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アメリカにおけるMBOと法律問題︵一︶

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アメリカにおけるMBOと法律問題︵一︶
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page1 2012/01/13 13:09
法律論叢 第八四巻 第四・五合併号︵二〇一二・一︶
一 はじめに
アメリカにおける﹁経営陣による企業買収︵
泉 田 栄 一
︶
target
︶が負った債務を返済するのに十分な利益をあげるであろうという予想の下に、
shell company
︶から資金を調達し、当該資金をもって新
lender
会社を設立し、経営陣は新会社の株式の大部分を取得し、新会社が会社の株式または資産の全部を購入する取引形態
経営陣が会社に残ることを約束しながら、銀行等の第三者︵融資者
は、新会社︵受け皿会社
︶﹂は、普通、会社︵被買収企業
management buyouts, MBOs
三 アメリカ法における取締役の信認義務︵以上 本号︶
二 MBOと閉鎖会社化取引または少数株主の締め出し
一 はじめに
目 次
アメリカにおけるMBOと法律問題︵一︶
︻論 説︼
1
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page2 2012/01/13 13:09
︵
︶
︵
︶
︵
︶
を意味する
。LBO︵ Leveraged Buyout
︶とは、
﹁借入金により企業を買収し、その対象会社の収益若しくは余剰資産
1
3
︶
4
︵
︶
︶
7
︶をする方法︵
cash-out merger
︶を実施し、公開
tender offer
二
two-step acquisition or two-step merger
︶
︵
︶
︶の
take-outs
合併方式
︶
。
negotiated merger
または
freeze-outs, squeeze-outs
︵
6
︵ ︶
が公開会社である場合、MBOにより経営陣は株主となり、解任される心配もなくなり、また市場の拘束もなくなり、
対抗策としての閉鎖会社化、コングロマリットの分割︵日本流に表現すればのれん分け。
︶等のために行われる。会社
税控除という節税の恩恵と会社の株価の市場における過小評価とが結びついて促進される。時には敵対的企業買収の
MBOの実体は、
﹁リスクを取って多額の金儲けを狙った財務的な行動であ る﹂。典型的には、借入利子に対する課
。
形態の一つに当たる
︵
MBOにより経営陣が会社の全株を取得することは、株主の締め出し︵
等から、経営陣は新会社と会社とを交付金合併させるのが普通である︵
恐れがあること
社に少数株主が残るときには、リストラクチャリングや投資回収策の実施が、少数株主に対する信認義務違反になる
段階方式︶がある。他方、②新会社が公開買付けを行うことなく会社を支配できる株式を取得した場合であっても、会
買付完了後に、新会社が会社と交付金合併︵
MBOによる会社の株式の購入の方法としては、①新会社が会社の株式に公開買付け︵
︶と呼ばれる
。
象会社が公開会社であるときには、LBOは、時々、閉鎖会社化取引︵ going-private transactions
︵
の売却により、買収に要した借入金を返済すること﹂をいうとされているの で、MBOはLBOの一類型である
。対
2
8
5
︵
︶
本稿の執筆は、わが国でも最近MBOが多く利用されるようになり、これに関する判例も公表されるようになった
。
思った経営政策を行うことが可能となるので成功すると経営陣にとってメリットは大きい
9
一に、MBOは閉鎖会社化取引・締め出し取引の側面があるので、アメリカ法ではどのように考えられているか。第
し、わが国の解釈論の素材を捜すという動機から行われている。具体的には、第
ので、改めてアメリカの規制を概観
10
2
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
3
二に、MBOは利益相反取引に該当するので、どのように考えられているか。その前提として、注意義務と忠実義務
の関係はどうなっているかを考察しようとするものである。
注
RIETI Policy Discussion
︶一頁は、MBOを﹁経営者等 による自社企業買収﹂と定義し、鈴木健太郎﹁米国におけるマネジメ
Paper Series 07–P–001
ント・バイアウトの研究 ﹂民商一三七巻一号二八頁︵二〇〇七年︶も﹁MBOとは一般に、会社の全株式あるいは支配的な
いる。他方、北川徹﹁マネジメント・バイアウト︵MBO︶における経営者・取締役の行為規制﹂
︵
メント・バイアウトとイギリス会社法﹂近畿大学法学五一巻三・四号二三頁、二六頁以下︵二〇〇四年︶
︶でも同様に解されて
その実例として例えば
参
Field
v.
Allyn,
457
A.2d
1089,
aff
’d,
467A.2d
1274(Del.1983)
Colum. L. Rev.730, 732(1985).
照。イギリス︵ Wright and Bruining(ed.), Private Equity and Management Buy-outs, p.5(2008)
、島田真琴﹁英国にお
けるマネジメント・バイアウトとわが国への導入の可能性︵上︶﹂NBL三七七号八頁以下︵一九八七年︶、三島徹也﹁マネジ
Bratto, Corporate Finance, Cases and Materials, 5th.ed., 2003, p.767. Lowenstein, Management Buyouts, 85
︵
る。 Weitnauer, Management Buy-Out Handbuch für Recht und Praxis, 2003, S.1.
︶ J・テンレス・グリーブ=三井物産業務部訳﹃LBOの実務﹄
︵日本経済新聞社 一九八八年︶二一頁。なお中東正文﹃企業結
︶
︵
1
陣、通常指導的従業員または業務執行者が企業または分離された企業部分を買い付けるとき、MBOと呼ばれる﹂とされてい
割合の株式を当該会社のマネジメントが他の株主から買い取る取引をいう﹂と定義している。ドイツでは﹁企業の現存の経営
(1)
﹂NBL四四八号六頁、四
(一)
(二)
(三)
川俊明﹁レバレッジド・バイ・アウト︵LBO︶の法的諸問題﹂金融法務事情一一六三号一〇頁以下︵一九八七年︶、
Kessel,
︵一九九〇年︶
、数阪孝志﹁LBO・MBO・LCO︵上︶
︵下︶
﹂インベストメント四二巻三号一五頁以下︵一九八九年︶
、長谷
をめぐる法律上の問題﹂九州国際大学論集法
四九号三〇頁、四五〇号五一頁以下︵一九九〇年︶
、梶山純﹁ Leveraged Buyout
経研究二巻二号二〇頁以下︵一九九〇年︶
、鵜飼博史﹁米国における最近のLBO規制の動き﹂商事法務一二〇九号二五頁以下
孝一先生古稀祝賀︶﹄二八五頁以下︵成文堂 二〇〇一年︶、柏木 昇﹁LBOと米国倒産法
下︵二〇〇六年︶
、齋藤善人﹁LBOと詐欺的譲渡についての第三巡回区連邦控訴裁判所の判断﹂
﹃倒産法学の軌跡と展望︵櫻井
≒
八三三号四六頁以下︵二〇〇八年︶
、服部暢達﹁MBO︵ LBO︶再考﹂証券アナリストジャーナル四四巻一二月号五九頁以
合・企業統合・企業金融﹄
︵信山社 一九九九年︶六八頁以下、鈴木健太郎﹁アメリカのLBOファイナンス﹂金融法務事情一
2
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参照。
Leveraged Buy-out der Aktiengesellschaft, 1997
LBOの歴史は、一九六〇年代に始まるが、注目されるようになったのは一九八〇年代に入ってからである。一九八八年に
KKRによるRJRナビスコの買収︵これについては丹下馨﹁LBOの現状と問題点︱米国でのLBO盛行の功罪を巡って︱﹂
日興リサーチセンター投資月報四〇巻五号四二頁以下︹一九八九年︺に詳しい︶という過去最大の事案があったが、最近では
﹁LBOという財務手法自体はもはや誰でも駆使できるものであり、コモディティ化してしまった﹂と言われている︵岩谷賢伸
﹁米国バイアウト・ファンドの変貌﹂証券アナリストジャーナル四四巻一二月号二一頁、二三頁︹二〇〇六年︺
︶。
︵
︵
閉鎖会社化した後に再び公開化することは、 reverse LBO
と呼ばれる。 Bratto, op.cit., p.222.
L.53(2008).
︶ アメリカ法では支配株主もまた受任者として少数株主に対し信認義務を負うとされている。アーサー・Rピット/ダグラス・
︶ 閉 鎖 会 社 化 取 引 と は 、公 開 会 社 が 一 九 三 四 年 証 券 取 引 所 法 の 情 報 開 示 要 件 を 避 け る た め に 、会 社 の 資 本 構 造 を 再 編 す る こ
60N.Y.U.L. Rev.630(1985), Weitnauer, aaO(Fn1), S.7.
︶ 矢部淳司﹁アメリカ法におけるMBO︵ Management Buyouts
︶に関する一考察﹂大阪市立大学法学雑誌四五巻二号二五六
︶は 梃 子 で あ る 。借 入 金 を 梃 子 と し て 大 き な リ タ ー ン を 期 待 す る こ と か
レ バ リ ッ ジ︵ leverage.ド イ ツ 語 で は
Hebel
ら L B O と 言 わ れ る 。 Booth, Management Buyouts, Shareholder Welfare, and The Limits of Fiduciary Duty,
︵
4
M・ブランソン著︵米田保晴監訳︶
﹃アメリカ会社法﹄
︵
二〇一〇年︶二七三頁、三四七頁以下、ロバート・W・
LexisNexis
たとされている。 Oesterle, Are Leveraged Buyouts a Form of Goverance Arbitrage?, 3 Brook. J. Corp. Fin.&Com.
二〇〇二年に
Unilateral Tender Offers after Siliconx, Aquila and Pure Resources, 2003Colum. Bus. Rev.191, 217ff.
サーベンス・オクスレー法︵SOX︶が制定され、コストが増大したことから、これを嫌って閉鎖会社化取引が著しく増大し
The Context of Going-Private Transactions: The Case for Obligating Directors to Express a Valuation Opinion in
J. Law& Econ.367, 370(1984). Cannon, Augementing the Duties of Directors to Protect Minority Shareholders in
︶またはこれらの結合によって行われ、後者は、典型的には合併、営業譲渡によっ
および株式の併合︵ a reverse stock split
て行われる。 H. DeAngelo, L. DeAngelo and Rice, Going Private: Minority Freezeouts and Stockholder Wealth, 27
とである。閉鎖会社化取引は、純粋な閉鎖会社化とレバレッジド・バイアウトとに分けられる。前者は、合併、公開買付け
によると﹁対象会社の経営者が取得組合に多大な資本参加をし、クローズイング後、
頁︵一九九九年︶
。 Bratto, op.cit., p.222
経営者のままでいるのが﹂MBOsである。
3
5
4
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
5
Kahn v. Lynch Communication
ハミルトン﹃アメリカ会社法﹄
︵木鐸社 二〇〇六年︶三二四頁以下、カーティス・J・ミルハウプト編﹃米国会社法﹄
︵有斐閣
二〇〇九年︶一二九頁以下。例えば支配株主による合併の際の信認義務違反を問題とする
︵それを解説する楠元純一郎﹁支配株主による合併と取締役の独立委員会
Systems, Inc, 638 A.2d, 1110(Del. Supr., 1994)
の役割﹂商事法務一四六六号四三頁︹一九九七年︺︶参照。
︶ 一 九 八 六 年 証 券 取 引 所 法 規 則 の 改 正 で 、公 開 買 付 け に 応 募 し た 株 主 す べ て に 最 高 の 対 価 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い と い う
︵
︶
法上の問題点︹Ⅰ︺
︹Ⅱ︺
︹Ⅲ・完︺
﹂商事法務一七九三号二〇頁以下、一七九四号四四頁以下、一七九六号四〇頁以下︵二〇〇
アメリカにおける締め出し合併と
Take OUT Mergers: A Historical Perspective, 56N.N.Y.U.L. Rev.624, 625 n.3(1981).
テイクオーバーに関する法律問題については中東・前掲書︵注二︶一頁以下、西本 強﹁フリーズアウトに関するデラウエア州
Borden, Going Private - Old Tort, New Tort or No Tort ?, 49N.Y.U.L. Rev.987, 988, 989(1974), Weiss, The Law of
または
freeze-outs
︶と言われる。合
できる︵RMBCA一一〇四条、DGCL二五三条a項︶。このような合併は略式合併︵ short-form merger
︶と新会社が会社を吸収する場合︵ reverse merger
︶とがある。
併は、新会社が会社に吸収される場合︵ forward merger
は不法な締め出しを示す軽蔑的用語であるが、これを中立的に呼ぶと take-outs
となる。
squeeze-out
なお親会社が子会社の発行済み株式の九〇%以上を所有しているときには、親会社の取締役会決議のみで合併をすることが
と言われている。
七六頁︹二〇〇八︺
、
﹁米国における公開買付規則の改正﹂商事法務一七八六号四八頁︹二〇〇六︺
︶
、二段階方式が増加している
の例外規定が創
し、﹁株式の対価として支払われた価格﹂を基準に適用されることが明らかにされると共に、 Best-Price rule
設されたことから︵
﹁米国におけるベスト・プライス・ルールの改正とマネジメント・ロール・オーバー﹂商事法務一八四五号
は、公開買付けに応じた株主に対
〇五号二四頁注二三︹二〇〇七年︺
︶
。しかし二〇〇六年に規則が改正され、 Best-Price rule
式を用いて行われるようになった︵高原達広﹁経営陣主導での上場会社の非公開化における取締役の行動規範﹂商事法務一八
の解釈﹂商事法務一六八六号四四頁以下︹二〇
を採用するものに分かれた︵志谷匡史﹁公開買付けにおける Best Price Rule
〇四年︺参照︶
。そのため、法律事務所は、公開買付手続きの利用を薦めることを差し控えたことから、MBOの多くは合併方
訟が多数提起され、裁判所の立場は﹁明確性基準﹂
︵
が定められた。その結果、LBOやMBOでは被買企業の現経営陣に経済的利益を提供する︵ Side Payment
Best-Price rule
と呼ばれる︶合意がなされることが多いことから、このような経済的利益提供は Best-Price rule
違反に当たると主張する訴
︶を採用するものと﹁不可分性基準﹂
︵ integral part test
︶
bright-line test
︵
6
7
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七年︶に詳しい。
︵
︶
︶ 服部・前掲論文︵注二︶七三頁。
︵
を参照されたい。
aaO(Fn1), S.4ff.
︶ 江頭憲治郎﹁会社の支配・従属関係と従属会社少数株主の保護︵八・完︶
﹂法学協会雑誌九九巻二号一四五頁以下︵一九八二
8
O導入の意義と普及に向けての課題﹂商事法務一五二五号四二頁、四四頁以下︵一九九九年︶、ドイツについては
年︶等参照。
二 MBOと閉鎖会社化取引または少数株主の締め出し
の見解︵一九七四年︶
Borden
によると、株主の締め出しは、①解散︵
Borden
︵ ︶
︶
、②合併︵
dissolution
︶
、③資産売却︵
merger
︶および
asset sale
︶によって行われる
。そこで、 Borden
は、上記各分野で下された判例を分
reverse stock split
④希であるが株式併合︵
11
(一)
閉鎖会社化または株主の締め出しを論じる文献は少ないので、一般的な議論から問題を掬い上げることが必要である。
MBOは、閉鎖会社化取引と少数株主の締め出しの問題が絡む。しかしアメリカの文献はMBOに焦点を当て会社の
Weitnauer,
におけるMBOの目的については、三島・前掲論文︵注一︶二七頁以下、島田・前掲論文︵注一︶九頁、一二頁、藤原豊﹁MB
介し、④説、即ち、エージェンシー問題の解消およびそれによる会社経営の効率性の改善で説明できるとしている。イギリス
鈴木・前掲論文︵注一︶三二頁以下は、MBOが生む富の要因として、①リストラクチャリング説、
Bratto, op.cit., p.767.
