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FCIPトンネル上でのQoS(Quality of Service)の提供
2013 Brocade Communications Systems, Inc. Fabric OS 7からのFCIPに関する新機能 -3- FCIPトンネル上でのQoS(Quality of Service)の提供 “ミッションクリティカルなデータ・レプリケーションにおいては特定の時間内にデータ・コピーを 終わらせる必要があります。これにはデータに優先度をつけた上でネットワークに流す必要があり ますが、FCIP で IP パケットにカプセリングされた状況ではデータを分別認識し優先度をつけるこ とは難しいとされてきました。Brocade はストレージネットワークとして、ファブリック・インテ リジェンスとアダプティブ・ネットワーキング・サービスを ASIC と Firmware の両方の技術によ って提供することで、FCIP トンネル上での QoS(Quality of Service)を可能としました。その実装 方法とセッティングに関して、事例を交えて解説します。” これまでFCIPトンネル上でのQoS(Quality of Service)の実現にはAdaptive Networkライセンスが必要 でしたが、Fabric OS 7.2からこのAdaptive NetworkライセンスがOSへバンドルして提供されるように なりました。これによって、アダプティブ・ネットワーキング・サービスの一つであるFCIP上でのQoS を、7800スイッチやFX8-24ブレードにおいてコストを追加することなく利用できるようになりました。 アダプティブ・ネットワーキング・サービスの内容と、FCIP上でのQoSの実装について、更にはそのセ ッティングについて事例を交えて解説します。 アダプティブ・ネットワーキング・アーキテクチャー Brocadeのデータ・センター・ファブリック(DCF)におけるアダプティブ・ネットワーキング・アーキテ クチャーは、柔軟性の高いファームウェア機能で動作する革新的なASICと、新しいアダプティブ・ネッ トワーキング・サービスからなります。図1にBrocadeのデータ・センター・ファブリックの核となるネ ットワーク基盤上でのアダプティブ・ネットワーキング技術の位置づけを示します。 図1. Brocadeのアダプティブ・ネットワーキング・サービス技術 1 アダプティブ・ネットワーキング・サービスの中のファブリックQoS 前執のとおり、Brocadeのアダプティブ・ネットワーキング・アーキテクチャーにはいくつかのタイプ のサービスが含まれます。 Quality of Service (QoS) トラフィック管理 ファブリック動的プロファイリング リソース・リカバリ [Quality of Service (QoS)の原点] Quality of ServiceはもともとTCP/IPコミュニケーション・ネットワークからきた考え方です。TCP/IP ネットワークはベスト・エフォート型のコミュニケーション・ネットワークであり、ポートが混雑して しまうとルータがパケットを破棄してしまうためQoSという考え方が取り入れられました。アプリケー ションの重要性をルータが考慮し、どのパケットを破棄するかを判断します。QoS優先度が割り付けら れたパケット・ヘッダーのタグをもとに、ルータはどのクラスのパケットを破棄するかを決めることが できます。輻輳状態でも、より重要度の高いアプリケーション・ワークロードがネットワークを介して 継続できるように、低い優先度のパケットから破棄するという仕組みです。QoSはルータのキュー上で 混雑が検出されたときにのみ動作します。輻輳がない場合は、QoSで割り当てられた優先度には関係な く、アプリケーション・ワークロードが生成したとおりにパケットはネットワークを自由に使うことが できます。つまりQoSとはアプリケーション・ワークロードにおいて、事前にネットワークバンド幅を 割り当てるものではありません。 [ファブリク Quality of Service (QoS)] Brocade のファイバー・チャネル環境では、フレーム・ヘッダーとゾーニング・サービスの管理構成を 使って、ファブリックの入力ポートに対して QoS 優先度を割り当てることができます。一般的にファブ リック・ゾーンは接続が必要なホストとターゲットを定義します。ファブリック・ソーンはイニシエー タとターゲット間で論理的な接続を確立しデータ転送を可能にします。データの流れに QoS を設定する には、SAN 管理者によって QoS 優先度を定義した特殊なゾーン(ソーン名によって特定される)を作成す る必要があります。この特殊なゾーンに含まれるメンバー(イニシエータとターゲット)間で確立されたデ ータ・フローに対して QoS 優先度が設定されます。FCIP を除くファブリック環境において、QoS は複 数のヴァーチャル・チャネル(VC)を割り当てることによって三つの QoS 優先度(High, Med, Low)を設 定します。それぞれのヴァーチャル・チャネル(VC)は、おのおのの入力キューを持っています。QoS の キューイング・アルゴリズムはファブリック内のすべてのスイッチにおいて同じであり、QoS の優先度 2 に応じた重み付けを入力バッファー内のフレーム・サービスに適応します。高優先度の QoS クラスに、 より多くのフレーム転送を許可します。この仕組みはスイッチの数や ISL の数に関係なく、ファブリッ ク全体をとおしてのデータ・フローに同じ QoS 優先度が適応されます。 “スロー・ドレイン”デバイスに よって引き起こされる ISL 上の輻輳においても、QoS 優先度ごとに複数のヴァーチャル・チャネル(VC) を使うことで、リソース・リカバリ・サービスによって回避することができます。 ファブリック QoS はフレームの Source ID と Destination ID(SID/DID)をチェックして、特殊な QoS ゾーンに含まれるメンバーを参照します。もしその QoS ゾーンにその SID/DID が含まれている場合、 QoS 優先度(High/Med/Low)をゾーン名が示すタグによって判断します。