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営業を強化するための特効薬はあるのか?
企業経営に学ぶ 営業を強化するための特効薬はあるのか? 今後の行政における施策・事業の企画・推進には、営業的観点が必要と考える。本号は、企業の営業強化の特効薬に学ぶ。 三菱総合研究所 営業統括本部 主任 政田 敏宏 自 治 体 チ ャ ン ネ ル + 20 平 成 19 年 12 月 号 ■企業における営業力強化の必要性の増大 ①営業担当者に年間訪問スケジュールを モノが売れない時代、商品の差異化が図りに 決めさせる くい時代になり、企業は営業組織の強化や企画 担当者は、訪問しやすい企業だけを多頻度で 提案力強化に力を入れ始めている。人事異動な 訪問したり、引合いが入ってきた順に訪問しが どの営業組織の変更、数字を厳しく追求する目 ちである。しかし、スケジュールを決めること 標管理の強化、業績連動給によるインセンティ で定期的に訪問を行うため、利益貢献度の高い ブの向上などを行い、営業力の強化を図ってい 顧客へ訪問することができるようになる。担当 る企業が多いが、本当に営業は強化されている 者に対しては、手ぶら訪問を避けるため、有益 のだろうか? な情報収集やコミュニケーションに必要な勉強 限られた資源(人材・お金)の中で、組織変 を行う動機づけにもつながる。 更や目標管理の強化だけでは、営業の強化や成 ②できなかったことを重点的に報告させる 果の持続は困難である。営業組織の運営を見直し、 担当者に、提案やヒアリングなど、できなか 組織(チーム)という乗りものに見合った人財 ったことを上司に報告させることで、 「なぜで を乗せ、個人の力・モラルを高めながら目的・ きなかったのか?」という結果と原因を一緒に 目標に向かって運転していかないと、企業とし 振り返らせ、気づきを与えることができる。 ての営業は強くならないと私は考える。 数字の結果だけで評価するのではなく、担当 組織と個人の二つの観点から、どうすれば営 者の結果に至るプロセスも重視することで、考 業が強化されるかについて考えてみたい。 える力が身につき、行動も変わってくる。 また、 「できない」という思考を除外し、 「で ■組織の観点からみた営業強化策 (1)見える化 きる、やってみる」ことを大切にさせると、自 然と組織は活性化する。このような意識を植え 営業活動について、できるだけ数値化・見え 付けるためには、上司は根気とリスクをとる覚 る化を行うことが大切である。成功例や失敗例、 悟が必要で、部下は積極的な姿勢と上司の考え 商談状況、コンタクト状況などを見えるようにし、 方に対する理解が必要である。 訪問頻度などを数値化することで、上司は部下 に適切な営業アクションや指示が出せるように なり、マネジメントに活かすことができる。 (2)営業行動(プロセス)を管理する ■個人の観点からみた営業強化策 (1)お客様は誰か?(お客様の再定義) 営業担当者は、バリューチェーンの観点で、 売上数字だけでなく、営業行動を管理するこ お客様について再定義することが必要と考える。 とはどうだろうか? 注文先やエンドユーザーだけをお客様と捉えが 図表 企業における営業強化の特効薬 組織の観点からみた営業強化策 (1)見える化 (2)営業行動(プロセス)を管理する 個人の観点からみた営業強化策 (1)お客様は誰か? (お客様の再定義) (2)水面下に潜む思いに気づく(本質・ニーズ・問題点の発見) 企業における営業強化の特効薬 ●地道に組織力・個人能力を積み上げる努力 ●営業マンの育成の継続 資料:三菱総合研究所 ちであるが、お客様 = 営業活動を支えるパート 企業経営に学ぶこと(本誌編集部) ナーと考えると、自社のサービスを提供するの に必要なサプライヤーや自社の製造部門(後工程) もお客様と考えることができる。サービスの提 行政に「営業」という言葉・行為はない。あえ て言うなら、政策の企画、及び日常の窓口業務や 事業実施にこれに当たる要素があると考える。 供に関わる全員に、いかに気持ちよく仕事をし 本誌11月号「キーパーソンに聞く」でお話を てもらうか・ ・ ・を考え直すと、自然と営業部門 伺った奥州市水沢青少年育成市民会議の大村 と製造部門の摩擦も解消するであろう。 (2)水面下に潜む思いに気づく 千恵氏は、まさに当地域の子どもの社会教育の キーパーソンである。課題を抱える子どもに目 を向け、一人ひとりに向き合い、その言葉に耳を (本質・ニーズ・問題点の発見) 傾ける。当地域の「子どもの居場所」も、一人の 営業担当者は、顧客要望の本質を見分け、シ 中学生の言葉に始まる。大村氏をはじめ周囲の ナリオ・ビジョンを描くことが重要だと考える。 大人は、子ども達を信じ、その思いを実現するた めに応援するだけである。また、大村氏は他の 自社への期待や水面下に潜むニーズ・問題点を、 子どもの出来事を、JUMPと呼ばれる中高生の 担当者がいかに捉えるかがポイントである。そ ジュニアリーダーズクラブのメンバーに相談する。 れができれば、企画提案の質も向上し、結果と 子どものことは、子どもに相談するのがいいと して成約率も上がるはずである。 のこと。大村氏にとって、JUMPのメンバーは、 活動を支える重要なパートナーなのである。 “子ども=お客様”、 “子どもと向き合うこと= ■企業における営業強化の特効薬 営業活動”という表現は、まったく大村氏の意に 以上のように、ヒット商品に過度な依存をせず、 反するものである。しかし、 このように図式化す 企業業績の向上・維持を高めるためには、商品力・ 技術革新を高める努力と同様に、企業の営業を ることにより、今の行政が行う施策・事業に欠け ているものがみえてくると考える。 「行政は、利 用者(当事者)の視点の重要性を再認識すべき」 強化することも重要である。そのためには、地 ――三菱総合研究所 田渕雪子主席研究員は、そ 道に組織力・個人能力を積み上げる努力、営業 う指摘する(http://www.mri.co.jp/COLUMN/T マンの育成を継続することが一番の特効薬であ り、組織・個人両面からのマネジメント強化が 重要であると考える。 ODAY/TABUCHI/2007/0322TY.html)。 行政が、企業の営業強化の特効薬に学ぶ点は多 いのではないか。 自 治 体 チ ャ ン ネ ル + 21 平 成 19 年 12 月 号