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廣岡 浄進 日本文化史 2 前 期 2
広域科目 教員名 廣岡 浄進 科目の系列 授業科目 日本文化史 年 次 2 学 期 前 期 単 位 2 (広域基礎) ● 授業の概要 この授業では、日本文化のなかから、芸能文化の成立と展開の歴史を中心に考える。芸能をとりあげるのは 、大阪にそくして考えたとき、これが観光資源としての役割を果たしてきた歴史があるからだが、同時に、 いまや伝統芸能として庶民から縁遠い、敷居の高い文化(ハイ・カルチャー)とみなされているものが歴史 的には民衆のなかから出てきたこと(サブ・カルチャー)、それが権力者層にも歓迎されたことでやがて権 威を確立していったことを知っておく必要があるからだ。なお、積極的に視聴覚資料を利用して、具体的な 理解を深めることにつとめたい。 ● 授業の到達目標 a. 知識・理解 日本の歴史のなかでの諸芸能の成立や展開について知るとともに、芸能と賤民(被差別民衆)との関わりを 理解する。 b. 思考・判断 芸能がなぜ差別されたのか、とりわけ宗教芸能における両義性について考える。 c. 関心・意欲 歴史を見る視点について考えることを通じて、自ら探究心を持って学んでほしい。また、日本社会に今ある 差別について、その歴史的背景の一端を知ることから、関心をむけてほしい。 d. 技能・技術 e. その他 大阪の町が育ててきた伝統芸能たる人形浄瑠璃文楽の実演に触れる。その観光資源としての役割にも気づく 。 ● 受講にあたっての留意事項 ・中学校社会科教員免許状または高等学校地理歴史科教員免許状取得のための選択科目 ・学外授業を実施する。6月6日(土)文楽鑑賞教室、国立文楽劇場にて。原則として全員が参加すること。 学生自己負担額800円(ただし交通費自己負担)。大阪市営地下鉄(もしくは近鉄)日本橋駅より歩5分、 現地集合現地解散。 ● 教科書(授業で常時使用する分) / 著者『書名』(出版社) なし。 ● 参考書 / 著者『書名』(出版社) ・網野善彦、大隈和雄、小沢昭一、服部幸雄、宮田登、山路興造(編)『音と映像と文字による日本歴史と 芸能』(平凡社)。大学図書館で所蔵しており、VHS教材を授業で適宜利用する。 ・このほかは、授業のなかで紹介する。 ● 成績評価の方法 毎回提出物(1回2点、小計30点)、文楽鑑賞教室参加レポート(5点)、授業への積極性など(15点)、期 末試験(50点) 到達目標 a. b. c. d. e. 知識・理解 思考・判断 関心・意欲 技能・技術 その他 1.定期試験(期末試験) ○ ◎ ○ ○ 2.小テスト・授業内レポート ◎ ○ ○ 3.宿題・授業外レポート ○ ○ ○ 評価手段 評価比率 50% 30% ○ 5% 4.授業内発表・授業内の制作作品 5.授業態度・授業への参加度 ○ ○ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ 15% 6.その他() 全体 ● 主題と内容 ・第1回 授業説明 授業の構想や、学外授業について説明する。あわせて、受講上の諸注意をおこなう。 ・第2回 盲僧琵琶 盲僧琵琶による平家物語の弾き語りは、小泉八雲の小説「耳なし芳一」でよく知られている。琵琶法師の 語りものとして成立した平家物語は、能・文楽・歌舞伎など、後世の芸能の重要な演目にとりこまれてお り、日本文化の感性の基層をなしているといえる。 ・第3回 平家物語 平家物語の成立や内容を紹介する。 ・第4回 猿楽能 能の大成者としての観阿弥世阿弥父子の名は、よく知られている。ここでは、能や狂言とはどのような芸能 なのかを確認したうえで、それがどのような土壌から出てきて、どうやってその地位を確立させていったの かを、たどる。 ・第5回 宗教芸能としての賤民芸能 中近世の芸能の基層には、賤視されたひとびとによって担われた、宗教的な放浪芸能があった。その担い手 としての中世賤民の形成について整理したうえで、異能者とみなされたかれらの聖賤の両義性、宗教行事に おいて担ったキヨメ役や祝福芸などについて説明する。 ・第6回 ささら説経と説経節 いまでは芸能そのものとしてはすたれてしまったが、後世の舞台演劇などに深い影響をのこしている説経節 という語りもの芸能があった。「俊徳丸」や「信田妻」(葛の葉)など、説経節にうたわれた説話は現在も 大阪の地名にのこっており、能や歌舞伎の演目にもなっている。それを語り歩いたささら説経をとりあげた い。 ・第7回 人形浄瑠璃 歌舞伎の演目は、しばしば文楽(人形浄瑠璃)のそれを流用している。大阪の天神橋筋商店街のアーケード を飾っているのも、文楽人形の巨大レプリカである。前史としての琉球からの三線の伝来と三味線の発明、 浄瑠璃の成立、人形操りにおける夷舁きの系譜、大阪で発展した文楽の歴史、竹本義太夫と近松門左衛門な どを紹介する。猫皮なめしの仕事にも言及したい。 ・第8回 歌舞伎 日本の伝統芸能といえば歌舞伎をあげる人は多い。その意味では、歌舞伎をはじめとする芸能は観光資源で もある。歴史をたどれば歌舞伎もまた河原者とよばれた賤民の芸能から生まれ、出雲のお国が興した女歌舞 伎への禁圧の結果、紆余曲折を経て今日みる野郎歌舞伎となったことなども、知っておきたい。 ・第9回 文楽鑑賞教室(学外授業) 国立文楽劇場が毎年主催する文楽鑑賞教室を利用して、人形浄瑠璃文楽について技芸員の解説をうけながら 演目の一幕を鑑賞する。 ・第10回 忠臣蔵 人形浄瑠璃のために書かれた「仮名手本忠臣蔵」は、歌舞伎でも人気演目である。どのような話であるのか 、おさらいしてみたい。 ・第11回 近世の「悪所」 中世の芸能を担った賤民たちは近世にかけて分化していき、一部には脱賤化もみられるが、他方での穢多と しての身分制の強化もすすむ。芝居町の形成や、賤民による興行支配、江戸幕府による歌舞伎上演にたいす る統制や役者への差別など、近世の賤民制度との関係を整理する。また、近松門左衛門の浄瑠璃「曾根崎心 中」をはじめとする心中ものなど、遊女の登場する作品は多い。遊郭も城下町の外部に配置された。これら が総称されて「悪所」と言われたのだが、芸能や作品の背景にある近世社会について学ぶ。 ・第12回 落語 数年前に、大阪天満宮の境内に天満繁盛亭という落語の寄席ができた。大阪のお笑い芸というと吉本興業な どの新喜劇や漫才が連想されることが多いが、上方落語も忘れてはならない。たとえば、戦前に創作された 近代落語「代書屋」には、在日朝鮮人をはじめ、多文化都市大阪の諸相が語られている。 ・第13回 祝福芸と大道芸 万歳や三番叟など、祝福を担った門付芸能を見る。 ・第14回 猿まわし 賤民芸能とみなされたがゆえにいったんは放棄封印された周防の猿まわしが小沢昭一らの援助で部落解放運 動として復活する過程を学びたい。 ・第15回 まとめ 授業をふりかえり、まとめる。