高優先度の場合ゾーン名 は”QOSH_”で始まるゾーン名でなければなりません。同じく中優先度の場合のゾーン名は”QOSM_”で 低優先度の場合のゾーン名は”QOSL_”で始まるものでなければなりません。ゾーン名が示すタグが高優 先度である場合(QOSH_xxx)、高優先度トラフィックのために割り当てられたヴァーチャル・チャネル (VC)のキューにフレームを置きます。データ・パスに絡むすべてのスイッチで、フレーム転送に対して QoS 優先度で割り当てられた同じヴァーチャル・チャネル(VC)が使われます。さらにこれらのすべての スイッチは、同じキューイング・アルゴリズムを使ってヴァーチャル・チャネル(VC)におけるフレーム 転送のスケジューリングを行います。つまりファブリック全体において同じフレーム転送優先度が使わ れるのです。 Pre-Priority TCP QoS (FCIPトンネルでのQoS実装) ファブリック QoS を FCIP を介して接続されるファブリックにも継承することができます。これを Pre-Priority TCP QoS(PP-TCP-QoS)と呼びます。 ファブリック QoS の場合、それぞれの優先度に対しヴァーチャル・チャネル(VC)を割り当てることで QoS を実現しますが、FCIP においてはヴァーチャル・チャネルの代わりにヴァーチャル・トンネルを使 います。ヴァーチャル・トンネルは 4 つあり、それぞれのヴァーチャル・トンネルを構成するのがヴァ ーチャル・サーキットです。サーキットとは source IP アドレスと destination IP アドレスで作られる ネットワーク接続です。このサーキット内に 4 つの TCP コネクションを作ります。この 4 つの TCP コ ネクションをヴァーチャル・サーキットと呼び、それぞれの TCP コネクションに QoS 優先度を割り当て ます。 3 図 2 に FCIP QoS をハンドリングするための TCP コネクションのアーキテクチャーを示します。 図 2. FCIP QoS をハンドリングするための TCP コネクション 4 また図 3 に FCIP QoS を構成する際のトンネルのイメージを示します。 図 3. QoS を構成する FCIP トンネルのイメージ この TCP コネクション構造は下記のように、”portshow fciptunnel all –h”コマンドを使うことで、階 層的に確認することができます。以下の例は二つのつのサーキットを使って一つのトンネル(VE16)を作 成した時の例です。FCIP Tunnel 16 の下に二つのサーキット(16.0 と 16.1)が存在し、それぞれのサー キットには 4 つの TCP コネクションがあることがわかります。 B7800:admin> portshow fciptunnel all -h FCIP Tunnel 16 | High Level Tunnel Stats: | Operational Status: Up | Connected Count: 1 | Max Comm Rate: 2000000 | Compression Ratio: 1 : 1 | Compressed Bytes: 0 | Uncompressed Bytes: 0 | Bytes In: 38955748 | Bytes In Avg: 65 | Bytes Out: 53414460356 | Bytes Out Avg: 90 | Packets In: 272740 | Packets In Avg: 0 | Packets Out: 2253710 | Packets Out Avg: 0 | Aggregate TCP Stats: | TCP Bytes In: 768810868 | TCP Bytes Out: 56200136928 | TCP Packets In: 33425703 | TCP Packets Out: 51549203 5 | Retransmits: 0 | Longest RTT: 0 ms | Out Of Sequence: 0 | Slow Starts: 5 | Circuit Count: 2 | TCP Count: 8 | Circuits: |--> Circuit 16.1 | | High Level Circuit Stats: | | Operational Status: Up | | Connected Count: 1 | | Max Comm Rate: 1000000 | | Bytes In: 316 | | Bytes In Avg: 10 | | Bytes Out: 340 | | Bytes Out Avg: 11 | | Packets In: 2 | | Packets In Avg: 0 | | Packets Out: 3 | | Packets Out Avg: 0 | | Aggregate TCP Stats: | | TCP Bytes In: 10012 | | TCP Bytes Out: 24812 | | TCP Packets In: 239 | | TCP Packets Out: 243 | | Retransmits: 0 | | Longest RTT: 0 ms | | Out Of Sequence: 0 | | Slow Starts: 0 | | TCP Count: 4 | | TCP Connections: | |---> TCP Conn 16.1:2030514496 | |---> TCP Conn 16.1:2030666848 | |---> TCP Conn 16.1:2030616064 | |---> TCP Conn 16.1:2030565280 |--> Circuit 16.0 | High Level Circuit Stats: | Operational Status: Up | Connected Count: 1 | Max Comm Rate: 1000000 | Bytes In: 19500052 | Bytes In Avg: 55 | Bytes Out: 26707196360 | Bytes Out Avg: 79 | Packets In: 136389 | Packets In Avg: 0 | Packets Out: 1126965 | Packets Out Avg: 0 | Aggregate TCP Stats: | TCP Bytes In: 333898780 | TCP Bytes Out: 28018834056 | TCP Packets In: 16025120 | TCP Packets Out: 25082595 | Retransmits: 0 | Longest RTT: 0 ms 6 | Out Of Sequence: 0 | Slow Starts: 3 | TCP Count: 4 | TCP Connections: |---> TCP Conn 16.0:2030510648 |---> TCP Conn 16.0:2030663000 |---> TCP Conn 16.0:2030612216 |---> TCP Conn 16.0:2030561432 PP-TCP-QoS で割り当てる優先度も通常のファブリック QoS で割り当てられる優先度と同じ、以下の四 つになります。(データ転送に使われる優先度は 3 つです。) F Class – ファブリック制御用のデータ転送。すべてのトラフィックに優先されてこのデータは送ら れます。(優先度の設定、変更はできません) QoS High – 一番優先度の高いデータ転送。ディフォルトでは輻輳時バンド幅の 50%を割り当てる ように設定されます。”QOSH_xxx”で指定される zone に含まれる SID/DID トラフィックがこれに あたります。 QoS Medium – 中間の優先度のデータ転送。ディフォルトでは輻輳時バンド幅の 30%を割り当て るように設定されます。”QOSM_xxx”で指定される zone に含まれる SID/DID トラフィック、もし くは”QOSH_xxx”, “QOSL_xxx”の両 zone ともに含まれないトラフィックがこれにあたります。 QoS Low – 一番優先度の低いデータ転送。ディフォルトでは輻輳時バンド幅の 20%を割り当てる ように設定されます。”QOSL_xxx”で指定される zone に含まれる SID/DID トラフィックがこれに あたります。 7 Pre-Priority TCP QoS (FCIPトンネルでのQoS)の設定と動作 FCIP トンネルを作成した時点で、 自動的に QoS のための TCP セッションは作られます。したがって QoS を利用するに当たり、FCIP 側での特別のオペレーションはありません。唯一 FCIP トンネル側での作業 が必要となるとすれば、QoS の優先度の割合を変更する場合です。FCIP トンネルが生成された時点で、 QoS の優先度は高優先度に WAN 帯域幅の 50%が、中優先度に 30%が、低優先度に 20%がディフォル トとして割り当てられます。 (QoS の優先度割合の変更については後程別セッションにて説明します。) FCIP 上での QoS の割合設定については、以下のように”portshow fciptunnel all –d”コマンドによって 確認することができます。以下はディフォルトの状態です。 B7800:admin> portshow fciptunnel all -d ------------------------------------------Tunnel ID: 16 Tunnel Description: Admin Status: Enabled Oper Status: Up Compression: Off Fastwrite: Off Tape Acceleration: Off TPerf Option: Off IPSec: Disabled QoS Percentages: High 50%, Med 30%, Low 20% Remote WWN: Not Configured Local WWN: 10:00:00:05:1e:a8:c6:a3 Peer WWN: 10:00:00:05:1e:eb:8b:e9 Circuit Count: 1 Flags: 0x00000000 FICON: Off [FCIP QoSゾーンとQoSの動作] 前執のとおり、FCIP QoS は QoS ゾーンという特殊なゾーンを使って行います。特殊なゾーンと言って も、ゾーニングそのものは通常のゾーニングそのものです。QoS ゾーンはゾーン名に特殊な名前を使う ものです。(高優先度ゾーン名は”QOSH_”で中優先度は”QOSM_”で低優先度は”QOSL_”で始まらなくて はなりません。) また FCIP QoS を実現するには WWN ゾーニングが必要となります。 8 動作例を示すために構築したテスト構成は図 4 に示すようなシンプルなものです。 4 つの Initiator と 4 つの Target をそれぞれ 1:1 で接続するものです。 図 4. QoSt テスト構成 まず QoS ゾーンが無い場合の動作例を示します。 わかりやすいように、一つの FCIP サーキットのみを含む一つの FCIP トンネルを作成します。また FCIP トンネルに圧縮モードは使用しません。I/O の流れをわかりやすいようにするため、それぞれの FCIP ス イッチのポート 0~3 番に対し、Initiator と Target をそれぞれ接続し 4 対の I/O ペアを作成します。 “H_IO”, “M_IO”, “L_IO”, “NONQOS”という 4 つのゾーンを作成し、”qos_test”という名でこれらの 4 つのゾーンを含むゾーン・コンフィグレーションを行います。QoS ゾーン名を使用していないので、こ れらの 4 つのゾーンとも優先度は特定されません。 