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No.239
図書館だより No.239 2015 年 9 月 12 日 発行 京都聖母学院中学校・高等学校図書委員会 『アンネ・フランク展 「希望の未来」』・『杉原千畝展』開催記念号 ~平和について考える~ 『アンネ・フランク展 「希望の未来」』によせて 大日本帝国陸軍第16師団司令部庁舎。これは、幼稚園児から短期大学学生までが集う私たちの キャンパスの中央に位置する建物の70年前までの名称です。戦後、土地や建物が払い下げられ、この 地に私たちの学院が設立されました。戦争という悲しく痛ましいできごとと大きな関わりをもつ私たちの学院 です。それゆえに「聖母の子ども一人ひとりが、人々の心を結ぶ平和の天使でありますように」という創立者 の言葉を脈々と受け継いできました。 この度、戦後70年という節目の年に『アンネ・フランク展 「希望の未来」』を校内で開催できますことを 心より感謝申し上げます。この機会に生徒たちが平和についてさらに意識を強め、建学の精神にある「真 に平和な世界を築くことに積極的に貢献する人」に一歩でも近づけることを切に願っています。 京都聖母学院中学校・高等学校 校長 山下道明 『図書館だより 平和について考える』 発行によせて 第二次世界大戦。1939 年~1945 年の間、文字通り、世界各地で戦争が行われていました。今は 2015 年。戦争が終わってから 70 年もの月日が経ちました。私たちを含め、あの戦争を知らない世代が多く を占めるようになりました。知っている世代も、遠くない未来、いなくなってしまうでしょう。今の日本は、終戦 から一度も戦争をすることなく、平和に過ごしています。けれど、今があるのは、過去があるからです。そして、 今を見つめるためには、過去から目を反らしていてはいけません。過去、何があったのか。今の平和を維持 するためには、何をすればいいのか。決して楽しい話ではありません。辛い話ばかりでしょう。しかし、『過去 から学ぶ』というのは、とても大切だと、私は思います。みなさんと、平和について考えたい。そんな思いで、 今回の「図書館だより」のテーマは『平和』にしました。そして、学院祭でも、平和についての展示を行いま す。さらには、沢山の方々のご協力のおかげで、今年の学院祭期間中をはさんで、『アンネ・フランク展 「希望の未来」』を図書館で行うこととなりました。少しでも、平和について考えるきっかけになれば幸いで す。 京都聖母学院中学校・高等学校 図書委員会 副委員長 「図書館だより」 編集長 高校 3 年生菊組 田中 万絲 【表紙イラスト 高校 3 年生百合組 吉村紗奈】 1 平和について考える 戦後70年。図書委員会「図書館だより」編集 部員・教職員・図書委員会OGらが、想いを込め て紹介します。 【★印のものは図書館に入っています。】 少女の言葉 若宮あずさ( 漫画) 高橋数樹(監修 監修) 若宮あずさ (漫画 ) 高橋数樹( 監修) ★『アンネ・フランク コミック版世界の伝記 2』 (ポプラ社) “アンネ・フランク”この名前を 一度は聞いたことがあるのではな いだろうか。「第二次世界大戦」 を最後まで自分らしく生き抜い た15歳の少女である。少女が 生前残した日記は、今でも全 世界で読まれ続けている。そんな少女の生涯を新 しく加えられた情報と共に、解りやすく漫画化した この本。戦争とはどういうものか、戦後70年の節 目である今年、ぜひ一度読んでみて欲しい。 (茶葉) 第二次世界大戦 シュナーベル『 悲劇の少女アンネ』( 』(偕成社 偕成社) ★シュナーベル 『悲劇の少女アンネ 』( 偕成社 ) アンネをはじめ、何百万人 ものユダヤ人たちは、ナチズム の犠牲者だったし、広島と長 崎の罪のない人々も、世界 で初めて使用された原爆の 犠牲となったのは、知っている と思います。地球上で、ほぼ すべての国、十数億の人々を戦火に巻き込んだ 第二次世界大戦は、人類にとって不幸で悲しかっ たと思います。アンネと同じ収容所で亡くなった人 は、五百万人。私は本を読んで、戦争は、いけな いことだし、今私たちが平和なときでもつねに戦争 のことを考えていくのが大切だと思います。なので、 皆さんも、一度、戦争について考えてほしいと思い ます。 (Y.S) 本当のアンネの姿 ★ アンネ・フランク『アンネの日記 増補新改訂版』 (文春文庫 2003 年) 『アンネの日記』を知っていま すか?毎年 5 月になると、本 校の西玄関前に「アンネのバラ」 が咲くたびに、図書館では「ア ンネ・フランク」「ホロコースト(ナ チスによるユダヤ人大量虐殺)」 についてのコーナを設けている。ここ京都聖母学院 にこの「アンネのバラ」がいつ届けられたのかはわか らないのだが、音楽科の丹後美紀子先生によると、 深草西浦町にあった教会で「アンネ・フランク」に関 わる展覧会があり、本校の隣にあるヌヴェール修 道会のシスターがその会場でアンネのバラを譲り受 けられ、本校の庭に植えられたとのこと。今の場所 に移植される前は体育館の裏や藤棚の下でひっ そりと咲いていた。それが今の場所に移植されて、 年に二回美しい花をつけて私たちにアンネのことを 思い出させてくれる。こうして、中高図書館が「アン 親愛なるキティーヘ ★アンネ・フランク アンネ・フランク『アンネの日記』(文春文庫) アンネ・フランク 『アンネの日記』(文春文庫) アンネ・フランクという少女をみ なさんはご存じでしょう。彼女は ナチスのホロコーストによって命を 奪われてしまったユダヤ人の一 人です。この日記は、ナチスから 隠れるために、不自由な暮らし を強いられたアンネが、誕生日にもらった日記帳を “キティー”と名付け、日々彼女に「語りかける」こと によって生まれました。 <これは、一人の少女の生きた証です> (摩尼) 2 ネのバラ」と関わるようになり、コーナーを作るたびに ホロコースト関係の資料を読んでいたので、私自 身、アンネのことは知っているつもりでいた。一定の 世代より上の先生と語るとき共通しているのは、 『アンネの日記』は『親愛なるキティへ』から始まる 物語。そこには、隠れ家に身をひそめ、いつ捕まる かもしれないであろう恐怖と闘いながらも、けなげに 生きる少女アンネ、明るく元気な女の子のイメージ のアンネしかいなかった。もちろん、これまで、新たに 『研究版』・『増補新訂版』が出版されていること は知っていたが、改めて『アンネの日記』を読みかえ すことはしてこなかった。 今回、ご縁があってホロコースト記念館主催で 「アンネ・フランク展」を開催できることになり、『アン 『アン 増補改訂版』を読んでみた。私が子ど ネの日記 増補改訂版』 もの頃読んだ『アンネの日記』は、アンネの父、オッ トー氏の想いがあり、彼の手による編集がなされて いた。今、私が手にしている本の中には私の知ら ないアンネがいた。ユダヤ人というだけで強制収容 所に送られて命を奪われてしまうかもしれない恐怖 と闘いながら、身をひそめて暮らした 2 年間 1 カ月。 思春期ならではの彼女の想い共に、そんな暮らし の中でも精神的にも肉体的にも成長していく彼女 の姿が見える。