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人的資本投資(Human Capital Investment)

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人的資本投資(Human Capital Investment)
人的資本投資(Human Capital Investment)
基本的な疑問
(1) 個人の貨幣収入は何によって決定されているのか?
(2) なぜ個人間で貨幣収入の相違が生じるのか?
I. 投 資
1.物理的投資
(例、機械等の設備投資)
2.人的資本投資
教育、(職場、職業)訓練、労働移動、情報収集
職場(もしくは職業)訓練
1.一般訓練 (general training)
訓練によって、訓練生の将来の限界生産力(または限界生産性)をますが、
訓練を提供している当該企業のみならず、他の企業においても同等の(潜在的)
限界生産力を増加される。
2.特殊訓練 (specific training)
訓練を施す企業において生産性を特に大きく増大させるが、他の企業におけ
る生産性には影響を与えない。完全な特殊訓練とは、訓練を提供している企業
内のみにおいて生産性の向上はあるが、他の企業においてはその訓練は価値を
持たない。つまり、後者ではなんら生産性の増加がみられない場合をいう。
収入プロフィール
大卒学歴の
収入プロフィール
収入
B
高卒学歴のみの
収入プロフィール
FG
0 18 歳
DC
22 歳
年齢
FG:心的資本投資によって、該当期間中に犠牲になる所得。放棄所得(foregone
earnings)をさし、犠牲になっている所得をさす。投資の費用の一部で
あるが、しかも最も大きな部分を占める場合が多い。
DC:直接的な金銭費用である。大学の授業料や本題などを含む。
人的資本投資の費用=FG+DC
もし、学生期間中にアルバイトなどをして収入があれば、上記の費用か
ら、アルバイトの収入を差し引いた金額が人的資本投資の費用となる。
人的資本投資の費用=FG+DC―アルバイトの収入
II. 職場(もしくは職業)訓練費用の負担
一般訓練は、訓練をうける人(訓練生)の生産性を全般的に向上させるので、
訓練終了後、本人は訓練を提供している企業にとどまる必要はない。そのため
に、訓練を提供する側としては、訓練費用の負担を出来る限り避けようとする。
一方、特殊訓練は、訓練を提供している企業(職場)での訓練生の生産性と
向上させるが、訓練で獲得したその技術は他の企業においてはあまり利用価値
がない場合をさす。もし、まったく他企業では使うことが出来ない、もしくは
生産性が向上しない場合には、訓練を提供する企業における「完全なる特殊訓
練」となる。
1.一般訓練
この場合には訓練生は獲得した人的資本(例えば、技術)などを、訓練を施
している当該企業のみならず他企業でもつかえるので、もしかの場合に当該企
業を辞めて企業に転職することも考えられる。すると、この訓練生を雇用して
いる企業は損失を最小にするために、出来る限り一般訓練を雇用者に提供する
ことを避けようとするインセンティブが働く。そのために一般訓練費用はそれ
を受ける雇用者が多くを負担することになる。実際には、
「費用の負担」とは訓
練期間中の賃金が低いという形式をとる。(思いつきですが、例として、「すし
屋の職人になろうとして弟子に入ったら、給料が非常に少なかった。」)
2.特殊訓練
訓練を施す企業においてのみ訓練生の生産性が向上するが、その技術は他の
企業では利用できない。少なくとも他企業での生産性は訓練を提供している企
業での生産性より低い。この場合は、訓練生は例え技術を習得としても当該企
業のでしか使えないので、わざわざ訓練費用を自ら負担して訓練を受けようと
するインセンティブはなくなる。一方、企業側では、労働者にその技術を獲得
してもらわないと、企業生産ができないとなれば、訓練の費用を負担しても、
労働者に訓練を提供しようとする。
この場合に、もし訓練生の訓練期間中の賃金が訓練を受けない人と同じであ
れば、訓練自体が苦痛と感じられるものであれば、訓練を自ら受けようとする
インセンティブはなくなる。ゆえに、企業側では訓練を受ける人に対しては、
プラスアルファの賃金を上乗せするか、将来の企業内昇進の近道とかなんとか、
ある程度のインセンティブを与える必要が生じる。
3.一般訓練と特殊訓練が連続的な場合
一般訓練がそのまま特殊訓練となるような人的資本投資があるとするならば、
この訓練の訓練生と企業側との費用負担シェアーは連続的に変化すると考えら
れる。つまり、「完全なる一般訓練」の状態では訓練生が 100%の費用負担をし
て、「完全なる特殊訓練」の時では企業側が費用を 100%負担することが予測さ
れる。それを図にすると以下のようなると思われる。
訓練生の費用負担率
100%
企業側の負担率
0%
A
(1-X)%
X%
0%
一般訓練
A
100%
特殊訓練
訓練生の費用負担=X%
企業の費用負担率=(1−X)%
この図では、訓練が専門的になればなるほど、訓練生の費用負担率が低減的
なっているが、実際の場合にどのような曲線になるか、人的資本のタイプによ
ると思われる。
III. 収入、費用、収益率の関係
私たちが自分自身に人的資本を行うかどうかという投資の決定に限らず、一
般に企業がプロジェクトに投資を決定する際に、参考になる方式として、現在
