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イギリス・ルネッサンスの抒情詩 (二): いわゆる 「平明なスタイル」(`Plain

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イギリス・ルネッサンスの抒情詩 (二): いわゆる 「平明なスタイル」(`Plain
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イギリス・ルネッサンスの抒情詩 (二) : いわゆる「平明
なスタイル」('Plain Style')の詩の伝統について
平, 善介
北海道大學文學部紀要 = The annual reports on cultural
science, 26(1): 137-204
1977-12-22
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/33420
Right
Type
bulletin
Additional
Information
File
Information
26(1)_PR137-204.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
いわゆる﹁平明なスタイル﹂
古 田 包σ J
(R19
善
の詩の伝統について││
介
イギリス・ ルネッサンスの行情詩(二)
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平
介
のための単なる修辞的な技巧としてではなく、詩的イメジを概念として操作する技術を学んだ。すなわち、
ワ
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一篇の詩を緊密なまとまりのあるものに構築して行くための手段として使うことをベトラルカから学んだのであわ)
トはイメジを、詩の主題となる感情や心理の動きを分析し探究するための手がかりとして用いること、そしてまた、
しかし、 ワイアットがソネット形式を英詩のなかに移植しようとしてベトラルカの原文をかなり忠実に翻訳する努力
をしていることは確かなのであるが、 ワイアットによるベトラルカの受容はイギリス土着の持情詩の伝統という枠の
なかで行なわれていて、ベトラルカのソネットを翻訳あるいは翻案するときにワイアットはいつも、 いくつかの重要
北大文学部紀要
1
3
9-
~
イギリス・ ルネッサンスの好情詩(二)
善
││いわゆる﹁平明なスタイル﹂(イF吉田
qrJ の 詩 の 伝 統 に つ い て │ │
ワ イ ア ッ ト と ﹃ ト ッ テ ル 詩 選 集 ﹄ の詩人たち
平
サl・トマス・ワイアットはベトラルカのソネットの翻訳を試みることによって、詩的イメジを詩句の装飾や敷街
一
、
一
(2
イギリス本来の持情詩にモデルを求め、 独自の作口聞を作りあげている。
イギリス・ルネ γサソスの行情詩(二)
な点でベトラルカから離れて行って、
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ワイアットとペトラルカとのあいだには本質的な差異があるという主張がなされ、ワイアットの最もすぐれた詩
は翻訳ではなくて、直接の下敷きとなったペトラルカやその他の大陸の詩人たちの作品が発見できないような、
意味でオリジナルな、持情詩のほうなのだとする評価がなされることになむしかし、またいっぽうでは、日・ A ・
﹂の種の持情詩は文
γ シヨナルな言葉で書いた、
ヘソリl八世の宮廷で流行していたポピュラー-ソ γグの流
yトの持情詩の多くはコソヴェンショナルな主題をコシヴェ
メイソ γやジョン・スティ lヴシズなどが言うように、
れのなかで作られたワイア
個性のない、 ただの韻文にす、ぎず、詩と呼ぶことはとうていできないような代物なのであって、
とくにデヴォシシャ稿本
(口問
SEEE 宮ω・﹀に含まれて
学というよりはむしろ社会学の研究対象に属するものである、といったような極端な見解も出されている o
メイソ γが指摘するような種類の詩がワイアットには、
いるワイアットの詩にはかなり多いことは事実である。しかし、 レイモンド・サゾルは、 メイソ γとは逆に、このデ
ヴォソジャ稿本を重要視する。なぜなら、 この稿本はワイアットの詩作活動の時期である一五三0年代の宮廷詩のア
いっそう明確にすることが可能になると考えるからであ
ンソロジーなのであり、 したがって、そこに含まれている詩に細かく検討を加えるならば、 ワイアットの詩作品の持
つ性格を、 当時の文学活動というコシテグストのなかで、
勺 サ ゾ ル は デ ヴ ォ γ シャ稿本に含まれている詩の特徴を﹁もっと古い世代の詩人たちがいつも使っていた誇飾華麗
な学識ぶった言葉づかいはまったく見られず:イギリス土着の言葉がすこしの迷いもなく強調されていおにと述べて
いる o
﹁平明なスタイル﹂の詩の伝統ということを考えて行くとき、 サゾルの研究にはひじように重要な指摘が数多く合
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の
ら
己目白仏ゆ)
の伝統、﹁パレット﹂
(RE--2ZJ と呼ばれる、
s ・バルディがワイアットの作品に流れこんでいると考
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(
まれていると言うことができるのであるが、ここではまず、
えている三種類の詩の伝統、 つまり、 フラ γ スのバラード
中世英語の時代からイギリスに伝わる、曲をつけて歌われるソシグの伝統、そして、ベトラルカとその流派の詩の伝
仏0
2
) とヴィルレ I (三円巾円高﹀についても言及し
統 、 の な か の バ ラ ー ド の 伝 統 に つ い て 、 そ れ と 併 せ て ロ シ ド 公oロ
ながら、やや詳細にたどってみることにする。そうすることによってワイアットの詩とイギリス土着の持情詩との連
続を確認することができるだけではなく、さらに、ワイアットが試みたベトラルカやその他の大陸の詩人たちの作品
の翻訳と、ワイアットがそのなかに立っていたイギリス土着の行情詩の伝統との関係が、ワイアットにとってどんな
r何らかの解答を与えることができるのではないかと思われるからであ
意味合}持っと考えられていたのかという問愚
る
。
バラードはフランスの持情詩のなかで十四・十五世紀に隆盛をみた詩形式のひとつであって、その定型は八行(七
ち とから構成され、各々のスタンザと結句のい
行の場合もかなり多い)から成るスタ γザ三つと四行の結句守口︿ O
、
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フランソワ・ヴィヨ γ (
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ずれの最終行も同一の詩句の折返しとなっている。フラジスの代表的なバラード作者としてはシャルル・ドルレアン
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などの詩人たちをあげることができるが、とくにジャルル・ドルレア γは一四一五年十月二十五
日のアジンコlトの戦いで捕虜となってイギリスで二十五年を過し、そのあいだに英語で多量のバラードを書き残し
また、 聖書の詩篇のフラ γス語訳でも知られていて、これはワイアットが七篇の
ており、クレマ γ ・マロはバラード以外ではフランスにおけるソネット作者の先駆として(八篇のソネットのうち、
六篇はベトラルカの翻訳である)、
北大文学部紀要
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イギリス・ルネッサンスの行情詩(二﹀
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な形式は﹁去年の雲、いまは何慮﹂の美しいリフレインを持つヴィヨンの有名なバラード (
gg官官門山町、)によく示されている o
バラード形式は十六世紀の初頭すでにイギリスの持情詩のかなり重要な伝統となっていた。 ワイアットにも、あま
り数は多くないが、質の高いバラード形式(ただし、各スタシザ七行のライム・ロイヤル・スタ γザが多い)の詩が
あって看過できない。 ワイアットの背後には百年以上にわたるバラードの歴史があって、十五世紀のイギリスの宮廷
メl セγトがバラ
十五世紀のイギリスにおけるバラード・スタンザ、一フイム・ロイヤル・スタシザの流行の源泉となったのはチョ l
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ともライム・ロイヤル・スタシザ)、 h
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八行のスタンザ三つ、結句なし)、
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詩人たちは好んでこの形式を用い、それも各スタンザが八行の形式ではなく、七行のライム・ロイヤル・スタシザを
多 く 使 用 し て い 信 十 五 世 紀 に 書 か れ た イ ギ リ ス の 持 情 詩 の 詩 形 に つ い て の 調 査 に よ れ ぬ い 約 二O
ード・スタシザで書かれており、 また、ライム・ロイヤル・スタンザによる持情詩も殆んどおなじ割合を占め、両者
のスタ γザ形式の詩が全体の四割強となっていることを考えるならば、その流行のほどは容易に推測することができ
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イギリス・ルネッサソスの持情詩(二)
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興味深いことだ、が、この﹁トロイルスの歌﹂はベトラルカのソネット (均凡さお口 MG
内一同比)を翻訳したものである。チョ
ーサ lは 、 ラ イ ム ・ ロ イ ヤ ル ・ ス タ シ ザ で 書 き 進 め ら れ て 行 く 物 語 詩 で あ る ﹃ ト ロ イ ル ス と ク リ セ イ デ ﹂ の な か に は
め込むために、その形式上の要求にしたがって、 ベトラルカの十四行の詩をライム・ロイヤル・スタ γザ三つ、すな
わち、二十一行に引き伸ばしているので、翻案と言ったほうが正しいのかも知れない。その翻案のしかたについて、
トムソ γ女 史 が イ タ リ ヤ 語 の 原 文 と ﹁ ト ロ イ ル ス の 歌 ﹂ と を 比 較 検 討 し て み た 結 恥γ要 約 し て 、 す こ し 具 体 的 に 言 え
ソネット後半の六行連句
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2SH をもうひとつの
ば 、 ベ ト ラ ル カ の ソ ネ ッ ト の 最 初 の 四 行 連 句 25可巳ロ)二つ、つまり、八行の部分 (
