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工学部 - 岡山大学
岡山大学工学部 9.工学部 Ⅰ 工学部の研究目的と特徴・・・・・・・・9-2 Ⅱ 分析項目ごとの水準の判断 Ⅲ ・・・・・・9-4 分析項目Ⅰ 研究活動の状況 ・・・・・9-4 分析項目Ⅱ 研究成果の状況 ・・・・・9-7 質の向上度の判断 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 - 10 -9-1- 岡山大学工学部 Ⅰ 工学部の研究目的と特徴 1 研究目的 本学部の研究目的は次のとおりである。 (1) 広 い 意 味 の 自 然 の 深 い 理 解 を 求 め て 先 端 科 学 を 追 及 し , 国 際 水 準 の 研 究 成 果 を 生 み 出 す ( 岡 山 大 学 中 期 目 標 Ⅱ - 2-(1)-1)) と と も に , 工 学 と し て の 応 用 の 基 盤 と す る 。 (2) 工 学 系 諸 分 野 間 及 び 工 学 系 外 の 分 野 と の 交 流 ・ 連 携 に よ り 各 分 野 の 研 究 を 深 め る と と も に , 新 し い 独 創 的 な 研 究 を 推 進 す る ( 岡 山 大 学 中 期 目 標 Ⅱ -2-(1)-2))。 特 に , 異 分 野との連携による新分野・新技術を開拓する。 (3) 先 端 科 学 の 成 果 を 直 接 ・ 間 接 に 人 間 社 会 に 貢 献 す る 先 端 技 術 ・ 基 盤 技 術 に 結 び つ け , 社 会 の 要 請 に 応 え る ( 岡 山 大 学 中 期 目 標 Ⅱ -2-(1)-3))。 こ の た め の 方 策 と し て 産 学 連 携を推進する。 (4) 本 学 部 は 機 械 工 学 科 ・ 物 質 応 用 化 学 科 ・ 電 気 電 子 工 学 科 ・ 情 報 工 学 科 ・ 生 物 機 能 工 学 科・システム工学科・通信ネットワーク工学科の7学科から構成されており,各学科 が目的とするのは主に次の研究である。 ① 機械工学科: 機械及び機械材料 ② 物質応用化学科: 応用化学 ③ 電気電子工学科: 電気電子システム及び電子材料 ④ 情報工学科: 情報工学・計算機工学 ⑤ 生物機能工学科: 生物工学及び生体材料 ⑥ システム工学科: 機械システム及び安全・生産管理システム ⑦ 通信ネットワーク工学科: 通信及び分散システム・ネットワーク (5) 教 員 が 自 ら の 研 究 経 験 ・ 成 果 に 基 づ い て 専 門 教 育 を 適 切 に 行 う と と も に , 研 究 グ ル ー プの一員として学生を参加させることにより,研究を具体的に体験させる。 2 特徴 本学部の研究の特徴には,工学部としての特徴と,本学部固有の特徴がある。 工学部としての特徴は次のとおりである。 (1) 工 学 的 応 用 の 基 盤 は 自 然 科 学 の 探 究 で あ る が , 単 な る 科 学 の 探 究 に と ど ま ら ず , 探 究 の成果を人間社会への貢献を可能にする技術に結びつけることを目指すところに本学 部における研究の最大の特徴がある。科学と技術の関係は分野により,また,時とと もに変化するが,常に社会への寄与を視野に入れた研究を行う。 (2) 本 学 部 に お け る 探 究 の 対 象 は 狭 義 の 自 然 現 象 だ け で な く , 有 形 ・ 無 形 の 人 工 物 及 び 社 会における現象を含む広義の自然である。特に,社会の要請に応える技術の創成には 人間の活動に対する理解が欠かせない。また,研究の成果として創造されるのは有形 のモノの場合もあれば,プログラム等の無形の著作物・システム,あるいは,広い意 味の思想にあたるものの場合もある。 (3) 研 究 の 成 果 を 技 術 と し て の 社 会 に 還 元 す る た め に , 文 部 科 学 省 ・ 経 済 産 業 省 と そ れ ら の関連機関等及び地方自治体などのプロジェクトへの積極的な参加や,企業等との共 同研究,企業等からの受託研究などの産学連携を積極的に行っている。また,研究成 果を社会に還元する一つの手段として,教員がベンチャー企業を設立している。 (4) 外 部 か ら の 研 究 資 金 の 獲 得 を 積 極 的 に 行 っ て お り , 文 部 科 学 省 ・ 日 本 学 術 振 興 会 の 科 学 研 究 費 補 助 金 , 経 済 産 業 省 ・ 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 (NEDO)の 研 究 助 成,企業等との共同研究費,企業等からの受託研究費・奨学寄附金等の多額の外部資 金を文部科学省運営費交付金とともに研究の基盤としている。 (5) 社 会 貢 献 を 目 指 す 立 場 か ら ,研 究 に 携 わ る 教 員 は 研 究 の 倫 理 ,研 究 成 果 の 社 会 的 影 響 ・ 環境負荷を十分配慮して研究を実施している。 本学部に固有の特徴は次のとおりである。 -9-2- 岡山大学工学部 ( 1 ) 本 学 部 に は 生 物 機 能 工 学 科 が 属 し て お り ,工 学 系 学 部 の 多 く で 行 わ れ て い る ,機 械・シ ス テ ム 系 ,電 気 ・ 情 報 ・ 通 信 系 ,応 用 化 学 系 の 研 究 に 加 え て ,本 学 部 で は 生 物 工 学 ・ 生 体材料の研究を行っている。 (2)本 学 部 で 研 究 を 行 う 教 員 は す べ て 自 然 科 学 研 究 科 に 所 属 し て お り ,本 学 部 教 員 の 研 究 業 務は自然科学研究科におけるものと工学部におけるものとに分離できない。 3 想定する関係者とその期待 (1) 国 立 大 学 法 人 の 工 学 部 と し て , 本 学 部 は , 広 く 我 が 国 の 科 学 技 術 及 び 産 業 の 振 興 に 寄 与することが期待されている。具体的には,国・地方自治体及び産業界と連携して, 先端技術の創成と技術の進化につながる研究成果をあげることが期待されている。 (2) 本 学 部 の 創 設 は , 岡 山 を 中 心 と す る 地 域 に お け る 科 学 技 術 振 興 , 工 学 の 研 究 ・ 教 育 の 充実による,岡山県水島工業地帯に対する支援を目的とした。研究面では,産学連携 を通じた直接・間接の同地域への技術開発支援,関連する研究開発を担う人材の輩出 が期待されている。 (3) 工 学 系 の 各 分 野 の 研 究 集 団 と し て , そ れ ぞ れ の 関 係 学 界 か ら , 対 応 す る 学 術 分 野 の 進 歩及び関係学協会の発展への寄与が期待されている。 -9-3- 岡山大学工学部 Ⅱ 分析項目Ⅰ 分析項目ごとの水準の判断 分析項目Ⅰ 研究活動の状況 (1 )観 点 ご と の 分 析 観点 研究活動の実施状況 (観 点 に 係 る 状 況 ) 1 研究組織 本学部では,機械工学科・物質応用化学科・電気電子工学科・情報工学科・生物機能 工学科・システム工学科・通信ネットワーク工学科の7学科に対応する学科目を大学院 自 然 科 学 研 究 科 の 工 学 系 分 野 の 教 員 が 担 当 ( 兼 務 ) し て い る 。 平 成 19 年 度 に お い て , 7 学 科 を 担 当 す る 教 員 は 計 151 人 で あ る 。 こ の 他 に 工 学 部 創 造 工 学 セ ン タ ー に 所 属 す る 技 術 職 員 25 人 が 研 究 を 支 援 し て い る 。 2 研究分野及び研究テーマ 工学部の各教員は,担当学科の専門分野を中心に,関連分野についても幅広く研究を 行っている。7学科における研究の専門分野は互いに関連の深い分野ごとに,機械・シス テム工学,電気電子・情報・通信工学,応用化学・生物工学の3群に分類される。7学科 の 研 究 分 野 は 別 添 資 料 1 ( 学 科 別 研 究 課 題 (内 容 )一 覧 , P1) の と お り で あ る が , 3 群 の そ れ ぞ れ に 対 応 す る 平 成 19 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 分 科 名 及 び 研 究 テ ー マ の 例 を 以 下 に 示 す 。 (1) 機 械 工 学 科 ・ シ ス テ ム 工 学 科 研究分野: 機械工学,材料工学,社会・安全システム科学 研究テーマの例: [機 械 工 学 科 ] 希 薄 燃 焼 , 燃 焼 室 内 の 濃 度 ・ 温 度 の そ の 場 計 測 , 材 料 の 組 織 制 御 と 物 性 , 大面積電子ビーム加工,超精密加工, [シ ス テ ム 工 学 科 ] 適 応 ・ 学 習 制 御 系 の 設 計 ・ 評 価 , 福 祉 ・ レ ス キ ュ ー ロ ボ ッ ト の 開 発 , プラントの安全管理システム開発,生産管理システム,ユニバーサルデザインのための システム開発,マン・マシーンインターフェース (2) 電 気 電 子 工 学 科 ・ 情 報 工 学 科 ・ 通 信 ネ ッ ト ワ ー ク 工 学 科 研究分野: 電気電子工学,情報学,応用物理学・工学基礎,ナノ・マイクロ科学,プラ ズマ科学 研究テーマの例: [電 気 電 子 工 学 科 ] 電 気 ・ 電 子 機 器 の 高 効 率 化 ,超 電 導 応 用 ,計 測 ・ 制 御 シ ス テ ム の 開 発 とカオスの応用,電子材料の物質科学 [情 報 工 学 科 ] 計 算 機 ハ ー ド ウ ェ ア ・ ソ フ ト ウ ェ ア ,コ ン ピ ュ ー タ ビ ジ ョ ン ,知 能 ソ フ ト ウェアと言語論 [通 信 ネ ッ ト ワ ー ク 工 学 科 ] デ ィ ジ タ ル 通 信 ,電 子 ・ 光 子 素 子 ,暗 号 ・ 認 証 ,移 動 通 信 シ ステム (3) 物 質 応 用 化 学 科 ・ 生 物 機 能 工 学 科 研究分野: 基礎化学,複合化学,材料化学,プロセス工学,人間医工学,生物分子科学 研究テーマの例: [物 質 応 用 化 学 科 ] 物 質 製 造 プ ロ セ ス の 構 築 , 新 材 料 ・ 新 物 質 の 開 発 , 人 工 触 媒 の 開 発 , 処理・リサイクル技術の開発 [生 物 機 能 工 学 科 ] タ ン パ ク 質 の 機 能 開 発 ,細 胞 機 能 の 開 発 ,酵 素 機 能 の 開 発 ,生 体 材 料 の開発 -9-4- 岡山大学工学部 3 分析項目Ⅰ 研究の発表状況 原著論文の発表,解説・総説論文の発表,著書の公刊状況は資料Ⅱ-1-1に示すと お り で あ り , 非 常 に 活 発 で あ る 。 例 え ば , 平 成 19 年 度 に お け る 教 員 数 は 151 人 で あ る が , 同 年 の 原 著 論 文 数 及 び 解 説 ・ 総 説 論 文 は 計 405 編 で 教 員 1 人 あ た り 2.7 編 に , 学 会 講 演 数 は 1,035 で 教 員 1 人 あ た り 6.9 講 演 に 上 り , 著 書 は 計 31 冊 で 教 員 4.9 人 あ た り 1冊を著している。 計 著書 講演 原著論文 総説・解説 資料Ⅱ-1-1:論文等の状況 平 成 16 年 430 94 992 25 1,571 平 成 17 年 457 79 1,109 41 1,738 平 成 18 年 478 72 1,025 24 1,666 平 成 19 年 405 59 1,035 31 1,580 (出典:工学部研究年報) 4 特許出願の状況 特 許 出 願 件 数 が 平 成 16 年 度 以 降 2 年 間 で 倍 増 し て お り , 平 成 18 年 度 に は 教 員 2.3 人 あ た り 1 件 に 達 し , 平 成 19 年 度 は や や 減 じ た も の の , 平 成 16 年 度 の 1.7 倍 を 維 持 し て い る こ と が 示 さ れ て い る ( 資 料 Ⅱ - 1 - 2 )。 こ の こ と は 科 学 技 術 の 重 要 な 応 用 を 開 発 した研究が多数含まれていることを反映しており,工学部の研究目的の特徴である科学 技術による人間社会への貢献の主旨に沿った研究がなされている。 資料Ⅱ-1-2:特許出願件数 平 成 16 年 度 平 成 17 年 度 平 成 18 年 度 平 成 19 年 度 30 52 67 50 (出典:工学部研究年報) 5 外部資金の獲得状況 活発に実施している研究内容が社会の要請に応えたものであることは,科学研究費補 助 金 獲 得 状 況 , 外 部 資 金 獲 得 状 況 に よ り 裏 付 け ら れ る 。