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蛋白質核酸酵素:ゲノムインプリンティングと進化

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蛋白質核酸酵素:ゲノムインプリンティングと進化
特集 エ ピジェネテ ィクスの制御機 構
ゲノムイ ンプ リンティングと進化
Evolution
of genomic
imprinting
and mammals
金 児-石 野 知 子 ・石 野 史 敏
哺乳 類は雌 雄の配 偶子 の ゲノム に対 して特 異的 な目印 とな るよ うDNAを メ チル化 し,こ れ を個体 発生 において 雌
雄のゲ ノムに機能 的な差異 を生みだ す機 構 と して いる.DNAの メチル化 はほかの高 等脊椎動 物 にも存 在するが,ゲ
ノムイ ンプ リンテ ィングは哺乳 類が進化 する過程 で獲得 した機構 であ る.本 稿 では,哺 乳 類の胎盤 形成 に重要な 機
能 をはたす レ トロ トランスポ ゾン由来の2つ のインプ リン ト遺伝 子を とお して,DNAメ
ンプリン ト領域の 起源 と レ トロ トランスポゾ ン抑制 の関係 について紹 介す る.
・ゲノムイ ンプ リン テ ィング
Key words
・DNAメ チル 化
・レ トロ トラ ンスポゾ ン・ 胎 盤
にみ られ,カ モ ノハ シで 有名 な卵 生 の単孔 類 の グルー プで は
は じめ に
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チル化 によ り制 御され たイ
み つ か って い ない.す なわ ち,ゲ ノム イ ンプ リ ンテ ィ ング は
ゲ ノ ムイ ンプ リ ンテ ィ ング[→ 今月 のKey Words(p.800)]
哺 乳 類 の なか で進 化 したエ ピ ジェネ テ ィ ック制 御 機構 であ る
に関す る大 きな生 物 学 的 な疑 問 と して,"な ぜ 哺乳 類 だ けに
とい え る.同
ゲ ノ ム イ ンプ リ ンテ ィングが あ る のか?""な
と して使 わ れ るが,や
ぜ個体発生や
じよ うに,"胎 生"は 哺 乳 類 を特 徴 づ け る言 葉
は り哺 乳 類 の 進 化 の なか で 生 じた生
成 長 に必 須 の複 数 の遺 伝 子 が2倍 体 で あ る利 点 を捨 て,片
殖 機 構 であ る.こ の ため,ゲ ノムイ ンプ リンテ ィ ングにつ い
親 性発 現 を示 す の か?"と
て の仮 説 の 多 くは,胎 生 との 関係 で 議 論 され て きた.
い う点 が あ げ られ る.こ れ らは,
ど ち ら も生 物 進 化 との 関連 が 考 え られ,そ の た め,哺 乳 類
筆 者 らは この10年 来,オ ー ス トラ リ アMelbourne大
学
の進 化 とゲ ノ ムイ ンプ リンテ ィ ングの 関係 につ い て は多 くの
のRenfree教
授 らの グル ー プ と共 同 で,有 袋 類 にお け る ゲ
仮 説 が 提 唱 され て きた.本 稿 で は,最 近,筆
者 らが行 な っ
ノム イ ンプ リ ンテ ィング を解 析 し真 獣 類 にお け るゲ ノム イ ン
た,哺 乳 類 の な か の異 な る グル ー プ で あ る単 孔 類 と有 袋 類
プ リ ンテ ィ ング と比 較 して考 察 を行 な って きた が,ほ か の
とのゲ ノム比 較 解 析 と,胎 生 致 死 に か か わ る イ ンプ リ ン ト
研 究 グ ル ー プの 結 果 も含 め,お
遺 伝 子 の解 析 とい う,2つ の異 なる方 向 か らの研 究 の交 点 と
って きた.有 袋 類 で は,真 獣 類 と同様 に ゲ ノム イ ンプ リ ン
も しろ い こ とが 明 らか に な
して み えて きた新 しいゲ ノム イ ンプ リンテ ィ ング像 につ い て
テ ィ ング の 制 御 を 受 け て い る遺 伝 子 の例 がIGF2遺
紹 介 したい.