②会社の閉鎖会社化による支出削減説、③タックス・ベネフィット説および④マネジメントの継続・会社所有者の交代説を紹
︵
9
10
_
6
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
7
︵ ︶
︶
business reason test
︶
、②株価アプ
the vested-shareholder-interest approach
︶
、③株式買取請求基準︵ the appraisal test
︶および④事業目的基準︵
the value approach
析し、締め出しに対する裁判所の見解を①既得権アプローチ︵
ローチ︵
が大きいからそれ自体禁止されるとする見解である。
③株式買取請求基準は、制定法が株式買取請求権を制定している場合には、重大な不公正または詐欺︵
ある場合を除き、当該権利を利用できる、と立法者は考えていると主張する見解である。
︶の事業目的を欠く締め出しは無効であると考える見解である。
bona fide
は、次に、公開会社を、ニューヨーク証券取引所に上場されているような巨大会社、五千社から一万社
Borden
④事業目的基準は、善意︵
︶
deception
②株価アプローチは、少数株主の株式の買取代金を多数派株主が決定することを許すことは、不公正に対する機会
得権を有しているから、締め出しは株主から既得権を奪うものとして、締め出しに反対する見解である。
①既得権アプローチは、最初の合併に関する制定法が制定される以前に判例が採用していた立場である。株主は既
。
の四つに分類している
12
のタイプについて政策的考察を行う。
①の公開買付けは、しばしば締め出し計画の第一段階である。株主にとって、市場性︵
︶﹄、すなわち、パニックな売
shake-down tender offer
却に対する合理的保護を与えない市場性を害する恐れがある公開買付けは生来的に不公正であり、少なくとも閉鎖会
しが禁止されようが、禁止されなかろうが、
﹃強制公開買付け︵
開買付けに応じないとその後の買付価格が、公開買付けの際の申込価格より低くされる心配がある。そこで ﹁締め出
︶の喪失と、公
marketability
②閉鎖会社化、③公開親会社による締め出し、④非公開親会社による締め出し、および⑤閉鎖会社の締め出しの五つ
の悪くすると市場のない小会社およびその中間会社の三タイプに分けた上で、中間会社に焦点を当て、①公開買付け、
`
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8
︵
︶
②の閉鎖会社化に関する考察は、 会社、 内部者︵
︵
︶
︶および 一般株主︵
insiders
社化の領域では、立法又は委員会規則によって禁止されるべきである﹂とする
。
13
︶に分けて行
public shareholders
︶が自由であるなら、それを防ぐのも自由でなければならないということを示唆する。そして閉
raid
一 般 株 主 に 関 し て は 支 配 的 株 主 と 一 般 株 主 と で は 所 有 目 的 が 異 な る こ と か ら 、そ の 利 害 の 調 整 が 問 題 と な る 。
な所有権を手に入れることを認めることは著しく不公正で公序に反する。﹂とする。
することを認めることは公正である。企業に重要な投資をしていない経営陣が、会社の自己資金を使って企業の完全
鎖会社化は究極的な保護である。
﹂﹁企業の重要な株式を有する経営陣グループに企業と自己を閉鎖会社化により保護
は、敵対的買収︵
内部者に関しては証券取引は貧欲と心配で動機付けられており、閉鎖会社化もその例外ではない。﹁健全な政策
とは、政策的には、
﹁企業の繁栄およびその個人仲間の集団に対して十分なリスクを創造する﹂ことになるとする。
節約、経営陣の注意を事業に集中させることおよび証券取引所法の開示規制の回避である。回避が許されるというこ
会社との関係で閉鎖会社化が行われる主たる理由は、経営陣が株主の圧力から解放されること、監査費用等の
。
われている
14
的利益を認める妥当性を評価する際には、利益相反に関する制定法は、利益相反に該当する取引を認め、不当と感じ
要するよう強制される選択のため、価格は不公正であるという少数株主の自然な理解にある。﹂
﹁多数株主に当該戦術
︶に該当し、潜在的に不公正な価格を受諾するかそれとも差止命令若しくは株式買取訴訟を開始することを
of interest
は、内部者が確定しているから価格は必然的に不公正であるという仮定にない。
﹂
﹁不公正はむしろ利益相反︵ conflict
護を受けるに値するが、当該権利が拡張されて、多数派株主が思い通りにすることを妨げるべきではない。
﹂﹁不公正
﹁閉鎖会社化取引が、締め出しを伴う公開買付けにより行われるときには、少数株主はその株式の市場の破滅から保
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9
た者に司法上の救済を求める負担を定めているということに留意することができる。
﹂
︶
short-form merger
③公開親会社による公開子会社の株主の締め出しの場合には、今まで述べたことが適用されなくなり、利益相反の消
︵ ︶
去と結合経営の経済性に関する新しい要素を考慮しなければならなくなる。これらは、略式合併︵
︵
︶
に重要な直接的会社費用の節約がない場合には、親会社は、これらの取引の場合に株式を申し出るべきであるとして
は、その分析によると、株式よりむしろ現金を対価に取引を行う際
由があることが主張されている。しかし、 Borden
数株主の株式を締め出すことが許されるのか尋ねることができる。当該取引が望ましいということから、幾つかの理
に関する制定法の採用に導いた
。政策の問題として、公開親会社は親会社の少数株式に申し込むより何故子会社の少
15
︶
17
は、その後、 で紹介したアプローチを次のように評価している。
Borden
_
︶
18
評価を下している。
。
﹂として、当該アプローチに対して否定的な
得権のような古めかしい原則に支持を求めなくても確かに顧慮されうる
︵
的収益を達成することを期待して投資をした少数株主の利益になるよう傾く。この株式の特別な釣合いは、株主の既
かにより無力になっていない閉鎖会社の場合には、公正性の考慮が明白に、市場性を目的としないで、長期的に実質
①既得権アプローチでは、
﹁締め出しに反対する一般的ルールは正当化できない。我々の分析では、内部株主のけん
。
ない。政策はデッド・ロックによる解散規定に移るとしている
︵
関連する全要素が異なる。第一に、閉鎖会社の投資家は、市場指向的でない。第二に公開市場等の圧力が問題となら
⑤閉鎖会社の締め出しは論題外であるが、比較可能な考察の範囲で検討が加えられている。⑤では、利益相反以外、
④非公開親会社による公開子会社の少数株主の締め出しの場合には、締め出しのためにただ現金が利用可能である。
い る。
16
a
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︵ ︶
②株価アプローチについては、
﹁少なくとも二三州が利益相反の制定法を制定した。これにより、信認相反はそれ自
︶に訴えることができるときにのみ、締
commercial corporate purpose
③事業目的基準の範囲は幾分不明瞭である。主に道徳的理由から締め出しは禁止されるべきであると考える人々は、
している。
体禁止されるべきでないということに留意しなければならない
﹂として、このアプローチに対しても否定的評価を下
19
︶
20
︶で行われるか、同一人が取引の双方にいるときには、申
at arm’s length
きる。第三の可能な解釈は、制定法は許される取引の種類を定義するのに役立たないで、ただ、そうでなければ許さ
るという立法的決定を表すが、株式買取請求は不公正な条件に対する唯一の救済を表すものではないと読むことがで
についてのみ訴えうるという立法決定を意味する、と解釈することができる。第二に、そのような全取引は是認され
が可能である。第一に、制定法は、その条件内の全取引を是認し、株主は、株式買取請求が唯一の救済である不公正
苦情をいう者に独占されると一般的には考えられている。
﹂﹁株式買取請求に関する制定法規定の制定から四つの推論
重大なことには、株式買取請求による救済は、最もひどい利益相反によって特徴付けられる取引である、略式合併に
し 立 て に よ る と 詐 欺 ま た は 条 件 の 著 し い 不 公 正 が あ る 取 引 の 司 法 上 の 審 理 を 妨 げ る と は 考 え ら れ て い な い 。し か し 、
いようと、制定法は、取引が独立当事者間︵
④株式買取請求に関する制定法は、排他性に関してはかなりの相違が存在している。﹁制定法がどのように規定して
﹂として、この基準に対しても否定的評価を下している。
問題を解決するよりも、避けている
︵
これらの政策の評価を妨げるために使用されるなら、公正基準でもないし、事業にも関係しない。このような構成は
内部者および会社の共同体の利益という抜け出せない混合を考察から締め出すように見える。確かに事業目的基準は、
め出しは正当化されると示唆できる。事業目的基準のこの狭い﹃商事目的﹄の構成は、我々が確認しようとした株主、
﹁直接的事業利益に関係する狭い商事会社目的︵
10
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
11
れることになる取引条件に異議を唱える者のために独占的救済を規定している、ということである。最後に、制定法
は、許される取引の種類を定義していないし、反対株主が利用できる救済を制限していないと読むことができる。最
初の二つの解釈では、制定法は締め出しを是認するが、後者の二つの解釈では、制定法は問題につき何も述べていない
と・・・直ちに、述べられる。
﹂
﹁制定法の解釈問題として提出された問題は、
・・・四九州の立法史の調査を必要とす
る。﹂州の立法史の研究は少ししかないので、
﹁取引・株式買取請求の制定法の解釈は、制定法が明らかに示す広い社
︶の優先である。﹂﹁ Vorenberg
教授の結論は、取
corporate democracy
会政策の評価に頼らなければならない。
﹂
﹁広く考えて、これらの制定法に反映される社会政策は、会社の柔軟性の優
先と株主の既得権概念に対する会社民主主義︵
︵
︶
引の支持者は事業目的の立証問題に証明義務を負わなければならないが、取引が公正な価格の範囲内であれば、不公
︶
22
は、特定の状況では閉鎖会社化は望ましいという見解に賛成した。そこで少数株主に最大限の公正性を
Borden
﹂としている。
当な目的を立証する義務はないというべきであ る。
︵
株主がそれを承認するときには、公開会社の関連でそのような取引を行う際に何も固有の不正がなければ、被告は適
ように、確かに価格が公正の範囲内であるという立証義務を負うべきである。他方、外部株主のために必要な多数派
教授が主張する
それは禁止される目的の一応の証拠である。濫用に対する機会を考え、取引の支持者は、 Vorenberg
条件が公正であるなら、取引の支持者は、外部株主を犠牲にして不当に裕福になるわけではない。条件が不公正なら、
法政策を反映している。制定法の重点は、条件の公正性と個人の拒否権を無効にすることである。閉鎖会社化取引の
。我々の分析は、株式買取請求アプローチは、幾分異なる結果になる立
正の証明義務は原告に移るということである
21
②現金締め出しの提案者は、少なくとも九〇日前に通知をすべきこと、③閉鎖会社化した会社は、締め出しの後一年
確保するために、①要件を満たす一般株主の賛成があるときには、閉鎖会社化を許すという州立法を定めるべきこと、
b
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page12 2012/01/13 13:09
の間は証明された財務諸表を旧株主に利用できるよう契約することが強制されること、④特定の期間内に再度公開化
︵ ︶
するときは旧株主に取消しの申出契約をすること、企業が締め出し後十二か月以内に締め出し価格にプレミアムの付
23
の見解︵一九七五年︶
Greene
︶
24
タイプⅠの締め出しとは、取得会社︵Y社︶が被取得会社︵X社︶の発行済株式の全部につき公開買付けをし、
。
は締め出し合併が許されるか否かの判断に役に立たないことを主張している
︵
で、各タイプは異なる取扱いを受けるべきで、タイプⅢの締め出しは禁止されるべきであることおよび事業目的基準
数株主は交渉力がないので、不公正に扱われる危険がある。そこで論者は、締め出し合併には三つのタイプがあるの
︶といわれる。この場合、少
freeze-out mergers
いた価格で売却される場合には、プレミアムが締め出された株主に支払われるべき契約をすることを提案してい る。
被取得会社の少数株主を締め出す合併はしばしば締め出し合併︵
(二)
_
社とY社は合併し、X社の少数株主は現金を受け取ることによって締め出されるタイプである。このタイプは、閉鎖
タイプⅢの締め出しは、X社の支配株主が新会社︵Y社︶を設立し、X社の株主はその株式をY社に現物する。X
Ⅰと異なり、不公正のリスクを提出するので、異なった扱いを必要とする。
ではX社の支配権の取得に留め、一定期間経過後、締め出し合併をするというタイプである。このタイプは、タイプ
タイプⅡの締め出しは、Y社が、ある時点でX社の事業の全部を取得する意図を持っているが、最初の取得の段階
す方法であり、Y社がX社の株式の九〇%から九五%を取得するときには、略式合併を利用することができる。
支配権を取得した後は、X社の株主に現金その他の対価を支払って、Y社はX社と吸収合併し、X社の株主を締め出
`
12
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page13 2012/01/13 13:09
︵
︶
会社化の一部として利用され、最近判例・コンメンタールの注目を集めている。この最もまことしやかな釈明は、株
︶
︶﹂を付加的基準として使用している
。
fairness test
︵
によると、締め出し合併に州法を適用するとき、裁判所は、合併規定の遵守に加えて、
﹁事業目的基準
Greene
価が市場で過少評価されているので、会社にとって良い投資であるということである
。
25
︵
︶
︵ ︶
︶
事件
を引用しているが、 Lebold
事件は事業目的基準を支
Lebold v. Inland S.S. Co.
28
事件
は事業目的アプローチの
Grimes v. Donaldson, Lufkin & Jenrette, Inc.
︶
30
しかし、支配株主は両方の当事者を支配しており、株式買取請求は、それを要求した株主のみが結果を手に入れ
請求権﹂又は﹁損害賠償訴訟﹂が十分であると考えられる。
事 件である。公正のみに関心を払えば、
﹁株式買取
採用している。その最近の例は、 Berkowitz v. Power/Mate Corp.
︵
②幾つかの判例は、支配会社が、合併条件は公正であると立証すれば、締め出しを許すという公正性アプローチを
る義務を負わせている。
事件判決は公正性の証明の問題を認識しないで、合併から利益を受けない少数株主に不公正を証明す
ている。 Grimes
困難性を例示している。締め出し合併の動機の有効性にのみ焦点を合わせる基準は、タイプの決定的相違を見落とし
持していないので、先例として疑わしい。
29
していない。その上、先例として
れとも両社の組み合わせか示していない。第三に、どのような事業目的が締め出しを正当化するのに十分なのか列挙
限定されるのか示していない。第二に、審査される事業目的は、X社のみの事業目的か、Y社のみの事業目的か、そ
によれば、 Bryan
事件は、三つの問題を未解決にしている。第一に、基準は閉鎖会社に関するタイプⅢに
し、 Greene
事 件がある。しか
Bryan v. Brock & Blevins Co.