価値方法と内部収益率方法があります。
前者の方法は、プロジェクト(もしくは人的資本の投資)から将来予測され
る収入を現在の価値に置き換えたものと、そのプロジェクトに必要な費用を同
じく現在の価値に置き換えたものとを比較します。そして、もし収入の現在の
価値が費用のそれよりも上回れば、そのプロジェクト(もしくは人的資本の投
資)は行われるべきであると結論を下します。
(余談になりますが、上記の場合に、将来にわたる収入について正確に把握す
ることが非常に困難である。そのために、このような状態を想定して、という
条件付になります。同じく費用に関してもこのことは言えます。例えば、随分
前に政府で決定された公共事業には、環境破壊などの費用は計算にされていな
かったりしますと、実際に事業が完成したときには、費用の現在価値が収入の
現在価値を上回ることが予測されます。)
(1)現在価値方法 (Present Value Method)
Y:人的資本への投資をした場合の収入
X:人的資本投資をしない場合の収入
i:市場の割引率(例えば、本人が資金調達をする場合に適用される市場の金利)
r:内部収益率
(上記で、X は投資への費用でしたら分かりやすいと思います。説明ではその
ようにしていますが、ここではもし投資をしなかったならば、その道を歩いた
であろう(つまりそのキャリアーを選択した)と考えられる。これは、人的資
本に投資をしたために犠牲になった機会費用です。私個人では、おそらく家業
をついで大金持ち(?)になっていただろうと想定できるので、この人生(家
業)が私の大学教官の機会費用となります。今思えば、若気の至りでした。あ
ーーーー。)
Y の現在価値
n
 Y 
V (Y ) = ∑  t t 
t = 0  (1 + i ) 
X の現在価値
n
 Xt 
V (X ) = ∑ 
t 
t = 0  (1 + i ) 
Y と X とのそれぞれの現在価値の差, d:
n
 Y 
d = V (Y ) = ∑  t t  −
t = 0  (1 + i ) 
n
 Xt 
.
V (X ) = ∑ 
t 
t = 0  (1 + i ) 
…
(1)
もし d>0ならば、収入の現在価値が費用の現在価値を上回ることになりま
すので、この人的資本(プロジェクト)への投資を決定します。
一方、もしd<0ならば、損が生じていますので、この投資を断念することが
望ましいです。
上記の式(1)には、直接的な金銭的費用が明示的に示されていませんが、も
し金銭的費用、C、がある場合には、以下の式になります。
n
 Y 
d = V (Y ) = ∑  t t  −
t = 0  (1 + i ) 
[例 1]
n
 Xt 
V (X ) = ∑ 
t 
t = 0  (1 + i ) 
−
C .
…
(2)
人的資本への投資をすべきかどうか、決定しなさい。
今期(0期)
来期(1期)
Y
C
$1,000
$ 500
$5,000
X
$2,000
$2,000
Y:人的資本への投資をした場合の収入
X:人的資本投資をしない場合の収入
C:人的資本への直接的な金銭費用
i:市場の割引率(例えば、本人が資金調達をする場合に適用される市場の金利)
ここでは、i=.10 とします。
 5,000 
V (Y ) = 1,000 + 
 − 500 = 1,000 + 4,545.5 − 500 = 5045.5
 (1 + 0.1) 
 2,000 
V ( X ) = 2,000 + 
 = 2,000 + 1,818.2 = 3,818.2
 (1 + 0.1) 
d = V (Y ) − V ( X ) = 5,045.5 − 3,818.2 = 1,227.3 > 0
ゆえに、この人的資本への投資は行われるべきである。
(注意、この例での計算において、直接費用である C=500 を Y の現在価値か
ら引いています。これは式(1)を使っていると考えてください。もし式(2)
を使うならば、次のようになります。
)
d = V (Y ) − V ( X ) − C = 5,545.5 − 3,818.2 − 500 = 1,227.3 > 0
(2)内部収益率方法 (Internal Rate of Return Method)
Y:人的資本への投資をした場合の収入
X:人的資本投資をしない場合の収入
i:市場割引率(例えば、本人が資金調達をする場合に適用される市場の金利)
r:内部収益率
この計算方法は、(1)現在価値方法とほとんど同じですが、市場の割引率の
代わりにr(内部収益率)を使って、式(1)もしくは式(2)のdをゼロと
するような、rを見つけます。そして、見つけられたrが i (市場割引率)よりも
大きければ、この人的資本投資の収益率が上回っているので、投資をすべきと
考えます。つまり、市場で i=10%の金利で資本を借りて、投資をした結果、10%
以上の見返りが得られたということになります。
n
 Yt  n  X t 
−∑
d = V (Y ) − V ( X ) − C = ∑ 
−C = 0
t 
t 
t = 0  (1 + r ) 
t = 0  (1 + r ) 

5,000  
2,000 
− 500 = 0
− 2,000 +
d = 1,000 +

(1 + r )  
(1 + r ) 


5,000 − 2,000 
d = 1,000 − 2,000 − 500 +
=0
(1 + r )


.