INS遺 伝 子,IGP2R遺
伝 子,PEG1/MEST遺
伝 子,
伝 子1-4)など
い くつ か みつ か ったが,真 獣 類 にお いて ゲ ノム イ ンプ リ ンテ
I
有袋類 と真獣類の
ゲノムインプリンティング
ィ ン グ制 御 の要 と もい え るDMR(differentially
ed region,異
なる メチ ル化 を示 す 領域)は,有
methylat袋類 のイン
プ リ ン ト遺 伝 子 に は存 在 しない.こ の こ とは,ゲ ノ ム イ ン
"哺 乳 類 に特 異 的 なゲ ノム イ ンプ リ ンテ ィ ング"と い う表
プ リ ンテ ィ ング は この2つ の グル ー プ に共 通 して み られ る現
現 が よ く使 わ れ るが,正 確 に い う と,こ の現 象 は 哺乳 類 で
象 で は あ るが,そ
れ ぞれ の グル ー プで 独 立 に異 な る分 子 機
も胎 生 の生殖 様 式 を とる2つ の グ ルー プ,カ ンガルー や コア
構 を進 化 させ た可 能性 を示 唆 して い る(Column).さ
ラな どの有 袋類 と,わ れ われ ヒ トや マ ウス を含 む真獣 類 のみ
ゲ ノム イ ンプ リンテ ィ ング と似 て い るエ ピジ ェネテ ィ ック制
らに,
御 機 構 にX染 色 体 不 活 性 化 が あ るが,こ の場 合 も,有 袋 類
に は真 獣 類 のX染 色 体 不 活性 化 の要 で あ るXist遺 伝 子 が 存
Tomoko
Kaneko-Ishino1,
Fumitoshi
1東 海 大 学 健 康 科 学 部 看 護 学 科
,2東
Ishino2
京 医科 歯科 大 学難 治 疾患研
究 所 ゲ ノ ム応 用 医 学 研 究 部 門 エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ク ス分 野
E-mail:
在 しな い.ま た,有 袋 類 と真 獣 類 は胎 生 の生 殖 機 構 を採 用
して い るが,実
は,発 生 学 的 に は 由来 が 異 な る胎 盤 を もっ
て い る(有 袋類 は卵 黄 嚢 胎 盤 で,真 獣 類 は尿 漿 膜胎 盤).す
[email protected]
な わち,こ の2つ の グルー プ の関係 は思 った よ り複雑 で,生
836
蛋白質 核酸 酵素
Vol.53
No.7
(2008)
真 獣類 にみ られ るゲノムインプ リンテ ィングの特徴
Column
現 在 まで,ヒ
トや マ ウ スに お い て約80の
遺 伝 子 群(Peg)と,母
イ ンプ リン ト遺伝 子 が 同定 され てい る6).こ れ らは父親 由 来 の ゲ ノ ムか らの み発 現 す る
親 由 来 のゲ ノム か らの み発 現 す る遺 伝 子 群(Meg)と
に 分 け られ る25).多 くの場 合,複 数 の イ ン プ リ ン ト遺 伝
子 が染 色 体 上 で イ ンプ リン ト領 域 を形 成 して お り,こ の よ う な領 域 は10ヵ 所 をこ え る(http://www.mgu.har.mrc.ac.uk/research/
imprinting/).イ
ンプ リン ト領 域 はPegとMegの
ferentially methylated
region,異
ほか,領 域 内 の す べ ての イ ン プ リン ト遺 伝 子 の発 現 を同 時 に制 御 す るDMR(dif-
な る メチ ル化 を示 す領 域)を 含 む25-27).DMRと
は,生 殖 細 胞 系 列 で雌 雄 の ゲ ノム の ど ち らか一 方
が メ チル 化 され た領 域 の こ とで,父 親 側(精 子)が メチ ル化 された もの を父 親 性 イ ンプ リン ト領 域,母 親 側(卵 子)が メチ ル化 され た
もの を母 親 性 イ ン プ リ ン ト領 域 と よぶ.こ の ため イ ン プ リン ト遺 伝 子 は,父 親 性 イ ン プ リ ン ト領 域 に含 まれ るPegとMeg,母
イ ン プ リ ン ト領 域 に含 まれ るPegとMeg,と
とMegの
い う4つ に分 類 され る26).イ ンプ リン ト領 域 に お い てDMRが
発 現 は逆 転 す る.こ れ は,ゲ ノ ム イ ン プ リン テ ィ ン グのPegとMegの
性 イ ンプ リン ト領 域 に含 まれ るPegは,父
親 側 のDMRが
親性
メチル化 され る と,Peg
相 互 の発 現 制 御 とよ ばれ る28-30).た と え ば,父 親
メ チル 化 され る と発 現 が誘 導 され,一 方 のMegは
発 現 が抑 制 され る26).