( 別 添 資 料 2 : 外 部 資 金 等 受 入 状 況 , P4) 中 期 計 画 期 間 に 採 択 さ れ た 科 学 研 究 費 補 助 金 に は , 基 盤 研 究 ( S) に ① 「 蛋 白 質 生 合 成 系 の 有 機 化 学 的 拡 張 と 合 成 生 命 体 の 創 成 」( 平 成 15 年 度 ~ , 生 物 機 能工学科 宍戸昌彦教授) ② 「 災 害 時 コ ン ビ ナ ー ト 機 能 維 持 の た め の 高 度 安 全 制 御 統 合 化 環 境 の 構 築 」( 平 成 16 年 度 ~ , シ ス テ ム 工 学 科 井 上 昭 教 授 ), が あ り , 特 定 領 域 研 究 (2)に ① 「 空 気 圧 ソ フ ト ア ク チ ュ エ ー タ の 開 発 と 人 間 親 和 メ カ ニ ズ ム へ の 応 用 」( 平 成 16 年 度 ~ , シ ス テ ム 工 学 科 則 次 俊 郎 教 授 ), ② 「 多 自 由 度 メ カ ト ロ ニ ク ス 用 イ ン テ リ ジ ェ ン ト ア ク チ ュ エ ー タ の 研 究 」( 平 成 16 年 度~,システム工学科 鈴森康一教授) が含まれている。 大型の競争的外部資金である経済産業省・新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)助 成 事 業 に は , ①「 テ ラ ヘ ル ツ 波 プ レ ー ト リ ー ダ ー シ ス テ ム の 開 発 と 生 体 相 互 作 用 分 析 へ の 応 用 」 (平 -9-5- 岡山大学工学部 分析項目Ⅰ 成 18 年 度 ~ , 電 気 電 子 工 学 科 紀 和 利 彦 講 師 ), ②「 次 世 代 超 薄 型 多 結 晶 シ リ コ ン 太 陽 電 池 の 研 究 開 発( 放 電 加 工 ス ラ イ ス )」 ( 平 成 19 年度~,機械工学科 宇野義幸教授) 科学技術振興機構の助成には ① 「 レ ー ザ 干 渉 法 を 用 い た 小 型 ・ 光 フ ァ イ バ ・ 高 応 答 温 度 セ ン サ の 開 発 」( 平 成 16 年 度~,機械工学科 冨田栄二教授) が採択されている。 6 受賞状況 工学部における研究はその成果に対して関連学会等における各種の賞を受賞している。 受 賞 状 況 は , 平 成 16 年 度 22 件 , 平 成 17 年 度 25 件 , 平 成 18 年 度 29 件 , 平 成 19 年 度 42 件 で あ る 。受 賞 が 多 数 で あ る と と も に ,中 期 計 画 期 間 中 に 顕 著 に 増 加 し て い る 。こ の ことは工学部の研究成果が学界及び社会に認められていることを示している。主な受賞 状況を資料Ⅱ-1-3に示す。 資料Ⅱ-1-3:主な受賞状況 賞の名称 職名 氏名 受賞年月日 繊維学会論文賞 助手 内田哲也 平成 16 年 6 月 9 日 電気加工学会全国大会賞 教授 宇野義幸 平成 16 年 6 月 11 日 講師 岡田 晃 他2名 型技術協会技術賞 教授 宇野義幸 講師 岡田 平成 16 年 6 月 22 日 晃 他2名 スケジューリング学会学会賞(学術部門) 助手 西 竜志 平成 16 年 9 月 29 日 日本生産管理学会創設発展功労賞 教授 宮﨑茂次 平成 17 年 3 月 12 日 日本金属学会功績賞及び日本鉄鋼協会学術貢献賞(三島賞) 教授 瀬沼武秀 平成 17 年 3 月 29 日 日本冷凍空調学会賞学術賞 教授 稲葉英男 平成 17 年 5 月 16 日 助教授 堀部明彦 助手 春木直人 教授 冨田栄二 日本マリンエンジニアリング学会技術賞 平成 17 年 5 月 17 日 他3名 先端加工学会研究論文賞 教授 宇野義幸 講師 岡田 教授 金谷健一 助手 菅谷保之 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門功績賞 教授 則次俊郎 平成 17 年 6 月 10 日 未踏科学技術協会第9回超伝導科学技術賞 教授 塚田啓二 平成 17 年 6 月 23 日 計測自動制御学会論文賞 