死と隣り合わせの恐怖の生活の中 での周りの大人たちの大人げなさにもあきれてしま う部分があるが、それもまた等身大の人間として当 然の姿なのであろう。アンネがもし生きていたらどん な未来が待っていたのだろうと思わざるを得ない。 そして、それはアンネだけでなく、ホロコーストで亡く なったとされる 600 万人(うち子どもは 150 万人) すべての人に言えること。戦争という狂気がいとも 簡単に人の命を奪ってしまうことの恐ろしさを感じる。 アンネと同世代の彼方たちだからこそ、ぜひこの『ア ンネの日記』を手に取ってほしいと思う。 (図書館 末次雅子) 3 ナチスの時代について考える 映画『 フリーダム・ライターズ』 映画 『フリーダム・ライターズ 』 もともと、出版されたものを映画化さ れたもの。子供たちが「アンネの日記」 を読み、自分たちの境遇との共通点 を見いだしていく。講談社から出版さ れたものを持っています。 ★ミープ・ ミープ・ヒース/ ヒース/アリスン・レスリー・ゴールド(著) アリスン・レスリー・ゴールド(著) 深町眞理子((訳) 深町眞理子 思い出のアンネ・フランク』 『思い出のアンネ・フランク 』 文春文庫) (文春文庫 ) ミープ・ヒースの目線から見たアンネフラ ンクを知るにはこれかなと思います。 ★小川洋子 アンネ・ フランクの記憶』 『アンネ ・フランクの記憶 』 角川文庫) (角川文庫 ) 小川さんのアンネの記述は、わかりや すいです。 エディス・フェルマンス 『エディスの真実 ナチ占領下を生き抜いた少女』 (講談社) 講談社) アンネと同じ時代を生きた少女の 話。 (音楽科 手塚義浩先生) 思い出の中のアンネ ★ミープ・ヒース/ アリスン・レスリー・ゴールド(著) ★ミープ・ヒース / アリスン・レスリー・ゴールド (著) 深町真理子(訳) 『思い出のアンネ・フランク』 (文春文庫) (文春文庫 ) この本には、アンネ・フランクを 身近で見てきたミープさんが著作 されたものです。ミープさんは、 「あのような立場にいたら誰でもしただろうことをした にすぎない。ナチに見つかれば殺されると分かって いる人達を見殺しにできなかった。だから人間とし て当然のことをした。」と述べられたそうです。この本 を書かれるまでにはかなりの曲折があり、共著者で あるアリスン・レスリー・ゴールドの熱心な説得と協 力があって、初めて書かれたものです。とても貴重 な記録本なので是非、読んで下さい。(ルスティ) 勇気を持つこと。 ★白石仁章『六千人の命を救え! 外交官・ 杉原千畝』(PHP研究所) ★山田せいこ:漫画 古江孝治:監修 『杉原千畝 コミック版世界の伝記』(ポプラ社) 杉原千畝。今でこそ彼の名前は、第二次世界 大戦中にユダヤ人に「命のビザ」を発給した「日本 のシンドラー」と呼ばれた外交官」として広く知られ ている。だが、私が初めて彼の名前を知ったのは、 14 年ほど前のNHKの「その時歴史が動いた」とい う歴史ドキュメンタリー「6000 人の命を救った外交 官」という番組だった。第二次世界大戦の真った だ中、一人の外交官が当時の政府の命に背いて、 ユダヤ人にビザを発給したこと。その後、あらぬ疑い をかけられて外務省を辞さねばならなかったこと。 命を救われたユダヤ人が自分たちを救ってくれた 「センポ」という日本人外交官を探し続け、28 年た ってようやく巡り会えたこと。日本人で唯一「諸国 民の中の正義の人賞」を受賞したこと。多くのこと をこの番組で知った。その後、テレビ番組や映画な どで彼の功績が紹介され、多くの人が彼を知るこ ととなった。今年の 12 月には映画化もされる。ここ で紹介する本は、小学生からでもわかるように歴 史的な背景も含めて丁寧に紹介してある。ぜひ 今回の「杉原千畝展」をより深く理解するためにも 手に取ってもらいたい。誰かを救うために大きな決 断しなければならないときに、彼のように「大したこ とをしたわけではない。当然のことをしただけです」と 言える人間であるかどうか。彼のことを思うたびにそ のことを問われている気がする。 (図書館 末次雅子) 杉原千畝さんの意志 ★杉原幸子『杉原千畝物語』(フォア文庫) 杉原幸子『杉原千畝物語』(フォア文庫) 1939年、第二次世界大戦の 時、杉原千畝さんはリトアニアの 日本領事館の領事代理となり、 迫害されたユダヤ人のために日本 通過のビザを発給しました。その おかげで約 6,000 人のユダヤ人の 命を救いました。この行動は外務 省の命令に背くことであり、もちろん周りからの目は 痛いものだと思います。自分の意志を貫き通した 杉原千畝さんの行動は 6,000 人のユダヤ人の命を 救ったのに対し、もし外務省の命令通りにしていれ ば、この 6,000 人は救われず、それ以上の人間を 殺すことになったかもしれません。人間が争うのは 仕方ないことです。それを周りはどう見るのか、どう 動くのかが争いを止めるきっかけになることをこの本 は教えてくれたと思います。 (みたらし団子) 4 さほど変わらない日常の中に ★エルス・ペルフロム エルス・ペルフロム( 野坂悦子( (作)/ 野坂悦子 ( 訳) 『第八森の子どもたち』(福音館文庫) この作品を読みながら思い出 した映画があります。黒木和雄 監督の『TOMORROW 明日』と いう作品です。舞台は長崎。昭 和20年8月8日の朝から翌日 の昼前までの人々の暮らしを描 いています。朝ごはんのしたくを する母親。結婚式の準備に追われる家族。いよ いよ出産を迎えた若い女性。戦争末期でありなが ら召集令状が届き、恋人に別 れを告げようとする青年。戦時 下でありながら、今を生きる私 たちとほとんど変わることのない 日常が淡々と描かれていきます。 そして8月9日の朝が来て、また 人々の日常が始まり、午前11 時02分、原子爆弾が長崎に 投下される。巨大なきのこ雲のような原爆の映像 が映し出され、映画はそこで突然に終わります。そ の終わり方に、逆に強い衝撃を覚えました。 さて、今回紹介する作品、『第八森の子どもた ち』は第二次大戦末期のオランダの片田舎が舞 台です。この当時オランダは隣国のドイツに占領さ れ、都会に暮らす人々は町を追われ、避難民とな っていました。 この物語の主人公ノーチェは11歳の女の子で、 早くに母親を亡くし、アルネムという町で父親と二 人暮らしをしていました。しかしドイツ軍が侵攻して きたため、多くの市民がそうしたように、ノーチェたち も郊外へと避難せざるを得ませんでした。 クラップヘクという田舎の農家にたどりついた二人 は、家畜小屋の干し草で構わないから一晩だけ 寝かせてほしいと頼みます。その家の夫婦は戦争 が終わるまでこの家で暮らすよう勧めてくれます。 実際にこの作品の作者、エルス・ペルフロムは第二 5 次世界大戦当時10歳で、家族と共に町から逃 げ出し、縁もゆかりもない農家で終戦まで暮らしま した。この経験をもとに書かれた物語がこの作品で す。 主人公のノーチェは、ごはんの手伝いや家畜の 世話をして、徐々に農家の暮らしになじんでいきま す。この家の夫婦は、貧しく生活は苦しくても、困 っている人には手を差し伸べる心の持ち主で、ノー チェの家族だけではなく、戦火を逃れてきた人々を 何人もかくまって同居させていました。 ドイツ軍は連合国側の激しい攻撃を受け、じり じり追いつめられていきます。