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30-1 - 京都大学
京都大学東南アジア研究所 30.東南アジア研究所 Ⅰ 東 南 ア ジ ア 研 究 所 の 研 究 目 的 と 特 徴 ・ ・ ・ 30- 2 Ⅱ 分析項目ごとの水準の判断 Ⅲ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 30- 3 分析項目Ⅰ 研究活動の状況 ・ ・ ・ ・ ・ 30- 3 分析項目Ⅱ 研究成果の状況 ・ ・ ・ ・ ・ 30- 3 質の向上度の判断 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 30- 5 -30-1- 京都大学東南アジア研究所 Ⅰ 東南アジア研究所の研究目的と特徴 <研究目的> 1東南アジアにおける総合的地域像の解明 2東南アジアの地域変容と地域間比較に関する研究 3現地社会との恊働研究 4地域研究における新分野の創成 <研究の特徴> 京都大学東南アジア研究は、大学共同利用機関としての登録は行っていないが、本研究 所が主催する研究プロジェクトは、本邦の国公私立大学の教員のみならず、外国機関研究 者 を も 包 含 す る 国 際 共 同 研 究 が 主 体 で 、事 実 上 、国 際 共 同 研 究 機 関 の 機 能 を 果 た し て い る 。 また、本研究所が実施している地域研究は、自然生態、政治経済、人文社会の学際的かつ 文 理 融 合 を 特 徴 と し て い る 。こ の よ う な 学 融 合 的 な 地 域 研 究 を 通 じ て 、 「 地 域 情 報 学 」、 「感 染 •環 境 学 」、 「 フ ィ ー ル ド 医 学 」と い う 新 し い 地 域 研 究 の 分 野 を 創 出 し て お り 、ひ と り 学 術 研究分野にとどまらず社会、経済、文化領域に対しても貢献していると考えられる。さら に、本研究所が、東南アジアに関する地域研究機関としては本邦唯一の研究機関であるこ とはいうまでもなく、また、医学や農学などの自然系研究者を擁する地域研究機関として は、国際的にも唯一の機関であることは、内外にもひろく認知されている。 [想定する関係者とその期待] アジア・アフリカ地域は、グローバル化とネオリベラル経済の急速で全面的な浸透によ り、経済が発展する一方、環境破壊、貧富格差の拡大、人権剥奪、その他、深刻な問題が 山積している。本研究所が展開している地域研究は、途上国の直面する諸問題の解決のた めに現地・現場で活動してきた者たちの経験知を整理・集積し、弱者・貧者・マイノリテ ィの生存基盤の整備安定に貢献する研究を推進し、具体的で効果的な援助・関与・介入の あり方の提言へと直結する「実践知の体系化」を目的とする。京都大学の特色であるフィ ールド・ワークによる地域研究を、社会的ニーズに応えられるよう発展深化させ、問題解 決を志向する実践的で応用的な地域研究の創出と推進を最終目標としている。冷戦期にお いて隆盛を迎えたアメリカ型地域研究は、共産革命を予防するための政策科学や社会経済 工学に裨益するという特徴をもっていた。それに対し本研究所のめざす地域研究は、冷戦 終 結 後 の 現 代 に お い て 、急 速 な グ ロ ー バ ル 化 の 進 行 が も た ら す 国 境 を 越 え た 諸 問 題( 生 態・ 環境・貧困・感染症・等々)が地域的に多様に出現していることに対応するために、広く 文理にまたがる(農・医・工・政治・経済・社会学)総合的で、実践的な研究、すなわち 現場の生態・歴史・社会・文化の背景をふまえつつ当該地域に暮らす人々の安全と社会の 安寧に寄与するものである。したがって研究成果のエンドユーザーは、東南アジアの住民 であり社会でもある。 -30-2- 京都大学東南アジア研究所 Ⅱ 分析項目Ⅰ.Ⅱ 分析項目ごとの水準の判断 分析項目Ⅰ 研究活動の状況 (1 )観 点 ご と の 分 析 観点 研究活動の実施状況 (観 点 に 係 る 状 況 ) 本 研 究 所 の 研 究 は 、 東 南 ア ジ ア 地 域 を 対 象 に フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 通 じ て、自然生態系、政治経済、社会文化、医学などの文理融合の学際的視点から、地域にお け る 問 題 発 見 の み な ら ず 問 題 解 決 も 志 向 す る と こ ろ に 特 徴 が あ る 。 