助手 西 平成 17 年 8 月 9 日 教授 小西正躬 講師 今井 日本ペプチド学会学会賞 教授 宍戸昌彦 平成 17 年 10 月 28 日 プラズマ・核融合学会賞論文賞 助手 西川 亘 平成 17 年 11 月 30 日 日本機械学会フェロー 教授 塚本眞也 平成 18 年 3 月 22 日 日本機械学会フェロー 教授 鈴森康一 平成 18 年 3 月 22 日 自動車技術会フェロー 教授 冨田栄二 平成 18 年 6 月 9 日 スケジューリング学会学会賞(学術部門) 教授 小西正躬 平成 16 年 9 月 砥粒加工学会砥粒加工学会論文賞 教授 塚本眞也 平成 19 年 3 月 2 日 准教授 大橋一仁 電子情報通信学会論文賞 -9-6- 平成 17 年 5 月 27 日 晃 竜志 平成 17 年 5 月 28 日 純 岡山大学工学部 分析項目Ⅰ.Ⅱ 日本マリンエンジニアリング学会日本マリンエンジニアリング学会功労賞 教授 冨田栄二 平成 19 年 5 月 15 日 日本機械学会機素潤滑設計部門功績賞 教授 則次俊郎 平成 19 年 7 月 3 日 電子情報通信学会功労顕彰賞 教授 古賀隆治 平成 19 年 9 月 11 日 日本ロボット学会フェロー 教授 則次俊郎 平成 19 年 9 月 14 日 ( 出 典 : 岡 山 大 学 広 報 誌 「 い ち ょ う 並 木 」) 7 大学発ベンチャーの起業 工 学 部 教 員 に よ る ベ ン チ ャ ー の 起 業 状 況 は , 平 成 16 年 度 2 件 , 18 年 度 1 件 , 19 年 度 1件である。自らの起業以外のベンチャー企業への兼業を含めると,関与した教員は6 名である。これは工学部の研究がその目的である人類に貢献する実用となる成果をあげ ていることを示している。 8 研究施設及び研究環境の整備 中 期 計 画 期 間 に 工 学 部 に 導 入 さ れ た 1,000 万 円 以 上 の 大 型 設 備 は 7 件 あ り , 研 究 施 設 の整備がなされている。また,工学部研究室が設置されている工学部1号館,2号館, 3 号 館 の 大 型 改 修 が , 平 成 17 年 度 か ら 19 年 度 ま で の 3 期 計 画 に 基 づ い て 行 わ れ , 研 究 環境が大幅に整備・改善された。 9 若手教員支援制度の整備 若手教員が海外で自己の研究を発展させる機会をより多く持つことができるように, 工 学 部 で は 平 成 19 年 度 に 工 学 部 若 手 教 員 短 期 海 外 派 遣 制 度 を 整 備 し た 。 す で に , 平 成 20 年 度 の 派 遣 者 2 人 が 決 定 し て い る 。 10 研究担当の契約職員の採用 研究の推進のため,外部資金により任用する研究者として,研究を担当する特別契約 職 員 の 採 用 が 行 わ れ て い る 。 特 別 契 約 職 員 助 教 の 在 籍 数 は 平 成 18 年 度 4 人 , 平 成 19 年 度 4 人 で あ り , 平 成 20 年 度 は 3 人 以 上 の 予 定 で あ る 。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 上 回 る (判 断 理 由 ) 研究成果は論文公刊等により活発に発表され,成果に基づく特許出願が多数行われて おり,産学連携が積極的に進められている。研究成果が評価されて,大型の科学研究費 補 助 金 を は じ め , 経 済 産 業 省 NEDO の 助 成 , 及 び 企 業 と の 共 同 研 究 , 企 業 か ら の 受 託 研 究などにより,多額の外部資金を獲得している。また,多数の研究成果が各種の授賞の 対象となっており,成果に基づく教員のベンチャーの起業が行われている。さらに,研 究施設・研究環境の遅滞ない整備,若手教員支援制度の整備がなされ,研究担当契約職 員の採用も開始されていることから,研究活動は期待される水準を上回っていると判断 される。 