B7800:admin> cfgshow Defined configuration: cfg: d_efault_Cfg d_efault_Zone cfg: qos_test NONQOS; H_IO; M_IO; L_IO zone: H_IO 11:22:33:44:55:66:77:09; zone: L_IO 11:22:33:44:55:66:77:11; zone: M_IO 11:22:33:44:55:66:77:10; zone: NONQOS 11:22:33:44:55:66:77:08; zone: d_efault_Zone 00:00:00:00:00:00:00:01 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:01 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:03 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:02 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:00 Effective configuration: 9 cfg: qos_test zone: H_IO 11:22:33:44:55:66:77:09 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:01 zone: L_IO 11:22:33:44:55:66:77:11 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:03 zone: M_IO 11:22:33:44:55:66:77:10 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:02 zone: NONQOS 11:22:33:44:55:66:77:08 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:00 この状態で 4 つのペアに同時にトラフィックを走らせます。Portperfshow で FC のトラフィック状況を 確認すると以下のように 4 つのトラフィックとも均等に 1Gbps の FCIP トンネルを共有し、同じ I/O 性 能を示していることがわかります。 B7800-02:admin> portperfshow 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ================================================================================================== ============== 29.0m 29.3m 29.6m 29.3m 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 17 18 19 20 21 22 23 Total ================================================================ 109.9m 0 0 0 0 0 0 0 227.3m 更に portshow fciptunnel all –qs コマンドにて QoS のどの優先度のヴァーチャル・トンネルを使用し ているかを確認すると、すべてのトラフィックが Medium のヴァーチャル・トンネルを使用しているこ とがわかります。このように QoS の優先度が指定されていないトラフィックは全て優先度“中”として扱 われ、同じ優先度の複数トラフィックは FCIP 帯域を平等に使用します。 B7800-02:admin> portshow fciptunnel all -qs ------------------------------------------------------------------------------Tunnel Circuit Priority Uptime Tx Bps Rx Bps TxPkts/s RxPkts/s ------------------------------------------------------------------------------16 10d22h 113.49M 55.21K 4.74K 0.00 16 F-Class 10d22h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 High 10d22h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 Medium 10d22h 113.49M 55.18K 4.74K 0.00 16 Low 10d22h 0.00 0.00 0.00 0.00 ------------------------------------------------------------------------------- 10 つぎにゾーン名を変更して、以下のように 3 つのペアについて QoS 優先度をつけるようにします。 B7800:admin> cfgshow Defined configuration: cfg: d_efault_Cfg d_efault_Zone cfg: qos_test NONQOS; QOSH_IO; QOSL_IO; zone: NONQOS 11:22:33:44:55:66:77:08; zone: QOSH_IO 11:22:33:44:55:66:77:09; zone: QOSL_IO 11:22:33:44:55:66:77:11; zone: QOSM_IO 11:22:33:44:55:66:77:10; zone: d_efault_Zone 00:00:00:00:00:00:00:01 QOSM_IO 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:00 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:01 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:03 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:02 Effective