そ れ は 、 基 盤 研 究 ( S) 「 地 域 情 報 学 の 創 出 −東 南 ア ジ ア 地 域 を 中 心 に し て( 研 究 代 表 者:柴 山 守 )」や 基 盤 研 究( S) 「 東 南 ア ジ ア で 越 境 す る 感 染 症:多 角 的 要 因 解 析 に 基 づ く 地 域 特 異 性 の 解 明( 研 究 代 表 者: 西 渕 光 昭 )」、基 盤 研 究( A) 「 東 南 ア ジ ア の「 老 い 」の 総 合 的 研 究 −セ ー フ テ ィ ー・ネ ッ ト 制 度 再 構 築 に 向 け て ( 研 究 代 表 者 : 松 林 公 蔵 )」 な ど が あ げ ら れ る と と も に 、 平 成 19 年 度 か ら は 先 端 科 学 と 地 域 研 究 が 恊 働 す る グ ロ ー バ ル COE プ ロ グ ラ ム 「 生 存 基 盤 持 続 型 の 発 展 を 目 指 す 地 域 研 究 拠 点( 研 究 代 表 者:杉 原 薫 )」が 開 始 さ れ て い る( 京 大 東 南 ア ジ ア 研 究 所 ホ ー ム ペ ー ジ )。 観点 大 学 共 同 利 用 機 関 、大 学 の 全 国 共 同 利 用 機 能 を 有 す る 附 置 研 究 所 及 び 研 究 施設においては、共同利用・共同研究の実施状況 (観 点 に 係 る 状 況 ) 京 都 大 学 東 南 ア ジ ア 研 究 は 、 大 学 共 同 利 用 機 関 と し て の 登 録 は 行 っ て いないが、本研究所が主催する研究プロジェクトは、本邦の国公私立大学の教員のみなら ず、外国機関研究者をも包含する国際共同研究が主体で、事実上、国際共同研究機関の機 能を果たしている。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 )期 待 さ れ る 水 準 を 上 回 る 。 (判 断 理 由 ) こ れ ま で の 東 南 ア ジ ア 地 域 研 究 に「 地 域 情 報 学 」、 「環境感染症学」 「フィール ド 医 学 」 と い う 新 た な 地 域 研 究 分 野 を 創 出 し 、 さ ら に グ ロ ー バ ル COE プ ロ グ ラ ム 「 生 存 基 盤 持 続 型 の 発 展 を 目 指 す 地 域 研 究 拠 点( 研 究 代 表 者:杉 原 薫 )」で は 、伝 統 的 な 地 域 研 究 領 域と先端科学領域の融合を試みる点で革新性を有する。 分析項目Ⅱ 研究成果の状況 (1 )観 点 ご と の 分 析 観 点 研 究 成 果 の 状 況 (大 学 共 同 利 用 機 関 、 大 学 の 全 国 共 同 利 用 機 能 を 有 す る 附 置 研 究 所 及 び 研 究 施 設 に お い て は 、共 同 利 用・共 同 研 究 の 成 果 の 状 況 を 含 めること。) (観 点 に 係 る 状 況 ) 本 研 究 所 は 、専 任 教 員 22 名 の 小 所 帯 で は あ る が 、2004 年 か ら 2006 年 3 月 現 在 ま で で 、 約 470 編 の 著 書 、 論 文 が 公 刊 さ れ た ( 京 都 大 学 東 南 ア ジ ア 研 究 所 : 自 己 点 検 評 価 報 告 書 )。新 た に 創 出 さ れ た「 地 域 情 報 学 」の 分 野 で は 、国 内 の み な ら ず 国 外 で も シンポジウムやワークショップの開催、ハノイ関連の地図や碑文資料の収集、ベトナムに おけるベース地図(ベクトル化地図)の作成や史跡・遺蹟のデータ採集・収集、研究成果 に も と づ く 特 別 講 義 な ど の 活 動 を 展 開 さ れ た 。ベ ト ナ ム で は 、JVGC 日 本・ベ ト ナ ム 空 間 情 報学コンソーシアム、タイ国ではアジア工科大学リモートセンシング研究グループ、米国 カ リ フ ォ ル ニ ア 大 学 バ ー ク レ イ 校 GIS セ ン タ ー 、 米 国 ECAI(Electronic Atlas Cultural Initiative), 台 湾 中 央 研 究 院 ( Academia Sinica) な ど の 諸 研 究 機 関 と の 間 で 、 地 域 情 報 -30-3- 京都大学東南アジア研究所 分析項目Ⅱ 学 ( Area Informatics) を テ ー マ に し た 連 携 研 究 が 進 を す す め た 。 2004 年 か ら 3 年 間 の 間 に開催した地域情報学をテーマとする国際シンポジウム・ワークショップは計6回、研究 発 表 は 約 60 件 と な っ て い る 。 