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組織による営業活動の3つのポイント
企業経営に学ぶ 組織による営業活動の3つのポイント 三菱総合研究所 ビジネスソリューション本部 研究員 有冨 嘉哲 今後の自治体行政の推進において、住民満足度の向上という視点は欠かせ ない。それを実現するための人材育成として、本稿で提示される営業マン のタイプ「スーパー雑種犬」は、重要なコンセプトといえる。 自治体チャンネル+ 平成 24 年 月号 20 8 あらゆる企業にとって営業活動は重要な意味 「守る」のかを(より上位の経営戦略や中期計画 を持つ。社内にはコストセンターしかない。プ から導き出すことで)明確にすることが、まず ロフィットはすべて会社の外部にある。そして、 重要となる。これにより、各営業に目的意識を それを発見し、獲得するのが営業である。種類 持たせるとともに、優先順位などの各種判断を や程度、頻度の差こそあれ、営業活動を行わな 迅速に行うことができる。 い企業というのは存在しないといっていいので はないだろうか。 企業では、営業活動は組織として行うことが 多い。その活動上では、以下の 3 つのポイント が重要と考えられる。 ■ポイント2:営業メンバーの適性を見極め、 育てる 営業のやり方は一通りではない。100人の営 業メンバーがいれば100通りの流儀があると いっても過言ではない。そこで、組織として動 ■ポイント1:営業活動の「攻め」と「守り」 く場合には、各営業メンバーの能力を把握し、 のターゲットを明確にする 適性を見極め、配置することが重要となる。ア 営業活動は、既存顧客の維持拡大(守り)と、 メリカの著名な営業マンであり営業教育家のブ 新規顧客の開拓(攻め)とに大きく分類できる。 レア・ジンガー氏は、その著書『セールスドッ まず、足元という点では、既存顧客の維持は新 グ』 (筑摩書房、2004年)で、営業マンのタイプ 規開拓の約 5 分の 1 のコストで済むこと、その を犬種になぞらえて以下のように分類している。 ため、既存顧客の維持は重要かつ容易であるの ①積極性と馬力、押しの強さで勝負するタイ で注力すべきことはよく知られている(油断や 慣れといった私達の意識上の諸問題のため、な プ(ピットブル) ②高品質なサービスとアフターフォロー、サー いがしろにされがちなこともよく経験される) 。 ビス精神で勝負するタイプ(ゴールデンレト 他方、縮小均衡を避け、さらに成長するために リバー) は新規開拓が重要である。競争環境にあるから には、新たな顧客の獲得は欠くことができない。 結局、どちらも必要である。 よって、どの領域や顧客で「攻め」 、どこで ③イメージや格好、表現の巧みさ、顔の広さで 顧客を引き付けて勝負するタイプ(プードル) ④調査力によるデータや分析、専門知識によ る洞察や知見で勝負するタイプ(チワワ) 図表 組織による営業活動の3つのポイント <ポイント1> 営業活動の「攻め」と「守り」のターゲットを明確にする <ポイント2> 営業メンバーの適性を見極め、育てる 犬種になぞらえた営業マンのタイプ分け・・・ ピットブル、ゴールデンレトリ バー、プードル、チワワ、バセットハウンドの5タイプ <ポイント3> 目的にあった営業組織を組み、統制によるマネジメントを行う ○情報や指揮の系統の整備 ○各営業メンバーへの権限委譲と目標の付与 ○必要なタイミングに必要な統制を 資料:三菱総合研究所 築したように、また、明治期の日本が方針転換 間関係で勝負するタイプ(バセットハウンド) にともない、守備的な鎮台から攻撃的な師団に 各タイプにはそれぞれ得意や苦手とする場 陸軍の編成を変更したように、主たる目的に あった組織づくりや改編がポイントとなる。 また、営業シナリオを構築し活動展開する際 い。では、どのような営業が最も優秀で理想的 には全体のマネジメントが重要だが、各営業の か。その答えは、すべてのタイプの要素を兼ね 自由度を阻害することなく、かつ、締めるべき 備えて、相手に応じて最適な顔を使い分けるこ ところは締めることがポイントとなる。つまり、 とができる営業マン、 「スーパー雑種犬」である。 強制的な専制でも、放埓な自由でもなく、統制 したがって、営業の各メンバーについて、そ (日本語だと仰々しいが、英語に訳せば「コン のタイプを見極めるとともに、長所を伸ばしつ トロール」)をいかに行うかということになる。 つも一つのスタイルに固執することなく他の長 統制のポイントとしては、 所を取り入れ、 「スーパー雑種犬」に近づくよ ○情報や指揮の系統を整備し、指示や「報・連・ ほうらつ うに教育と経験を積ませることが重要である。 相」を迅速にできるようにすること ○各営業メンバーに権限委譲を行い、さらに、 ■ポイント3:目的にあった営業組織を組み、 統制によるマネジメントを行う 独断能力を高めるために個々に目標を与え ること 目的やターゲットの決定と各営業メンバーの ○混雑や重複、敗退といった好ましくない事 適性把握によって、目的にあった適材適所な組 態を避けるため、必要なタイミングに必要 織やスタイルづくりが可能となる。ここで、 な統制を躊躇せず行うこと 「攻め」の営業と「守り」の営業では、成功のポ イントや適した組織、求められるパフォーマン スが異なる点に留意すべきであろう。 があげられる。 いずれにしても、人間誰しも強制されるのは 嫌なものだ。普段は各自に任せ、ここぞという はんと ローマ帝国が、その版図が定まると同時に防 衛線(リメス)を築き、守備のための組織を構 ところで必要最低限の量の統制を加えることが 重要ではないだろうか。 年 月号 が、タイプそのものには営業としての優劣はな 25 平成 面、顧客や商品(そして上司)との相性がある 自治体チャンネル+ ⑤誠実さや粘り強さにより信頼を獲得し、人 20 8