分析項目Ⅱ 研究成果の状況 (1 )観 点 ご と の 分 析 観 点 研 究 成 果 の 状 況 (大 学 共 同 利 用 機 関 、 大 学 の 全 国 共 同 利 用 機 能 を 有 す る 附 置 研 究 所 及 び 研 究 施 設 に お い て は 、共 同 利 用・共 同 研 究 の 成 果 の 状 況 を 含 めること。) (観 点 に 係 る 状 況 ) -9-7- 岡山大学工学部 分析項目Ⅱ 1 優れた研究業績選定の基準 本 学 部 を 代 表 す る 研 究 は「 学 部・研 究 科 等 を 代 表 す る 優 れ た 研 究 業 績 リ ス ト 」及 び「 研 究業績説明書」に記載のとおりである。これらは外部の客観的評価に基づいて,次の基 準で選定した。 (1) 掲 載 し た 学 術 誌 が 当 該 分 野 の ト ッ プ ・ ジ ャ ー ナ ル で あ り , イ ン パ ク ト ・ フ ァ ク タ ーが大きい。 (2) 科 学 研 究 費 補 助 金 (S), (A), ま た は 評 価 ・ 金 額 が こ れ ら に 相 当 す る 大 型 の 競 争 的 外 部 資 金 を 獲 得 し た 。あ る い は ,科 学 研 究 費 補 助 金 (B)に 相 当 す る 競 争 的 外 部 資 金 を複数獲得した。 (3) 国 際 的 , あ る い は 国 内 全 国 レ ベ ル の 学 協 会 賞 を 授 与 さ れ た 。 (4) 全 国 紙 を 含 む 複 数 の 新 聞 で 報 道 さ れ た , あ る い は , 科 学 技 術 振 興 の た め の メ デ ィ ア作品のテーマとなった。 2 各分野における研究業績の状況 各 分 野 に お け る 本 学 部 を 代 表 す る 研 究 の 例 は 次 の と お り で あ る 。平 成 19 年 度 科 学 研 究 費補助金分科名の順により列挙する。 情報学(ソフトウェア) 公開鍵暗号及びその応用技術に対して、極めて有効に適用できる乗算アルゴリズムを 開 発 し ,総 務 省「 戦 略 的 情 報 通 信 研 究 開 発 推 進 制 度( SCOPE)」に 複 数 次 参 加 し た 。ま た , 日 経 BP 主 催 LSIIP デ ザ イ ン ア ワ ー ド を 受 賞 し た 。 [通 信 ネ ッ ト ワ ー ク 工 学 科 ] 情報学(知覚情報処理・知能ロボティクス) 画像から物体の運動や人物や顔などの情報を実時間追跡するための,従来のどの手法 よりも優れた手法を提案した。関連する複数の研究課題に科学研究費補助金基盤研究 ( B)を 受 領 す る と と も に , 情 報 処 理 学 会 山 下 記 念 研 究 賞 を 受 賞 し た 。 [情 報 工 学 科 ] 基礎化学(無機化学) 岡 山 の 伝 統 的 な 陶 器 で あ る 備 前 焼 の 発 色 機 構 を 材 料 化 学 の 観 点 か ら 解 明 し ,「 ロ レ ア ル 色 の 科 学 と 芸 術 賞 」国 際 賞 金 賞( 34 ヶ 国 か ら の 応 募 約 180 件 中 の 1 位 )を 受 賞 し た 。ま た , 研 究 内 容 が 映 像 番 組 2 本 ( 各 30 分 ) と し て 放 映 さ れ , 高 い 評 価 を 得 た 。 [物 質 応 用 化学科] 複合化学(合成化学) 新しい含フッ素ペプチド鎖の形成反応を開発し,アメリカ化学会からフッ素化学にお け る 日 本 人 と し て 2 人 目 の 表 彰 ( ACS Award for Creative Work in Fluorine Chemistry) を 受 け た 。 [物 質 応 用 化 学 科 ] 複合化学(生体関連化学) 蛍光性アミノ酸の蛋白質位置特異的導入技術を開発し,蛋白質の形態変化を簡単に、 か つ リ ア ル タ イ ム で 測 定 す る こ と に 世 界 で は じ め て 成 功 し た 。科 学 研 究 費 基 盤 研 究( S ) を 受 領 し , 日 本 ペ プ チ ド 学 会 賞 が 授 与 さ れ , 新 聞 に も 報 道 さ れ た 。 [生 物 機 能 工 学 科 ] 応用物理学・工学基礎(応用光学・量子光工学) フ ェ ム ト 秒 レ ー ザ ー パ ル ス 照 射 で 発 生 す る THz 波 を 観 測 す る 新 規 な シ ス テ ム を 開 発 し , 水 素 分 子 を THz 波 に よ り 世 界 で 初 め て 計 測 し た 。 