...

アンモニウムジニトラミド系イオン液体の推進剤としての特性 The

by user

on
Category: Documents
179

views

Report

Comments

Transcript

アンモニウムジニトラミド系イオン液体の推進剤としての特性 The
アンモニウムジニトラミド系イオン液体の推進剤としての特性
The Property of Ammonium dinitramide -Based Ionic Liquid as Propellant
○井 出 雄 一 郎 * , 高 橋 拓 也 * * , 岩 井 啓 一 郎 * * , 野 副 克 彦 * * * ,
羽 生 宏 人 ****, 徳 留 真 一 郎 ****
*
***
総 合 研 究 大 学 院 大 学 , **日 本 カ ー リ ッ ト 株 式 会 社 ,
カ ー リ ッ ト ホ ー ル デ ィ ン グ ス 株 式 会 社 , ****宇 宙 航 空 研 究 開 発 機 構
○Yuichiro Ide * , Takuya Takahashi * * , Keiichiro Iwai * * , Katsuhiko Nozoe * * * ,
Hiroto Habu * * * * and Shinichiro Tokudome * * * *
*
The Graduate University for Advanced Studies ,
***
Carlit Holdings Co., Ltd. and
****
**
Japan Carlit Co., Ltd.,
Japan Aerospace Exploration Agency
Abstract
As a candidate for green propellant, ammonium dinitramide based ionic liquid propellant
(ADN-based ILP) was invented. It is mixture of three solid powders: ADN, monomethylamine
nitrate, Urea. They are o xidizer, Fuel, and freezing point depressant respectively. The
performances can be adjusted by change of mass composition. According to the appropriate
selection of mass composition, the ADN-based ILP has higher specific impulse and lower
freezing point than these of hydrazine. The strand burner tests of the ADN -based ILP were
conducted. Then, the self-sustainable combustion, linear burning rates, and flame temperatures
were obtained. The properties of ADN-based ILP as propellant were discussed on the basis of the
results. As a problem of thruster application, spray ignition in vacuum was also discussed.
1. は じ め に
現在、宇宙機の推進および姿勢制御においてヒドラジンや四酸化二窒素を推進剤とした
スラスタが利用されている。しかし、毒性が強く運用性に劣るためこれに代る低毒性推進
剤の研究が行われている。高比推力の一液式低毒性推進剤として注目されているものは、
硝 酸 ヒ ド ロ キ シ ル ア ン モ ニ ウ ム ( HAN) や ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド ( ADN) 等 の 高 酸 素 バ
ラ ン ス の 塩 を 溶 か し た 水 溶 液 で あ る [1,2]。
高 比 推 力 な 低 毒 性 推 進 剤 の 候 補 と し て 、JAXA お よ び カ ー リ ッ ト ホ ー ル デ ィ ン グ ス 株 式 会
社 は ADN、 硝 酸 モ ノ メ チ ル ア ミ ン (MMAN)、 尿 素 (Urea)で 構 成 さ れ る 溶 媒 フ リ ー な 推 進 剤 を
新規に開発している。これは 3 つの固体粉末の混合のみによって生成される液体である。
本 論 で は こ れ を ADN 系 イ オ ン 液 体 推 進 剤 (ADN 系 ILP)と 呼 ぶ 。 イ オ ン 液 体 は 融 点 が 373K 以
下 の 塩 と 定 義 さ れ る [3]。従 っ て 、融 点 が そ れ ぞ れ 365K と 373-385K で あ る 塩 の ADN お よ び
MMAN は イ オ ン 液 体 ま た は そ れ と 同 等 な 物 質 で あ る 。 ADN 系 ILP は 、 イ オ ン 液 体 の 定 義 に 即
This document is provided by JAXA.