こ う し た 研 究 活 動 の 結 果 、「 地 域 情 報 学 」 と い う 研 究 領 域 が 新しいディシプリンとして東南アジア地域や中心にする諸研究に浸透してきており、ベト ナム国家大学や他の大学からの講義依頼はその成果を示すものであると考えている(同報 告 書 )。ま た 、同 じ 創 成 新 分 野 で あ る「 フ ィ ー ル ド 医 学 」の 領 域 で は 、本 邦 の 地 域 在 住 高 齢 者との比較のもとに、インドネシア、タイ、ラオス、ミャンマー、ベトナム、韓国におけ る地域在住高齢者の健康実態が浮かび上がり、とくに、ラオスにおける糖尿病頻度の診断 技法と非薬物的介入が成功した方法論をもう一度日本の高齢者に適用した報告は、英国の 医 学 雑 誌 Lancet に 掲 載 さ れ 高 い 評 価 を 受 け た 。こ れ ら フ ィ ー ル ド 医 学 的 研 究 手 法 は 、学 術 的 意 義 と と も に 、 地 域 住 民 の 保 健 福 祉 に 貢 献 し て い る ( 研 究 業 績 説 明 書 II)。 ま た 、 新 分 野 で あ る「 環 境 感 染 症 学 」は 、過 去 数 年 の 研 究 実 績 が 評 価 さ れ 、平 成 19 年 度 よ り 基 盤 研 究 (S)と し て 採 択 さ れ た ( 研 究 業 績 説 明 書 II)。 (2 )分 析 項 目 の 水 準 及 び そ の 判 断 理 由 (水 準 ) 期 待 さ れ る 水 準 を 上 回 る (判 断 理 由 ) 白 石 隆 が 2007 年 に こ れ ま で の イ ン ド ネ シ ア 政 治 の 研 究 、東 南 ア ジ ア 国 家 形 成 のマクロ比較等による業績で紫綬褒章を受賞したこと、また東南アジア地域研究における 5件の受賞をうけたことなどから、上記成果は、第三者的にも高い評価を受けていると思 量される。 また、地域情報学の創出プロジェクトのハノイ・プロジェクトでは、3年間の間にベトナ ム 国 営 放 送 、ハ ノ イ TV な ど 映 像 メ デ ィ ア で ハ ノ イ 市 当 局 と の 会 合 、シ ン ポ ジ ウ ム 、ハ ノ イ 国家大学での特別講義などの様子が5回にわたって報道された。また、新聞・雑誌メディ ア も 同 様 に 、 ハ ノ イ 新 報 、 Vietnam News な ど 8 回 に わ た り 記 事 と し て 掲 載 さ れ て い る 点 で も、一般社会に対する貢献度が高いものと考える。 -30-4- 京都大学東南アジア研究所 Ⅲ 質の向上度の判断 大きく改善向上している。 ① 事 例 1「 グ ロ ー バ ル COE プ ロ グ ラ ム「 生 存 基 盤 持 続 型 の 発 展 を 目 指 す 地 域 研 究 拠 点( 研 究 代 表 者 : 杉 原 薫 )」 の 採 択 」 (分 析 項 目 I) (質 の 向 上 が あ っ た と 判 断 す る 取 組 ) 伝 統 的 地 域 研 究 と 先 端 科 学 の 融 合 を め ざ し た パ ラ ダ イ ム 転 換 を め ざ す 研 究 の 革 新 性 が 評 価 さ れ 、 グ ロ ー バ ル COE プ ロ グ ラ ム と し て 採 択 さ れ 始動を開始した。 ② 事 例 2 「 新 分 野 「 地 域 情 報 学 」 の 展 開 と 成 果 」 (分 析 項 目 II) (質 の 向 上 が あ っ た と 判 断 す る 取 組 ) 新 分 野 「 地 域 情 報 学 」 が 、 基 盤 研 究 (S)と し て の 中 間 評 価 に お い て 高 い 評 価 を 得 て 、地 域 研 究 の 新 た な デ ィ シ プ リ ン と し て 認 知 さ れ 定 着 し た 。 ③ 事 例 3 「 新 分 野 「 フ ィ ー ル ド 医 学 」 の 展 開 と 成 果 」 (分 析 項 目 II) (質 の 向 上 が あ っ た と 判 断 す る 取 組 ) 新 分 野 「 フ ィ ー ル ド 医 学 」 が 、 地 域 研 究 の 新 た な ディシプリンとして認知され定着するとともに、地域の保健福祉領域への社会的貢献を担 っていることが評価された。 ④ 事 例 4 「 新 分 野 「 環 境 感 染 症 学 」 の 創 出 」 (分 析 項 目 I) (質 の 向 上 が あ っ た と 判 断 す る 取 組 ) 微 生 物 学 と 社 会 経 済 学 の 恊 働 に よ っ て 、新 分 野「 環 境 感 染 症 学 」 が 創 出 さ れ て 基 盤 研 究 (S)と し て 認 知 さ れ た こ と 。 -30-5-