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今 は 、 減 っ た 魚 が 多 い わ な 。 藻 場 も 少 な く な っ た 。
櫃石 島の元たて網 漁 師 一年中獲れるけど、旨いんは子を持つ 前やな。春先 に な る と 、 き れ い な 色 し た タイが獲れる ん や 。 婚 姻 色 ゆ う て 、 オ ス は 黒 い 模 様 が 出 る。 シ タ ビ ラ メ な ん か も、 い つ も は 白 い 腹 が 黒 く な っ て く る 。 腹 の と こ ろ が ま だ ら に な る い う ん か な。 同じ種類の魚 で も 、 時 期 時 期 で 少 し ず つ 様子が違って く る や ろ 。 だ か ら 漁 師 は 頭 がな、利口で な か っ た ら 獲 れ ん の や 。 あ とは体力な。 体 力 が あ る 人 は 獲 れ る 。 ││ 魚の知恵とか漁の技術はどうやって 身につけたん で す か ? 経験いうか な 。 い っ ぺ ん に ど ん と は い か ん わ な。 特 に 素 人 や っ た ら な お さ ら な。何べんで も 失 敗 を 繰 り 返 し て 。 ││ 東山さんは、おいくつから漁師をは じめられたん で す か ? も う、 ず っ と 後 に な っ て 。 歳 ぐ ら い か。 そ れ ま で は 岡 山 で 乾 物 屋 の 小 僧 を くなってしもうたな。 ところを﹁ 藻場 ﹂言うんじゃけど。少な モ。この辺では海藻なんかが繁っている ど、ほとんど消えたしもうた。あとアジ れはサザエやアワビの餌になるんじゃけ が減ったなぁ。ホンダワラにアラメ。こ に行きよったんやけどなぁ。それに海藻 とかな。それからミル貝。磯によく採り それから、貝類もおらんようになった な。普通のアサリはもちろん、鬼アサリ ろ、減ってしまった魚が多いわな。 ら覗いたらいっぱい泳いどった。いろい スズメダイ。ベラなんかでも、石の上か ようになった。銀ボケとかな。それから、 ようけおったけど、今はすっかりおらん べりが遊び場やったから。きれいな魚も ど無理やな。わしらが子供の頃は、海岸 がようけおった。今はとてもじゃないけ かったし、ここの港でも、アサリや貝類 すよね? ││ 魚でいうと、櫃石島はタイが有名で ら、網を放り込んだらすぐ引き上げる。 いうて。大潮のときは潮止まりが短いか るときでないといかんのよ。 ﹁ 潮止まり ﹂ 網にはかからんから。たて網は潮が止ま くとか。そういうときじゃないと、たて な。例えば、産卵期じゃから魚がよう動 魚がよう動くかもわかってないといかん ねらい目が違うんや。それにどの時期に て、夜行性と昼行性がおって、それぞれ イ や 赤 メ バ ル を 狙 う と か。 魚 種 に よ っ しもうたけど、アイナメを狙うとか、タ シタビラメとかな。昔とは魚が変わって が あ っ て な。 今 頃︵ 4 月 初 旬 ︶や っ た ら た て 網 や か ら、 ま あ い ろ い ろ じ ゃ わ な。漁をする時期によってねらい目の魚 か? ││ 東山さんはどんな漁をしていました 東山さんから受け取った言葉 今 は 、減 っ た 魚 が 多 い わ な 。 藻場も少なくなった。 75歳まで立て網漁を続けていた東山弘さん。穏やかな海の、少し波が立っている場所を指さしな がら、 「あれが潮目」と教えてくれました 海を見渡す山上で、かつての漁場を見ながらたて網漁の 話に花が咲きます 島の氏神さんを祀る王子神社。背後に瀬戸大橋がそびえています 林の中 を歩いていると、急に視界が開けて青い海と島々が現れました 櫃石島から目と鼻の先にある松 島は岡山県の島。海には見えない県境があります 櫃 石 島の元たて網 漁 師 東 山 弘さん ︵ 坂 出 市 ︶ 昔 はベラな んか も 、石の 上 から 3 の ぞいたらいっぱい泳いどった 。 櫃石島の山から見下ろし た瀬戸内海は、とてもきれい でした。東山さんは、たて網 漁のことを伝えたいと言うでもなく、昔の海を取り戻し たいと熱意を見せるでもなく、ただ昔の話をしてくれま した。話を聞いて、私たちが昔のきれいな海を知らない ことに一番危機を感じました。知らない魚の名前がたく さん出てきて、自分の海との関係の希薄さを、また、魚を 食べなくなっていることで海の変化に気づかずに生活 していることがわかりました。 やったり、手 に 職 を つ け よ う と 思 っ て 散 参 加 者 の 感 想 髪屋の学校に 入 っ た り 。 1 年 学 校 に 通 っ て、インター ン を 1 年 や っ て 、 免 許 を も らってからは 、 岡 山 で 理 容 師 を し よ っ た んやけど、た ま た ま 島 へ 帰 っ て く る 縁 が あってな。や っ ぱ り 子 供 の 時 分 に こ こ で 遊 ん ど る か ら、 そ の 記 憶 が 残 っ と っ て、 海が恋しくな っ た の か も し れ ん 。 ほ い で 漁師になった ん 。 お 金 は よ う け は 儲 け な ん だ け ど、 漁 師 が 一 番 楽 し か っ た わ な 。 年 以 上 漁 師 を さ れ て い て、 何 か 海 自分の思い通 り に 仕 事 が で き る か ら 。 ││ が変わったと 思 う こ と は あ り ま す か ? 海の汚れが も の す ご い な 。 昔 は も っ と きれいだった 。 ヘ ド ロ み た い な も ん は な 5 40 1 (香川大学3回生) (昭和10年生まれ・80歳) いのうえ ひがしやま ひろし 井上なつみさん 東山 弘さん 瀬戸大橋が架かる坂出市の櫃石島。東山弘さんは、岡山県に生まれ、 戦時中の学童疎開で父の里である櫃石島に移り住みました。その後、 一度は岡山で働くも、瀬戸大橋の開通を機に島に戻り、40歳で漁師に。 今回初めて櫃石島を訪れた井上さんは、島で一番見晴らしの良い山に 登り、かつての漁場を見ながら、東山さんが漁師になった理由や「たて 網漁」について質問を投げかけます。たて網漁とは、海中に網を立て て魚を獲る昔ながらの漁法。海の深さや季節によって獲れる魚が違う ことや、潮目の見極め方など、ベテラン漁師ならではの話が続きます。 きっと一見穏やかに見える海も、東山さんの目には様々な生き物が暮 らす変化に富んだ海に見えていたに違いありません。 30 2 4 コーディネーターより