さ な い が 、 ADN お よ び MMAN の イ オ ン と Urea に よ っ て 構 成 さ れ て い る 可 能 性 が あ り 、 こ の
ためイオン液体と類似した性質を持ち得る。
ADN 系 ILP の 原 材 料 は 、ADN、MMAN、Urea で あ り 、そ れ ぞ れ 酸 化 剤 、燃 料 、凝 固 点 降 下 剤
に対応する。これらの配合を調整することで、高比推力かつ低凝固点の推進剤を生成する
こ と が 可 能 と な る 。質 量 比 ADN/MMAN/Urea=60/30/10 wt.%で は 高 い 比 推 力 性 能 を 示 し ,密 度
と 理 論 比 推 力 は そ れ ぞ れ ヒ ド ラ ジ ン の 1.5 と 1.2 倍 で あ る 。 ま た 、 カ ー リ ッ ト ホ ー ル デ ィ
ン グ ス 株 式 会 社 の 大 気 中 で の 液 滴 着 火 試 験 に よ る と 、 一 部 の 配 合 の ADN 系 ILP に 対 し て
473K-773K の ホ ッ ト プ レ ー ト 上 で 着 火 す る こ と が 確 認 さ れ て い る た め 、ADN 系 ILP は 可 燃 性
物 質 と 言 え る [4]。し か し 、大 気 中 の 酸 素 と 反 応 し て 燃 焼 し た 可 能 性 が あ る た め 、一 液 式 推
進剤として利用するには窒素雰囲気中での燃焼を検証することが求められる。
本 論 で の 研 究 目 的 は ADN 系 ILP の 基 礎 燃 焼 特 性 を 把 握 し 、推 進 剤 と し て の 適 応 性 を 検 討
す る こ と で あ る 。 実 験 で は 、 ヒ ド ラ ジ ン や HAN 系 水 溶 液 に 対 し て も 行 わ れ た 基 礎 的 な 試 験
方 法 と し て ス ト ラ ン ド 燃 焼 試 験 を 選 定 し [5,6]、窒 素 雰 囲 気 下 に お け る ADN 系 ILP の 自 立 燃
焼性を検証した。また,基礎燃焼特性として燃焼速度の圧力依存性 および温度履歴を取得
し た 。 こ れ ら を 既 存 の 推 進 剤 と 比 較 検 討 し 、 ADN 系 ILP の 推 進 剤 と し て の 特 性 に つ い て 議
論する。
2. 実 験 方 法
2.1 試 料 の 配 合 選 定
質 量 比 10wt.%刻 み の 配 合 の 中 か ら 推 進 剤 の 選 定 を 行 っ た 。 表 1 に 常 温 で 液 体 と な る 配
表 1 : ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド 系 イ オ ン 液 体 推 進 剤 (ADN 系 ILP)の 理 論 性 能 と 物 性 値
真 空 比 推 力 Isp と 断 熱 火 炎 温 度 T a d は NASA-CEA に よ る 計 算 結 果 で あ る 。計 算 条 件 は 開 口 比
50、 燃 焼 室 圧 力 0.7MPaA、 凍 結 流 で あ る 。 密 度 と 凝 固 点 は カ ー リ ッ ト ホ ー ル デ ィ ン グ ス 株
式 会 社 に よ る 計 測 値 で あ る 。密 度 ρ は 293K で の 値 で あ る 。凝 固 点 T f は 相 状 態 の 目 視 判 断
により計測された値である。
ADN/MMAN/Urea
Isp
Tad
ρ
ρ Isp
Tf
wt.%
s
K
g/cm 3
s g/cm 3
K
60/30/10
282
2631
1.50
423
約 283
40/50/10
269
2286
1.47
396
約 273
50/30/20
262
2214
1.49
390
約 273
40/40/20
250
1976
1.49
372
約 243
30/50/20
237
1743
1.45
343
約 243
30/40/30
213
1425
1.45
309
約 243
Hydrazine (reference)
226
873
1.02
230
274.4
This document is provided by JAXA.
