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2−1−2−1 親水性
【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−1 親水性、疎水性(接触角の測定) 【技術内容】 分離プロセスに使用される多孔性高分子膜は、通常ポリスルホン等の疎水性の耐熱性樹脂が使用さ れる。そのため、親水性の物質を添加したり、化学処理、プラズマ処理等により親水化が行われる。 高分子材料表面の親水性、疎水性は、液体と材料との接触角を測定する方法が一般的である。代表 的には、多孔質体表面に滴下した液滴とサンプル面との角を静置状態で測定するが、傾斜をつけたサ ンプル面上で液滴の動的な測定を行う方法、液体の中にサンプル片のメニスカスを測定する方法もあ る。接触角はゴニオメーター、顕微鏡等で直接測定するほか、ビデオカメラで撮影後 Young-Laplace 法、Bashforth/Adams 法等のソフトを用い画像解析により求められる(図 1)。表面エネルギーの計算 ソフトも用意されている。(θ:接触角) また、膜内部の親水化を確認するために、環境 SEM により細孔内への水の進入を直接観察すること もある(図 2) 【図】 図1 低温プラズマ処理による非対称ポリスルホン膜の親水化 出 典 :「 Hydrophilic modification of polymeric membranes by low temperature H2O plasma treatment.」 、「J Membr Sci VOL.204 NO.1/2」、2002 年 7 月 15 日、STEEN M L、JORDAN A C、FISHER E R 著、ELSEVIER 発行、344 頁 Fig.1 Images acquired with digital image capture of the DSA 10 before (A) and after (B) plasma treatment. The image in B shows that the water drop completely disappears indicating a highly hydrophilic surface has been created. from ELSEVIER. − 195 − Reprinted with permission 図 1 の説明:非対称ポリエーテルスルホン膜の低温プラズマ処理による親水化。処理前(A)に比較し て処理後(B)では液滴が完全に消え、高度に親水化した表面が形成されている。 図2 親水化処理ポリエーテルスルホン膜の環境 SEM 写真 出 典 :「 Hydrophilic modification of polymeric membranes by low temperature H2O plasma treatment.」 、「J Membr Sci VOL.204 NO.1/2」、2002 年 7 月 15 日、STEEN M L、JORDAN A C、FISHER E R 著、ELSEVIER 発行、354 頁 Fig.9 ESEM image of the cross section of a PES membrane in situ and instantaneously. Dark areas of the image indicate complete wetting of the membrane. The tight side of the membrane is oriented at the top of the image. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 2 の説明:ポリエーテルスルホン膜を飽和水蒸気環境に曝した条件での環境 SEM 写真。黒く平坦 に写っていることは、飽和水蒸気条件で水が液滴を作ることなく表面に濡れた状態で細孔内部まで浸 透していることを示し、プラズマ処理によりポリエーテルスルホン膜の細孔表面が完全に親水化した ことを示している。 【出典/参考資料】 「Hydrophilic modification of polymeric membranes by low temperature H2O plasma treatment.」、 「J Membr Sci VOL.204 NO.1/2」、2002 年 7 月 15 日、STEEN M L、JORDAN A C、FISHER E R 著、ELSEVIER 発行、341−357 頁 − 196 − 【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−1 親水性、疎水性(プラズマ処理の影響) 【技術内容】 分離プロセス等に使用される多孔性高分子膜は、疎水性の耐熱性樹脂が使用されることが多く、膜 表面に親水性が求められる場合には、親水性物質の添加、化学処理、表面グラフト処理およびプラズ マ処理等により親水化が行われる。 例えば、ポリプロピレン膜を種々の雰囲気でプラズマ処理を行い、処理したサンプル表面上の蒸留 水の水滴の前進及び後退時の接触角をゴニオメーターで測定することにより、膜表面の親水性、疎水 性の変化を把握することが出来る。