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幕張と月島における実空間と場所の特性について

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幕張と月島における実空間と場所の特性について
−日本大学生産工学部第43回学術講演会(2010-12-4)−
4-68
教育環境としての街の空間構成と児童のイメージ構造に関する研究 その1
-幕張と月島における実空間と場所の特性について-
日大生産工
日大生産工(院)
日大生産工
1 研究の背景と目的
空間認知に関する多くの研究により、人は物理的環
境の中を行動する際、常に“心的地図”を意識の中で
備えていることが確認されている。子どもを対象とし
た代表的な研究としてピアジェ(1967)の「空間認知の
発達研究」があり、空間配置場面や地理学的空間を用
いた一連の研究成果をもとに空間概念の形成において
位相的、経路的、構成的空間の3段階があることが提
唱されている。我が国における急速な少子化の進行、
並びに地域を取り巻く環境の変化に伴い、次代の社会
を担う子どもたちの健やかな育成のためには、家庭、
地域、学校がそれぞれの教育力の充実を図ると共に、
それらの教育力を結集していけるような環境づくりを
行うこと、また多様な生活から成り立つ街の中で、発
達段階における子どもと生活環境の変化と、空間認知
の関係性を考えることは重要な課題であると考えられ
る。
本研究は、教育の場を学校内のみに限定するのでは
なく、都市環境を教育のための空間として捉え、児童
が描いたスケッチマップを用い、児童を取り巻く環境
の変化と空間認知について分析・考察することにより
街の空間構成と児童のイメージ構造の関係性について
明らかにし、建築地域計画における計画的方法論への
展開を目的としている。
本稿では、中・高層集合住宅群(幕張ベイタウン)
と低層高密度住居群(月島)を対象地域とし、児童の
描いたスケッチマップからまちの構成要素を抽出する
ことで、児童がイメージする地域環境を把握し、どの
ように周辺環境を認知しているかを考察する。
2.研究概要
2.1.分析対象地域の空間概要(図1、2参照)
調査対象地域はグリッドパターンを持つ新興市街地
の幕張ベイタウンと歴史的市街地の中央区月島地区と
する。
2.2.調査対象者
幕張では打瀬小学校に通う児童、月島では月島第一
・第三小学校に通う児童を調査の対象とし両地域とも
学童保育所にて調査を行った。
表1 学年別人数の内訳
学年
場所
1
幕張 7
月島 7
2
11
5
3
8
8
4
5
4
5
1
5
6
0
6
表2 調査期間
計
33
35
場所
幕張
月島
期間
2003年8月
1999年8月
表3 対象地域人口数
年代
地名
人口数
世帯数
店舗数
2003
幕張
13,023
4,603
93
1999
月島
10,093
4,833
543
○高野 祐太
伊藤 顕 大内 宏友
1
2
公園大通り
打瀬小学校
海浜打瀬小学校
打瀬中学校
メッセ北通り
ベイタウン・コア
児童公園
1
メッセ大通り
超高層街区
高層街区
2
中層街区
美浜プロムナード
都市計画道路
アクセス路
富士見通り
コミュニティ路
花見川通り
200
海浜大通り
0 100
500m
図1 分析対象地域(幕張)
1
月島第一小学校
2
月島第三小学校
晴海中学校
児童公園
清澄通り
西仲商店街
超高層街区
低層街区
月島図書館
都市計画道路
商店街通り
路地
1
150
2
0 50
300m
図2 分析対象地域(月島)
2.3 調査方法及び分析方法
ⅰ)児童一人一人に対し、45分以内に自分の知ってい
る範囲の地図を記憶に基づいて自由に描いてもらう自
由描画法による調査を行い、児童には地図を描く際、
建物や木など目印となるものなど、知っているものす
べて描き入れるよう指示をした。児童に描いてもらっ
た地図をスケッチマップと呼ぶ。
ⅱ)スケッチマップに描かれた構造を把握する為に、
KJ法を用いて類型分けを行い、描かれた構成要素を比
較することで実空間と児童のイメージ構造の関係性に
ついて考察する。
3 スケッチマップの類型化
それぞれのスケッチマップマップをKJ法に基づいて
分析した結果、Ⅰ類からⅣ類(幕張・月島共通)に分類
することができる。スケッチマップを考察すると、表
現がルート的なものと構成的なもの、自分がその空間
に立っている状況を想像しながら空間を捉えている主
観的視点のものと、上空から見た様な地図で空間を捉
えている客観的視点ものに大別できる。それらの視点
から、Ⅰ~Ⅳ類を表2のように関係づけることができ
る。ともに、学年が上がるにつれ、段階的にⅠ類から
Ⅳ類への移行がみられた。
Study on urban space composition as an Educational environment and image structure of children
-Characteristic of real space and place in Makuhari and Tsukishima Yuta TAKANO,Akira ITO,Hirotomo OHUCHI
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表7 スケッチマップに描かれた要素の内容とその分類
表8 類型別要素カテゴリー度数
図3 各類型のスケッチマップ
表4 類型別学年別人数表
4-2.スケッチマップに描かれた要素
ⅰ)要素順位
スケッチマップに説明書きのあるものや、判断でき
るものだけを数え、児童が描いたスケッチマップ上か
ら抽出した要素を考察した。
月島)
月島においては、月島児童館、月島第一小学校、月
島第一公園と児童の活動拠点となる場所が多く描かれ
ていることが分かる。店舗に関する要素も多くみられ
た。
幕張)
まちがグリッドで構成され交差点が多いことから横
断歩道が良く描かれている。遊具を描く子どもが多く
公園や公園内にある要素が上位に挙がっている。また
空き地や公園、高層住棟など目立つものの要素を描く
子供も多い。店舗などの詳細な要素をえがくことは少
ないことがわかる。
表5 要素の順位(幕張)
表6 要素の順位(月島)
図9 類型別要素カテゴリー割合
ⅱ)要素別カテゴリー割合
描かれた要素を表6に示す。カテゴリー毎に分類し
た結果を表7に示す。
月島)
b.店舗が全体の28.5%を占めている。次にc.交通
関係の描写が23.6%でe.家・目立つ物が20.7%。上位
3要素は均衡しているが、他の要素とは差があること
がわかる。
幕張)
幕張はe.家・目立つものが全体の41.6%を占めてい
る。c.交通関係が19.7%でf.遊びに関する事象が
14.5%。一つの要素がほぼ半数を占めていることがわ
かる。
5.考察
物理的な環境の違いとスケッチマップに描かれた要
素の比較・分析から以下のようにまとめられる。
ⅰ)高層住棟が子どもの認知に大きく影響を与えてい
ることがわかる。幕張ベイタウン内にも住棟の一階部
分に店舗が併設されているが詳細な描写は見受けられ
ない。高層住棟を建設する上で、まちの景観が大きく
変化するとともに子どもの育成環境への影響も考慮し
なければならない事がいえる。
ⅱ)実際にまちを構成する要素数は幕張よりも月島の
方が多いが、スケッチマップで描かれた要素数は幕張
の方が多くなっている。このこととより月島は認知さ
れる要素は少ないが商店の名前など詳細を把握するこ
とが多い。それに対し幕張は認知される要素は多いが
詳細の把握にはムラがあることがわかる。共にグリッ
ドパターンの持つ街区であるが用途混在の度合いや密
集の仕方の違いから、以上のような差異が生じると考
えられる。
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