母 親性 イ ン プ リン ト領 域 で はこ れ とは逆 の こ とが起 こる.す な わち,ゲ ノム イ ン プ リ ンテ ィ ング は単 な る遺 伝 子 発 現抑 制 機 構 で は な
く,遺 伝 子 の発 現 誘 導 と発 現 抑 制 を同 時 に 行 な う機 構 で ある26).
DNAの
メチ ル化 は,一 般 に は遺伝 子 の発 現 を抑 制 す るの に使 われ るが,ゲ ノムイ ンプ リンテ ィン グの機 構 にお いて は遺 伝 子 の発 現 誘
導 に も機 能 す る.ゲ ノム イ ンプ リンテ ィ ングの 記憶 はDNAメ
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わ る こ とは ない.生 殖 細 胞 系列 では,い ったん すべ てのDNAメ
チル 化 と して配 偶 子 ゲ ノム にイ ン プ リン トされ,体 細胞 系 列 では一 生 変
チル化 を消 去 したあ と,精 子 で は父 親 型 に,卵 子 では母親 型 に,DNA
メチル 化 をイ ンプ リン トす る.消 去 の 過程 は,胎 仔 期 胚 の将来 の生 殖 巣 に始 原 生 殖細 胞(primordial germ cell)が移 住 を完 了 した直 後
に起 こ り31),雄 では精 原 細 胞 が で きる出 生 前 に メチル 化 が イ ン プ リン トされ32)(父 親 性 イ ンプ リン ト),雌 で は卵 子 の成 熟過 程 で メチ
ル化 が イ ンプ リン トされ る33)(母 親 性 イ ン プ リン ト).ち なみ に,DNAメ
とMegは
チル化 の 記憶 が消 去 され た場 合,イ
ど ち らかが 活性 型 で,ど ち らか が不 活性 型 にな っ てい る.上 述 のDMRの
転 させ る.す な わち,イ ン プ リン ト領 域 内 で はPegとMegは
ンプ リン ト領域 で はPeg
メチ ル化 は,こ のPegとMegの
発 現 パ タ ー ンを逆
同 時 に発 現 で きない構 造 に な ってお り,つ ね に ど ち らか一 方 の み が発 現
す る よ うに な ってい る.こ れ は,ゲ ノムイ ン プ リンテ ィン グが な ければ発 現 で き ない遺伝 子 が半数 存 在 してい る こと を意 味 してい る24).
殖 様 式 と と もに ゲ ノ ム の機 能 に も明 らか な違 い が み られ る
トラ ンス ポゾ ンの挿入 は有袋 類 と真 獣類 の共 通祖 先 が単 孔 類
ので あ る.
と分 かれ たあ とに起 こ り,真 獣類 と有袋 類 が分 岐 す る まえ に
レ トロ トラ ンスポ ゾ ンか らPEG10遺
II
レ トロ トランスポゾン由来のPEG10
遺伝子 とインプリン ト領域の起源
伝 子 とい う新 しい遺 伝 子
に変 わ った こ とを意味 してい る.
