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第2回リベラルアーツとFD公開シンポジウム 一括

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第2回リベラルアーツとFD公開シンポジウム 一括
学生と教員でつくる授業を目指して
第2回 文理融合リベラルアーツFD
公開シンポジウム
平 成 2 1 (2009)年 2 月 1 2 日 ( 木 )
共 通 講 義 棟 2 号 館 2 0 1 号 室
お茶の水女子大学では、2008 年度より「21 世紀型文理融合リベラルアーツ科目群」を開始しました。後
期シンポジウムでは、授業を受講した学生からの意見や提案をうけ、今後の授業効果の改善について考えた
公開シンポジウムを開催いたします。また、コメンテーターをお迎えし、ご意見をいただく予定です。ぜひ、
みなさまのご来場をお待ちしています。
コメンテーター 川島啓二(国立教育政策研究所 高等教育研究部 総括研究官)
第 1 部 14:20~15:40 「学生からみた文理融合リベラルアーツ」
14:30~14:40
生命と環境9「地域と風土」受講生から
本 井 典 子( 文教育学部 言語文化学科2年生 )
14:40~14:50
生活世界の安全保障5「人間の安全保障」受講生から
成 田 矩 子( 文教育学部 人文科学科1年 )
14:50~15:00
生命と環境 21「基礎生命科学」
(実習)受講生から
鈴 木 香奈子( 生活科学部 人間生活学科1年 )
李
正 麗( 生活科学部 人間生活学科1年 )
15:00~15:10
色・音・香7「舞踊における色・音・香」受講生から
小 林 由 季( 文教育学部 人間社会科学科2年 )
鈴 木 美由希( 文教育学部 人間社会科学科2年 )
15:10~15:20
色・音・香9「おいしさと色・音・香」受講生から
小 林 志 野( 文教育学部 人文科学科1年 )
小 林 加 奈( 文教育学部 人文科学科2年 )
15:20~15:30
生活世界の安全保障3「リスクの社会史」受講生から
五十嵐 麻 子( 生活科学部 食物栄養学科1年 )
15:30~15:40
生活世界の安全保障 23「NPO インターンシップ」受講生から
米 澤 知 佳( 文教育学部 人間社会学科2年 )
第2部 15:40~17:30 「教員からみた文理融合リベラルアーツ」
パネリスト
15:40~16:00
村 田 容 常 おいしさと色・音・香 [色・音・香系列から]
( 人間文化創成科学研究科 自然・応用科学系教授 )
16:00~16:20
仲 矢 史 雄 基礎生命科学[実習] [生命と環境系列から]
( リーダーシップ養成教育研究センター ・講師 )
16:20~16:40
中 村 美奈子 舞踊における色・音・香 [色・音・香系列から]
( 人間文化創成科学研究科 文化科学系准教授 )
16:40~17:00
亀 山 俊 朗 NPO インターンシップ[実習] [生活世界の安全保障系列から]
( 教育研究特設センター ・講師 )
17:00~17:30
コメント&全体質疑
主 催:お茶の水女子大学 全学教育システム改革推進本部 リベラルアーツ部会
連絡先:教育企画チーム 電話:03-5978-5139 電子メール:[email protected]
お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(水)
第1部「学生からみた文理融合リベラルアーツ」
21 世紀型文理融合リベラルアーツの全体趣旨
三浦 徹(前教育機構長)
今年から文理融合のリベラルアーツという科目群を始めました。今年は三つの系列ですね、
「生活世界の安全保障」
。これは小林先生
が運営の責任者になっています。それから「色・音・香」は、生活科学部の食物の村田先生が責任者で運営しています。
「生命と環境」は、
理学部の生物学科の最上先生が責任者で運営しています。
これは新しい試みで、お茶大にとっても新しいのですが、ほかの大学を見ても、文系、理系に共通するテーマを立てて、十数科目の
科目群を作るというのは日本でも例がないし、それから国外を見ても珍しい例だと言っていいと思います。ただ、それだけになかなか難
しいところがありまして、いろいろやりながら改良していく必要があると思っています。
そこで、9月にも、こういうシンポジウムをやったのですが、前期に実際に授業をした教員の人たちの報告を聞きながら問題点を考え
ていくというのをやりました。今回は、実際に受講している学生の人たちの感想、それから、こうやったらいいのではないか、こんなとこ
ろがうまくなかったという意見を率直に出してもらって、それぞれの実際皆さんが聞いた科目について、また、それだけではなくて全体と
して、こういう形での授業のやり方がうまくいっているのか、どこを変えればいいのかということを一緒に考えたいということで、授業を
聞いている7つのグループの方に報告をお願いしました。とても楽しみにしています。
あと、授業全体の様子をお話ししますが、前期には講義を6科目、それから演習、実習、実験という 20 人規模ものを 10 科目開きま
した。講義が 1206 名で、履修登録をした人の数は平均すると 201 名という、かなり大人数になっています。ただ、これは前期に開講し
ている講義が少なくて、
小林先生の講義とか頼住先生の講義は 300 名とか 400 名になってしまったということで、
平均が多くなっています。
後期は講義を 14 科目と、演習は生命科学の館山でやる演習とNPOのインターンシップの二つだけなのですが、講義の方は 1151 名の人
が履修して、平均の数は 82.2 人です。実は当初設計したときに一つの講義が大体 80 人ぐらい、多くても 100 人ぐらいになるように科目
を用意したのです。というのは、80 人ぐらいであれば講義形式でも、皆さんの意見を聞いたりしながら双方向的に授業ができるかなとい
うことで、その 80 という数を考えたのですが、後期は大体予定の感じになったなというところです。数はそうなっていても中身がどうだっ
たかというのが一番なのですが、そこは今日皆さんの話を聞いて考えていこうと思っています。
このプログラム自体は、来年からあと二つ、ジェンダーと、
「ことばと世界」という新しい系列が始まりますし、大体2年が1周期で、し
ばらく続けていきます。このプログラムができるのも、文部科学省の方から、新しいリベラルアーツを作るということで特別な予算を頂い
ていて、そういう双方向的な授業をするにはAV設備なども重要なので、この教室も新しく入れ替えました。そのほかの教室も、60 人以
上の教室には全部プロジェクターを置くというようなことも一緒にやっていますので、
これを機会に、
お茶大の授業を質・量ともにレベルアッ
プさせたいと考えています。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
生命と環境9「地球と風土」受講生
本井 典子(文教育学部 言語文化学科2年生)
この授業の大きなテーマは、地域研究について、それから地域研究とはどういうものなのだろうかというものを風土との関係から見て
いくという授業でした。
授業の方は、全部で全 15 回ありまして、最初の方は基礎的なこと、本当にイントロダクションで、地域研究とは何だろうかということ
から始まり、先生のご専門であるオセアニア地域、ハワイやバリ島などの説明。それからその後に和辻哲郎の風土の話、オギュスタン・
ベルクの風土の話を交えて、最後に水俣病、公害の問題も含めて話が進んでいきました。
授業全体としては、先生の持ってきてくださった資料、ビデオ、スライドを用いた授業だったので、視覚的に訴えるものが多く、大変に
あきなくて楽しい授業であったなと思います。
授業を通して、全体的なのですが、地域を見る目というものを考えさせられたものだなと思いました。私たちがほかの地域を見るとき
には、一体どういう考えで見ているのか。そこに偏見、西洋中心的なまなざしというものがあるのではないだろうか、相手を他者化して見
ているのではないだろうかということを考えさせられる授業でした。
これはすごく個人的な意見なのですが、そういう意味で、この授業全体としては、私たちが地域研究だけではなくて、相手、他者を見
る目というものを考えさせられる上で、とてもよかった授業だなと思いました。あと、資料がとても多かったので、ビデオなどがあったのは、
すごくあきなくて、1年生にもよかったのかなと思います。
ただ、個人的に私が思うのは、ちょっと授業の内容が盛りだくさんすぎて、1年生にとっては、ちょっと難しすぎたかなという感じがし
ました。特に地域研究の話、地域の話、風土の話だったのですが、和辻哲郎の風土を出すまでは多分よかったのだと思うのですが、そ
こからベルクの話にまで発展してしまうと、理系の方もいっぱいとっていたので、1年生さんにとっては難しすぎたのではないかなと思い
ます。
それから、内容が多すぎたことにも関係するのですが、結局、最終的に地域研究ってどういうことだろうか、私たちがほかの地域を見
る目というのはどういうものなのだろうかという結論にまでたどり着けなかったというのが、ちょっと残念なところだったなと思いました。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
生活世界の安全保障5「人間の安全保障」受講生
成田 矩子(文教育学部 人文科学科1年)
文理融合リベラルアーツ生活世界の安全保障より、荒木先生の「人間の安全保障」について発表させていただきます。
この科目は、来年度「生命と環境」の「開発と共生」として開講されるものです。この授業では、
「人間の安全保障」という、国家の
枠組みを超えて、人間の生にとってかけがえのない中枢部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現することを目指した概念について
解説し、主にJICA国際協力機構事業に携わっている方々をゲストの講師にお迎えして講義していただきました。
講座の初めには、日本のODA(政府開発援助)やJICA、そして人間の安全保障についての基本的な概念について講義されました。
この授業の参加者は1年生が多かったこともあり、概念を理解することは簡単なことではなかったと思います。しかし、この講義の初め
に概説があり、次に、特に人間の安全保障に関連した国際協力活動の具体例をお話しするゲスト講師の先生がいらっしゃって、再び人間
の安全保障という概念について詳しくお話をいただいたため、すぐに理解できなかった概念というものが繰り返し説明されることで、現
実の事例とリンクして理解することができたのだと思います。
私個人の話となりますが、私は現在、パレスチナ問題について関心を持ち、JVC(日本国際ボランティアセンター)でボランティア活
動をしています。その活動の中でも、大学で学んだ人間の安全保障についての知識やゲストの先生のお話から感じたことを役立てること
ができ、大学の講義で得たものを実際にアウトプットできることは、とてもうれしいことだと思いました。国際協力の生の現場で今まさに
働いており、各分野・領域のエキスパートの方々にお話しいただいたこの講義は非常に有意義なもので、私たち自身に何ができるかを深
く考えさせるきっかけも与えられました。
私にとって非常に有意義であったこの講義に提言をさせていただくとすれば、まず一つに、文理融合リベラルアーツということで、リベ
ラルアーツでなければ受講のきっかけがなかったかもしれない理系学科の学生も、少数でしたが、この授業を受講していました。文教
育学部で文系学生である私は、普段異なる授業を受けている彼女たちが感じたことや意見を交換し、もっと交流してみたかったと思いま
す。
講義の一環として、広尾のJICA地球ひろばを訪問し、グループワークをする経験を持ちましたが、文理融合という点では十分にその
利点を生かしきれていなかったのではないかと思います。
次に講義前に提出するコメントペーパーについてです。毎回先生方のお話は本当に充実していて、90 分の授業時間では足りないほど
でした。質問時間も設けられてはいましたが足りず、コメントペーパーに記入する生徒も多かったと思います。それに対する回答を得たい
というのが、私やほかの受講生の希望です。
しかし、私もJVCの職員の方が大学で授業を持って、その仕事をするのがとても大変であるということをこの目で見ています。国際協
力という忙しい現場で働かれている講師の先生方に、私たちのコメント一つ一つやレスポンスを求めるのは難しいことでしょう。しかし、
ぜひ改善に向けて考えていただきたいことの一つです。
貴重な機会を与えていただき、ありがとうございました。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
生命と環境 21「基礎生命科学(実習)」受講生
鈴木 香奈子(生活科学部 人間生活学科1年)
李 正麗(生活科学部 人間生活学科1年)
(鈴木香)
この授業では、生物や生命について実験操作を通して具体的に学んでいきました。それぞ
れについて詳しく紹介していきたいと思います。
まず、私がこの授業を取ったきっかけです。第一に、私はこの授業のメーンである解剖に興
味がありました。弟二人が理系なので、中学生のころから解剖の授業を取っていて、その面白
さを教えてくれていたので、私もぜひやってみたいなと思っていました。
また、授業の紹介のチラシを見て、先生がとても面白そうだなと思いました。何でしょう、
とてもユニークで、硬い感じがしないチラシだったので、興味がわきました。
(李)
私は、最初、同じクラスの鈴木さんが、この授業を取りましたが、受講生が一人しかいなかっ
たため、私を誘いました。ちょうど私も少し興味があったので、この授業を取りました。
(鈴木香)
まず解剖の前に、細胞について触れるということで、タマネギとゾウリムシについて観察し
ました。タマネギは、ご存じ、植物細胞です。自分でプレパラートを作って観察してスケッチ
しました。
ゾウリムシの運動も観察しました。すごくかわいかったです。
こちらが、私がスケッチしたタマネギの細胞の様子です。これは原形質流動の様子をスケッ
チしたものです。教科書の写真でしか見たことがなかったので、実際に動いているのを見ると、
とても興味深いなと思いました。
こちらが、かわいいゾウリムシです。彼らは回転をしながら泳いでいくので、その様子がと
てもかわいかったです。あと、薬品を投与すると動き方が変わって、ダンスみたいな動きも見
られて、また面白かったです。
この生物の授業では二つ壁があるそうなのですが、一つ目がカエルの壁です。ウシガエル
というカエルが、このぐらいの大きさなのですが、初めて見たときはすごくびっくりして、半泣
きでしたね。カエルさんを自分でさばけるかというのが一つ目の大きな壁でした。本当に生き
ているのをさばくのは、とても勇気が要ります。
もう一つが機械の壁です。導入でオシロスコープを使ったのですが、やはり回線とかボタン
とか、文系の頭についていくのは、ちょっと難しいのがたくさんありましたね。自分を被験者
にして、心電図や筋電図を測定して、こうした機械に慣れていきました。
これは苦手な人は見ない方がいいかもしれません。カエルの足から神経を取り出していると
ころです。神経と、ほかの細胞や繊維との区別がつきにくくて、間違って切ってしまわないかと、
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すごくどきどきしました。うまくいくと、つるつると取れます。
これはパルスが見えたところですね。一番大きい写真ですが、分かるでしょうか。取り出し
た神経に電気を流して活動電位を観測します。神経が傷ついていないと、うまくこうやって電
位が見えるので、うれしいです。
(李)
授業を終えて、先生方がとても分かりやすく説明してくださって、生徒のペースに合わせて、
ゆっくりと授業をやっていただけたので、留学生の自分も楽しんで参加できました。先生方の
おかげで生物に興味を持てました。先生方のほかの授業があったら、
また取りたいと思います。
(鈴木香)
私は、想像していたよりカエルさんの中がきれいで驚きました。模型などで色分けされてい
るのは、模型だからかなと思っていたのですが、実際、カエルさんの中も、とても色分けされ
ていてきれいでした。
あと、偉そうなことが書いてありますね。生き物が生きていると死んでいるときは見たこ
とがあるのですが、ビフォアー、アフターの中間を見たことがなくて、今回、実際、自分でカ
エルをさばくということに当たって、
「ああ、命って重いな。すごい怖いな」と思いました。ま
た3月に臨海実習があるので、海の観察がすごく楽しみです。
「この授業をより良くするには」ですが、レポート課題で提起された問題の解説を次の授業
時にしていただけると、とてもうれしいです。興味深い課題があって、自分で考えるのもすごく
面白かったのですが、やはり回答がいただけると、もっとよかったと思います。
この授業を取らなかった子に、その理由を聞いてみました。まず、解剖が怖いそうです。こ
れはしょうがないですね。あと「2コマ連続で、後期の前半は授業がない」
「単位の仕組みが
分からない」
。授業が2コマ連続なのに、ほかの授業と同じ2単位しか取れないので嫌だと言っ
てやめる子がいたのですが、実は後期の前半は授業がなかったので、プラマイすると普通の
授業と同じだということが、ちょっと理解しにくかったです。
「授業の存在を知らなかった」と
いうのは、どうすればいいのか、ちょっとよく分からないです。
(李)
「どのような説明をしたら参加者がより増えるか」という質問なのですが、前期、あるいは
前回の授業で履修していた学生からの説明があるといいと思います。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
色・音・香7「舞踊における色・音・香」受講生
