陽性
核分裂多 Ki-67陽性細胞50%以上
CD34・c-kit 陰性
ER・PR 陰性
血管内浸潤は認めず
平滑筋肉腫
•
•
•
•
•
•
•
画像のみで判断がつくものはそう多くない
巨大・分葉状・水に近い濃度・壊死・充実部多血性
血管内浸潤を来しやすい
成人後腹膜腫瘍での頻度は脂肪肉腫に次ぐ(15%)
40-50才 女性が多い 1:6(男性:女性)
後腹膜腔・IVC壁発生
予後不良 局所再発40-70% 5年生存 13-20%
分類
血管外型 extraluminal type(62%)
血管内型 intraluminal type(5%)
血管内および血管外突出型 extra-intraluminal type(33%)
• 鑑別:脂肪肉腫・MFHなど
鑑別疾患①:脂肪肉腫
•
•
•
•
後腹膜充実性腫瘤の中で最多 必ず疑うべき
中年・女性に多い
分葉状腫瘤
脂肪が確認できない場合も(粘液型)
組織型により見え方が違う(脂肪成分量)
lipogenic・myxoid・pleomorphic(前2者の混合が多い)
• Lipogenic typeはlipomaと鑑別困難
• Myxoid typeは水濃度
• Pleomorphic typeは軟部組織濃度
後腹膜:脂肪含有腫瘍
• 脂肪腫 →脂肪組織のみ(高分化型脂肪肉腫)
• 骨髄脂肪腫 →副腎発生
• 血管筋脂肪腫 →腎発生
• 高分化/脱分化型脂肪肉腫
→ 巨大(Φ10cm以上)
隔壁(造影効果)・結節
脂肪以外の組織
鑑別疾患②:MFH
• 後腹膜に関わらず成人の悪性軟部組織腫瘍
のなかでは最多
• 特異的な画像所見はない
• 造影では多血性
• 壊死巣
• 粘液間質・造影効果
• 筋肉など軟部組織と同等
• 四肢(59%) 後腹膜(18%)
鑑別疾患③:神経原性腫瘍
•
•
•
•
•
•
良性・悪性がある
発生箇所:椎体に近い
造影効果強い
石灰化
中心性壊死・嚢胞変性
粘液性間質(遷延性濃染)
症例5
島根県立中央病院 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
30代 女性
約20日前に右鼠径部腫瘤を自覚.還納不能.疼痛なし.発赤なし. 超音波検査:嚢胞性腫瘤
血液検査:異常なし
造影CT
脂肪抑制パルス付加T2強調冠状断像
MRI:脂肪抑制パルス付加T1強調冠状断像
脂肪抑制パルス付加造影T1強調軸位断像
脂肪抑制パルス付加T2強調冠状断像
脂肪抑制パルス付加造影T1強調軸位断像
考えられる疾患は?
解説
正解:ヌック管嚢胞
ヌック管嚢胞:胎生期には子宮円索に沿って存在する腹膜鞘状
突起(prosessus vaginalis peritonei,canal of Nuck)が生後も開存し,
液体貯留をきたしたもの.
男性の精索水腫に相当する病態.
腹膜鞘状突起:鼠径管から陰嚢に至る腹膜でできた管状構造
胎生期に精巣が陰嚢に下降する経路
鼠径管内では精索あるいは子宮円索の腹側に存在する
子宮円索と精索は相同器官(発生学的に由来が同じ)
鑑別診断:鼠径ヘルニア 子宮内膜症
手術所見:
鼠径管内に,腹腔内から連続する嚢胞を認め切除した
内鼠径輪の開大や鼠径管後壁の脆弱性なし
病理診断:中皮嚢胞
本症例の腹部超音波検査画像
右上側
左下側
画像のポイント
1.内鼠径輪背側の,腹腔内と考えられるところにも嚢胞がある.
2.子宮円索に沿って背側に進展している
本症例
MRI
正常例
CT
矢印 子宮円索
画像は精索水腫と同じ
本症例
MRI
精索水腫
CT
そんなにまれな病態ではないかもしれない
症例報告が少ない理由
鼠径ヘルニアと臨床診断すれば画像診断をしない
鼠径ヘルニアの組織を病理診断に回さない
鼠径ヘルニアの手術で詳しい記録はしない
ヌック管嚢胞の診断基準(私見)
組織学的に中皮嚢胞
内鼠径輪の開大や鼠径管後壁の脆弱性がない
以下に症例を提示
ヌック管嚢胞第2例
CT
ヌック管嚢胞第3例
CT
ヌック管嚢胞第4例
US
ヌック管嚢胞第5例
CT
参考:子宮内膜症
CT
US
そけい部子宮内膜症もヘルニアやヌック管嚢胞との合併が多い
参考文献
Clair L. Shadbolt, et al:Imaging of Groin Masses: Inguinal
Anatomy and Pathologic Conditions Revisited.RadioGraphics
21:S261–S271 2001
Aaron Kirkpatrick, et al: Endometriosis of the Canal of Nuck.AJR
186:56–57 2006
武藤康彦ら:ヌック水瘤内子宮内膜症の1例.日臨外会誌69
(12),3276-3280 2008
澤田雄島ら:右下腹部痛にて発症したNuck管水腫の1成人例と
本邦報告例の検討.医療 62(6),347-9 2008
症例6
島根大学 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
• 症例:
生後2ヶ月、男児
• 主訴:
左眼の角膜混濁
• 現病歴:
– 在胎週数39週4日、正常分娩にて出生。出生体重3530g。
– 出生直後より顔面、頭部に血管腫を認めた。
– 1ヶ月検診時、左眼の角膜混濁を指摘。
– 近医眼科受診し、緑内障と診断される。@@@が疑われ、
当院紹介受診となる。
• 家族歴: 特記すべき事項なし。
頭部MRI
T1WI
T2WI
FLAIR
頭部MRI
CET1WI
DWI
考えられる疾患は?