…
(3)
− 1,500 +
3,000
=0
(1 + r )
3,000
= 1,500
(1 + r )
3,000
= (1 + r )
1,500
2 = (1 + r )
r =1
∴100%
ここで、r=1と i=0.1 では、明らかにr>i とですので、この人的資本への投
資をすべきという決定になります。結論は、現在価値方法を使った場合と同じ
なならなければなりません。
IV. 収入分布
個人間でなぜ収入が異なるのか、不思議なことです。大方、お父さんやお母
さんがお金持ちだったから(もしくは先祖代々の遺産)、子供もお金持ちとなり、
そのお金をいろいろに使って収入が多いと考えられます。これは個人の能力や
努力とは関係ないところで、収入が決定されていることになります。一方、両
親や先祖の資産は大方の日本人にはないので、ほとんどが本人の能力によって
収入が違うのだという意見もあるかもしれません。これら二つの考えの根本と
して、収入の違いは資産力か個人の能力かということです。前者を是正するた
めには、遺産相続などに大きな相続税を科すことが良い方法かもしれません。
一方、後者の場合には、比較的能力が発揮できない人にその機会を与えること
が望ましいといえるかもしれません。
(脱線、ここの文章で、歯切れの悪い言葉をつかっています。ここに注意して
ください。つまり、これを書いている人はどれが真実か知らないのです。真実
を確かめるまでは、「と思われます。」とか「かもしれません。」などと。。。)
すると、日本人の多くが神話として信じているように、1 億(かな?)総中産
階級という、国民全体が中産階級となっているとしたならば、大方の日本人は
大きな遺産もなく(もしくは高い相続税で 2∼3 世代のうち財産を無くしてしま
う)、また能力も同じぐらいなのかも知れませんね。
1.平等主義的アプローチ
個人の能力は大方皆同じである、と仮定します。人的資本への投資から生じ
る収益率の変化は皆同じであるということです。もし、A さんが 1,000 円を自
分の人的資本に投資をした場合に、そこから生まれる収益率が10%とすれば、
来年には 1,000 円が 1,100 円になってかえってくる。B さんについても全く同
様に 1,000 円の投資に 1,100 円が得られる、このようなことを平等主義では考
えられます。すると、収入の違いは、どれだけ多くを人的資本に投資をしたか
によって決まることになります。すると、資産力がある人ほど大きな人的資本
投資が可能になり、その結果その人の収入は多くなります。
以上のことを、図で表すと以下のようになります。
限界収益率
誰も同じ収益率の曲線。
D
0
人的資本投資額($、¥)
図の D は収益率の曲線ですが、これは人的資本の需要曲線とみなすことがで
きます。収益率が低減しているので、むやみやたらと人的資本を増やせば良い
とは言えません。どこまで人的資本投資をするか決定するには、投資の費用曲
線が必要です。
S1
限界収益率
S2
r1
S3
r2
r3
0
HC
人的資本投資額($、¥)
上の図は、人的資本へ投資をする際の各個人の資金力を表しています。図で
は、S1 の人が 3 人の中で最も資金調達能力が無く、S3 の人は一番資金調達能力
があることを表しています。例えば、HC の金額だけ人的資本へ投資をする場合
に、S1 の人の金利(市場割引率)はr1%です。一方、S3 の人の金利は r3%で、
明らかに S1 の人より安い金利で、お金の調達が可能になります。
この関係は、人的資本に限ったことではなく、企業が設備投資をする際に市
場から資金を調達しようとするばあいに、S1 社は自社資金が無いために(おそ
らく中小企業なのでしょう)金融機関から高い利息を請求されたり、多くの担
保を取られることを意味しています。一方、S3 社は自社資金(例えば、内部留
保:会社利益から蓄えたお金)が多いために、市場から借り入れる必要が無い
場合などが考えられます。また、S3 は大企業なので金融機関からの信用も厚く、
担保もなしで低金利で資金調達ができることも考えられます。
では、二つの図を一緒にして見ましょう。
限界収益率
S1(山田さん)
S2(富田さん)
r1
S3(藤田さん)
r2
r3
D
0
HC1 HC2 HC3
人的資本投資額($、¥)
すると、山田さんが人的資源に一番少なく投資をして、次に富田さん(家内の
旧性)が次で、一番人的資源への投資が多い人は藤田さん(母の実家)になり
ます。(括弧の中に好きな名前を入れましょう!!!)