configuration: cfg: qos_test zone: NONQOS 11:22:33:44:55:66:77:08 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:00 zone: QOSH_IO 11:22:33:44:55:66:77:09 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:01 zone: QOSL_IO 11:22:33:44:55:66:77:11 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:03 zone: QOSM_IO 11:22:33:44:55:66:77:10 20:aa:aa:aa:aa:aa:aa:02 QOSH_, QOSM_, QOSL_のゾーンが指定されている 3 つのペアについてトラフィックを発生させてみ ます。 ポート 1 が優先度“高”、ポート 2 が優先度“中”、ポート 3 が優先度“低”となります。Portperfshow にて FC のトラフィックを確認してみますと、QoS のディフォルトで指定されたようにそれぞれ 50:30:20 の 割合で転送量が調整されていることがわかります。 B7800-02:admin> portperfshow 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ================================================================================================== ============== 0 57.9m 35.7m 24.0m 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 17 18 19 20 21 22 23 Total ================================================================ 109.3m 0 0 0 0 0 0 0 227.0m 同様に portshow fciptunnel all –ps にてヴァーチャル・トンネルの流れを確認しますと、やはり指定し たとおりのヴァーチャル・トンネルにトラフィックは分散され、その比率が調整されていることがわか ります。 11 B7800:admin> portshow fciptunnel all -qs ------------------------------------------------------------------------------Tunnel Circuit Priority Uptime Tx Bps Rx Bps TxPkts/s RxPkts/s ------------------------------------------------------------------------------16 10d22h 113.52M 55.22K 4.74K 0.00 16 F-Class 10d22h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 High 10d22h 56.01M 27.23K 2.34K 0.00 16 Medium 10d22h 34.50M 16.78K 1.44K 0.00 16 Low 10d22h 23.00M 11.19K 0.00 0.00 ------------------------------------------------------------------------------- また QoS 優先度の指定のない”NONQOS”といゾーン名に含まれるトラフィックも同時に発生させてみ ます。このゾーンに相当するのがポート 0 番の I/O です。 以下のように優先度の指定のないゾーンの I/O は優先度中の I/O と同様に扱われ、優先度中のヴァーチ ャル・トンネル内でトラフィックを共有します。(ポート 0 とポート 2 が優先度中となり、I/O を共有) 同様に同じ優先度のトラフィックが同時に発生した場合には、それが優先度”高”であっても“低”であって も、それぞれの同じ優先度のヴァーチャル・トンネルを共有します。 B7800-02:admin> portperfshow 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ================================================================================================== ============== 18.1m 57.9m 17.6m 23.7m 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 17 18 19 20 21 22 23 Total ================================================================ 108.9m 0 0 0 0 0 0 0 226.4m portshow fciptunnel all –qs コマンドで確認すると、優先度は 50:30:20 で保たれていることがわかり ます。 B7800-02:admin> portshow fciptunnel all -qs ------------------------------------------------------------------------------Tunnel Circuit Priority Uptime Tx Bps Rx Bps TxPkts/s RxPkts/s ------------------------------------------------------------------------------16 10d22h 113.52M 55.21K 4.74K 0.00 16 F-Class 10d22h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 High 10d22h 56.01M 27.23K 2.34K 0.00 16 Medium 10d22h 34.50M 16.77K 1.44K 0.00 16 Low 10d22h 23.00M 11.18K 0.00 0.00 ------------------------------------------------------------------------------- 12 前執したように QoS は事前に帯域幅を割り当てるものではなく、輻輳を検出した時のみに機能するもの です。 