小林 由季(文教育学部 人間社会科学科2年)
鈴木 美由希(文教育学部 人間社会科学科2年)
(小林由)
それではまず、この授業の特徴について説明したいと思います。
この授業は、さまざまな舞踊を色・音・香という言葉をキーワードにして見ていきました。講
義の形態としては、オムニバス形式の講義で、毎回違う舞踊を取り上げました。その際には、
外部から各分野のプロの方をゲスト講師としてお招きし、お話ししていただきました。そしてゲ
スト講師の方は、その方にお話ししていただくだけではなく、私たち学生が実際に衣装を試着
したりなどの参加体験型の授業でした。
これがそのときの写真で、向かって左側が能のときの写真で、天女の衣装を着ています。仮
面でちょっと顔は見えないのですが、学生が着ていて、着付けをしているのは宝生流の能楽師
の佐野先生に着付けを直々にしていただきました。
向かって右側の写真は、マリ共和国、アフリカの民族衣装で、これは舞踏の衣装ではないのですが、その国の文化に触れるということで、
普段着のワンピースを、このときは私が着させてもらいました。また、衣装の試着以外にも、能のときには鼓や笛など、楽器の演奏を実
際にさせていただいたり、朝鮮舞踊のときには金剛山歌劇団の方がいらっしゃったのですが、その方に振り付けを習って、学生と金剛山
歌劇団の方が一緒に踊ったりもしました。また、毎回映像資料がとても豊富に用意されていて、とても充実していました。
(鈴木美)
次によかった点です。一つ目に、
プロの方が講師としてが来てくださいました。普通の授業では、
本物の舞踏家の人と対面して話す機会というのはほとんどないと思うのですが、この授業であっ
たからこそ、本物に触れることができたと思います。
二つ目に、オムニバス形式で講義が進んでいきました。毎回いろいろな分野の方のお話を聞
くことができました。例えばバリ舞踊から始まって、韓国や朝鮮舞踊、また日本の能楽、アフリ
カの舞踊、さまざまな踊りがあったのですが、地域性・文化性というものもありましたし、文化
によって多様な踊りがあるということが分かりました。とてもそこまで及んでいなかったような、
モダンダンスというよりは、私がイメージしていた踊りというものがどれだけ狭かったのかという
ことが分かり、また、コンテンポラリーダンスからクラシックのバレエまでというような、多様な時代性を学ぶことができました。
三つ目に、先生から講演のお知らせや参考文献などのご紹介があり、授業の時間だけで終わるのではなくて、その後に自分から読ん
でみようかなと思ったり、舞台を見に行こうかなと思ったり、活発に学習を進めることができたと思います。
また、最後に文理融合の事例が具体的に提示されていました。例えばモーションキャプチャによる動作解析というものがあったのです
が、これは人が踊っているところを撮影して、その身体の動きだったり、関節の動きというものをより詳しく解析することができる手法です。
一見、踊りというのはテクノロジーとか科学とはあまり関係ないのかなと私は思っていたのですが、踊りを記録したり、解析したりするこ
とに、パソコンなど、最新の情報テクノロジーが使われているということに私はとても驚いて、新鮮さを感じました。
(小林由)
3点目に、この授業に対する私たち学生からの提案です。まず、ゲスト講師の講義が終わった後にディスカッションの時間があったの
ですが、それが授業ごとにまちまちで、授業の内容が盛りだくさんすぎて、その時間が取れなくて、ちょっと物足りないなと感じるときも
ありました。
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また、ディスカッションはゲスト講師の方に対して学生が質問をするという形式だったのです
が、せっかく先生がその時間を用意してくださったのに、学生たちから質問や意見があまり活発
に出ませんでした。私なりにちょっと考えてみたのですが、先ほど映像資料が豊富だったと言っ
たのですが、ちょっと盛りだくさんすぎて、考える時間が確保できなかったのかなと感じました。
なので、毎回最後の時間は 15 分、ディスカッションの時間を確保したり、あと、大人数のディ
スカッションだと、私は舞踊に対する知識があまりなくて、私より舞踊の知識がある方が鋭い質
問などをされると、私がこんなレベルの低い質問をするよりは、もっと舞踊に詳しい人が質問し
て議論を深めていただいた方がいいのではないかと、ちょっと遠慮がちになってしまって、発言
が消極的になってしまうので、小から中グループ単位での話し合いをすることによって親密感が
増して、もっとディスカッションや意見が活発になるのではないかと思いました。
(鈴木美)
次に、色・音・香以外のアプローチもあるとよいのではないかと感じたということと、各回の授業構成のつながりがもっとほしいという
ことです。この授業では、それぞれの舞踊について、色なら衣装が持つ意味、音ならその舞踊が持つ音楽の特徴。バレエや日本の音楽
は全然違うのを、想像していただければ分かると思うのですが、それについて紹介していただいたのですが、韓国と朝鮮舞踊について学
んだときに、それら二つの踊りは過去、南北に分断されたという歴史的背景を持って、それぞれ舞踊が発展していったのですね。なので、
私はその事実を知ったときに、色・音・香だけではなく、歴史性という面からも、この舞踊についてもっと見ていきたいなと感じたことが
あったので、色と香以外のアプローチもあるとうれしいなと思いました。
た、外部から講師の方を呼んでいるので、ちょっと大変だとは思うのですが、例えばバレエなら、色・音・香を紹介して、その中で
も特に今回は色に特化してとか、今回は朝鮮舞踊についてやるけれども、色・音・香の中でも特に音楽についてなど、どれか焦点を絞っ
て授業して、各回の授業につながりを持たせると、さらに授業全体として理解が深まるのではないかと思いました。
(小林由)
最後にまとめをします。最初に講師による実演、楽器演奏、衣装試着など、私たち個人ではきっ
とできなかったであろう貴重な体験ができたことが挙げられます。
また、私は教育科学を学んでいるのですが、教育のことばかりやっているのではなくて、い
ろいろな視点を身に付けることができました。舞踊ということは私の日常生活にはあまり関係の
ないことかなと思っていたのですが、自分でちょっと舞台を見に行きたいなと思ったり、衣装が
すごくきれいだから、そういう展覧会とかがあったら行ってみたいなと思ったり、興味の幅が広
がりました。
また、舞踊の美しさや楽しさを感じることができました。これはいろいろな映像資料が豊富にあり、また先生も踊ってくださったので、
本当に目の前で人が踊っていると、その人の楽しさとか、その人がきれいだなと思える瞬間というものがあって、そういうものに触れられて、
私はとてもいい経験になりました。
また、授業の枠にとらわれない、舞踊全体に対して関心を持ったということですが、これは先ほども言いましたが、授業の時間だけで
はなくて、自分の専門だけではなくて、いろいろな分野に目を向けてみようと思ったり、自分で足を運んで何かを見に行こうと思ったり、
そういう気持ちを持つことができたということです。
最後に私たちからの提言ですが、ディスカッションの形態や時間の確保などを工夫していただけると、本物の人たちと触れ合って、よ
り学びが深まったのではないかということです。
以上で発表を終わります。ありがとうございました。
-7-
お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
色・音・香9「おいしさと色・音・香」受講生
小林 志野(文教育学部 人文科学科1年)
小林 加奈(文教育学部 人文科学科2年)
(小林志)
私たちは「おいしさと色・音・香」について発表させていただきます。
私が取った「おいしさと色・音・香」の授業では、
「おいしさの内容について」を村田先生が、
「おいしさの変遷について」を古瀬先生
と安成先生が講義を行われました。
この色・音・香の系列においては、
「宗教と色・音・香」も前期で取りました。しかし、その講義を受けていたときにも感じたのが、色・音・
香というテーマに縛られすぎているということでした。色・音・香というテーマに何とか結び付けようとしているのは分かりましたが、系列
のせいで講義内容が狭まっているように感じました。私の周りの友人や、私自身もそうでしたが、系列でまとめて講義を取ろうとしている
人はあまりいませんでした。それよりもコアを取ろうとすることに重点を置いていたように思います。
また、同系列5科目を取ることで、その系列を副専攻にできるということでしたが、その5科目で副専攻にできるということにも少し疑
問を感じました。現時点で、私は生活世界の安全保障の系列では3科目を既に取りましたが、あと2科目取るだけで自分の副専攻とも言
えるほどの知識が得られるかというと、答えはノーでしょう。また、私が取った3科目は、講義としてはそれぞれとても面白かったのですが、
その3科目の中につながりがあまり見られませんでした。そのため、こうした系列で5科目を取れば副専攻にすぐ認めるのではなく、その
系列を5科目以上取った人たちを系列ごとに集めて、自分の取った五つの講義に見られるつながりや違いなどを討論したりする場がある
と、自分のその系列の専門性を高めるという点においても有意義なものになるのではないかと感じました。
確かに文理の区別なく受けられる授業というものは、今まで文系の視点しか知らなかった自分にとっては、とても新鮮なものがあり、
面白く感じました。しかし、たまに文系の私には分からない計算や事柄、知識を前提に話されることがあり、そうしたときには文理融合
の難しさも感じました。
私が後期に受講した「おいしさと色・音・香」は、そうした文理の違いをあまり感じることなく受けることができ、最近注目されている
食品の安全についても知識を深めることができたのではないかと思います。また、古瀬先生と安成先生の「おいしさの変遷」も、普段の
歴史や授業ではあまり注目されることのない食というテーマがとても新鮮で面白く感じました。
(小林加)
「おいしさと色・音・香」は、おいしさについて、色や音、香といった要素を交えながら、文系・理系の両方の視点から考えることを目
指した授業です。授業では、村田先生が科学的な視点から、古瀬先生と安成先生が歴史的な視点から講義をしてくださいました。
現在、本大学では、文理の枠を超えた知識を学ぶために、文理融合リベラルアーツ科目が設置されています。
「おいしさと色・音・香」
もその一つです。リベラルアーツ科目には、文理にまたがるテーマが設けられており、この授業は「色・音・香」というテーマに沿って進
められていきます。ほかに「生命と環境」
「生活世界の安全保障」というテーマもあります。
しかしながら、実際にリベラルアーツ科目を受講してみて思うのは、一つのテーマに沿って授業を行うのは難しいこともあるということ
です。この授業に関して言うならば、色や音、香に絡めて、おいしさについて述べられたかというと、少し疑問に思えるときもありました。
また、リベラルアーツ科目は、一つのテーマの中で5科目以上履修すると副専攻と認定されますが、現在自分が3科目取っている時点で
考えてみますと、5科目以上で副専攻と言っていいのか、疑問です。同じテーマの中で複数の授業を受けてみても、つながりを感じられ
ないことも多いからです。
もちろん文理融合リベラルアーツ科目には、いい点もたくさんあります。特にこの授業では文系の先生と理系の先生の両方が担当してく
ださったので、一つの授業を受けることで文系・理系双方の視点から、おいしさについて考えることができたのがとてもよかったと思います。
私は人文科学科なので、実験とは縁が薄いのですが、村田先生の講義のときに味の素の方がいらして、簡単な実験をしていただいて、
とても印象的でした。また、授業最終日に行われるシンポジウムでは、普段は聞くことのできない理学部や生活科学部の学生の意見を聞
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くことができ、とても新鮮に感じました。
文理融合リベラルアーツには、先に述べたような欠点も確かにありますが、得るものも多いです。リベラルアーツ科目を受けることで視
野が広がり、何か一つの問題に向き合うときにさまざまな角度から考えることができるようになるからです。これはいろいろな問題が複
雑化する現代においては非常に重要なことだと思います。なので、文理融合リベラルアーツは、現代社会に非常に適したものだと思うので、
これからも発展させていってほしいなと思いました。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
生活世界の安全保障3「リスクの社会史」受講生
五十嵐 麻子(生活科学部 食物栄養学科1年)
生活科学部食物栄養学科1年の五十嵐麻子です。私がお話しするのは生活世界の安全保障3
「リスクの社会史」
についてです。キーワー
ドは、ずばり「リスク」だと私は思っています。違っていたら、先生に大変申し訳ないのですが、恐らく合っていると思います。
リスクということで、昨日「ここで何をお話しすればいいんだろう、リスクといってもな」と思っていましたら、日経新聞の一面の下に書
籍の広告欄があるのをご存じですか。あそこに、たまたまなのですが『リスクの正体! 賢いリスクとの付き合い方』というのがありまし
て、私が取っていた授業というのは、歴史からリスクを見るというものだったのですが、現代でも十分注目されている言葉なのだというこ
とをとても実感しました。こうやって今、社会についても考えて、そして歴史についても授業で学んで、それを今、こうやってリスクについ
ての考えに生かしているというのは、十分授業の効果が出ているのかなと、自分で自分を褒めてしまいました。
授業の形態は、新井由紀夫先生をトップに、6人の先生方による連続授業の後に、最後にミニシンポジウムとして、それまでの授業の
先生方が集まって、討論ではないのですが、ディベートですとか、意見の交換会というのを行いました。
テーマが、先生方によってそれぞれありまして、伝染病や飢饉、情報、火事や地震、旅、それからイスラム社会について、例えば奴隷
制や身分社会から見たリスクへの対応ということに対しての授業がありました。
授業の主題というのは、これはシラバスに書いてあったことなのですが、各社会、西洋や日本、イスラムの中世、近世史が抱えていた
リスクと、それらへの対応から、それぞれの社会の特質を理解するということでした。
そうだったのですが、特に最後のシンポジウムを通して、私たちが最後に得ようとしていたこと、そして学ぼうとしていたことというのは、
それぞれの社会だけではなくて、社会全体における普遍的なリスクの在り方、そしてその対応の仕方、とらえ方についての考察だったの
ではないかと考えています。これは主題がずれていたというのではなくて、先生方が初めに挙げていた、それぞれの社会への特質の理解
という、個々の社会から見たもの、つまり点ですね。それぞれの点の理解を最終的につなげて線にまでできたのではないか。つまり初め
に掲げていた目標よりもずっと高いものが出来上がったのではないかと思っています。
例えば単純に歴史を学ぶというのではなくて、情報の持つリスクというのはどういったものかとか、正義のとらえ方、それから最後には、
歴史から学ぶということは本当に有意義であるのかというところまで話は及びました。これは歴史という教養から現代社会を考える実学
につながるのではないかと、リベラルアーツの目的にも十分対応しているのではないかと私は考えています
とても有意義な授業だったと思うのですが、今後の授業に向けて少し提案をするのであれば、意見を出しやすい雰囲気というのになれ
ば、もっといいと思います。講義形式で、先生方は意見を促してくださるのですが、広い教室ですし、人数も多いので、意見を出すとい
うのはとても難しい状態でした。ただ、
会議室のように全員の顔が見える形での授業というのも実際難しいと思うので、
それはコメントシー
トなどでの対応で、ある意味十分だったのかなという気もします。
それからもう一つは、取り上げた歴史が、その後についてどう
なったのかと。この時代はこういうリスクがありました、こういう
対応を取りましたという話の後に、その対応によって、社会は良
くなったのかどうかとか、やはり民衆の対応にも限界があって、
結局駄目になってしまったとか、そういうその後の歴史というの
も少し掘り下げて聞きたいかなという気がしました。歴史をよく
知っている詳しい方だったら、それは要らないのかもしれないの
ですが、私のように歴史はあまり詳しくない、理系だからという
と逃げ道になってしまうのですが、そういう人間にも、もっと深
く考える提言をしていただけたらと思いました。ちょっと欲張り
な意見なのですが、そう思いました。
理系の私にも、そんなに難しい知識をどんどん取り入れていく
ということもなかったので、とても理解しやすく有意義な授業に
なったと思います。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
生活世界の安全保障 23「NPOインターンシップ」受講生
米澤 知佳(文教育学部 人間社会科学科2年)
「NPOインターンシップ」を実習しておりました、文教育学部人間社会科学科教育科学コース
2年の米澤です。
「NPOインターンシップ」は、ホームレスやまちづくり、環境、演劇、ワーキングマザー支援など6団体に私たち学生が半年間インター
ンをいたしました。そこで中間報告会や最終報告会などを経て、半年間の実習をしていました。私は「えこお」という団体にインターンし
たのですが、そこは1年生と2年生合わせて4人がインターンシップをしました。そのことについてお話しします。
インターン先の「えこお」に関してなのですが、2002 年に法人格を取得して、文京区に住ん
でいる地域住民が主体となって活動しています。私は半年間の実習期間で述べ 50 人近くの地