PEG10遺
伝 子 は,有 袋 類 に おい て も父 親 性 発 現 をす る イ
ンプ リ ン ト遺 伝 子 で あ る ため,あ
有 袋類 と真 獣類 はゲ ノムイ ンプ リ ンテ ィングの機 構 を独 自
に発 展 させ た と考 え られてい たが,PEG10遺
伝 子 の解 析 がそ
の状 況 を変 えた.く わ し くは後述 す るが,PEG10遺
伝子 はレ
トロ トラ ンス ポ ゾ ンに 由来 す る哺乳 類 に特 異 的 な遺 伝 子 で,
らた に真 獣 類 と共 通 の イ
ンプ リン ト遺伝 子 がみ つか っ た こ とになる.ヒ
は,PEG10遺
トやマ ウスで
伝 子 領 域 の とな りに父 親性 発 現 をす るイ ンプ
リ ン ト遺 伝 子 のSGCE遺
伝 子 が,そ の反 対 側 に は母 親 性 発
現 をす るイ ンプ リ ン ト遺 伝 子 のPPP1R9A遺
伝 子,PON2遺
マ ウスに おけ る ノ ックア ウ ト実 験 に よ り,胎 盤 の初 期 形成 に
伝 子,PON3遺
必 須 の機 能 を もつ こ とが証 明 され てい る.筆 者 らは,こ の遺
して存 在 して い る.し か し,有 袋 類 で はPEG10遺
伝 子 が哺 乳類 の進 化 の なか でいつ登 場 したの か を解 析 す る た
が イ ンプ リ ン ト遺伝 子 であ り,ま わ りにあ るほ かの遺 伝 子 は
め,有 袋類 と単孔 類 のゲ ノム解 析 を行 な った.単 孔 類(カ モ
両 親 性 発 現 を示 した5)(図2).こ
ノハ シ)に は鳥類(ニ ワ トリ)と おな じくPEG10遺
の プ ロモ ー ター領 域 にあ るDMRの
伝 子 は存 在
しなか っ たが,有 袋類 に は真 獣類 のゲ ノ ム配 列 と同 じ位 置 に
類 で は,頭
PEG10遺
PEG10遺
伝 子 が存 在 し,そ の ア ミノ酸 配列 も保 存 され てい
た5)(図1).こ
*
の 結 果 は,PEG10遺
伝 子 の も とにな る レ トロ
伝 子,ASB4遺
伝 子 とSGCE遺
またが ってDMRが
伝 子 だけ
の理 由 は,PEG10遺
伝子
た めだ と思 われ る.真 獣
を つ きあ わ せ た(head
to head)位
置 にあ る
伝 子 の両 方 の プ ロ モー ター領 域 に
位 置 してい る.し か し有 袋類 では,DMR
5-ア ザ シチ ジ ン は核 酸 塩 基 の ひ とつ で あ る シ トシ ンの5位 の炭 素 原 子 が 窒 素 原 子 に 置換 した塩 基 類 似 体 で,リ
チ ル化 を受 け ない た め,DNAの
伝 子 な どが ク ラス ター を な
ン酸 化 され て核 酸 に取 り込 まれ る.5位
にメ
脱 メチ ル化 を ひ き起 こす.
蛋白質 核酸 酵素
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図1
レ トロ トラ ン ス ポ ゾ ン 由 来
のPEG10遺
PEG10遺
伝子 の起源
伝 子 領 域 の遺 伝 子 構 成,レ
ト
ロ トラ ン ス ポ ゾ ンの 残 骸 の 位 置 を示 し
た.ヒ
トや マ ウ ス な ど の 真 獣 類 で は,
PEG10遺
伝 子 はSGCE遺
PPP1R9A遺
伝子 と
伝子にはさまれて存在す
る,ワ ラ ビー やオ ポ ッサ ムな どの 有袋 類
で は,同
じ位 置 にア ミ ノ酸 配 列 が保 存
さ れたPEG10遺
伝 子 が 存在 する が,同
じ哺 乳 類 で も卵 生 の 単 孔 類(カ モ ノハ
シ)に は存 在 せず,鳥 類 や 魚 類 と同 じ遺
伝 子 構 成 を と っ て い る,SINE(short
interspersed
nuclear
element,短
い
散 在 性 反 復 配 列)やLINE(long interspersed
nuclear
element,長
い散 在
性 反 復 配 列)な ど の非 末 端 反 復 配 列 型
レ トロ トラ ン ス ポゾ ン(黄 緑 色)は,哺
乳 類 に な って か ら(単 孔 類 以 降)急 速 に
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蓄 積 して お り,末
端 反 復 配 列 型 レ トロ
トラ ン スポ ゾ ン(水 色)は 有 袋 類 か ら顕
著 に 増 えて い る ことが わ かる.