合 で の ADN 系 ILP の 理 論 性 能 と 物 性 値 を 示 す 。 表 中 の 配 合 は 真 空 比 推 力 が 高 い 順 に 並 べ て
あ る 。真 空 比 推 力 や 断 熱 火 炎 温 度 は ADN 含 有 量 が 高 く な る ほ ど 又 Urea 含 有 量 が 低 く な る ほ
ど 増 加 す る 傾 向 に あ る 。ま た 、Urea 含 有 量 の 増 加 に 伴 っ て 、凝 固 点 が 下 が っ て い く こ と が
分かる。
配 合 の 選 定 に あ た っ て 3 つ の 選 定 基 準 を 設 け た 。1 つ 目 は 、ADN 系 ILP の 真 空 比 推 力 が ヒ
ド ラ ジ ン の 真 空 比 推 力 に 比 べ 優 る こ と 。2 つ 目 は 、断 熱 火 炎 温 度 が JAXA で 開 発 さ れ て い る
放 射 冷 却 式 SiC/SiC 燃 焼 器 の 耐 熱 温 度 1873K を 下 回 る こ と [7]。3 つ 目 は 、燃 料 リ ッ チ な 配
合 で あ る こ と で あ る 。表 1 に お い て こ の 基 準 を す べ て 満 た す 配 合 は 30/50/20wt.%に 限 ら れ
るため、この配合を実験条件とした。また、カーリットホールディングス株式会社による
大 気 中 で の 液 滴 の オ ー プ ン 着 火 試 験 に よ り 着 火 温 度 は 約 723K で あ る 。
2.2 ス ト ラ ン ド 燃 焼 試 験
ス ト ラ ン ド 燃 焼 試 験 に つ い て 以 下 に 説 明 す る 。 配 合 30/50/20 wt.%の ADN 系 ILP を 充 填
した石英管をストランド燃焼器内に設置し、窒素雰囲気下においてニクロム線 ヒータで着
火 し た 。 燃 焼 室 圧 力 は 0.15-3MPaA の 圧 力 範 囲 に 設 定 し た 。 石 英 管 の 内 径 は 10mm で あ り 、
ADN 系 ILP を 25mm の 高 さ ま で 充 填 し た 。ま た 、一 部 の 石 英 管 に は 線 径 25μ m の R 型 熱 電 対
を測定点が石英管中央に来るように設置した。線燃焼速度の計測のため、燃焼の様子をス
トランド燃焼器の窓からビデオカメラで撮影した。
3. 実 験 結 果
3.1 自 立 燃 焼 性
自立燃焼性の検証結果を表 2 にまとめた。燃焼試験では着火が認められた後にニクロム
線 ヒ ー タ を 切 っ た 。燃 焼 室 圧 力 0.15MPaA に お い て は ADN 系 ILP の 分 解 が 確 認 さ れ た が 、着
火 に は 至 ら な か っ た 。ま た 、燃 焼 室 圧 力 0.39MPaA に お い て は ニ ク ロ ム 線 ヒ ー タ に よ る 加 熱
中 は 燃 焼 が 持 続 し た が 、加 熱 を 中 止 し た と 同 時 に 消 炎 し た た め 自 立 燃 焼 し な い と 判 断 し た 。
一 方 燃 焼 室 圧 力 0.96, 1.8, 2.5MPaA に お い て は い ず れ も ニ ク ロ ム 線 ヒ ー タ を 切 っ た 後 も 燃
焼 が 持 続 し た た め 、 自 立 燃 焼 し た と 判 断 し た ( 図 1) 。 従 っ て 、 低 圧 着 火 限 界 が 圧 力 範 囲
0.39-0.96MPaA に 存 在 す る こ と が 分 か る 。
表 2: 自 立 燃 焼 性 の 検 証
初期設定圧力
燃焼中の平均燃焼室圧力
自立燃焼性
MPaA
MPaA
-
0.15
-
No
0.5
0.39
No
1
0.96
Yes
2
1.8
Yes
3
2.5
Yes
This document is provided by JAXA.
