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論 文 霧でぬれた有機絶縁材料表面の トラッキング破壊
121 UDC 霧 によ る有 機 材 料 表 面 の トラ ッキ ング 621.315.616.96.015.533:537.529.093 論 文 54-A16 霧 で ぬ れ た有 機 絶 縁 材 料 表面 の トラッキ ン グ破 壊 正 員 西 田 真(秋 田大) 正 員 吉 村 昇(秋 田大) 正 能 登 員 文 敏(秋田 大) 始 お よび放 電 に 引 き続 い て起 こ る トラ ッキ ング破壊 の 1. ま え が き 最 近,有 機 絶 縁材 料 が送 配電 線,電 力 ケ ー プル お よ 関 係 に つ いて の検 討 は少 な い(3)。 一 方 ,電 界 下 で の 水 滴 汚染 を 模 擬 し た方 法 と して は び それ らの 端 末 部分 の 絶 縁物 と し て,更 に は 送電 線 の IEC進 奨 法(4)で代 表 され る,材 料 選 別 の た めの耐 トラ ライ ンス ペ ー サ と して 使用 され るに 伴 い雨,霧,汚 染 物 お よび 紫 外 線 な どの 自然条 件 の有 機 絶 縁 材 料 表 面 の ッキ ング性 試 験 法 が あ るが,こ の方 法 で は生 成 され た 炭 化 物 が電 解 液 の 滴 下 に よ り じ ょう乱 さ れ るた め,ト 放電 劣 化 に及 ぼ す 影 響 に つ い て の 解 明 が 急 が れ て い ラ ッキ ング破 壊 に 至 る時 間 の再現 性 に 問題 が あ り,ま る。 また,我 が 国 の よ うな高 温,多 湿条 件 の 作 られ や た 炭 化 過程 を詳 細 に 検討 す る こ とが で き な い。 そ こで す い環 境 下 で は,屋 外 だ け で な く屋 内に お い て も,有 著 者 らは,こ れ に 代 わ る方 法 と して 超音 波 加 湿 器 を用 機 絶 縁 材 料 表 面 の 湿 気 と放 電 劣化 と の関 係 を 十 分 検討 い,直 径数 μm程 度 の水 滴,と い うよ りは 霧の粒 子 を して お く必 要 が あ る。有 機 絶 縁材 料 の多 くは,そ の表 吹 き付 け る ことに よ る汚染 方 法 を 採 用 し た。 そ して, 面 にお け る放 電 の発 生 に よ り部 分 的 に炭 化 を 生 じ,最 この 方 法 に よ る有 機 絶 縁材 料 表 面 の 水 滴 の接 触 角 とそ 終 的に は トラ ッキ ング破 壊 に至 る(1)。従 って,有 機 絶 の 挙 動,お よ び放 電 開 始時 間 へ の 影 響 につ いて は既 に 縁 材 料 の トラ ッキ ング破 壊 を 防止 す るた め に は,そ の 報 告 した(5)。本 論 文 で は,引き 続 き同様 の方 法 に よる 直 接 的原 因 で あ る放 電 の発 生 を抑止 す る こと は もち ろ 霧 に さ らさ れ た状 態 下 で の,有 機 絶 縁材 料 表面 の 放電 ん で あ るが,そ れ と 同時 に放 電 が 炭 化 劣 化 に 及 ぼ す影 開 始 後 の放 電 発 生 形態 と,そ れ に 伴 って 生 ず る炭 化 開 響 に つ い て も明 らか にす る必 要 が あ る。 始 お よ び トラ ックの 進 展 と トラ ッキ ング破 壊 に至 る時 有 機 絶 縁材 料 表 面 の 湿潤 に よ る放電 の発 生 お よ びそ 在,あ 間 と 劣化 形 態 につ い て検 討 した 。 な お,こ の方 法 に よ 滴の 存 れ ば,霧 の温 度,霧 化量 を比 較 的 広 い範 囲 にわ た り簡 る い は 汚染 物 な ど と電 界 との 重 畳作 用 に よ る も 単 に 制 御 で き る利 点 が あ るが,本 論 文 で は 噴 霧条 件 は 一定 と した 。 れ に伴 う トラ ッキ ング破 壊 の 原 因 は,湿 気,水 の と推 測 され る。 従 来,有 機 絶 縁 材 料 の表 面 につ い て は,水 分 の付 着,拡 散,水 滴 の 接 触 角 な ど物 理 的 な検 討 が多 く報 告 され て い る(2)。しか し,こ れ らはい ず れ も電 圧 の 印 加 され て い な い 場合 の結 果 で あ り,電 圧 印 加 時 の 有 機 絶 縁材 料 表 面 の水 滴 の 挙動 と,そ の放 電 開 実 験装 置,実 験 方法 お よび 試 料 <2・1> 実 験 装 置 実 験 回 路 を 第1図 に,ト ラ ッ キ ング破 壊 の判 定 に 用 い た リレーの 構成 図 を第2図 に 示 す。 