︵
︶の事業目的に役立つなら、締め出しは許されるというルールを採用している。
bona fide
︶﹂と﹁公正性基準︵
business purpose test
①幾つかの判例は、善意︵
26
a
この基準を採用する最近の判例として閉鎖会社のタイプⅢに属する
27
︵
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
13
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page14 2012/01/13 13:09
うるに過ぎないから、特にタイプⅡ取引では、不合理に安い価格で合併をしようという誘惑に駆られる。株式買取請
求を公正性に対する唯一の救済法であるとみなすときには、この可能性は増大する。しかし、株式買取請求は、公正
性に対する唯一の救済法ではない。既存の株式買取請求手続は、複雑で、遅延と不確実性を伴う。手続費用は株主の
財産回復の価値を減らす。さらに、手続は、特に価値が投機的であるときには、控えめな結果を引き起こす。タイプ
Ⅱ取引のように、支配の取得と少数株主の締め出しの間に相当の時間的間隔があるときには、支配株主は、利益増大
の適切な見込みの評価前に少数株主を締め出すことにより、少数株主は利益を受け取らないという付加的危険がある。
X社の株式の市価は価値を決定する際に鑑定人が重要性を与える一つの要素であるが、当該要素は、支配株主が市場
に及ぼすことができる効果により歪められる可能性がある。最後に、制定法は、鑑定人が、公正な価格を独立して決
︵
︶
定することを要求しているので、Y社が公正性の立証責任を負うという概念は、実施可能でない。結果として、価値
︶
32
︵ ︶
︶
﹂を創造している。しかし事前差止の申立てに基づくヒヤ
prior hearing
上述のように締め出し合併に対する裁判所の対応は、公正性と事業目的に限定されている。しかし、異なる合
リングは、時間的制約等の観点から、公正性を決定する最善の手続とはいえな い。
33
併の禁止を認め、事実上﹁事前ヒヤリング︵
これらの困難性のため、幾つかの裁判所は、Y社が合併条件の公正性を証明できないときには、少数株主に合
この手続は、株式買取請求手続の繰り返しであ る。
︵
満たさなかった場合、裁判所は、損害を評価するために、公正な価格を立証することが必然的に要求される。まさに
行政上の単純性の観点からは、
﹁損害賠償訴訟﹂は必ずしも良くはない。Y社が立証責任を負っていて、それを
。
は実際の価値より低いかもしれない
31
併のタイプには異なるルールが適用されるなら、もっと合理的な解決が達成されると考えられる。Y社が第一段階で
b
14
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page15 2012/01/13 13:09
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
15
支配を取得し、その後、締め出し合併をするというタイプⅠ・Ⅱの合併は制定法の目的と矛盾しない。この場合には
唯一の関心は価格の公正性であって、善意の事業目的に役立つか否かではない。しかし、タイプⅠとタイプⅡの締め
出し合併とでは同一でない。タイプⅠの合併は、伝統的合併と殆ど変わらない。X社の株主が自発的に行動できるよ
う、①Y社は最初の公開買付けのときに、締め出し合併の意図を開示し、②Y社は、申込みに応じない株式に公開買
付けと同額を支払うか否か、支払わないときにはその理由を開示すべきである。また、濫用防止のため一年以内に合
併すべきである。
これらの条件に合わない締め出しはタイプⅡと分類すべきである。タイプⅡの合併では株式価格の公正性が要求さ
れる。当該取引におけるもっと良いアプローチは、事実後の買取請求手続または損害賠償訴訟の代わりに、提案され
た合併の公正性の事前の行政的決定を用いることである。例えばカリフォルニア法では、会社の株主が異なる種類の
︶に提出しなけれ
the Commissioner of Corporation
︶を採択する場合には、当該計画を、
﹁公正、適
証券保有者の権利に影響する資本再編成計画︵ plan of recapitalization
当、衡平﹂であるかどうかを決定するために会社コミッショナー︵
ばならない。会社は公正性の立証責任を負う。類似のアプローチを証券取引所法一二g条が採用している。 Vorenberg
︵
︶
教授は、少数株主が合併を禁止する訴えを起こしたときには、Y社は、価格が公正な価格の範囲内であることのみを
︵ ︶
。しかし、反対少数株主の費用を下げて、繰り返しの手続を排
証明することが要求されるべきであると勧告している
34
は、低価格を受け取るリスクを負う。閉鎖会社化が会社の最上の利益であるというなら、会社は、株主を任意に替えて
︶は、支配株主による少数株主の締め出しの許可を要求しているようには見えない。少数株主
性︵ corporate flexibility
タイプⅢの合併は禁止されるべきである。支配の変更も、事業の効率性を引き起こす企業結合もない。会社の柔軟
除するので、立法上又は司法上のヒアリングは望ましい
。
35
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page16 2012/01/13 13:09
必要な株式を取得すべきである。交換タイプⅢの合併は閉鎖会社でも生じるが、これを正当化するものはない。しか
︵
︶
しこのことは、閉鎖会社化のために、会社が市場で株式を購入することを許さないということを意味しない。タイプ
明責任を取締役が負う。
︶が残
coercion
であるかどうか決定しなければならない。それが肯定される場合には、当該取引が会社の最善の利益であるという証
︶
鎖会社化のための株式の購入が批判されたとき、裁判所は、取引が取締役会と支配株主による自己取引︵ self-dealing
立てられた場合には、会社は、株式の再取得により利益を実現していることを示すことが要求されるべきである。閉
る。そこで、あらゆる閉鎖会社化は禁止されるべきか問題となるが、絶対的禁止は厳し過ぎる。しかし、異議が申し
全部の保護がなされても、投資家は私会社の投資家に留まることに興味がないので、いくらかの強制︵
は、最初の申込みの結果流動性が実質的に損なわれる場合には第二の申込みを要求するものである。しかし、これら
プローチは、会社に株式市場を維持し続けるようブローカーと協定するよう要求するものであり、第二のアプローチ
鎖会社化の試みが放棄されるリスクを負う。非流動性の問題に対する二つのアプローチが提案されている。第一のア
している。第二の申込みの要件は公衆株主に対する圧力を完全には排除しない。最初の申込みに応じない株主は、閉
鎖会社化するときは、公開買付けに応じなかった株主に同額で申し込む追加の二〇日の機会を与えるべきことを要求
し、証券取引委員会が提案した閉鎖会社化ルールは、広い開示要件を定めるだけでなく、会社が公開買付けの結果閉
後市場の流動性が無くなっていることに直面することである。経営陣の報酬の増額は開示しなくてすむ。問題を認識
費用が多分公開買付けの承諾を助長している。より重要なことは、少数株主は、申込みに応じなければ、公開買付け
ので、低価格での締め出し合併の脅しと株式買取の付随
Ⅲの合併は一般に裁判所によって一般的に禁止されていない
36
結論として、事業目的基準は、正確性を欠き、合併のタイプで区別をしないから、締め出し合併が許されるか
c
16
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page17 2012/01/13 13:09
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
17
否かを決定する役に立たない。タイプⅠの締め出しは許されるべきであり、少数株主は既存の株式買取請求に限定さ
れるべきである。タイプⅡの合併も許されるべきであるが、締め出しの遅延とその期間にY社によって行使される支
配の関係から、予備的差止め、損害賠償訴訟または株式買取請求といった既存の手続よりも合併前のヒアリングが公
と
Brudney
︶
︵
︶
事 件を取り上げ、デラウェ
Tanzer v. International General Industries, Inc
の見解︵一九七八年︶
Chirelstein
︵
︵ ︶
正性を決定するのに適している。適用範囲の統一性を確保するため、取引所法の報告要件に従って、証券取引委員会
︶
。
の前でのヒアリングが要求される。タイプⅢの合併は許されない、と主張している
︵
40
37
︶であるから、手続上、そ
a unitary purchase
の際の価格と同額であるとすることが適当である。対象会社の資産を現金で申し込む外部者︵
︶は、株主に何
outsider
買付者は公開買付けの際に後で合併をする意向であることを公表し、その際に支払われる株式の価格は、公開買付け
応じないと、合併の際に安い価格で売らねばならなくなると考えて公開買付けに応じる株主を保護するために、公開
れと同じように構成すべきである。従って、株主に後から全株の取得が行われることを知らせ、かつ、公開買付けに
二段階合併は、公開買付け﹁プラス﹂合併であるが、資産の単一購入︵
締め出しは、同じ種類の全株主が同じ取り扱いを受けないという点で、明らかに独立当事者間の合併とは異なっている。
締め出しは三つの範疇︱①二段階合併、②純粋の閉鎖会社化取引および③関連会社の合併︱に分けることができる。
しを区別しようとする過ちを犯しているとして、次のように主張している。
ア州の裁判所は、全締め出し取引を同じであると認識しない誤りと、事業目的テストで、良い締め出しと悪い締め出
39
(三)
彼ら
は、 Singer v. Magnavox Co.
事 件と
38
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page18 2012/01/13 13:09
の義務も負わず、対象会社の財産に﹁公正な﹂価格を定める義務もない。外部者による公開買付けは、それ自体商事
︵
︶
目的を有すると﹁みなすべきである﹂から、
﹁事業目的﹂の問題を提出する必要はない。対象会社の経営陣の善意を議
︵
︶
︶のために負う
benefit
当の目的は内部者を裕福にするだけであるから、信認原則は、閉鎖会社化取引はあらゆる場合に禁止されるべきであ
る前に、会社の事業のターニング・ポイントと認識される時に閉鎖会社化を選ぶことである。閉鎖会社化の唯一の本
補償されているかどうか決定する実行可能な手段を提供しない。避けられない疑いは、内部者が、認識が一般的にな
︶を企業に約束しない。閉鎖会社化は、まさにその性質 により、一般株主が事実上その利益に対して公正に
け︵ gain
社化は、公開買付け・関連会社の合併と対称的に、公衆に所有された株式を内部者の手に単に移すだけで経済的もう
もので、その同意なしに受益者の利益を終わらせる理由として費用の節約を引用することは信認にならない。閉鎖会
合のコストの削減である。しかし経営陣の行為を モニタリングする費用は一般の株主の利益︵
に強いている点を問題にする。会社の観点からの閉鎖会社化の正当化は、SECや証券取引所の開示要件に従った場
うことに不公正を認識し、他の者は、支配株主が時間と価格につき裁量を有し、見かけより悲観的な印象を他の株主
して行う。ある者は、市場が上向きのときは公開し、市場が下落すると閉鎖会社化し、回復すると再び公開するとい
閉鎖会社化は、株式が市場で過少評価されているときに、支配株主が、会社株式の所有を一〇〇%まで増やそうと
論する理由がないから、
﹁目的﹂と﹁公正﹂の二つの問題は問題外であ る。
41
︵ ︶
事 件のように、合併から生じた利益が、両会社の株主間で比例
Mills v. Electric Auto-Lite Co.
43
的に分配されるということである。即ち、対価が親会社の比例的な株式であるか、それを取得することができる現金
る。公正性の基準は、
関連会社の合併は、長い間子会社を支配していた親会社が合併することでシナジー効果が生じるから、合目的であ
。
ることを示唆する
42
18
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page19 2012/01/13 13:09
︵ ︶
の見解︵一九八一年︶
Weiss
︶
は、最初に、締め出し禁止というコモン・ローの規制が緩和されていくプロセスを、四段階に分類する
。
Weiss
︵
事件判決は矛盾しており、
﹁事業目的基準﹂と﹁完全公正基準﹂というデラウェ
Tanzer
45
コモン・ローの規制が緩和されていくプロセスは以下の通りである。
︵
︶
①最初、コモン・ロー上、定款は、株主間および会社と州との契約であるので、各株主は既得権を有し、会社の基
`
︶
大株主の試みには敵対的であっ た。
︵
認めることにより、増大する柔軟性に対する要望に応じるようになった。しかし裁判所は、まだ少数株主を締め出す
決議による承認があるときには、全資産の売却、合併、任意清算を含む、いろいろな基本的取引を行う権能を会社に
ることが意識されるようになり、自由化が始まった。多くの州法は、取締役会の承諾と株主の普通決議もしくは特別
②定款変更に全員一致を要求することは、少数株主に専制を許すことになり、願わしい商取引を阻止することにな
。
本的変更には全員の承諾が必要であるので、多数株主は、少数株主を締め出すことが許されない、と考えられていた
46
ギリス法で展開されているアプローチは、デラウェア州裁判所のアプローチよりも優っていると主張している。
ニューヨーク州事業会社改正案およびイギリス法の規制を分析し、最近ニューヨーク州で提案されたアプローチとイ
ア 州 最 高 裁 判 所 の ア プ ロ ー チ は 少 数 株 主 を 保 護 す る た め に 不 十 分 で あ る と 主 張 す る 。そ こ で 、カ リ フ ォ ル ニ ア 州 法 、
事件判決および
次いで、 Singer
(四)
これらのルールの下では、事業目的の要素は不適切であると主張している。
や負債である
。
44
_
47
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
19
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page20 2012/01/13 13:09
︶の準備草案を大部分モデルにした
the Uniform Business Corporation Act
③の段階では、一九二五年フロリダ州一般会社法が、株式の代わりに対価を現金、手形又は社債とする合併を初めて
認めた。フロリダ州法は統一事業会社法︵
︶
the Commissioners on Uniform State Laws
ものであった。裁判所は締め出しを詐欺と扱っていたので、少数株主の締め出しに合併規定を使用することを禁止す
る規定が草案になかったとしても、それはおそらく統一州法全国委員会︵
があり得ないと考えたことによる。一九三一年までには、アラスカ、カリフォルニア︵カリフォルニア州は一九二九年
と一九三一年に合併規定を改正している。
︶およびオハイオ州の会社法が、フロリダ州と同じか類似の規定を定めた。
ルイジアナ州は、合併の際に許される対価の種類を表示しない制定法を定めている。しかしこれらの制定法は、現金
︵
︶
の使用を許すと解釈できるだけで、締め出しは一般的に禁止されていると起草者が考えていたことを示す沢山の証拠
︶
49
、同法
認める規定を加えた。選択的な略式交付金合併規定︵六八A条︶が、一九六〇年に模範事業会社法に追加され
︵
対価の種類に現金を加えた。ニュージャージー州は、一九六八年に会社法を改正した際に通常と略式の交付金合併を
ク州法をモデルに、しかし九〇%所有された子会社に適用される略式合併法を採択し、一九六七年には通常合併法の
︶を認めた。一九五七年にはデラウェア州法は、ニューヨー
一九六一年には、現金通常合併︵ cash long-form mergers
公益事業会社の組織を簡素化することを目的とした。ニューヨーク州では一九四九年に全会社に略式合併法を拡大し、
を提出することにより、子会社と合併することを許すニューヨーク州の一九三六年五月二八日法であった。これは、
合併法は、ガス又は電気会社が子会社の株式の九五%以上を所有している場合に、単に州務長官に合併契約書の謄本
締め出し取引に敵対的な裁判所の態度が改められるようになった。締め出し合併を許すと解釈された最初の現金略式
④の段階では、州の立法者が会社法を改正し、現金があらゆる合併の対価として認められることを明らかにした後、
。
がある
48
20
――法 律 論 叢――
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の通常合併規定は一九六九年に交付金合併を許すために改正された︵七一条︶
。これらの改正に関する文書は、現金が
対価として使用されることが許される理由を簡単に論じるだけで、州の立法者が、交付金合併が締め出し合併を許す
︵ ︶
よう解釈できると認めていることを示唆するものではなかった。立法者の主たる動機は、会社結合を構築する際に会
51
︵ ︶
事 件が下された。略式合併
Stauffer v. Standard Brands, Inc.
52
︵ ︶
を目的としていなかったが、 Stauffer
事件以後は、デラウェア一般会社法二五三条は、締め出し合併を許すだけでな
事件の裁判官が指摘するような︱親会社に少数株 主を締め出すための手段を与えること
定されたもので、︱ Stauffer
法の立法目的は、親会社と子会社の合併が経営効率を増進する場合に、主としてそれを単純化し、助長するために制
事 件 で あ る。その三年後には
& Tilford Distillers Corp.
︵ ︶
デラウェア州一般事業会社法が定める略式合併の下で締め出し合併の適法性を最初に扱った判例は、 Coyne v. Park
。
社の経営陣により大きな柔軟性を用意することであった
50
すと最初に解したデラウェア裁判所の判例は、
︶
54
事 件である。
David J. Greene & Co. v. Schenley Industries, Inc.
︵
く、促進するために制定されたとする見解が一般的に承認されるようになっ た。また、 交付金合併法は締め出しを許
53
︵
︶
締め出し合併の一般的承認と株式買取請求による保護という二つの傾向は、株価の一般的下落等の結果現金を対価
55
︵
︶
の締め出し合併がありふれたものとなった一九七〇年代前半には
とする会社取得が財政的に魅力的になり、三タイプ
。
特に重要となった
56
︶
明することにより公正基準を満たすことができないという考えと、多数株主は現金基準に基づいて少数株主を締め出
件
の見解をくつがえした。しかし、 Singer
事件判決の最も重要な部分は、多数株主は、合併価格が公正であることを証
事
David J. Greene & Co. v. Schenley Industries, Inc.
事件判決では、デラウエア最高裁判所は、株式買取請求は原告の唯一の救済法であるという議論を
Singer
︵
57
︶
(ア)
事 件と
否定することにより、 Stauffer v. Standard Brands, Inc.