避難していたこの地 方にも空襲があり、ドイツ軍がこの家の食糧や家 畜を略奪していく姿を目のあたりにして、ノーチェは 何度も恐怖を味わうのですが、そうしたつらい局面 においても、この作品で最もていねいに描かれてい るのは平凡で穏やかな日常の暮らしです。 この農家の長男エバートはノーチェと年も近く、 いつも行動を共にする仲です。冬のある日、家事 の手伝いをしていたノーチェはエバートに次のように 話します。 「『戦争って、なんだかへんね』ノーチェはエバート にいいました。『すごくいやなこともあるけど、みんな といるから、楽しいことだってあるもの』『そりゃそうさ』 と、エバートはこたえました。」 2人のこの会話に、作者が何よりもたいせつにし たい思いが凝縮しているように感じます。そして初 めに挙げた『TOMORROW 明日』という映画と通 い合うものがこの物語にはあると思います。昨日と 今日、さほどかわらない日常の暮らしがある。起き て、家族とごはんを食べて学校に行き、帰宅して 家族と共に夕食をとり、自分のふとんで眠る。その 繰り返しの中に平和があることを、この物語は教え てくれている気がします。 (国語科 今泉建先生) ヴァイオリンに秘められた ★香川宣子『アヴェ・マリアのヴァイオリン』 (KADOKAWA) 皆さんは戦争を題材とした 本は読んだ事はありますか? 今回紹介するのは、21世紀 を生きる少女「あすか」と、あ すかが買ったヴァイオリンに隠さ れた物語です。この本は、す ごく泣けました。戦争をして喜ぶ人など、いない。 改めて、感じました。皆さんも、戦後70年経た今、 読んでみてください。 (かぁ C) 平和の天使であるために ウーリー・オルレブ(作) / 母袋夏生(訳) ★『走れ 、走って逃げろ』 (岩波少年文庫) (岩波少年文庫 ) 戦争の恐ろしさとは何でし ょう?たくさんの人が亡くなるこ と?恐ろしい兵器が作られる こと?私は、自分が自分で無 くなることが恐ろしいのだと、そ う思っています。今回の「図書館だより」のお話を 頂き、ひと夏、平和について色々と考えました。た だでさえ今年は節目の年。番組や展示、文章を 多く目にしましたし、考える機会も多く。なにを書こ う?なにで書こう?…そんな折に、職場で見かけ た本が『走れ 『走れ、 走って逃げろ』でした。本作はこの 『走れ 、 走って逃げろ』 夏映画化されたそうで、是非観たいと思っています。 少年が、戦争により自分を奪われる。そういうお話 です。戦争の話や記録をみると、信じられないよう な事が沢山起こります。ホロコーストもその一つで す。何故そんな事が起こるのか、出来たのか。常で あればしない判断を、戦争という環境は人にさせる のでしょうか。わたしはそうした事を見聞きする度思 うのです。自分が自分で無くなることが、怖いと。 今は否定していますが、私たちは出来るのです。 戦争も、なにもかも。これは戦争に限った事ではあ 6 りません。信じられないようなニュース、近頃多いで す。しかし私たちは出来るのです、そうした事が。 自分を失うというのは、恐ろしいことです。平和につ いてという此度のテーマを目にした時、真っ先に浮 かんだ言葉は、【平和の天使】でした。聖母の創 立者、メール・マリー・クロチルドの望みであり、 我々の使命です。平和とは何でしょう?戦争が無 くなれば、平和になるのでしょうか?大変難しい問 題ですよね。この世には色々な人がいます。平和 の形も人それぞれ。まずは家族や友を。もちろん皆、 一人一人の人間です。難しい事もあります。それ でも。一日でも、一言でも、いい。寄り添えるように いたいと思います。願わくば、OG 含め我々聖母に 関わる人間が、平和の天使でありますように。 (卒業生 かくちゃん) ふたつの「戦後」 ★熊谷徹『日本とドイツ ふたつの戦後』 (集英社新書) この本は日本とドイツの戦前の 様子、また戦後や第2次世界大 戦後のテロや戦争についても描か れています。日本とドイツは、物づく り大国・貿易立国として、ともにめ ざましい復興を遂げました。ですが 戦後 70 年経った今、日本とドイツには大きなちが いが生じています。そのことをメインにして戦後どの ように両国が歩んできたか、またドイツと日本のこれ からの発展や対策についてジャーナリスト視点から わかりやすく、面白おかしく書かれた本です。とても 理解しやすく、読み進めやすい新書なのでぜひ読 んだことのない人も挑戦してみて下さい。 (くゆるん) 平和とは ★百田尚樹『永遠の0』(講談社文庫) 大学生の佐伯健太郎と、出版 社に勤める姉の慶子は、亡くなっ た祖母・松乃の四十九日から暫く した頃、祖父・賢一郎から彼が自 分たちの実の祖父ではないことが 知らされます。そして、本当の血の つながりのある祖父は宮部久蔵という名前だと分 かります。この宮部久蔵という人について、健太郎 と慶子は調べ始めると、零戦の天才パイロットだと いうことと、パイロットの中で一番臆病者と言われて いたことが分かります。臆病者のはずの宮部久蔵 が、なぜ周囲の反対がありながらも特攻隊に志願 して、帰らぬ人になったのか、その理由を見つけると いう内容です。 (U) なんで蛍すぐ死んでしまうん? ★高畑勲(監督)・野坂昭如(原作) 『火垂るの墓』(スタジオジブリ) みなさんはこの作品をご覧に なったことがありますか?ものす ごく悲しい物語です。この作品 は、昭和、戦時中が舞台です。 母を亡くした幼い兄弟、清太 と節子が誰の力も借りずに二 人だけの生活を始めます。貧 しくても笑い声が溢れる生活でした。たくさんの蛍 を捕まえて蚊帳の中に放ったりしました。その蛍が 死んでしまうと節子が「なんで蛍すぐ死んでしまうん」 と言います。ものすごく悲しくなります。ですが、4 歳 と 14 歳で、精一杯生きようとした兄弟の感動スト ーリーです。戦争とはどういうものなのか一番わかる お話だと思います。一度みてください。 (クロ) 実在した伝説の野球チームの奇跡 ★テッド・Y・フルモト 『バンクーバー朝日 日系人野球チームの奇跡』 (文芸社文庫) 100 年前のカナダに、伝説の日 系人野球チームがあった。その名は 「バンクーバー朝日」。過酷な労働 と貧困、人種差別に苦しむ日系人 にとって、彼らは唯一の希望の光だ った。日系人排訴暴動をのりこえて 力をつけ、あくまでもフェアプレーを貫きとおす選手 たちの情熱は、徐々に白人たちの心も動かしてゆ くのだが……。映画化したのですが。まず本から読 んでみてください。 (ARS) 最後に自分を守るもの。生きていくために 必要な「想像力」の力を感じる 2 冊 ★今日マチ子『cocoon ★今日マチ子『 cocoon コクーン』(秋田書店) 想像する。現実から離れるた めに…。沖縄の「ひめゆり学徒 隊」をモチーフに漫画家今日マ チ子が繊細な表現で著した作 品。どうしても逃げられない「戦 争」という現実からひと時でも逃 れるために主人公サンは空想 する。“安全な繭に守られている蚕であったなら…” さっきまで隣にいた友だちが次の瞬間には帰らぬ人 となる、戦争の無常さ、残酷さ、その中で生きるし かなかった少女達。キラキラした青春、恋、そんな 時間を戦争によって奪われた彼女たちの思いが胸 に迫る作品です。 (図書館 宇野珠代) 7 ★内田樹『街場の戦争論』 (ミシマ社) 想像する。これからを生き延 びるために…。「日本は次の世 紀にどのようになっているか想像 してみる。」という企画から生ま れたという本作。思想家内田樹氏が「戦争に負け た」ことで私たち日本人が失ったものを自覚する事 の大切さを語る。「もしも」という仮定から見えてくる 新しい景色。知らなかった!という驚きとともに無 自覚、無感覚に慣れることの怖さを感じて夢中で 読みました。これからを生き延びるために必読の一 冊! (図書館 宇野珠代) 自分で考えてみること ★石井光太 1945‐ 戦争が生んだ子供たち』 『浮浪児 1945 ‐: 戦争が生んだ子供たち 』 新潮社) (新潮社 ) 私たちの日常はあまりにも平 和で、それが当たり前のように ずっと続くのだと思っている(また はそんなことも考えないのが平 和そのもの)。だけどそれもふい に崩れ去ることがあるのは知っ ている。災害や事件、戦争で日常が分断されるこ とを知っていたとしても、その痛みは本人以外は薄 れていってしまうのは仕方のないことかもしれない。 私たちには毎日膨大な情報の波が押し寄せてくる が、それをただ受け取るだけでは何の糧にもなって いない。世界の国々のこと、どこかで起こっている 紛争、 災害や事件、そして歴史。他人を、また 自分とは関わりあいのない出来事を完全に理解し ようなんておこがましいにもほどがある。だけど、知 ろうとする、想像してみる、考えてみることはできる。 そうすることで少しは近づくことができるのはないだろ うか。「平和について考える」ことは決して日常から かけ離れたことではないのだ。人の意見、常識では 8 なく、得た情報について自分で考えてみることが重 要なのだ。さて今回おすすめしたいのは石井光太 石井光太 という作家である。『 1945‐ 『浮浪児 1945 ‐: 戦争が生ん だ子供たち』 だ子供たち 』では焼け跡の東京に生きた子供たち はどこへ消えたのか?という歴史の光の当らない部 分に焦点を当てた。現在ぎりぎり存命の元・浮浪 児を追って戦争が生み出したものを見つめなおす 機会を与えてくれる作品である。ニュースなどでは 報道されない真実を丁寧に すくいあげる石井の作品には 常に考えさせられる。字が多 いのはちょっと、という人には、 ★マララ・ユスフザイ(述)・石 マララ・ユスフザイ(述)・石 井光太(文)『 井光太(文) 『 ぼくたちは な ぜ、学校へ行くのか。:: マラ ぜ、学校へ行くのか。 ラ・ユスフザイさんの国連演説 から考える』(ポプラ社) (ポプラ社)を、ノン から考える』 (ポプラ社) フィクション好きには『 『 石井光 太責任編集 ノンフィクション ---世界を 世界を変える、 新世紀 --世界を 変える、 現実を書く。』(河出書房新 現実を書く。』 (河出書房新 社)をおすすめする。 社) (卒業生 いつこ) いまの平和な日本と私たちがあるのは……。 映画『日本のいちばん長い日』 映画 『日本のいちばん長い日』 (原田眞人 脚本・監督 松竹配給) 戦後 70 年をテーマにした報 道や番組を、この夏多く目にし たことでしょう。この映画も話題 になっていましたので、テレビ等 で紹介されたものを観たり、もう すでに本編を観たよ!という人 もあるかもしれません。実は私 はこのタイトルの作品を一度観ていたので(!?)今 回も何としても観たいと思い、お盆前の月曜日 (料金が安くなるのです…)、足を運びました。 この映画は太平洋戦争終戦の日までの数日 間を中心に起こった、政府・軍部の終戦か徹底 抗戦かをめぐって繰り広げられる出来事(史実)を 描いていて、映画化されたのは 2 度目です。そう、 私は昨年の終戦の日を前に、DVDで 1 度目の作 品(1967 年、岡本喜八監督)を観ていたわけなん ですね。今回作を観て、単なるリメイクではない進 化した作品をみた気がして、また新しい感慨があり ました。第 1 作と今回作での最大のちがい、それは 前者では真正面からの描写がなかった(でも終戦 の決断には欠かせない)昭和天皇がはっきり描か れていたことです(本木雅弘さんが演じています)。 その様子は字数の関係で省きますが、時代が経 つにつれ新たにわかったことが上書きされていく(在 位時の公式記録である「昭和天皇実録」が昨年 より順次公開されていることが、この映画にも大き な影響を与えています)と、映画の描き方もこうも 変わるのだな、ということを知ることができました。一 方で前作と変わらず考えさせられたのは、国家の 運命を左右するリーダーたちの責任の重さと、日 本をどの方向に導こうとしたかの立場以前に彼 (彼女)らの奔走ぶりをもっと多くの現代の私たちが 知るべきではないか、ということです。この時の人々 の思いと行動を礎にして、いまの平和な日本と私 たちがあるのですから。 (社会科 大迫孝士先生) おびえることのないような社会を作るべきだと強く思 う。 だが、戦争の恐ろしさは生命の危険におびえる ことだけではない。むしろそれは副次的なもので、 真の恐ろしさは人が人間性を失うことではないだろ うか。ある一定の方向に流れていく世情に巻き込 まれ、人間の尊厳を軽んじてしまうことのように感じ るようになった。 妹尾河童氏の作品『少年H』。彼の自伝的回 想から記された作品であり、テレビドラマ化・映画 化もされている。実際の空襲のシーンはほとんど描 かれていないが、少年の目を通して当時の民衆の 様子が淡々と描かれている。戦争という大義名分 にとらえられ、その枠の中に組み込まれていなけれ ば非難を浴びるような「空気」。もちろん妹尾氏自 身も違和感を覚えながらその「空気」にのまれてい た部分もある。戦争の恐ろしさはその「空気」にあ るのではないだろうか。個人的にはどこか違うと思っ ていても、周囲の雰囲気に抗うことも声を上げるこ ともできずに、ただ同じ方向へと向かざるを得ない 「空気」は、人から「人間性」を見失わせてしまう… …。それを強く感じさせる作品だった。 戦争の悲惨さを説く本は沢山あるが、人が人 間性を失くしていく「空気」を作り上げてしまうことを 丁寧に書いた作品は数少ない。戦争は決して一 部の人がさせているものではない。民衆が戦争とい う「空気」を作りだしてしまうことも、「戦争」に加担 してしまうことを忘れてはならないのではないだろう か? (国語科 和田雅裕先生) 怖いのは「空気」 ★妹尾河童『少年H』(講談社) 半世紀生きてきた私も、戦争 を知らない。戦争の恐ろしさを知 らない。私の父母は一番青春を 謳歌できるときに戦争を体験して いるが、残念ながらあまり話を聞 いたことがない。ただ、平和教育 は受けてきたし、様々な体験者から生々しいお話 を聞いてきて、ある程度の知識はある。それは大 切なことで、不条理に生命を奪われる恐ろしさに 9 戦争は本当にすべてのものを奪っていく ★石浜みかる 『あの戦争のなかにぼくもいた』(国土社) この物語は、作者である石 浜みかるさんと父とその家族の 経験をもとに、戦前・戦中の出 来事が描かれている物語です。 戦時下、歯科医をしながらキリ スト教(ホーリネス)の伝道をし ていた石浜さんの父親・石浜 義則さんは、「天皇陛下は神 ではなく、人です」と言ったことで特高警察にひっぱ られてしまいます。