トラ ッキ ング破壊 判定 用 リレー に は ホ トカ プ ラ Tracking Breakdown of Organic Insulating Materials in Atmosphere of Fog. By Makoto Nishida, Member, Noboru Yoshimura, Member & Fumitoshi Noto, Member (Faculty of Mining, Akita University). 西田 真:正 員,秋 田大学鉱 山学部電気工学科助手 吉村 昇:正 員,秋 田大学鉱 山学部電気工学科助教授 能登文敏:正 員,秋田 大学鉱 山学部電気工学科教授 昭54-3 2. を 用 い,こ れ を0.5A,2秒 に設 定 し,IEC推 奨耐 ト ラ ッキ ング性 試 験 法 と同 様 の判 定 条 件 と した。 第3図 に電 極 配 置を 示 す 。 高圧 側 電 極 は 直 径1mmの タン グ ス テ ン棒 で,そ の先 端 を半 球 状 に研 摩 し,試 料表 面 <25> 122 電気学会論 文誌A SD:ス ラ イダック Tr:100V/2kV(2kVA) R1:すべり抵抗(0∼zkΩ) R2:100MΩ 第1図 Fig. 1. V:AC電圧 R3:400KΩ 計 A:AC電 R4:10Ω 流計 R5:2kΩ 実 験 回 路 図 Experimental circuit 第4図 diagram. Fig. 4. 霧 の 発 生 装 置 Schematic diagram of fog generation equipment. 第2図 リ Fig. 2. レ ー の 構 成 図 Block diagram of relay. 第5図 Fig. ト ラ ッ キ 5. cation 第3図 Fig. 3. of of voltage of to times tracking from に対 し約30° に配 置 した 。 接 地 側電 極 と して は 厚 さ1 銅 半円 板電 極(半 径4mm)を に は0.25Rの (1) した 。 第4図 に 超 音 波 加 湿 器 に よ る霧 の 発 生 装 置 を示 す。 霧 は 超 音波 加 湿器 ユニ ッ トを用 いて 発 生 させ,フ 約10cmの 試 料 の距 離 は 約10cmで,電 炭 化 開 始 時 間(tc):放 電 開始 か ら炭 化 開 始 ま 炭化 の 進 展 時 間(tg):炭 化 開 始後 トラ ッキ ン グ破 壊 まで の 時 間 の 流 出 速 度 は流 出 口 よ り 距 離 で 約45cm/sで 圧印加後試料表面上で での時間 (3) 速 度 で循 環 し, とな る よ うに した 。 霧 の 発 生 量 は 約2.11cm3/minで,霧 放 電 開 始時 間(td):電 放 電 が 開 始 す る ま で の時 間 (2) ァン に よ って 霧室 中に 供 給 した。 ま た小 形 ポ ンプ を 用 い, 霧 の温 度 が 約19∼20℃ に示す よう に 分 け た。 用 い,そ の 縁 端 丸 み を付 け,電 極 間 隔を4mmと 超 音 波 加 湿 器 中 の溶 液 を10l/minの appli- こで 噴 霧 開始 お よび 電 圧 印 加 後 トラ ッキ ング 破壊 に 至 electrodes. る ま で の時 間を 次 の よ うに 規 定 し,第5図 mmの the breakdown. の進 展 を経 て 最 終 的 に トラ ッキ ング破 壊 へ と 至 る。 そ 電 極 配 置 Arrengement ング 破 壊 ま で の 各 々 の 時 間 規 定 Normalization 電 圧 印 加 か ら トラッキ ング破 壊 まで の 時 間 をttと す る と,tl=t4+tc+tgと な る。 な お炭 化 が 開 始 す る あ る。 霧 の流 出 口 と と,放 電 状 態 時 とは異 な る電 流,電 圧 波 形 とな り,こ 極 の 垂値 方 向 に対 し約 の 時 点 で 試 料 表 面上 に 炭化 が 確認 さ れ る。 従 って,目 30° の角 度 で 直 接 試 料表 面 に霧 を ふ りか け た。 霧室 は 視 上 の 炭 化 の 確 認 と,こ の電 流,電 圧波 形 の変 化 時 を 25×25×30cm3の も って 炭化 開 始 と した 。 大 き さ で,上 部 に 空 気 抜 き を設 け た。 霧 を発 生 させ るた め に用 い た溶 液 は,IEC推 トラ ッキ ング性 試 験 法 に お け る と 同 じ く0.1重 NH4Cl溶 液 で,そ の抵 抗 率 は20℃ 奨耐 量% で450Ω ・cmで <2・3> 試 料 試 料 と して は,エ ポ キ シ樹 脂(CT -200) ,ポ リカ ー ボ ネ ー ト(パ ンラ ィ トK-1300),ポ あ る。 