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) をチョ l サーはこつ
のライム・ロイヤル・スタンザ、計十四行に引き伸ばして訳し、
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三行はチョ
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同
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I サ!の一ーー三行に等量に訳されているが、 ベトラルカの
スタ γザ、七行、 に当てている。便宜上﹁トロイルスの歌﹂に一行から二十一行までの通し番号をつけて、もうすこ
し詳しく言うと、 ベトラルカのソネ
原文の四行目はチョ l サーでは四│七行の四行の長さに引き伸ばされ、 しかも七行目 42mqF5白
片
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はチョlサーが付け加えたものであり、
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つぎのペトラルカの四行連句では五行目がチョ!サl
の八│九行、六行目がチョ l サl の十行、となり、 チョ I サ l の 十 一 行 ﹂ ロ OCH-ロ mw当 E E H君。同可己戸田仲
チョlサ Iが付け加えたもの、七行目がチョlサlの十一一行で八行目は十一一一ーー十四行と倍の長さになり、そして、
yト の 十 二 行 目 を 省 略 し て 、 逆 に 二 十 行
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同}凶町田
者 Oロ(-HOB白目白門出。叩
を付け加えてい
ネット後半の六行連句はチョlサーでは分量の上では殆んど相異がない七行に訳されているが、チョlサlはペトラ
ルカのソネ
2SS の部分に集中しているという。
ソ
にはスタ γザひとつを当てることによって十四行と七行というより大きな不均衡を意図的に作り出し、そしてそれと
もベトラルカのソネットのこうした特徴的性格をじゅうぶん理解していて、 RS40 に二つのスタンザを当て、由。丘町同
いるとさえ言えるが、 ペトラルカは分離しがちな二つの部分を巧みにつな、ぎ合わせる努力を払っている。 チョ l サI
六行の二つの部分に、その押韻のしかたによっても、分離し易く、かえってその両者の不均衡を基盤として成立して
もソネット形式の詩の構造的な特徴は鋭くとらえていたようである。ベトラルカ風のソネットは前半の八行と後半の
チョlサlはベトラルカのソネットを三つのライム・ロイヤル・スタンザに引き伸ばして翻案したが、それにして
ソネット前半の
語の原文を誤解し誤訳したと思われる個所が七つあるということであり、 L か も そ れ が 引 き 伸 ば し の 度 合 の お お き い
け加えた部分があるのも当然かも知れない。それに、 E - H・ウィルキ γズの指摘によれば、チョlサlがイタリヤ
(日)
あるから、このような翻案のしかたによって失われるものがあると同時に、原文にないものをチョ l サーが自由に付
る。形式的にも内容的にも高度の集中性を持つソネット形式の詩をチョlサlが二十一行の長さに引き伸ばしたので
~.
同時に、はじめの二つのスタシザとつぎのひとつのスタ γザをつなぎ合わせて全体の統一を生み出す工夫もこらして
北大文学部紀要
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イギリス・ルネッサンスの行情詩(二)
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いる。すなわち、十四行目のよ向子三回
から第一一一スタンザへの移行を滑らかなものにし、 第二スタシザと第三スタ γザの冒頭をそれぞれ
いう同一の語句で書きはじめることによって第二と第一一一のスタンザを結びつけているのである。
﹁トロイルスの歌﹂ の全体の統一はいま述べてきたような形式上の面だけで企てられているのではない。﹁トロイ
ルスの歌﹂の下敷きとなったベトラルカのソネットには烈しい嵐に翻弄される船のイメジがあって、この航海のイメ
ジで恋に悩む人の二律背反的な、不安定ではげしく動揺する、心理状態を比轍的に表現している。サゾルやトムソ γ
女史も指摘しているよう匂嵐の海を航行する船のイメジは人生や変転きわまりない人間の運命を表わす比倫として
古くから常套的なものであったが、この比臓を恋に悩む人の心理状態の記述と分析に用いたのはひとつの工夫であっ
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た。チョ l サーもトロイルスの感情の二律背反を強調してペトラルカをつぎのように翻訳している│││
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そしてこの二律背反が
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という結びの二行、とくに最後の。でフドクシカルな詩句に集約的に表現されるOLかし、それにしても、 J52uF2
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440E55同日包目。てという詩句の病気のイメジは一見したところ唐突で、その前の部分の航海のイメジとは異質で重
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同
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なるところがないように思われる。ところが、実は、 ベトラルカの原文にはなくてチョーサーが新たに付け加えたこ
の一行の病気のイメジは他の二つのチョlサーが付け加えた詩句、すなわち、七行自の風間O
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H 仏守口 FO--と十一行自の﹂口。 o F 5 4E
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w という二つの、相反する感情の対立を
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ロロ者。弓喜三円片品ロ
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表現している、詩句ですでに準備されていたのであって、 これらの三つの病気のイメジがひとつにまとまって最終行
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が生み出されてくる。
に流れ込んで行き、そこで恋に悩む人を小舟にたとえる比職と恋を熱病にたとえる比職が重ね合わされて、恋愛心理
の二律背反を表現するバラドクシカルな最終行 42EZ 丘口OEurHgEO同ZFH仏苫
﹁トロイルスの歌﹂はこうして見事に三つのスタンザの統一をなしとげているのである。
デヴォ γシャ稿本に含まれている宮廷詩のひとつの出発点となったのはチョlサlの﹁トロイルスの歌﹂とこれを
﹂のことも両者の関係を暗示してい
含んでいる﹁トロイルスとクリセイデ﹄であるとサゾルは主張する。デヴォ γシャ稿本には﹃トロイルスとグリセイ
デ﹄から十個のスタンザと二行対句ひとつがそのまま直接に書き写されていて、
るが、 ベトラルカとチョlサlに共通の背景であった宮廷風恋愛のコンヴェンショ γはそのままワイアットの詩の出
発点であって、 ワイアットは希望と不安が共存する恋愛の二律背反の心理状態の表現のしかたをベトラルカやその他
の大陸の詩人たちよりもむしろチョ l サーから学んだと考えることができる o 例えば、﹁トロイルスの歌﹂に述べられ
ている恋する人の感情の動揺と不安定さをワイアットも、デヴォ γシャ稿本に含まれているいくつかの詩のなかで、
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チョlサーが用いているのと殆んどおなじ表現のしかたで、 つ ま り 、 熱 さ と 冷 た さ を 対 置 す る 比 倫 で 書 い て い る │ │
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そしてこの寒暖の対照のさまざまなヴァリエーションがワイアットの詩の随所に姿をあらわし、宮廷風恋愛に特有な
状況を表現している。メミー白百mFσ
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この二つの詩句に
﹁火の拍車をあて、氷のくつわで制御する﹂という、互いにせめ、ぎあう感情の対立を述べた、この引用の第-行は、
もういちど第三行で、﹁トロイルスの歌﹂の結びの句とおなじ比倫で言いかえられる。
はさまれた第二行は、トムソ γ女 史 の 註 釈 に よ れ 唱 ベ ト ラ ル カ の 原 文 を 意 訳 し た も の な の だ が 、 的 外 れ の 訳 で 生 彩
がない。ニのことはワイアットがベトラルカを翻訳するときにどの程度それまでのイギリス土着の詩の伝統に依存し
たか、その度合を確かめるためのひとつの有力な証拠となり得るのではないかと思われる。サゾルの指摘をここでも
-1
4
8-
ういちど繰返すならば、大陸の詩人たちよりもむしろイギリスの詩人に好んで範を求めている点がワイアットやデ
ヴオンシャ稿本のその他の詩人たちの際立った特徴なのである。
ワイアットの詩の持つ本質的にイギリス的な性格、 つまり、 イギリス土着の詩の伝統に深く根ざしているという特
質、を最もよく示すものとしてその詩句のリズムをあげることができる。このことについて、最初にワイアットのバ
eスタ
γザを用いたバラード形式の詩を流行させていたが、
﹂の形式はリフレイ γの
ラード風の詩の場合から述べてみることにする。既に述べたとおり、 チョ l サ1 の影響の下で詩作した十五世紀の宮
廷詩人たちはライム・ロイヤル
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使用とライム・ロイヤル・スタンザに巧みなワイアットもとりわけ得意とするものだったようである。デヴォ γシャ
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稿 本 と プ レ イ ジ 稿 本 ( 呂 田 唱 宮ω・)に含まれているワイアットの詩にはライム@ロイヤル@スタ γザを三聯から五・
六聯まで連ねたバラード風の詩が約十篇見られるが、そのなかから代表的なものとして、
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,ccxxxiv) ヤ騎馬~.\2
