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7.2 寒地交通事故対策に関する研究

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7.2 寒地交通事故対策に関する研究
7.2
寒地交通事故対策に関する研究
7.2 寒地交通事故対策に関する研究
研究予算:運営費交付金(一般勘定)
研究期間:平 18~平 22
担当チーム:寒地交通チーム
研究担当者:平澤匡介、小寺紳一、武本東
【要旨】
全国の交通事故死亡者数は、平成 17 年に 7,000 名を切り、平成 19 年には約 5,700 名となった。北海道では、
平成 19 年に三年連続で都道府県別交通事故死者数ワースト1を返上したが、平成 19 年の交通事故死者数は 286
名、都道府県別で愛知県に次ぎ2位となっており、依然として交通事故で多くの犠牲者を出しており、また、交
通事故件数の減少は死者数の減少に比べて小さい。また、冬期にはスリップ事故等の冬型交通事故が多発してお
り、寒冷地特有の交通事故も含め寒地交通事故対策は良質な社会資本整備のための重要な課題である。本研究で
は、科学的な事故分析を行うための交通事故分析システムの高度化、死亡交通事故対策や冬型交通事故対策等の
地域特性を踏まえた事故対策等の研究開発を行った。
キーワード:交通事故分析システム、交通事故対策、地域特性、ランブルストリップス
1.はじめに
全国の交通事故死亡者数は、平成 17 年に 7,000 名を
切り、平成 19 年には約 5,700 名となったが、北海道に
おいては、都道府県別でワースト2の交通事故死亡数を
数え、依然として多くの犠牲者を出している。また、冬
期にはスリップ事故等の冬型交通事故が多発するなど寒
地交通事故対策は重要な課題である。
・GIS ソフトウェアを使用しないで事故データ、道路
構造データ、気象データを用いた条件検索を行い、
検索結果を出力する簡易検索ツールの開発
・複数区間の事故データを一括で検索する機能など検
索機能の強化
・EXCEL との連携の強化、操作性の向上
これらの機能追加等の高度化によって、より詳細で
高度な分析を行うことが可能となった(図 2)
。
2.研究実施内容
本研究では、地域特性を踏まえた交通事故対策を効率
的に行うための技術開発として、
改良した交通事故分析システムは、北海道開発局の各
開発建設部の調査及び交通安全担当者へ配布している。
システムのインストール方法、使用方法およびシステム
(1)交通事故分析システムの高度化と交通事故分析
を使った事故分析事例等を説明する講習会を実施し(写
(2)地域特性を踏まえた交通事故対策の開発
真 1)
、利活用を促進している。
に取り組んでいる。
3.交通事故分析システムの高度化と交通事故分析
3.1 交通事故分析システムの高度化
交通事故と道路構造及び気象状況などとの関連を分析
するGISを活用した交通事故分析システムの分析機能
を高度化するため、以下のデータ更新や改良を行った。
○データ更新
交通事故データ、MICHI システムデータ、気象データ、
道路交通センサスデータ、デジタル道路地図の更新
○分析機能の高度化・操作性の向上(図 1)
・MICHI システムの道路構造データと事故データの相
関を分析する機能を追加
図1 交通事故分析システムの簡易検索ツール
7.2
寒地交通事故対策に関する研究
3.2 交通事故分析の実施
北海道の交通事故死者数の減少は、ここ数年他の都道
府県に比べ大きい(図 4)
。このような交通事故死者数の
減少要因を探るため、様々な面から交通事故分析を実施
した。
550
北海道
東京
埼玉
500
400
350
300
事 250
故
200
件
数 150
100
50
0
450
交通事故死者数(人)
はみ出し禁止区間の正面衝突事故件数
愛知
千葉
400
350
300
250
210
162
96
76
47
37
13
14
158
135
143
79
28
65
31
49
25
15
年
16
17
軽傷
重傷
死亡
図2 交通事故分析例(はみ出し禁止区間における
正面衝突事故件数)
また、北海道の国道で発生した交通事故に関する諸デ
ータを用いて交通事故の概要を取りまとめた「北海道の
交通事故 国道統計ポケットブック」
(図 3)を発行し、
情報発信を行っている。
200
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
図4 主な都道府県の交通事故死者数の推移
図 5 は、道路施設の有無による事故発生状況の違いを
分析した例である。平成 4~12 年度に中央分離帯が設置
された区間 187.8km では、設置前で正面衝突事故件数が
合計 126 件および死者数が合計 11 人であったところ、
そ
れぞれ設置後で 57 件(減少率 55%)および2人(減少