な お,超 音 波 加 湿 器 に よ り発 生 す る霧 の 平 均 半 リス チ レン(ダ イ ヤ レ ック スNo. 77),紙 基 材 フェ ノ ー ル 樹 脂 積 層板(KPL-2411)(以 下 そ れ ぞ れEX ,PC, 径 は 約4.5μmで,一 PS,KPLと 般 に 放 射 冷 却時に 発 生 す る霧 の は2.5×2cm2で,そ 粒 径 分 布 と平 均 半 径 は ほぼ 同 一 で あ る(5)。 <2・2> 実 験 方法 電 極 間 に は300∼1,000Vの 記 す)の4種 所 類 を用 い た。 試 料 の 大 き さ の 厚 さはEXで3.0mm,PC- で2.0mm,PSで3.8mm,KPLで1.5mmで あ 定 の 電 圧 を 印 加 し,そ れ と 同時 に噴 霧 を 開 始 す ると, る。 試 料 は エ チル アル コー ル を 含 ま せ た ガー ゼ で ぬ ぐ 試 料 表 面 で は 霧 の 付 着 に よ って 電 極 間 で 局 部 的放 電 が った 後 乾布 で拭 き,24時 発 生 し,こ の 放 電 に よ って試 料 の炭 化 が 開 始 し,炭 化 した もの を実 験 に 用 いた 。 な お,KPLに <26> 間 以 上 デ シ ケー タ中 に 保 存 は難燃剤が 99巻3号 123 霧 によ る有 機 材 料 表 面 の トラ ッキ ング 添 加 され て い る。 3. 実 験 結 果 お よ び検 討 噴 霧 開始 後,試 料 表 面 で 放 電 が 開 始 す る ま で の過 程 は 次 の よ うに な る(5)。す なわ ち,放 電 は 試 料 表面 へ の 噴 霧 開 始後,時 間 の経 過 と共 に 成 長 した 水 滴 が電 極 間 を 橋 絡 し た 後,数 十ms∼ 数s経 過 後 に 開 始 す る。 こ の 場 合,水 滴 の電 極 間 橋 絡後 放 電 が 開 始 す る時 間 は 印 加 電 圧 の大 き さ に依 存 す る。 電 極 間 を 水 滴 が 橋 絡 す る と,第6図 mA程 第8図 Fig. 8. 乾 燥 帯(印 400V The dry belt 加 電 圧400V) when the voltage of is applied. の電 流,電 圧 波 形 に見 られ る よ うに,数 百 度 の 正 弦 波 漏 れ電 流 が流 れ る。 漏 れ 電 流 に よ る ジュ ール 熱 に よ って水 膜 が部 分 的に 蒸 発 し,電 極 間 の 一 部 に乾 燥 帯 が 形 成 され,乾 燥帯 間 で 紫 色 の 発 光 を伴 うグ ロ ー状 の 放 電 ま た は パ ル ス状 の放 電 が 発 生 す る。 この 時間 を 放 電 開 始 時 間(td)と はEX>PC≧PS>KPLと し,各 試 料 間 で のtd な り,試 料 の接 触 角 の相 違 が,ぬ れ の 状 態 に 影 響 し,接 触 角 の大 き な試 料 ほ ど試 (a) グロ ー状 放 電 料表 面 は ぬれ に く く,tdが 長 くな る こと を報 告 した(5)。 放 電 開 始 後,試 料 は 炭 化 を 開 始 し,最 終 的 に は トラ ッキ ング破 壊 へ と至 る。 そ こで 第5図 に示 した 分 類 に 基 づ き,放 電 開 始 後,ト ラ ッキ ング破 壊 まで の 過 程 に つ い て検 討 す る。 <3・1> 炭 化 開 始 時 間(tc) 各 々 の試 料 に お け る tcの 実 験 結 果 を 第7図 に 示 す 。 ば らつ きの 範 囲 の 一 例 と してKPL,EXの 場 合 を 矢 印 の線 で示 す 。 プ ロ ッ ト した 点 は10∼15個 の 試 料 の 相 加平 均 値 で あ る。 各 々 の試 料 に お け るtcの 間 の 関 係 は 印加 電 圧 に よ って異 な り,印 加 電 圧600V以 下 の 場合 に は,EX>PC≧PS (b) グロー状放 電 の電 流電圧波 形 第9図 Fig. グ ロ ー 状 放 電 9. current >KPLな The glow-like and voltage と 電 流,電 discharge, 圧 波 形 and then waveforms. る関 係 が認 め られ,印 加電 圧1,000V場 に は,PC>KPL>EX>PSな 加 電 圧600Vで 合 る関 係 と な る。 ま た 印 のtcは300,400Vの 場 合 よ り も長 くな る傾 向を 示 す 。 印 加電 圧 に よ ってtcの 様相が異 な る の は,印 加 電 圧 に よ って 放 電 の 発生 形 態 が 異 な る た め と考 え られ る。 そ こで 炭化 開 始 ま で の放 電 の 発 生 第6図 Fig. 