域住民の方とかかわりました。
活動趣旨としては、
「誰もが活き活きと生きていける街の仕組みづくり」ということで、障害の
ある人も子どもも大人も一緒に感動の場をつくったり、一緒に暮らしていけるまちをつくっていこ
うという活動をしていました。
実際、私が半年間の実習の中でどんなことをしたかというと、6月~ 12 月までの期間で約
78 時間の活動をしました。規定は 60 時間以上ということなのですが、私を含めてほかの3人
もみんなこの規定の時間をクリアして、中には 100 時間もやったという人もいました。
主な活動としては、筑波大学附属大塚特別支援学校と協力して、
「えこお」が協力して行って
いるサマーキャンプでの特別支援を必要とする子どもたちの見守りや各種イベントの手伝いをし
ました。トヨタのロビーコンサートや知的障害のある青年のための「日曜青年講座」というもの
に参加しました。
このように「えこお」の活動では、地域に学校があって、そこに通っている小中高校生、特別
支援の子どもたちも含めた高校生とかかわったり、トヨタは水道橋にあるのですが、地域に勤め
ている企業の人々とかかわることができました。
インターンシップを通して、社会活動と実際の大学での学びとのかかわりを考えてみました。
まず、インターンシップを行う前に前期に「NPO入門」という授業を取らなくてはいけませ
ん。そこでは座学が主なのですが、理論や制度、NPOの社会的意義などを学びます。そこでは、
最後には仮想NPOを自分たちで作って、NPOのビジョンやミッションというものを自分たちで
考えて、最後にはそれをレポートにまとめるという作業もしました。その考え方というものが実
際NPOでインターンシップするに当たって指標となりました。
また、私は教育科学コースなので、教育に関して専攻分野を持っています。そのために、座
学だけでは学べない実践から見る当事者の思い、NPOで活動している方の思いや原動力を感
じることを私は目標に置いていました。亀山先生などの研究者やNPOを実際に運営している実践者の両面からNPOというものを見るこ
とができたと思っています。実際にNPOを運営している方のご苦労を聞いたり、また、どういう思いでやっているかということも私たち
は知ることができました。
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個人的なことなのですが、NPOインターンシップの、私自身とのかかわりというものを考え
ました。これを書く前に、亀山先生がNPOインターンというのは、ただの企業のインターンと
は違って、自分の将来設計を考える一つの指標にしてほしいということだったので、では何なの
だろうと考えたのです。私は将来、教員を志望し、小学校の教員免許を今取っている最中なの
ですが、その中で地域の中で子どもたちが暮らしたり、地域の中で育まれるというのは何だろう
とか、特別支援を含みます多様な人々とかかわりあう、共生しあうというのは何だろうというこ
とを自分の中で疑問に思っていました。また、大学で教職課程など、教育の専攻分野など、近
い科目を取っていますが、知識だけではなく、実際に行動したり体験することで学べるものもあ
るのではないかと考えてインターンシップを行いました。
受講後は、教育や地域の現実問題、例えば特別支援が多くなってしまうのですが、そういう人たちが卒業したら、なかなか立ち向かう
のも難しいような問題というものも見えてきましたし、そういう方と接することについて、
「えこお」の人々からも、このように考えながら接
しているのだというような新しい視点も得ることができて、さらに自分の勉強している専攻を深めたいなと考えることができました。
NPOインターンシップの特徴とその課題というものを考えました。
まず、仲間の存在というものがあります。私は4人、1年生があと3名だったのですが、その
4名がとても仲良くインターンシップを行うことができましたので、自分たちが持っていた問題
意識や専攻について、
「将来どういうことをやりたいの?」ということまで語れるような関係にな
りました。
また、中間報告会や最終報告会で、ほかの団体の様子なども知ることができました。そこで、
ほかの団体は今こういうことをやっているのだなと、自主的に、自分から積極的にかかわって、
こういう活動をしているのだなということも知ることができました。しかし、それが2回ぐらいしかなかったので、4回ぐらいは他団体の
活動が分かるような機会、実際に顔を合わせるような機会などがあると、私たちの中でも、4人では解決できないような問題があったと
きに、ほかの団体はどのような苦労を乗り越えてきたのかなというのを聞けたのかなと思いました。
また、大学と学生とNPOの三つが、情報共有がどれくらいできているのかなということがありました。私たちの仲間の中で、実際に「し
んどい」とか「60 時間、無理だ」ということがあったのですが、そこは私たちは励ましあいながら、何とか終えることができたのですが、
もうちょっと少ない、一人という人もいたので、そういう子にとっては関係づくりというのが、大学との関係づくりやNPOとの関係づくりで
悩むことがあったのではないかと思いました。
また、きっかけとしてのインターンシップなのですが、取得後のかかわり方として、取得までは、まず義務感から、60 時間を何とか終
わらせなければという気持ちでやっているというように実際言っている子もいて、その子は 60 時間終わった後に「ああ、ほっとした」と
いうことで、やっと解放されて、これから自分の本当の気持ちからかかわれるような気がするということも話していたので、難しいのですが、
こなさなければという気持ちで行うのではなくて、これから、団体とのかかわり方というのも考えていきたいと思いました。
私としては、来年も「えこお」において、さらに自分の興味のある分野でかかわりあいながら関心を深めていきたいと考えています。
インターンシップなのですが、半年間終えて、実際に大学で学んだことを生かしたり、またさらに新たな視点を得たりして、とても有意
義なものになりました。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を受講して ―受講学生の意見―
質疑応答
司会:人間文化創成科学研究科 人間科学系 教授 小林 誠
小林誠 ここで今の学生の皆さんの発表について意見交換したいと思いますので、どなたでもいいので、ご自由に挙手をお願いします。
三浦
皆さんの発表は素晴らしくて、うれしくなりました。それから、こんな良い授業があるのだなということをあらためて思いました。
質問したいのは、テーマを掲げて授業を組むということについてで、一つのテーマで数科目あるというのも特徴ですし、一つ一
つの科目にテーマがあるというのも特徴なわけですね。それについてプラスマイナス両方の面が出ているという意見が出たと思
います。テーマにこだわりすぎていたというのと、テーマがあることで視野が広がったという二通りだと思うのですが、その点に
ついて、例えば最初の生命と環境の「地域と風土」の本井さんとか「人間の安全保障」の成田さんの場合は、あるいは最後の
NPO実習の米澤さんも同じなのですが、全体の系列テーマとの関係はどうだったのかということを伺えればと思いました。
本井
質問の内容をあまりかみ砕いていないのですが、授業の「地域と風土」
、地域研究というものが、リベラルアーツ全体の趣旨と
どうリンクするか?
三浦
生命と環境というテーマにどう関係するか。
本井
地域研究、それから地域を考えるということは、やはり生命、それから私たちの文化などを勉強することとも関係するので、そ
の意味では、生命と環境の中にはかかわるとは思いました。
ただ、ほかの発表の中でもあったのですが、私もこの授業だと、地域、風土、地域研究、それだけというものしか感じられなく
て、地域研究などを通して生命や環境などについても考えていくきっかけになるのかなとは思ったのですが、授業としては地域、
風土、地域研究限定的に進められていたなという感じがしました。以上です。
成田
私は今、人文科学科から2年生でグローバル文化学環に進学したいと考えているので、このリベラルアーツ「人間の安全保障」
の授業は特に関心があったので取りました。なので、私個人としては、生活世界の安全保障のシリーズだから受講するという意
識は全くなくて、別に「現代社会分析Ⅱ」という授業名でも構いませんでした。ただ、荒木先生は、グローバル文化学環の先生
でいらっしゃいますので。ただ、理系学部の生徒さんが取りやすいとか、リベラルアーツの科目として見ることで、受講しようか
と考えるきっかけにはなると思います。
それから、私はほかの「生活世界の安全保障」の授業科目は、前期の小林先生のものはシリーズなので取ってはいましたが、
国際問題を考えるという上では関連していましたが、そのシリーズを取ったからといって、やはり先ほどの意見にもありましたが、
副専攻になるだとか、そのようには考えません。以上です。
米澤
私も、リベラルアーツだかとか、副専攻になるからだとかという視点は全くなくてというか、今日知ったというか。すみません。
ただ単に、実習という性格もあるのですが、実際に自分で学んだことが現代社会ではどのような現状にあるか。そこで自分が知っ
て、それから生活世界の安全保障という、そんな大きな視点までは私は持っていけていなかったのですが、一番の目的は、た
だ単に私の興味を満たしたかったというのもあるのですが、そこから自分が学んだことを、これから社会の問題点や安全保障の
問題にどう結び付けて考えられるかという、そのきっかけとしてはとても意義のある授業だったのかなと思います。
熊谷
グローバル文化学環の熊谷です。最初の授業の担当者なのですが、
残念ながら、
最初の本井さんの報告を聞けなくて、
すみません。
今のやりとりなのですが、僕が思うに、LAの科目群ができる前から存在していた科目と、それからこれができて初めて作られ
た科目の2種類があって、私の科目は地域研究という前身があって、今年も地域研究として取っている学生が若干いるという状
況であったために、最上先生には申し訳ないのですが、
「生命と環境」という全体のコンセプトを、良くも悪くも、あまり意識し
ないで授業をやったというところがあったかなという気はします。それは多分、2番目「人間の安全保障」の科目は国際開発論
の科目を衣替えしたものだし、
「NPO入門」も前からあった授業ですよね。そういう形で、良くも悪くもスタイルが確立している
授業と、それからこれ向けに作られた授業の違いというのがあったという気がします。どっちがいいという話は簡単には言えな
いと思いますが。
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小林誠 では、ほかに何かご意見か、ご質問をどうぞ。
村田
食物栄養学科の村田と申します。私もちょっと遅れて最初聞けなかったのですが、2年生と1年生、多分両方発表されたと思う
のですが、1年生は最初からリベラルアーツということで受けられたと思うのですが、2年生の場合には去年の、今までの普通
のコア科目というスタンスで聞いている科目と新設の科目と両方受けられていると思いますので、その辺で、今年は何かすごく
変わったなとか、やはり同じだなとか、その辺の感想があれば。2年生の方にお伺いしてみたいのですが。
小林誠 2年生の方で答えられる人いませんか。
鈴木美 文教育学部人間社会科学科の鈴木です。私たちの世代は、ちょうど前の学年の3年生でコアクラスターが終わってしまって、2
年生は取れないと言われて、下の学年からリベラルアーツが始まったという、ちょうどくぼみの世代だったのですよ。なので、1
年生のときには基礎講義として科目を取っていたので、どうなのでしょう。履修登録するときにも、リベラルアーツとしてではなく、
私は芸術Ⅰという名前を取ったので、そこまでリベラルアーツは意識していなかったというのが正直なところですね。多分プログ
ラムの始まったタイミングなどもあったかもしれませんが。
あとは、私の場合ですが、1年生のときに基礎講義をほとんど単位として取ってしまったので、2年生のときには、この「舞踊に
おける色・音・香」は興味があるなと思って取った単位だったので、自分の興味としてリベラルアーツがあるということは、意義
があるかなと思います。科目名やシラバスを読む限り、とても面白そうな授業が多かったり、参加体験の授業が多いので、別に
単位が終わった後でも、
「ちょっとこれ取ってみようかな」という興味引かれるものが多かったです。
小林誠 ほかに質問や意見のある方。
荒井
皆さん、楽しい発表をありがとうございました。教務チームの荒井と申します。
質問としては、皆さんがその科目を取るきっかけになったのは何なのかということです。例えばシラバスを見たとか、開講科目を
見たとか、そういった履修を決めたきっかけとなった材料を教えてください。
小林誠 きっかけになった情報をどこから得たか、ということですが、どんどん一言ずつ。
学生A リベラルアーツの存在は、前期が始まる一番最初に配られた時間割で知りました。授業自体は、時間割を見て決めたというのが
正直なところです。
学生B 私は、去年入学した1年生なのですが、入学してすぐに、パンフレットといえばいいのでしょうか、リベラルアーツの案内を頂き
まして、それで教員の方々との説明を同時にいただきながら、いろいろとリベラルアーツについて教えていただきました。
学生C 同じく私も1年生なのですが、入学当時に頂いた、やはりリベラルアーツ専用の冊子といいますか、パンフレットで知って、そこ
から選びました。
鈴木香 私も1年生なのですが、最初から解剖の授業をひたすら探していたので、見つけたのが、たまたまリベラルアーツでした。
李
同じクラスの鈴木さんが、この授業を取って、一緒に取りました。
学生D 私は1年生なのですが、時間割が空いていて、そこに何か入れようかなと思って、それで探して、またシラバスを見て、内容が面
白そうだったので選びました。
学生E 私も自分が本当に取らなければいけない教職とか学科共通だけ取った後に余ったコマを埋める感じで入れました。
学生F 私は、色・音・香で舞踊とおいしさと宗教を取っていますが、それは色と香を意識したのではなくて、興味があったとか、
「おい
しさと色・音・香」では何か食べられるのかなという期待から取っています。
何で見たかというと、入学してすぐのときにパンフレットを頂いて、すごく丁寧に説明されていたので、知ったのはそこですが、
実は説明はよく分からなかったです。実は友達の間で「リベラルアーツって何なんだろうね」というのは結構言っていました。
学生G 私は、4月に成績をもらうときに、そこにチラシが入っていたので、2年生は授業を少なくするから頑張ろうと思ってやりました。
あと、ホームページにも載っていたような気がします。それで家でもう1回調べ直したりはしました。
学生H 私も、まず成績をもらうときに一緒にもらう時間割やシラバスの内容を読んで面白そうだなと思って、あとは自分の専攻や教職
で取らなければいけない科目と相談して舞踊のリベラルアーツ科目を取りました。あと、ホームページのシラバスは冊子のより詳
しく内容が書かれてあるので、それも参考にしました。
学生I 私は、入学式のときにもらったリベラルアーツのパンフレットを見て、リベラルアーツのことは知ってはいたのですが、正直ちょっ
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とよく分からなくて、面倒くさいなという意識があったので、先に普通のコアの方を取って、空いた時間を、時間割を見ていたら、
興味がある内容があるから取ったという形でした。系列などは全く意識しないで、興味のあるものだけを取った形です。
小林誠 あと、教員の人ではなくて学生で、ぜひ言っておきたいことがあれば。
学生J ホームページ、
インターネットのシラバスなのですが、
移行期間なので仕方がないことかと思いますが、
例えば「舞踊における色・音・
香」だったら、リベラルアーツでも出てくるし、芸術Ⅱでも出てくるしで、同じ授業なのか違う授業なのかが分かりにくいときがあっ
たりしたので。あと、大学院の科目も混ざっているので、ホームページの履修登録はすごく便利なのですが、もう少し改善してい
ただきたいと思います。
小林誠 ありがとうございました。ほかにありませんか。
三浦
第2部は学生の人が全員残れるか分からないので、お答えしておきたいことが二つあります。
一つは、このリベラルアーツの科目というのは、既に出ていますが、基礎講義という科目から衣替えをしたというものと新しく作っ
たもの、2種類あります。衣替えをしたのは、継続して上級生にも取れるようにということもありました。指摘されたように、前
の基礎講義というのは、ディシプリンオリエンテッド、○○学と付いていますよね。だからディシプリンを主にしてやっていくと
いうのが旧来の基礎講義なのです。今回のリベラルアーツの方は、サブジェクトオリエンテッドと呼んでいるのですが、テーマに
導かれてやっていくというように発想を変えています。両方が共存していますので、中途半端であるという問題が出てきていると
思うのですが、サブジェクトオリエンテッドの場合も、サブジェクトからはみ出してはいけないということはないのです。オリエ
ンテッドは、それに導かれて広がっていくというのがリベラルアーツの狙いなので、話を聞いて、教員も学生もサブジェクトをや
ることで深めていくけれども、そこからさらに広がっていくという授業にしていけばいいのではないかなと思って聞いておりまし
た。
二つ目は、5科目で副専攻というのはちょっと安易ではないかということで、そういう厳しい意見が出るのはとてもうれしいので
すが、副専攻とは呼んでいません。系列履修の証明を出しますと。ですから皆さんの場合、例えば食物栄養学科なら食物が主
で、それを 60 単位とか取らなければいけないわけで、それに比べて 10 単位で副専攻といったら、それはた易いと思いますの
