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第79回島根画像診断研究会症例集
第79回島根画像診断研究会 2016年11月 ホテル宍道湖 症例1 松江赤十字病院 放射線科 提示 第79回島根画像診断研究会_2016年11月_ホテル宍道湖 症例:10代後半 男性 現病歴:頭痛にて受診。 白血球9600、CRP13 髄液:リンパ球58、多核白血球15、 単核球21、外観清、糖定量58、 蛋白定量26 既往 漏斗胸術後 頭部MRI T1WI T2WI MRA 造影T1WI 胸部単純CT X月Y日 上記の2週間後 考えられる疾患は? 解説 CT所見 両肺に多発結節影あり。 短期間にサイズ変化見られることから炎症を考える。 MRI所見 蝶形骨洞内に液体貯留と粘膜肥厚あり。 近傍の海綿静脈洞にT1強調像で低信号、T2強調像で中等 度信号を呈し、造影T1強調像にて濃染される領域が見ら れる。MRAでは両側内頚動脈の海綿静脈洞部で血管丌整/ 狭窄を来している。 18 F-FDG PET 右海綿静脈洞部に強い集積あり。 両肺の結節影にも集積認める。 治療経過 クリプトコッカス・アスペルギルス・カンジダ抗原、β-Dグルカンはいずれも陰性 ではあったが、肺結節、髄膜炎、副鼻腔炎(海綿静脈洞/血管への浸潤疑い)から 感染症(真菌症)を疑われた。 抗生剤投不:アムホテリシンB、メロペン(カルバペネム系) その後バンコマイシン追加。 炎症反応下がらず。 画像上も増悪。 多発血管炎性肉芽腫?(ANCAは陰性ではあったが) ステロイドパルス療法併用(ソルメドロール1g×3日) 肺結節のVATS生検 Grocott染色 病理組織診断: Pneumonia with microabscess ラングハンス型巨細胞認めず。 血管炎の所見認めず。 Grocott染色陽性を呈するrod状の菌が存在。 放線菌症 肺標本のPCRでActinomyces gerencseriae のDNA検出。 放線菌症 放線菌症は微好気性ないし嫌気性グラム陽性菌である Actinomyces islaelli(まれにA. naeslundii/ viscosus 複合体、A. odontolyticus、A. meyeri と A. gerencseriae )が原因の慢性化膿性肉芽腫性疾患である。 口腔内常在菌であり,しばしば気管支,消化管,女性性器から 分離される。特に齲歯,歯垢,扁桃陰窩などに無害性に存在し, 組織の損傷や他の感染によって宿主の抵抗が失われてはじめて 病原性を発揮する(ただし、免疫丌全状態でない健常宿主でも 発症し得る)。放線菌症の好発部位は,顔面・頸部40~60%, 腹部20~30%,胸部10~20%であり,鼻副鼻腔は非常にま れである。 周囲への浸潤性変化が強く、時に悪性腫瘍との鑑別が難しい。 放線菌症 診断 白血球増多,血沈亢進,CRP高値などの非特異的炎症 反応所見を認めるが、抗体価など特異的な血清学的な診断法 がないため、術前診断は困難である。 確定診断は病理組織学的な菌塊の証明。 放線菌の培養は難しく、2%という報告もある。 治療法 ペニシリンの長期投不が原則。テトラサイクリン、エリスロ マイシン、クリンダマイシン、ニューキノロン系抗菌薬の 経口投不も治療効果があるとされている。 慢性陳旧性変化/肉芽腫性病変が強い場合には外科的処置。 鑑別 ・真菌症 画像上は鑑別困難。 クイズの回答としてはこちらも正解とします。 ・多発血管炎性肉芽腫 硬膜肥厚。 蝶形骨洞限局の副鼻腔炎は少ない。 ・サルコイドーシス 肺結節陰影はGalaxy appearance。 髄膜炎や結節状濃染。 症例2 松江市立病院 放射線科 提示 第79回島根画像診断研究会_2016年11月_ホテル宍道湖 60代女性 無症状 • 膵病変の経過観察中 • 血液検査異常なし。 • CEA 0.8. CA19-9 8.2 RARE TE 83msec 3D MRCP TE 654 CE+ early CE+ delay 考えられる疾患は? 解説 CECT delay 4年前 病理 • Pancreatic carcinoma, Pb, cystic type, Tis, 3×2.8×2.3㎝ (TS2):mucinous cystadenocarcinoma, ly0, v0, ne0, mpd(-), s(-), rp(-), pv(-), asp(-), pl(-), PCM(-), DPM(-) • No lymph node metastasis • 硝子化の強い嚢胞壁の内腔に、コレステリン裂隙を伴うフィ ブリン硬化組織・壊死組織が結節状に突出していますが、そ の表面を覆うように粘液性円柱上皮や好酸性円柱上皮の被 覆が断続的にみられ mucinous cystic tumorと考えます。大 半の被覆上皮は分化が良いですが、低乳頭状増殖、癒合腺 管構造といった構造異型のみられるところでは細胞異型の 増強もあり、全体を高分化な adenocarcinomaと判断します。 粘液性嚢胞腫瘍 • 膵尾部に好発する • 女性>男性 • 卵巣様間質を有することが多い(WHO分類では、必須。本邦では必須ではな い。本症例は含まず、分類不明な粘液産生性膵腫瘍となる。) • 厚い線維性被膜の嚢胞壁。 T2WIで低信号、遅延性濃染。 • 単房性または多房性(cyst-in-cyst-appearance) • 内部に粘液、出血、壊死物質を含む。 T2WIで低信号、T1WI高信号。 • 膵管と連続性は1/5以下の頻度。 • 4cm未満で壁在結節のないMCNは良性であった。一方で壁在結節があ る良性も22%存在。悪性の頻度は6-27%。悪性で壁在結節のある頻度は 52%。漿液性嚢胞のmacrocystic typeやunilocular typeとの鑑別が困難。 IPMN経過観察中、膵癌発生は、0.6%/年。 他臓器癌発生は1.3%/年 IPMN診断時に他臓器癌合併は26% 診断名 • 膵粘液嚢胞腺癌とIPMN • 粘液性嚢胞腫瘍も鑑別できないので、OKです。 • IPMCは、嚢胞壁の性状が異なり不可です。 • 粘液性嚢胞腺癌または粘液性嚢胞腫瘍のみは0.5点、IPMNのみは0点 症例3 島根大学 放射線科 提示 第79回島根画像診断研究会_2016年11月_ホテル宍道湖 【症例】10代 男性 【主訴】 下血 【現病歴】 幼少期から頭痛持ちであった。 14歳頃から毎日下血あり。 近医受診後、当院消化器内科紹 介受診となった。 パントモグラフィー ①患者背景 初診時頭部CT 初診時造影CT 造影CT(初診から2年半後) 考えられる疾患は? 解説 パントモグラフィー 歯牙腫 ①患者背景 初診時頭部CT 軟部濃度腫瘤 骨腫 初診時造影CT 病理診断 Tubular adenoma 病理診断 Tubular adenoma 造影CT(初診から2年半後) 肉眼像: 6x5x2.3cm大の白色充実性で境界不整な腫瘤。 所々に暗赤色調の変化を伴い、膵臓実質や脾 門部脂肪織を巻き込んでいた。 組織像: 異型に乏しい紡錘形細胞が束状の走行を示して おり,ki-67陽性率は1%未満と低値。 免疫染色では腹腔内デスモイドに合致、神経系, 平滑筋系腫瘍およびGISTは否定された。 家族性大腸腺腫症 (familial adenomatous polyposis: FAP) 家族性大腸腺腫症 • APC遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とし, 大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体優 性遺伝性の症候群である. • 全人口における頻度は,欧米では1:10,000か ら1:20,000前後,わが国では1:17,400と推測 されている 家族性大腸腺腫症 • 放置するとほぼ100%の症例に大腸癌が発生 する. • 大腸癌以外にも,消化管その他の臓器に 様々な腫瘍性および非腫瘍性の随伴病変が 発生する • 大腸癌の発生は10歳代での報告もあるが, • 40歳代でほぼ50%,放置すれば60歳頃には ほぼ100%に達する • FAPの死因の第1位は大腸癌であるが,その 頻度はFAPの早期診断がなされるにつれて • 減少傾向にある • 主な大腸外随伴病変のうち,十二指腸癌,デ スモイド腫瘍は大腸癌以外のFAPの主要な死 因である Gardner症候群 皮下の軟部腫瘍,骨腫,歯牙異常,デスモイド 腫瘍などを伴う大腸腺腫症はGardner症候群と 呼ばれ,FAPとは別に扱われた時期もあった APC遺伝子が発見されてからFAPと同一疾患で あることが明らかになり,この病名が使われな い傾向にある. 家族性大腸腺腫症 (familial adenomatous polyposis: FAP) ※Gardner症候群 症例4 松江生協病院 放射線科 提示 第79回島根画像診断研究会_2016年11月_ホテル宍道湖 • 症例:30代男性 • 主訴:発熱、頭痛、倦怠感 • 現病歴:前日より発熱、頭痛、倦怠感あり。そ の後、食事を手づかみで食べるなどの異常 行動を認め当院受診。 • 既往歴:特記事項なし DWI ADC T2WI FLAIR T1WI T2*WI 考えられる疾患は? 解説 画像所見のまとめ • T2WI/FLAIRで大大脳静脈高信号域を認める T1WIでは内大脳静脈や大大脳静脈、直静脈洞 に高信号を認める T2*WIでは低信号 • 両側視床や基底核、脳梁膨大部にDWI高信号 域 ADCは低下-上昇 T2WI・FLAIRでは高信号 T2*WIで一部低信号 脳静脈洞血栓症 脳静脈洞血栓症 • 硬膜静脈洞や静脈が血栓により狭窄あるい は閉塞し、静脈の還流障害により静脈圧が 上昇することで生じる疾患 • 上矢状洞、横静脈洞、直静脈洞に多い 脳静脈洞血栓症 比較的若年者に多く発症し75-80%は基礎疾患を有する • • • • • • • • • • 感染症(副鼻腔炎や中耳炎、髄膜炎、脳炎、敗血症など) 妊娠・産褥期、経口避妊薬 脱水 血液疾患(凝固異常、多血症など) 頭部外傷 脳腫瘍の静脈洞伸展(髄膜腫・転移など) 膠原病 炎症性腸疾患 ベーチェット病 薬物中毒 臨床所見 • • • • • • 頭痛 悪心・嘔吐 乳頭浮腫 痙攣 意識障害 精神症状(異常行動) 若年者における急性発症の精神症状や人格変容は臨床的に 静脈洞血栓症を疑う契機になる 症例 • 入院時の髄液検査で細胞数の増加を認めウ イルス性髄膜炎が疑われた。 画像所見のまとめ • T2WI/FLAIRで大大脳静脈高信号域を認める T1WIでは内大脳静脈や大大脳静脈、直静脈洞 に高信号を認める T2*WIでは低信号 →静脈・静脈洞内の血栓 • 両側視床や基底核、脳梁膨大部にDWI高信号 域 ADCは低下-上昇 T2WI・FLAIRでは高信号 T2*WIで一部低信号 →浮腫や梗塞、出血性病変 鑑別診断 • 急性壊死性脳症:小児が罹患 • 両側傍正中視床梗塞:視床内側