水 滴 の 電 極 間 橋 絡 時 の 電 流,電 6. Current droplets and bridged voltage between 形態 に つ いて 印 加電 圧 に よ り比 較 検 討 す る。 圧 波 形 waveformes when (1) electrodes. 印加 電 圧300,400Vの 場合 乾燥帯は第 8図 に示 す よ うに,電 極 間 中 央付 近 に 形成 し,こ の 乾 燥 帯 間 で0.5∼1mA程 度 の グ ロー状 放 電 が発 生 す る。 この グ ロー状 放 電 の 放 電状 態 と,そ の 際 の電 流,電 圧 波 形 を 第9図 に示 す 。 グ ロー状 放 電 に よ り更 に乾 燥 帯 近 傍 の 水膜 が蒸 発 し,乾 燥 帯 の 幅が 広 が り,こ の間 で 1∼2mA程 度 のパ ル ス状 放電 が 間欠 的 に 発 生 す る。 炭 化 は,こ のパ ル ス状 放 電 が 発生 す る と乾 燥 帯 間 で 開 始 す る。 そ の 際 の 炭化 の状 態 お よび パ ル ス状 放 電 の放 第7図 Fig. 7. time and 昭54-3 電 状 態 と,電 流,電 圧 波 形 を そ れ ぞ れ第10図 炭 化 開 始 時 間 の 電 圧 依 存 性 Relation applied between the (2) carbonization 印 加電 圧600Vの に 示 す よ うに,タ voltage. <27> 場合 に示 す 。 乾燥 帯 は 第11図 ング ス テ ン棒 電極 付 近 で 生 じ,タ ン 124 電気学会 論文誌A (b)炭化開始(印加電圧600V,EX) (a) パルス 状放電時の電流電圧波形 第12図 パ ル ス状 放 電 時 の電 流, 電 圧波 形 と炭 化 開始 状 態 Fig. the 12. Current pulse-like ption 第10図 Fig. pulse-like discharge, and voltage waveforms, of carbonization. and and the then in(b) 放 電発生 状態 のモデル 図 乾 燥 帯 間 で の パ ル ス状 放 電 の 状 態 とそ の モデ ル 図 Fig. 13. The pulse-like belt and then drowing 第11図 11. 600V 乾 燥 帯(印 The dry belt when and the ince- (a) 放 電発 生 状態 第13図 Fig. waveforms initiates, of carbonization. パ ル ス状 放電 と その と きの 電 流, 電 圧 波 形 と炭 化 開始 状 態 10. The current ception and voltage discharge discharge view. across dry 加 電 圧600V) when the voltage of is applied. グ ステ ン棒 電 極 と水 膜 間 で10∼20mA程 度 のパ ル ス 状 放電 が間 欠 的 に 発 生 す る。 炭 化 は,こ の パ ル ス状 放 電 が 発生 す る と タ ング ステ ン棒 電 極 側 で 開 始 す る。 炭 第14図 化 開 始時 の炭 化 の 状 態 お よ びパ ル ス状 放電 時 の電 流, 電 圧 波 形 を第12図 に 示 す。 な お,印 加電 圧600Vで の 乾 燥 帯 の位 置が 印 加 電 圧300,400Vの るの は,印 加 電 圧600Vで 水 膜 が 薄 い こと,タ 場 合 と異 な 噴霧時間 と各試料の接触角 Fig. 14. Relation time exposed between contact angle and to fog. は水 滴 の電 極 間 橋 絡 時 で の ングス テ ン棒電 極 と水 膜 との 接 触 れ 第13図 に示 す。 放 電 柱 は試 料 に よ り状 態 が 異 な り, 面 積 が 銅 半 円板 電 極 に 比 較 し小 さ い こ とな どに よ り, EXの タ ングス テ ン棒 電 極 近 傍 の電 流 密度 が 大 き くな り,タ い る。 各 試 料 の 噴 霧 時 で の 接触 角 は第14図 ング ステ ン棒 電 極 近 傍 に 乾 燥 帯 が形 成 され や す い もの うにEX>PC≧PS>KPLと と推 察 され る。 が 大 きい 。 この よ うに パ ル ス状 放 電 は接 触 角 の大 き な (1),(2)項 の結 果 よ り,印 加 電 圧600V以 下で 方 がPCよ り試 料 表 面 か らよ り高 く浮 き上 って な り,PCよ 下 で の各 試 料 のtcは,接 な る。 