︵
a
58
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
21
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page22 2012/01/13 13:09
22
――法 律 論 叢――
︶の条件が公正で
reorganization
す唯一の目的のために合併をすることができないという考えである。この結論を弁護するために裁判所が行った議論
は、明らかに、以前の判例の見解と矛盾していた。対照的に、裁判所は、組織変更︵
あっても、多数株主は少数株主に現金を拒否する機会を拒むことができないと考えた。最後に、目的に関する結論は、
事件判決と矛盾するし、普通の交付金合併に適用可
Stauffer
︶
analogy
事件判決と矛盾していた。最高裁は、少数株主締め出しのための合併は、会社過程の濫用で
Schenley
二五三条は少数株主の排除を容易にするためであるとする
能であるとする
あるという結論を弁護するため、支配を永続するための会社権限の使用は忠実義務違反であるなら、
﹁類推︵
により、少数株主を締め出すための会社権限の使用は、忠実義務違反である﹂とするが、類推は存在しない。少数株
主に対する株式売却の強制は、多数株主の支配を脅かさないからである。なぜ締め出し合併のために目的基準を導入
したのか、わからない。公正な価値を決定することが困難であるから公正基準を採用しなかったと考えられる。大抵
の締め出し合併では、支配グループは市価より高い支払いを申し出る。これは公正性を確かに立証はしないが、公正
性の一応の証明にはなる。しかし、そうすると少数株主はプレミアム価格が公正でないという立証責任を負うことな
る。これを避けるため目的基準を採用したというのであれば、誰の目的と何の目的が問題となるので、裁判所がこれ
らの問題を避けた理由を暗示する。合併が完成すると、株主はその地位を失うときに、合併は株主の利益であるとは
︶を超えているときである。それゆえ、会社の取締役会が誠実に行
the discounted value
言えない。利益があるとすれば、株式の代わりに受け取る対価の現在価値が、株式を保有し続けることにより受け取
るであろう収益の割引価値︵
為し、合理的注意を払った後に、交付金合併が会社の株主のためになると結論した場合には、交付金合併を行うこと
︶は満たさない。その代わりに、親会社が公正性を証明すること
the good faith element
は許されるべきである。しかし、子会社の親会社への交付金合併のときには、真の独立当事者間の交渉は可能でない
ので、この基準の誠実要素︵
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page23 2012/01/13 13:09
を要求されるときには、基準は、多分第一に裁判所に目的基準を負わせる困難を引き起こす。加えて、公正性基準は、
︵ ︶
事件決定の目的に関する結論は、会社法の安定した原則と締め出される少数株主の権利に関する
Tanzer
Singer
子会社の少数株主の株式取得が親会社株主と子会社の少数株主の双方の最善の利益であることを弁明することを要求
。
するであろう
59
事件判決と
Singer
の合併目的は
Kliklok
︵
︶
の取締役の支配のみ
Kliklok
の取締役の行
Kliklok
の株主としてのIGIの権
Kliklok
株主に対する取締役会の忠実義務の見地から
Kliklok
︶でなければならない﹂
。第二に、多数株主
bona fide
事件決定はデラウェア合併法の転機である。これらは、デラウェア会社が関係する
Tanzer
事件決定の動機は理解することが困難であ る。
Tanzer
60
ることを立証する責任を負う。
は、少数株主の利益を考慮しなければならないということである。特に多数株主は、合併が完全な公正性基準に応じ
は締め出し合併をすることを決定する際に、自己の利益に気を使うことができるけれども、合併条件を定めるときに
所は課していることである。第一に、多数株主の目的は﹁善意︵
しかし重要なことは、自己目的を進める交付金合併を完成させる権限の多数株主の行使に二つの実質的条件を裁判
事務をどのように管理するか決定するときには、自己の会社の関心に気を使う権利を有していた﹂と結論している。
評価されなければならないという理論をかたづけてしまい、裁判所は、﹁株主としてのIGIは、合併の決定を含む、
限と権利である﹂と述べている。IGIと
為が無視されうるのか説明していない。しかし裁判所は、
﹁実際に審理されるのは
を検討することは、IGIに対して公正でない﹂と述べている。このことは真実であるが、なぜ
る裁判所の結論と矛盾している。裁判所は、
﹁その権限の結果であって、その源ではない
事件判決における同じ裁判所の関心の表現の双方と矛盾している。それは、また、少なくとも概念上、公正性に関す
(イ)
(ウ)
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
23
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page24 2012/01/13 13:09
あらゆる締め出し合併は、目的と公正性の見地から審査されることを明らかにしている。しかし、何が不適当な目的
事件判決は、少数株主を締め出すためだけに行われる合併は不適当であるが、 Tanzer
事件決定は、親会
Singer
であるかおよび完全な公正性とは何かは未解決である。
︵
︶
︵
︶
事件判決の
Singer
社の有効な事業目的を促進するためだけに行われる合併は、公正であるなら、異議がないとする。これをどのように解
︶
︵
︶
︶
事件判決も
Singer
65
事件の﹁合併目的の区別は、仮にあるとしても、多分に実体がな
Weinberger
事件決定も﹁完全な公正性基準﹂の決定方法を示していない。
Tanzer
︵ ︶
Sterling v. Mayflower
︶を使用して計算される。この方法
Delaware block approach
66
では、会社の利益価値、資産︵または清算︶価値及び市場価値を決定し、会社の公正価値の割合が各々に割り当てら
よる公正価値は、デラウェア・ブロック・アプローチ︵
公正性は株式買取請求手続の際に使用される評価原則を適用することにより決定されると判示している。この方法に
併条件が完全に公正であることを証明することを要求した。この判決を解釈するデラウェア州の判例は、合併条件の
事 件ではデラウェア州最高裁は、株主に、株式を対価とする合併条件を攻撃することを許し、親会社に合
Hotel Corp.
︵
出される極端の中で、何が適当な目的を意味するのかはっきりと述べることは、克服できない問題を提出するといっ
しく思われたであろうが、一方では、閉鎖会社化合併、他方では親会社の独立した事業目的を促進する合併によって提
いよう︵ metaphysical
︶に思われる。
﹂
﹁目的基準の導入は、困難な評価問題を避ける手段として裁判所にとっては願わ
事件と
あると判示した。しかし、 Young
社によって行われたが、適法目的で
Signal
事 件は締め出し合併を禁止し、 Weinberger v. UOP,
目的基準に反対しようとしたことを示している。 Young v. Valhi
︵
62
事 件は、少なくとも閉鎖会社化合併では
するか問題となる。 Roland International Corp. v. Najjar
61
事件
は、UOP社の四九・五%の少数株主の締め出し合併が支配株主
Inc.
63
。
﹂
てよい
64
24
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page25 2012/01/13 13:09
れる。例えば、ABC会社は一〇ドルの利益価値、二五ドルの資産価値、一二ドルの市場価値があり、利益は公正価
値の三〇%、資産は五〇%、市場価値は二〇%を占めると決定できるとすると、公正価値は一七・九〇ドルである。
この方法は合併後の企業価値に関係なしに公正価値を決める。しかし、多数株主は、少数株主締め出し後子会社の最
事件は、この問題を認識し、
Roland International Corp. v. Najjar
も効率的な使用をするであろうから、少数株主が公正な価値を受領したか否かを決定する際に計算されなかった特別
利益を多数株主は常に手に入れるであろう。前掲の
︵ ︶
少数株主は、株式買取手続の場合よりもっと多くを受け取ることを期待できることを示唆しているように思われる。
会社の取得の結果
TransOcean
︵
︶
が受ける価値増加と等しい損害が原告に認められると
Vickers
方式を﹁論理又は現
dicounted cash flow
禁止されない。シナジー効果を有する又は効率を達成する締め出しは、全部の価値が少数株主の株式に支払われると
るなら、取締役会は、予想される増加を考慮した価格でのみ売却するであろう。﹂
﹁効率が促進される締め出し合併は
として購入される会社の部分としての少数株主の株式の価値である。﹂
﹁会社の利益が素早く増加することが期待され
ように思われる。
﹂﹁締め出し合併で公正性の標準でなければならないのは、株式の公開の取引価格ではなくて、全体
行法と附合しない﹂として否定している。しかしこの裁判所の見解は、
﹁論理および、論証上、法に関し間違っている
平法裁判所 はデラウェア・ブロック・アプローチを採択し、原告が主張した
して、破棄・差し戻したが、どのような評価アプローチを使用すべきか明らかにしていない。 Weinberger
事件では衡
の五三%子会社
Vickers
限界を有しているとし、支配株主が少数株主に対する忠実義務に違反した状況では同アプローチは適用されないとし、
ア・ブロック・アプローチを使用して、原告の財産回復を否定した。最高裁は、株式買取請求アプローチは内在的な
事 件では、公開買付けが完全に公正かどうか決定するのに、衡平法裁判所はデラウェ
Lynch v. Vickers Energy Corp.
67
。
﹂
しても多数株主にとって魅力的であろう
68
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
25
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page26 2012/01/13 13:09
︵
︶
このように、デラウェア州法の規制は不十分であるので、カリフォルニア州法、ニューヨーク州事業会社法改
カリフォルニア州では、一九七七年に、五〇%から九〇%の株式所有者による締め出し取引において、少数株
正案およびイギリス法の規制を分析する
。
69
b
ニューヨーク州事業会社法改正案は、特に株式買取請求手続における公正性の意味または﹁公正価格﹂に関す
合併を行うことを許容する法改正が行われている。
︶が﹁取引の条件と条件の公正性を承認した﹂場合には、会社株式の五〇%から九〇%の株主が締め出し
Corporations
出しのみが禁止されるのかということである。そこで、七七年と七八年に、会社コミッショナー︵ Commissioner of
の先祖帰りではないかということである。批判の第二は、何故株式の五〇%から九〇%の所有によって行われる締め
される。この規制に対する批判の第一は、一人の株主が反対すれば、締め出しができなくなるのでは、既得権時代へ
一方が株式の五〇%未満なら交付金合併は禁止されず、親会社と九〇%以上の子会社との間の略式締め出し合併は許
主が反対するなら、合併、資産売却又は会社併合による締め出しを禁止する三つの規定を法典に追加した。当事者の
(ア)
一九四八年イギリス会社法二〇九条は、前に所有していなかった対象会社の株式の九〇%以上を購入した会社
に残される。
あるが、この場合であっても、独立した当事者間の取引がない状態では何が公正価格か決定する困難な仕事が裁判所
るガイドラインを定めようとしている。同案は、株式の公正価格を決定する際に、裁判所を指揮しようとするもので
(イ)
付けは法により促進すべきであるという考えである。イギリス法のアプローチは、アメリカ法と比べて四つの長所を
することを認めている。同条の理論的基礎は、大抵の公開買付けは経済的効率を上げ、圧倒的株主の支持を受ける買
は、四か月以内に、前の売主が行ったのと同じ条件で、対象会社の残った株主に対し、その株式を譲渡するよう強制
(ウ)
26
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page27 2012/01/13 13:09
有している。第一に、誰のためか、何のためかを分類することなく、少数株主の締め出しの手続を定めている。第二
に、締め出しが公正かどうかの問題を市場の判断に委ねている。そこで公開買付者は九〇%を超える買付けに対する
インセンティブを有する。第三に、裁判所は、ほとんどもっぱら制定法の条件が満たされているかどうかに関係する
ことになる。第四に、唯僅かな株式しか有しない少数株主による妨害を阻むことである。
他方、公開買付者が公開買付け前に一〇%以上株式を有している場合には、対象会社の他の株主の七五%及び残り
︵ ︶
事件におけるデラウェア最高裁判決︵一九八三年︶
Weinberger v. UOP, INC
の株式の九〇%の保有者によって受諾されなければならないのは、欠点である。
明する負担は完全に原告に移転する。﹂
②﹁公平性の概念は二つの基本的局面 公正な取扱い︵
︶と公正な価格︵
fair dealing
︶を有している。前
fair price
者は、取引の時期、取引がどのように開始され、構築され、協議され、取締役に開示され及び取締役と株主の承認が
・・
行為が開示された後の少数株主の過半数の決議によって承認された場合には、取引が少数株主に不公正であったと証
の基礎を証明するのは、まず、合併を攻撃する原告の負担であると判示した。この原則に同意する。しかし、会社の
①﹁裁判官は、証拠によって取引は公正であると示す究極の立証責任は多数株主にあるが、公正義務に訴えるため
いると考えられる。最高裁は、次のような判示をしている。
一九八三年一月一日のデラウェア最高裁判決
は、衡平法裁判所決定を破棄・差し戻したが、現行法の枠を構築して
70
(五)
どのように得られたかという問題を含む。公正性の後者の局面は、あらゆる関連要素 資産、市価、収益、将来の予
・・
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
27
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page28 2012/01/13 13:09
想及び会社株式の本質的若しくは固有の価値に影響するその他の要因を含む、提案された合併の経済的及び財政的考
慮に関係する。しかし、公正性基準は、公正な取扱いと公正な価格のように二つの分けられた基準ではない。問題は
完全な公正の問題であるから、問題の全ての面が全体として調査されなければならない。﹂
③﹁本忠実義務違反事件では、評価のアプローチは、株式買取請求手続と同じであると裁判官は認識していた。・・・
このことは、いわゆる﹃デラウェア・ブロック﹄または加重平均法が使用されたことを意味する。・・・当該手続は
数十年の間使用されていた。しかし、金融界および裁判所で使用されている一般的に承認されている技術を排除する
all
gross
︶
8Del. C. §262(h)
限度で、それは現在では明らかに流行遅れである。・・・公正な価格は会社の価値に影響するあらゆる関連要素︵
︶の斟酌を要求する。このことは、今日の実務の現実と一致するだけでなく、制定法︵
relevant factors
の目的と意図に完全に適合する。
﹂
④﹁一定の場合、特に、詐欺、不実表示、自己取引、株式資産の故意の浪費または重大で極めて明瞭な行き過ぎ︵
︶を含む、適当な衡平上および金銭上の救済をなす完全な権限を有している。
﹂
rescissory damages
︶の場合には、株式買取請求による救済は適当でない。このような状況下では、裁判官は、原
and palpable overreaching
状回復的損害賠償︵
⑤﹁長い間親会社︱子会社合併に適用可能な公正性基準、今では株主に利用可能な拡大された株式買取請求の救済、
事件、 Tanzer
Singer
︶の事業目的要件により少数株主に提供されるとは思えない。
progeny
本件事実が命ずるような救済を適合させる裁判官の広い裁量を考えると、追加の有意味の保護が
事件、 Najjar
事件の三部作とそれに従う判例︵
︶
一〇二八頁以下では連邦証券法下での締め出しも論じているが、本稿では紹介を省略
Borden, supra note7 at 989(1974).
従って、当該要件はもはや如何なる効果もない。
﹂
注
︵
11
28
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
29
︵
と変わりがないので、本稿では事業目的基準で統一し
buseiness purpose test
した。なお州によっては株式交換による締め出しが問題となることにつき中東・前掲書︵注二︶、六・七頁参照。
は
Id.at .1000–1002. business reason test
ている。
︶
︶
Id.at. 1006, 1041.
︵
︶
Id.at. 1016–1018.
︶ 略式合併に関する最初の制定法は、九五%の子会社を有する公益事業会社の組織の簡素化を目的として一九三六年ニュー・
ヨーク州で採用されている。龍田節﹁アメリカ法上の略式合併﹂民商法雑誌五九巻一号三頁以下︵一九六八年︶
、中東・前掲書
︵
︵
︵
︵
︶
︶
︶
︶
︶
︵
︵
︵
︵
︵
︶
︶
︶
︶
︶
︶
事件で事業目的基準を放棄したが、同基準を依然として採用している州もあることに注意する必要がある。
Weinberger
︵
価格の公正性の問題は論じられていない。
Id.at. 496–497.
Id.at. 491–496.
Edward F. Greene, Corporate Freeze-out Mergers: A Proposed Analysis, 28 Stanford Law Rev.487–519(1975).
Borden, supra note7 at 1039–1040.
Borden, supra note7 at 1023–1028.
Vorenberg, Excusiveness of the Dissenting Stockholder’s Appraisal Right, 77 Harv. L. Rev.1189(1964).
︵
︶
490 F.2d563(5th cir.1974), cert.denied, 419 U.S.844(1975).第五巡回区控訴裁判所は、ジョージア法は、反対の少数株
主を締め出す目的のためにのみ合併規定を利用することを禁止している、と判示している。少数株主に提案された株式の買取
に、
なおアメリカの事業目的基準を紹介する論文として大塚章男﹁スクイーズアウトにおける﹁事業目的基
Id.at. 1022–1023.
準﹂の有用性﹂筑波ロージャーナル二号一五頁、二〇頁以下︵二〇〇七年︶参照のこと。デラウェア州は、後に紹介するよう
Id.at. 1022.
Id.at. 1021.
Id.at. 1020.
Borden, supra note7 at. 1019.
︵注二︶
・二〇頁以下参照。
︵
︵
︵
12
15 14 13
20 19 18 17 16
27 26 25 24 23 22 21
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︵
︵
︶
︶
締め出し解散を禁止したのは、事業目的が欠けたからではな
82F.2d 351(7th Cir.1936), cert.denied, 316U.S.675(1942).
くて、支配株主が公正な価格を支払わなかったことが理由であると判示している。
デ ラ ウ ェ ア 州 の タ イ プ Ⅱ の 事 件 で あ る 。二 つ の 公 開 会 社 の 合 併 に よ る 二 社 の 潜 在 的 利
392 F. Supp.1393(N.D. Fla.1974).
益衝突の除去と効率性に基づく将来の蓄えは、吸収合併消滅会社︵X社︶の少数株主締め出し合併のための有効な事業目的を
構成する、とし、このような目的があると、デラウェア州法では、少数株主はただ現金を受け取る合併が許されると判示した。
によれば、Y社は合併によって生じた価値増加の比例的持分をX社の少数株主に提供する義務がないから、事
しかし、 Greene
業目的は吸収合併存続会社︵Y社︶とその株主にのみ利益を与える。
135N.J. Super.36, 342 A.2d 566(1975).支配株主は一九六八年に新規株式公開をしたが、株価が継続的に下落した。そこ
で支配株主はタイプⅢの少数株主の締め出しを試みた。ニュージャージー州の裁判所は、支配株主が申し出た価格が公正であ
︶
るという立証をしていないとして合併を禁止した。しかし、裁判所は、支配株主がそのような立証をしたなら取引が許される
︵
︵
︵
︵
︶
︶
︶
︶
︶
Greene, supra note 24, at 510–512.
によると、タイプⅢの閉鎖会社化合併を明瞭に禁止した判例は、 People v. Concord Fabrics, Inc., 371N.Y.S.2d
Greene
Vorenber, supra note 21, at 1215.
Id.at 505–506.
Id.at 505.
Greene, supra note 24, at 503–505.
か否か、又は、公正な価格での少数株主締め出し合併に有効な事業目的が要求されるか否か判示しなかった。
︵
︶
︵
︶
︶
Greene, supra note 24, at 518–519.
な お 中 東・
Brudney and Chirelstein, A Restatement of Corporate Freezeouts, 87Yale Law Journal354–1376(1978).