図2
PEG10遺
伝子 の挿入 とイ
ン プ リ ン ト領 域 の 出 現
単孔類におけるこのインプリン ト領域の
遺伝子構成 は魚類 や鳥類 と同 じである
が,有 袋 類 と 真 獣類 で はあ らた に
PEG10遺 伝子 とPON1遺 伝子(これは,
とな りのPON2遺
伝子かPON3遺
伝子
の遺伝子重複 によってできたと思われ
る)がこの領域にくわわっている.有 袋
類ではPEG10遺 伝子プロモーター領域
に存在するDMRの 作用によ り,PEG10
遺伝子は父親性発現をする(単独のイン
プリン ト領域).真 獣類も同 じ遺伝子構
成 をもつが,DMRがSGCE遺
伝子のプ
ロモーター領域に広がったため(図3),
周辺の遺 伝子にもインプリン トの制御
がかかり大きなインプ リント領域が出現
した.
はPEG10遺
伝 子 プ ロ モ ー ター 領 域 だ け に存 在 す る(図2).
を 哺乳 類 の各 グル ー プ どう しで比 較 す る と(図3),有
袋類
ワ ラ ビ ー の 培 養 細 胞 に5-ア ザ シチ ジ ン処 理*を 行 な う と,
にお け る この領 域 もあ らた に挿 入 されたDNAに
DMRの
とが示 唆 され た.哺 乳 類 の体 細 胞 で は レ トロ トラ ンス ポ ゾ
メ チ ル 化 が 消 え 抑 制 さ れ て い る母 親 ア リ ル か ら
PEG10遺
ンはDNAメ
伝 子 の発 現 が み られ る こ とか ら,DMRがPEG10
チ ル化 に よって不 活 性 化 され てい る こ とか ら考
遺伝 子 の 片 親 性 発 現 を制 御 してい る こ とが 確 認 で きた.有
え て,PEG10遺
袋 類 で は じめ て ゲ ノ ムイ ンプ リ ンテ ィ ング にか か わ るDMR
トラ ンス ポ ゾ ン の末 端 反 復 配 列(long
LTR)に
が 同 定 され たの で あ る5).
PEG10遺
838
伝 子 プ ロモー ター にあ た るDMRのCpG含
蛋白質 核酸 酵素
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No.7
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有量
由来 す る こ
伝 子 プ ロモ ー ター 領域 は もと も との レ トロ
相 当 し,DNAメ
terminal
repeat;
チ ル化 に よ り不 活性 化 され た痕 跡
で は ない か と思 わ れ る.有 袋 類 で はPEG10遺
伝 子 だ けが イ
特集 エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ク ス の 制 御 機 構
図3
PEG10遺
伝 子 プロ モー ター
領 域 の起 源
SGCE遺
CpGア
伝 子 の プ ロ モ ー ター 領 域 に は
イ ラ ン ドが 存 在 す る が,PEG10
遺 伝 子 の挿 入 によ って明 らかにCpGア
イ
ラ ン ドの領 域 が広 が ってい る.PEG10遺
伝子 プロモーター領域 の存在する この
CpGア
イ ラ ン ドの みが 、有 袋類 で は特 異
的 にDNAメ
チル 化 を受 けてい る(黒 丸 で
示 した).お
そ ら く,こ の 部 分 は レ トロ
トラ ン ス ポ ゾ ン の 末 端 反 復 配 列(long
terminal
repeat;LTR)に
由来 す る の で
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は な いか と考 え られ る.