そ の と き のパ ル ス状 放 電 の 発 生 状態 の 一例 と し 接 触 角 の 大 きな 試 料 ほ どtcは て,EX,PCの 圧600V以 <28> 方 試 料 ほ ど表 面 か ら浮 き上 る。 ま た,印 加 電 圧600V以 の 炭 化 開 始 直 前 の放 電 は,い ず れ も パ ル ス状 放 電 と 場 合 の写 真 と,そ の モ デ ル 図 を そ れ ぞ に示 す よ りEXの 触 角 の大 小 関 係 と 対応 し, 長 い。 従 って,印 加 電 下 に お け る各 試 料 のtcは,水 滴 の接触角 99巻3号 125 霧 に よ る有 機 材 料 表 面 の トラ ッキ ング の 大 小 関 係 に 対 応 し,接 触 角 の大 き な試 料 ほ ど放 電 は 第1表 ASTM-D495に よ る 耐 アー ク 試 料 表 面 よ り浮 き上 り,放 電 の熱 エ ネ ル ギ ーの 試 料 表 性試験結果 面 へ の 供 給 の 割合 が低 くな り,tcは 長 くな る もの と考 Table 1. The experimental ASTM-D 495 arc resistance え られ る。 一方 ,印 加 電 圧600Vの Vの 場 合 よ りtcが 600Vの results by the test method. 場 合 が 印 加電 圧300,400 長 くな る 原 因 と し て は,印 加 電 圧 場 合 で は 乾 燥 帯 幅 が 広 く,パ ル ス状 放 電 が 間 欠 的 で あ る こ と,発 生 した 放 電 柱 が試 料 表面 よ り浮 き 上 る こと か ら,放 電 の熱 エ ネル ギー の 試 料表 面 へ の供 給 の 割合 が 低 くな るた め と考 え られ る。 な お,印 加 電 料 表 面 へ の 接 近 の状 態 が異 な るの に 対 し,印 加 電 圧 圧600V以 1,000Vの EXが 下 で の各 試 料 にお け る実 験 値 の ば らつ き は 大 き く,KPLは に,EXの 小 さ い。 第13図 に示すよ う 場合 は 乾 燥 帯近 傍 の水 膜 が 厚 く,放 電 の試 料 表 面 へ の 接 近 の状 態 が均 一 と は な らず,tcの き は大 き くな る。KPLの ば らつ 場合 には,接 触 角 の相 違 に よ る放電 柱 の試 料 表 面 へ の接 近 の状 態 に は違 いは 認 め られ ず,放 電 柱 の状 態 は 比 較 的 一定 とな る。 従 って,印 加 電 圧1,000 Vで の各 試 料 のtcは,同 一 放電 状 態 下 で の 試料 固有 場合 は 乾 燥帯 近 傍 の 水 膜 は の炭 素 析 出 の 難 易 さ に影 響 され る ことが 考 え られ る。 薄 く,放 電 の 試 料 表 面 へ の 接近 の状 態 が 比 較 的 均 一 な そ こで,電 極 間 を橋 絡 す る一定 の ア ー ク状 放電 に さ た め,tcの PCで ば らつ きは 小 さ くな る と考 え られ る。PS, のtcの ば らつ き はKPL,EXの らされ た 場合 の試 料 の炭 化 の 難 易 さ を検 討 す る た め, 中間 程 度 で あ D495)(6)に る。 (3) Vの タ ング ステ ン棒 電 極 を 用 い た 耐 ア ー ク性試 験(ASTM- 印 加 電 圧1,000Vの 場合 場 合 に は 印 加電 圧600V以 つ い て 検討 した 。 各 々 の試 料 に お け る炭 印 加 電 圧1,000 化 開始 まで の 時 間 と耐 アー ク性 時 間 の結 果 を 第1表 に 下 の 場合 と異 な り, 示 す。 耐 アー ク性試 験 に よ る各 々 の試 料 に お け る 炭化 タ ング ス テ ン棒 電 極 と銅 半 円 板電 極 間 で数 百mA程 度 開 始 ま での 時 間 はPC>KPL>EX>PSな る関係 が あ の ア ー ク状 放 電 が 間 欠 的 に 発 生 し,炭 化 は タ ング ス テ り,本 法 で の 印 加電 圧1,000Vの ン棒 電極 側 で開 始 す る。 ア ー ク状 放 電 の発 生 状 態 と そ と対 応 す る。 従 って,印 加 電 圧1,000Vの の 際 の電 流,電 圧 波 形 を第15図 るtcは,試 1,000Vに に示す。 印 加 電 圧 場合 でのtcの 結 果 場合におけ 料 固 有 の接 触 角 の 相 違 に よ る放 電 柱 の試 お け る 各 々 の試 料 に お け る 関係 は,印 加 料表 面 への 接 近 の状 態 よ り,む し ろ同一 放 電 状 態 下 で 下 の場 合 と異 な る。 