c
b
a
図 1: ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド 系 イ オ ン 液 体 の ス ト ラ ン ド 燃 焼 試 験
配 合 ADN/MMAN/Urea=30/50/20 wt.% (a) 燃 焼 室 圧 力 0.96MPaA (b)燃 焼 室 圧 力 1.8MPaA
(c)燃 焼 室 圧 力 2.5MPaA
3.2 線 燃 焼 速 度
図 2 は ADN 系 ILP と SHP163 の 線 燃 焼 速 度 の 圧 力 依 存 性 を 比 較 し た デ ー タ で あ る 。SHP163
は HAN/AN/water/methanol=95/5/8/21 wt. % の 配 合 を 持 つ HAN 系 一 液 式 推 進 剤 で あ り 、JAXA
に お い て 研 究 さ れ て い る 低 毒 性 推 進 剤 の 有 力 な 候 補 で あ る 。図 2 か ら ADN 系 ILP は SHP163
に比べて線燃焼速度が高いことが分かる。また、ビエイユの式と呼ばれる燃焼速度と圧力
に 関 し て よ く 知 ら れ る 近 似 式 (1)を 用 い る と 、ADN 系 ILP の 圧 力 指 数 n は 1.1、SHP163 の 圧
力 指 数 n は 4.5 で あ る 。
Linear burning rate [mm/s]
100
SHP163 (HAN-based liquid propellant)
ADN-based ionic liquid 30/50/20
10
1
0.1
0.5
5
Pressure [MPaA]
図 2: ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド 系 イ オ ン 液 体 の 線 燃 焼 速 度 の 圧 力 依 存 性
青 い プ ロ ッ ト は ADN 系 イ オ ン 液 体 、 赤 い プ ロ ッ ト は SHP163 の 文 献 値 [5]を 示 す 。
r  aP n
(1)
This document is provided by JAXA.
3.3 温 度 履 歴
図 3 は 燃 焼 室 圧 力 1.2, 1.8MPaA で の ADN 系 ILP の 温 度 履 歴 を 示 す 。図 3 の 平 均 火 炎 温 度
と NASA-CEA の 計 算 に よ る 断 熱 火 炎 温 度 は 比 較 的 近 い 値 を 示 し た 。
a
b
図 3: ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド 系 イ オ ン 液 体 の ス ト ラ ン ド 燃 焼 時 の 温 度 履 歴
配 合 ADN/MMAN/Urea=30/50/20 wt.%, 断 熱 火 炎 温 度 1743K
(a)燃 焼 室 圧 力 1.2MPaA, 平 均
火 炎 温 度 1707K, (b) 燃 焼 室 圧 力 1.8MPaA, 平 均 火 炎 温 度 1792K
4. 考 察
ADN 系 ILP が 推 進 剤 と し て 利 用 可 能 で あ る か を 評 価 す る た め 、 ス ト ラ ン ド 燃 焼 試 験 の 結
果から推進剤としてのメリットおよびデメリットを検討する。最初に推進剤としてのメリ
ットとして次が挙げられる。第一に推進剤の配合を変えることによって推進性能を調節可
能である。第二に図 3 により燃焼温度が断熱火炎温度付近に達しているため、噴霧におい
ても触媒なしでヒータ着火する可能性がある。第三に表 2 のように大気圧の窒素雰囲気下
では燃焼しないため、安全に貯蔵することが可能である。第四に高密度である。第五に少
な く と も 1MPaA 以 上 に お い て 自 立 燃 焼 可 能 で あ る 。 1 つ 目 の メ リ ッ ト で の 推 進 性 能 の 調 整
の 例 と し て は 、ADN と MMAN の 含 有 比 率 を 変 え る こ と に よ る 高 比 推 力 化 や 燃 料 リ ッ チ な 推 進
剤 の 生 成 、又 Urea 含 有 量 の 増 加 に よ る 低 融 点 化 な ど が 挙 げ ら れ る 。低 融 点 化 は 、深 宇 宙 探
査において推進剤タンクの保温用ヒータの消費電力を低減させることができるという点で