アリルアミン(A)、水(B)、アクリル酸(C)およびフレオン-116(D) 流通下でのプラズマ処理の結果を図1に示す。アリルアミン、水、アクリル酸では、プラズマ処理時 間が長くなるに従い接触角が低下し、水の場合に最も接触角が小さくなった。一方、フレオン-116 で は接触角が大きくなり撥水性が高められたことが分かる。接触角の変化は、表面の化学的性質の修飾 と共に、表面モルフォロジーの変化の影響も受けることとが SEM 観察により検証されている。 接触角は、膜と接触する液体との親和性に相関する。表1に示すように、ポリテトラフルオロエチ レン(e-PTFE)膜では、膜とアルコール類の溶解性の差が小さいほど接触角が小さくなる。 【図】 図1 ポリプロピレン膜のプラズマ処理 出典:「Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 − 197 − 7882 頁 Fig.3 Water contact angle of plasma treated PP membrane: (a)allylamine; (b)water: (c)acrylic acid: (d)Freon-116,respectively. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 1 の説明:アリルアミン(A)、水(B)、アクリル酸(C)およびフレオン-116(D)流通下でプラズマ処 理したポリプロピレン膜上の水滴の接触角の、プラズマ処理時間依存性を示す。 表1 PTFE と各種アルコールの溶解性と接触角 出典:「Dehydration of water-alcohol mixtures by pervaporation and vaporpermeation through surface resintering expanded poly(tetrafluoroethylene)membranes. 」、「 Eur Polym J VOL.38 NO.1」、2002 年 1 月、HUANG J、WANG Y-C、LI C-L、LEE K-R、FAN S-C、WU T-T、LAI J-Y 著、ELSEVIER 発行、186 頁 Table.6 Contact angle and the solubility parameter difference between the 340℃ surface resintering e-PTFE membrane and alcohol. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 2 の説明:ポリテトラフルオロエチレン(e-PTFE)膜における、膜とアルコール類の溶解性の差と 接触角の相関を示す。 【出典/参考資料】 「 Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 7879−7885 頁 「Dehydration of water-alcohol mixtures by pervaporation and vaporpermeation through surface resintering expanded poly(tetrafluoroethylene)membranes.」 、「Eur Polym J VOL.38 NO.1」、2002 年 1 月、HUANG J、WANG Y-C、LI C-L、LEE K-R、FAN S-C、WU T-T、LAI J-Y 著、ELSEVIER 発行、179 −186 頁 − 198 − 【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−2 非特異吸着 【技術内容】 有機高分子多孔質である吸着剤や分離膜を物質精製に利用する場合に精製対象物質の精製後の回収 率と純度が問題となる。吸着剤を利用する場合では、吸着剤に精製対象物質を一旦吸着させて、溶離 して回収するが対象物質や不純物が吸着剤に非可逆的に吸着して、非特異吸着を起こすことがある。 また、分離膜の場合も同様に精製対象物質の膜透過時に対象物質または不純物が分離膜に非可逆的 に吸着して非特異吸着を起こすことがある。特に生体成分であるタンパク質やペプチドなどの分離精 製プロセスにおいて、吸着剤、分離膜への非特異吸着により、精製対象物質の回収率や純度が低下す る。 また、有機高分子多孔質体を利用した医療材料、人工臓器、再生医療材料などの使用時においても 非特異吸着を防止して、人口的に作られた材料と生体成分の界面での活性化・炎症などの様々な反応 を抑制する必要がある。 非特異吸着を防止するためには、吸着剤、分離膜の表面の親水性・疎水性の制御、モルフォロジー の制御、表面組成の改良などが行われる。 ここでは、アフィニティクロマトグラフィーでの吸着剤の非特異吸着の評価例について取り上げる。 吸着剤を用いた分離精製の方法として、吸着剤を充填したカラムに精製対象物質を含んだ粗精製溶 液を通液して、精製対象物質のみを選択的に吸着剤に吸着させる。