印 加電 圧600V以 の試 料 固有 の 炭 素 析 出 の難 易 さに 影 響 され る もの と考 電 圧600V以 下 の 場合,試 料 固有 の接 触 角 の 相 違 に よ り放 電 柱 の試 え られ る。 以 上 の結 果 よ り,各 試料 のtcは 印加 電 圧の 相 違 に よ る試 料 表 面 で の 放 電 の発 生 状 態 に 影 響 さ れ る。 印 加 電 圧 が高 く,試 料 表 面 に乾 燥 帯 が 形 成 され ない 場 合 に は,主 に試 料 固有 の 炭 素 析 出 の難 易 さがtcに 影 響 し, 印 加 電 圧が 比 較 的 低 く,乾 燥帯 が 電 極 間 に形 成 され る 場 合 に は,主 に試 料 固 有 の 接触 角 の相 違 に よる放 電 柱 の 試 料 表面 へ の接 近 の 状 態 がtcに (a) アーク状 放 電 時の電 流電 (b) 第15図 Fig. 15. The and voltage 昭54-3 影 響 す る もの と考 圧 波形 アーク状 放 電 アー ク状 放電 と そ の と きの 電 流,電 圧波 形 arc discharge, and then 第16図 Fig. current of waveforms. <29> 16. 炭 化 の 進 展 時 間 の 電 圧 依 存 性 Relation carbonization between and applied the progress voltage. time 126 電気学会論文誌A 第17図 シ ンチ レ ー シ ョ ンの 発 光 の 例 Fib. 17. The 第18図 Fig. 18. scintillation discharge. シ ンチ レー シ ョ ン発 生 時 の 電 流,電 圧 波 形 Current and voltage the scintillation discharge waveforms when initiates. 第19図 え られ る。 <3・2> とtgの 炭 化 の進 展 時 間(tg) 第16図 に印加電圧 関 係 を 示 す。同 一 印加 電 圧 で のtgに >PS>KPL>PCな 係 がtcと Fig. 19. 炭 化 の 進 展 状 態 Photographes of progress of carbonization. は,EX る関 係 が あ り,PCとKPLの 関 は 逆 に な る。 ま た 印 加電 圧 の上 昇 と共 にtg は 短 くな る傾 向 を示 す 。 試 料 表 面 で一 度 炭 化 が 開 始 す る と,析 出 した 炭 素間 あ るい は 炭 素 と水 滴 間 で 数十 ∼ 数 百mA程 度 の橙 色 あ るい は 赤 色 の微 小 放 電(こ で は以 下,シ ンチ レー シ ョ ン(7)と記 す)が 発 生 し,炭 こ 第20図 化 は進 展 す る。 シ ンチ レー シ ョ ンの発 光 例 と して,EX の 場 合 を 第17図 に示 す 。 更 に 炭化 開 始 後 の電 流,電 圧 波 形 を 第18図 に,炭 化 の進 展状 態 の 例 を 第19図 Fig. time に それ ぞ れ 示 す。 各 試 料 で の 炭化 の進 展 は 次 の よ うに な る。 EXの トラ ッ キ 20. and ング 破 壊 時 間 の 電 圧 依 存 性 Relation between applied voltage. ング破 壊 へ は 至 らず,第19図 tracking breakdown に見 られ る よ うに,比 較 的広 い面 積 に わ た って 炭化 さ れ た後 トラ ッキ ング破 場合 は,シ ンチ レー シ ョ ンの 発 生 回 数 が ほ か 壊 とな る。 これ は,KPLに は 難 燃 剤 が 含 ま れて い る の 試 料 に 比較 して 多 い が,析 出 し た炭 素 は試 料 表面 に た め と考 え られ る。 この よ うに各 試 料 で の炭 素 析 出の 盛 上 り,遊 離 お よび 飛 散 しやす い。 従 って 析 出 され る 炭 素 が 多 い に もか か わ らず,ト ラ ッキ ング破 壊 に は な 様 相 は 異 な る。 一 般 に ,有 機 絶 縁 材 料 の耐 トラ ッキ ング性 は 材 料 固 か な か 至 らず,tgは ンチ 有 の結 合 エ ネル ギー に影 響 され る こと(8),ま た 炭 化 生 次 いで 多 く,析 出 し た 成 物 の様 相 に よ って 導電 性 が異 な る こと(9)が報 告 され 長 くな る。PSの レー シ ョンの発 生 回 数 はEXに 炭 素 はEX同 様 盛 上 り試料 表 面 か ら遊 離 す る が,EX よ りそ の度 合 い は 小 さい。