前掲書︵注二︶四二頁参照。
と Albright v. Bergendahl, 391F. Supp.754(D. Utah1974)
があるだけで、多くの連邦裁判所は、当該
550(Sup. Ct.1975)
合併は州法上許されていると考えているとのことである。 Greene, supra note 24, at 515 note87.
︵
︵
︵
︵
28
29
30
36 35 34 33 32 31
江頭・前掲論文︵注一〇︶一七五頁注二八、中東・前掲書︵注二︶三
Singer v. Magnavox Co., 380 A.2d 969(Del.1977).
九頁、大塚・前掲論文︵注二〇︶二三頁以下で紹介がなされている。
︶
38 37
39
30
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
31
︵
︵事実︶一九七四年八月に
以下
社という。︶は、 Magnavox
社の普通株式
North
American
Philips
Corporation(
Philips
︵以下 Development
社という。︶を設立した。
North American Philips Development Corporation
を公開買付けするため
社は一株八ドルで
社の全株の公開買付けを発表したが、 Magnavox
社の取締役は、八ドルでは安す
Development
Magnavox
社、 Philips
社および Development
社の経営陣が歩み寄り、買収価格
ぎるとして、これに反対した。同年九月に Magnavox
を九ドルに上げ︵簿価は一〇・一六ドルであった。
︶
、
社の一六人の役員と二年間の雇用契約を締結することにした。
Magnavox
社の八四・一%の普通株式を取得した。次に、 Development
社
Magnavox
社は反対を撤回し、 Development
社は
Magnavox
社の株式を一〇〇%取得するため、一九七五年五月に T.M.C. Develpoment
社を設立し、 Magnavox
社と合
は、 Magnavox
社の九人の取締役のうち四人は Philips
社の取締役で、他の三人は Magnavox
社と雇用契
併させることにした。 Magnavox
社の株主である原
約をし、ストック・オプションを有していた。同年七月に臨時株主総会で合併が承認されたが、 Magnavox
告は、①本件合併は少数株主を締め出すことのみを目的としているので、詐欺的である、②現金の買収価格は著しく不適当で
あるので、少数株主に対する信認義務に違反している等を理由に、合併の無効と損害賠償を求めた。衡平法裁判所は請求棄却。
株主上訴。
︵判旨︶一部認容 ﹁私は、少数株主を締め出すという唯一の目的のためになされた二五一条の合併は、会社過程の濫用であ
り、本件訴訟においてそのように主張する告訴は、裁判所が事情のもとで適切と考える救済を与える信認義務違反の訴訟原因
を述べているという多数意見の考えに同意する。・・・私は、裁判所は、関わり合った事業目的又は経済的必要性、望ましさ、
実現可能性、自己に役立つことの証明、操作又は無理、内在的公正性又は不公正のその他あらゆる重要な要素を吟味すべきで
あると考える。﹂
事件決定である。 Note SINGER v. MAGNAVOX AND CASH
Tanzer
事 件 判 決 は 、少 数 株 主 に 公 正 な 対 価 を 申 し 出 る と 、信 認 義 務 を 履 行 し た こ と に な る と す る 被 告 の 見 解 を 否 定 し て い
Singer
る 。事 業 目 的 テ ス ト を 採 用 し た が 、事 業 目 的 は 何 か 、そ れ は い か な る 場 合 に 存 す る の か 示 さ な か っ た 。こ の 問 題 を 扱 っ た の
は 、同 事 件 判 決 の 約 一 か 月 後 に 下 さ れ た 後 述 す る
社の八一%の普通株式を所有していた。IGI社は、将来の長期負債を容易にするため、 Kliklok
Kliklok
参照。
TAKE=OUT MERGERS, 64 Va. L. Rev.1101, 1106(1978)
︶
なお中東・前掲書︵注二︶四〇頁、大塚・前
Tanzer v. International General Industries, Inc., 379A.2d 1121(Del.1977).
掲論文︵注二〇︶二七頁参照。
︵事実︶IGI社は
40
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社と交付金合併
Kliklok
社の株主である原告は、合併の唯一の目的がIGI社の利益に役立つこ
Kliklok
︶を求めた。衡平法裁判所は、予備的差止命令を否定したが、中間
preliminary injuction
社の普通株式を全部取得する計画の一部として、一九七五年九月にKLK社を設立し、同年一二月に
とであるとして、予備的差止命令︵
をすることとし、株主総会の承認を受けた。
︶を下した。原告上訴。
命令︵ interlocutory order
︵判旨︶請求一部認容、一部破棄。
﹁要するに、問題は、親会社はただ自己の利益のために合併させることができるか、それともそれは信認義務違反であるかであ
る。
﹂
﹁当事者は﹃事業目的﹄の面から問題を分析したが、この慣用句はよくて不明瞭で、悪くて結果を述べるが、権利又は義務
の株主としてのIGI社の権限と権利であ
を述べないので、有用でないように思われる。
﹂
﹁実際審理されているのは Kliklok
る。
﹂
﹁裁判所は、デラウェア会社の株主は、他の株主に負う義務によりもちろん制限されるが、個人的利益の期待を含む、自己
の意見によると、合併の唯一の理由は、IGI社
Chancellor
による長期負債の容易化であるので、唯一の所有者であるという適法な当面の強制的な事業理由がある。IGI社は単に少数
の利益で株式の投票をする権利を有していると判示して来た。﹂
事件判決のルールに違反しないことが証明され、IG
株主を締め出す目的で少数株主を締め出してはいない。
﹁従って
Singer
合併の善意目的を立証したことになる。
﹂
﹁しかしこの決定は、とにかくIGI社が Kliklok
の少数株主に負う
Kliklok
I社は
事件判決の公正性の審理の資格があるので、訴訟を終結させない。
﹂
﹁ Chancellor
忠実義務があるときには、少数株主は Singer
の意見は株式に申し出られた価格の観点からのみ公正性を討議した。しかしそれは余りに制限的である。・・・ Singer
事件判
決が要求したテストは、取引のあらゆる局面に関する﹃完全な公正﹄に対する裁判上の吟味を含んでいる。﹂
事件の後、締め出し合併に対するデラウエア最高裁判所の立場は明確な形を取り始めたが︵ Note, Singer v. Magnavox
Tanzer
︶、少数株主を締め出すためにのみ会社の権限を行使す
and Cash Take-Out Merger, 64Virginia. L. Rev.1101, 1108(1978)
なお江頭・前掲論文︵注一〇︶一七七
るという要件は、維持された。 Young v. Valhi, Inc., 382 A.2d 1372(Del. Ch.1978).
︵
︵
︶
︶
︶
Mills v. Electric Auto-Lite Co., 552 F.2d 1239(7 th Cir.1977), cert.denied, 46U.S.L.W.3293(U.S. Nov.1, 1977).
︵事実︶ Electric Auto-Lite
社︵以下 Auto-Lite
社という。︶の株式の五四・二%を取得した Mergenthaler
社が、同社と新
Brudney and Chirelstein, supra note 38, at1365–1370.
Brudney and Chirelstein, supra note 38, at1359–1365.
頁注四五参照。
︵
43 42 41
32
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
33
設合併をした︵新会社は
社︶
。
社の元株主が、委任状説明書の詐欺を理由に合併の無効を主張し、イリノイ北
Eltra
Auto-Lite
︶を
地区地方裁判所に訴訟を起こした。地方裁判所は請求認容の正式事実審理を経ないでなされる判決︵ summary judement
︶
。被告会社上訴。原告も交差上訴。第七巡回区控訴裁判所は、因果関係の問題か
言い渡した︵ 281F. Supp.826(N.D. .1967)
︶
。原告は因果関係の問題を審査するた
ら、正式事実審理を経ないでなされる判決を破棄した︵ 403F. Supp.429(7th Cir.1968)
社普通株式は一株あたり二五・二五ドルの平均市価で、その優先株は一・八八株
Eltra
社の合併後価値は︵二、六九八、八二二×二五・二五ドル︶+︵五三二、五
あたり五八・三九ドルであったから、
・・・ Eltra
社と Mergenthaler
社の合併前結合価値と Eltra
五〇×五八・三九ドル︶=九九、二四〇、八四九ドルであった。 Auto-Lite
四ドルであった。・・・合併後の月の
社の合併前価値は二、六九八、八二二×二四・八七五ドル=六七、一三三、
ル=二七、八二五、七三七ドルで、 Mergenthaler
一九七ドルであった。二社の合併前結合価値は二七、八二五、七三七ドル+六七、一三三、一九七ドル=九四、九五八、九三
社の平均市価は一株あたり五二・二五ドルで、 Mergenthaler
社の平均市価は一株あたり二
た。一九六三年前期の Auto-Lite
社の少数株主が所有する株式の価値は、五三二、五五〇×五二・二五ド
四・八七五ドルであった。従って合併前に Auto-Lite
と
両教授が示した解決法を採用し、それを本件に適用することにす
性は要求することを証明している。
Brudney
Chirelstein
社の少数株主の株式は五三二、五五〇株で、 Mergenthaler
社の株式は二、六九八、八二二株であっ
る。合併の時、 Auto-Lite
彼らは、少数株主が、旧会社の株式の市価だけでなく、これらの株式が旧
Takeovers, 88 Harv. L. Rev.297, 308–09(1974).
二社の合併前の結合価値で示した利益に比例する合併によって起こされたシナジーの分け前についても支払われることを公正
と Chirelstein
両教授が説得力をもって指摘したように、合併は、旧二社の合計以上の価値があるシナジー効果を
Brudney
被合併会社に起こすからこの仮定は普通間違っている。 Brudney and Chirelstein, Fair Shares in Corporate Mergers and
当該計算法は、合併から生ずる新会社の価値は、合併前の当該二社の構成要素の価値の総計と全く同じであると仮定している。
この問題を解決する最も単純な方法は、価格比︵二・一︶と有効な交換比︵二・三一︶を比較することである。・・・しかし
︵判旨︶﹁今から、一九六三年前期の各会社の株式の市価に基づいて、合併条件が公正であったかどうか決定することにする。
差し戻した。
巡回控訴裁判所に上訴したのが本件である。争点は合併条件の公正性である。控訴裁判所は地方裁判所判決を破棄し、事件を
め裁量上訴︵ certioraria
︶が認められた。合衆国最高裁判所は判決を破棄し、事件を地方裁判所に差し戻した︵ 396U.S.375
︶。
地方裁判所は、合併は取り消されるべきでないが、合併条件は原告に不公正であったと判示したことから、当事者双方が第七
Ⅲ
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︵
社の合併後価値の差額である四、二八一、九一五ドルは、合併によって起こされたシナジーによるものである。 Brudney
と
両教授が案出した公正の公式によれば、 Auto-Lite
社の少数株主は少なくとも Auto-Lite
に保有していた合併前
Chirelstein
社の株式と、彼らが保有が示した Auto-Lite
社と Mergenthaler
社の合併前の結合価値のパーセン
の市価と同じ価値の Eltra
社と少数株主の株式の合併前価値は二
トに比例した合併によって生じたシナジーの分け前を受け取るべきである。 Auto-Lite
社の合併前の結合価値である九四、九五八、九三四ドル
Mergenthaler
七、八二五、七三三七ドルで、それは、 Auto-Lite
社と
社の少数株主は少なくとも二七、八二五、七三七ド
の二九・三%を代表する。したがって公正の強制を満たすには
Auto-Lite
ル+︵〇、二九三×四、二八一・九一五ドル︶=二九、〇八〇、三三八ドルの価値のある株式を受け取らなければならなかった。
﹂
しかるに少数株主は公正な額より多く受け取っているのから、合併条件は公正で、原告は損害を賠償してもらう必要はない。
︶
Brudney and Chirelstein, supra note 38 at 1370–1376.
︶ なお中東・前掲書︵注二︶一一頁以下、野田博﹁アメリカ法における合併制度の弾力化の歴史と株主の地位﹂一橋研究第九巻
︵
︶
︶
第四号二頁以下︵一九八五年︶参照。
︵
Weiss, supra note 7, at 629–631.
Weiss, supra note 7 at 627–629.
︵
場合には、株主の投票なしに子会社が親会社と合併することを認めている。子会社の少数株主による承認は、その投票が親会社
により提案された合併を阻止することができないので、不要である。六八A条に基づいて親会社と子会社が合併するときには、
子会社の株主は反対し、その株式の公正な価格を現金で受け取る資格がある。親会社の株主は、六八A条に基づく合併がその
Comment at 348(1969 version).
︶ ここに至るまでの判例として Weiss
は 、締 め 出 し に 好 意 的 な 司 法 哲 学 へ の 変 化 の 前 兆 に な る も の と し て 、
Federal United
権利に実質的に影響しないので反対する権利は与えられない。
﹂ Model Business Corporation Act Annotated, Vol.2, §68A,
︵
︶
と Beloff v. Consolidated Edison Co.300N.Y.11, 87N.E.2d
Corp. v. Havender, 24Del. Ch.318, 11A.2d331(Del.1940)
の二つの判例に注目している。なお野田・前掲論文︵注四五︶一二頁参照。
561(1949)
親会社は子会社の株式の九六%を所有していた。親会社の取締役会は、子会社の少数
38 Del. Ch.514, 154A.2d 893(1959).
︵
︵
︶
Weiss, supra note 7, at 632–641.
︶ 六八A条は次のようにコメントされている。﹁選択的六八A条は、親会社が子会社の株式の少なくとも九五%を所有している
︵
45 44
49 48 47 46
50
51
34
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
35
株主に現金を支払い、子会社を親会社に合併させる決議をした。少数株主は、合併の対価として現金だけとし、
﹁企業から株主
特に述べている﹂としてこの主張を否定した。
B社︵ Planters Nut and Chocolate Company
︶の九〇%を所有するA社
41 Del. Ch.7, 187 A.2d 78(Del.1962).
(Standard
︶に反する﹂と主張したが、デラウェア最高
を結果的に排除﹂することは、
﹁法の定まった政策︵ the settled policy of the law
裁判所は、デラウェア一般会社法二五三条は、略式合併における対価として﹁証券、現金又はその他の対価﹂と定め、
﹁現金を
︶
︵
︶
︶
︵
︵
︵
︵
︵
︵
︶
︶
︶
︶
281A.2d30(Del. Ch.1971).
41Del. Ch.7, 187A.2d78(Del.1962).
Weiss, supra note 7 at 654.
See Brudney & Chirelstein, supra note38, at1357–76; Greene, supra note24, at 491–96.
求である﹂として、差止めを認めなかった。
する現デラウェア合併法︵
の下では、いわゆる略式合併法︵ 8 Del. C. §253)
に基づくものより大きくはない。
8 Del. C. §251)
従って、原告がA社により原告の株式に付けられた価格に満足せず、詐欺が証明されないなら、原告の頼みの綱は株式買取請
ヨーク証券取引所に上場されており、その市場価値は驚くほど低かった。そこで裁判所は、﹁原告の権利は、・・・ここで関係
数株主は、親会社の利益のために少数株主を締め出そうとしているとして合併の予備的差止めを求めた。B社の株式はニュー
︶はB社 (Schenley Industries, Inc.
︶の普通株式の八六%を所有し
281 A.2.d 30(Del. Ch.1971).A社 (Glen Alden corp.
ていた。A社はB社をA社の他の子会社と通常の合併をさせようとした。B社の合併の対価は現金と社債であった。B社の少
Weiss, supra note 7 at 651–652.
去する手段を提供することであるからそうである﹂と判示した。中東・前掲書︵注二︶
、二二頁参照。
︶を除
事件を想像することは困難である。このことは、制定法の正に目的が、親会社に企業における少数株主の持分︵ interest
件の状況では当該救済は除外される。﹂﹁実際略式合併下では、少数株主が合併を無効にする資格がある現実の詐欺がありうる
る強圧的扱いを理由に、訴訟を起こした。裁判所は、
﹁求められている真の救済は、原告株式の金銭的価値の回復である。
﹂
﹁本
合併を知った少数株主は、一〇五ドルは少数株主に対する擬制詐欺を構成するくらい著しく不十分であること及び親会社によ
︶は、C社 (Planters of Delaware
︶を新設し、C社をB社と通常合併させた。その後A社とC社とが略式合併をした。
Brands
合併の対価は一株あたり一〇五ドルであった。不在であったため、反対株主買取請求権の行使期間︵二〇日︶が経過してから、
52
54 53
58 57 56 55
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︵
︵
︵
︶
︶
︶
︵
︵
Weiss, supra note 7 at 658–663.
Weiss, supra note 7 at 664–666.
