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今井 裕1)、桜田 愛音2)、山下 智裕1)、川田 秀一1)
November 16-17, 2007,Tokyo 東海大学医学部 基盤診療学系 画像診断学1)、国立がんセンター中央病院 放射線診断部2) ○今井 裕1)、桜田 愛音2)、山下 智裕1)、川田 秀一1) リンパ節転移の画像診断は、これまで CT や MRI を用いたリンパ節の径、形状や内部性状による 検討が行われてきた。しかし、これらの因子のみでは転移の正確な診断は困難であるとされている。 我々は、リンパ節転移の有無が予後に大きく影響する食道癌に対して、MRI の拡散強調画像(DWI) とT2 強調画像(T2WI)を用いてリンパ節転移の有無について検討した。外科的に切除された食道 癌20例を対象として、CTと1.5 MRI によるリンパ節転移の診断能を比較検討した。転移陽性リンパ 節34群のうちDWI では19群、T2WI では8群、CT では10群が描出され、感度、特異度は、DWI が 55.9%、77.4%、T2WI が23.5%、93.6%、CT は29.4%、93.1%であった。DWI は相対的に感度が高く、 特異度が低い傾向にあった。次に DWI による偽陽性(FP)例について病理組織像と比較検討すると、 病理で転移陰性であるにもかかわらず DWI で描出されたリンパ節のうち31群に反応性の組織球浸潤 が、4群に出血が認められた。DWI における FP の要因は、食道癌のリンパ節転移においては炭粉 沈着などに伴う組織球浸潤であった。 また、欧州では ultrasmall superparamagnetic iron oxide particles(USPIO)という静注用の粒子 の極めて小さな鉄剤投与が臨床例で応用されている。USPIO は、静注24∼36時間後に正常のリンパ 節組織内に取り込まれ、T2* 強調画像の撮像により正常のリンパ節組織は低信号に描出される。一方、 転移リンパ節の腫瘍部にはUSPIOは取り込まれないため、転移巣は相対的に高信号域として描出され、 腫瘍と正常リンパ組織とのコントラストの差が明瞭となり診断される。 今後、MRI によるリンパ節転移の診断には、2つの技術の改善が求められる。一つは空間分解能 をさらに向上させ、いかに小さなリンパ節を拾い上げるか、あるいは微小転移巣も描出できるかにあ り、これには RF コイルの改良や 3 T MRI の応用などが考えられる。もう一つは、リンパ節用造影 剤であり、本邦においても USPIO のような陰性造影剤の臨床応用が期待されており、また逆に陽性 造影剤の開発も試みられている。 39