PCの シ ョンの発 生 回 数 はEX,PSに 炭 素 はEX,PS同 場 合 は,シ て お り,試 料 の 分 子 構 造 と 炭 化 の状 態 に 密 接 に関 係 す ンチ レー る。 本 法 で用 い た 各 試 料 に つ い て の 炭 化進 展 の機 構 に 次 いで 多 く,析 出 し た つ いて は 明確 で は な い が,各 試 料 の 析 出 炭 素 の様 相が 様 盛上 り,試 傾 向 を示 す が,EX,PSに KPLの 場 合 は,シ 料 表 面 か ら遊 離 す る 比 較 しそ の 度合 い が小 さい 。 場 合 は,シ ンチ レー シ ョ ンの 発 生 お よび 炭 素 異 な る ことか ら,tgは 前 節 ま で の試 料 固有 の ぬ れ が影 響 す る と い う よ り,む しろ,試 料 固有 の 炭 化 の 難 易 さ と 析 出 さ れた 炭 素 の様 相 に影 響 さ れ,炭 素 が 析 出 し に 析 出 の面 積 は,ほ か の試 料 に 比 較 す る と最 も少 な く,線 く く,析 出炭 素 が 遊 離 しや す い試 料 ほ どtgは 状 の 炭化 路 が 電 極 軸方 向 に沿 って 伸 び る 傾 向 を示 す。 る も の と考 え られ る。 しか し,炭 化 路 が 電 極 間 を 橋絡 して も直 ち に トラ ッキ <30> <3・3> トラ ッキ ング破 壊 時 間(tl) 長 くな 前に述べた 99巻3号 127 トラ ッキ ング破 壊 時 間tl=td+tc+tgに お い て,さ に 得 られ たtd(5)とtcお よ びtgと を 求 め た 結 果 を 第20図 に示 す 。 印加 電圧600V以 き か ら,各 試 料 のtl 下 霧 に よ る有 機材 料 表 面 の トラ ッキ ング 加 電 圧600,1,000Vの 場 合 に は タ ング ス テ ン電 極近 傍 で 生 じる。 (3) tcは 印 加電 圧 に よ って 異 な り,印 加電圧 の 場 合,各 試 料 に おけ るtl,は,EX>PC≒PS>KPL 600V以下 と な り,印 加電圧1,000Vで 水 滴 の接 触 角 の大 き さ と対応 す る こと よ り,試 料 固有 はEX>PC>PS≧KPL とな る。 の 場 合 に はEX>PC≧PS>KPLと な り, の ぬ れの 相 違 に よる放 電 の試 料 表面 へ の 接 近 の 状 態 本 法 で の トラ ッキ ング破壞 に 至 る 過程 は,[電 圧 印 加 に影 響 され る。 印 加 電 圧1,000Vの 場 合 に はPC (噴 霧開 始)→ 放 電 開 始→ 炭 化 開 始→ 炭 化 の進 展→ トラ >KPL>EX>PSと ッキ ング破 壊]と 開 始す る時 間 と対 応 す る こ とか ら,放 電 の 熱 エ ネル ギ ー に よ る試 料 固 有 の 炭化 の難 易 さに影 響 され る。 な り,ト ラ ッキ ング 破 壊はtd,tc, tgの 各 要因 の 複 合 され た 結 果 とな る。 印 加電 圧600V以 対 応 す るが,t0と 下 の 場 合,tlはtd,tcに比 較的 は対 応 して い な い 。 従 って 印加 電 圧 (4) な り,耐 ア ー ク性 試験 で の炭 化 の t0はEX>PS>KPL>PCな る関 係 が 存 在 し,各 試 料 での析 出 炭 素 の様 相 は 異 な る。炭 素 が 析 出 が 比 較 的低 く,炭 化が 電 極 間 に 形 成 され た 乾 燥 帯 間 で しに く く,析 出炭 素 が 飛散 しや す い 試 料 ほ どt0は 生 じる場 合,試 料 固有 の 炭化 の進 展 の難易 さだ け で な くな る。 く,炭 化 開 始 前 の 試 料 固有 の ぬ れ の相 違 を 考 慮 す る必 (5) tlは 試 料 固 有 の ぬ れ の相違,炭 長 素析 出の 難 易 要 が あ る もの と考 え られ る。 一 方 ,印 加電 圧1000vの 場 合,tlはtd,tc,tg さお よ び析 出炭 素 珍 様相 に よ り影 響 され,接 触 角 が大 の いず れ と も明 確 な対 応 性 は認 め ら れ ない 。 この 場 合 る。 印 加 電 圧600V以 き く,更 に炭 素 が 析 出,進 展 しに くい試 料 ほ ど長 くな 下 と異 な る の は,炭 化開 始 が 電 極 間 最 後 に,本研究 を 進 め る に あた り,有 益 な ご助 言 を を 橋 絡す る放 電 に よ って生 じる こと で あ る。 従 って, い た だ い た電 力 中央研 究 所 新 田義 孝博 士,本 学 教 育学 この場 合,放 電 に よ る試 料固 有 の 炭化 の難 易 さ も考 慮 部 助 教 授 梶 川正 弘 博 士,実 験 に協 力 下 され た本 学 電 気 す る必 要 が あ る もの と考 え られ る。 