の株式の九〇%以上の所有者がその株式を新会社︵ Landro
︶に出資し、 Landro
が
407A.2d 1032(Del.1979). Roland
社の五五%の株式を所有していた
382A.2d1372(Del. Ch.1978). Valhi
社が
Contran
社とUOP社の兼務取締役である
UOP社への公開買付けの調査を行った。それは、 Signal
Roland
社の全株式を取得しようとし
Valhi
により行われ
Chitia
︵長い間 Signal
社の一完全子会社の従業員で上級執行副社長をしていたが、UOP
が招集された。UOP社の社長 Crawford
社の取締役となった︶は、会議に招待されたが、一株二〇ドルから二一ドル案に反対しなかった。執
社の社長となり、 Signal
は、UOP社の投資銀行をしている Lehman Brothers
に価格
行委員会は経営陣にUOP社との交渉を授権した。 Crawford
社が二四ドルでUOP社株式の四九・五%を取得できれば良い投資であると結論していた。報告書
た。その報告書は、
Signal
は、両社の兼務取締役である Walkup
と Shumway
の間で議論され、結局、 Signal
社の執行委員会︵ executive committee
︶
と
Arledge
︶
社︵被告︶は、完全子会社の一社を現金で売却し、その現金の運用が問題とな
426A.2d 1333(Del. Ch.1981).事(実 )Signal
り、UOP社に一株二一ドルで公開買付けをかけ、UOP社の五〇・五%の株式を取得した。それでも現金が余ったため、再度
社の節税および将来の利益相反の回避のためとする Contran
社の事
の少数株主を締め出すことにあるとし、合併は Contran
︶
業目的の主張を否定し、原告のため、株式買取請求による救済を否定しつつ、合併の永久的差止め︵ permanent injunction
を認めた。
社の別の定款規定を利用して、
社とその完全子会社︵
社︶と合併させ、
社の少数株主に完全な
きるとの
Valhi
Valhi
VIS
Valhi
社
公正価格︵市価に五〇%のプレミアムが付いていた︶を支払い、締め出そうとした。裁判所は合併の﹁基本目的﹂は Valhi
た。しかし、少なくとも Valhi
社の五%を所有する他の会社と合併するには、 Valhi
社の議決権の八〇%の承認を要するとの
社の定款規定が障害となり、それができなかった。そこで完全子会社と合併するときには、単なる過半数決議で合併で
Valhi
︶
に関する法の厳格な遵守を要求するとした。なお大塚・前掲論文︵注二〇9︶二八頁以下に紹介がある。
する忠実義務違反となるという見解を繰り返して、本件は古典的な﹁閉鎖会社化﹂取引を示し、このタイプの合併は忠実義務
の申立てを認めず、最高裁はこれを確認した。決定は、排除目的だけのため会社の仕組みを使用するときには、少数株主に対
と簡易合併しようした。合併後数ヶ月してから、 Roland
の少数株主である Najjar
が、合併は Roland
の少数株主を締め出す
ことを唯一の目的として行われ、株式の購入価格は著しく不適当であったとして訴訟を起こした。衡平法裁判所は被告の棄却
61 60 59
62
63
36
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
37
公 正 意 見 書︵
︶の提出を依頼し、 Lehman Brothers
は二一ドルを公正とする公正意見書を作成した。
fairness opinion letter
社とUOP社の取締役会が招集され、二つの取締役会の間で電話会議が行われた。 Signal
社の取締役会は、二一ドルで
Signal
現金合併をUOP社に提案することを満場一致で採択した。この提案は、合併がUOP社の株主総会で投票する少数株式の過
社の申入れを受諾する決議を採択した。UOP社は
半数で承認されることを要求していた。次にUOP社の取締役会は Signal
株主に取締役会がとった行為を通知した。定時総会の招集通知および委任状で、初めて合併を承認するよう勧めた。総会では
少数株主の五六%のみが投票し、全少数株主の五一・九%が合併に賛成した。条件に従い合併は効力を生じ、UOP社の株式
は自動的に二一ドルを受け取る権利に転換した。原告は一株二一ドルの価格は著しく不適当であるとして、合併の有効性に異
衡平法裁判所は﹁全体的に考察し、合併条件は法的に原告及びUOP社のその他の少数株主に公正であったと認定﹂し、請
議を唱えるクラス・アクションを起こした。
︶
求を棄却した。上訴に対する最高裁の判決の内容については本文︵五︶を参照されたい。
︵
︵
︵
︵
︶
︶
︶
︶
岸田雅雄=近藤光男=黒沼悦郎編﹃アメリカ商事判例研究﹄一四五頁、西本・前掲論文︵注七︶四五頁に紹介がある。
457A.2d701(Del.1983).本件についてはハミルトン・前掲書︵注五︶三二六頁以下、ピット・ブランソン・前掲書︵注五︶
三五八頁以下、ミルハウプト・前掲書︵注五︶一八三頁以下、岡田豊基﹁親子会社間の締め出し合併における少数株主の保護﹂
Weiss, supra note 7 at 680–690.
Weiss, supra note 7 at 671–680.
402A.2d 5(Del. Ch.1976), aff ’d in part and rev’d in part, 429A.2d497(Del.1981).
頁参照。
Weiss, supra note 7 at 666–671.
︵
︶
33 Del. Ch.293, 93A.2d 107(Del.1952).
︶ ミルハウプト・前掲書︵注五︶一八八頁注三二、ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶一八九頁、中東・前掲書︵注二︶三五
︵
︵
66 65 64
70 69 68 67
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三 アメリカ法における取締役の信認義務
事件判決から明らかなように、取締役の忠実
Weinberger v. UOP, INC
︶
71
︶からなる。
duty of loyalty
︵ ︶
︶を負ってい る。当該信認義務は、注意義務︵
fiduciary duty
72
︶
73
︶
duty of care
これに対し、改正模範事業会社法は、
﹁取締役会の各構成員は、取締役の義務を履行するとき、 誠実に、かつ 会
。
般にコモン・ロー上発達した考えであり、デラウェア会社法にはこれを定義した規定はない
︵
注意義務は、個人ベースで会社と取締役の利益が相反しない、経営判断の場面で問題となる。注意義務は、一
と忠実義務︵
に、取締役は会社と株主に対し信認義務︵
アメリカでは、取締役会が、株主のために会社の営業と業務を経営する責任を負ってお り、当該責任を遂行する際
︵
義務が問題となる。この義務を理解する前提として、アメリカ法の取締役の義務を考察することにする。
アメリカ法ではMBOの場合上述した
(一)
(二)
(二)
︵
︶
︶の一般的義務を定めている。この行為の基準は、しばしば注意義務と特徴付けられている
。
collegial body
74
争われた事件である。訴訟却下の申立てを退けた衡平法裁判所の判断を破棄・差し戻し、デラウェア州最高裁判所は
事件は、株主︵原告︶が事前請求︵ demand
︶を行わないで代表訴訟を行ったが、これが認められるか否か
Aronson
の団体︵
い﹂
︵八・三〇条b項︶と定めている。八・三〇条a項は各取締役の注意基準を、八・三〇条b項は、取締役会として
同様の地位にいる人が同様の状況で適切であると合理的に信じるであろう注意をもって義務を履行しなければならな
﹁取締役会の構成員又は取締役会の委員会は、意思決定の任務又は監視の任務の履行との関連で情報を得た場合には、
社の最善の利益であると取締役が合理的に信ずる方法で行為しなければならない﹂
︵八・三〇条a項︶と定めると共に、
(一)
38
――法 律 論 叢――
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︵
︶
︶信じて行動したという推定である。・・・裁量権の濫用がない限り、裁判所
in the honest belief
︵
︶
︶の適用があり、司法審査
business judgement rule
76
︶
77
しないという義務である。これは、会社と利益が相反する場合、即ち、会社と取締役間の取引︵自己取引
(三)
︵ ︶
兼任取締役が存在する会社間の取引、会社に帰属すべき有利な取引機会の利用および競業取引の場合に問題となる。
︶
、
[self dealing]
これに対し、忠実義務は、意思決定をする際、取締役は会社とその株主の最善の利益以外は考えないまたは代表
。
を免責または制限する規定が原則として適用される
︵
の焦点は、通常、決定の内容に及ばず、決定手続に絞られる。また、②基本定款で金銭的損害に対する取締役の責任
事件が判示するように、①経営判断原則︵
務の場合には、 Aronson
はその判断を尊重する。この推定を覆す事実の証明責任は、決定に異議を申し立てる側にある
。
﹂と判示した。注意義
75
︶かつ正直に︵
faith
営業上の決定を行うにあたり、会社の取締役は、情報を得て、行った行動は会社の最善の利益になると誠実に︵ in good
﹁事前請求の免除の全問題は、経営判断の問題と同原則の適用可能性の基準と完全に結びついている。・・・それは、
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
39
︵
︶
︶は、コモン・ロー上、
﹁無効︵
当初、利益相反取引︵ directors’ conflicts of interest
︵ ︶
]
︶を審査
entire fairness
︵ ︶
︶または取消可
null and void
る責任を取締役に転嫁するだけでなく、決定手続と決定内容の両者︵すなわち完全な公正性[
。裁判所は公正さを証明す
忠実義務の場合には、経営判断原則の適用はないし、違反の場合の免責は問題とならない
78
︶であ り﹂、取引から利益を受けた利害関係ある取締役は利益を吐き出すことが要求され、損害に責任を
voidable
81
79
する。
能︵
80
︶
82
①取引が会社にとって公正︵
︶であると裁判所が判断する場合、取引の有効性は認められる。
fair
は以下のように整理することが可能であるとしている。
が多くなった。有効とした判例には混乱があるが、ハミルトン
︵
負うと考えられていた。しかし利益が相反しても、会社にとって利益となる取引もあるので、取引を有効とした判例
_
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②取引が、詐欺、不当性の高い権利濫用行為に基づいているもの若しくは会社資産の濫用となる取引であると裁判
所が判断する場合、取引は取消される。
③取引に詐欺、欺罔若しくは会社資産の濫用の要素はないが裁判所がその取引を公正であると認定しない場合は、
利害関係を有する取締役の決議参加なしに、取引が利害関係を有しない取締役の過半数をもって、又は全ての関連事
実が完全に開示された後株主の過半数をもって承認︵若しくは追認︶されたことを、利害関係取締役が十分に立証で
きた場合に限り、その取引の有効性を認める。
︵
︶
︵
︶
︶とに分類される
。
strong form
︶と
weak form
次いで、利益相反取引を制定法で規定する州が多くなった。このような制定法を最初に制定した州は、カリフォ
やや強い形式︵
84
︶
85
︵
︶
︵
︶
87
︵
︶
デラウェア州が利害関係取締役取引につき強い形式のアプローチを採用しているか明らかではない が、 Marciano
88
れ︵内容の審査は行われず︶、反証がなされなければならないというアプローチである。
③強い形式とは、利害関係のない取締役会の承認は原則として司法審査を制限し、経営判断の原則によって保護さ
が採用している
。
カリフォルニア州やニューヨーク州
86
である。経営判断原則の保護はなく、公正性審査により、裁判所は手続および内容を審査することができる。現在の
②やや強い形式とは、利害関係のない取締役会が承認した場合には、証明責任を原告に転換するというアプローチ
が採用している。
内容の両者を審査し、被告︵受任者︶がその立証責任を負うアプローチである。ニュージャージー州
︵
①弱い形式とは、利益相反制定法の遵守は、コモン・ローを変更するものではなく、裁判所が公正性について手続と
︶と強い形式︵
semi-strong form
ところで、制定法とコモン・ローの関係については、ピント/ブランソンによると、弱い形式︵
ルニア州であって、カリフォルニア州制定法は、他の州のモデルとなっ た。
83
`
a
40
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
41
︵
︶
事 件と
v. Nakash
︵
︶
事 件では、強い形式のアプローチが採用されていると指摘されている。
Cooke v.Oolie
90
取締役の利益相反取引は、開示後、適格取締役︵
その内容は一・四三条a項三号参照︶
qualified director.
︵
︶
利害関係ある取締役等が有する株式は除かれる︶の過半数の決議により承認された場合には
qualified shares.
︶
︶
︶の核となる経営は、ハリウッド映画のフィルム現像であったが、事業は停滞し
Technicolor, Inc.
事 件は、三組説を採用している。事案は以下の通りであった。
Co. v. Technicolor, Inc.