ンプ リ ン ト遺 伝 子 で あ る こ と も,そ の た め で は ない か と考
い イ ンプ リ ン ト遺 伝 子 が か な り含 まれてお り,お そ ら く,領
え られ る.真 獣 類 の ほ ぼす べ て の イ ンプ リン ト領 域 で採 用
域 中 の1つ か2つ の主 要 遺 伝 子 に お ける効 果 をみて い る可 能
されて い るDMRの
性 が 高 い.筆 者 らが注 目 して解 析 して きた の は,第6染
制御 に よ るゲ ノム イ ンプ リンテ ィ ング機
色
構 は,有 袋 類 と共 通 の起 源 を もち,そ れが レ トロ トラ ンス
体 近 位 部 と第12染 色 体 遠 位 部 で,第6染
ポ ゾ ンの不 活 性 化 に由 来 して形 成 され た もの で は ない か と
性 重 複 で初 期胚 致死,第12染
考 え られ る5).お そ ら く,真 獣 類 は こ の方 式 をす べ て の イ
仔 期 後 期 致 死 も し くは成 長 不 良 に よる新 生 仔 致 死,父 親 性
ンプ リ ン ト領 域 とX染 色 体 不 活 性 化 に応 用 し,有 袋 類 は限
重 複 で 胎 仔 期 後 期 致 死 と成 長 異 常 が み ら れ る(http://
られた イ ンプ リ ン ト領域 に のみ これ を利 用 したの で はな いだ
www.mgu.har.mrc.ac.uk/research/imprinting/).
ろ うか.
色 体 近 位 部 は母 親
色 体 遠位 部 は母 親性 重 複 で胎
筆 者 らは,こ の2つ の領 域 に存 在 す るマ ウスの レ トロ トラ
ンス ポ ゾ ン由 来 の イ ンプ リ ン ト遺 伝 子,Peg10遺
III レトロ トランスポゾン由来のインプリン
ト遺伝子 と哺乳類にお ける胎盤形成
2)とPeg11/Rtl1遺
伝 子(図4)を
それ ぞ れ の領 域 の表 現 型
の原 因 遺伝 子 候 補 と し,ノ ック ア ウ トマ ウス に よる解 析 を
行 な っ た6,7).Peg10遺
真 獣 類 で は イ ンプ リ ン ト遺伝 子 は ク ラス ター を な して存
伝 子(図
伝 子 ノ ックア ウ トマ ウス は 欠失 変 異
が 父 親 か ら伝 わ る と胎 盤 形 成 不 良 に よ り初 期 胚 致死 性 を示
在 して い るた め,こ の 領 域 を片 親 性 重 複 させ た場 合 にみ ら
した(図5a).こ
れ は,第6染
色 体 近 位 部 の表 現 型 その もの
れ る表現 型 が,単 独 の 遺 伝 子 の 欠失(ま た は,発 現 過剰)に
で あ り,す くな くと もPeg10遺
伝 子 が そ の 主 要 な原 因遺 伝
よる もの な の か,複 数 の 遺 伝 子 の 欠 失 と発 現 過剰 とが組 み
子 で あ る こ とが 証 明 で きた.お
も しろ い こ と に,正 常 卵 と
合 わ さっ た こ とに よ る も の なの か を調 べ るの は簡 単 で は な
のキ メ ラマ ウス を作 製 して正 常 な胎 盤 を形成 で きる よ うにす
い.し か し,こ れ ま で解 析 され た結 果 をみ る と,イ ンプ リ
る と,Peg10遺
ン ト領 域 に は ノ ック ア ウ トして もな ん の表 現 型 も現 わ れ な
ら も生 ま れ,正 常 に成 熟 して仔 を産 ん だ.こ れ は,Peg10
伝 子 ノ ック ア ウ トマ ウス の 仔 は小 さい な が
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図4
マ ウ ス の 第12染
色体 遠位部
の イ ン プ リ ン ト領 域 とPeg11/
Rtl1
mRNAの
発現量 調節
(a) 野 生 型 マ ウ ス.父 親 性 発 現 のPeg11/
Rtl1 mRNAは,逆
向 き に読 ま れる 母 親 性
発 現 のantiPeg11
のmiRNAに
mRNAに
含 まれ る 複 数
よ るRNAi機
構 に よ って 分 解
さ れる.
(b) Peg11/Rtl1遺 伝子 ノックア ウ トマウス.
欠 失 が 父親 か ら伝 わ る場 合(上)はPeg11/
Rtl1 mRNAの
発 現 はな くな り,欠 失 が 母
親 か ら伝 わる 場 合(下)は,antiPeg11遺
伝 子 の欠 失 に よ りPeg11/Rtl1
解 が 起 こ らな い た め,野
倍 量 のPeg11/Rtl1
(c) 第12染
(上)は,野
mRNAが
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No.7
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のPeg11/
の母親由来
色 体 を もつ 場 合(下)は,Peg11/
の 発 現 がな くな る.