で、副専攻とはさすがに言っていません。皆さんがこういうテーマについて学びましたということが印に残って、その後自分の活
動に、就職のときもありましょうし、ほかのときにも生かせればということで証明を出すというように作っています。ただ、さら
に5科目取った人でディスカッションか何かをやったらさらに深まるだろうというのは、とても良い提案をいただいたと思います。
最後、基礎講義と文理融合リベラルアーツでどう変わったかと。
「リスクの社会史」というのは、実は私も参加していまして、こ
れは以前から、基礎講義ではないのですが、やっていたものを、今回「リスクの社会史」ということで、文理融合リベラルアー
ツの中に組み入れました。変わったなと自分でも思いましたのは、リスクということについてかなり考えざるを得なくなって、先
ほど五十嵐さんが最後のパネルディスカッションで、リスクというのは悪いものだと思ってきたけれども、リスクというのは常に
あるもので、その上でどうしたらいいのかという、リスクがあるから平和や安全も考えられるという、ひとつのスパイスのように
考えたらどうかという意見をディスカッションのときに言ってくれて、なるほどと思ったのです。ですから教員の方も、そのように
皆さんの意見を聞くことで発見があるというようになっていけばいいなと思っています。
小林誠 はい、どうもありがとうございます。では、ここで第1部を終わりたいと思います。とても面白い議論ができたと思います。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を担当して
―担当教員によるパネル討議―
おいしさと色・音・香(「色・音・香」系列から)
パネラー 村田 容常(人間文化創成科学研究科 自然・応用科学系教授)
はい。食物栄養学科の村田です。今の学生の立派なお話には感心しましたが、私は、今日は
修士の発表と重なっていたので、最初は出られなかったのですが、後はなるべくいたいと思いま
す。
簡単に「おいしさと色・音・香」の説明をしたいと思います。先ほどだいぶ耳の痛い話をされて、
そうだなと思って聞いていましたが、最初にシラバスに書いてある主題と目標についてお話しま
す。内容は「おいしさのサイエンスとカルチャー」と書いてありますが、食べ物のおいしさには
いろいろな要素があります。人間がおいしいと感じるのは、基本的には生物学的要素があるの
ですが、それ以外に歴史、文化、社会的な要素も大きいということで、ですからここには理系と文系が嫌でも入ってくるということで、お
いしさを切り口に、食品科学を中心とした自然科学的な側面、それから歴史学を中心とした人文科学的な側面を学んで、おいしさとは何
かを総合的に考えてみたいという授業です。
私自身、生活科学部にいるもので、一般教育というか、リベラルアーツにはあまりかかわっていなかったのですが、今回、たくさんの
文系の学生とも一緒に授業ができて、個人的には非常に楽しかったと思っております。
担当者なのですが、最初が私で、2番目が歴史の古瀬先生、そして安成先生という、この3
人でやっております。
ここに書いてあるのは何が書いてあるかというと、専門と、それからホームページにそれぞれ
書いてある、教員の説明書きです。私は食品の加工貯蔵学ということで、主に変色の研究をし
ているのですが、自然科学的に研究しています。
古瀬先生は、私もこの授業をやるまではお付き合いがなかったので、HPで初めて見たところ、
日本古代史を研究なさっていて、
「古代は現代からみると、天皇が即位するときにも、高天原以
来の神話に則った儀式が行われるように」などと書いてあり、古代史をなさっている方が食物を
語ってくれるということです。
それから安成先生は、同じ歴史なのですが、フランスの近世史とあります。フランス近世の国制史を専門に研究しているということで、
中でも当時の官僚制、特に地方長官という官僚集団について関心を持っているそうです。食物とどこが関係があるのだろうという感じを
受けますが、やはりおいしさという視点から語ってもらうということです。出られないときもあったのですが、全回通して出ようとして、古
瀬先生の授業も安成先生の授業も聞かせていただきました。私自身は大変勉強になって、学生は分かりませんが、私は楽しかったと思っ
ております。
それで、今、試験の採点をしているので、どれぐらいの人が受講して、どうなっているかとい
う学年別・学科別の分布をました。
「へえ」と思って面白かったのですが、1年生、2年生、3
年生、4年生と分けてあって、あと学科別ですね。一番上が文教育学部ですか。人文科学科、
言語文化学科とあります。その下が理学部で、数学、物理、化学とあって、下が食物栄養、人間・
環境、生活科学部と3学部それぞれに分かれています。これを見てお分かりのように、この授
業はたくさんの人が取っているのです。一番左下に総受講者数が書いてあります。166 人履修
届をして、試験を受けたのが 128 人。一人二人計算が間違っているかもしれませんが、こんな
感じで8割ぐらいの人が試験を受けたのですが、要するに結構な人数です。百数十人の人が授
業を聞いていましたので、先ほど幾つかご紹介があったような、あまり細かいことは残念ながらできなかったので、それはお許し願うとして、
内容を見ていたら、すごく面白かったのですが、例えば 22 分の 22 というのは、22 人登録して、試験を 22 人受けたということで、1年
生は人文科学科は 22 人も受けていて、全員試験を受けたと。これは素晴らしいのです。言語文化学科が 13 人で9人ということで、文教
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育学部全体でいうと、43 人登録して 36 人受けているということです。
こんな感じになって、私が驚いたのは2年生です。2年生は、先ほどもありましたが、31 人登録して 27 人受けているのですね、文教
育学部の方は。3年生も9人も試験を受けているわけで、4年生は、卒業のために最後しょうがないから取っている人だと思うのですが、
1年生はもちろん多いにしても、2年生、3年生が結構取っているのです。これが文教育学部の特徴です。
それから同じ生活科学部でも文系の学科、人間生活学科があるのですが、こちらは、1年生は多分何か時間割が重なっているのか、取っ
ていませんが、2年生、3年生はぽつぽつ取っていました。
それに対して、いわゆる理系学科というのは極端に違うので私もびっくりしました。理学部数学科の方は全部合わせてゼロ、物理学科
の方は1年生は結構取っていて、2年生もちょっと取っているので違うのですが、その他の学科を見ると、化学科の方は、1年生の方は
結構取っていますが、2年生はゼロ。生物学科も2年生はゼロ、情報もゼロ。こういう感じです。生活科学部の理系は二つなのですが、
食物の人は私がいるから義理で取ってくれているのでしょうが、それは別にしても人間・環境の方もやはり2年生はゼロということでした。
文教育学部の方は、先ほどの発表を聞いていても、リベラルアーツというのですかね、大学で広く学ぼうという意識があるのですかね、ずっ
とこういうものを取っていこうという意識があるのですが、それに対して理系の方は、専門を考えて、それ以上はやっていられない、1年
のときになるべく取ってしまおうという感じが表れている。これは 100 人ぐらいのデータですので、分かりませんが、そういうことが言え
るのではないかという感じがしますので、これは多分そうなのかなと思って、
「へえ」と思ったのが、まず一つあります
それから構成を見てお分かりのとおり、全体的に、1年生で見れば、半分理系で半分文系ということで、理系の方も文系の方も結構聞
いていた。2年生以降になると文系の方が多かったので、
トータルとしては多いという、
そういう受講生になろうかと思います。先ほどちょっ
と数式が何とかとおっしゃっていたと思うのですが、私の使う数式は非常に易しいので、高校レベルの数式しか出てこなかったと思います。
3人でやっているので、授業の構成なのですが、自然系というのは、要するに私が6回やって、
人文系で古瀬先生と安成先生が6回やっている。ちゃんと 12 回サボらないでやって、総合討
論をして、最後に試験もあったということです。
私の授業はどういう授業かというと、基本的には板書しかしませんので、板書による授業です。
ほぼ板書で、毎回適当に当てて聞きながら、最後に感想を全員に書いてもらって、次回の授業
にそれを多少使って授業をしていくということです。
先ほど学生が言っていましたが、1回だけ味の素の方に話をしてもらいました。私の大学院の
授業で味の素の人に来てもらったときに
「来年学部の講義でこんな講義をやるんだよ。
困っちゃっ
たね」なんて話していたら、
「そのような内容なら、1回ぐらいやってもいいですよ」というのでやってもらったのです。これも本当は少人
数だと、もっとずっと面白いことができたのですが、いかんせん百何十人もいるので、うちの研究室の学生総出で、皆さんにお味噌汁と
かを飲んでもらいましたよね。味を試した。これは多分皆さん驚いたのではないかと思いますが、
「味ってこんなに違うんだ」とか、あっ
たと思います。味の素の方は、会社勤務の人ですから、パワーポイントを使ってやったというのが面白かったのではないかと思います。
それから人文系の方が、
古瀬先生が3回、
安成先生が3回。これは聞いてみて、
私の授業とは随分違いました。私、
個人的に、
ファカルティ
ディベロップメントというのですかね、授業のやり方を少し考えたのですが、こんなにも違うのかというぐらい違いました。古瀬先生も安
成先生もプリントをお使いになっていますが、私などはほとんど何も配りません。1枚ぐらい配りましたかね。板書だけですが、学生に対
するサービスが違います。山のような資料を持ってきて、自分で勉強せいと。昔の大学というのは、私も、もしかしたらそんな授業を受
けたなという気がしまして、
「ああそうだったなあ」
とか思いました。特に安成先生は膨大なプリントを毎回使われて、
すべては説明しないで、
終わらなかったですね。でも、それが学生にとっては、後で「良い」という評価が非常に多かったですよね。後で自分が勉強するのに役
に立つという。私などは勉強しないで捨ててしまうのですが、そうでない学生がいっぱいいると
いうのは、
お茶大の良いところだなと思いました。それからビデオなども使ってやっていますので、
非常に楽しい授業でしたね。古瀬先生は、その中間ぐらいですかね。でも、やはり資料は多かっ
たですね。
私は、こんな話をしました。
「ヒトはなぜ食べるのか」
、生物学の話ですね。でも食べるのは、
実際に人間の場合には、そのまま生で食べませんので、大体調理しますので、なぜ調理するの
でしょうと。実際には生物学的な意味があるので、調理と栄養という話をしたり。あとは私も化
学ですから、
「おいしさの化学」
「食品の色と香(食品化学)
」
。それから、先ほどの味の素の官
能検査の話があって、あとは、1年生が主だと思ったので、私はお酒も研究しているものですか
ら、
「酔っ払わないために」ということで、ちょっとお酒の話をしました。
これはプリントは配りませんでしたが、化学式をぐちゃぐちゃと書いて、こんなものが入って
いて、実際には色なのですが、色や香にかかわっていて、いわゆる食品学的なことにみんな関わっ
ているのだよというのがイメージとして、
多少分かればいいかなと思って話しました。
「何か分かっ
たでしょう?」などと無理やり強要していますが、代謝とか必須成分、健康とか安全。お酒の話
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と味の素の話で両方安全性が出てきて、ちょっと面白かったのですが、そういう内容の話です。
これは素材の話なのですが、おコメを食べるとは言いませんよね。われわれはご飯を食べる
のですよね。これは人間がやるわけです。
これはパン、うどんですが、これはコムギからできるわけで、これもやはり、これを食ってい
るわけではなくて、ちゃんとこういうものにしないと食べられない。
これはイモですが、イモもやはり危ないという話を確かしましたよね。イモというのは危ない
ものなのです。コメやコムギは普通は危なくない、加工や調理をしないと栄養にならないだけで
すが、こういうことをして栄養にしますが、イモは基本的に危ないので、危ないものをいろいろ
工夫して食っている。
マメもそうですね。マメもそのままでは食べられない。これは大豆についた根粒細菌で、微
生物学ですが、このように生物から化学、食品学に移っていくという過程をお話ししたと思います。
これは「一気飲みはダメ」よと。これは色と香とはあまり関係ないのですが、アルコールはや
はり香ですし、お酒の色もいろいろありますよね。これはうちの学生とみんなでキムチ鍋を食べ
ながらビールを飲んでいるところなのですが、1年生は飲んではいけないのだよという法律の話
をまずして、それからアルコールの話をして、これは私は詳しいのですが、醸造学の話をして、
あとは、こんな簡単な計算なのですが、血中アルコール濃度の計算をして、
「これくらい飲むと、
これくらいになるから、酔っ払ってしまうから、こんなに飲んでは駄目だよ」という話をしたと
思うのです。そんな話をして、私がお酒が好きだというのだけは分かってもらったのではないか
と思います。
これは古瀬先生の授業なのです。芋粥の話とか出てきまして、
「日本古代の宴会と身分」
。化
学式からこういう授業に突然変わるわけで、これは私もびっくりしましたが、私もこんなのを見
たのは、それこそ高校生以来ぐらいですかね。
「利仁将軍若時従京敦賀将行五位語第十七」
、
これを授業でやるのです。同じ食物の話でもこんなに違うのかというぐらいで、
「今は昔、利仁
の将軍という人ありけり。若かりしときはと申しける」と、こんなのを読むわけです。私も本当
に面白かった。面白いというか、30 年ぶりぐらいでこんなのを見ましたが、これは芋粥の話で、
芋粥というのは、この時代、非常においしくて、それが題材になって、こういうお話までできた。
12 世紀にこんなお話があったと。これは実際には、この時代のアマヅラとかいうものを入れて、
そのアマヅラを食べたいのだということを、これは芥川龍之介の有名な小説になっているということで、
『芋粥』というのがありますよね。
あれのもとなのですが、そのお話をされて、日本の古代の食文化のお話をされたということです。
これは天皇の食事なのですが、資料はもっといっぱいありました。天皇の食事というのは奈
良時代にあって、
このころの日本の食事というのは中華料理みたいなものだったそうです。今だっ
たら公式な料理はフランス料理というのと同じです。要するに大陸風の食べ物なので、中華料
理みたいに食べていたらしいのですが、それがだんだん工夫してきて今の日本の食事になってく
るのですが、それが 15 ~ 16 世紀というのです。室町時代ですよね。だしとか醤油があります。
ということは伝統というのはそんなに古くないという話を、これは古瀬先生も安成先生もされて
いて、
「へえ」と思って、面白かったですね。私は、だしとか醤油は研究材料ですので、今のし
か知らないのですが、そうかなと思いました。
安成先生は、今度はヨーロッパにおけるおいしさの歴史のことをお話ししてくださって、最初
に古代から近世初期の食文化、それから近世の宮廷料理の話、これはフランス料理の話をされ
ました。それから革命後どうなったかと。
安成先生の話を聞いていて私自身が面白かったのは、食べ物の話なのですが、基本的には、
歴史の社会学みたいなことをなさっているわけですよね。社会、法制史など。私などは食物科
学ですから、食べ物は食べ物の中でおいしさというものは作られてくるのだと思うのですが、
、
視点が全然違いまして、すべて社会的な状況、文化的な状況が変わるときに食物も変わってく
るという話をされていました。なるほどなと思いました。現代の社会も同じことで、現代の社会
を映した食品をわれわれは食べている、開発しているということだと思うのですが、そういうのが分かって、面白かったですね。
この辺は私でも知っている有名な話ですが、コーヒーとか紅茶とかココアは、もちろんヨーロッパの伝統的な飲み物ではありません。
これは当然中南米をヨーロッパ人が征服してから初めて始まった食べ物です。
これは安成先生の膨大なプリントのごく一部を取ってきたのですが、どこかの1ページに、こういう文献資料がぶわっとありましたが、
- 18 -
これを読む人がいるのですかね。学生は興味があれば読みますよということでした。すごいです
よね。そういう説明をしておりました。ルイ 14 世の時代のちょっと前ぐらいに今のフランス料理
ができたのだとか、あと、面白かったのは宮廷料理人ヴァテルのビデオを見せてくれまして、あ
んなのを見だしてしまうと、ずっと1時間ビデオを見ていた方がいいかなという感じで見ていまし
たが、食文化という感じの話で、私自身は非常に面白かったです。
総合討論のときに、いろいろな感想を言ってもらって、面白かったのは、
「今の食事を未来の
人はどう思うだろうか」ということを言った学生がいて、なるほどなと思いました。そのときに、
いろいろ過去と現代の共通性とか違う点、社会性という話が出ましたし、あとは美食と節食とい
うのですかね、今は非常に健康志向ですが、それだけでも、もちろんうまくいかないわけですね。
それから安成先生が面白いことを言いました。質問に答えるときに、
「歴史は未来を語らない」
と言っていました。歴史は将来の話を語ってはいけないのだそうで、三浦先生とは意見が合わ
ないと言っていましたが(笑)
、そんな話をされていました。
それから、これも私、個人的には面白かったのは、
「日本料理においしさを感じられない」と
いうことを言う学生がいました。私は官能検査の話をしましたが、大体「日本料理とは何?」と
いう話を安成先生はしていましたし、おいしさには食経験が大変大きな影響を与えます。それ
からもう一つは生理的な問題もあります。
それから一応、色とか話しましたので、