本書でも、「三月の二十六日に、 おとうさんといっしょに信仰を持っている東京の人た ちがつかまったとき、おかあさんは、「ホーリネスの人 たちは、『神社で参拝することは、自分たちの信仰 的良心に反するから、参拝しません』と、内務省の 役人にはっきりいっているので、内務省の役人はと てもおこっているらしい。あの人たちも同じように見 せしめにされるだろう」と、おばあちゃんに話していた。 そのとおりになったのだ。警察は内務省に属してい た。ホーリネスの人たちも、非国民ということでつか まったのだ。」とあるように、多くのホーリネスの信者 や牧師は捕まり、投獄され、獄中死することもあり ました。石浜さんの父親も治安維持法違反の容 疑で特高警察に捕まり、家に残されたのは母、祖 母、兄、そして主人公の少年と妹だけになってしま いました。舞台は、神戸市です。伝道者の父親は、 先には神宮不敬罪で逮捕されたことがあったが、 その後も屈することなく街頭にたってキリストの福音 を語り続けていたのです。逮捕は皇紀二千六百 年奉祝記念のあった翌 1941 年 10 月のことで、2 ヵ月後には真珠湾攻撃が迫っていた。日本はまる ごと戦争の濁流のなかを暴走して行く時代でした。 その時、流れに呑まれることなく、キリストの真理に 踏みとどまろうとした伝道者とその家族、子どもたち はどのような歩みをしたのか。それが、具体的な生 活のなかで描かれています。 父は裁判の結果、 10 広島の刑務所で懲役を受けることになり、家族は 広島から 60Km ほどの母親の実家のある瀬戸内 の島に疎開することになります。島は、当時の日本 の縮図のようであり、子どもたちの小さな社会も同 様でした。まず、神戸という都会から地方の村に疎 開してきた人間を村の子どもたちが容易くは受け 入れてはくれない。よそ者扱いをされ、ここでも差 別されるのです。慣れない土地で、よそ者扱いをさ れ、その上、父親がキリスト者で刑務所に入ってい るということを隠しての生活は、とても重苦しく辛い ものだったと思われます。しかし、ある日を境につい に村の人に父親のことが知れ、周りからは「父親は スパイ(キリスト教は敵国・アメリカの国の宗教と思 われていた)をしている。息子のお前も徴兵された ときにゃ、鉄砲の弾の代わりに最前線送りじゃ」とい う言葉を浴びせられます。そして、父親も歯科医 師免許取消し処分。刑期が終わって帰ってきても、 もう歯医者はできなくなってしまったのです。大本 営発表に踊らされる国民たち、次々に徴兵されて いく男たち、やがて戦局が急変して行き、本土空 襲が始まり、故郷の神戸にも焼夷弾の雨が降った という知らせ。そして、あの 8 月 6 日広島の原子爆 弾…。父はどうなってしまうのか。戦争は人の命も 奪いますが、人権も奪ってしまいます。自分の信 仰を大切にしたために刑務所に入れられた父親。 非国民の子どもとしていじめられ、差別された子ど もたち。事情を語れないまま苦労したこの家族の 物語を読むと、戦争は本当にすべてのものを奪っ ていくのだと感じます。 (宗教科 谷香澄先生) 戦争文学の代表作 ★大岡昇平『野火』(角川文庫) ようやく館子先生と同業者にな って久々に母校を訪れたら、原稿 を依頼された。ぬかりない司書教 諭だ(笑)。テーマは「平和について」 でネ、アンネ・フランク展をネ…… などの話を聞きながら、私の脳裏 には、何もない焼け野原に空高く 続く 1 本の煙が浮かんできた。高 3 の現代文で読 まされて浮かんだ絵だ……タイトルは確か『野火』。 教科書ではなく、福井治男先生がザラ紙で配布 されて、しばらく読んだ記憶がある。「一つの丘から 野火が上っていた。海草のように揺れながら、どこ までもどこまでも、無限に高く延びていた。」職場の 書架にあった『野火』からこの一文を探しだした。こ ういう本はなかなか自分からは読まない。この機会 にもう一度読んでみようかという気になった。 (卒業生 杏子) パンプキン爆弾を知っていますか? ★令丈ヒロ子 『パンプキン! 模擬爆弾の夏』 (講談社) 戦後 70 年の夏、あなたは何 を感じたのだろうか?中学の修 学旅行で初めて広島を訪れた。 私が通っていた中学にとって初 めての広島への修学旅行。事前学習にも時間を かけ、教室後ろの掲示板一面に原爆被害の写 真が貼られ、国語の授業は、嵯峨信之の「ヒロシ マ神話」だった。広島の原爆資料館を訪れた時の 衝撃は 40 年近くたった今でもよく覚えている。展 示物の中のそこにいた人の影が焼付いた石段を 見た時は涙がとまらなかった。世界中の人がこの 地を訪れて、戦争がもたらす悲劇を知るべきだ! と 15 の私は強く思った。原爆の標的になったのがヒ ロシマ、ナガサキだけではなかったことはよく知られて 11 いる話だ。だが、その原爆投下の練習として日本 各地に 49 発の模擬爆弾、通称パンプキン爆弾が 落とされた事実は余り知られていない。この本は、 『若おかみは小学生!』の作者である令丈ヒロ子 さんがその事実を知って書き上げた物語。主人公 ヒロカ(小 5)がひょんなことから模擬原子爆弾(通 称パンプキン爆弾)のことを知る。そこから、ヒロカは いろんなことを疑問に思い知ろうとしていく。パンプ キン爆弾のこと、原爆のこと、戦争のこと……。知 ろうとしなければ真実は見えてこない。知らないで はすまないことがある。この物語の主人公たちと一 緒に学んでいってほしい。自分たちの平和を守るた めに。 (図書館 末次雅子) 戦後 70 年 沖縄を思って ★仲宗根政善 『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』(角川文庫 角川文庫) 『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』( 角川文庫 ) 太平洋戦争唯一の地上戦が 行われた沖縄。その凄惨さは多 くの書物や映画になって人の目 に触れているので、いまさら私ご ときが書くことではないのかもし れない。私が小学校2年生の 時に沖縄が日本に返還され、 中学生の時に車が左側通行になった。きっと私た ちの年代は、まだ沖縄が戦争の重荷を背負ってい ることをリアルタイムで経験していた人も多いのでは ないかと思う。「戦争の爪痕=沖縄」の図式は、 私たちの中に染みついているのではないだろうか。 特に「ひめゆり部隊」の様子を描いた『ひめゆり の塔』(石野径一郎の小説)は戯曲化され、映画 化された。映画はストーリーを新たにしたり役者を 変えたりして、何度も上映されてきた。だが、皆さ んに読んでほしいのは『ひめゆりの塔をめぐる人々 の手記』(仲宗根政善・著)の方だ。こちらはひめ ゆり部隊で生還した人の生の声を綴ったもので、と ても生々しい。小説ではないのでストーリーはない が、「戦争」を直に経験した方の貴重な、そして伝 え残さなければならない「戦争」の姿があると思う。 映画も、この手記を書いた実在の人々をモデルに して、各エピソードを丁寧に再現した 1995 年のも のが一番優れていると思われる(仲宗根氏はひめ ゆり部隊を引率した教師。この映画の封切の日に 他界した)。 中学3年生は沖縄に修学旅行に行く。もちろん 県の南部にある戦跡もそのコースに入っていると思 うが、あまり意識はしていないであろう。