吸着後、不純物を含んだ溶液を洗 浄、置換する操作を行い、次に吸着した精製対象物質を溶離させて回収することが行われる。 純度 吸着 洗浄 回収率 溶離 非特異吸着 非特異吸着が大きいと溶離液中の対象物質濃度が低下したり、溶離液中に不純物が混入するために、 回収率や純度の低下につながる。 回収率 = 溶離後の対象物質量/吸着前の対象物質量 − 199 − ×100 (%) 【図】 図1 ラジアルフローカラムの例示(液体流路の異なるものを 2 種類例示) 出典:「Continuous superporous agarose beds in radial flow columns」 、「J. of Chromatography A VOL.925」 、2001 年 6 月 8 日、PER-ERIK GUSTAVSSON、PER-OLOF LARSSON 著、ELSEVIER 発行、71 頁 Fig.1 Drawings of radial flow columns used with continuous beds. (a)Type 1 column constructed to work in both flow directions (centrifugal and centripetal flow). (b)Type 2 column with simplified design used with a centripetal (inward) flow. The figures are not drawn to scale and dimensions are given in the text. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 1 の説明:タンパク質、ペプチドなどの精製には、アーキシャルフローカラム(軸方向流れ)、ラ ジアルフローカラム(横方向流れ)などが用いられるが、図 1 では、ラジアルフローカラムの液体流 路の異なるものを 2 種類例示している。カラムへの溶液の導入と溶液の排出の部位が異なる形式とな っている。 図2 アフィニティクロマトグラフィーの吸着、洗浄、溶離プロセス − 200 − 出典:「Continuous superporous agarose beds in radial flow columns」 、「J. of Chromatography A VOL.925」 、2001 年 6 月 8 日、PER-ERIK GUSTAVSSON、PER-OLOF LARSSON 著、ELSEVIER 発行、76 頁 Fig.4 Affinity chromatography purification of lactate dehydrogenase on superporous continuous agarose bed derivatized with Cibacron Blue 3GA. Column: 65ml radial flow column type 1. Sample: 200ml of a crude bovine lactate dehydrogenase extract. Adsorption – wash buffer: 0.02M sodium phosphate buffer, pH7.0, containing 1mM EDTA and 2mM β-mercaptoethanol. Elution buffer: adsorption – wash step was carried out at a flow-rate of 10ml/min and the elution step was carried out at a flow-rate of 5ml/min. Further details in Section 2. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 2 の説明:ブルー染料色素を固定化した吸着剤を用いてタンパク質の精製をアフィニティクロマ トグラフ法で実施した。吸着(Adsorption)、洗浄(Wash) 、溶離(Elution)プロセスを示す。溶離プ ロセス曲線の面積値が回収された溶離液中の対象物質量を示しており、吸着前の対象物質量で除すこ とにより、回収率を求めることが出来る。左軸がタンパク質濃度、右軸がタンパク質の活性を表して いる。 【出典/参考資料】 「Continuous superporous agarose beds in radial flow columns」、「J. of Chromatography A VOL.925」、2001 年 6 月 8 日、PER-ERIK GUSTAVSSON、PER-OLOF LARSSON 著、ELSEVIER 発行、69−78 頁 − 201 − 【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−3 モルフォロジー(SEM) 【技術内容】 多孔質体表面の微細構造解析には、最も直接的な情報を与えることから走査型電子顕微鏡(SEM)が一 般的に使用される。 細く絞られた入射電子ビームを試料表面に走査させ、試料表面から発生する 2 次電子を検出し、発 生量を輝度の信号に変換すると目的の SEM 像が得られる。