「おいしさは味だと思っていたが、見た目も重要だ」ということを言った方がいて、それはそう
なのです。見た目というのは結構重要なのです。見てくれというのは実は大切で、見てくれが悪いと、おいしい食品も消費者は買わない
のです。なぜか分かりませんが、買わないのですよ。見てくれ、色も大事だということです。
それから「食の基本を知らないことがわかった」
。これは多分文系の学生が言ってくださったことで、一応最初に自然科学的な話と安
全の話をしてよかったと思いました。
それから食物の学生がいて、笑ってしまったのですが、
「普段分子レベルの話しか聞かないけれども、食は文化だと思った」と言って、
食品の話は最近つまらなくなってきたのですかね、
「つまらない、
つまらない」と言っていましたが、
今回の授業は面白かったと言ってくださっ
た方がいて、そういう意味では文理融合は、私は個人的には非常によかったのではないかと思いました。
あと
「資料が多いのは面白かった」
。私は先ほど悪口みたいに言いましたが、
あれはやはり学生にとっては結構いいらしくて、
評判はよかっ
たですよね。ああいう資料がばっとあると、後でまじめな学生は見るのだそうで、見たときに、授業とは全然違うものがちゃんと書いてあっ
て、自分が勉強する刺激になるというのは非常にいいことですね。私も今後どうしようかなとちょっと思ったのですが、ちょっとこれはま
ねできないなと思いました。学んだこととしては、これはいいのだなというのはよく分かりました。
最後に、試験です。文理融合ですから、試験は2題出すのですが、全然違って、右はまとも
な大学生の試験なのですが、左は中学生みたいな試験で、私は左のこういう○×試験です。例
えば一番上なのですが、
「ヒトは従属栄養生物である」
、こんな簡単な問題に○か×かというの
を書くのですが、さすがに分かりますよね。今回は持ち込みだったのですが、これでも持ち込み
でないと半分ぐらい間違えるのです。従属栄養生物を知らないとか。
「化学エネルギーは、植
物から動物に移る」
。要するに食べ物の話をしているのですが、授業でやっていますから、これ
はできるのですが、半分以上×という人もいるのです。これが食品の基本の話です。
右側は本当に文科系の方の、上は古瀬先生で、下が安成先生ですかね。上は芋粥などの話
を聞いて、内容を説明するとともに、
「現代の食生活・食文化に受け継がれている面と受け継がれなかった面について論じなさい」と。こ
ういうのも、いろいろ面白そうなことが書けますよね。
それから下の方は安成先生で、この絵を見て「食文化の特徴、その変化、あるいは『おいしさ』という概念の変容について」
、この図
を読み明かしなさいという、非常に大学らしい頭を使う問題ということです。私は今回、ちょっと手を抜いたのですが、感想を書かせると、
文科系の学生というのはすごく面白いことを書きますよね。生活科学部で学部共通の授業というのがあって、そうすると文科系の学生が
半分ぐらい受けるので、
それは論述試験をやるのですが、
そうすると
「へえ」という答案を書いてきて面白いのです。今回は私のはこういう、
極めて、こんな問題を見せてはいけないというぐらい易しい問題でした。
ということで、個人的には文理融合で非常によかったのですが、学生からすると多少易しかったのですかね。理系の話は目いっぱい易
しくしゃべりましたし、文系の方も、理系の学生でも分かるようにしゃべってくださっていたような気がするので、私自身としては、そこそ
こ目的は果たせたかなと思います。あと2年後にまたやるのですが、多少気が重たいのですが、少しは進歩させていきたいと思っており
ます。
- 19 -
お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を担当して
―担当教員によるパネル討議―
基礎生命科学[実習]
(「生命と環境」系列から)
パネラー 仲矢 史雄
(リーダーシップ養成教育研究センター・講師)
和田 祐子(理学部 生物学科)
(仲矢)この実習のもくろみは、
まず第1に、
体験を通じて知識を自分のものにすると。その結果、
「複眼的視野の導入」
「知的好奇心を育む」ということが、ねらいになっています。
体験を通じた知識の理解といって、何を体験するかというのは、生命現象のリアルタイム、
まさに今生きているのだ、生きているものはこういうことなのだということを見てもらうというこ
とをやりました。
まず細胞。細胞は動くのだということ。そして脳。脳の中に、単なる情報が伝わっていく、
蓄積されているということではなくて、そこで電気がどのように働いているのか。それが見た目で分かるように実験していく。そして、こ
れは大塚のキャンパスを離れて、
館山の臨海実験所で行う実習ですが、
卵が受精されて、
実際に非常に単純な形から複雑な稚ウニに変わっ
ていく過程を見ていく。そしてその次に環境。環境問題はたくさん論じられていますが、海にどのような、どれだけたくさんの生き物が
いるのかということを実際に体験してもらう。そしてその結果、知識の引き出しを増やしてもらうということを目的にしています。
ちょっと話は変わりますが、今、教養教育に求められるものはどういうものがあるかということを高校の先生に聞いた資料ですと、まず
教養・共通科目は非常に重要視しているということがあります。
では実際にどのようなことに対して重要であると高校の先生たちは思っているかというと、歴史や国際関係というものに次いで、環境
や生物学というものが重視されているというデータが上がってきています。また、今回重視しました実験・体験型教育というものに対して
も、特色GPで東北大学や慶応義塾大学がこれ自体を、文系の人たちに物理や化学、生物学の実習を重視したテーマで特色GPが採択
されているという状況にあります。
(和田)授業の概要について説明していきたいと思います。先ほど履修した学生からも話があっ
たので、一部ダブってしまうかもしれないのですが、まず大塚のキャンパスで顕微鏡の使い方。
これは後々、館山の方に臨海実習に行ったときに使うことになるので、ここでまず基礎を学んで
もらって、顕微鏡の使い方も知ってもらおうという授業がありました。その後、カエルの解剖、
それから神経科学。そして、お茶大が館山に湾岸生物教育研究センターというのを持っている
のですが、二泊三日でそこで合宿実習という形で発生学と生物多様性を学びます。
このような募集チラシを作りまして、いろいろなところに貼って学生を募りました。
まず、基本的な顕微鏡の操作を学んでもらおうということで、植物細胞と動物細胞について
観察しました。植物細胞としてはタマネギの表皮を見ました。動物細胞としてはゾウリムシの遊
泳行動を見ました。ゾウリムシは、先ほど学生も「かわいい」と報告していましたが、このよう
に泳ぎます。薬品を加えますと、このように泳ぎ方が変わります。単なるスケッチですと、そう
いう泳ぎ方の変化をうまく表すことができませんので、そういうところは言葉で補って説明して
もらうということで、各自スケッチしてもらいました。
- 20 -
次にカエルの解剖を行いました。これはウシガエルという食用ガエルなのですが、それを二
人一組で解剖してもらいました。
これも実習風景のビデオがあります。
こんな感じで、みんな楽しんで解剖していました。
その後、今度は生体電気現象を観察するには、ま
ず機械に慣れるということで、オシロスコープの使い
方を学ぶために、各自、自分たちの心電位や筋電位
などを測定しました。
最後に大塚キャンパスの締めくくりとして、カエルか
ら神経を各自取り出してもらい、その活動電位を測定するということを行いました。
そのほかに合宿実習。前期は8月、後期の方は3月
になるのですが、館山に出かけていって、二泊三日で実習を行います。やることというのは、ま
ずウニの受精で、ウニから卵と精子を取ってきて、各自テーブルの上で自分の手によって人工授
精をさせます。その後、発生を時間を追って顕微鏡で観察し、最終的には、このような稚ウニ
になるところまで見ることができるという実習です。
そのほかに館山の湾岸教育研修センターでは、合
宿ならではの夜間採集ですとか磯採集。これは8月の
実習のときは潮の関係で早朝に行ったのですが、そう
いう早朝の海や夜の海に出かけていくというような、
普段大塚キャンパスではできないような体験をしました。
基本的に磯に出まして生物を採集し、センターに
戻ってきた後、その採集した生物の同定作業というも
のを行います。夜間採集の方ではウミホタルをわなを
仕掛けて採集したり、あとは懐中電灯で海を照らして明かりに集まってくる生物を採集するとい
うようなことを行いました。
館山では8月のときには、分類学をやっている先生方を招待しまして特別講義を行ってもらい
ました。刺胞動物、軟体動物、節足動物について特別講義をしていただきました。
(仲矢)受講者の構成を今から説明していきたいと思います。
この授業は年4回実施されて、前期の木曜日の受講者が一番多かったです。
構成はどのようなものだったかというと、生物学科の学生が半数以上。あと物理学科、人間社会科学科というような構成で、理系の
学生4分の3強、あとは文系の学生が4分の1弱というような構成になっています。1年生の参加が過半数でした。
そして受講生の声です。
このように文系の学生の場合、高校へ入学した段階で、理数が苦手ではなくて、割と英語、
国語もできるという学生の場合、自動的に国立文系の方に進学が割り振られてしまうケースがあ
ると。それで、どうしても高校のときに勉強できなかった理系科目を勉強したいという学生が結
構いるのだということが、ほかの受講者の声からも挙がってきていました。
受講してよかった点は「カエルに実際にさわれたこと」
。
あと、この学生の意見としては、そういう関係で数学の授業なども高校で受けられる授業と
いうのも限定されてしまったので、この授業に限らず、リベラルアーツの授業で、高校の2年生、
- 21 -
3年生でどういうことを一般的に学んでいたのかということをベースにして説明していただけると
うれしいというような意見がありました。
この授業の趣旨である、体験重視について、そこを評価してくださいました。ただの講義な
ら本を読めばいいのだけれども、実際にやるということが重要だと思っていたと。センター入試
のために学んだことがさらに実習で身に付いたということを言っていました。
受講者の声、三つ目ですが、良くも悪くも少人数だから受けた。
あと、これは私たち教員の方からしてみると意外な部分だったのですが、実習なので講義よ
りも取りやすいと。これは学生が授業の途中に、説明を聞きたいときに先生に聞くことができ
るというところが、この意見になったのかなと感じました。
あと、
「もっと解剖を増やしてほしい」という意見がありました。
臨海実習の体験に関してはどのような感想があったかというと、顕微鏡の中で一つの受精卵
が姿を変えて稚ウニになることに感動したと。磯採集に行って、実際、思った以上に生き物が
たくさんいて、今まで行ったことはあったのだけれども、ただ単に気が付かなかっただけなのだ
なということがよく分かったと。非常に驚きで新鮮な体験が多かった3日間だったと。
特別講義なのですが、目からうろこで非常に面白かった、私自身も非常に面白かったのですが。
話をする先生の目がきらきらしていて、私も何か追求できるものを見つければ、それにとこと
ん打ち込んでみたいという意見を学生が言ってくれました。研究者という生き物のリアル体験を
してもらったのかなと思っています。
TAの声としては、私たち教員側としても非常に等しく思うところなのですが、バックグラウン
ドが違う学生には接し方が違うのだということを実感したと。
答えの出し方も、単に正確に答えるだけではなくて、相手がどれくらいのことを求めているのか、
分かる必要がある。
また、
非専門家の学生から質問されることによって、
何が分かっていて、
分かっ
ていないのかというのが逆によく分かったというような声が上がりました。
今後に向けてどのように考えているかというと、アンケート等からも、体験重視の授業は非常
に満足が高かったと思います。
課題としては、実際、学生の理解レベルがどうであるのか。内容が割と生物を専門としない
理系の学生向きだったところもあったと思います。
そして案内が固い。あとは授業の存在自体に対する認知がまだ十分ではないのかなと思って
います。それに対して、案内の改善。内容に対して、もっととっつきやすく、何をするのかとい
うのが一目で分かるようなものにしていきたい。あと、高校での学習との連携性や文系学生の
興味関心への考慮というものを考えていかなければいけないかなと思っています。
- 22 -
お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を担当して
―担当教員によるパネル討議―
舞踊における色・音・香(「色・音・香」系列から)
パネラー 中村 美奈子
(人間文化創成科学研究科 文化科学系准教授)
色・音・香系列の担当をしました中村美奈子と申します。
「舞踊における色・音・香」の授業
の報告をさせていただきたいと思います。
今日の発表では、サブタイトルで「実演授業」ということが取り上げてありましたので、その
部分を中心にお話しします。ビデオが 15 分ほどありますので、そちらをご覧に入れながらお話
を進めてまいります。
最初に、私は「基礎ゼミⅠ」という前期開講の授業を 6 年間担当しております。昨年度の 2
月頃に、来年度は後期にもう一コマやってくれと言われました。芸術Ⅰは音楽表現コースの開講
科目でして、舞踊教育学コースの基礎講義科目ではありません。ということで、
「基礎ゼミⅠ」と
あまり内容が重ならないように新しい授業を組まなくてはいけなくなりました。いろいろと考え
た末、自分が関心を持っていることを少しずつ紹介してみようと思い、結果として「一人オムニ
バス」のような授業となりました。
授業の基本方針として、
第一に
「生の実演」をできるだけ取り入れることにしました。これは
「基
礎ゼミⅠ」の方でも何回かやったところ、割と評判がよかったからです。FDの予算で講演謝金
が出るということがわかりましたので、実演者を招聘して行う授業を数回取り入れました。
そして第二に、
「文化的に多様な身体表現を紹介する」ということに重きを置きました。先ほ
どの学生さんの発表の中では、好意的にとらえてくれていたので安心しましたが、ひとつのこと
を掘り下げるのではなく、多種多様なものを紹介するという方に重きを置くような感じにいたし
ました。
さきほど申し上げたように、元となる基礎教育科目がなかったので、学生さんの指摘にもあっ
たように、テーマとしての、
「色・音・香」にこだわりすぎたかもしれません。しかし、私としては、
基礎教育科目の代わりに「文理融合」とか「学際性」というキーワードをサブテーマとして加え
て授業を組んだつもりです。
授業の概要は、パワーポイントのとおりです。最初に、私の専門分野でありますバリ島の舞
踊について話しまして、それから韓国の舞踊と朝鮮の舞踊を比較するような形で紹介しました。
「朝鮮」の方は、先ほどの学生の発表の中に出てきましたが、金剛山舞踊団という在日朝鮮人の
プロの舞踊団の方を招聘して実演していただきました。
パワーポイントの 6 番と7 番は
「文理融合」
をテーマとしております。また、
8番の能についても、
私の大学の先輩でもある、宝生流の能楽師である佐野登先生に来て実演していただきました。
学生の受講状況ですが、前期に行われた「受講希望調査」では、40 人ぐらいが受講を希望
しているという結果が出ておりましたので、ちょっと安心していましたら、後期のガイダンスには
80 人くらい集まりまして、教室を変更しました。登録者は、名簿上では 100 人以上いるのです
が、実際に出席しているのは 60 人程度です。実際に
単位を取りたい人がどれだけいるのかについては、レ
ポート待ちというところです。
次に、各授業について、少しずつ内容を紹介していこうと思います。
初回の、バリ舞踊のところでは、
「白と黒」に焦点を当てて、
「色・音・香」のうちの「色」を
扱いました。また、バリの舞踊では、
「香(かおり)
」すなわち「香(こう)
」も重要な役割を果た
します。トランスに入るときに香を吸いこむのです。それで、実際に教卓で香をたいてみました。
- 23 -
何か起こらないかとちょっと期待したのですが、私の気分が上がってしまっただけで、学生には
影響はありませんでした。バリ舞踊の 2 回目では、
「色」の観点から、舞踊の衣装や化粧につい
てお話しました。衣装の実物を見てもらい、実際に私が衣装の着付けを行いながら、説明をし
ました。
3 回目の韓国舞踊については、私のゼミの留学生で
ある鄭恵珍さん(本学博士後期課程 2 年)に、舞踊の
実演も含めて韓国舞踊における「色」について話をして
もらいました。
4 回目の「朝鮮」の舞踊については、さきほどもお話
しましたが、在日朝鮮人の方の舞踊団であります金剛
山歌舞団の若手の踊り手の方に来ていただきました。
これは、鄭さんが、授業をコーディネイトしてくれたお
かげで実現することができました。そのときの授業の様子を6分ほどの映像に編集しましたので、
ちょっと見ていただきたいと思います。実際に踊りをやっていただいて、その後に質疑応答をし
たのですが、映像は、その質疑応答の中の一部です。出演者は、ダンサーの方が4人と、振付
家であるカン・スネさんです。踊りの中で特徴的だった、回転の部分を分析的に説明しながら
実演を見せてくださいました。この映像では伝わらないかもしれませんが、生で見ると、かなり
迫力があって、拍手がわきおこるなど好評でした。映像の中に入れ忘れてしまいましたが、舞踊
教育学コースの受講学生3人に前に出てもらって、舞踊団の方と一緒に朝鮮舞踊の特徴的な舞
踊の歩行動作をやってみてもらったりもしました。
この後、2 回ほど文理融合と学際性をテーマに授業
を行いました。
「舞踊とジェンダー」では、主にクラシッ
クバレエとコンテンポラリーダンスなどを事例として取