しかし一つ だけ気にしてほしいことがある。当時の沖縄の人に とっての敵は連合軍だけではなく、「大和人(やまと んちゅ)」と呼ばれる本土の人間も含まれるというこ とを。 (国語科 和田雅裕先生) 私たちはどこまで理解しているのだろうか ★こうの史代『夕凪の街 桜の国』(双葉社) 終戦から 10 年経った広島 で生きる若い女性の姿を描い た『夕凪の街』。彼女は、美し いものを見たり幸せを感じたり するたびに、原爆が落とされた ときの情景を思い出し、自分 は生きていていて良いのかと自 問しながら過ごします。その弟が大人になり、娘や 息子とともに過ごす、家族が描かれた『桜の国』。 原爆が落とされた地から遠く離れたところでは、原 爆の悲惨さについてどれだけ理解されていたのか。 そして今生きる私たちは、今後二度と繰り返され ることのない遠い過去の出来事、と他人事のよう に思っていないか。そんな風に考えさせられる1冊 です。戦争の描写は少なく、読みやすいマンガで す。 (数学科 西邨奈穂先生) 少女が見た沖縄戦 ★比喜富子『白旗の少女』(講談社) 沖縄戦という言葉を聞くと、 多くの人がひめゆり学徒隊と思 い浮かべると思いますが私は白 旗の少女を思い出します。この 本は、比嘉富子さんが子供時 代に体験した沖縄戦の記憶を 記したものです。太平洋戦争 最大の激戦地の 1 つである沖縄本島南部におい て、たった一人で白旗を持ち、アメリカ軍に投降し た比喜さん。ある日突然始まった戦争で家族を失 い、たった一人で生き延び、おじいさん、おばあさん と出会い、一人でアメリカ軍に投降するまでが当 時七歳の少女の目線で描かれています。戦争で 起こった悲惨な事実に目を背けたくなるかもしれま せん。けれど戦後七十年目を迎え、当時を知る 人が減りつつある今、私たちは改めて戦争につい て知る必要があるのではないでしょうか。(MONO) 伝えること……。 ★筒井茅乃 『娘よ、ここが長崎です』 (くもん出版) 亡くなった祖父が戦争に行 って帰ってきたのは知っていた。 でも彼は本当に無口な人で 私がその口から直接戦争とい う話を聞いたのは、祖父が癌 で病床にいたときだった。肺の癌でひどく苦しそうだ ったから、見ていて本当に辛くてつい、「生きていて しんどい?」と聞いてしまった。後で聞くと母も「死ん だほうがいい?しんどい?」というような問いかけを していたようだ。やっぱり親子やなぁ、という話では なく、え、お母さんの言い方のほうがひどくない?と かいう話でもなく、その時の祖父の返事についての 話がしたかったのである。彼は、生きていたら良いこ ととか楽しいこととかがあるから生きていたい、と答え 12 て、戦争の時のことを考えたらなんてことないと続け た。私が 10 代の終わりの頃の話で、それまでは歴 史の教科書と新聞の中の話で、夏になったらやた ら放送されるテレビ番組くらいのイメージでしかなか った戦争というものが、急に近く感じた一件だった。 でもそこから戦争について深く考えるとか探究心を 持って調べてみるとかそういう行動にでたわけでもな く、気が付くと二歳の娘に「戦争ってなに?」と聞か れて困っていた今年の夏。久しぶりに平和について 戦争について考えることになった、のはこの原稿の ためというのが情けない……。因みに娘はただ E テ レの「おじゃる丸」が「戦争ってなんじゃ?まろに教 えてたも……」と言っているので私に聞いただけだ が、おじゃる丸のこの回は何度見ても泣いてしまう。 シンプルに「戦争すると大切な人がいなくなる」とい うことが心に刺さる。そして、親はいつこどもに戦争 について話すのだろう、なんと説明するのだろう、と いう疑問にもぶつかった。 この『娘よ、ここが長崎 『娘よ、ここが長崎 です』は、確か中学校の夏休みに読書感想文を です』 書いた覚えがある。でも表紙も変わっていて図書 館で手に取ったときはしばらく自分が読んだことのあ る本だとは気付かなかった。読み返してみて「この 本選んで手抜きと思われないかなぁ」などという私 の小さな見栄はとっととどこかに去っていった。作者 の筒井茅乃さんが永井隆博士の娘だということは 覚えていた。でも彼女が自分の父と同じくらいの年 齢であること、その娘さんがだから私とそう変わらな いくらいの年齢であることは忘れていた、のか、気に もせず数えてみることさえしなかったのか、それは分 からないけれどとにかくそのことに気付いた瞬間、わ っと内容が近くに来た気がした。ふと思いついて『ア ンネの日記』のアンネの年齢を数えてみた。若くで 亡くなって気の毒だとか可哀想だとかいうことは思っ ていたけど、生きていたらいくつなんだろうと思ったの は初めてだったので数えてみて驚いた。またもや戦 争が「昔」ではないことを強く思った。長崎で原爆 にあった筒井さんでさえ、娘にどのように戦争を、原 爆を伝えればいいか悩まれていた。私が娘に何を 13 話せるだろうか、伝えられるだろうか、そう思いなが ら読み終えた。戦争の悲惨さ平和の尊さを伝える、 と書いただけで伝わらないことが分かる。何故なら 娘だった私には伝わらなかったから。意味は分かる。 でも伝わらない。わかっているけど、伝わらないかも しれないけれど、しかし伝える努力をしていかなけ ればいけないんだろう、と思う。中学生の私はもっと 賢いことを書いていたような気がする。けれど、今の 私が平和について考えるとき、それは娘のことを抜 きにしては考えられない。だから考えがぐるぐるして しまう。おじゃる丸が閻魔大王に、戦争をなかった ことにしてたも、と頼んだとき、閻魔大王は起こって しまったことは戻せないし、いなくなったモノは帰って こない、わしが出来るのは戦争を起こした人間が わしの前に来たときこっぴどく説教することくらいじゃ、 という意味のことを話す。人間は説教も文句も言 えず、ただ大切な人や自分の生活や健康や、そう いうもの全てが失われてしまうだけ。争いで解決す るものも得るものもない、ただ失うだけ。「お友達と 仲良くね~我慢もするのよ~他の子が持ってるも の取り上げちゃだめよ~人を叩いたらダメなのよ~ 自分もされたら嫌でしょう、やめておこうね~ごめん なさいは?~」娘を含め小さなこどもたちは親や周 りの大人に日々こんな風に言われて過ごしている。 大人がおかしてきた過ちを、今もおこっている戦争 を、他人と仲良くせよと言ったその口で私はどんな ふうに伝えるのだろう。ただ失うだけ、だということを。 (卒業生 知) 永遠に記憶に刻まれるべき稀代の反戦映画 ★映画『ジョニーは戦場へ行った ジョニーは戦場へ行った』 ★映画『 ジョニーは戦場へ行った 』 原作・脚本・監督(1971年) ドルトン・トランボ 原作・脚本・監督 (1971年) 終戦から70年目を迎え、戦争 の記憶が薄れていくこの社会で、 徐々にきな臭い雰囲気が広がり つつあることに言い知れぬ不安を 感じているのは私だけではないだ ろう。政治の世界では平和の名 の下に戦争が正当化されるような状況が整えられ つつある。 そもそも、これまでのすべての戦争は自衛のため に行われてきた。あのヒトラーでさえ、ゲルマン人を 守るためにという名目で侵略行為を行った。15年 戦争(満州事変、日中戦争、太平洋戦争を含む 1931年から1945年の間)の時の日本も同様 である。