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プレミアムブランド戦略

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プレミアムブランド戦略
企業経営に学ぶ
プレミアムブランド戦略
まちづくりや地域産業振興において、
「地域ブランド」が果たす役割は大きい。本号は、企業のブランド戦略の最前線に学ぶ。
三菱総合研究所 コンサルティング事業本部
主席研究員 五月女 政義
自治体チャンネル+
■プレミアムブランドの存在
販売方法・サービス、プロモーション、顧客関
薄型テレビ、デジタルカメラ、携帯電話等、
係のあり方等において、一貫したコンセプトを
これまで消費を牽引してきた花形商品の価格下
具現化した頂点戦略を展開することが重要とな
落が加速する中で、シェアNo.1・No.2以外の
る。ブランドは上位ポジションから下位ポジ
企業は収益悪化に苦しんでいる。一方、売上規
ションに展開するのは容易であるが、下から上
模は決して大きくないが、価格競争とはまった
に展開していくのはきわめて困難である。
く無縁で、長期にわたり高収益を謳歌している、
プレミアムブランドが存在する。
平成
年
月号
5 多くの商品がスペックやコストで価格が規定
されるのに対して、プレミアムブランドは当該
18
19 (2)プレミアム利益
■プレミアムブランドに必要な要素
ブランドに共感する人達にとっての価値そのも
そもそも(プレミアム)ブランドは、
「独自
のが価格となる。こうした価格設定が可能とな
の個性=アイデンティティーを有している」
「歴
るには、一方的な価値観の提示だけではなく、
史に裏付けられたブランドの原点を持つ」
「歴
ブランド価値そのものを顧客とともに共創(Co-
史の中で語り継がれる象徴的な伝説がある」
「時
Creation)していくプロセスが必要となる。こ
代のトレンドに適応した今日的な原点の解釈が
のコストとは無関係なプレミアム価格が、プレ
されている」といった要素が必要で、短期的に
ミアムブランドの利益の源泉となる。
は確立することが困難な、いわば血統(blood)
とも言うことができる。
(3)
「供給<需要」のコントロール
プレミアムブランドとしてのイメージを維持
するためには、常に「供給<需要」という関係
■プレミアムブランドとして
を維持する必要がある。購入したくても買えな
君臨し続けるための戦略
い状態を、常につくっておかなければならない
プレミアムブランドとして君臨し、かつ、高
ということである。規模拡大の誘惑に負けて、
収益を上げ続けるには、下記のようなプレミア
「供給>需要」となった瞬間から、プレミアム
ムブランド戦略を展開することが必要となる。
価値が崩壊し、ブランドのコモディティ化、陳
(1)頂点戦略
ファッションビジネスであればパリコレク
腐化が始まると言っても過言ではない。
(4)ブランドピラミッド
ション、自動車であればF1グランプリといった、
プレミアムブランドとして頂点を目指すほど、
最も競争の厳しい世界最高峰の舞台で、常に頂
その対象顧客は限定され、狭くならざるを得な
点としての評価を獲得し続けることが必要であ
い。こうした中でブランドビジネスとして利益
る。また、商品ラインナップ、顧客接点の場、
を獲得していくためには、ブランドピラミッド
図表 プレミアムブランドについて
プレミアムブランドとは
売上規模は決して大きくないが、価格競争とはまったく無縁で、プレミアム価値
をベースとしたプロフィットモデルにより、長期にわたり高収益を謳歌している
<必要な要素>
○独自の個性=アイデンティティーを有している
○歴史に裏付けられたブランドの原点を持つ
○歴史の中で語り継がれる象徴的な伝説がある
○時代のトレンドに適応した今日的な原点の解釈がされている
<君臨し続けるための戦略>
◆頂点戦略
◆プレミアム利益
◆「供給<需要」のコントロール
◆ブランドピラミッド
◆ブランドポートフォリオ
資料:三菱総合研究所
トクチュールで頂点イメージを形成(投資)し、
シャネルの5番に代表される香水で、莫大な利
なる頂点戦略が必要となるのである。
(5)ブランドポートフォリオ
日本人女性の3人に1人が、ルイ・ヴィトン
を所有していると言われる。一方、ルイ・ヴィ
トンを保有しているLVMH(モエ ヘネシー・
ルイ ヴィトングループ)にとっては、数多く
抱えるプレミアムブランドの中の一ブランドに
過ぎない。世界最高峰のブランドの集合体であ
るLVMHは、事業セクターポートフォリオ、ブ
ランドポートフォリオ、エリアポートフォリオ
など、多面的なポートフォリオを構築すること
により、プレミアムブランドの新陳代謝とリス
ク分散を図っている。
以上みてきたように、プレミアムブランド戦
略を展開するにあたっては、短期的な成果に惑
わされず、いかに長期的な視点から規模とブラ
ンドイメージのトレードオフという関係をコン
トロールしながら、ブランドエクイティを極大
化していくかということが重要となるのである。
アムブランドの地位を築いていると言える。他の
地域も、プレミアムブランドの確立を目指し、鋭
意努力している状況が推察される。
地域ブランドにおいても1ステップ上のプレミ
アムブランドとなるためには、本レポート前半に
ある「必要な4要素」があてはまるであろう。地
域が、それぞれの歴史や伝統、気候、風土等を
踏まえ、今日的な課題にも対応しつつ、今後どの
ようにありたいか?どんなまちにしたいか?とい
う、「独自の個性=アイデンティティー」を持つ
ことが大前提と考える。
同様に、本レポート後半、プレミアムブランド
として君臨し続けるための「5つの戦略」は、地
域ブランドにおいても有効であろう。実践する
フィールドを地域と読み換え、地域全体でこの5
つの戦略に取り組み、一種の差別化された価値を
生み出し、好循環を生み出すことが重要である。
19 5 月号
逆説的ではあるが、裾野を広げるためにもさら
19
年
は、顧客の裾野を広げることが不可欠となるが、
企業経営と同様に、自治体経営・地域づくりに
おいても、近年、「(プレミアム)ブランド」
(地
域ブランド)の形成が進められている。国の財
政改革や少子高齢化により地域の財政は苦しくな
り、住民のライフスタイルの変化や消費者ニーズ
の多様化が進展する中、地域がそれぞれの特性を
活かし、地域のブランド力を高めながら、競争力
を高めることが求められているのである。
インターネットで「地域ブランド」を検索する
と、いくつかのランキング(外部評価)の結果が
ヒットする。いずれも北海道が第1位で、地域ブ
ランドの世界において、北海道はまさしくプレミ
平成
益を獲得していた。利益の絶対額を拡大するに
企業経営に学ぶこと(本誌編集部)
自治体チャンネル+
の形成が不可欠である。かつてシャネルは、
オー
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