り上げながら、作品の中で、男女の関係性がどのよう
に描かれているか、作品によってどのように違うのかと
いうことを実際の映像で検証しました。
「舞踊とコンピュータ」では、私が理系の研究者の方々
と共同研究として行っているモーションキャプチャを使った舞踊の技の解析について、2005 年の
「国際日本学シンポジウム」で公開実験という形で行ったときの映像を見せながら紹介しました。
「能における色・音・香」では、さきほど紹介しましたように、宝生流の能楽師である佐野登
先生に来ていただきました。写真を見ていただくとわかりますが、一般教室でしたので、毎回、
実演があるときは机を脇に寄せて実演スペースを作りま
した。この日は、すべての机を脇に寄せて、いすだけ
にして、授業を行いました。謡を一緒にやったり、楽
器や仕舞の実演をしていただいたりもしましたが、
「色」
ということにこだわって、能装束の着付けを中心にして
いただきました。やはり装束の美しさが学生の感想文の
中でも一番指摘が多かったので、着付けの映像を見ながら説明していきます。
佐野氏は、講義の際にマイクを全然使っていないのですが、やはり舞台をやっていらっしゃる
ので、とても声が通ります。そのことも感想文の中で学生がよく指摘していました。こういった点
もライブ授業のよいところだと思います。実際の着付けには 20 分ぐらいかかっているのですが、
この映像は短く編集してあります。着付けが完成し、面(おもて)も付けてもらい、視界がいか
に制限されているか、またその状態で舞うことがいかに難しいかということを着付けてもらった
本人が確認するとともに、ほかの学生らも理解します。また、どれくらいの角度に首を前傾させ
ると泣いているように見えるのか、つまり、実際の顔の表情を使わない状態でいかに感情を表
現できるのかということも合わせて検証しました。盛りだくさんの内容だったため、授業が延び
てしてしまいました。しかし、授業が終わっていないのにもかかわらず、何人かの人が途中で帰っ
ていってしまったという、非常に悲しいことが起こりました。最近の学生さんは忙しいからしかた
がないのでしょうか?佐野先生にも苦言を呈されました。
あまり脈絡はないのですが、西洋の身体表現についてあまり扱っていなかったので、
「バレエにおける色・音・香」では、ロマンティッ
クバレエの名作と呼ばれる「ジゼル」を中心に、西洋の劇場舞踊について紹介しました。バレエについては「舞踊とジェンダー」でも少し
紹介しましたが、今回は、踊りのテクニックの部分についても言及しました。また、ジゼル第 2 幕のウィリー(亡霊)たちの重力を感じさ
- 24 -
せないジャンプやリフトの技巧については、
LA図書の
「やさしいダンスの物理学」にも解説が載っ
ていることを紹介しました。
私の専門はアジア地域中心なので、アフリカには行っ
たことはないのですが、私のゼミの卒業生がJICAの
青年協力隊として派遣されたのち、
「西アフリカ(マリ
共和国)
」に住み着いているということがわかり、彼女
に現地の舞踊の映像を撮影して送ってもらうことによ
り、アフリカの舞踊(身体表現)についても一部扱うこ
とができました。また、ちょうどよく、同地域の研究をしている院生がゼミにおり、彼女の協力
により授業を運営しました。
「ルドルフ・ラバンとラバノーテーション」では、私の研究している舞踊の記譜法を取り上げま
した。また、記譜システムを理解したかどうかを試すために、レポート課題1として、LA図書
「Labanotation」の○ページにある誤植を指摘せよという課題を出しました。
最 終 回は、 日本人 独自の 身 体 表 現として「 舞 踏
(Butoh)
」
を取りあげてみましたが、
かなり
「刺激的」
だっ
たようでした。
まとめの方に入りたいと思います。
「実演授業」の、
問題点と今後の課題として挙げられるのは、
「一般教室の使いにくさ」です。今回は、一般教室でやりましたが、踊るには床が固い(身体を
痛める可能性がある)とか、机を片付けなくてはいけないとか、非常に大変でした。また、後ろ
の席からはダンサーの足元が見づらいというようなことも学生から指摘されました。基礎ゼミⅠ
のときは、実演の回は、体育館の方でやっていたのですが、できれば教室を変更してやった方がよいかもしれないと考えています。ただ、
基礎ゼミよりは人数が多いので、その点が問題です。
今年(2009 年)
、体育館の改修がようやく行われるようで、そのときに少し、照明機材や冷暖
房の機材を入れていただいて、鑑賞にも耐え得るような部屋にしていただけたらいいなと、個人
的には思っております。
この授業は、次回は 2010 年度開講予定です。2010 年度の実演授業は、2008 年度にあま
り取り上げることができなかったコンテンポラリーダンスを取り上げたいと考えています。ダンス
の実演とダンサーによるアフタートークという構成を考えています。というのも、舞踊教育学コー
スの卒業生は、モダンダンスやコンテンポラリーダンスのダンサーとして活動している人が多い
からです。
実際、
コンクールで賞を取ったり海外公演を行ったりと非常に活躍もしています。
しかし、
日本で芸術家が生きていくのは簡単なことではありません。ですので、こういった授業の場で、
少しでもバックアップしてあげることができないだろうかということを考えています。謝金も出る
ということが分かりましたので、経済的なバックアップにもなりますし、学生にとっても非常によ
い経験になると思います。また、ホームページなどで「文理融合リベラルアーツ科目紹介」のよ
うに授業を紹介していますので、そのような形でも、卒業生の名前が紹介されれば、大学側のバッ
クアップによる宣伝にもなると思います。
以上、ゼミの院生のみなさんや卒業生のみなさんのおかげで今年度の授業を無事終えられた
ことに感謝して報告を終わりたいとおもいます。
- 25 -
お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を担当して
―担当教員によるパネル討議―
NPOインターンシップ[実習]
(「生活世界の安全保障」系列から)
パネラー 亀山 俊朗(教育研究特設センター・講師)
私からは、
「生活世界の安全保障」系列の実習でありますNPOインターンシップについて、
ご説明いたします。
お手元に、ちょっと重たいことになってしまったのですが、緑色の分厚い冊子「2008 年度N
POインターンシップ NPO入門 成果報告書」というのをお配りしております。報告の中でも参
照をお願いいたしますので、ぜひご覧になってください。
こちらの背表紙と下の方に書いてありますように、NPOインターンシップは、
「コミュニケー
ションシステムの開発によるリスク社会への対応(CSD)
」のプロジェクトで対応しています。担
当講師として、私、亀山と、今日来場していますが、アソシエートフェローとして*カトウ*さんと、もう一人、ティーチングアシスタントで
*さがわ*さんという3人のスタッフで担当しました。
この報告書は、NPOインターンシップと共通教育科目で、先ほど前半の米澤さんの報告の中でもありましたが、NPOインターンシッ
プを受講するに当たって、履修の条件となっています「NPO入門」という講義、これはLA科目ではないのですが、こちらのレポートと
併せて成果報告書ということにしています。
内容は、最初の3分の1ぐらいが「NPOインターンシップ」の実習生の報告書。後半が「NPO入門」授業についてで、これも先ほど
紹介がありましたが、仮想のNPOの事業計画というのを作ってもらったのです。これが大変面白くて、学生の中でも、ほかの学生のも
のを読みたいという要望がたくさんあったので、まとめて見たら、力作が多かったので、こんな
に分厚くなって、重たくて、出来上がったのを見て、私もちょっとびびったのです。その他、協力
していただいたNPOの情報とか、巻末にはインターンシップと入門の方の授業資料などが掲載
されております。
本日の報告の内容を申し上げます。四つのパートです。最初に
「科目の沿革・概要」
を申し上げて、
続きまして、2点目として「本年度の特徴・新たな取り組み」
。3点目として「本年度の成果」
。4
点目として問題点や課題を報告するという予定で行います。
前半でも、リベラルアーツとの関連というところが議論になっておりましたが、
「生活世界の安
全保障」系列の中に「NPOインターンシップ」が配置されているわけですが、今まで私自身、
漠然とした関連ぐらいしか考えていませんでした。
つまり、
系列の3テーマと申しますのが、
まず「日常生活の安全保障」
、
それから
「グローバリゼー
ションの中の安全」
、それから「安全の基礎条件」ということですので、NPOというのは、例え
ば環境問題のようなリスクに対して、市民が安全の維持や回復をしようするもの、あるいは障害
者や高齢者のような社会的弱者の安全のための支援をするものというぐらいで一般的に位置づ
くのかなというぐらいの理解でしたが、この機会ですので、もう少しまじめに考えました。
これは系列案内に載っています「生活世界の安全保障」の科目一覧ですが、さきほどの三つ
のテーマがあります。
先ほどの三つのテーマと実習で構成されているということになっていますが、系列案内の中に
こんな図がありました。科目名と科目のキーワードを、横軸がパーソナルとストラクチャル、構
造的か個人的か。縦軸がフィジカルとメタフィジカル。もう一つ軸があって3軸になっていまして、
ローカルとグローバルということで、8象限というところにキーワードを配置するという図があり
- 26 -
ます。
これを見てお気付きのように、ここの象限が割と空いているわけですね、パーソナルでローカ
ルでフィジカルな部分というところ。ただ、実際のリスクの認知というのは、当然個人的なもの
ですし、ローカルに表れますし、身体的、具体的なものとして表れるというところで、これはや
はり実習なり、体験の学習なりで知っていって、ほかの領域に結び付けるというのが、NPOイ
ンターンシップの役割かなと考えました。
1960 年代の "The personal is political"(個人的なことは政治的である)というのがラディカ
ルフェミニズムの標語でありますが、その弁でいきますと、パーソナルなことはストラクチャーで
あり、ローカルなことはグローバルであり、フィジカルなことはメタフィジカルであるということを
体得してもらえたらいいのかなと。ちょっと後付けっぽいですが、そんな位置付けなのかなとい
うようなことを考えてみました。
「NPOインターンシップ」の実習は 2003 年から行われていますので、その沿革を申し上げて
おきます。
2003 年度からコアクラスターの「コミュニティ・ボランティア」コースが行われて、こういう経
緯もあって、地域コミュニティ活動のNPOが中心というようになっています。
「国際協力のNPO、
NGOはないのですか」というご意見を学生からもいただいたのですが、2006 年度からはコア・
クラスター「共生社会とコミュニケーション」コース。そして今年度からは文理融合リベラルアー
ツの「生活世界の安全保障」に位置づいたという形になっております。
シラバスから引用という形で、主題と目標を示しておきます。個条書きにすると3点になるの
かなと思います。赤字のところですが、一つ目が、NPOの役割や課題を学ぶ。二つ目が、社会
的活動と大学での学習・研究の関連を考える。三つ目が、社会と自身のかかわりを考える。こ
の三つぐらいの目標があると考えております。これに従って、後でこの成果を考えたいと思ってお
ります。
ただ、今のシラバスではあまりに抽象的なので、特に実際には1年生のボランティア体験とい
う内容になりますので、
「ボランティアをやってみたい人は集まってみませんか」というような呼び
かけを、学生へのメッセージとしてはしました。
科目の概要ということですが、先ほど申しましたように、受講条件として、講義「NPO入門」
を履修する、
これは以前からの踏襲です。受講条件は、
学年は学部生全員対象ということですね。
単位認定は、通年2単位で、60 時間以上の実習。昨年度までは 100 時間だったのですが、
私は全学科目のインターンシップというのも担当しているのですが、これが 60 時間なので、合
わせようということで、今年から 60 時間にしました。
それから中間報告会、最終報告会での報告、実習日誌等の提出、これが2単位の認定の要件
になっております。
以上が沿革と概要で、ここから本年度の特徴ということで、今年の受講生 15 名が単位取得
見込者。最初実習を始めたのが 21 名ですから、言葉は悪いのですが、7割強の歩留まりという
ことで、これは例年こんな感じなのかなというように聞いています。
内訳は、1年生が 10 名、2年生が4名、3年生が1名ということで、1年生中心になっていま
す。ボランティア体験というような感じで受講されている方が多いのかなと思います。
団体については、報告書の 17 ページと巻末の授業資料の 259 ページ以降にありますので、
ご参照ください。
協力団体は8団体で、実際に実習に行ったのは6団体でした。環境保護やホームレス支援、ま
ちづくり、子育て等々に、先ほど申しましたように、地域で取り組む団体というのが中心になっ
ております。
2008 年度の履修の流れ、これも報告書の 16 ページ、253 ページ以降に詳しく掲載されてい
ますので、ご覧ください。
5月にオリエンテーションをやりまして、団体と学生の希望とのマッチングをします。6月から
実習開始。5月、6月の段階で志望理由書、年間の目標というのを立ててもらいます。7、8、9、
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10、11、12 月まで実習がありまして、1月に最終報告会。その間に、9月末、夏休みの終わりに中間報告会というのを設けました。
今年の特徴としては、この7カ月間を3期に分けまして、期ごとに目標管理シートというのを提出してもらいました。この様式は、報告
書の 16 ページ以降が学生の報告書になっていますが、志望理由という形で年間の目標と活動の振り返りと成果と課題という構成になっ
ているのですが、これは各期ごとに、例えば7月でしたら6、7月を振り返って、8、9月の目標を設定して計画立案するという形のこと
を期ごとにやりました。
これが次のスライドの「本年度の新たな取り組み(1)目標管理シートの導入」ということです。
年度初めに志望理由で、これが年間の目標設定で、3期に分けて、目標設定、自己評価を行ったと。
もう一つは、目標設定と自己評価は実習団体の担当者に、読んでいただいて、学生、NPO、
教員が目標と成果・課題を共有するということを目指しました。
1月の最終報告書の形式も、21 ページ以降を見ていただきますと書いてあります。つまり、目
標を設定して、それが達成できたかどうかを自己評価するという形式で作りました。
新たな取り組みのもう一つは、NPOとの連携強化と学生の交流促進。連携強化は、実習団
体からのゲストスピーチという形で、これ自体も連携強化の一例なのですが、本年度から新たに
子育て支援の団体である「グランマ富士見台」というところに加わってもらったのですが、こち
らを中間報告会に招くとか、講義の方にも協力団体からゲストスピーカーをお招きしました。
それから実習生同士の交流の促進ということで、実習生のメーリングリストというのを新たに
設置しまして、OGというのは昨年までNPOインターンシップを履修していた学生なのですが、
これはNPO入門で実習の報告をしてもらったのですが、こういう学生にも登録してもらいました。
そのメーリングリストで、お茶大の中で、自主企画として講演会を行うということも支援すると
ともに、メーリングリストで告知するということもやりました。
以上が今年の取り組みの特徴で、ここから今年の成果ということで、ご報告したいと思います。
授業アンケートは、
通常の授業アンケートは「板書が見えますか」というような項目が多いので、
実習・演習についてはやらないということなのですが、共通しそうな、ここにある「意欲」
「興味・
関心」など、一般的なものに関しては共通してやれると考えて独自に、実習で聞いてもよさそう
な項目を追加して、1月の成果報告会でやってみました。
これを見てお分かりのように、特に高かったのは「内容への興味・関心」というのが高かったのです。
「NPOインターンシップ」という
科目に集まっている学生がNPOへの興味・関心が高いのは、ある意味で当たり前のような気もするのですが、前期の私が担当していま
す「NPO入門」という講義の方は、約半分が実習生で、約半分が実習に行かない学生なのですが、これも、やはりそうはいってもNP
Oに関心がある学生が集まっているとは思うのですが、
「興味・関心」のところは平均的な値で、特に高いわけではないということなので、
やはり実習科目というのは、興味・関心の喚起というところでは効果があるのかなというように推察できます。ただし、この「興味・関心」
の中には、NPOの活動に興味・関心を持ったということなので、これが大学での学習や研究に結び付くかどうかというのが課題になる
のかなと考えます。
続きまして、報告書の 21 ページから学生の報告があるのですが、その中で特徴的な感想を三
つの分野に分けて、成果として挙げてみました。
一つは、先ほどの8象限の図でもありましたが、個人的なことと思われていることでも社会的
な問題なのだということに対する気付きというのがかなりありました。例えばホームレスは自己責
任など、そういう偏見もあったけれども、そういうことを再度考えるようになったとか、個別の相
談をしているような、臨床的なことをやっているような団体なのだけれども、メンバーは社会を
変えていきたいという強い思いがあったとか、子育て支援をやっているのだけれども、女性が働
けるような社会にしたいなど、そのような社会的な視点というのにかなり気付くという場面があっ
たようです。