2 次電子は凹凸のうち凸 部分の方が発生量 が多いため、SEM 像では凸部分が明るく、凹部分が暗いものとなり、三次元的な凹凸 をディスプレイ や写真のような二次元の像として表すことができる。電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)は電子ビ ームが細く絞れるため、汎用 SEM に比べ高分解能観察が可能で 4 nm の分解能が得られる。 水分を含まない試料は,電顕試料室内の真空中でも変形することがないので,試料作製も簡単で容 易に観察することができるが、多量の水分を含む試料では形態を損なうことなく如何に脱水・乾燥す るかが重要で,これを行なわないと真空中で変形し,試料本来の微細形態を観察することができない。 このために凍結乾燥や液化炭酸ガスを用い臨界点条件下で表面張力を無くして乾燥を行う臨界点乾燥 を行なう。 また電子線照射により発生する反射電子は、低真空でも検出することが可能であることから、試料 室をより大気圧に近い低真空(∼270Pa)で、含水試料の形を変えずに観察することができ、食品、バイ オ分野を中心に利用されている。 また、X 線を検出する事により 1 µmφ の空間分解能で 6C∼92U の元素分析を行う事ができ、各元素の 分布を示すマッピング像が得られる。 【図】 図1 固体表面での電子線との相互作用 出典: 「電子顕微鏡による多孔質体の形態観察」 、 「多孔質体の性質とその応用技術」 、1999 年 3 月 30 日、村田幸夫著、フジテクノシステム発行、255 頁 図 1 固体表面での電子線との相互作用 図 1 の説明:通常の SEM では、試料に電子線を照射することにより発生する二次電子を検出する。 反射電子は低真空でも検出することが可能であることから、反射電子を検出することにより低真空(∼ 270Pa)で含水試料の形を変えずに観察することができる。 − 202 − 図2 プラズマ処理後の SEM 写真 出典:「Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 7881 頁 Fig.2 SEM photograph after plasma treatment for 40min: (a) no gas; (b) acrylic acid; (c) allylamine; (d) water ; (e) Freon-116,respectively. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 2 の説明:ポリプロピレン多孔質膜 Celgard 2500 を各種ガスによりプラズマ処理(40 分間)し た表面を SEM で観察した。処理ガスを含まない場合(a)には、 原料膜と同様の 0.21x0.05μm の細孔が、 観察される。酸素を含むアクリル酸(b)および水(d)の条件で処理すると、膜が破壊され膜強度が低下 する。アリルアミン(d)では膜表面での重合による被覆が観察される。一方、フレオン-116(e)では、 表面形状の変化は認められない。 【出典/参考資料】 「電子顕微鏡による多孔質体の形態観察」、「多孔質体の性質とその応用技術」、1999 年 3 月 30 日、 村田幸夫著、フジテクノシステム発行、255−260 頁 「 Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 7879−7885 頁 − 203 − 「Characterization and permeation of microporous poly(ε-caprolactone)films.」 、「J Membr Sci VOL.198 NO.1」、2002 年 3 月 31 日、LIN W-J、LU C-H 著、ELSEVIER 発行、109−118 頁 − 204 − 【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−3 モルフォロジー(表面粗さ、AFM) 【技術内容】 材料の表面粗さ測定は、JIS B 0651 に規定されている。試料表面上に触針を走査させ、その際に触 針の上下方向の移動量を検出することで、断面形状を精密に(数十ナノメートル程度)評価する(図 1)。測定断面曲線(図 2a)は、「表面荒さ」、「表面うねり」を含む曲線で、うねり(図 2b)を除 いた曲線を粗さ曲線という。粗さの程度は、粗さ曲線の中心線で決まる中心線平均粗さ Re(μm)、あ るいは最大の山から最大深さの長さを引いた最大高さ Rmax(μm)で示す。 試料表面の微細形状および表面粗さの解析には、大気圧下で原子レベルの分解能を有する原子間力 顕微鏡(AFM)が使用される。導電性のない高分子などの絶縁物の観察にも有効で、金属蒸着などの前処 理を必要としないなどのメリットがある。AFM では、カンチレバーと呼ばれる微小な探針と試料表面 間に働く原子間力(斥力あるいは引力)を検出し、その力が一定になるように試料表面を走査し、表 面凹凸を描き出す。カンチレバー背面にレーザーを照射し、反射光を 4 分割のフォトディテクタに入 射させ、光の変位量として検出する。