率 82%)となった。
H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15
14.5
5(0)
9(0)
設置後
13(2) 15.3
5(0)
事故件数57件、死者数2人
25(4) 38.5
13(1)
4.0
3(1)
0(0)
15.1
6(0)
1(0)
12(0) 19.6
2(1)
11(1) 16.4
2(0)
設置前
事故件数126件、死者数11人
34(3) 40.2
22(0)
24.3
13(0)
7(0)
合計 187.8km
*
写真1 交通事故分析システム講習会(H19 年度)
数字 は、整備延長(km)
*
*
対象は正面衝突事故
の数値は事故件数、( )は死者数
図5 中央分離帯整備区間の正面衝突事故発生状況
近年の交通事故死者数の減少には、道路整備の促進の
効果、自動車の性能向上、車の利用頻度、人口動態など
の社会情勢の変化といった様々な要因が作用していると
考えられる。今後の交通事故対策を検討する上では、こ
のような変化を考慮して分析を進めることが必要である。
図 6 は、高齢化の進行に対応した事故対策の検討のた
め、一般国道 274 号を対象として高齢者(65 歳以上)事
故の多い箇所を抽出したものである。
図3 北海道の交通事故 国道統計ポケットブック
7.2
900
寒地交通事故対策に関する研究
(km)
北
海
800
道
の
700
国
道
600
・
道
500
道
に
400
お
け
300
る
整
200
備
延
100
長
道道センターライン
218.8
42.9
828.2
路肩
追越禁止黄色1条線
6.3
40.5
追越禁止黄色2条線
132.6
25.8
3.9
39.2
H14年度
H15年度
229.2
8.5
254.9
311.6
107.8
0
H16年度
H17年度
H18年度
図7 北海道の国道・道道におけるランブル
ストリップス整備延長の推移
80
図6 高齢者事故の多い区間の抽出例
(一般国道 274 号)
30
73
60
28
20
37
40
8
10
20
4.地域特性を踏まえた交通事故対策の開発
4.1 ランブルストリップスの普及
正面衝突事故対策として効果を発揮しているランブル
ストリップス(写真 2)は、平成 14 年の実道での設置を
皮切りに整備が進み、北海道内の国道での施工延長は、
平成 18 年度末現在で 39 路線、609km に達した。道道を
併せた設置延長は 828km に達し(図 7)
、北海道外でも、
上信越道、磐越道や一般国道等で整備が進んでいる。
ランブルストリップスを整備した箇所での正面衝突事
故件数と正面衝突事故死者数を図 8 に示す。データは
2002 年から 2004 年の 3 年間に整備された 60 箇所、総延
長 108km における各施工箇所の施工前 2 年間と施工後 2
年間を比較したところ、正面衝突事故発生件数は 49%減
少、正面衝突事故死者数は 71%減少した。
0
0
Before
installation
整備前
(2 years)
(2 年間)
After
installation
整備後
(2 years)
(2 年間)
正面衝突事故件数
Before
installation
整備前
(2 years)
(2 年間)
After
installation
整備後
(2 years)
(2 年間)
正面衝突事故死者数
図8 ランブルストリップス設置箇所の事故発生状況
ランブルストリップスが適切に整備されるため、基本
的な考え方、具体的な規格や施工方法、設置の際の留意
事項をとりまとめた「ランブルストリップス整備ガイド
ライン(案)
」を発行した(図 9)
。 官公庁等に約 1,000
部の配布実績があり、さらに、Web 上でダウンロードサ
ービスを開始した。
平成 19 年度末で約 200 件のダウンロ
ード実績があり、北海道外からのダウンロード件数が約
半数を占めている。さらに、国外からの問い合わせも多
いことから、英語版のランブルストリップス整備ガイド
ライン(案)を作成した。
写真2 ランブルストリップス
図9 ランブルストリップス整備ガイドライン(案)
7.2
寒地交通事故対策に関する研究
4.2 . 2 切削型区画線の開発
4.2 ランブルストリップスの多様化
ランブルストリップスの整備により、正面衝突事故件
ランブルストリップスの施工技術を応用し、区画線施
数及び死者数は減少したものの、依然として正面衝突と
工部の舗装を一定深度で切削し、さらに切削溝内にラン
路外逸脱による死亡事故の割合が高い状況にある
ブルストリップスを設置する“切削型区画線”を開発し
(図 10)
。このような事故発生状況に対応するため、ラ
た(図 12、写真4)
。
ンブルストリップスの多様化について試験研究を行った。
車線逸脱を防止する効果を有するとともに、区画線が
除雪作業で削られることを防ぐことで耐久性を向上させ