では、この図からなぜ収入がS3の人が一番と分かるのでしょうか?二通り
の方法があります。最初は上の図を使って、
限界収益率
S3(藤田さん)
r3
E
D
0
HC3 人的資本投資額($、¥)
HC3 の資金を借りるのに、r3の金利を払ったとします。すると債務は、
r3xHC3となり、丁度、0・r3・E・HC3の長方形が返済する金額と
なります。一方、需要曲線Dの下の面積は、人的資本への投資が0からHC3
まで行われた場合の、収益率(r)をあらわしているので、
限界収益率
r’
S3(藤田さん)
r”
E
r”’
D
hc’
0
hc”
hc”’ 人的資本投資額($、¥)
hc "'
人的資本に投資をしたことから生じる総収益
∫ D(r )dr となり、費用( r" '×hc" ' )
0
となります。そこで、r”’より上の部分で、需要曲線Dよりも下の部分が本人の
人的投資による純利益となります。以上から、人的資本への投資が多いほどそ
の人の手元にはいる収入が多いことが分かります。
別な方法は、収入と人的資本投資額との関係を図に表してみると、もっと明
確になります。
収入
収入曲線
0
人的資本投資額
上の図では、人的資本の収益率が低減である、という前提で収入曲線が描か
れています。収益率はこの曲線の傾きです。傾きが原点では正に大きく、次第
に、人的資本投資額が多くなると傾きが小さくなっていることが分かると思い
ます。
では、少し前の図ですが、S1さん、S2さん、S3さんの人たちの人的資
本投資額を図に入れてみます。
収入曲線と人的資本投資額
収入
Y3
収入曲線
Y2
Y1
0
人的資本投資額
HC1
HC2
HC3
以上のように、S1 さんは HC1 だけ人的資本に投資をしたので Y1 の収入があ
り、S2 さんは Y2、そして S3 さんは Y3、という収入を得ることになります。
以上が「平等主義的アプローチ」の考えです。ですから、収入の不平等は、
個人の持つ能力(需要条件)ではなく、資産力(供給条件)に原因があると考
えます。
2.エリート・アプローチ
この考えは、平等主義的アプローチの全く反対です。つまり、人的資本への
投資の違いは、個人のもつ能力(需要条件)によるのであって、資金調達力(供
給条件)はすべての人に同じである、と考えます。資金調達力が同じであると
は、誰もが金融機関に資金の借り入れを申し込んだ場合に、まったく差別無く
誰もが同じ金利で資金を得ることができます。また、個人の能力が異なるとは、
能力がある人は同じことをしてもより良い成果が得られるのに対して、なにを
しても人並みになれない状況をさしているのかも知れません(弱肉強食の世界
なのでしょか?)。これらを図にすると以下の様になります。個人の能力の違い
は需要曲線の違いで表します。また、資金調達能力は同じですので、一つの供
給曲線で表すことになります。
限界収益率
S
r3
D3
D2
D1
0
HC1 HC2 HC3
人的資本投資額($、¥)
上の図では、D1 の人が人的資本への投資が最も少なく、D3 の人が一番多く
人的資本に投資をすることになります。
少し前の図で、収入曲線と人的資本投資額との関係から、D3 の人の収入が一
番多くなります。このエリート・アプローチでは、もっとも能力(生産性)の
ある人が最も多い人的資本に投資をして、その収益率 r3 も一番高いことから、
収入の不平等は平等主義よりさらに大きくなることを表しています。
以上です
お便り:
まったくのお節介ですが、もしかして貴方は自分の才能に気がついていない
のかも知れませんね。優れた能力や才能あっても自分で自覚して育てあげない
と、埋もれてしまいます。私には何がこの世の中で本当なのか分かりませんが、
自分を信じて、理想(夢)をもって、毎日すこしでも努力をすることにより、
知らないうちに大きなものが自分のものになってくるのではないかと思います。
せっかくこんなに素晴らしい大学、学類に入学できたのですから、是非頑張
ってください。そして、自分が望むような人生を送られることを希望します。
直
(少々疲れました。このハンドアウトを見直すエネルギーがなくなってきま
した。文言のおかしなところは、適当に直してください。
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