みながら自分がい
ている。この
ものであるが、各勝の最後の行が、 スタ γザごとに
その病いに
点ではバラード形式によ
験え、この詩の
リフレインになっていて、
γに従って恋の
このようにいくつかの性質や項自・役割列挙して行
向って呼びかける、というものであ
のコ γグ ェ シ ジ
こしづっ変えてい
制列挙されてい
った。しかし、おなじ列挙とい
っさまざ
くという書きかたは十路・十五世相仙のイギリスの詩には綴鯨に
る正反対の
ワイアット拭ベトラルカのイメジ
いに欝突しあ
ていることである。この
って、翻訳として
のしかたか
対立はさら
(JO 山緩和件。与え3 5可
の
の意味合}
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一
件d2
弓1 仲 間 山 州m
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ZEJ に よ っ て も う い ち ど 操 渡 さ
ここでも家た
とハソていたと一言うことができる。
とによって列挙のしかたに
の、ひしていると
聯七行は下敷きとなった
の能半と後半が対捜
る点は、列挙される項目詔互の、あいだのつな
紛ではその
、
白
喝
いてもこのワイブ yト の 詩 が そ れ 以 前 の た い て い の
る
。
の
勺 MFMMCd司口三日戸山河口供
吋令、一一律背反の
できない
さらに
﹁報われない
とい
うしても見出ずに
つの極のあいだ合絶えず動揺しつ
その
-1
5
1-
がりや論理的な繍序含まったく無視したしかたで列挙するのではなく、ここでワイアットは
されるような形に、互いに
ペト一フルカのソネットの最初の一一行役引き伸ばし
の
ると言えるかも知れない脅しかしその反窓、正反対の項自を対量させる
論理性を与えるこ
第一聯に述べられてい
ハ
恥
問
。 H︿官民
おなじ熱さと冷たきの対比
てこの﹁熱川、い
と
ロ
の
し
、
ルスの歎﹂の
れる。
峰
町4
耐え向山 Fung
aC42 仲M
て
4
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でいるが、
こうした、相反する
たいと
ω/
イ
の
ために生じるむの乱れや不安を表現し、この
含んでいる。この詩の
ら抜け出して心の
、
し
、
イギリス・ルネッサンスの持情詩(二﹀
2 巾 ヨ 可 宮 山 口MgB20.)0 各聯に付けられているリフレインは上述したようなそれぞれのスタンザの意味内容を要
件
。
約して述べたものであり、内容を要約して述べるという機能を持つリフレインの使用は、既に指摘した列挙の方法と
同様、十四・十五世紀の行情詩によく見られるものであった。
そして、 いま説明を加えてきたようなこの詩における対立感情の表現をおおきく助けているのが各々の詩行の持つ
リズムなのである。この詩の第一聯の各行は、そのリズムに関して、 っ、ぎに示すようにそれぞれ左右二つの部分にわ
けることができる││
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自
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日間同件。
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ここでは、 リフレイ γとなる最後の行を除いて、どの行でもひとつの意味のまとまりを持つ句 QrE∞ろがそれと正
反対の意味の句と、きわめて明瞭な行間休止をあいだにはさんで、前後に対置されている。そして、ほぼ規則的な弱
強五歩格で書かれている各行が、 つ、ぎに示すように、行間休止の前後にそれぞれ二つづっの強勢を置いたものになっ
ていると考えられる│li
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の対震は明らか
ほどこした
る。とくにこのスタ γ
について、比較的に単純な例では
の各行に繰返される験2
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た前後の
ロズムの単位になっている句
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の形式をたびたび
ならってワイプットもベトラ
-翻案するときに
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山
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たボエティウスハ切まミ﹀をお
HVmw仲 町
仏丸山)﹀
e--FzglMm 00)
の一一一一向に翻訳しているだけでなく、 その他にも
Pイルスの歌﹂の
の作家のもの
チョ l サーからワイア yト に 翠 る ま 勺 の 持 揺 に 流 行 し
であり、とくにワイアットが
の一二つの
内
凶
器
い た ﹂hgcロロ円山容可ぐ0333 当 CC
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る事実である。 チョ l サーの﹁ト
れる形式の
ワイアットがベトラルカ器のイタロヤの詩人々一ブブィ l ノ
ゲ三さ﹀
M﹀やボエティウスの吋哲学の罷め
ハ凶凶M
ソネット形式
る、といた指議をしているが、三つのライム。ロイヤル靭スタシザ合連ねたバラ;
詩である。トムソ γ女 史 は 、 ワ イ ア ッ ト に 至 る ま で の 待 代 の 詩 人 に と っ て バ ラ ー ド 形 式 は 品 リ ザ ベ ス 朝 の 詩 に お け る
今g
gg手
m円七︿ののFMハワもおなじバ一ブ iド形式の
巾同
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われる。
各二句
ルカのソネットをライム・ねイヤル・スタンザ
用いていること
ア yト
持統
点
,
述 べ て き た 。 し か し 、 こ の 儲 か ら も ワ イ ア ッ ト の 詩 のpズムの基本的な性格はつかむこといかできるように患
ハラード静式
れない恋の悲し
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てて
もおの
0広三
そらく参照しながら、出翻案した﹂叫5
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イ〉
の
あ
ド形式で書かれた、 ワイアットの詩のなかで最も有名な、 JdqF
同
円
。
B
Bて(凶凶凶︿口)がこれまで最も多く研究
や批評の対象となり、そしてこの詩のリズムの微妙な変化とその巧みな使いかたがとくに議論を呼ぶ問題となってき
たのも当然のことかも知れない。
ところで、既にあげた例だが、
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の冒頭第一行のリズ
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﹀ロ門民認可︼仏⑦同。
HZroE¥Hr。ロmr
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のように、 ひ と つ の 詩 行 が 前 半 と 後 半 の 二 つ の 句 に 分 か れ 、 そ の 二 つ の 句 の あ い だ に か な り 明 瞭 な 行 間 休 止 を お い
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O﹀に二つづっ、意味のうえで最も重要な語に、強勢が置かれる、という詩の
て、そして、それぞれの半行(宮ロl
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リズム (
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北大文学部紀要
同ロ岱田
は
イギリス・ルネ γサンスの持情詩(二)
の よ う に な っ て い て 、 行 間 休 止 の 前 後 の 二 つ の 句 は 強 勢 を 置 か れ た そ れ ぞ れ の 語 の S音 の 頭 韻 に よ っ て 結 び つ け ら れ
ている。ワイアットの詩のリズムについてとくに重要な見解を述べている Dewe ハーディングの指摘によれば、中世
英語の頭韻詩のこのようなリズム(宮5EmF3rg) は十五世紀の立巳ロ印 Oロ
m にも等しく認められるものであって、
それがそのままワイアットの行情詩に流れこんできているという。ワイアットの詩が中世持情詩の伝統に直結してい
γズ
、 ケネス・ミュアなどの指榔γ まつまでもなく、だれもが認めてい
モlリス・エヴァ
、
ることは、ティリヤ lド
(4-巾
H
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) とロンド(同。ロ仏g戸)の二つの形式で書かれたワイアットのい
ることだが、ここではつぎに、 グィルレ I
くつかの詩について、主としてリズムの問題に焦点をしぼって、考えておきたいと思う。
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﹂れらの形式の詩を作ったことがあると自称
チョ l サ lは﹁善女物語﹄のなかで、バラード、 ロンデル(中世英語の時代には HOEE己はふつう J。見巾であ
るいは JCE
丘巾でと名付けられていた)、 ヴィルレ l の三つを併記し、
している、が、 チョlサlの書いたヴィルレlは現存していない。十四・十五世紀にはヴィルレlは比較的に数の少な
いロ γデルよりもさらに珍しかったようであり、 ワイアットよりも一世代あとの詩人であるジョージ・ギャスコイン
ヴィルレ!という名で呼ぶこと
ヘシリl八世の宮廷で流行してい
(
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H習の白印口o-mロ♂ -US¥お153) でさえその詩論のなかでこの詩形に言及して、
のできる詩はたったの一篇しか読んだことがない、 と述べているほどである。
ヴィルレ 1は、バラードやロ γデルに比べれば、 はるかに軽快な持情詩であり、
たダシス・ソ γグの一種であったと思われる。ヴィルレlの形式を知るために、その稿本ではチョlサlの作と記さ
れてはいるがそれは疑わしいと考えられている、 おそらく十五世紀後半のものと推定される詩をつぎに引用すゐ
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がヴィルレ l形式の詩の基本的な型であると思われるが、
ワイアットに、も、
この詩の押韻形式の目立った特徴とし
押韻形式はすこし異なるが、
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ワイアットのヴィルレーを例示するために、 っ、ぎに挙げておく││
