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昼夜逆転編 - こころの医療 たいようの丘ホスピタル
こころの医療たいようの丘ホスピタル 認知症★ やってはいけないマニュアル!! ~昼夜逆転 編~ 認知症治療病棟に入院中の C さんは、最近、夜になると険しい表情で病棟内を歩き回っています。 転びやすく、他の人を起こしたり、放尿したり、裸になったりするので目が離せません。職員がベッ ドへ誘導しても、すぐにでてきてしまい、朝方まで眠れないことが多くなっています。日中は、椅子 に座って居眠りをして過ごすことが多く、あまり手はかかりません。 『昼夜逆転している認知症高齢者』に対して・・・ やってはいけない!!対応 夜間、眠れるように睡眠薬を飲んでもらう。 夜間、転倒による事故を防ぐために、ベッド柵などを使い、ベッドから降りられないように工夫する。 夜間、放尿や脱衣行為を防ぐために、つなぎの服を使用する。 夜間、起きてきた時、 「寝て下さい」と伝え、すぐに自室へ案内しベッドへ寝かしつけ、立ち去る。 夜間、夜型の生活リズムなのだからと起きていてもらう。 日中、夜間の睡眠不足を補うため、寝ていてもらう。 日中、 「昼寝ていると、夜眠れなくなるでしょう!起きて!」と業務の合間に声かけを繰り返す。 日中、集団のレクリエーションや作業活動の場に誘導し、担当者に任せて、その場を立ち去り、他の業 務をする。 その結果・・・ 今は、昼なの? (夜)帰らないと 夜なの? 行かないと (昼)眠い 痒い ここはどこ? 気持ち悪い トイレ! 寝させて・・・ 結局、夜間、ベッドでより多動となり、ベッド柵を乗り越えようとして 目が離せなくなった。そして、日中の睡眠はより深くなった・・・ やったらよかった!対応 夜間、 「どうしました?心配で眠れないのですね。私にできることはありま すか?」などと、すぐに寝かしつけようとせずに、表情が和らぐまで、そば に寄り添い、優しく話を聞くことを、毎晩、続けるようにした。そして、日 中は、焦らず、気長に、日光浴を楽しみ、本人が興味を示す話題や活動を提 供することを続けるようにした。徐々に、夜間、寝つく時間が早まり、日中 の居眠りをする時間が短くなっていった。そして、半月程度で生活リズムは 改善し、日中は穏やかに生活でき、夜間はぐっすり眠れるようになった。 こころの医療たいようの丘ホスピタル ポイント解説! 前述の『やったら良かった対応』は一つの成功例であり、誰に対しても同様に対応すれば上手く いくというわけではありません。しかし、前述の『やってはいけない対応』は、やると上手くいか ず、かえって問題をこじらせる可能性が高いので、できれば避けたい対応です。 認知症高齢者の昼夜逆転は、病院に限らず、自宅、入所施設等でも、しばしば起きる問題だと思 います。昼夜逆転が、ひとたび生じると、しばらく続くため、介護者にとって、頭を悩まされる出 来事のひとつでしょう。介護者には、日中の傾眠よりも、夜間の精神症状や行動障害の方が、介護 上の多大な負担となるため、なんとか夜間は眠って欲しいと考えるのは当然のことと思います。そ こで、早急に解決しようと考え、即座に誘導、睡眠薬、ベッド柵、つなぎの服・・・といった『や ってはいけない対応』を選択してしまうのも仕方がないことかもしれません。しかし、大切なのは、 早急な昼夜逆転への目先の対応ではなく、昼夜逆転をきたした原因の究明と、それを解決するため の対応です。認知症高齢者が昼夜逆転をきたす原因には、例えば、空腹、のどの渇き、痛み、痒み、 不快感、尿意、便意、発熱、薬の副作用などの身体的な問題、暗すぎる、明るすぎる、騒々しい、 暑い、寒い、寝心地が悪い、時間・場所・周囲の人が分らないなどの環境上の問題、不安、孤独、 絶望、混乱、困惑などの心理的な問題など多くのことが考えられます。認知症高齢者ごとに昼夜逆 転をきたす原因を推測したうえで、対応しなければ、改善どころか、かえって悪化させてしまうこ ともあり得ます。夜間の身体の痒みや頻回の尿意が眠れない原因となっている認知症高齢者に、睡 眠薬を服用させ、つなぎの服を着させたところで、解決につながらず、眠れないばかりか興奮させ てしまう結果になるかもしれません。対応する際には、昼夜逆転をきたした原因への配慮、手当て が必要です。そうした配慮、手当て無しでの対応では、たとえその場は落ち着いたとしても、解決 につながらず、昼夜逆転は続いていくと思います。また、夜眠るために、昼間眠らせないようにと、 日中の働きかけを充分に行うことも重要であることは否定しませんが、同様に原因への配慮、手当 てが無ければ解決につながりません。認知症高齢者ごとにその原因を考え、そこから対応策を導き だすようにしてください。そして、昼夜逆転の発生を未然に防ぐために、日頃から、認知症高齢者 が、快適で安心感を抱ける環境、関係性を築くようにしてください。 認知症高齢者への支援では、問題が起きた時の対応はもちろん大切ですが、問題が起きていない 時にいかに質の高い対応をしているかが重要となってきます。このような視点を忘れずに、日頃か ら良い環境、良い関係性を築き、それを維持するようにしましょう。