測定手法としては斥力領域で動作する接触式と引力領域で動作 する非接触式の 2 種類がある。高分子材料や生体試料など柔らかい試料の観察には、非接触式が有効 である。図 3 に PTFE 膜の AFM 画像を例として示す。 【図】 図1 表面粗さの測定 出典:「「表面粗さの用語」に関する新しい JIS について―JIS B 0660 : 1998 表面粗さ―用語 (第 I 部:表面及び表面粗さパラメータ)」、 「計量研ニュース Vol.46 合研究所発行、 No.7」、1998 年、産業技術総 図 1 表面粗さの測定、 http://www.aist.go.jp/NRLM/section/kouhou/news/n4607.htm 図 1 の説明:表面粗さ測定の概念図を示す。 − 205 − (検索日:2004 年 12 月 31 日) 図2 表面粗さを求める各種の曲線 出典:「「表面粗さの用語」に関する新しい JIS について−JIS B 0660 : 1998 表面粗さ−用語 (第 I 部:表面及び表面粗さパラメータ)」、 「計量研ニュース Vol.46 合研究所発行、 No.7」、1998 年、産業技術総 図 2 表面粗さを求める各種の曲線、 http://www.aist.go.jp/NRLM/section/kouhou/news/n4607.htm (検索日:2004 年 12 月 31 日) 図 2 の説明:「測定断面曲線」は、”測定曲線の基準線からの偏差”であり、「表面粗さ」、「表面うね り」や「形状偏差」を含む曲線で、粗さ曲線及びろ波うねり曲線を求めるときの基準となる。 「粗さ曲線」は、各種の表面粗さパラメータを求める際の基となる曲線で、測定断面曲線から所定 の波長より長い表面うねり成分を位相補償形高域フィルタで除去した曲線”である。 「ろ波うねり曲線」は、”測定断面曲線から、所定の波長より短い表面粗さ成分を位相補償形低域フ ィルタで除去した曲線”であり、 「粗さ曲線の平均線」は、”測定断面曲線の抜き取り部分におけるろ波 うねり曲線を直線に置きかえた線”である。 − 206 − 図3 260℃再焼結 s-PTFE 膜の(a)3 次元及び(b)2 次元 AFM 画像 出典:「Dehydration of water-alcohol mixtures by pervaporation and vaporpermeation through surface resintering expanded poly(tetrafluoroethylene)membranes. 」、「 Eur Polym J VOL.38 NO.1」、2002 年 1 月、HUANG J、 WANG Y-C、LI C-L、LEE K-R、FAN S-C、WU T-T、LAI J-Y 著、ELSEVIER 発行、184 頁 Fig.4 AFM images of the surface of the s-PTFE(260℃ resintering) membrane: (a)3-D image, (b)2-D image. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 3 の説明:260℃で処理した PTFE 膜表面の状態を AFM で測定し、3 次元(a)および 2 次元で表示し、 表面粗さを求めている。 【出典/参考資料】 「「表面粗さの用語」に関する新しい JIS について−JIS B 0660 : 1998 表面粗さ−用語 (第 I 部:表面及び表面粗さパラメータ)」、 「計量研ニュース Vol.46 No.7」、1998 年、産業技術総 合研究所発行 http://www.aist.go.jp/NRLM/section/kouhou/news/n4607.htm 「Dehydration of water-alcohol mixtures by pervaporation and vaporpermeation through surface resintering expanded poly(tetrafluoroethylene)membranes.」 、「Eur Polym J VOL.38 NO.1」、2002 年 1 月、HUANG J、WANG Y-C、LI C-L、LEE K-R、FAN S-C、WU T-T、LAI J-Y 著、ELSEVIER 発行、179 −186 頁 「 Atomic Force Microscopy of Cellulose Membranes Prepared from the N-MethylmorpholineN-oxide/Water Solvent System.」 、「J Appl Polym Sci VOL.86 NO.13」 、2002 年 12 月 20 日、ZHANG Y、SHAO H、HU X 著、ELSEVIER 発行、3389−3395 頁 − 207 − 【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−4 表面組成(FT-IR XPS) 【技術内容】 ポリプロピレン多孔質膜は、工業的な使用に対し満足できる熱的、機械的および化学的な安定性を 持つ安価な高分子膜であり、飲料や医薬の除菌、廃水処理、半導体用超純水の製造、リチウム二次電 池用セパレータ等に広く使われている。 