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第27章 工業団地概要:東部その 2(プラチンブリ)
第27章 工業団地概要:東部その 2(プラチンブリ) 1.地域概要 (1) 概要 ①タイ国内における経済的地位 プラチンブリとは「東方の町」を意味する。そのプラチンブリはバンコクから東へ 135km 進んだ場所にある県で、北部は丘と山、南部から東部は平原地帯が広がり、西部では農業 が行われている。プラチンブリの始まりは先住民族モン族の国、ドヴァーラーヴァティー 国の時代にまで遡り、約 800 年の歴史がある。そのため、仏像、陶器、手工芸品などの遺 物が多く残されている。 東部地域はバンコク周辺とともにタイ経済を牽引し、直接投資も活発化しているが、現 在のところ、その中心はチョンブリやラヨンであり、プラチンブリへの波及はこれからで ある。図表 27-1 のとおり、プラチンブリとチョンブリ、ラヨンの経済規模は約 7∼8 倍の 開きがある。また、1 人あたり GDP でみても、約 3∼5 倍の開きがある。 図表 27-1 東部地域の県別名目 GDP(2009 年) 名目GDP 人口 1人当たり (100万バーツ) (構成比) (1,000人) (バーツ) チョンブリ 546,586 38.8% 1,290 423,845 ラヨン 475,900 33.8% 612 777,494 チャチェンサオ 203,011 14.4% 669 303,462 プラチンブリ 68,969 4.9% 462 149,331 チャンタブリ 39,933 2.8% 511 78,110 サケーオ 33,353 2.4% 542 61,485 ナコンナヨク 21,955 1.6% 252 87,234 トラート 18,477 1.3% 220 83,982 東部全体 1,408,184 100.0% 4,558 308,954 (出所)NESDB、Department of Provincial Administration, Ministry of Interior より作成 ②工業団地・日系企業進出動向 プラチンブリの主要工業団地は、カビンブリ工業団地、304 工業団地、サハ・グループ工 業団地(カビンブリ)の 3 つがある。開発総面積は、カビンブリが 4,000 ライ、304 工業団 地はその 2.5 倍の 10,000 ライである(2011 年 1 月時点) 。 この地域に進出している日系企業には、日立製作所など大手家電メーカーのほか、中小 の部品メーカーも立地している。また、304 工業団地には、自動車関連メーカーが多く入居 しているとのことである(工業団地事務所のコメント) 。 プラチンブリにある工業団地は、ホンダの四輪車生産拠点のあるアユタヤや、ラヨン、 230 チョンブリからほぼ等距離の位置にある。道路網も以前より充実し、輸送状態は改善され ている(図表 27-2) 。 図表 27-2 プラチンブリからチョンブリ・レムチャバン港方面への幹線道路網 (注) の地域にカビンブリ工業団地、304 工業団地、サハ・グループ 工業団地(カビンブリ)が立地。 (出所)カビンブリ工業団地ホームページより作成 プラチンブリに進出した日系企業は、地盤の固さと、BOI 第 3 ゾーンの優遇措置が受け られる点を評価している。ただし、バンコクと、輸出拠点であるレムチャバン港からやや 離れており、とくに大きな製品をトラック輸送して輸出する企業は通常の所要時間より長 くかかるため、その点では不便さがあるとのコメントもあった。 (2) 進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト 図表 27-3 は、この地域に進出した場合のメリットと留意点を整理したものである。 図表 27-3 プラチンブリ周辺に進出した場合のメリットと留意点 メリット 留意点 ・第 3 ゾーンの BOI 恩典を享受できる。 ・人件費や工業団地の価格がバンコクより安い。 また、上昇率も相対的に小さい。 ・自然が豊か。 ・バンコクやレムチャバン港から車で 2∼3 時間 かかる。 ・駐在員生活環境が充実しているとは言えない。 ・近年、ワーカーの採用が困難になっている。給 与の高いところに労働者が流れていく傾向にあ 231 ・地盤が固く、杭打ちの深さは 6∼7m で済む。 る。 ・水害の心配がない。 ・マネージャー等の採用については特に困難で、 都心から離れることへのインセンティブ(給与面) を与える等の対応を行う必要あり。 (出所)2011 年 1 月の現地調査より作成 ①BOI 恩典 第 3 ゾーンの恩典を享受できる。この点を重視して進出する企業が多い。 ②インフラ・物流 バンコクからの距離やレムチャバン港から離れており、輸送時間が長くかかることが最 大の課題である。