人対車両
北海道
(258件)
正面衝突
追突
車両相互 路外 工作物
その他 逸脱 衝突
る効果が期待できる。
62件
67件
17件
48件
13件
46件
24.0%
26.0%
6.6%
18.6%
5.0%
17.8% 1.9%
5件
ピッチ b+c
b
その他
d
全国
(5889件)
1928件
32.7%
0%
646件 328件
11.0% 5.6%
20%
40%
1702件
28.9%
60%
196件 870件 219件
3.3% 14.8% 3.8%
80%
ピッチ b+c
c
b
e
c
舗装面
b
切削面
図 12 切削型区画線の断面図
100%
図 10 北海道と全国(北海道以外)の事故類型別
死亡事故の割合(平成 18 年)
4.2 . 1 白線破線区間用ランブルストリップスの開発
写真4 切削型区画線
白線破線(追越し可)に設置するランブルストリップ
スの規格検討を行った(写真 3)
。苫小牧寒地試験道路に
おいて騒音・振動の測定と一般道路利用者による走行実
験を行ったところ、深さ9㎜、横幅 35cm の規格に良好な
結果が得られたため(図 11)
、実道に施工する規格とし
て提案した。
さらに、夜間雨天時での区画線の視認性向上のため、
高屈折率ガラスビーズを用いた区画線の視認性実験を実
施し(写真 5)
、高屈折率ガラスビーズを用いることで視
認距離が約 20m 向上する結果となったが(図 13)
、事故
防止効果、耐久性、ライフサイクルコスト等の面から検
討する必要がある。
湿潤状態
湿潤状態
写真3 白線波線区間のランブルストリップス
(左:横幅 35cm、右:横幅:15cm)
効果有り
あまり効果なし
やや効果有り
効果なし
どちらともいえない
10, 8.3%
n=121
111, 91.7%
ランブル①
(35cm)
4, 3.3%
n=121
39, 32.2%
ランブル②
66, 54.5%
(15cm)
写真5 夜間湿潤路面での区画線の視認性
(左:溶融式、右:高屈折率ガラスビーズ)
通常区画線
切削型区画線
切削型区画線(高屈折ガラスビーズ)
100%
80%
累
積 60%
百
分 40%
率
20%
12, 9.9%
0%
20%
40%
60%
80%
図 11 注意喚起効果に対する回答
100%
0%
0
20
40
60
80
被験者から区画線までの距離(m)
100
図 13 夜間湿潤状態における視認性の評価
7.2
4.3 地域特性に合致した事故対策の開発
工作物、トンネル坑口などガードレールの設置が適さ
ない場合の事故対策としての衝撃吸収型ボラード(図
14)や、ローコスト、省スペース、維持管理、衝撃吸収
に優れた中央分離構造としてスウェーデンで導入されて
いるワイヤーケーブル式の分離構造(写真6)など、道
路条件や地域特性に合致した交通事故対策の導入検討や
提案を行った。
図 14 衝撃吸収型ボラード
写真6 ワイヤーケーブル式の中央分離構造
5.まとめ
道路管理者や交通管理者等との連携をさらに図るとと
もに、引き続き、人口動態・世代・時代による交通行動
の変化など中長期的な視点も考慮しつつ、科学的な交通
事故分析と地域特性に合致した交通事故対策のための技
術開発に取り組んでいく予定である。
寒地交通事故対策に関する研究
7.2
寒地交通事故対策に関する研究
RESEARCH ON COLD-REGION TRAFFIC ACCIDENT COUNTERMEASURES
Abstract : In this research, Traffic Research Engineering Research Team performs technological
developments that enhance cold-region traffic accident countermeasures based on the scientific analysis. In
FY 2006 and FY 2007, the team performs research on upgrading the traffic accident analysis system to
conduct scientific traffic accident analysis and countermeasures against fatal and winter specified accidents
taking into account regional characteristics.
Key words : traffic accident analysis system, traffic accident countermeasures, regional characteristics,
rumble strips
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