Comments
Description
Transcript
実りを呼ぶ不安との付き合い
《プロフィール》 医学博士・心理学博 士。東京大学卒業後、 渡米。U・Cユニオ ン大学院(心理学)、 セント・トーマス大 学院(身体精神医学) 博士号取得。 『実りを呼ぶ不安との付き合い』 心理学博士 鈴 木 丈 織(すずき じょうじ) 1.根を張る不安 大震災の傷は、まだまだ癒えるものではありません。この先、幾年もの時間が経ったとしても、癒えずに子孫にま でその恐怖の心は残ってしまうでしょうか? これまでも私たちは、幾重にもそのような傷を大小さまざまに繰り返 し、心に蓄積してきた歴史があります。それが、人の心の奥に巣くってマイナスの核となっている根源なのです。 心は常に、 「実り多い喜び」や「潤沢にあふれる豊かさ」を求めています。しかし、自然のままにしていると心が マイナスに傾きやすいのです。あなたが描き設定したすべての内容に対して、プラスでもマイナスでも、どのように イメージしたとしても「不安」が湧き上がってくるのです。まるで人は、 「不安」の根を人生に張り巡らせているよ うです。だから、しっかり意識してプラス化をしなければならないのです。 2.不安の流れの循環 不安は、状況や展開に応じて形を変えます。希望を抱いた瞬間に不安が生まれてしまいます。それは、なぜで しょうか。 不安から安定への一連の流れの循環があります。 ①「豊かな実りを得たい!」→②「そろそろ失敗しそうだな?」→③「今まで良かったから今度も大丈夫だろ う!」→④「でも突発的な予想外の出来事があったらどうしよう?」→⑤「今までも何度となく障害を乗り越えてき た!」→⑥「しかし、本質に気付かず問題を見落としたらどうしよう?」→⑦「それでも、今までの蓄積された知恵 がある!」→⑧「自分がしっかりしていればなんとかなるさ!?」→⑨「仲間もいるし、協力し合っているから揺ら ぎっこない!」→⑩「なんでも迷わず積極的に挑んだらいいんだ!」→⑪「仲間と知恵で希望は常に達成できる!」 しかし⑫「もし、それが崩れたらどうしよう?」そして、 「新たに目標を決めていこう!」となるのです。 あん ど ちゅう ちょ ①希望→②不安→③安心→④疑惑→⑤安堵→⑥迷走→⑦自信→⑧錯誤→⑨信頼→⑩ 躊 躇→⑪安定そして⑫混 迷となり、また希望となり循環していきます。 この不安の流れの循環は、 「負の影響」をもたらし、あなたをむしばんでいくか、反対に「正の影響」で躍進の連 鎖を促していくか、どちらかになります。では、 「正の影響」を受けて「希望の連鎖」を起こすにはどうすればよい のでしょうか。そのためには、その時々の不安を打ち砕き、不安と「付き合い」不安を「打ち壊し」ていこう!と考 えることが大切です。 3.不安を乗り切る 希望には不安が伴いますが、不安は必ず希望につながっています。 「希望の連鎖」のためには、その都度、形を 変えた不安を克服して、次々にステップアップしていかなくてはなりません。それは、あなたの努力次第で出せる結 果なのです。 変形した不安群を恐れることなく受け止めて、プラス化へのステップにしてしまいましょう。 【不安群を克服するための3ポイント】 1)②不安:漠然と確たる根拠がないまま妄想によりすべてを否定するマイナスの心。健康や行動にも厳しい影 62 《Dr. ジョージの心の経営論》 『実りを呼ぶ不安との付き合い』 JC 総研レポート/ 2011 /冬/第 20 号 ひる 響を与えます。怯みを生み出す根源です。 ──集中化へのポイントとして「安心」を獲得するポイント: ポイント1:不安を感じた理由を10項目書き出す ポイント2:なぜその理由に不安を抱くのか、考えよう ポイント3:不安を消すには何が必要なのか、問いかけよう 2)④疑惑:過去の失敗やマイナス情報によって巻き起こる成功確率への曖昧さ。成功する気が消えてしまいま す。焦りを生み出す根源です。 ──冷静で客観的となる「安堵」を確保するポイント: ポイント1:そのデータ以外の根拠は、ほかに何があるのか? ポイント2:同じやり方での成功事例はいくつあるのか? ポイント3:疑問への想定問答をつくって答えよう 3)⑥迷走:一度決めても確信が持てない心。さしたる根拠はないのに、ゴールも工程も見失っています。全方 法がベストに思えて、惰性を生み出す根源です。 ──強く揺らぐことない基本となる「自信」を確信するポイント: ポイント1:別の戦術でも同じ成果になるかシミュレーションする ポイント2:その工程マニュアルを作成してみる ポイント3:各項目ごとにメリットとデメリットの比較表を作成する 4)⑧錯誤:思い込みにより視野が狭くなり、考えが固定化している状態。受容ができず、同じ内容の検討や吟 味を繰り返して行います。創作を損ない沈黙を生み出す根源です。 ──力を合わせて付加価値の創造をスムーズにする「信頼」を構築するポイント: ポイント1:思い込んだ内容の因果関係を検討してみる ポイント2:専門家の意見や情報を収集してみる ポイント3: 「なぜなぜ問答」を習慣化する 5)⑩躊躇:やるべきことがやれず、できることもできなくなっている状態。機会を得ても見送り、手に触れても 気が付かないのです。傍観するだけの無力感を生み出す根源です。 ──着実な前進と躍進の一歩を確かにする「安定」を確定するポイント: ポイント1:やれる可能性とやりたい欲求の、強い方をまずやってみる ポイント2:最初に感じたことからやってみる ポイント3:予測したことを先行して予防策を立てておく アティススタイル 注) 不安から安定への一連の流れ 希望を抱いた瞬間に不安が生まれる る経過で、注意を払うべき細部点 に鈍感になっている状態。曖昧に ⑪ 安定 こん とん なって訳の分からない混 沌を生み 疑惑 ④ 出す根源です。 ──再 度、ステップアップした 「希 望」を確実に描き設 定 するポイント: ポ イント1:重要点が実施でき ているかチェックする ポ イント2:核になる知識と周 辺知識を明確化してみる ポ イント3:相関図を記入して 注 ) ア テ ィ ス ス タ イ ル と は、 あ ら ゆ る 状 況 下 に お い て、 力 強 く 目 標 達 成・ 成 功 に 導 く 資 質 開 発 に 焦 点 を 当 て た、 ロ ゴ セ ラ ピ ー を基本にした筆者独自のコンサ ルティングスタイルの名称 不安の連鎖 6)⑫混迷:自由な成長を展開す ③ 安心 迷走 ⑥ 不安 ② 錯誤 ⑧ ⑤ 安堵 希望 不安 ① 希望 負の影響 正の影響 ∼浸食の連鎖∼ ∼躍進の連鎖∼ 躊躇 ⑩ ⑦ 自信 ⑨ 信頼 ⑫ 混迷 全体を整理する アティススタイル 不 安 の 連 鎖 不安から安定への一連の流れ JC 総研レポート/ 2011 /冬/第 20 号 希望を抱いた瞬間に不安が生まれる 《Dr. ジョージの心の経営論》 『実りを呼ぶ不安との付き合い』 63