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したヴィルレ!とおなじスタンザ形式で書かれた詩がいくつかある。 hK550。回同日可印口
同2
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し
、
たが aaabaaab、bbbcbbbc、 cccdcccd、:::と続いて行く点を指摘することができる。これ
て、はじめのスタンザの最後の行の脚韻がつぎのスタ γザの主要な脚韻となる、すなわち、各スタ γザの押韻のしか
同一で、
この詩はどの行の長さも音節の数は四つで短く、そして各スタ γザ と も 押 韻 形 式 は 第 一 三 行 と 第 五 七 行 の 脚 韻 が
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のように詩行の
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れば、
つのグィルレ i の韻律とおなじになるし、 また、第二スタ γザの第三
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凶
関してではなく、 これ
曹を制約にとって述べ
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の日行に合けて脚
の配列のしか
一行と第一一一行なそれぞれ二つの
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モーヲス・品ヴァ γズは、
おなじ aap--0・:となる、要するにワイプットのこの
円
円
今
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いずれにしても、 コシグェンシ翠ナルな形式の詩の
︿ゲ田口出門日
によって書かれているワイアァトの飽の
でを﹄る、
とすることができて、押韻形式はヴィルレーの
のえ
ルレ i形式の変怒と考えるこ
と間
いたもの
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のは明確な行部休止をあいだには併のんで左右二つ
コシグ広 γショ γを打ち絞ることによって
それを可能に
ると考えられる。
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ているのであるが、 ワイアヅトの
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ズムの構成のしかた
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ワイア?トの詩におけるリズムの微妙な変化は、例えば
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ワイアットの
︿. 、が示しているように、
タンザの中央においても頻繁に見られるものなのであって、 まえの詩行の韻律の型がそのつぎの詩行でも必ず繰返さ
れるものと期待することはできないのである。 つぎに引用する
詩ではリズムの単位としての句守町宮市)がそれだけでひとつの韻律の型を持つものになっていて、 こうした句と句
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のつながりがリズムの変化を生み出して行く。
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北大文学部紀要
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の句、あるいは最初の
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のスタンザの
れるのが、含まった形であるが、お
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る
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、
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、
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口
・
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明確に示している。つまり、
らも間関らかに
られるわけで為るが、強い行間関休止安あいだに置いて
かたは句読点以外の
の意味の捉えか
剖
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る。この句読は、かつて
みかたを
をひじよ
からグリモ i ルドのこの
ら詩行止な構成するワイアットの詩
。
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北大文学部紀要
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のイタリック体で
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のように類似した茨現役すこしづっ
(一一)
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わかるし、
なる勾
のそれぞれの
る。こ
めることがで
の意味十内容安ひじように明確なものに
て行く警きかたからも翌ズムの
のリズム一はこ
れる心の苦しみ
石のような女のむな打ちくだいて欲しいと懇願しているのであるが、これは官経風恋愛の詩のま
る﹁私?一一はお分の繋にまったく応えてくれない非慣な掠人のために味わ
きる。そして、こうしたしかたで形成された
の詩
に訴えて、そ
愛の
れているo pズムが怒味内容を
ナルなテーマである。﹁私﹂の悲の苦悩と、それとはまったく対顛的な安閑とした女の姿とが、
ていると言うこ
勺叶,C
丹}戸間任問・
のである。こうして﹁私﹂はいま二つの
女は愛の神を侮り
ることもせず勺朋Z4EHEEaええて﹀しかも、それでも
J
2rgHt¥川町内向停申宮門町足立ゲ
るげ 母 ゲ ル 仏
部 ろ し い と も 思 わ 、 ず 、し
︿て
創い出
に は 意 地 悪 く 振 舞 っ て い る 勺 ベogm
γショナルな誌犠を用いているの
まるで牢につ
れて密出合}奪われた入のような状態
っている勺円三交リ
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6-
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ゴ
結対する極のあいだをさまよい、進退きわまって、 ここでもまた愛は自おの喪失であるという宮延恋愛詩のコシグ品
J、恋する
の
狩
の
っている二つの旬の生み出すFズムによって鮮明に
のにし、それを務環境壌に吾一日い
分れてバラ γ ス
ったくコジヴ且ヅシ
し
、
装 し て い る の に 勺 巧43急答。 β 問て)女はそれに
橋
O
仇
rZEro-円 と い う 句 が ス タ ン ザ の
zrOE-- このよロ ZEW という句は中世英語の持情詩において恋する人一の苦悩の感情を表現するときによく使わ
れているupbhわめなのであるお)それが乙こではうまく活用されている
最 初 に 置 か れ て い て 、 そ れ ま で 三 八 行 の そ れ ぞ れ の Zロl E 5 の対照が表現してきた動揺する、宙ぶらりんな、愛
の心理をこの句が要約して言い表わしているからである。
ELos- の 宮gEmHr3rB の構造について述べてきたが、さらにここで、 ワイア yトがこの詩で、
いま、民国各o
リプレイ γを除いて、すべての行のシラブルの数を十個に揃えようとしていることに注意を向けておかなければなら
ない。つまり、ワイアットは五歩格の詩行を書きながら同時にそれを中世英語の頭韻詩の特徴である宮5EmF3rB
または﹃丘町 l口口市H
r1rsを持つものにしようとしているのである。このことはワイアットの詩のリズムを正確に理解
するためには極めて重要な事実であるように思われる o 例えば、この詩の最初の二行は明らかに弱強五歩格と考えら
れるが、 しかし
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のように詩脚に分けてみると、それぞれ第二詩脚がひとつのシラブルであるためにここで読みかたの速度がおそくな
irgF3rg の 形 成 が 容 易 に な る と 考 え ら れ る │ │
り、その結果、 つ、ぎに示すように、 Zロ
北大文学部紀要
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イギリス・ルネッサソスの行情詩(二)
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叶}百円。ロmo-040¥F2EBM
のように読まれる詩行であ初
(叫)
ノl スロップ・フライやG ・S- プレイザーも指摘しているように、 たいていの弱強五歩格の詩行は、散文や話し
言葉の場合とおなじように重要な語に強いアクセシトを置いて自然な読みかたをすると、 五 個 の 強 勢 を 持 つ も の で は
-1
6
8-
な く て 、 中 世 英 語 の 冨5Em-FE にひじように近い、四つの強勢を持つものとして読むことができるのがふつうで
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m B22. と呼ぶことにし、そしてこの韻律による詩行がチョlサlの﹃カシタベ
ある o このような明確な行間休止をあいだにはさんで二つの}正出lF5 に分れている弱強五歩格の詩行の韻律をイア
ン・ロビンソンは
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リl物語﹄の詩行全体の四分の三以上を占めていて、そこでは韻律と半行句 (
E
M
)
}両日巾田)が互いに対立し衝
その両者の結合から詩行のリズムが形成されて行くのだ、
と言う。そして更に、
ワイアット、もま
突しあうのではなくて、韻律が半行句と結合することによって詩行の調子と意味内容の正確な表現を助ける働きをし
ているのであり、
(胡)
gFSm仏間河口S522. の詩行を書いているということが、ワイアットがチョlサlの詩の伝統に連なる詩人
たこの a
であることを示すものだ、 とイアン・ロピシソンは考えている。
正弘田口ー口注目出口仲間B22w が持っている表現能力を活用することによって、 リズムの微妙な変化を巧みにあやつりな
がら、際立った成果をあげているワイアットの詩が、三つのライム・ロイヤル・スタンザで書かれたバラード形式の