Vol.53
色 体をもつ場 合
発 現 す る.2本
Rtl1 mRNA,Dlk1
蛋白質 核酸 酵素
発 現 す る.
生 型 の4.5∼6.0倍
Rtl1 mRNAが
840
分
色 体 を 重複 して もつ マウ ス.2
本 の 父 親 由 来 の 第12染
の第12染
mRNAの
生 型 の2.5∼3.0
mRNA,Dio3
mRNA
特集 エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ク ス の 制 御 機 構
遺 伝 子 が 胎 盤 形 成 遺伝 子 と して必 須 の機 能 を はた して い る
成 長 不 良 と新 生 仔 致 死 に は,同
こ と を 意 味 し て い る6).
寄 与 して い る こ とが 知 られ て い る12)(図4c).
一 方 のPeg11/Rtll遺
伝 子 ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で は
きに 読 ま れ る 母 親 性 発 現 の 非 コ ー ドRNAで
antiRtll遺
mRNAを
分 解 す る 活 性 を もつ8)(図4a).そ
の ア ンチ セ ン
の た め,こ
る こ と に よ りPeg11/Rtll遺
の欠
伝 子 が な くな
伝 子 は 野 生 型 の2.5∼3.0倍
発 現 過 剰 を 示 す8)(図4b).欠
の
失 が 父 親 か ら伝 わ る ノ ッ ク ア
ウ トマ ウ ス で は 胎 仔 期 後 期 致 死 も し くは 成 長 不 良 に よ る 新
生 仔 致 死(図5b)が,欠
失 が 母 親 か ら伝 わ る ノ ッ ク ア ウ トマ
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ウ ス で は 新 生 仔 致 死 が 確 認 さ れ た7).欠
遺 伝 子 の欠 失 が 父Pegll/Rtll
親 か ら伝 わ る ノ ッ クア ウ ト
盤 構造 に異 常 が み られ た.胎 盤 の もっ とも重 要 な機 能 は母
親 か ら子へ 栄 養 と酸 素 の供 給 を行 な う こ とで あ り,こ れ は
伝 子 の 発 現 は な くな る
親 か ら伝 わ る とantiPeg11/antiPtll遺
伝子 も
マ ウス と母 親 か ら伝 わる ノ ック アウ トマ ウスで は,と もに胎
構 に よ っ てPegll/Rtll
失 が 父 親 か ら伝 わ る とPeg11/Rtll遺
が,母
向
あ るantiPeg11/
伝 子 も 同 時 に 欠 失 させ て い る.こ
ス 非 コ ー ドRNAは,RNAi機
,逆
じ領 域 内 のDlk1遺
失 が 母 親 か ら伝 わ
る ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で 現 わ れ る 表 現 型 の 重 篤 度 が,父
親
胎 盤 の迷 路 部 にあ る胎 仔 毛細 血 管 で 行 なわ れ てい る.こ
こ
に は母 体 血 が充 満 し,胎 仔 毛 細 血 管 が 網 の 目の ように 走 っ
て い る.胎 仔 毛 細 血 管 の 内 皮 細 胞 は3層 の トロ ホ ブ ラス ト
細 胞 で 囲 まれ た胎 盤 障壁(placental
barrier)を 形 成 し,栄
養 と ガ ス 交 換 は こ れ を とお して 行 な わ れ て い る(図6).