かについては争いがある。
Cede &
︵
注意義務、忠実義務に並ぶ義務として誠実義務︵ duty of good faith
︶がある︵三組説と呼ぶこととする。
︶か否
に 基 づ い て い る﹂とされている。
︵
する﹂ものであり、
﹁サブチャプターFの二〇〇四年改正は、最初のサブチャプターに生気を与える同一の基礎的判断
上の審査から排除することから起こる潜在的且つ不確実な効率性の損失を明らかに超えるという熟慮した意見を反映
ら起こる明瞭且つ重要な効率性の利益は、おりにふれて、他の取締役の取引を利益相反を理由に公正性に対する司法
これは、
﹁会社の問題では、プラニングが決定的である場合、取締役の利益相反取引を定義することによる確実性か
有効であると︵八・六三条︶定めるに至っているので、強い形式のアプローチを採用している
。
91
格株式︵
取締役の利益相反取引は、株主に通知し、取締役が会社の秘書等に情報を開示し、議決権ある株主に伝えられた後、適
の過半数または取締役会に基づいて授権された委員会により承認された場合には、有効であること︵八・六二条︶
、
六一条︶、
て公正であることが立証された場合には、取締役が取引に利益があるという理由による攻撃から免除されること︵八・
六〇条︶
、 取引が利益相反取引でないか、八・六二条若しくは八・六三条の手続きが取られたか、取引が会社にとっ
一九八九年改正模範事業会社法は、サブチャプターF﹁取締役の利益相反取引﹂を新設し、 その定義を定め︵八・
89
92
テクニカラー社︵
93
(四)
(ア)
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42
――法 律 論 叢――
ていた。そこで
は、テクニカラー社を公開買付けしようとし、 Kamerman
と会合
Perelman
︶は、テクニカラー社の半分の規模の会社であっ
Forbes Group, Incorporated
︵テクニカラー社のCEO︶は、
﹁一時間現像﹂という新事業を始めたが、成功せず、株価
Kamerman
は下落した。MAF︵ MacAndrews &
たが、その取締役会議長で支配株主である
を持ち、第二回目の話し合いで実質的な合意に達した。テクニカラー社の臨時取締役会が開催され、九人の取締役が
︶である
Chief Operating Officer
は、 Kamerman
と緊張関係
Ryan
全員出席したが、三人の取締役は、会社の売却につき限定的知識しか有しておらず、他の三人は、会社の売却につき何
も知らされていなかった。社長で最高経営責任者︵
にあったので、
﹁何かあるでしょう﹂としか告げられていなかった。 Kamerman
は取締役会で一株二三ドルで売却する
ことで同意したこと、買収は二段階で、後者の価格も二三ドルであり、テクニカラー社はMAFの完全子会社となるこ
には、発見者報酬︵ finder’fee
︶として一五万ド
Sullivan
から委託を受けたゴールドマン・サックスは、一株二三ドルは公正であ
Kamerman
はMAFと雇用契約を締結すること、取締役の
と、 Kamerman
ルを支払うことを明らかにした。
るという意見を報告した。取締役会は満場一致でMAFとの合併契約を承認し、株主に二三ドルの申出を受け入れる
よう推奨した。テクニカラー社の基本定款には、合併の承認には発行済株式の九五%の株主の投票を要求する超過半
の新雇用契約を承認した。MAFは公開買付
Kamerman
︶が定められていたが、取締役会は、満場一致でその規定の廃止を推奨し、取締役会
数条項︵ a supermajority provision
の発見者報酬および
はストック・オプション契約、 Sullivan
超過半数条項の廃止と合併に賛成した。MAFにより取得されたテクニカラー社は、MAFの完全子会社
とい
Cede
と
Macanfor
けによりテクニカラー社の株式の八二・一九%を取得した。テクニカラー社の臨時株主総会において、株主の八九%が
現金合併をした。原告シネラマ社はテクニカラー社の株式の四・四〇五%を所有し、 Cede & Co
︵以下単に
う。
︶はシネラマ社のオーナー株主であった。シネラマ社は公開買付けにも応じず、第二段階合併にも反対した。シネ
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
43
ラマ社はデラウェア一般会社法二六二条に基づき、デラウェア州衡平法裁判所に株式の評価を求めた。その手続中に、
詐欺と不公正取引があると考えたシネラマ社は、テクニカラー社の七人の取締役、MAF社、 Macanfor
社、 Perelman
︵
︶
等を相手に、損害賠償請求の訴えを提起した。その他、シネラマ社はテクニカラー基本定款の超過半数条項の廃止につ
。
Cede & Co. v. Technicolor, Inc., 542 A.2d 1182(1988)(Cede︶
I
︶のいずれか一つに違反したという事実を立証しなければならな
triads
た決定を保護し、裁判所はこれらの経営判断を後知恵で評価しない。原則の推定が覆されると、立証責任は、問題と
い。原告株主が当該事実を立証することができない場合には、経営判断の原則が会社の役員と取締役及び彼らが下し
義務、忠実義務又は注意義務という三つの組︵
ている。当該原則を覆すには、原告株主は、取締役が、問題となっている決定に達する際に、信認義務のうちの誠実
最高裁は、
﹁取締役会の決定に対し訴えを提起する原告株主は、最初に︵経営判断の︶原則の推定を覆す責任を負っ
ないとの判断は先例に反するとして破棄し、その他の点については差し戻したのが、本件である。
定には誤りがなかったとして認容したが、経営判断の原則の推定を覆すためには、原告が損害を立証しなければなら
れに対しデラウェア州最高裁判所は、損害賠償請求訴訟につき、取締役の自己利益の決定のための重要性基準の新策
の証拠を発見したが、シネラマ社は立証責任を果たさなかったと判示した。シネラマ社は両訴訟につき上訴した。こ
は二一・六〇ドルであるとし、一九九一年六月の第二回未報告判決︵損害賠償請求訴訟︶では、被告の信認義務違反
裁判所は、一九九〇年一〇月一九日付けの未報告の判決︵株式評価訴訟︶で、合併日のテクニカラー社の公正な価格
害賠償訴訟を追及できるとして、事件を差し戻した︵
因を選ばなければならないとした。シネラマ社は中間上訴した。最高裁判所は、株主は同時に株式買取請求訴訟と損
告が株式の買取請求をした後には損害賠償を請求できないと主張したが、裁判所は、シネラマ社はどちらかの訴訟原
き取締役の全員一致の承認がなかったことを理由に合併の無効を主張し、一三年間の法廷闘争となった
。被告は、原
94
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44
――法 律 論 叢――
︵
︶
なっている取引に関与していた被告取締役に転嫁され、被告取締役は、原告株主に対し当該取引の﹃完全な公正性﹄に
要旨は以下の通りである。
学説では、二〇〇六年に、
︵
︶
︶
が、
﹁会社法の誠実義務﹂という論文を発表し、三組説に賛成した
。その
Eisenberg
︵
関する事実を立証しなければならない。﹂と述べ、誠実義務に注意義務・忠実義務と同等の位置づけを与えた
。
95
96
︶
98
ることを特に重要にしている。
会社法の誠実義務は一般原則であり、基線概念︵
︶を要求する。主観的要素以上に重要なものは、
sincerity
︶
standards of decency
︶であることから構成される。誠実義務の基線概念は、それ自体責任ルールではない
fidelity
場合には、不当性が高いので、これらの制限ルールを不適用にすべきであるからである。その上、誠実義務は、特徴
する。さらに、注意義務と忠実義務においては様々のルールが経営者の責任を制限しているが、誠実義務違反行為の
による不適当な行為のあらゆる類型をカバーしているわけではないので、誠実義務は、これらの漏れた類型をカバー
規範的問題については、誠実義務が望ましい幾つかの基本的理由がある。第一に、注意義務と忠実義務は、経営者
る概念を例示する特別義務に関するプラットホームの用意という機能を果たしている。
が、①行為基準、②経営者が誠実の条件を満たしたか否か決定する際の外形の要素、および③違反すると責任が生じ
営者が職務に対し忠実︵
に反しないこと、②経営者が一般的に承認された基本的会社規範︵ basic corporate norms
︶に反しないこと、及び③経
客観的要素である。それは、①経営者が経営行為に適用できる一般的に承認された礼儀基準︵
実は、第一に、主観的正直︵ subjective honesty
︶又は誠意︵
︶とその概念を例示する特別義務から成る。誠
baseline conception
ず、最近のデラウェア判例における誠実義務の明白な承 認は、この義務の輪郭を示し、規範的見地より義務を検討す
︵
。誠実義務は判例法上も長い間暗黙に存在していた。それにもかかわら
誠実義務は、制定法上長い間明白であった
97
(イ)
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的に、注意義務および忠実義務と異なった機能を果たしている。即ち、誠実義務は、普通、責任を負わせないルール
適用の条件として機能する一方、注意義務・忠実義務は、責任の基礎として機能する。この相違が、誠実義務を別扱
いすることを望ましいものにする。最後に、誠実義務は、社会的の変化に応じて、新しい特別の信認義務を述べるた
めの主義ある基礎を裁判所に用意する。
︶。そうでないと複合社会は繁栄しないからである。
the legal-conduct principle
誠実義務を示する特別義務は、違反が会社の利益を最大限にする場合であっても、故意に会社に違法行為をさせな
い義務である︵
︶である。正直
誠実義務に基づく他の義務は、自己の利害と関係しなくとも正直である義務︵ obligation of candor
︶なる用語は、
﹁話又は表現において公然、率直及び真実である状態又は特質︵ state or quality of being frank,
candor
︶﹂を意味する最も広い意味で使用している。正直義務は二つの局面がある。
open, and sincere in speech or expression
obligation to
︶から取締役会と他の役員へのコミュニケーションの三つ
officers
]という。
︶に基づいて行為するときにも、誠実義務違反
が、利己的動機︵以下許されない動機[ impermissible motive
会社機関による行為を手に入れる場合には、誠実義務違反である。さらに、経営者が経営者の資格で、金銭に関しない
︶に違反するごまかしの方法を用いて
また、経営者が、一般的に承認された基本的会社規準︵ basic corporate norms
の場面で問題となる。
締役会に対する︶コミュニケーション及び③役員︵
︶である。正直義務は、①取締役と株主間のコミュニケーション、②取締役間の︵個々の取締役による取
duly inform
が知っている情報をこれらの経営者又は会社機関に意図的に又は無鉄砲に知らせることを怠らない義務︵
二は、決定又は義務の履行の際に他の経営者又は会社の機関︵株主の団体を含む︶にとって重要であることを経営者
︶である。第
第一は、経営者が意図的に又は無鉄砲に不実の又は誤解を招く話をしない義務︵ obligation not to mislead
︵
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
45
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である。許されない動機により行為しない義務は、忠実義務により説明できる点で上述した諸義務と異なるが、その
ような行為を誠実義務で禁止することが重要な幾つかの理由がある。第一に、忠実義務は伝統的に、取締役により動
︶私利にのみ適用されているので、実定法上、許されない動機による
機付けられた行為か間接的な財務上の︵ financial
行為が忠実義務に入ることが明確でないことである。第二に、忠実義務と誠実義務の禁止の性質に相違があるからで
ある。忠実義務は、利己主義的取引を禁止しないで、当該取引が公正であることを要求しているが、誠実義務は絶対
︶が、同僚
“disinterested” directors
的禁止である。許されない動機が中心的役割を演ずる重要なケースは、取締役が同僚の責任を効果的に防ぐ行為であ
る。このような行為は二つの場面で生じる。第一に、
﹁利害関係のない﹂取締役︵
の利己的取引を承認すると、当該取引の公正性を裁判所が審理することを排除すると解釈される制定法を幾つかの州
が定めていることである。第二に、多くの州が、代表訴訟が認められるか否かの裁判所の決定を排除する権限を有す
る、取締役会に利害関係のない取締役から構成される特別訴訟委員会を組織することを許していることである。しか
し、取締役が友人と同僚の責任を排除するかどうか決定する際に公平であることは思いもよらない。多くの州は、利
己的取引は利害関係のない取締役によって承認されても公正性に関する裁判上の審査を受ける必要があると定めるか、
経営判断の原則の下で普通適用されるより高度な検査を特別訴訟委員会の勧告に要求することにより対処しているが、
︶は、承認する取締役が同僚をかばう許されない動機をもって行為したかど
次善の選択枝︵ The next-best alternative
︶は、注意義務違反になるが、場合によっては、
substantial disregard of responsibilities
うか決定するために誠実義務を適用することである。
経営者の責任の実質的無視︵
︶
職務に対する忠実を欠き、一般的に承認された基本的会社規準に違反し、普通不正直となるので、誠実義務違反にな
。従って新しい責任を追加しないが、誠実義務に違反する取締役の責任は免除されない、即ち、デラウェア一般会
る
︵
99
46
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
47
︵ ︶
︵ ︶
101
するかもしれない。
じて適当と見なされるようになるが、注意義務又は忠実義務の範囲では提供できない新しい特別の信認義務を明確に
適合しないが、既に確立した色々の特別の義務を合理化し、説明する。将来を見ると、誠実義務は、社会の変化に応
未来の双方を見るヤーヌスのような性質を有している。過去を見ると、誠実義務は、注意義務と忠実義務に具合よく
誠実義務は、注意義務及び忠実義務に含まれない特別の義務を引き起こす独立の義務である。誠実義務は、過去と
社法一〇二条b項七号の定款規定によって保護されないという効果を引き起こ す。
100
︵ ︶
務の守備範囲は、利益相反の場合だけでなく、誠実義務が問題となる場合も含まれることを明らかにしている。従っ
生じさせるのは、注意義務と忠実義務のみであって、誠実義務は忠実義務の補助的要素であること、および、忠実義
これに対し、二〇〇六年デラウェア州最高裁判所は、 Stone v. Ritter
事件において
、違反によって直接の責任を
(ウ)
102
項および一六〇条 項によると、取締役は単にまたは主として自己の職を
。
て、監督義務違反により、忠実義務違反を訴える場合、誠実義務違反があることをまず立証しなければならない
デラウェア州一般会社法一四一条
_
`
き、合理的な根拠﹂があり、かつ取られた﹁買収防衛策が経営判断の原則の範囲内にあるためには、提起された脅威に
なるから、
﹁対象会社の取締役は、他人の株式所有により会社の戦略および効率に対する危険が存在すると信じるにつ
めに司法上の審査を必要とする厳格化された義務がある。取締役は必然的に利益相反に直面し、客観的決定が困難に
よび株主の利益よりまず第一に自己の利益のために行動する可能性があるので、経営判断原則が適用される前に、始
ために、取締役会が敵対的公開買付者の保有する株式を交換買付けの対象から除外するときには、取締役会は会社お
役の行動には経営判断の原則が適用されるが、第三者による強圧的二段階公開買付けの提案があり、これに対抗する
守る目的で行動しない限り、会社は自己株式取得にあたり株主を差別して扱うことが許されており、この場合の取締
(五)
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︵ ︶
enhanced
比例して合理的なものである﹂ことの二点が証明されなければならないとされている。この基準は、注意義務と忠実
︵ ︶
義務の中間的基準として、修正経営判断原則︵ modified businessjudgement ︶、厳格化された審査基準︵
rule
103
︵ ︶
︶と呼ばれている。この基準は、 Unocal Corp. v. Mesa Petroleum Co.
事件で展開されたことからユノカル基
scrutiny
104
︵ ︶
︵ ︶
会社のとりでの防御者から会社の売却の際に株主のため最善の価格を得ることを委託された競売人に変わる﹂と判示
準と呼ばれている
。また、デラウェア州最高裁判所は、会社の解体・売却が不可避になった場合、
﹁取締役の役割は、
105
107
︵
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶二七八頁以下によると、信認義務に関する論争は、ある程度、会社法に関する理論と会
︶ RMBCA八・〇一条b項、DGCL一四一条a項。
注
。この基準はレブロン基準と呼ばれ、ユノカル基準の適用場面を限定したものと考えられてい る。︵未完︶
している
106
︵
︵
︵
︶ ミルハウプト編・前掲書︵注五︶七一頁。忠実義務の言い回しもデラウェア会社法では定義されていない。判例は、注意義務と
採用している、と理解されている。ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶二九五頁注二五参照。
ウェア州法は、会社が定款で注意義務事件における金銭的損害賠償を除外することを認めることにより、法と経済学の見解を
を投資家保護のために必要な基本的な法的ルールとみなす者は、信認義務ルールの一部は簡単に変更できないと論じる。デラ
義務を課していると考える。従って、契約により信認義務を排除することができるという結論になる。これに対し、信認義務
社法へのアプローチの違いを反映している。法と経済学︵ law and economics
︶の視点から会社法に取り組む者は、株主と経
営者の関係は契約事項であり、信認義務ルールも契約条件の一つであるが、契約交渉には費用と時間がかかるので、法が信認
72 71
Organizations, 3rd. Ed., 2009, Aspen Publishers, §4.16 note 695.
︶ 一九九八年改正前模範事業会社法︵改正前八・三〇条a項︶では、﹁同様の地位にある通常の慎重人︵ ordinarily prudent
忠実義務の区別をぼかしていると指摘されている。 Balotti & Finkelstein, The Delaware Law of Corporationand Business
73
︶であれば同様の状況下で払うであろう注意をもって﹂と規定されていた。しかし、リスクを伴う決定を行うのが取締役
person
︶でそのまま判断されると、取締役はリスクを伴う意思
の役割の中心であるから、不法行為の借用概念である過失︵ negligence
決定ができなくなるおそれがあるので、通常の慎重人の表現は長い間問題視されていた。注意義務は不法行為の過失と異なる
74
48
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
49
が、表現上それと混同されやすいことから、規定は削除され、本文のような表現に変更された。 Model Business Corporation
ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶二七九頁、
Act Annotated, Fourth Edition, Vol.2, Section 8.30 Official Comment.
ミルハウプト編・前掲書︵注五︶七二頁。
︵同事件を紹介する文献として伊勢田道仁﹁代表訴訟提起の事前請求が免
Aronson v. Lewis, 473A.2d805, 812(Del.1984)
除される場合と経営判断原則﹂商事法務一二一一号︹一九九〇年︺二七頁以下、大川俊﹁デラウェア州会社法における取締役の
︶
︶があるときには、経営判断原則の適用がないと判示している。同旨
gross negligence
Smith v. Van Gorkom,
誠実性概念の展開﹂沖縄大学法経学部紀要第一五号三頁︹二〇一一年︺、ミルハウプト・前掲書︵注5︶一二三頁以下︶。取締
役に重過失︵
テストを適用した事例として
Aronson
In re The Goldman Sachs Group, Inc. Shareholder
︵同事件を紹介する文献として神崎克郎﹁会社の売却と取締役の注意義務﹂商事法務一一六四号三六頁
488A.2d 858(Del.1985)
以下︹一九八八年︺
、ピント/ブランソン・前掲書︵注5︶二八八頁以下、ミルハウプト編・前掲書︵五︶七五頁、ハミルトン・前
掲書︵五︶三〇三頁以下︶参照。
によると、
﹁経営判断原則
Official Comment
の要素とその適用のための詳細を裁判所が展開し続けるので、この概念を制定法で凍結することは望ましくない﹂ので、
﹁本条
がある。
Litigation, 2011 Del. Ch. LEXIS151
︶ 改正模範事業会社法八・三一条は、取締役の責任の基準を定めているが、その
は、八・三〇条で定められた行為の一般基準が、経営判断原則を成文化する予定でないことを明瞭化する重要な目的にも貢献
する﹂とし、適用範囲を定義する試みをしていない。 Model Business Corporation Act Annotated, op.cit., §8.31Official
Comment.
ア メ リ カ 法 律 協 会︵ A L I ︶﹁ コ ー ポ レ ー ト・ガ バ ナ ン ス の 原 理 分 析 と 勧 告︵ PRINCIPLES OF CORPORATE
︶
﹂
︵一九九四年︶第四・〇一条 によると、①経営判断の対
GOVERNANCE: ANALYSIS AND RECOMMENDATIONS
象に利害関係を有せず、②経営判断の対象に関し、当該取締役又は役員が当該状況の下で適当であると合理的に信ずる程度に
・
・
︹日本証券経済研究所 一九九五年︺二三頁、一五八頁以下参照。﹁誠実に﹂経営
ト・ガバナンスの原理 分析と勧告﹂の研究﹄
理であっても、責任は生じない︵証券取引法研究会国際部会訳編﹃コーポレート・ガバナンスーアメリカ法律協会﹁コーポレー
知識を有し、かつ、③当該経営判断が会社の最善の利益に合致すると信じたときは、注意義務を履行したとされ、決定が不合
a
注意義務違反を主張する株主が、経営判断原則適用の前提事項が満たされない具体的事実を主張・立証した場合、適法性の
判断をすることは明白な必要条件である︶。
・
・
︵
︵
75
76
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︵
推定が覆され、取締役の側が完全な公正性を立証しなければならないという意味で、経営判断原則は手続指針である。と同時
に、推定が覆されなければ、取締役と取締役が行った決定は保護されるという意味で実体的法ルールである。
︶ 例えば、DGCL一〇二条b項七号本文、改正模範事業会社法二・〇二条b項四号本文参照。なおハミルトン・前掲書︵注
︶ 例えばDGCL一〇二条b項七号但書
、改正模範事業会社法二・〇二条b項四号但書︵A︶参照。
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三〇五・三〇六頁は、当初無効説をとる判例が多かったが、企業実務の変化を認めて、
︶
Knepper, Liability of Corporate Officers and Directors, 2nd.ed., 1973, §2.02, Gevurtz, Corporation Law, 2000,
ハミルトン・前掲書︵注五︶三一一頁は、裁判所は、最初から取消可能説を採用していたとする。 Knepper
は次のよう
p.322.