詩 Jdou可出。同HOEgo-(凶凶凶︿口﹀であることは言うまでもない。
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﹂の行が分れるからである。こ
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主AqvBuvhd
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司令
会-
て、第三詩翻仰が
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の
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ていると述べているが、 こ の 不 規 則 な リ ズ ム の 実 態 を 明 ら か に す る た め に ぷ 乙
。
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期なリズムか
というイア γ ・ロビンソンの
出
になると患われる。そして一一
缶、
命仲叩
、
、
、
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ズムについてやや細が
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ぴ
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は完全な弱強五歩絡になっていて、
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九
まず
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ぜ﹄刊日同}阿
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予
びぷ弘同凶器内凶℃昂HHS522ゆとなる。
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というように詩鞠に
〈
ぎ
のような二つの
強
G
あるために
ことになるし、
内部同
JOHH
凶作付吉岡てが強いアクセントを持つ
一詩脚が張関絡になってい
Hσ-Hny関口問問時
ロ片山同戸戸
同
gsz 宮内 wmCMm
イギヲス・ルネッサンスの持清詩︿二﹀
るが、五行口出は
︿句、一︿、⋮
こと、ができる
M
u
g
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n暗殺ての使用の
そのために
のあと
の形成を容易にしている。そして、
スタシザの一行患に
はつぎのよ
なって
く表われている。
ぷm
L
g
n
Z 官民知路公2w として書かれていると考える
はこの詩の
つの半有勾から成る
ー
‘
ド
ー
ー
‘
はなく現実を醒めた絞で見つめているという痛烈な意識念表現するこの
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の
、吋}副知仲 mCMHM2M15950
口付長巳
河 川vi
のように第一
に強い休止が
防 口O
n
ることができて五歩格を保っているように思われるが、 し か し こ の 行 の 五 歩 格 的 な 性 格 は 実
開
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7
2-
第一スタンザの最後の七行監誌いちおう
旬
、
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甘い
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炉山、
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という具合に
際には務め
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守
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していて、それは
正しいのだが、
中世英語の
ある o この
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に対してイア γ ・ロピ γソγ捻この半行をあくま
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りに強勢がおおきくなる前半の半
のリズムがひじように効果的なものとなって行く。し
ことになり、 その結果、
品目。同
ことができないでいることを示して
ていて不規那なリズムの詩行と見な注れ、それはワイアッ
H
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H
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w 広見られるような供ZFHH白色目指ロgH添え2w は こ れ ま で 、 テ ィ リ ヤ l
内山ゆ場合主主
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行のリズムの裂を繰返すことによって、この
この詩行のぎ山内
iMF551rg は
pd言 明 言 ¥ 回 目 ミ ゲ 同
てきた
によって、
トが詩の韻枠体操作の技術に未熟であったために滑らかな鵠強五歩格
ドも含めたたいていの
この後半の学行が
の行の後半の
巧みに
のほうが強勢、がよりおおきいことを指携してい
︿日同)、、
ために、ティリヤードも述べているように、ニ3、可。仏。
のごつの詩脚と考え、そしてその
合
いて、第密詩脚が単音節で、 つぎの努ま詩騨が強弱格で
りも第一
今、
ン・トムソンは
。
口、
という形の予ズム
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炉
鳴
き
溺強五歩格が基礎になっていることは確か℃あり、とくに最初の半行の弱強格片山
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北大文学部紀前文
1
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同
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印
の
で
イギリス・ルネッサンスの行情詩ハ二)
(525)
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同 巾件同。
ジョン・トムソ
の 概 念 の 機 械 的 な 適 用 に も と づ く 誤 解 か ら 生 じ た も の で あ っ た 。 そ こ で 、 これまでの通説に
い る と 考 え ら れ て き た が 、 こ の よ う な 評 価 は ワ イ ア ッ ト の 詩 の リ ズ ム の 実 態 に は そ ぐ わ な い 、 ワイアットよりも後の
時代の、 韻 律
D-w ・ハ lディシグの先駆的な主張にはじまり、その後、
対して、最近では、既に述べたとおり、
γや レ イ モ ン ド ・ サ ゾ ル な ど を 経 て イ ア ジ ・ ロ ピ γ ソンの研究に至るまで、 ワ イ ア ッ ト の 詩 の リ ズ ム は
EmHr--μB なので
理によるリズムとは異質の、 中 世 英 語 の 頭 韻 詩 の リ ズ ム に よ り 近 い 、 半 行 句 を 単 位 と す る 宮g
(臼)
あ り 、 そ れ は 英 語 本 来 の 、 強 勢 に も と づ く 、 散 文 や 話 し 言 葉 の 自 然 な リ ズ ム 守口2田 宮3250同日匂巾巾口ごに近いも
の、つまり、印有2rHr3rg に も と づ く も の な の で あ る と い う み か た が 強 く 打 ち 出 さ れ て い る 。 し か し 、 言 う ま で
Jdabo﹁OBBmw に 加 え た 前 述 の 考 察 か ら も 明 ら か に な る よ う
RZFREm-MH22. か ら 生 み 出 さ れ る ワ イ ア ッ ト の 詩 の 句 単 位 の リ ズ ム と
もなく、これでワイアットの詩のリズムの問題がすべて解決ずみとなったわけではない o 例えば、サゾルは鋭く正確
に、しかもじゅうぶん注意深く、二つの
(出品)
の 果 す 役 割 に つ い て の 配 慮 が 殆 ん ど ま っ た く 欠 け て い て 、 その点ではイアン・
いうことを強く主張したが、しかしサゾルには、
に 、 ワ イ ア ッ ト の 詩 に お け る ロHmwH
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ロピソソシの言う hZFE注目尚早田B22. の 説 に よ っ て 補 わ れ な け れ ば な ら な か っ た の だ が 、 ワ イ ア ッ ト の 詩 の す べ
(同)
525 と 名20rF3rg と の 関 連 の し か た が さ ら に 詳 細 に 検 討 さ れ る こ
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ロ 553vB に よ る も の で あ る と は 限 ら ず 、 滑 ら か な 韻 律 の 詩 も 数 多 く 見 ら れ る と い う 事 実 を 忘
て が 必 ず し も Eロ
れないならば、 ワ イ ア ッ ト の 詩 に お け る
とが必要となるであろう。何故なら、 ジョン・トムソンやウィリアム・タイドマジ、が言うように、もしもワイアットが
自然な話し言葉のリズムを持つ詩句の効果を狙ったために規則正しい弱強五歩格の韻律の型を棄てたのであれば、
まり、 ワ イ ア ッ ト の 詩 の リ ズ ム の 不 規 則 さ が 意 図 的 に 作 り 出 さ れ た も の で あ る な ら ば 、 ワ イ ア ッ ト の 詩 の リ ズ ム が 英
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めていた、
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めて、
にもとづくものであると主張しても、
のにするヨえき
であって、 ワイア yト は 、 述 べ た い と 思 う 事 摂 の
も、その行ツズムを
る価値は、
いままに残ることになるからである。
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する、
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ワイア
小の結果として、