NPOの現状と課題というところで、これは「NPO入門」の講義の方で、かなり問題にして
いるのもあると思うのですが、非営利とはいえ財政が重要だとか、イベントの参加の受付などを
やっていたら「何これ、お金取るの?」とか、すごく言われたというようなことがあったみたいで、
無料で当然と思っている人もいるけれども、実際には予算の捻出が大変なのだなということが分
かったとか、それは同時に、単なるボランティアとは違って、組織的にやって法人格も取ってやっ
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ているということですから、社会的な責任が生ずるということも知ったと。あるいは行政との関
係などは難しいということも分かったというような、現状と課題を知るというような成果があった
と思います。
3点目、自分と社会のかかわりを見直すということで、単位のためにしてはなかなか大変なの
ですが、それなしで「自分は実習団体の人たちのように積極的に活動できるのか」と自問自答し
たとか、さまざまな職種や年齢の人が背広姿で活動に参加するのを見て、将来について考えた
とか、自分たちで運営した経験とか、障害者と社会とのかかわりを見直したというようなこと。
このコメントは、このままというよりも、幾つかの代表的なものを適当につぎ合わせて作った
のですが、こういったことが報告書の中身に書かれておりますので、またお読みになっていただけたらと思います。
以上が成果なのですが、課題もいろいろあります。まず、この表は、文理融合リベラルアーツ
としては大変まずいのですが、理系の参加がなかなか難しいというか、偏りがあるということで
す。過去の最終報告会の参加者、これはほぼ単位取得者と考えてよいと思うのですが、過去3
年間 40 名のうち、理学部1名ということで、生活科学部の人間・環境科学科の方などが、特に
環境問題などに関心を持って参加するということはあるのですが、先ほども理学部の理系の学
生は、一生懸命専門の単位を取るというような話がありましたが、特に実習となると、なかなか
難しいのかなということが課題として挙げられます。
2点目は、これは米澤さんの報告でもあったのですが、学生の中での差異といいますか、い
ろいろな考え方があるということです。先に下の方を見ていただきたいのですが、高校などでも
最近、ボランティアが単位化されたり、あるいは大学でもボランティアが推薦入試の決め手にな
るとか、そういうことが非常に多いので、よく問題になることですが、そうした自発的活動とい
うのが単位、これは一種の義務ですよね。強く言えば強制というものになるという矛盾があるわ
けですが、そういうことが、やはりこの科目にもあるかなと思います。
例えば中間報告会とか、目標管理シートとか、実習以外のことをやっていて、大変よかったと
いう意見もあれば、それが負担だったという意見もあるし、報告会でもっと意見交換したいとい
う意見もあれば、土曜日にやったのですが、そもそも報告書があるのだから、ほかの受講生の
話をなぜ土曜日出て行って聞かなければいけないのだとか、そもそも 100 時間以上、いつの間にかやっていましたという学生もいれば、
60 時間、なかなか苦しいと。先ほど米澤さんの報告を聞いていて、60 時間終わったら、やっと伸び伸び活動できたというのを聞いて、
やはりこれは難しいなと思いました。それは分かる気もします。なかなか難しい問題があるなと思いました。
NPOと学生と、そういうしんどい状況というのを共有できるのかなと。一応、先ほど目標管理シートというのをやっているのですが、
NPO側も大変忙しいので、なかなか日常的な情報交流というのは難しいかなという課題があると思います。
もう一つは、1年生主体のインターンシップということなので、他のLAをはじめとした科目や
専門との連携づけというのが難しいと。大学での学習・研究に、今日は2年生の米澤さんの報
告がありましたが、将来の目標も決まっていて、専攻も決まっていて、それに実習を位置付ける
という学生もいれば、本当に1年生で入ってきて、こんなこともあるのかと。それ自体は大変良
いことなのですが、そういう学生もいるということで、連携・関係づけというのが課題になるだろ
うと。
これと重なるのですが、予備知識が全くない段階、
「NPOって何の略?」という段階から、
実習団体とマッチングして、志望理由書を書きなさいというのを、やってもらうわけですが、これをもう少し丁寧にやる必要があるのかなと。
その後続けていくしんどさというところとの関係も含めて、この辺が課題かなと思っています。
今後の方向性としては4点考えています。一つ目は「学生の運営への参加」ということで、受
講生自体もそうなのですが、先ほども、OGにメーリングリストに登録してもらって授業に協力
してもらいましたという話をしましたが、それを強化したいと思っています。僕をはじめとして、
先ほどのマッチングの難しさというところとも関係するのですが、こういう団体ですよと報告して
も、やはり1年生にとっては「何かおっちゃんがしゃべっている」ということですから、実感が持
てるかというと、なかなか難しいと。1学年上のお姉さんが、
「去年、私、こういうことをやりま
した」と説明すると、もし同じような内容だとしても、授業などをやっていても全然違うのです。
そういうところで協力してもらったり、あるいは報告会や講義の方でファシリテーター的に協力
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してもらうとか、先ほど聞いて私も驚くとともに、何というか、大変じーんとしたのですが、既に米澤さんが、4人のグループで実習をやっ
ていて、しんどい子がいると励ましあって実習を終えたということで、そういうことをやってくれていたのだなと非常に感心したのですが、
そういう相談に乗るという役割もしていただけたなと思います。
先ほど申しましたように、これはコミュニティ・ボランティアというところから始まっているので、国際協力のNGO・NPOの開拓という
のは、グローバル文化学環の方とも相談させていただいて、開拓したいなと。それから、今日の前半の学生の報告でも、人間の安全保
障の方で、国際協力のNGOの話などを聞いて、ご自身もボランティアをやっていらっしゃるというお話がありましたので、そういうところ
と連携していく。
それを含めて、三つ目、リベラルアーツのほかの科目や専門教育と関連づけた実習設定というのをやりたいのですが、それとプラスして、
やはり1年生が主体の対象になりますので、敷居の低さというところと両立したいと考えております。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
文理融合リベラルアーツ科目を担当して
―担当教員による報告―
地域と風土(「生命と環境」系列から)
報告者 熊谷 圭知(人間文化創成科学研究科 人間科学系教授)
最後の授業でアンケートを取りまして、その結果をまとめたものを参考までにお配りしました。
僕の授業は「地域研究」と「地域と風土」という二枚看板の授業だったのですが、風土というテーマを入れて、今までの地域研究の内
容をリシャッフルしてやったというような授業でした。フィールドとしてはオセアニアと日本。日本を入れたというところがポイントというか、
よその地域という形で他者化しないで、日本に最後帰ってきて、日本にも同じような問題があるのだというようなことを考えさせるという
ような趣旨でやりました。
一番最後に水俣の話を取り上げて、水俣病というものが拡大したことの中に、日本の風土性というものが三重ぐらいにかかわっている
のではないかというような話をしました。それは水俣湾とか不知火海の非常に浅くてクローズドな湾で、漁民たちが非常にたくさん魚を
食べていたことが、まずローカルな風土としてある。それから水俣という地域社会の、企業城下町の「会社ゆきさん」というような風土と、
その中で漁民が周縁的な存在であったということ。さらにもう一つは、これは文化地理学者のオギュスタン・ベルクが言っているのですが、
自然破壊というもの、
日本が公害問題を止められなかったということの中に、
日本人の主体性の問題があるのではないか。
「おのずからなり」
というような思想の中に、
進んでいくものは認めてしまおうというような風土性。それも日本の風土性というようにベルクが言っているので、
そういう三重の風土性の問題がかかわっていたのではないかというような話を最後にしました。水俣のチッソの技術者の人たちが、なぜ
それを止められなかったというところの証言をしているようなビデオを見せたり。理科系の人たちにとっては、チッソの技術者の話などは、
自分がその立場であったらという目でビデオを見ながら考えてくださったのではないかと思っています。しかし、全体としては反省の方が
多くて、毎回問いを出してコメントペーパーを書いてもらう、時には授業課題という形でA4一枚の課題に答えてもらうというようなことを
やったのですが、何せ時間が足りなくて、授業が5分前ぐらいに終わって、そこからコメントを書いてもらうというような無理な要求をし
たので、そのあたりはだいぶ評判が悪くて、厳しいコメントが入っています。それから資料をたくさん渡しまして、
「次の時間までに読んで
きて」というような授業だったので、これも多すぎて消化しきれなかったというような批判がありました。
例えばコメントの中で特徴的なものとしては、理系の方のコメントとして、右の方のページの3番目「理系であるとあまり考えることのな
い物事に対しても向き合うことができた」というようなコメントがあります。それから「一方では、非常に難しかった」と。右側の6番目
ぐらいのところに「正解の存在しない問題を考えていくのが文系の研究かもしれないと思ったし、そうした問題を考えるのは人間として避
けられないことなのかもしれないと思った」
。こういうことに気付いてくださるというのは、とてもありがたかったのですが、しかし「答え
のない問題を考えさせるとは何事だ」みたいな、そういうことをさせられたという苦痛が非常に大きかったというコメントも同時にあった
ということで、この辺はどのようにやっていったらいいのかという課題が残りました。
ちなみに、最後に学生に授業の採点をしてもらいました。
「この授業を 100 点満点で採点してください。自分の授業への取り組みも
100 点満点で採点してください」
。それで平均点は、私の授業の方については 82 点、自分の取り組みは 66 点だったのですが、この 66
点という数字が、ある意味で僕の反省事項です。つまり、自分でこれに十分取り組めたという満足感を残せなかったこと。課題が多すぎ
たということもあると思いますが、説明が下手だったとか、難しい話を難しく話してしまったとか、そういう課題はたくさん残った授業で
した。しかし最後に期末試験をやって、その答案を見たときに、理科系の学生が非常に鋭い答案をたくさん書いてくださっていた。そう
いう学生たちが今後どのように変わっていくのかということには、とても楽しみな思いでいます。以上です。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
コメンテーター
川島 啓二
(国立教育政策研究所 高等教育研究部 総括研究官)
皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました川島です。お疲れのところだと思いますが、コメンテーターとしての仕事をさせていただき
ますので、10 分ぐらいお付き合いいただければと思います。
自分の所属している組織とか、その仕事の話は端折ることにいたします。今日は本当に充実したご発表を聞かせていただきました。こ
ういうシンポに私もよく出席させてもらい、眠くなることも多いのですが、今日はコメントしなければいけないというプレッシャーもありま
したが、全くまんじりともせず、最後まで聞かせていただきました。
こういう教育分野で高度化していく教育のコンテンツとプログラムというのを開発していく例というのは、私の知る限りでは、こちらの
お茶大と東大、慶應、東北大学というあたりが今、多分先進的に走っている大学だと思います。今日はFDシンポジウムという名前も付
いているのですが、FDという言葉が日本の大学で使われてもう15 年、もう少したちますかね、それが西高東低だとわれわれの業界で
は言っていて、西の方の大学の方が進んでいるということだったのですが、それは主にインストラクショナルスキルといいますか、先生の
教え方に特化した話でのことであって、こういうコンテンツについて、いずれ取り組む大学が出てくるだろうと思っていましたが、今日のお
話にあったような東の方の大学、しかも非常にアカデミックなレベルの高い大学で、こういう取り組みが進んでいるということに、今、私
としては注目させていただきたいと思っております。それが今の日本の大きな状況、大づかみに言って、そういう状況なのかなと思ってい
ます。当然、強く期待したいと思います。
コメントということなので、それらしい、もっともらしいことを一生懸命考えていたのですが、
「21 世紀型文理融合リベラルアーツ」と
いう題目で、ここでキーワードが三つあると思うのですが、21 世紀型ということと、文理融合ということと、リベラルアーツ、特にリベラ
ルということなのでしょうが、リベラルとは一体何だろうと考えながら、ずっと学生さんと先生方の報告を聞かせていただきました。
一般的に、教科書的な説明をさせていただくならば、リベラルというのは中世の大学以来、専門教育なり、あるいは職業教育から自
由であると。自由学芸という翻訳が当てられることが多いと思うのですが、そういうところから自由であるということの意味が今までの理
解だったのだろうと思います。ですから、一昔前の大学であれば、それはいわゆる専門に偏りすぎない。日本の大学の人材養成の目的は、
教養ある専門人の養成ということになっておりまして、こちらのコメントを引き受けさせていただくときに、夏に寺崎昌男先生が来られて
講演なさったと思うのですが、それをホームページで読ませていただきまして、寺崎先生は立教大学の方で、教養ある専門人ではなくて、
専門ある教養人を育てるというコンセプトでカリキュラムの改革をなさったのだというお話がありましたが、教養ある専門人、つまり専門
性に偏りすぎない教養人をつくるというのが、かつてのリベラルアーツの一つのとらえ方だったのだろうと思うわけです。
では、それと同じつながりで、今日のいろいろなお話だとか、これから大学が向き合っていかなくてはいけない現実を考えていったら
いいのかというと、それは多分そうではなくて、最初の 21 世紀型というところにかかわってくる話だと思うのですが、そのことについて
私が非常に興味を持ちましたのは、パンフレットを頂いて、そこで、この教育プログラムの教育目的と教育方向について書かれておりまし
た。教育目的については、見る、聞く、話す、書く、これは普通言われるのですが、もう一つ、次に「作る」という言葉が入っていまして、
これに私は新鮮な驚きを感じました。つまり、知を作っていくということを非常に意識されたプログラムなのだなと。その方法については、
実習、体験などの新しい、今のはやり言葉で言うとアクティブラーニングのような手法を取り入れてやっていくのだということだったのです
が、知を作るということを目的に意識されているというところが興味を引きました。
と申しますのも、恐らくこれからの若い人たちが向き合っていかなくてはいけない社会というのは、何か体系化された知識というのをき
ちんと理解して、それを応用していったらいいという社会ではなくて、非常にドラスティックに変化していくわけですから、常に新しい知
を生産していくという局面が求められてくるようになってくるのだろうと思うのです。そのときに、やはり自分の問題関心なり、発想の枠組
みなりというものを転換していく、チェンジしていく。別にオバマにあやかるわけではないのですが、転換していくような能力というのが
実は求められてきているのではないかと。
だからリベラルというのは、
そういう意味で受け止めるべきではないのかと。つまり、
自分が今まで乗っかってきた問題意識なり、
発想を、
どこかで切り替えることができるような経験なり、あるいはそのための基礎的な力というのを養うことが実は求められている。そういうプ
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ログラムというのを、実は大学の方でも用意してやる必要があるのではないかというような考え方で、いろいろな取り組みというのは行わ
れてきているのだろうと思うのです。つまり、それは方法としては気付きなどということがあるのでしょうが、そこの方法のところで新しい
体験みたいなものが取り入れられてきているということになるのかなと思います。
だから、今日も体験なり、実習なりという言葉がいろいろ多かったわけですが、それは実は、今まで大学で、大学の先生たちが非常に
慣れ親しんできた体系的な知というものと、それから学生の方が恐らくこれから必要とされるような学びの在り方というのは、必ずしもぴっ
たり一致しない。その一致しないものをどうやってつないでいくのかという、その媒介項みたいなものが、今日のお茶の水女子大学で努
力されているプログラムというものの今後なのかなと思った次第です。そういう意味では大いに期待したいと思います。
それから先ほど、ちょっと言い忘れたのですが、知を作るということに当たって、例えば文部科学省などは、これからは知識基盤社会
なのだからというような言い方で、それを説明するのです。中央教育審議会の答申などでも、その言葉が使われるのです。でも、枕詞
のように使われる言葉でありながら、実はあまり深く分析されていないといいますか、私もちょっと調べてみましたが、OECD関係から、
そういう言葉が出てきたわけですが、書かれている本は、そういう説明を除いてはあまりないのです。だから、具体的にどういう教育プ
