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「携帯電話、使えるかなぁ・・・」
「携帯電話、使えるかなぁ・・・」 e-AT 利用者:谷澤清浩 サポーター:佐野将大(文責) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ある日、谷澤さんから相談がありました。「僕って…、携帯電話って…、使えないかなー。」 脳性まひのアテトーゼ型の男性で、パソコンは大きめのキーボードでキーガードを使用して一つのメ ールを打つのにも必死で体を動かしてものすごく時間をかけているのを見たことがあったので、どうし たらよいのかはじめは全く見当がつきませんでした。しかし、何気なくカー用品店を覗いていると見つ けました。 「車載型ハンズフリーフォン。」携帯電話を手に持たなくても通話できる!?すごい。谷澤さ んにもこれがあれば電話ができるようになるかもしれない。それから、9 V の電池で使用可能なハンズフリーフォンと、Docomo らくらくホンとを 組み合わせ、段ボールで作った自作の固定台に乗せ、本人に使ってもらう ことになりました。 それから、本人の熱心な自主勉強と猛特訓の日々が続きました。周りの 人の予想(短縮ダイアルで3件に発信できたらいいか…)をはるかに上回 る上達を見せた谷澤さんは、携帯メールやインターネット、住所録への登 録、携帯設定変更などほとんどの機能を使いこなすようになりました。私 にとってもちょっとしたことですぐに連絡がとれるようになりました。外 出時に急な都合で遅刻連絡を取らないといけないときなど、お互いのスト レスが激減。自室でもテレビを見ながら携帯電話でメールを打ったり WEB サイトをサーフィンしたりする楽しみも感じているようです。 一通り道具が整った時に、感想などをインタビューしてみました。今までは電話のたびに誰かを呼び、 誰に電話をするか伝え、テレフォンカード(残高を気にしつつ)を渡し、ダイヤルをしてもらい、さら に受話器を持ってもらう必要がありました。当然のことながら話の内容は受話器を持つ人に筒抜け。何 度も細かいことで連絡をとるのは恥ずかしい。このような気持ちだったそうです。しかし携帯電話をも つことでそれらの状況は劇的に変わりました。自分の好きなときに電話をかけられる。誰に電話をして もいい。どこにいても連絡がとりやすい。メールについても、パソコンと違って部屋でも使えるから簡 単に連絡がとりあえる(谷澤さんはパソコンを施設のパソコン室に置いています)・・・。携帯電話は 谷澤さんの生活に無くてはならないものとなりました。 その証拠に、「女子高生並み」の携帯使用で、ハーティプラン(障害者割引適用料金)契約だったに も関わらず、さらに利用状況に合った料金プランに変更を余儀なくされました(笑)。また、 「携帯電話 をかける・受ける」という経験の中で、電話を使うマナーを習得するなど、e-AT 機器の利用が社会的 なスキルをアップしているという面もあるようです。 携帯電話を使えるようになった喜びは、デジタルカメラを使いたい!という新しい意欲も産み出しま した。自転車用の傘アームにカメラの三脚の頭(雲台)を取り付け、それを電動車いすに固定し外出先 での写真撮影を楽しめるようにサポートしました。 今まで使っていたパソコンの使い方にも変化がありました。パソコンのメールと携帯のメールを使い 分けるようになっています。またデジカメを使用するためのパソコン環境を 整えたり、新しくこれもやってみたい!という意欲が次々と芽生え、今では 私だけではなく香川大学院生やリハビリテーション学院の学生さんと一緒に パソコンのサポートを行うようになっています。そこで提案した新しいパソ コンのペイントソフトを使って今は作品を量産中です。 谷澤さんから電話がくると考えます。「あ、今日はデジカメで良い写真がとれたのかな?何か楽しい エピソードでもあったんだろうか?それとも何か新しいことを始めたくなったのかな?」と。 AT 使用者プロフィール 名前:谷澤清浩 :施設入所の成人男性。 障害:脳性まひ。アテトーゼ型。 生活:電動車いすで移動。 e―AT 利用歴は長く、20年近く前から取り組んでいる。シンプルなゲーム、ワープロの 利用から始まって、現在は、トラックボール、キーガード、拡大鏡、読み上げメーラーなど を使用して MAC パソコンでインターネットやパソコンメール、 ゲームなどで楽しんでいる。 特に、描画に興味をもち、年賀状のデザインをしたり、個展を開いたり活動している。入所 の施設では、2人部屋で寝た姿勢でいることが多い。友人関係良好で、友人多数。 支援者プロフィール 名前:佐野将大 :香川県立高松養護学校勤務。 :24歳 経緯:大学生の頃より、電動車いすのボランティアや旅行に谷澤さんと一緒に行っていた。県立高 松養護学校に勤めるのをきっかけに、谷澤さんから e-AT 使用に関して相談を受けるように なる。職場の先輩の先生方に指導を受けながら(AT サポート研究会という自主サークルに 参加)サポートを続けている。e-AT 支援については今年で3年目となっている。