しかしながら、過去に比べると道路が格段に整備され、輸送時間は短縮 化している(かつてはバンコクまで 3.5 時間かかったが、現在は 304 号線の車の流れが良 くなり、2 時間程度とのこと) 。 確かに、バンコクやレムチャバンからは決して近いとは言えないが、労働力が豊富な東 北部に隣接し、また企業が集積する中部、レムチャバン港との位置関係をみるとおおよそ 中程にあることから、国内輸送上は便が良い。304 工業団地に入居した企業は、工業団地が 発電所を所有していることから、比較的安定した電力供給を得られる点をメリットとして あげていた。しかしながら、月に 1 度程度は電圧降下、あるいは短時間の停電が発生して いる。水害発生の心配はあまりない。 ③労働事情 当地は東北部に近く、そこから移動してくる労働者を確保することができる。マネージ ャーについてはバンコク通勤圏内の他企業と比較すると厳しい状況にある。そのため、あ る程度のインセンティブを与えて採用する必要がある。 プラチンブリの最低賃金は日給 183 バーツ(2011 年 1 月時点)で、バンコク(同 215 バ ーツ) 、チョンブリ(同 196 バーツ)、ラヨン(同 189 バーツ)、アユタヤ(同 190 バーツ) と比べると 6∼32 バーツの差がある。 ④その他 プラチンブリに滞在する日本人の数は、統計上約 375 人で、東部のラヨンと同じ程度で ある。バンコクと比較すると日本食レストランや娯楽施設は少ない。学校はローカルのみ で、日本人学校はない。病院は、怪我や風邪程度であれば地元のクリニックで対応可能だ が、駐在員のほとんどは、基本的にはバンコクにある総合病院や歯科医を利用している。 232 2.主要工業団地 (1) カビンブリ工業団地 1 工業団地名 カビンブリ工業団地 Kabinburi Industrial Zone (KIZ) 2 開設年 1990 年 3 事業主 Kabinburi Industrial Zone Limited. 4 事業形態 一般工業用地 5 工業団地住所・連絡先 サイトオフィス 444 Moo 9, Kabinburi-Korat Rd., Km. 12, Nongki, Kabinburi, Prachin Buri 25110 Tel: +66-3-720-4337∼44 Fax: +66-3-720-4345 バンコクオフィス 77/84 Sinsathorn Tower 21st Floor, Krungthonburi Road, Klongtonsai, Klongsan, Bangkok 10600 Tel. +66-2-440-0900∼3 Fax +66-2-440-0904 URL: www.kabinburi.com(日本語有) E-mail: [email protected], [email protected] 6 現地日本人担当者 Senior Sales Advisor 粕谷 修 氏(バンコクオフィス勤務) 携帯:+66-81-912-4180 7 立地 バンコク市内 :165 km ドンムアン国際空港 :165 km スワンナプーム国際空港:125km レムチャバン港 :170km 幹線道路へのアクセス :国道 304 号線(バンコク、レムチャバ ン港方面) 、33 号線(アユタヤ方面) 8 残り面積/総開発面積 鉄道アクセス :カビンブリ駅 カンボジア国境まで :90km 一般工業用地:470 ライ/2,300 ライ 総開発面積:4,000 ライ 9 土地取得価格 一般工業用地:145 万バーツ/ライ 住居用地:165 万バーツ/ライ 10 土地維持費用 500 バーツ/ライ/月 11 賃貸工場の有無 無(貸工場用地は確保済み。現在検討中) 12 電力供給 10 万 KVA、2×50MVA、45KVA/ライ 13 電力料金 PEA レート(電気代が最初の 5 年間 1 割引) 14 工業用水 12 ㎥/ライ/日、9.5 バーツ/㎥ 15 下水廃水処理 18,000 ㎥/日、3.5∼6.7 バーツ/㎥ 16 通信設備 回線 1,024 本、5 ライ当り 1 回線無料設置。ISDN、ADSL、光ケ ーブル、携帯電話各種基地局有。 17 地盤・水害対策 強固な地盤(杭打ち約 6m) 、海抜 24m、周辺道路から 1.5∼4m 高、 雨水溝による排水有。 18 労働コスト ワーカー:183 バーツ/日∼ 233 19 入居に適する企業 電気、食品加工、樹脂、繊維など 20 その他 ・ 入居企業数約 70 社、うち日系企業が 20 社弱。 ・ 主要日系企業は日立(家電、工業用モニター)、ニチレイフー ズ(冷食) 、大西製作所(金属プレス加工溶接) 、阿波製紙(自 動車用フィルター用原紙)、アイシン精機(自動車部品)など。 ・ 敷地内に住宅・商業施設(スポーツセンター、ゴルフ練習場)な どがある。 (出所)各種資料より作成 カビンブリ工業団地 ・ バンコクから離れた地域に FDI を誘致するために設立された工業団地で、バンコクか らの距離は 165km、車で 2 時間強の距離にある。バンコクと豊富な労働力の供給地で ある東北部への中継地点に位置付けられる。 ・ 工業団地の面積(工場用)は約 2,300 ライで、整備区域の 80%が販売済み。引き続き、 第 3 区画(500 ライ)を開発造成中。また、第 4 区画(400 ライ)の造成を計画中。賃 貸工場の展開は現在検討中。土地の購入料金が安い点が魅力の一つ。 ・ 同工業団地の入居に適する企業は、食品や繊維等の軽工業メーカーや、家電組立、電子 部品、自動車部品メーカーである。重工業関連企業については、環境汚染の懸念がある ほか水や電力を大量消費する傾向があるので、同工業団地では誘致をあまり積極的に行 っていない。 ・ 同工業団地では、①労働力(東北地域から流入)、②豊富な水量、③電力料金の 10%デ ィスカウント(5 年間)、④労賃をはじめあらゆるコストが割安、というメリットを享受 可能である。 ・ 入居企業は、日系企業の他、ドイツ、スイス、台湾、香港、米国、シンガポール企業等 で、国際色豊かな工業団地となっている。 234 ・ 同工業団地にはカビンブリ日系会があり、2 ヵ月に 1 回、会合を開催し情報交換を行う と共に、ゴルフ親睦会等も開催されている。 ・ 電力不足は起きていないが、電圧は(タイのレベルで)少々変動する。停電は 3∼15 分 程度が年 3 回発生。工業団地内には自家発電はなく、電力は全て PEA から供給を受け ている。 ・ 水の供給は安定しており、水質も良く低価格である。 ・ 同工業団地では、工業省より「工場令 30(工業設立・操業に関する規定) 」の許可を得 ており、地方工業局への建設許可申請、工場操業申請が不要であるため、直ぐに工場建 設に入ることができる。 (2) 304 工業団地 1 工業団地名 304 工業団地 304 Industrial Park 2 開設年 1994 年 3 事業主 304 Industrial Park Co., Ltd. (オーナー:スンファセン・グループ) 4 事業形態 一般工業用地 5 工業団地住所・連絡先 バンコクオフィス 122 North Sathorn Rd., Silom, Bangrak, Bangkok 10500 Tel: +66-2-267-7114∼8 Fax: +66-2-267-7132 サイトオフィス 106 Moo 7, Thatoom, Srimahaphot, Prachinburi 25140 Tel: +66-3-720-8650 Fax: +66-3-720-8884 URL:http://www.304industrialpark.com/jp/index.php(日本語) E-mail: [email protected], [email protected] 6 現地日本人担当者 --- 7 立地 バンコク市内 :140km ドンムアン国際空港 :147km スワンナプーム国際空港:115km レムチャバン港 :156km 幹線道路へのアクセス :国道 304 号線 鉄道アクセス :カビンブリ駅 カンボジア国境 :128km 8 残り面積/総開発面積 ---/総開発面積 7,500 ライ 9 土地取得価格 170 万∼190 万バーツ/ライ 10 土地維持費用 --- 11 賃貸工場の有無 有(面積:1,000∼2,000 ㎡) 12 電力供給 常備電力 300MW、バックアップ電源 100MW、PEA 電力併用 235 13 電力料金 タイ電力公社に準ずる 14 工業用水 80,000 ㎥/日、貯水量 3,600 万㎥ 15 下水廃水処理 60,000 ㎥/日 16 通信設備 電話回線 3,000 本以上、ISDN 回線 256 本、国際電話(CAT) 、携 帯用アンテナ(CDMA、GSM) 17 地盤・水害対策 強地盤、杭打ち不要、地耐力 20∼60 トン/㎡ 18 労働コスト ワーカー:183 バーツ/日∼ 19 入居に適する企業 --- 20 その他 ・主要日系企業は八千代工業(自動車部品塗装) 、アルファ(自動 車用キーセット) 、アイシン精機(自動車部品)、日立製作所(ハ ードディスクドライブ)、王子製紙(ノンカーボン紙)、日本フ イルコン(製紙用ファブリック)など。 (出所)各種資料より作成 ・ 304 工業団地の運営パートナーは中国人。チャチェンサオに 2 番目の工業団地の Park 2 がある。 ・ 同工業団地の特長は以下の通り。 ①3 つの貯水池(約 1,500 ライ)を保有しており、水を大量に使用する業種にも適して いる。 ②敷地内に木材チップ等を燃料とする自家発電を設置している。 ③近代的かつ快適なホテルと住宅を完備。従業員用の住宅アパートも備えている。 ④労働力が豊富な東北部に近いため、労働力確保が容易。 ⑤BOI 第 3 ゾーンの優遇措置を享受できる。 236