工 学 科高 橋 重雄 技 官,大 学 院研 究 生 佐 藤 英 信君,学 以 上 の 結 果 よ り,本 法に よ るtlに は,(i)電 極間 部 学 生 高 矯 昌君 に 深 く感 謝 す る。 更 に超 音波 加 湿 器 内に 乾 燥帯 が 形 成 され,そ こで 炭 化 が生 じる場 合,試 料 を提 供 下 され た東 京 電 気 化学 工 業(株),試 料 を提 供 下 固 有 の ぬ れ の相 違 と炭 化 の 進 展 状態 が 影 響 し,(ii)放 さ れた 東 芝 ケ ミカル(株),三 電 が電 極間 を 橋 絡 し炭化 が 生 じ る場合,試 料固 有 の ぬ (株)の 関 係 各位 に厚 くお礼申 し上げ る。 な お,本 研 究 菱電 機(株),帝 人化成 れ の相 違 と,放 電 に よ る炭素 析 出 の難 易 さ お よび 炭 化 の一 部 は 文 部省 科 学 研 究 費(奨 励研 究)の 援 助 の 下 で の進 展状 態 の いず れ も が 影 響 す る。 従 って,接 触 角 行 な ったこ と を付 記 して 感 謝 の意 を 表 しま す。 が 大 き く,更 に 炭 素 が 析 出,進 展 しに くい試 料 ほ どtl (昭和53年2月20日 受 付,同53年9月27日 再受 付) は長 くな る。 文 4. む す (1) 超 音波 加 湿器 に よ って発 生 した 霧 を用 い,エポ 樹 脂(EX),ポ (PS),紙 リカー ボ ネー ト(PC),ポ リス チ レ ン 基材 フェ ノー ル樹 脂 積 層 板(KPL)の4種 試 例 え ば,能 料表 面 に お け る 炭 化開 始 時 間tc,炭 トラ ッキ ング破 壊 時間tlに (2) 例 (3) え ば,川 T. C. Cheng, Draft (5) 吉村 (6) 昭54-3 C. water repellant IEEE Trans. Appendix 690(昭43) Jolly to & D. J. King:"Surface insulators Elect. of for 場 合 に は,電 極 間 で そ (8) 各 々 の試 料の 炭 化 開 始 は,印 加電 圧300vお L. Douglas the Seventh 32 C & ト ラ ッ キ ン グ性 R. of M. method of Resistance 試 験 法 の動 Scarisbrik:"Recent electrical Electrical 向」,電 学 insulation", Insulation research Proceedings Conference, IEEE of pub. 79-41(1967) Billings, 2,131(1967) <31> ARC 86,843(昭43) tracking polymeric 場 合に は電 極 間 中央 部 の 乾 燥 帯 間 で,印 scantiard Electrical Insulating Materiais(1961) on No. 面 の ぬ れ と そ 物 誌47(昭53-6) Low-Current トラ ッキ ング 現象 と耐 J. con- EI-12,208(1977) 霧 に よ る有 機 絶 縁 材料表 high-voltage", 技 報(I部),No. ング ス テ ン棒 電 極 と水 膜 間 に 形成 さ れた Insul. moist IEC pub. 112(1962-11) ・能 登:「 Solid Flash- under Designation:"D495-61, test (9) M. J. よ び400Vの D. ・西田 ASTM (7) 「 れ ぞ れ放 電は発 生 す る。 (2) of (4) 極 間中 央 部 の 水膜 間 に形 成 され た 乾 燥 帯 間,印 加電 圧600Vの 乾 燥 帯 間,印 加 電 圧1,000Vの 高 分 子 お よ び ガ ラ ス の 水 蒸 気吸 着 と濡 れ に 試 研 報No. の 放 電 開 始 に お よ ぼ す 影 響」,応 各 々 の試 料 の 放 電 形 態 は 印 加電圧 に よって 異 場合 に は,タ 崎:「 ditions", た 結 果 を列 挙す る と次 の とお りで あ る。 場 合には,電 最 近 の 絶 縁 材 料 試 験 法 」,電 学 誌88,802(昭 関 す る 研 究」,電 化 の 進 展 時間tg, つ い て 検 討 した 。 得 ら れ な り,印 加電 圧300,400vの 登:「 43-5) キシ over (1) 献 び A. Smith insulation", & IEEE R. Wilkins:"Tracking Trans. Elect. in Insul, EI-