ここでつぎに、これまで述べてきたワイプットの
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心の内部に存在するものについてのワイブットの関心ということに自を向けてみよう。
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たのであるが、 ワイアットはこのようなイメジを増幅して行くことによって、 たんに表現のうえでの対照の妙を喜び
楽しむことに満足しているのではなくて、こうしたイメジで述べられるような状況がそこに置かれた人聞の心のなか
に生じさせる起伏する不安と動揺の感情にいや応なしに直面しなければならなくなるというワイアット自身の意識を
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にとどまらず、 ワイアットの菰刺詩や﹁悔俊詩篇﹂のなかにもおなじようにしばしば現われてくる。例えば、諏刺詩
うした主題に随伴する不安と焦燥と動揺と絶望の感情が生み出す﹁内部にあるもの﹂への意識は、恋愛詩の場合だけ
と移り気、耐え忍ぶことの必要や運命の女神のいたずらなどについて、飽きることなくいくども歌い続けていて、こ
使って、 せまい範囲の主題について、すなわち、恋の苦しみと痛手、婦人のつれなさや蔑視ゃいつわりや不実、無情
知れない。しかし、また、ヶネス・ミュアが指摘するように、ワイアットは比較的に数少ないきまった語棄を繰返し
ソネットはベトラルカの詩(勾ミ柏町二-弘己の翻訳なのであるから必ずしもワイアット独自の芦だと言い切れないかも
と書いていて、 ここにも﹁内部にあるもの﹂に向けられたワイアットの関心を読みとることができるが、 しかしこの
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のなかの確信と不安やためらいとのあいだを左右に揺れ動く分裂した感情の動きが効果的に表現されているというこ
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とである。例えば冒頭の二行については
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と示すことができるように、 いま述べたようなリズムの単位となる句の存在が明らかに認められるし、 また、
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することによって自分の応答の正しさを示そうとしている。 つまり、自己分析の方向に進んで行くのであるが、
かと思いかえしでもするのであろう、このスタシザの残りの五行では心のなかに生じた疑念をもうすこし詳しく説明
いう修辞的疑問の形で強く打ち出すのである。 しかし、ここで話者は自分のこの応答がすこし言い過ぎなのではない
出されたおそらく肯定的な意見に答えて自分の疑念を、対立する否定的な応答を、それもよ司
ZBロ HHHE85で と
が書き始められているということは官頭の二行からも容易に察することができる。ここでこの詩の話者は聞き手から
の存在を明らかに示すものであるが、話者と聞き手とのあいだで交わされている熱気をおびた議論の中途からこの詩
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することによって表現されて行く。第一一一スタンザの JL同出田町w F F
定の(実在の、あるいは、仮想の)聞き手に向って語るという関係、 つまり、 いわゆる HY22呂
田-2Z2Zロ を 設 定
この詩でワイアットが述べようとしている心のなかの矛盾相到のドラマティックな展開の過程はこの詩の話者が特
あうものどうしのあいだの葛藤と競い合っていると考えられる。
考古mF3rBW はこの詩の話者の心のなかの互いに対立し
ったものになっている。このようなサゾルの言う J 巾mlg
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のように第二詩脚までの弱強格が第三詩脚で強弱格に変化するために、左右二つの句のあいだの行間休止が強く目立
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の句の頭韻がつぎに続く句とのあいだの行間休止を際立たせ、臥()町田
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の二行について言えば、
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w の詩行ではこの前半の句が前行から跨がってきたものであるのに加えて、
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イギリス・ルネッ十ンスの行情詩(二)
とき話者は心のなかに巣くう矛盾撞着に鋭く気づきはじめるのである042 。岸田回目己主 U12Z2HSヨ て の 一 行
はこの矛盾を言い表わしているのであり、そして、いま心のなかに生まれた矛盾の意識は第一スタソザの詩句の左右
に飛び交うような 8
0lg考古mF1rB に呼応している。 つ、ぎの五│六行自の﹁変り易い風のように揺れ動く重みの
, 当日、ロ身者。同母国:・ 0同国主
gnrgロ唱 J や﹁突然視線の方向を変えてしまうあそび半分の
Z
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ない空虚な言葉﹂
g r口口EEHm叱)は宮廷風恋愛のコンヴェ γシヨンである移り気な
いたずらっぽい眼﹂ (HZHgρE百戸仲間同田市・ : O同
貴婦人のつれない言葉や限であろうが、 しかしそれはこの詩では詩人を心の内部にあるものの凝視と自己分析とに誘
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うきっかけにすぎない。 つまり、このコンヴェ γショナルな貴婦人の言葉と眼は詩人の心を驚かし目醒まして (
}SF 目。問問問団て)、 それ自身の疑いや不安に揺れ動くすがたのありのままの認識へと導いて行くためのたんなる手段
でありフィクショ γであるにすぎないのである。そして、第一スタンザの最後の一行はリプレイ γとして他の二つの
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スタンザでも繰返される詩句であり、それはまた、中世の持情詩のひとつの技法であった、それまでの詩句の内容を
要約して述べるためのリプレイソ
(臼)
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包 Z P口同日円。昆口。HP2w の一行はこの詩の話者が聞き手に向って語りかけたものではなくて、話者自身のモノ
ローグと言わなければならない。
第一スタ γザではその詩句のリズムが心のなかの動きを表現する役割を果してきたが、第二のスタ γザでは二つの
相反する極のあいだを、どちらにとも決断しかねて、不安定に動揺している心の状態がいくつかのイメジによって述
べられる o 第二スタ γザ の リ ズ ム は 第 一 ス タ ン ザ の そ れ に 比 べ る と 比 較 的 に 滑 ら か で あ り 、 JHロ円二己宮田H
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らかに左右二つの句に分れる詩句があっても、そのリズムは強い行間休止によって激しく中断されるものではなく、
対立する意味の句の併列でありながらどの詩句も滑らかに流れて行く。この滑らかに流れるリズムはどこまで行って
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Ego-) のなかを自由に(よロ主)巾22J 歩きまわりながら、選択し決断する自由が
も 出 口 の な い 迷 路 勺20ロ
EE--r叩えgJ のにも似た二律背反の心理状態を表現
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あ る に も か か わ ら ず 迷 い か ら 脱 出 で き な い で い る 勺H
する働きをしているものと思われる。
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gロ包E525. という。セフドックスは第三スタンザの最初の行に受け継がれる││
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門
目
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K戸田田口HOLW
このバラドクシカルな詩行についてサゾルは﹁危機的な心理状態を典型的に言い表わしている詩句をワイアットの詩
のなかに求めるとすれば、この一行こそがそれだと確信を持って言うことができる﹂と述べているが、確かに﹁心の
内部にあるもの﹂の真実のすがたはこうしたバラドックスによってしか表現できないであろう。つぎに続く第三スタ
ンザの二三行目は、第一スタシザ二行自の修辞的疑問とは異なる、解答を見出すことの不可能なほんとうの疑問な
のであり、ここで再びこの詩の話者が聞き手の存在を思い出して、 Jh白 羽 田FFFEf--w と答えてみても、これ
はすこしもほんとうの疑問に対する答えにはなっていないかも知れないと話者には思えるのである。恐ろしい圧倒的
な真実に目を聞かれたいまとなっては、話者が聞き手に向って話している言葉すら無駄な、すこしも頼りにならない
門同可君。丘ゆてのように思われてくる勺宮司口同FgHユ
04E∞て﹀ o第三スタンザの最初の一行の。ハラドックスは
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このような心のなかの真実を表現している詩句なのである。
宮廷風恋愛のコ γヴェ γションを心のなかの問題として内面的に捉え直したときに、安定を求めても得ることがで
北大文学部紀要
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3-
イギリス・ルネッサンスの持情詩(二)
きずに動揺する危機的な心理の劇的な状態を表現した二件目白可 gmcc門でのような詩が生み出され、そのような心理
状態はバラドックスによってしか言い表わすことができなかったが、 また、 コγヴェンションと﹁心の内部にあるも
の﹂とのあいだの話離の意識が素材となって、そこに生じる感情の歪みと思考の不整合がそのまま正直に表現された
ときに、真に個性的な詩が生まれることになMV こうしてワイア yトの詩は宮廷風恋愛のコシヴェンションに対する
批判となるのだが、 そのとき、 ﹁心の内部にあるもの﹂の凝視の結果としてそこに発見される矛盾対立するものどう
しの相到葛藤、 つまり、意識の危機的な状態の分析追求はそれを表現する詩を論理的な構造と論証的な性格を持つも