したがって、平和をかかげて戦争に突き進 もうとする国家権力の言説に惑わされてはいけな い。 このような問題意識のもとで私はこれまで多くの 戦争の映画を見てきた。「シンドラーのリスト」「プラ トーン」「地獄の黙示録」「戦場のメリークリスマス」 などなど、あるものは戦争のリアリティを追求し、あ るものは戦争を美化するプロパガンダ(㊟1)であった りする。他にも何か良い戦争映画がないものかと 探している時に出会ったのがこの映画である。この 映画は特に銃弾が飛び交ったり、爆弾が投下さ れたりというような激しいものではない。主人公の 意識やその空間を中心に物語が淡々と進んでいく。 この映画を見る者の心は希望の光を求めながら 主人公の感情と強くシンクロしていく。 この映画を見終わった瞬間に襲う感情は、底な しの恐怖と絶望。そして、どん底の絶望から這い 上がるために、私たちは現実の社会で今まさに起 きていることに無関心ではいられなくなる。知らない こと、知ろうとしないことは罪である。知っているのに 無関心を装うのは大罪である。私たちは「知ること」 によって初めてアンガージュマン (㊟2) していき、実 存的な存在として生きる意味を見出すのである。 ちなみにこの映画のDVDが学校の図書館にあり ます。ぜひご覧ください。 (社会科 中田悠志先生) 編集部㊟①プロパガンダ(propaganda):宣伝。特に、あ る政治的意図のもとに主義や思想を強調する宣伝。 ②アンガージュマン(〈フランス〉engagement):参加。特に、 知識人や芸術家が現実の問題に取り組み、社会運動 などに参加すること。 14 平和の大切さを教えてくれる ★狩野富貴子『ちいさなチャンタラ』 女子パウロ会 パウロ会) (女子 パウロ会 ) アジアの難民キャンプにボランテ ィアに行っているタカさんのところに 行きたいけれど行けない、深い心 の傷をおった女の子チャンタラが、 少しずつ心をひらいていくお話で す。子どものころ、両親が私に買ってくれた絵本で す。読んだとき、華やかでもない、楽しくもない、そ んなお話なのに、心惹かれました。チャンタラの幸 せを願ったこと、こんなことが実際にあるのかと衝撃 を受けたことは今でも覚えています。罪のない子ど もが深く傷つき、それでも立ち直ろうとする姿は、平 和の大切さを私たちに教えてくれます。 (国語科 福井由佳先生) 「平和を考える!」 ★押井守 『TOKYO WAR MOBILE POLICE PATLABOR』 KADOKAWA) (KADOKAWA ) 当たり前のように続くと思ってい た平穏な日々が、ある日突然、 終わりを告げる──近未来の東 京、「戦争」を仕掛けたテロリスト に若い警察官たちが挑む 『 TOKYO WAR MOBILE POLICE PATLABOR 』 (押井守)は、何事も起こらない「はずの」現代の (押井守) 日本において、実は「平和の仕組み」が意外に脆 く、誰もが「まさか」と思うような要因で、日本の首 都が戦闘に巻き込まれてゆく過程をリアルに描きま す。そして物語の終盤、若い警官たちを現場で束 ねる指揮官の後藤は、自己保身に汲々(きゅうきゅう) とし、最悪の事態に陥ってなお打開策を打ち出そ うとしない上官たちに「遅すぎた」と言い放ちます。 それは確かに後藤が愚かな上官たちに向けた言 葉ですが、同時に、自動的に平和な毎日が続くと 信じて疑わない一般の人々、ひいては本のこちら 側にいる私たち読み手に対する著者の警告なの かもしれません。ぐいぐいと読めるエンターテインメン ト小説でありながら、戦争とは何か、平和とは何か を考えさせられる一冊です。 (卒業生 かわうそ) 武器を捨て、 ファッションの靴音を響かせることで平和を願う ★ダニエーレ・タマーニ 『SAPEURS the Gentlemen of Bacongo』 Bacongo』 (青幻舎) みなさんは「サプール」とい う集団がいるのをご存知で しょうか?1990 年代の内 戦などでインフラは破壊さ れ、経済は壊滅状態となっ ており、世界最貧国の 1 つ と言われているコンゴ共和国。未だに内戦も頻繁 に起こり、衛生環境も良くない国だと言われていま す。しかし週末になると、バコンゴ地区のメインスト リートではカラフルなハイブランドのスーツに身を包 んだ紳士たちが、優雅に、時にはコミカルな動きを 交えながら歩いていく…そんな姿を見ることができ ます。彼らこそが「サプール」と呼ばれている人たち です。彼らは普段はサトウキビやパーム油、農畜 産物を育てながら生活をしています。それは決して 裕福な生活ができるものではなく、月収は300ド ル(約3万円)ほどです。なんと彼らはその月収の 半分以上をファッションに費やしているのです。なぜ 彼らはそんなにファッションにお金をかけるのだろう。 これが私の最初の印象でした。しかし、彼らのサプ ールとしての精神や、ルールに触れていくうちにどん どん彼らに引き込まれていきました。幾度となく内 戦の起こるコンゴ共和国。そんな中、彼らは武器 を捨て、ファッションの靴音を響かせることで平和を 願い、主張していくことを選択しました。今や彼ら は非暴力・平和の体現者として存在しています。 「高級な服の内側に、人間は高貴さを備えていな ければならない。SAPEURS とは、人生における選 択だ。」平和を願い、紳士として全力で生きている 彼らの生きざまにぜひ触れてほしいと思います。 (国語科 福岡真帆先生) 戦争時の報道について 門奈直樹『現代の戦争報道』((岩波新書 岩波新書)) ★門奈直樹『現代の戦争報道』 「現代の戦争は情報戦争」と言われ ているそうです。このように戦争の行方 はマスメディアのありように大きく左右さ れ、英国 BBC を初めとする欧米のメデ ィアに精通する著者が「湾岸」から「イラ ク」に至る九十年代以降の戦争報道 を分析し、新しい時代の戦争におけるメディアの役 割、またグローバルジャーナリズムの可能性と問題 点を浮き彫りにする、という内容です。私は歴史が 苦手ですが、とても読みやすかったです。(KNY) 「日本国憲法と私たちの身近な平和」 ★日野原重明 『十代のきみたちへ 『十代のきみ たちへ ぜひ読んで ぜひ読んでほしい憲法の本』 (冨山房インターナショナル) 日本国憲法って私には関係な いじゃん、別に生活するうえで日 本国憲法なんて使わないし、と思 っていませんか?実は、日本国憲 法があるからこそ私たちの生活は あるんです!そんなこと言われても 日本国憲法って難しい言葉で何書いてあるか分 からないし、という声が聞こえてきますね。しかし、こ の本は十代のみなさんが読みやすいように日本国 憲法を分かりやすく説明してくれています。また、こ の本には「平和」に関することも書かれています。 日本国憲法によって私たちの生活が「平和」が守 られていることを教えてくれています。日本国憲法 から見る「平和」というものを考える材料としてこの 本をぜひ読んでみてください。 (卒業生 あっちゃん) 15 虐殺をうみだすモノとは ★伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫) 日本は平和だがこうしている間に も争いに巻き込まれて亡くなってい る人たちがいる。その事を実感した のは卒業後だ。