ログラムでそれをやったらいいのかということは、実は大学任せになっている。教科書的には、今まではストックとしての知識というのが
問題だったわけだけれども、これからは知識をどのように活用していくかということが重要になってくる社会なのだと。だからこそ学士力
という言葉が、学生の皆さんはまだご存じないかもしれませんが、そういう学士力を養っていくのが、これからの大学の学部教育の一つ
の目標だなどという言い方がされたりもするわけです。そういう提案というのは、全部そういう文脈の中で理解されることなのだろうと思
います。
ですから、申し上げたいことは、新しい社会と知の在り方というものについて語られながら、実は具体的なことが、国レベルでは、あ
まり具体的ではないというところがありますので、今日は私も非常に感銘を受けたということです。
最後に体験ということを言いましたが、体験を強化していくというのは、実は結構、これも言葉で言うのは簡単です。既存のディシプリ
ンの体系知というものと、学生がこれから必要になってくる学びの在り方というものをどうやって結んでいくのか。これも言葉で言うのは
簡単ですが、いろいろな大学の実践というか、試みの中から、日本がこれから本当に必要としているものを獲得できればいいなと思って
います。
以上が私の考えたことでして、今日は本当にお礼を申し上げて、私のコメントに代えさせていただきたいと思います。ありがとうござい
ました。
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お茶の水女子大学リベラルアーツとFD公開シンポジウム
平成 21 年 2 月 12 日(木)
全体質疑応答
司会:人間文化創成科学研究科 自然・応用科学系 教授 鷹野 慶子
(鷹野)
それでは全体の質疑・討論に入りたいと思いますが、学生と授業を担当されている先生方からのお話、それからコメンテーター
の川島啓二先生からのコメント、どういう立場からでも結構ですので、何かコメント、ご質問などございましたら、お願いいたし
ます。
(三浦)
学生の方は、授業をわれわれがどのような設計図で用意していたかというのを、多分初めて聞くのではないかと思うので、そう
いうのを聞いてみて、どんな印象を持ったのか。1部と2部、意識的に学生の人のを先にして、2部の方の種明かしは後にした
ので、それと今の川島先生から出た、大学教育の置かれている全体の状況みたいなことで何か感想があったら、ぜひ聞かせて
もらいたいと思ったのですが。
(鷹野)
学生、何かございますか。個人的な、率直な感想を、もしよければ聞かせてください。
(学生K)
意図されたとおり、第2部を聞いて、実はこんな深い考えがあったのだなと思いました。私は先ほども言ったとおり2年生なので
すが、1年生の方たちは入学のときにパンフレットをもらったり、説明会が多分あったのですが、2年生はチラシにあるのを見
るだけで、個人的な印象としては「ああ、文理融合というのをやるんだ」みたいな感じで、あまり知らなかったので、1部の私も
含めた学生のお話と、2部と川島さんのお話を聞くと、そこであまり認識されていないのかなという印象を受けました。やはり
生徒からすると、文理融合よりは内容に興味を持って取ったという方が多かったので、もっとリベラルアーツの目的とか、私も聞
いて初めて「おお、すごいな」と思ったので、広報活動などをもっと積極的にしていくと、学生の認識ももっと広がるのではな
いかなと思いました。素晴らしかったので、今後ももっとリベラルアーツの科目を取ってみたいと私も思ったので。以上です。
(学生L)
私は文教育学部の1年生なのですが、シンポジウムではなくて、その前の学生の発表のときにも発表しないで、発表を見に来た
感じなのですが、私は大学に入る前からリベラルアーツのことを知っていて、ホームページの方でいろいろ広報されていたので、
それを読んで、面白そうな科目ができるのだったら、しかも入る年にできるのだったらという理由もあって、すごく期待してこの
お茶大に入って、実際に幾つか授業を受けてみました。
実際に入学式の後の説明を聞いて初めて分かったことも多かったのですが、でも実際に、具体的にどんな感じなのか。理念的
なことは分かったのですが、実際はどうなのかというところが分からなかったので、今日のシンポジウムを聞いて、先生方はこう
いうことを考えて、しかもこういう流れの中で、この授業ができたのかというのがよく分かって、すごく面白かったです。
聞いていて、ここは学生の身から勝手に、ここをこのようにしてほしいという提案みたいな感じなのですが、文理融合ということ
で、せっかく文系・理系と分けないで、そういう授業が組まれているので、もう少し文理融合のところを強化していただきたいな
というのが一つあります。
それから系統立てて、系列を作って、せっかく科目設定をされているので、科目間の共通の流れではないのですが、つながりみ
たいなのがもう少し分かるような授業ないし説明があれば、あるいは、シラバスの方に書くなりということがあったら、もう少し
体系立て授業を受けてみようという人が増えるのではないかと感じました。
一つ疑問だったのが、系列というのがせっかくあって、しかも、その中の一個一個の授業を先生方はいろいろ工夫されて、考え
ていらっしゃるのですが、その間の先生同士のやりとりというか、連携というのはどのようになっているのかなというのを、シン
ポジウムを聞きながら感じました。
授業ごとに、先生方が何人かでやる授業と、一人でやる授業というのがあったのですが、何人かの文系の先生、理系の先生両
方集まった授業というのは、両方の視点が聞けて面白かったのです。やはり一人の先生でやっている授業というのは、先生の専
門で、文理融合というのをちょっと感じにくかったなというのが印象です。
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(鷹野)
今のお話の中の一つ、科目間の担当者の打ち合わせといいましょうか、相談というのはされていると思うのですが、そのあたり
について、どなたかご説明いただけますか。
(村田)
今年度、三つの系列が発足して、来年度二つの系列が発足しますが、今まで発足した三つの系列では、少なくとも系列間で教
員が会議をもって、それで話し合いをするということにしています。実際には1回か2回しかしていないのですが、その中で、少
なくとも僕のいる生活世界の安全保障の系列では、やはり横の教員の連携をもう少し深めようという意見が出て、授業の中で、
互いの授業をもう少し意識するとか、授業中にほかの系列の授業について触れるとか、そういうことを考えています。
ということで、もちろんこういうシンポジウムを何回か重ねていく中で、系列ごとの狙いということと、それからリベラルアーツ全
体の狙いというのを、もう少し教員自身が自覚していって作り上げていくということも意識していると思うのですが。
(鷹野)
ほかにどなたかございますか。
(新井)
私は文教の新井と申します。今回は「リスクの社会史」をやっていましたが、系列としては、私は色・音・香の系列の副世話人
みたいなことをやっていて、理系と文系の先生が二人でセットになって一つの系列をまとめていこうということを考えたのですが、
その中では、やはり話が食い違うことが非常に多いわけです。むしろわれわれは、その食い違うことを大切にしようと。
例えば、私は前期に色・音・香、感覚の歴史を読むという授業をしたのですが、そこで感覚に関する歴史の本だけ最初はリストアッ
プして、
LAの本で買ってもらったのですが、
来年やるときには、
もう少し理系の本を買ってもらおうと。例えばブルーバックスとか、
いろいろな、昔のガモフ全集みたいな古い、文系の人だったらあまり読まなかったかもしれないけれども、理系の人だったら「こ
れはちょっと簡単すぎる」とか、
「そんなの自分で買って読めばいいんだ」みたいな、そういう最初に取っかかりになるような本
というのが、あまり理系の本がないなというのは、文系の僕が見て思ったことなのです。
だから、そのように相手のものにちょっかいを出しつつ、お互いにすれ違いを大切にして、文理ということを考えていくことが大
切かなということは思っています。系列の中の交通整理なども、やはりお互いに、先ほど村田先生が、歴史の授業を聞いてい
て、理系の先生が歴史の授業を聞くと、こういうところに関心を持つのかというのが今日はよく分かって大変面白かったのですが、
そういうことをお互いにやることが大切かなというのは一つ思いました。
もう一つ、系列で取る、五科目取ったら系列履修になるということが意味があるのかというのは、私も今日はすごく思いました。
つまり、系列で取ることの意味ということを、われわれはあまり考えていないのではないかと。つまり、卒業証書に「系列であ
なたはこういうテーマについて学びましたよ」というのを与えるということは、学生に対しては意味があるのだろうと思うのだけ
れども、われわれは相互関係の位置付けということをあまり深く考えていないと。
先ほど亀山さんが最後に、生活世界の安全保障の中の科目を三次元図みたいにして出したやつ、あれはパンフレットにあった
ものですよね。あれをわれわれが意識して、この中のここに私の授業は当たりますとか、そういうことはあまり言わないですよね。
小林さんは、すごく意識して言おうとしているとおっしゃっていましたが、全員がそういう意識を持っているわけではないので、
そういうことをした場合に、位置付けが分かったから、皆さんがそれで系列を取っていくかというと、その系列で取ることの意
味というのをもっとはっきりさせないと、皆さんは相変わらず自分の興味で取っていくだろうと。われわれ個々の関心は、あるも
のを取っかかりにして、それで今までのディシプリンとは違う物の見方や考え方を自分なりに理解してもらえばいいと、突破口で
あればいいと思っているから、あまり系列を意識しないで授業をしているかもしれないのです。ですが、もしかして系列という
ことを考えたら、どんな新しいものが見えてくるのだろうということを、もう少しわれわれも考えなければいけないなというのは
今日、皆さんの話を聞いて思いました。
(鷹野)
ほかに何かございますか。実は私がちょっと気になっているのは、理系・・・。ありましたか。
(村田)
私も、今の色・音・香の系列の代表をやっているので、間の関連があまりよくないというのは、ちょっと耳が痛かったのですが、
一応何度か集まってお話はしているのですが、先ほど新井先生がおっしゃったみたいに、だから色・音・香、全部ぎっちりやれ
というようには言わないようにしているのです。そうしてしまいますと、本来の面白さというか、その分野自体の教えたいものが
ありますよね。先ほどの学生もちょっと言っていましたが、それに偏りすぎると、またそれはそれで問題があるので、その分野で
教えたいことは大事に残していただいて、だけど導入として、そういう共通の線を残して面白みは与えようという理解で、みんな
でやっていたという感じがしますので、今日の話は、良いところも悪いところもどちらもあったような気がしましたので、しょうが
ないかなという感じがしました。
それからもう一つ、先ほどの話で面白いなと思ったのは、知識「肥満」社会という言葉がありましたよね。これはなかなか面白
いなと思ったのですが、体系化してはいけないということはないのでしょうが、私などは食物栄養ですから、本当に肥満社会と
いうのはすぐ出てくるのですが、でも、肥満はいけないのですが、食べないのもいけないのですよね。われわれの分野は大抵
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そうなのですが。ですから、適切に食べると肥満ではなくなるのですが、食べないと、それはそれで問題になりますので、多分
知識も同じことで、今のは、肥満は多分問題なのでしょうが、やはり適切な過去の知識の体系というのですか、例えば数学な
ら数学、
化学なら化学という、
それをきっちり学ぶということも忘れてはいけないことで、
それがあった前提で、
やはり肥満にはなっ
てはいけないと。そのように私は理解したのですが。ちょっと感想です。
(鷹野)
ありがとうございました。時間は予定よりだいぶ過ぎているのですが、私が先ほどちょっと言いかけた、今日は食物の専門の方
がお話しくださったのですが、今日の発表の中には理系の学生の声というのはあまりなかったので、私は理系なものですから、
もしも理系の学生の声を知っていらっしゃる方があれば、ちょっと情報を提供いただければと思ったのですが、どなたかござい
ますか。
(村田)
すみません、先ほどちょっと紹介しましたが、私どもは学生の感想を毎回全部書いてもらって、毎回それを読んでいたのですが、
私は意外に面白かったなと思うのは、文系の学生にも理系の学生にも比較的評判が良くて、文系の学生は、私はなるべく易しく
しゃべって、高校の化学や生物で出てきたことをなるべく使って、あとは中学校の算数ぐらいですかね。そうすると「ああ、習っ
たことある」とか、
「これはこういう意味なんだ」とか、結構後で感想を書いてくれて、それはよかったと思うのです。文系の学
生は文系の学生で、
「食べるというのは、あまりにも当たり前のことなのだけど、ちゃんと自然科学的な意味があったんだ」とい
う感じがあってよかったですね。それから理系の学生ですよね。理系の学生も文系の授業を、要するに半分ぐらいを歴史の先
生がお話しになったのですが、先ほどうちの学生なども言っていましたが、それが面白かったと。専門の授業に跳ね返ってくる
という意味で面白かったみたいですね。目からうろこではないのですが、同じ食べ物を見る視点が、私が普段思っているのと全
然違うことを学生が言ったので、そういう話を聞くのは、それはそれで非常によかったのではないかと思います。ですから文理
融合は、そういう意味では非常に有効なのだと思いますが、でも、だからといって、先ほど少し言いましたが、自然科学の基盤
はちゃんと知らなければいけないのかなという気がしました。
それから先ほど少し申し上げましたが、
2年生以降、
理系の方は、
うちの授業はほとんど取っていなかったですよね。そうしますと、
今日の発表者などでも2年生の方が3分の1ぐらいいますかね。そうするとおのずとこういうところへ出てくるのも文系の方が増え
てしまうというのは、何となく全体を表しているのかなという感じがしました。
(鷹野)
では、今日はいろいろ学生からも、教員の担当の先生方からも、また川島先生からも貴重なお話を伺いまして、意見交換もあ
る程度できたと思います。これからまたリベラルアーツの教育ということをお茶大で推進していく、一つの良い機会だったと思い
ます。今後ともよろしくお願いいたします。
(三浦)
最後、質問が出ていた点だけお答えしたいのですが、文理融合リベラルアーツ科目群というネーミングになっていて、一つの科
目が文理融合にはなっていないのです。系列全体で文系・理系の双方から現象を見ていこうと。だから、一つの科目は理系か
ら見ていても、それは構わないのです。ただ、それ以上に意欲的な試みが「おいしさの色・音・香」で、これは中で入れ子になっ
ているというようなものが出てきている。ただ、スタート時点では、そのように考えていました。
ただ、それでは昔と変わらないではないかというと、横の関連ですね。横を意識することで、自分は文系の目から見たこういう
ことを、理系の目から見たらこのように説明するという、横の連関が大事だというのが最初の設計だったのです。設計図にも書
いてあります。だから、課題は、まさに横の連携を、これから教員と学生の間でどのように作っていくのかというのが一番の課
題だなと思いました。
それからもう一つ、リベラルアーツのリベラルの意味ということを川島先生の方から聞かれまして、全く同じです。リベラルアーツ
というのを自在に使える技というように、
無理やり訳したのですが、
「自由」よりは
「自在」で、
知識を使っていく主体に私たちがなっ
ていくということが全体の目的だろうと考えています。
先ほどちょっと誤解があったのですが、川島先生がおっしゃったのは知識基盤 (・・) 社会にこれからならなければいけないとい
うことが、日本の大学教育の提言の中に出ているのですが、その意味は、多分知識が衰えているという認識があるのですが、
村田先生は、それを知識肥満というように聞こえたのはすごく面白くて、多分理系の方から見ると過剰になっているところがあ
るのだろうと思うのです。ちょっとした誤解だったのですが、新井さんの言ったことで言うと、受け取り方のずれが出てきて、そ
れもまた面白かったと思いました。
それで今日は、実は学生の人と教員の人で一緒に授業の話をするとやりにくいかなと思っていたのです。そうしたら学生の人も、
しらっと良いところと悪いところを言ってくれますし、教員の方も、しらっと受け止めて、何というのでしょうか、川島先生が面
白かったと言ってくださったのは、授業が再現されている感じがしたので、初めての試みとして、とても良い機会になったと思っ
ています。
まだ1年目ですので、いろいろ足りないところはいっぱいあると思いますが、私の正直な感想は、1年目にして、よくぞここまで
きたなと。別にテーマを意識しないで、面白そうだから取ったと。私はそれで十分だと思うのです。授業が面白そうに見えるよ
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うに科目名や広報ができたということだけでも十分で、それはなぜかというと、動機づけをもって授業を、学生も臨んでほしいし、
教員もやっていかなければいけないわけで、そこの最低限の出発点が確保できた。そして1年間聞いて、さらに問題提起をして
くれた。だから、ちょっと私は楽観的すぎるかもしれませんが、1年目としては大変十分なところにきていると思いました。どう
もありがとうございました。
(鷹野)
それでは皆さま、今日は熱心にご参加いただきまして、ありがとうございました。これでこの会を閉じたいと思います。
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