重 要 で あ る 。 ま た 、 2 つ 目 の メ リ ッ ト は ADN 系 ILP の 高 い 燃 焼 性 を 示 し て い る 。 ま た 、 触
媒 の 耐 熱 温 度 は 約 1573K で あ り 、 よ り 高 温 の 燃 焼 ガ ス で は ス ラ ス タ の 長 期 運 用 は 困 難 で あ
る [8,9]。従 っ て 、セ ラ ミ ッ ク ヒ ー タ 等 に よ る 着 火 が よ り 好 ま し い 。3 つ 目 の メ リ ッ ト で の
安 全 な 保 管 方 法 と し て は 、 窒 素 置 換 さ れ た 容 器 内 に ADN 系 ILP を 入 れ て 冷 暗 所 で 保 管 す る
方法などが挙げられる。一方、推進剤としてのデメリットとして次が挙げられる。第一に
低 圧 着 火 限 界 が 高 く 、 0.39-0.96 MPaA の 圧 力 範 囲 に あ る 。 第 二 に 他 の イ オ ン 液 体 と 同 様 に
低 揮 発 性 の 可 能 性 が あ る 。 第 三 に SHP163 に 比 べ て 燃 焼 速 度 が 速 く 逆 火 の 危 険 性 が あ る 。 1
つ目と 2 つ目は、真空中でのスプレー着火を困難にするため、デメリットとして挙げられ
る 。特 に 燃 焼 室 圧 力 0.15MPaA で は ス ト ラ ン ド 燃 焼 試 験 に お い て ADN 系 ILP は 分 解 す る の み
This document is provided by JAXA.
で、着火しない。
ADN 系 ILP の ス ラ ス タ へ の 適 応 に 関 し て は 、 真 空 中 で の ス プ レ ー 着 火 が 問 題 と な る 。 小
型燃焼器の場合、ヒータ加熱により生成された分解ガスが燃焼器内を充満し、低圧着火限
界を上回った時点でスプレー着火すると予想される。一方、大型燃焼器の場合、 噴霧の分
解ガスによる圧力上昇では低圧着火限界を下回る可能性があるため、燃焼器内へヘリウム
等の不活性ガスを流し低圧着火限界まで加圧する方法やヒータ構造の変更や昇温速度の上
昇 に よ り ADN 系 ILP へ の 伝 熱 量 を 高 め る こ と で 効 率 良 く 分 解 ガ ス を 生 成 さ せ る 方 法 な ど が
対策として挙げられる。
スラスタへの適応に関しては問題点が残るが、上述したように推進性能に関して多くの
メ リ ッ ト を 持 ち 、ADN 系 ILP は 低 毒 性 推 進 剤 と し て 有 力 な 候 補 と 言 え る 。注 目 す べ き 点 は 、
燃料リッチであること、高い燃焼性を有すること、大気圧の不活性雰囲気における燃焼性
がないこと、低毒性かつ低揮発性の可能性があることから取り扱い易い物質であることで
ある。
5. 結 論
ADN 系 ILP の 推 進 剤 と し て の 適 応 性 に つ い て 検 討 す る た め 、 適 切 に 配 合 を 選 定 し 、 基 礎
燃 焼 特 性 を 取 得 し た [10]。 配 合 選 定 に よ り 、 10 wt.%刻 み で ADN/MMAN/Urea=30/50/20 wt.%
が 最 も 優 れ た 配 合 で あ る と 判 断 し た 。 こ の 配 合 に お い て ADN 系 ILP は 燃 料 リ ッ チ で あ り 、
密 度 比 推 力 は ヒ ド ラ ジ ン の 1.5 倍 と な る 。ま た 約 243K の 凝 固 点 を 持 つ 。こ の 配 合 に お い て
ストランド燃焼試験を行い、基礎燃焼特性を取得した。その結果 、窒素雰囲気中での自立
燃 焼 性 や 低 圧 燃 焼 限 界 が 0.39-0.96MPaA の 範 囲 に 存 在 す る こ と 、 高 い 燃 焼 性 を 有 す る こ と
な ど が 示 さ れ た 。 ADN 系 ILP は 優 れ た 性 能 を 持 ち 、 取 扱 い 易 い 物 質 で あ る 。 し か し 、 ス ラ
スタへの適応を検討した際に、低揮発性の可能性や高い低圧着火限界を有することから真
空中でのスプレー着火が困難と予想される。従って、着火時に限り外部から不活性ガスを
供給し燃焼室内圧力を低圧着火限界まで加圧する又はヒータ構造の変更や昇温速度の上昇
により高効率で分解ガスを生成させて燃焼室圧力を上昇させるなどの対策が求められる。
参考文献