今回紹介するのは 実際に起こった話ではないけれど 戦争というのはこういうものだと分か って貰いたい。9.11 以降テロからの恐怖から逃れる ためアメリカは徹底した情報管理システムを構築し ていた。しかし、他国では紛争や虐殺が急激に増 加している。米軍大尉クラヴィス・シェパードに「ジョ ン・ポール」という紛争が激化すると忽然と姿を消 すアメリカ人の追跡ミッションが下される。虐殺はな ぜ起こるのか生と死など様々なことについて考えさ せられる一冊。11 月に映画化もされるので是非そ ちらもみて欲しい。 (璃音) わたしはまず何をしたらいいの? ★後藤健二 『ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白』 子ども兵士・ムリアの告白 』 汐文社) (汐文社 ) 皆さんは、日本の平均寿命を 知っていますか?日本の平均寿 命は、男性が 80.50 歳、女性 が 86.83 歳。実は日本は最も長寿の国で、男女 平均が 84 歳です。では、逆に世界で一番、平均 寿命が短い国はどこか知っていますか?それはアフ リカのシエラレオネ共和国という国です。男女の平 均寿命は驚くことに 46 歳なんです!!その理由 は、政府軍と反政府軍との内戦にあります。良質 なダイヤモンドの生産地として知られているこの国 は、その利益もすべて戦争に使われていました。こ の本の著作者である後藤健二さんはこの国で何 が起っているのか知りたいと思い、ビデオカメラを手 にシエラレオネに向かいます。そこで出会ったのは、 兵士たちに手足や耳などを切り落とされたという 人々でした。反政府軍は戦争をしかけるためにダ イヤモンドを手に入れようと鉱山のある地域を次々 と襲い、支配していきました。彼らは抵抗する人た ちを捕らえ、手足を切り落とすという残虐な行いを 繰り返していきます。しかも、何と銃を持った反政 府軍の兵士のほとんどが 10 歳前後の子どもたちだ ったのです。そして、後藤さんは元兵士だった少年 ムリアに出会います。少年たちは身体に傷をつけて 麻薬を埋め込まれ、戦闘マシーンとして戦わされて いました。決して自分たちの意志などではなかった のです。ムリアは語ります。「神様が創った人を、人 が殺してはいけない。たった一度でも、人を殺した ら、そのことは決して消えないよ。」シエラレオネは 今、明るく静かな戦いのない街になっているようで す。戦争の傷跡は、表面的には見えなくなりつつ あります。しかし、戦争の後、経済の復興がなかな か進まない中で十分な収入が得られず子どもを 養えない家庭が増え、ストリート・チルドレンも増え ひとりひとりの力で! ★黒柳徹子・木村草太他 『世界を平和にするためのささやかな提案 14 歳の世渡りシリーズ』 (河出書房新社) 「平和」ってどのようにして作る ものなのだろうか。私一人が声を 上げたところで世の中が変わる わけではない…でも、本当に黙 っていていいんでしょうか。戦争 は過去のモノ?遠い世界のコト?いえいえ、私た ちの身の回りでも戦争とはいかなくても争いはあり、 今生きている場所で生き難い=平和でないことは 多々あるわけで……。この本は 22 人の著名人が それぞれに提案してくれています。あなたの心に響 く言葉がこの本の中にあるかもしれません。世界の 平和は、一人一人の平和から始まるのかもしれな い。そして、平和な世界を作れるのは私たち一人 一人の力なのかもしれません。10 代の貴方たちに 期待します! (図書館 末次雅子) 16 ています。その中には、元兵士の少年たちもいます。 戦争が終わっても家族や親戚もいなくて家に帰る ことができない、あるいは家族や地域からも受け入 れてもらえないことがあるのです。このように、一度、 戦争が起ってしまえば、様々な影響が出てきます。 後藤さんは後書きにこのように書いておられます。 「わたしたちは戦争で傷ついた人たちにさまざまな 方法で手をさしのべなければならないと思います。 今、自分が生きているこの時を同じように生きてい る人(隣人)に、わたしはまず何をしたらいいのか? この本が、そう考えるきっかけになってくれればと願 います。」ぜひ、この本を読み、皆さん一人ひとりが 世界中にいる隣人に何ができるのかを考える時を もっていただきたいと思います。 (宗教科 谷香澄先生) 子どもたちに平和な未来を! 安里有生・詩 長谷川義史・画 『へいわってすてきだね』(ブロンズ新社) ★『へいわって すてきだね』(ブロンズ新社) せんそうは、おそろしい。 「ドドーン、ドカーン」 ばくだんがおちてくる こわいおと。 へいわな せかい。 へいわって すてきだね。 大自然の持つ浄化能力 ★宮崎駿『風の谷のナウシカ』(徳間書店) ★宮崎 駿『風の谷のナウシカ』(徳間書店) ユーラシア大陸のはずれに発生した 文明は急速に発達し、数百年後に は大地の富をうばいとり大気をけがし 生命体をも意のままに造り変えるよう になった。この文明も1000年後には 急速な衰退を迎え、「火の 7 日間」と 呼ばれる戦争によって大地のほとんどは不毛の地と化した。 そこは「腐海(ふかい)」と呼ばれる有毒の瘴気(しょうき)を 発する巨大な菌類の森となり静かに地表は覆おわれよう としていた。 (本文より) 『風の谷のナウシカ』はスタジオジブリのアニメー 『風の谷のナウシカ』 ション映画として有名ですが、この映画は原作のご く一部しか取り扱っていません。欲に絡んだ人間が 大自然の使者ともいうべき王蟲(オーム)との絶体 絶命の場面で一人の純粋な少女の犠牲によって 救われるのですが、この結末だけでは何か私には しっくりと来ませんでした。腐海とは?王蟲とは? そのモヤモヤ感は原作を読んで一気に晴れました。 人間の小ささと、けた違いに大きい大自然の英知 と優しさ。人間同士の愚かな争いを超えたところで 脈々と続く大自然の究極の平和への営み。ぜひ 読んでみてください。 (図書館長 梶山満夫) これからも、ずっとへいわがつづくように ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ。 今月号の執筆者 この絵本は沖縄県与那国島の安里君が小学 1 年生の時に書いた「へいわってすてきだね」という 詩に、絵本作家の長谷川義史さんが絵をつけた ものです。太平洋戦争で唯一国内で地上戦で多 くの人々の命が奪われた沖縄で平和を願う小さな 想い。こどもたちを巻き込んではいけないと改めて 大切なことを教えてくれる絵本です。 (図書館 末次雅子) (敬称略) 【図書委員会 「図書館だより」編集委員】 1K 西池うらら 1S 杉浦悠莉 2S 安岡加奈 2S 櫻井花菜子 3Y 木村祐子 ⅠF 岸田有香 3Y 西田有葵子 ⅠK 水上真由 ⅡS伊藤愛永 ⅡU 野間日菜子 ⅢK 田中万絲 【卒業生】39 回生 福本尚子 ⅢY 小畑花織 40 回生 岡崎知子 42 回生 山影真有香 44 回生 吉村育子 54 回生 角井貴乃 58 回生 向井惇子・黒田舞子 【教職員】国語科 和田雅裕先生 国語科 今泉建先生 国語科 福井由佳先生 国語科 福岡真帆先生 音楽科 手塚義浩先生 社会科 中田悠志先生 社会科 大迫孝士先生 宗教科 谷香澄先生 図書館 17 数学科 西邨奈穂先生 梶山満夫 宇野珠代 末次雅子