のにし、それと同時に、あいまいな情緒を喚起しがちな装飾にしかすぎない修辞的な表現を避けて、内容の正確な伝
ML)FW((UHKM
内凶凶同︿)
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F50 ロ♀ BUHER.(のの︿)が取りあげられ論じられるのが慣例となってい
達を可能にする簡素で平明な言葉づかいが求められ結こうした特徴を最もよく示しているワイワットの詩として、
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るが、‘ここでは RUV与の混乱OF048:-w で始まるソネットについてすこし考察を加えて結びとしたい。
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則正しい滑らかな韻律で書かれていること、直輸や隠聡などの修辞的表現が皆無で、そのためにバラフレーズし得る
合理的な意味内容を直ちに読みとることができること、などである o しかし、この詩を。ハラフレーズして、﹁恋人に
棄てられた男がそのために歎き悲しみ、恋人の裏切りを責め、あるいは、なんとかうまく口説いてよりをもどしたい
﹂の詩のソネット形式という構造の点か
マリ 1 ・クリ lガーも指摘しているように、こんなバラフレーズではとうてい言
(同町)
と考えても、それはみんな無駄なことである、 なぜなら、 心変りは女の性であるから﹂と述べているものと単純に考
えるのは正しくない。この詩には、
いつくすことのできない豊かな意味があるからである。このことを、 まず、
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ら考えてみると、前半の八行の部分守口Z
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φ が並列すると同時に対立しているという関係に
あることがわかる。すなわち、恋人に裏切られて歎き悲しむ世間一般の男勺ロ可25
﹂の対照はこの詩の主題を支える重要な語をすべ
の こ の 詩 の 話 者 ( £EsrHBt) との対照、 つまり、前者の行為をひとつひとつ否定して行くことによって後者
が独自の、個性的な、見解を対照的に披涯して行くわけであるが、
北大文学部紀要
一 185 ~
イギリス・ルネッサンスの持情詩(二)
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詩が簡素で平明な言葉を使い、 しかも殆んどすべての語、が単音節であるということはベトラルカ風の内容の空疎な宮
しかし、 この詩が宮廷風恋愛に対するワイアットの批判を表明したものであることはほぼ確実であると思う。この
マγの解釈は首肯し難いように思われる。
容の態度を表現しているのである。以上のことから考えると、この詩に反抗的な気分と皮肉な笑いを読み取るタイド
によって、最初から周到に準備されているのである。そしてこの詩の規則正しい滑らかなリズムがまたこの平静な受
る 態 度 は 、 こ の 詩 の 話 者 に は 現 実 に つ い て の 醒 め た 認 識 が あ る こ と を 示 す 冒 頭 の 詩 句 勺SHZ2EEE仏 F g J
ここでもそう単純に割り切れるものではなく、実は、結びの二行に表現されているありのままの現実を静かに容認す
そのとき、この詩の論理構造としては 022叩の定立に対して 8aえは反定立の関係にあるようにも見受けられるが、
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廷詩に見られる修辞的装飾にすぎない種類の表現とは著しく異なるものであり、 とくに
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もあるのだが、宮廷風恋愛に向けられたそうした意味での批判がこの詩が述べるありのままの現実の諦めにも似た静
れは言葉に対する批判だけにとどまるものではなく、そうした表現を許容するその背後の思想や感情に対する批判で
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ツクスによる表現と比較して考えるならば、これはたいへん
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﹂の詩ではおなじ稿本のな
本来の単音節の単語の使用とともに、この詩を﹁ベトラルカ風の詩とはあらゆる点で対立する﹂イギリス土着の詩の
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5 4田町 で始まるこの詩はデヴォシシャ稿本のなかの一篇なのであるが、
伝統に直接結びつくものにしている。
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詩の粗野で簡素な言葉をそれらの大陸の詩人たちの使う比端的で表情豊かな詩的言語に措抗させることによって、
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7-
か の ワ イ ア ッ ト の 他 の 詩 ほ ど に は 宮gEmHr1rB が目立ってはいない。また、 ソ ネ ッ ト 形 式 で 書 か れ て い る こ の 詩
﹂の詩がイギリス土着の平明なスタイ
がペトラルカの翻訳なのか、それともその種の下敷きを持たないオリジナルな詩なのか、そのどちらとも断定するこ
(
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とができない。しかし、この詩に加えてきた上述の考察から明らかなように、
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2同 に 表 現 し よ う と し て い る こ と か ら 生 ま れ て き て い る こ と は 確 か で あ る o ワイアットにおいてはこうし
ルの詩の伝統を受け継いでいて、そしてその平明さが自己の独自の感情や意識を分析的に追求して行く過程をワイア
ットが
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なものと呼ぶことはできるが、 しかしそれは決して単調で平凡なものではなく、
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た個性と平明さとが緊密に結合しているのであって、 この詩に見られる表現の平明さは、 C S- ルlイスの言葉を
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三 なものと個性的なものとが同時におなじところに存在し、
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れば、 ワ イ ア ッ ト は ベ ト ラ ル カ と そ の 流 れ を 汲 む 人 び と の 詩 の 翻 訳 と い う 仕 事 を 通 し て 、 そ れ ま で の イ ギ リ ス 土 着 の
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ギリスの詩の言葉を純化し洗練し、 しかも、 ワ イ ア ッ ト の 優 れ た 詩 に お い て は 、 詩 の 言 葉 を 深 い 意 味 を 充 填 さ せ る こ
北大文学部紀要
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イギリス・ルネ γサンスの行情詩(二﹀
とのできるものに作り変えることができたのである。ジョージ・バトナムが﹁英詩の技法﹄のなかでワイアットを英
語の卑俗な詩の組野で平凡な書きかたに磨きをかけて仕上げた詩人と評し、また﹃トッテル詩選集﹄の序文では﹁深
い英知を湛えたサ l ・トマス・ワイアットの重み﹂が指摘されているのも至当なことと思われる。
について論じていじで再び関心が寄せられるきざしが現われはじめているけれども、﹁平明なスタイル﹂ の詩という
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詩選集である
ヴォlクス卿がワイアットやサリl伯についで声価の高かった詩人であったらしいことはバトナムの
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以外の詩人たちは、概して、懐疑や不安に激しく動揺する心の状態を凝視してそれを繊細なリズムの変化を伴なうエ
きる。もっとも、そうは言っても、レイモンド・サゾルが指摘するように、 ﹃トッテル詩選集﹄ のなかのワイアット
﹃英詩の技法﹄やジョージ・ギャスコイ γの詩集の献呈文のなかで言及されていることなどからも察知することがで
に収録されている十五篇の合計してわずか二十篇に満たない。し
かし、 当時、
詩選集﹄のなかの四篇(このうち一篇は誤ってサリl伯の作となっている)と一五七六年に出版されたもうひとつの
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現在までのところヴォlクス卿トマス (
観点から見て看過できないのは作者不詳のなかのひとりであるヴォlクス卿トマスの詩であると思われる。
一が作者不詳となっている。サリl伯の詩についてはごく最近になって A ・ファウラーが新しい視野からその面白さ
にわずかながら言及したことのあるニコラス・グリモールドのみであり、この詩選集に収録されている詩の約三分の
円五五七年に出版された﹃トッテル詩選集﹄にその名を連ねている詩人は、 ワイアットを除けば、 サリl伯とさき
2
ネルギッジュな詩句に定着させる意欲と努力にとぼしく、 ただ単に借りものの題材を用いて調子の整った韻文を作る
ことに終始して、要するに、詩の衰退を招いただけであったと言うことができて、そしてヴォlクス卿もそうした詩
人の例に洩れるものではなかったのだが、 しかし作品の質においてヴォlクス卿がワイアットにより接近していると
いう印象を今日与えるのは、あるいは、現存するヴォ l グス卿の詩の数が比較的すくなく、 しかも最良の作品のみが
そのうえシェイクスピアがその一部をえり抜いて改作して
5口。ロE2rF口てという題の一篇は、そのころ曲をつけて歌われて
残されているということに起因するのかも知れない。しかし、いずれにしても、ヴォlクス卿の詩のなかで﹃トッテ
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いたということもあって、 広く人口に贈炎していたし、
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討してみることによってずォ I ク ス 卿 の 詩 の 性 格 を 明 ら か に し 、 そ し て 同 時 に 、 そ れ に よ っ て 側 面 か ら 光 を あ て て ワ