に説いている。
取消可能基準に移行したと説明している。
︵
︵
︵
︵
教授は、ビジネス・ロイヤーの有益な論文で、一八八〇年に﹃取締役と会社との契約は、取引の公正又
﹁ Harold Marsh, Jr.
は不公正を顧慮しないで、会社又は株主の要求で取消すことができた﹄と述べている。彼は、一九一〇年には、
﹃取締役と会社
との契約は、問題にされた場合に、同僚取締役の利害関係のない過半数により承認され且つ裁判所により不公正又は詐欺的で
あると認定されないときには有効であった。しかし、取締役会の過半数が利害関係のある契約は、公正の問題を顧慮すること
教授は、
﹃取締役のだれか又は全
なく、会社又は株主の要求で取消すことができた。
﹄と述べている。一九六〇年には、 Marsh
員との会社の取引は、取締役会の利害関係のない過半数が存在しようと存在しまいと、株主の訴訟で自動的には取消すことが
︶と呼ばれ、しばしば会社の定款又は会社の規
modern rule
できない。しかし、
・・・裁判所は当該契約を審査し、厳格な注意深い調査に委ね、会社に不公正であることが認定された場合
には契約を無効にする﹄
。この後者の声明は、普通、現代の規則︵
︶で綴られている。
﹂と述べている。
則︵ code of regulations
︶ ミルハウプト編・前掲書︵注五︶八四頁、 Model Business Corporation Act Annotated, 4th Ed., Vol.2, Subchapter
F. Intoductory Comment8–483.
︶ ハミルトン・前掲書︵注五︶三一二頁。なお、ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三〇六・三〇七頁、アメリカ法律協会
︶ §5.02
参照。
﹁コーポレート・ガバナンスの原理 分析と勧告﹂︵ A.L.I. Corp. Gov. Proj.
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三〇八頁。規定は一九四七年会社法︵ Corporations Code
︶八二〇条として制定され、
・
・
︵
︵
五︶三〇六頁参照。
77
79 78
80
81
82
83
50
――法 律 論 叢――
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――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
51
一九七六年に改正を受けた。現在はカリフォニア一般会社法三一〇条になっている。本条の翻訳として北沢正啓・戸川成弘訳
︶ ニュージャージー事業会社法︵BCA︶一四4A条 六︱八︵取締役の利益相反︶参照。
﹁利益相反取引は、制定法が定める
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三〇九頁。
﹃カリフォリニア会社法﹄五一頁以下︵商事法務研究会 一九九〇年︶がある。立法理由については Cal Corp Code §310,
を
Legislative Committee Comments, in Deering’s California Codes Annotated by Matthew Bender & Company, Inc.
参照のこと。
︵
︵
LexisNexis, 1–10NJ Corporation and Other
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三一二頁参照。
洋一訳﹃ニューヨーク事業会社法﹄一一二頁以下︵商事法務研究会 一九九〇年︶がある。
︵
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三一四頁。なおDGCL一四四条︵利害関係ある取締役
︵
︵
取締役︵株主︶のデッドロックにより、取締 役会・委員会が開示できない状態の下で、一方
535A.2d 400, 405(Del.1987).
が会社に対して行った貸付を、他方が、公正性の証明がないと主張して、争った事件である。最高裁は傍論として﹁会社法一
︶
北沢正啓・浜田道代﹃デラウェア一般会社法﹄二六頁以下︵商事法務研究会 一九七一年︶がある。
定
; 足数︶の規定の翻訳として
ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三三四頁注二九参照。
Business Entities §10.05 Director Conflicts of Interest.
︶ ピット/ブランソン・前掲書︵注五︶三一二頁・三三五頁注四三参照。ニューヨーク事業会社法七一三条の翻訳として長浜
取引を審査し、無効にする権限を付与されたままである。﹂と説かれている。
方法で承認されるかまたは追認されるという事実は、当該取引を攻撃できなくしない。裁判所は、衡平法上の原則に基づいて
・・
︵
︵
85 84
86
88 87
︶
2000Del. Ch. LEXIS89.
︵事実︶会社︵TNN社︶の困窮のため、取締役会の承認の下に、二人の取締役︵
ない株主による承認は、経営判断の原則の保護︵
︶を可能にし、司法上の審査を、取引を攻撃する当事者に立証責任
invocation
を負わす贈与又は浪費の問題に制限する。﹂と判示した。
四四条a項一号の下で完全に情報を与えられた利害関係を有しない取締役による又は一四四条a項二号の下で利害関係を有し
89
と
けを拒否したが、 Oolie
社︵会長は Marcovsky
︶である。 Gold
社は公開買付
したので、残りの四社と交渉の再開を試みた。これに応じたのは Gold
の所有する株式を購入した。 Salkind
の招待で、 Marcovsky
はTNN社の取締役会に出席
Salkind
と Salkind
︶が会社に運転資金を二度
Oolie
貸付をした。その後TNN社の株式購入者を捜し、五つの申込みを受けた。最善の申込者︵USA︶が途中で取得提案を撤回
90
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社を代表に選定し、 Oolie
は会長を辞任した。 Brenner
︵株主︶は、 Oolie
と
Gold
の株式の
Salkind
Gold
し、TNN社に必要なら将来追加の融資をすると述べると同時に、取締役数を現在の四人から七人にするよう提案した。提案は
三対一で成立し、
社への売却を調査するよう要求し、TNN社の弁護士は、違法行為が見つからなかったと報告をした。株主︵ Cooke
︶が訴訟
がUSAの申込みを支
Salkind
と新株主は、 Oolie
と
を起こしたが、原審は一つの請求を除き全部の請求を棄却した。 Cooke
持し、忠実義務に違反したという主張を追加した補足の訴えを提起したのが本件である。
︵判旨︶
﹁事実は原告の請求を支持するように推測されるが、二人の利害関係のない取締役がUSAの申込みの追及に賛成して
おり、このことは申し立てられた不忠実の汚名を除去する。デラウェア一般会社法一四四条は明確には適用されないが、規定
のセーフハーバーの背後にある合理的政策は承認される。本裁判所は、利害関係ある取締役が完全に利害関係を開示し、利害
関係のない取締役の過半数が利害関係ある取引を追認する場合には、多数株主でない利害関係ある取締役の行為に経営判断の
又は
はその時にTNN社の議決権の支配を維持していなかったし、利害関係のな
原則を適用するであろう。﹂﹁
Oolie
Salkind
と Salkind
が、私が一
い取締役を支配してなかったので、経営判断の原則は、貸付取引の適当な審査基準を構成する︵ Oolie
九九七年の意見で不注意に推定したように、議決権支配を有した多数株主であるとしたなら、セーフハーバー規定の要件の充
足は、単に完全な公正の立証負担を原告に移したであろう︶。﹂
︶ ミルハウプト編・前掲書︵注五︶八四頁によると、最新の改正模範事業会社法の規定を採用している州はない、とのことで
ある。
︵
︶
参
Model Business Corporation Act Annotated, Fourth Edition, Vol.2, Subchapter F Introductory Comment 8–485
︶﹂はチャプターG、八・七〇条で規定されている。
照。﹁事業の機会︵ business opportunities
︶ 大川俊﹁デアウエア州会社法における取締役の誠実性概念の展開﹂沖縄大学法政学部紀要第一五号六頁以下︵二〇一一年︶に
ないとされた事例﹂アメリカ法一九九九︱Ⅰ一四六頁以下参照。
の経営計画により、第一段買収と第二段合併との間の期間内に増加した企業価値をも考慮して、株式評価を行わなければなら
の紹介については、田村詩子﹁二段階合併における株式の評価﹂商事法務一五一五号二九頁以下︵一
Supr., 684A.2d289’1996
九九九年︶
、明田川昌幸﹁二段階買収における第二段の締め出し合併において、少数株主が株式買取請求を行った場合、買収者
Cede & Co. v. Technicolor, Inc., Del.
︶
634 A.2d 345(Del.1993)
︶ この間デラウエア州最高裁判所は四つの判例を判示している。第四判例である
︵
︵
︵
︵
91
92
94 93
95
52
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page53 2012/01/13 13:09
本件の紹介がなされている。その後、 Cede & Co. v. Technicolor, Inc., 636 A.2d 956(Del.1994)
はこれを肯定する。
教授によると、誠
︵ ︶
Eisenberg, The Duty of Good Faith in Corporate Law, 31Del. J. Corp. L., 3–75(2006). Eisenberg
である。その
実義務を最初に完全に展開したのは Hillary Sale in Delaware’s Good Faith, 89 Cornell. L. Rev.456(2004)
、 supra, at 3 footnote1
に詳しい。
Eisenberg
︵
︵
︵
︶
は、模範事業会社法八 三
Eisenberg
. 〇条とデラウェア一般会社法一四五条a項・b項を挙げている。
︶ 最近の明白な判例として Cede & Co. v. Technicolor, Inc., 634 A.2d 345, 361(Del.1993)(Cede II), Cinerama, Inc.v.
後の文献についても
96
︶
である
Vice Chancellor
は、四判例で、注意義務と忠実義務の二組説に賛成している。 Strine
の論
Leo Strine
In re the Walt Disney Co. Derivative
では、会社の信認に要求される誠実は、注意義務と忠実義務だけで
Action, 2005Del. Ch. LExis28(Del. Ch. Feb.4, 2005)
の二組説は一般的にはアメリカの制定法、特にデラウェア制定法と一致しないと批判している。
はないとしているから、 Strine
は、そのように判示した最近の判例として、 In re Caremark International Inc. Derivative Litigation, 698
Eisenberg
は成立しえないからである。その後の判例も三組説を採用しており、 Disney
Ⅳ事件︵
事件において、デラウェア最高裁判所は due diligence
と誠実という用語を注
相違があると批判する。②については、 Barkan
︶として使用したことは明白であると Strine
は主張するが、 Barkan
事件は
意義務と忠実義務を指す新しい方法︵ a fresh way
は三組説を採用しており、二組
経営判断原則が適用される四つの要件を述べているに過ぎないと批判する。なぜなら、 Cede II
の誠実の定義と②二つの判例︵ Barkan v. Amsted Industrie, Inc.,
拠は、① Webster’s Ninth New Collegiate Dictionary
と
︶の文章である。
は、①につき、法律上の意味を決めるのは、言語慣用ではな
Cede
II
Eisenberg
568A.2d1279(Del.1989)
は1冊の辞書しか見ていないこと、 Strine
は faith
しか引用していないが、 faith
と good faith
とでは著しい
いこと、 Strine
平法裁判所の
挙げている。あるコンメンタールによると、二〇〇二年中頃まで一二判例以上が三組説を採用していた。しかしデラウエア衡
を取締役に用意するよう努めている﹂と述べている。
︶
︵
﹁デラウェ
,
Emerald
Partners
v.
Berlin,
787
A.2d85,
90(Del.2001)
ア州会社の取締役は三組の本源的信認義務、即ち、十分な注意義務、忠義義務及び誠実義務を負っている﹂と述べている。
︶を
︵
﹁本裁判所は、デラウェア会社とそ
立証責任を負っている﹂と述べている。
︶ , Malone v. Brincat, 722A.2d5, 10(Del.1998)
︶
、誠実及び忠実に航行するよう、明白な信号塔と明るく並べられた水路標識
の株主のために、取締役は十分な注意︵ due care
︶
︵
﹁経営判断原則の推定を覆すには、原告株主は、問題となっている決
Technicolor, Inc., 663A.2d1156(Del.1995)(Cede III
定に至る際に、取締役会が信認義務のうちの誠実義務、忠実義務又は注意義務という三つの組のいずれか一つに違反したという
98 97
99
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
53
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page54 2012/01/13 13:09
︵本件については伊勢田道仁﹁従業員の違法行為と取締役の監視義務﹂商事法務一五二六号四四頁以
A.2d 959(Del. Ch.1996)
下︹一九九九年︺の解説がある。なおアイゼンバーグ﹁アメリカ会社法における注意義務︹Ⅱ︺
﹂商事法務一七一三号一二頁以下
Shareholders Litigation, No.16, 415, 2004Del. Ch. LEXIS70(Del. Ch. May3, 2004)(revised June4, 2004), Disney ,
、 325 F.2d 795, In re Emerging Communications, Inc.
In re Abbott Laboratories Derivative Shareholders Litigation
︵本件を紹介
︹二〇〇四年︺参照︶
、 McCall v. Scott, 239F.3d808(6th Cir.2001), ammended by 250 F.3d997(6th Cir.2001)
するものとしてアイゼンバーグ﹁アメリカ会社法における注意義務︹Ⅲ︺
﹂商事法務一七一四号一一頁以下︹二〇〇四年︺参照︶
、
︶
同・前掲論文・商事法務一七一四号一五頁。
Eisenberg, supra, note 96 at 73,
Ⅳ
︵
︶
ている。
︵本件については川口恭弘﹁経営判断の原則と取締役の誠実義務﹂商事法務一七三〇号三一頁以
825A.2d 275(Del. Ch.2003)
を挙げ
下︹二〇〇五年︺の解説がある。アイゼンバーグ・前掲論文一二頁以下参照︶ , Disney , 907A.2d693(Del. Ch.2005)
Ⅲ
︵
︵
︵
︵
︵
︶
︶
ユノカル社の株主である
社が一株五四ドルで二段階公 開買付けをしようとしたのに対し、
493
A.2d.946(Del.1985).
Mesa
社を除いて、自己株式の交換買付け︵ exchange offer for its own stock
︶を し よ う と し た 。
会社側が対抗措置として、 Mesa
社は衡平法裁判所に予備的差止命令を求めた。原審で敗訴したユノカル社は最高裁に中間上訴︵ interlocutory
そこで Mesa
︶ ミルハウプト編・前掲書︵注五︶一九一頁。
︶ ピント/ブランソン・前掲書︵注五︶二七五頁。
︶ ミルハウプト編・前掲書︵注五︶一〇一頁。
一三頁以下︵二〇〇八年︶で紹介されている。
911A.2d362(Del.2006).本件は、ミルハウプト編・前掲書︵注5︶一〇〇頁以下、近藤光男﹁従業員に対する監視と誠実義
務﹂商事法務一八〇六号三五頁以下︵二〇〇七年︶
、大川俊﹁取締役の誠実性と内部統制システム﹂法律論叢八〇巻四・五号二
︵
101 100
本件については吉井敦子﹁敵対的公
Revlon, Inc. v. MacAndrews & Forbes Holding, Inc., 506A. 2d173 (Del. 1986).
前掲書︵注五︶四六九頁以下、ミルハウプト編・前掲書︵注五︶一九二頁以下等で紹介されている。
近藤光男﹁差別的自己株式の買付とその防衛策﹂岸田=近藤=黒沼編・前掲書︵注七〇︶一五五頁以下、ピント/ブランソン・
︶を提起した。最高裁は原判決を破棄し、差止命令を取り消した。本件については、德本穣﹃敵対的企業買収の法理論﹄
appeal
五六頁以下︵九州大学出版会二〇〇〇年︶
、矢﨑淳司﹃敵対的買収防衛策をめぐる法規制﹄二八頁以下︵多賀出版二〇〇七年︶
、
105 104 103 102
106
54
――法 律 論 叢――
明治大学 法律論叢 84 巻 4・5 号: 責了 tex/izumida-8445.tex page55 2012/01/13 13:09
――アメリカにおけるMBOと法律問題(一)――
55
︵
開買付での取締役の責務の変化﹂岸田=近藤=黒沼編・前掲書︵注七〇︶一〇八頁以下に紹介がある。この基準はMBOの場
合にも発動する。ピント/ブランソン・前掲書︵注五︶五〇一頁注七七。
︶ ミルハウプト・前掲書︵注五︶二〇五頁。レブロン状態では裁判所は、ユーカルの場合と同じ厳格化された審査基準を適用す
〇四年︶参照。
なお劉小勇﹁アメリカ判例法における Revlon
る。 Balotti & Finkelstein, supna note 73 at 4–195 (2009 SUPPLEMENT).
基準の変遷︱取締役が株主のために株式売却の最高価格を得る責任︱﹂六甲台論集法学政治学篇五〇巻三号六九頁以下︵二〇
107
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