解説
診断:Sturge-Weber 症候群
(Encephalotrigeminal angiomatosis)
入院・外来経過
• 入院時身体所見:
– 顔面の血管腫:左側全体、右側上下眼瞼周囲。
– 眼圧(正常値10-21mmHg):右20mmHg、左40~50mmHg↑↑。
– てんかんなし。その他、神経学的所見なし。
• その後の経過:
– 緑内障に対して、全身麻酔下にtrabeclotomy(線維柱帯切開術)施行。
– 初回入院から約2ヶ月後、外来経過観察中にけいれん発作、一過性の右
上下肢麻痺。
– 難治性てんかんとなることが予想されたため、他院にて半球離断術予定。
けいれん発作後に撮影された
脳SPECT(I123-IMP)
Sturge-Weber 症候群
• 成因不明の先天性疾患
• 本態は脳軟膜の血管腫(径150 μm以下の静脈性血管腫)
– 胎生期4-8 週頃、顔面上部皮膚となるべき外胚葉で後頭葉周囲の神
経管を覆っている部分の原始毛細管網が存続したものとされる。
– 皮質静脈と上矢状静脈洞との連絡が発達せず、皮質の静脈還流は
深部髄質静脈に向かい、脈絡叢部の血管網が拡大する。
– この不完全な静脈還流から緩徐進行性の組織破壊が発生し、大脳
半球の石灰化と萎縮が起こると推定される。
• 臨床症状
– 三叉神経支配領域(1枝領域に多い)の血管腫性母斑
– 脳軟膜血管腫に伴う中枢神経症状(90%の症例):てんかん、精神発
達遅滞、片麻痺、同名半盲
– 先天性緑内障、牛眼(眼球拡大):約1/3の症例に見られる。
Sturge-Weber 症候群の画像診断
• 頭部単純写真:
– 脳溝を挟み平行に走る脳回の石灰化“tram-track pattern” 。
– 大脳の片側萎縮に伴う病側の頭蓋冠の低形成、肥厚。
– 前頭洞や乳突洞の拡大、蝶形骨大小翼の挙上。
• CT:
– 脳回の石灰化(後頭葉と頭頂葉に多く、前頭葉まで広がることあり。稀に
新生児でも検出されることあり。)。
– 皮質下白質の石灰化が見られることあり。
– 造影にて軟膜の肥厚と増強効果、脈絡叢の腫大と増強効果。
– 大脳の片側萎縮と病側の頭蓋冠の低形成、肥厚。
Sturge-Weber 症候群の画像診断
• MRI:
– 造影にて軟膜の肥厚と増強効果。深部静脈の拡張。脈絡叢の腫大と増
強効果。
– 皮質下白質のT2WI高信号:グリオーシス、脱髄、虚血などを反映。
– 白質のT2WI低信号:髄鞘化の促進や毛細血管・静脈内に増加した
deoxyhemoglobinなどが原因として考えられている。
• SPECT
– てんかん発症前は高集積。
– てんかん発作後は血流低下。
(前原忠行 他:頭部疾患のMRI診断から画像を引用)
症例7
大田市立病院 放射線科
提示
第61回島根画像診断研究会_2010年11月_ホテル宍道湖
症例
• 症例 : 60歳代 男性
• 症状 : 持続するてんかん
• 血液生化学的所見 :TPHA(+)
MRI
FLAIR像
MRI
拡散強調像
FLAIR像
MRI
拡散強調像
FLAIR像
考えられる疾患は?
解説
60歳代男性
進行麻痺、認知症、てんかんにて施設入所中。
3日前より痙攣発作あり、近医入院。アレビアチンを投不されてい
たが、痙攣が持続するため、当院神経内科に紹介、転院となる。
【来院時身体所見】
呼びかけに反応なく、左上下肢屈曲で1分間程度の痙攣あり。
TPHA(+) : (梅毒治療後とのことだが、詳細丌明)
【生化学所見】 CPR 1333↑
(62-287U/l)
Na 130↓
(136‐147mEq/l)
Cl 94↓ (98‐109mEq/l)
K 3.7
(3.6‐5mEq/l)
Ca 8.4↓ (8.5‐10.2mEq/l)
CRP 1.40↑
【血液所見】
WBC 9560/μ
軽度貧血あり
FLAIR
DWI
MRA
入院時
7日後
14日後
20日後
入院時
7日後
14日後
20日後
診断
痙攣後脳症
(postictal encephalopathy)
てんかん重積状態
終止傾向のないてんかん発作状態をてんかん重積状
態とよぶ。
てんかん重積状態では、脳細胞の酸素および糖の需
要状態が高まり、同部位の脳血流量も増加するが、
相対的に酸素や糖が丌足して脳障害が生じる。
障害されやすい部位はてんかん焦点となっている大
脳皮質、同側視床、同側海馬、対側小脳である。
基底核は侵されにくい。
痙攣後脳症
頭部MRIでは障害部位は拡散強調画像で高信号とな
る。
同部位のADCは正常あるいはやや低下する。
T2強調画像やFLAIR画像で淡い高信号となる。
MRAでは、てんかん焦点の血流増加を反映して、同
部位を還流する血管の描出が良好となる。
適切な治療によって早期にMRI異常が消失するが、
てんかん重積状態が遷延すると脳障害が残存するこ
ともある。
診断
痙攣後脳症
(postictal encephalopathy)
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