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イギリス・ルネッサンスの持情詩(二)
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この詩は、若さと老年とを絶えず対比させながら、打ち寄せてくる年波とそのうしろに迫る避けることのできない死
の恐ろしさを、装飾的な比臓を用いずに、簡潔で力強い言葉によって直裁に表現したものであり、老年の到来を具体
的に示すさまざまな徴候をこまごまと列挙して行くことによって、老年と死の醜悪さと空恐ろしさを効果的に印象づ
けるのに成功している詩である、 とふつう言われている。つまり、中世イギリスの行情詩以来の伝統的な﹁平明なス
タイル﹂の詩の特徴を明らかに示している詩であると考えられていて、この点から言えば、この詩の主題と効果につ
いての上記のような評価の妥当性はそれなりに認めることができるのであるが、十六世紀中葉の詩として考えたうえ
で正当な評価をこの詩に与えようとするならば、若さ対老年という常套的なテーマを取り扱い、それを詩として表現
(位)
するときの作者の姿勢が問われる必要があるように思われる。そして、 この間いに対する解答はこの詩の構造、すな
25R白山口)十四個から成るが、古い
わち、この詩に見られる細部の配列のしかたを詳しく検討してみることによって得られるようである。
まず、この詩の詩形に触れておくと、この詩は ababと押韻する四行連句
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(目白)
稿本によると
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のように書かれている o つまり、これは十二音節の詩行と十四音節の詩行が二行連句を形作る、いわゆる
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による詩なのであって、この韻律はワイアットやサリl伯が数多く試み、その後、十六世紀の中
(制)
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半にかけてひじような流行を見たものである。﹃トッテル詩選集﹄ではこの詩はさきに掲げたように四行連句を重ね
た形に印刷されているが、ここでは、便宜上、それぞれの四行連句を﹁スタンザ﹂と呼ぶことにする。
この詩は最初のスタンザでまず老年を若さと明らかな対照をなすものとしてとらえ、その後のスタンザでも繰返し
いくども若さに言及しながら、老年とそれに続く死の醜悪さと恐ろしさを際立たせようとする。具体的に言えば、
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J。丘町 WC-MYJcEEu--2・5vJOEYWC・匡)¥MHOEr・2・ω
VJoEEz--wc-お﹀の繰返し、および、
若さの属性を表わすニロ丘町田.c・
3w 二5弓 E t c・=yJHqBEて。・ zyJSEOロロロて(︼-BVRZ24u
,
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.C・品。)の四個の接続詞がこの詩に一貫した論理の展開を与える役割を果し
北大文学部紀要
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3-
イギリス・ルネッサンスの行情詩(二﹀
ているように見受けられる o し か し 、 実 は 、 こ の 詩 に は 論 理 的 な 展 開 は な く 、 冒 頭 の ス タ ン ザ で 提 示 さ れ た 老 年 対 若
さの対立はそれ以上に発展させられることなく最後のスタ γザ に 到 る ま で 静 止 し た ま ま な の で あ る 。 す な わ ち 、 こ
の詩の構造という点から言えば、各々のスタソザの順序が論理的な展開の線に泊うものではなくて、たんに並列的に
置かれているにすぎないのである o 繰 返 す こ と に な る が 、 こ の 詩 は ひ と つ の 細 部 か ら 他 の 細 部 へ と 進 む 合 理 的 な 進 行
の順序が重要視される論理的な方法によって構成されたものではなく、細部から細部への移行の順序が連想とか感じ
7-3
は老年を若さの喪失として間接的に述べた、
といったものによって決められて行く反復、または列挙、の方法による詩なのである。これをこの詩の本文に即して
もっと具体的に述べると、第一から第四までのスタンザ(回目・
lω⑦ へ の 橋 渡 し と 考 え ら れ る が 、 こ の 最 初 の 五 つ の ス タ
γザ
l M S は、老年とそれに続く死を直接に、リアリスティックに述べた、この詩のクライマックスと言うことの
いわぽ陰画によって老年のすがたを描いてみせた部分で、この詩の導入部の役割を果しており、そして第五スタ γザ
公ケ弓
できる部分、すなわち、第六│第九スタンザ(ニ・巴
には同一項目の反復が多く、例えば第一スタンザと第二スタ γザはどちらかを削除するか、あるいは両者を一つのス
タンザに凝縮することが可能であるように思われるし、また第三l 第五スタ γザについても同様のことが言えるよう
第十スタ γザ(=・勾1
8) は若さや老年のすがたそのものを述
である。要するに散漫なのであって、どのスタンザもそれぞれの存在を正当に主張しあうような動かし難い緊密な論
理によって構成されてはいないのである。 さらに、
っ、ぎの第十一スタンザの最初の
民
吋
,
rg
という接続詞はそこから始まる
べたものではなく、むしろ老年に向けられる視線の冷たさに言及しているものと考えられ、その点では第五スタ γザ
で既に述べたことの繰返しにすぎないし、
論理の展開を予畑山させるにも拘らず、実際には、それまでの部分を締めくくるどころか、反って、 つるりとした繭瞳
に言及する第十二スタシザが続いて第六│第九スタンザに既に述べてきた死のさまざまな表象をもういちど繰返し、
-1
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4-
この詩の最後のスタ γザ(=・ 88) がこの詩の話者が聞き手
結局、第十一 i 第十二スタンザは竜頭蛇尾に終っている。そして、第十一スタ γザと第十二スタンザはその順序を交
換してもこの詩の内容にすこしも変化は生じない。
に呼びかけるという形をとっていて、あとがき的な性格のものになっているのは反復または列挙の方法から必然的に
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53 同 町 OHFmw冨印}向田片山てにさえ認められる論理性もないのであ
ヴォlクス卿の詩とおなじような老年対若さのテlマを取り扱ったウィリアム@ダンバl
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生じてきた結果なのであって、結論はそれまでの部分で繰返しいくども述べつくされているので、強いて結句を付け
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足そうとすればこのような形で終るほかに手がないのである。 ヴォ I クス卿の で吋
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て無能であるということにはならない。ヴォlクス卿が十四・五世紀のイギリスの詩ではごく一般的であった詩の書
きかた、つまり、項目をカタログのように繰返し列挙して行くという方法によりおおく依存していたというだけにす
ぎないのであって、反って中世以来のイギリス土着の﹁平明なスタイル﹂の詩の特色を活用することによって表現の
正確さを達成し得たのだと言うこともできる。このことをい主検討を加えてきたヴォlクス卿の詩に即して言うなら
ば、第六第九スタンザでは老いが、顔に刻みつけられたしわ、あるいは死の前ぶれである病気、あるいは死者を包む
経惟子や墓穴、あるいは野辺の送りを告げる鐘の音などによって情容赦なくどぎつく表現され、そしてまた最後のス
タンザでは、あとに生き残る者への忠告という形で、死の不可避なこと、人生のすべてが空しいことを述べるなにひ
北大文学部紀要
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5-
には、例えばア γドルl・マlヴェル(﹀ロ門
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しかし、 ヴォlクス卿の詩の構造には論理的一貫性が欠けていると言ってもそれが直ちにヴォlグス卿が詩人とし
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イギリス・ルネッサンスの行情詩(二﹀
頻繁に用いられているがその割りにはあまり目立たない、
抑制の利いた頭韻、
そのいくつかをあげれば
とつ飾らない裸のままの言葉が冷えびえとした暗い調子を響かせ、空恐ろしささえ感じさせるものとなっている。こ
の効果は、
など、 によっても強められている。死についての膜想を歌った中世イギリスの数多くの宗教持情詩とは明ら
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すぎない。互いに対立するもののあいだの緊張関係から何らかの新しい意味を抽出し発見して行くというようなこと
固定した概念にす、ぎず、両者はいつまでもたんなる対立のままにとどまり、その対立が定言的にとらえられているに
がつぎつぎと付け加えられて行くだけであり、老いが若さと対比されることがあってもその若さがまたおなじように
後まで疑問をさしはさむ余地のない確定的な性質のものとしてとらえられていて、詩の進行の過程ではそうした属性
れを詩に扱われる主題の側から言うならば、主題となる老いとか死というようなもののさまざまな属性が最初から最
の入れ替えをすることさえも可能であるような散漫な結合関係しか持たない、 ということに求めることができる o こ
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は詩の目的にはなっていないのである。そして、 ヴォlクス卿の詩に緊密な論理的な展開がないということは相互にら
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道徳的・教訓的な色彩の濃いものに終らせることになる。ここでワイアットの詩を、おなじ﹃トッテル詩選集﹄に収
録されたヴォlクス卿の詩と比較してみたときに、両者がおなじ中世以来のイギリスの持情詩の伝統のなかで書かれ
一篇の詩を緊密なまとまりのあるものに構築して行く詩的イメジの操作のしかたをベトラルカの詩
ながら、際立った差異を見せていることが注目される。懐疑と不安に動揺する危機的な心理の状態の分析過程を詩の
なかに持ちこみ、
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