ポリプロピレン膜自体は疎水性であるが、使用に際しては目的に応じて膜表面処理を行い、濡れ特 性、印刷性、摩擦性等を調整している。その方法として、化学処理、コロナ放電、フレーム照射、グ ロー放電プラズマなどが知られている。中でも、低温プラズマ法は、バルクを変化させることなく、 種々の反応ガスを使用して均一に再現性良く表面を処理できる特徴がある。 ここでは、ポリプロピレン膜のフレオン-116 ガスでのプラズマ処理における、膜表面の化学的変化 を FTIR(フーリエ変換赤外分光法)及び XPS(X線光電子分光分析装置)で検討した例を示す。 多孔質ポリプロピレン膜 Celgard 2500 を、フレオン-116 圧を 0.5Torr で一定とした条件で、高周 波発生装置から 50∼100W の入力で 1∼40 分間プラズマ処理を行った。走査型電子顕微鏡観察からは、 40 分間のプラズマ処理後でも、膜表面にモルフォロジーの変化は認められなかった。撥水性の変化を 検討した水の接触角測定では、処理時間 5 分間までは大きくなったが、その後 20 分の処理まで大きな 変化は認められなかった。この時の FTIR スペクトルの変化を図 1 に示す。時間経過と共に、1300cm-1 の C-F 伸縮振動吸収強度が増加し、表面に C-F 結合が連続的に形成されていることを示す。また、XPS 測定においても、C-F 結合の結合エネルギーに対応する 288∼294eV 領域のピークが増大し(図 2) 、FTIR と同様の結果を与えた。このことから、プロピレン膜では一定レベルの C-F 結合が形成されると、そ れ以上プラズマ処理を行っても撥水性は改善されないことが示された。 【図】 図1 Freon-116 で処理した PP 膜の FTIR-ATR スペクトル 出典:「Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 7883 頁 Fig.4 FTIR-ATR spectra of Freon-116 gas treated PP membranes for 0,10 and 20min, respectively. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 1 の説明:プラズマ処理時間が長くなるに従い、1300cm-1 の C-F 伸縮振動吸収強度が増加し、膜 表面に C-F 結合が連続的に形成されていることが示された。 − 208 − 図2 Freon-116 で処理した PP 膜の C1s XPS スペクトル 出典:「Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 7883 頁 Fig.5 C1s XPS spectra of PP membranes treated by Freon-116 gas for (a)0min, (b)5min, (c)10min and (d)20min,respectively. Reprinted with permission from ELSEVIER. 図 2 の説明:プラズマ処理時間に伴う、XPS スペクトルの変化を示す。285eV 付近の C1S ピークは、 C-C 結合炭素に結合する炭素原子に相当する。294eV、292eV、290eV、288eV のピークは、各々-CF3、 -CF2、-CF、-CFx に結合した炭素原子に対応する。プラズマ処理時間を 5 分から 20 分に増やすと、F/C 原子比は 0.869 から 1.934 に増加した。 【出典/参考資料】 「 Surface characterization of microporous polypropylene membranes modified by plasma treatment.」 、 「Polymer VOL.42 NO.18」、2001 年 8 月、BAE B、KIM D、CHUN B-H 著、ELSEVIER 発行、 7879−7885 頁 − 209 − 【技術分類】2−1−2 【 FI 有機高分子多孔質体の機能と物性/評価方法/表面特性 】C08J9/00* 【技術名称】2−1−2−4 表面組成(赤外顕微鏡) 【技術内容】 発泡性樹脂の局所分析の例として、ポリウレタン発泡体のポリウレタン/尿素含量および膜厚の測定 例を示す。 ポリウレタンは、ジイソシアネートとポリオールの反応(式 1)で得られる。 n OCN-R-NCO + n HO-R’-OH → (-CO-NH-R-NH-CO-OR’-O-)n (1) イソシアネートの一部が水と反応して CO2 が生成し(式 2) 、発泡剤として作用する。 2 OCN-R-NCO + H2O → OCN-R-NH-CO-NH-R-NCO + CO2 (2) 発泡ポリウレタンのセルは、堅い骨格部分と薄い膜から構成される。発泡体の強度は骨格部分によ り決まり、一方、セルが閉じたままでとどまる(クローズドセル)か、開放状態(オープンセル)と なるかは膜部分により決まる。 発泡ポリウレタンにおけるセル発泡体構造の生成メカニズムの検討として、膜部分でのウレタンお よび尿素の相対濃度と膜の厚さを、FT-IR 局所分析法で行った。 