QoS が設定された状態において優先度“低”だけのトラフィックを発生させた場合は、当然すべての FCIP トンネル帯域をこのトラフィックが使用することができます。 B7800:admin> portperfshow 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ================================================================================================== ============== 0 0 0 117.3m 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 17 18 19 20 21 22 23 Total ================================================================ 109.0m 0 0 0 0 0 0 0 226.3m B7800:admin> portshow fciptunnel all -qs ------------------------------------------------------------------------------Tunnel Circuit Priority Uptime Tx Bps Rx Bps TxPkts/s RxPkts/s ------------------------------------------------------------------------------16 10d23h 113.47M 55.27K 4.74K 0.00 16 F-Class 10d23h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 High 10d23h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 Medium 10d23h 0.00 0.00 0.00 0.00 16 Low 10d23h 113.47M 55.17K 4.74K 0.00 ------------------------------------------------------------------------------- また FCIP QoS は FCIP トンネルの輻輳をみて動作します。圧縮モードを使った場合など、FCOP トンネ ルに輻輳がみられない場合には、すべての優先度のトラフィックは FCIP トンネル帯域を平等に使用しま す。 B7800:admin> portperfshow 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ================================================================================================== ============== 0 139.2m 139.3m 139.2m 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 17 18 19 20 21 22 23 Total ================================================================ 387.8m 0 0 0 0 0 0 0 805.7m 13 B7800:admin> portshow fciptunnel all -qcs ------------------------------------------------------------------------------Tunnel Circuit Priority Uptime Tx Bps Rx Bps TxPkts/s RxPkts/s ------------------------------------------------------------------------------16 6m25s 4.75M 159.54K 16.87K 1.53K 16 F-Class 6m24s 0.00 0.00 0.00 0.00 16 High 6m23s 1.59M 53.17K 5.62K 0.00 16 Medium 6m25s 1.59M 53.17K 5.62K 0.00 16 Low 6m24s 1.58M 53.17K 5.62K 0.00 16 0 ge0 6m25s 4.75M 159.54K 16.87K 1.53K 16 0 ge0 F-Class 6m24s 0.00 0.00 0.00 0.00 16 0 ge0 High 6m23s 1.59M 53.17K 5.62K 0.00 16 0 ge0 Medium 6m25s 1.59M 53.17K 5.62K 0.00 16 0 ge0 Low 6m24s 1.58M 53.17K 5.62K 0.00 ------------------------------------------------------------------------------- [FCIP QoSディフォルト値の変更] FCIP QoS のディフォルト値(50%:30%:20%)のパーセンテージを変更することができます。但しこの 変更は FCIP トンネル内でのトラフィック量の優先度を変更するもので、ファブリック QoS 全体の優先 度割合を変更するものではありません。 