[1] V. Bombelli, D. Simon, T. Marée, J. L. Moerel, Economic Benefits of the use of Non-Toxic
Mono-propellants for Spacecraft Applications, in: 39th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint
Propulsion Conference and Exhibit, Huntsville, Alabama , AIAA-2003-4783
[2] A. Larsson and N. Wingborg, Green Propellants Based on Ammonium Dinitramide (ADN),
Advances in Spacecraft Technologies, J . Hall (Ed.), ISBN: 978 -953-307-551-8, InTech.
Rijeka, 2011.
[3] J. S. Wilkes, A short history of ionic liquids —from molten salts to neoteric solvents, Green
This document is provided by JAXA.
Chem., 4 (2002) 73-80.
[4] 高 橋 拓 也 , 秦 啓 晃 , 岩 井 啓 一 郎 , 野 副 克 彦 , 井 出 雄 一 郎 , 羽 生 宏 人 , 徳 留 真
一 郎 , ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド 系 液 体 推 進 剤 の 物 性 , 平 成 26 年 度 火 薬 学 会 春 季 研
究 発 表 会 , 講 演 番 号 22 (2014)
[5] T. Katsumi, H. Kodama, T. Matsuo, H. Ogawa, N. Tsuboi, K. Hori, Combustion
Characteristics of a Hydroxylammonium Nitrate Based Liquid Propellant. Combustion
Mechanism and Application to Thrusters , Combustion, Explosion, and Shock Waves, Vol. 45,
No. 4 (2009)
442–453.
[6] G. K. Adams, G. W. Stocks, The Combustion of Hydrazine, Fourth Symposium (International)
on Combustion, 4 (1953) 239-248.
[7] 後 藤 健 , 徳 留 真 一 郎 , 奥 野 福 実 夫 , 八 木 下 剛 , 羽 生 宏 人 , 上 段 ロ ケ ッ ト エ ン ジ
ン 用 SiC/SiC複 合 材 料 燃 焼 器 の 開 発 , 日 本 機 械 学 会 2011年 度 年 次 大 会 SO42043 (2011)
[8] N. Tanaka, T. Matsuo, K. Furukawa, M. Nishida, S. Suemori, A. Yasutake, The “Greening” of
Spacecraft Reaction Control Systems , Mitsubishi Heavy Industries Technical Review, Vol. 48,
No. 4 (2011) 44-50.
[9] R. Amrousse, K. Hori, W. Fetimi, K. Farhat, Applied Catalysis B: Environmental, 127 (2012)
121– 128.
[10] Y. Ide, T. Takahashi, K. Iwai, K. Nozoe, H. Habu, S. Tokudome, Potential of ADN-based
Ionic Liquid Propellant for Spacecraft Propulsion, Procedia Engineering, Vol. 99, (2015)
332-337.
This document is provided by JAXA.
Fly UP