分子量 3000g/mol、OH 基数 56 のポリエーテル-ポリオールをベースとするグリセロール 100 部に、 水 4 部、49.9 部の TDI(toluene diisocyanate)、触媒、発泡安定化剤を加えた処方で 2.5mm の大きさ のセルの発泡ポリウレタンを調製して測定に用いた。顕微 IR はスポット径 200μm、スポット間距離 100μm の条件で、膜を横断するように測定を行った。 ウレタンおよび尿素の濃度は、各々1728cm-1 および 1638cm-1 のカルボニルの伸縮振動を 1373cm-1 の メチル基の変角運動との相対比較値で示した。図 1 に赤外スペクトルを示す。 膜厚は、メチル基の変角振動の吸孔度 A から、 d=22.53A + 0.08 により求められる。図 2 に示す ように、A と膜厚は良好な直線関係を示す。 膜を横切るラインでの膜厚およびウレタン、尿素の相対濃度の測定結果を図 3 に示す。両端で膜厚 が大きく、相対的に尿素の割合が低い。両端に隣接する部分では、膜厚が小さくまた相対的にウレタ ン量が少なく尿素量か多いことが示された。 【図】 図1 ウレタン、尿素の伸縮振動およびメチルの変角振動領域の膜の赤外スペクトル − 210 − 出典:「Local analysis by infrared microscopy across membranes of a flexible polyurethane foam.」 、「Fresenius J Anal Chem VOL.344 NO.4/5」、1992 年 10 月、STEGER W E、MACHILL S、HERZOG K、GERHARDS R、JUSSOFIE I、SCHATOR H 著、Springer-Verlag 発行、204 頁 Fig.2 IR-spectrum of a membrane in the region of carbonyl stretching vibration of urethane at 1728 cm-1, of urea at 1638 cm-1 and the methyl bending motion at 1373 cm-1. Reprinted with permission from Springer-Verlag. 図 1 の説明:ウレタンおよび尿素の濃度は、各々1728cm-1 および 1638cm-1 のカルボニルの伸縮振動 を 1373cm-1 のメチル基の変角運動との相対比較値で示した。 図2 膜厚とメチル変角モーション間の直線回帰 出典:「Local analysis by infrared microscopy across membranes of a flexible polyurethane foam.」 、「Fresenius J Anal Chem VOL.344 NO.4/5」、1992 年 10 月、STEGER W E、MACHILL S、HERZOG K、GERHARDS R、JUSSOFIE I、SCHATOR H 著、Springer-Verlag 発行、204 頁 Fig.3 Linear regression between thickness of membranes (in μm) and absorbance of methyl bending motion. with permission from Springer-Verlag. 図 2 の説明:TDI のメチル基の変角振動の吸光度 A と膜厚は良好な直線関係を示した。 − 211 − Reprinted 図3 膜厚(a)、ウレタンおよび尿素の相対濃度(b,c)の局所分析値 出典:「Local analysis by infrared microscopy across membranes of a flexible polyurethane foam.」 、「Fresenius J Anal Chem VOL.344 NO.4/5」、1992 年 10 月、STEGER W E、MACHILL S、HERZOG K、GERHARDS R、JUSSOFIE I、SCHATOR H 著、Springer-Verlag 発行、204 頁 Fig.4 Local values according to IR-measurement across membrane. Reprinted with permission from Springer-Verlag. 図 3 の説明:膜を横切る線上での、膜厚(a)、ウレタンおよび尿素の相対濃度(b,c)の測定結果を示 す。 【出典/参考資料】 「Local analysis by infrared microscopy across membranes of a flexible polyurethane foam.」、 「Fresenius J Anal Chem VOL.344 NO.4/5」、1992 年 10 月、STEGER W E、MACHILL S、HERZOG K、 GERHARDS R、JUSSOFIE I、SCHATOR H 著、Springer-Verlag 発行、203−205 頁 − 212 −