この FCIP QoS のディフォルト値の変更は portcfg fciptunnel create コマンドの発行時、もしくは portcfg fciptunnel modify コマンド時に行えます。 ディフォルト時変更時には、以下の点を考慮する必要があります。 優先度 高・中・低の三つのパーセンテージの和は 100 にならなければなりません。 指定できるパーセンテージの下限は 10 パーセントです。 QoS 優先度の設定は、トンネルの両端において同じ値を設定する必要があります。 QoS 設定例を以下に示します。 以下は既に作成されたトンネルのディフォルト値(50%, 30%,20%)を高 80%, 中 10%. 低 10%に変 更する例です。 B7800:admin> portcfg fciptunnel 16 modify --qos 80,10,10 !!!! WARNING !!!! Modify operation can disrupt the traffic on the fciptunnel specified for a brief period of time. This operation will bring the existing tunnel down (if tunnel is up) before applying new configuration. Continue with Modification (Y,y,N,n): [ n] Tunnel 16 modify: Operation Succeeded 14 y Portshow fciptunnel <トンネル番号>で変更された優先度を確認することができます。 B7800-01:admin> portshow fciptunnel 16 ------------------------------------------Tunnel ID: 16 Tunnel Description: Admin Status: Enabled Oper Status: Up Compression: Off Fastwrite: Off Tape Acceleration: Off TPerf Option: Off IPSec: Disabled QoS Percentages: High 80%, Med 10%, Low 10% Remote WWN: Not Configured Local WWN: 10:00:00:05:1e:a8:c6:a3 Peer WWN: 10:00:00:05:1e:eb:8b:e9 Circuit Count: 1 Flags: 0x00000000 FICON: Off 先ほどと同様に QoS を高、中、低と設定した 3 つのペアのトラフィックを発生すると、以下のようにト ラフィックの制御が変わることがわかります。 B7800:admin> portperfshow 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ================================================================================================== ============== 0 93.6m 11.7m 12.0m 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 17 18 19 20 21 22 23 Total ================================================================ 109.2m 0 0 0 0 0 0 0 226.6m B7800:admin> portshow fciptunnel all -qs ------------------------------------------------------------------------------Tunnel Circuit Priority Uptime Tx Bps Rx Bps TxPkts/s RxPkts/s ------------------------------------------------------------------------------16 3m22s 113.52M 55.27K 4.74K 0.00 16 F-Class 3m22s 0.00 0.00 0.00 0.00 16 High 3m21s 90.52M 44.01K 3.78K 0.00 16 Medium 3m20s 11.50M 5.59K 0.00 0.00 16 Low 3m19s 11.50M 5.59K 0.00 0.00 ------------------------------------------------------------------------------- 15 [FCIP QoSの使用目的] ストレージ・レプリケーションとストレージ・バックアップのような複数のアプリケーションが混在する FCIP 接続において、ストレージ・レプリケーションを優先したいような場合、この FCIP QoS は有効な手段として 利用できます。 全てのアプリケーションは実行が重ならない限り、また実行が重なったとしても FCIP の輻輳が発生しない場 合には FCIP の帯域をフルに活用することができます。また実行が重なり輻輳が発生した場合においても QoS が帯域幅の調整を行いますので、目的に応じた FCIP 帯域の有効活用が可能となります。 これによって FCIP に割り当てられたネットワーク・リソースを有効にフル活用でき、また余分なネットワー ク・リソースを必要としないため、運用コストを抑えることも可能となります。 なお FCIP QoS の詳細や FCIP 設定に関する詳細、コマンドの詳細につきましては、Fabric OS Administrator’s Guide、Fabric OS FCIP Administrator’s Guide 並びに Fabric OS Command Reference Guide を参照ください。 16