ガ ス 触 媒 金 属 の コ ン ビ ナ ト リ ア ル 評 価 を 可 能 に し て , 経 済 産 業 省 ・ 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 (NEDO)に よ る プ ロ ジ ェ ク ト を 推 進 し た 。 [電 気 電 子 工 学 科 ] -9-8- 岡山大学工学部 分析項目Ⅱ 機械工学(生産工学・加工学) 日本のモノづくりの基盤である金型の仕上げを,人手なしに行える「大面積電子ビー ム加工機」を開発し,手磨きレス高能率金型仕上げを実現した。科学研究費補助金基盤 研 究 ( B ), 地 域 新 生 コ ン ソ ー シ ア ム 研 究 開 発 事 業 ( 経 済 産 業 省 ) に 採 用 さ れ , 電 気 加 工学会の全国大会賞及び型技術協会「技術賞」を受賞するとともに,日刊工業新聞社の 「 十 大 新 製 品 賞 」 に 選 ば れ た 。 [機 械 工 学 科 ] 機械工学(熱工学) レーザ干渉法を用いて実機エンジンシリンダ内でガス温度を実時間計測できるシステ ムを開発し,エンジン開発のエンジン回転数,負荷条件での使用を実現した。科学技術 振 興 機 構 の プ ロ ジ ェ ク ト に 採 用 さ れ ,約 1.5 億 円 の 外 部 資 金 を 得 る と と も に ,大 学 発 ベ ンチャー企業を設立した。 「 も の づ く り 白 書( 2008 年 6 月 )」に 事 例 と し て 掲 載 予 定 で あ る 。 [機 械 工 学 科 ] アクチュエータ工学 ア ク チ ュ エ ー タ 研 究 開 発 に 携 わ る 16 人 の 研 究 者 が ,従 来 の 学 問 領 域 の 枠 を 超 え て ア ク チュエータを一つの学問領域としてとらえ,学際的なタイトルと内容でまとめ,解説し た 「 ア ク チ ュ エ ー タ 工 学 」 を 発 行 し た 。 こ の 書 籍 に 対 し , 2006 年 11 月 1 日 に 日 本 AEM 学 会 よ り , 日 本 AEM 学 会 著 作 賞 を 受 賞 し た 。 [シ ス テ ム 工 学 科 ] 機械工学(知能機械学・機械システム) 加齢や障害により低下した身体動作機能を補い,生活や社会参加支援のための身体着 用 型 の 人 間 動 作 支 援 ロ ボ ッ ト を ,小 型・軽 量・柔 軟 な 空 気 圧 ゴ ム 人 工 筋 を 用 い て 開 発 し , 実 用 化 を 推 進 し た 。 科 学 研 究 費 補 助 金 (B), 同 特 定 領 域 研 究 , 地 域 新 生 コ ン ソ ー シ ア ム 研究開発事業(経済産業省)に採択され,複数の全国紙,複数のテレビ番組で報道され た 。 [シ ス テ ム 工 学 科 ] プロセス工学(生物機能・バイオプロセス) 固体表面に対するタンパク質の付着及び脱離機構を系統的に解明した。科学研究費補 助 金 (A)を 受 領 し , 企 業 と 共 同 研 究 を 実 施 し た 。 タ ン パ ク 性 汚 れ の 付 着 と 洗 浄 は 実 学 に お い て 極 め て 重 要 で あ り , 日 本 食 品 工 学 会 賞 を 受 賞 し た 。 [生 物 機 能 工 学 科 ] (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) 工学系の学術雑誌は専門分野ごとに分かれており,それぞれのインパクト・ファクター は 必 ず し も Nature や Science な ど の よ う に 高 く は な い が ,研 究 成 果 は 各 分 野 の ト ッ プ・ジ ャーナルに掲載されている。また,国内あるいは国際的学会賞が多数授与されていること から研究成果は学術的に高い水準にあり,技術への寄与が高いと評価されていると判断さ れ る 。さ ら に ,ま た ,経 済 産 業 省 の NEDO あ る い は 地 域 新 生 コ ン ソ ー シ ア ム 事 業 ,科 学 技 術 振興機構の助成に取り上げられ,ベンチャー起業件数も多いことから,社会的貢献が大き いと評価されている。よって,期待される水準を上回ると判断される。 -9-9- 岡山大学工学部 Ⅲ 質の向上度の判断 ① 事 例 1 「 特 許 出 願 数 の 倍 増 」( 分 析 項 目 I) 中期計画期間において,特許件数はほぼ2倍に増加している。これは工学部におけ る研究目的の特徴である科学技術による人間社会への貢献の主旨に沿ったものであり, 質の向上と評価される。 ② 事 例 2 「 受 託 研 究 ・ 共 同 研 究 受 け 入 れ の 倍 増 」( 分 析 項 目 I) 中期計画期間において,受託研究・共同研究受け入れは顕著に増加している。金額 ベ ー ス で 平 成 15 年 度 約 2 億 円 か ら 平 成 19 年 度 3.4 億 円 に 増 加 , 件 数 ベ ー ス で は 平 成 15 年 度 75 件 か ら 平 成 19 年 度 138 件 へ 2 倍 に 近 い 増 加 で あ る 。研 究 成 果 の 社 会 へ の 還 元という工学部の研究目標の実現に大きく寄与しており,質の向上と判断される。 ③ 事 例 3 「 工 学 部 若 手 教 員 短 期 海 外 派 遣 制 度 の 整 備 と 実 施 」( 分 析 項 目 I) 若 手 教 員 の 海 外 で の 研 究 を 支 援 す る 制 度 が 整 備 さ れ ,平 成 20 年 度 の 派 遣 者 2 人 が 決 定している。この制度は工学部の研究目標の実現に寄与することが期待されるもので あり,工学部における研究に関する制度上の質の向上と判断される。 ④ 事 例 4 「 研 究 を 担 当 す る 契 約 職 員 の 採 用 の 開 始 」( 分 析 項 目 I) 外部資金により任用する研究者として,研究を担当する特別契約職員の採用が行わ れ て い る 。 特 別 契 約 職 員 助 教 の 在 籍 数 は 平 成 18 年 度 4 人 , 平 成 19 年 度 4 人 で あ り , 平 成 20 年 度 は 3 人 以 上 の 予 定 で あ る 。こ の よ う な 採 用 は 以 前 に は な く ,本 中 期 計 画 期 間にはじめて行われたものであり,社会の要請に応えた活発な研究活動が行われてい ることを証明しており,質の向上と判断される。 ⑤ 事 例 5 「 大 型 の 外 部 資 金 の 導 入 の 増 加 」( 分 析 項 目 I) 中 期 計 画 期 間 の 平 成 16 年 度 か ら 平 成 19 年 度 ま で の 平 均 と し て , 大 型 の 外 部 資 金 で あ る , 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 (S)2 件 , (A)1.5 件 , 特 定 領 域 研 究 (2)7 件 が 採 択 さ れ て い る 。ま た ,経 済 産 業 省 NEDO 産 業 技 術 研 究 助 成 事 業 費 助 成 に 4.25 件 が 採 択 さ れ て い る 。 平 成 15 年 度 の 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 ( S) 1 件 , (A)0 件 , 特 定 領 域 研 究 (2)6 件 , NEDO 2 件 に 比 べ , 顕 著 に 増 加 し て い る 。 こ れ ら は 社 会 の 要 請 に 応 え た 活 発 な 研 究 活 動 が 行 わ れ て い る こ と を 証 明 し て お り ,質 の 向 上 と 判 断 さ れ る 。 ⑥ 事 例 6 「 受 賞 件 数 の 増 加 」( 分 析 項 目 I) 工学部における研究の受賞件数が顕著に増加している。賞の多くは基礎研究として だけでなく技術として社会に貢献していることを踏まえており,受賞件数は工学部の 研究目標の実現の指標となる。よって,質の向上と判断される。 ⑦ 事 例 7 「 大 学 発 ベ ン チ ャ ー の 起 業 の 開 始 」( 分 析 項 目 I) 中期計画期間には研究成果に基づく工学部教員のベンチャー起業が行われている。 ベンチャー起業は以前にはなく,中期計画期間にはじめて行われたものである。件数 は多数ではないが工学部の研究が実用化されていることの指標であり,工学部の研究 目的に沿った質の向上と判断される。 -9-10-