蛋 白 質 は内 皮 細 胞 での み発 現 し,Peg11/Rtl1
Peg11/Rtl1
遺 伝 子 の欠 失 が父 親 か ら伝 わ る ノ ック ア ウ トマ ウス は これ
を欠 失 す るた め,内 皮 細 胞 が 外 側 の トロホ ブ ラス ト細 胞 に
貧 食 され 毛 細 血 管 が 目づ ま りを起 こす.こ の こ とに よ る血
性 重 複 の 場 合 の 胎 仔 期 後 期 致 死 よ り軽 い の は,Peg11/Rtll
流 の 阻 害 が胎 仔 成 長 不 良 と胎 仔 期後 期 か らの 致 死性 に 関 係
遺 伝 子 の 発 現 量 が 父 親 性 重 複 の 場 合 に は 野 生 型 の4.5∼6.0
して いる と考 え られ る.一 方,Peg11/Rtl1遺
倍 に な る こ と と 関 係 し て い る と 思 わ れ9,10)(図4C),ヒ
母 親 か ら伝 わる ノ ックア ウ トマ ウス で はPeg11/Rtl1蛋
お い て は,相
同 遺 伝 子 の存 在 す る 第14染
色 体 の 父 親 性2倍
体 に よ る 症 状 の 重 篤 度 が,Pegll/Rtll遺
伝 子 の発 現 量
に 対 応 し て 変 わ る こ と も確 認 さ れ て い る11).こ
Peg11/Rtll遺
親 性2倍
り,前
伝 子 は マ ウ ス 第12染
トに
の こ と か ら,
色 体 の 母 親 性2倍
体,父
体 の 両 者 に現 われ る形 質 の 主 要 な原 因 遺伝 子 で あ
者 の 場 合 は そ の 欠 失,後
者 の場 合 は その 過剰 発 現 が
原 因 で あ る こ とが 明 らか に な っ た7).な
お,母
親 性2倍
体の
伝子の欠失が
白質
が 過剰 発 現 し,逆 に,毛 細 血 管 は拡 張 して外 側 の トロホ ブ
ラス ト細 胞 の 生 育 に異 常 が み られ た(図6).ど
ち らの場 合
に も胎 仔 毛細 血 管 を含 む構 造 体 に異 常 が生 じ,そ の た め 胎
盤 の機 能 障 害 が起 こ った もの と考 え られ る7).
Peg10遺 伝 子 とPeg11/Rtl1遺
伝 子 は どち ら も同 じsushi-
ichiレ トロ トラ ンスポ ゾ ンに 由来 す る遺 伝 子 で ある13,14).以
上 の 結 果 か ら,Peg10遺
伝 子 は胎 盤 形 成 初 期 の トロホ ブ ラ
図5
レ トロ トラ ン ス ポ ゾ ン由
来 の父親性 発現イ ンプリ
ン ト遺 伝 子Peg10お
びPeg11/Rtl1の
よ
胎盤 に
お け る機 能
(a) Peg10遺
の発 生.発
伝 子 ノ ックア ウ トマ ウス
生11.0日
目 の胚.Peg10
遺 伝子 ノ ックア ウ トマ ウス は胎 盤 形 成
不 全の ため,胎 仔 発 生 が9.5日 目の 段
階 で止 ま り致 死 とな る.
(b) Peg11/Rtl1遺
伝子の欠失が父親
か ら伝 わ る ノ ッ クア ウ トマ ウ ス の 発
生.発
生16.5日
目 の胚 、半 数 は こ の
時 期 にす で に死 亡 し(胎 仔 期 後 期 致
死:中 央 と右).半
る が,こ
数 は正 常 に発 生 す
ののち成長不良が顕著 にな
り,出 生 して1日 以 内 に死 亡 す る(新
生 仔致 死:左).
蛋 白質 核酸 酵素
Vol.53
No.7
(2008)
841
図6
Peg11/Rtl1ノ
ッ ク ア ウ トマ ウ ス の 胎 盤
に お け る胎 仔 毛 細 血 管 の 異 常
(a) Peg11/Rtl1遺 伝子 の欠 失 が父親 か ら伝 わ り,Peg11/
Rtl1遺 伝 子 が 発 現 しな い ノ ッ クア ウ トマ ウス.胎
仔毛
細 血 管 内 皮細 胞 が周 辺 の トロホブ ラス ト細 胞 に貪 食 され
血 管 が 閉 鎖 して い る.
(b) 野生 型 マ ウ ス.
(c) Peg11/Rtl1遺 伝子 の 欠失 か母 親か ら伝 わ り,Peg11/
Rtl1遺 伝 子 が2.5∼3.0倍
過 剰 発 現 して い る ノ ック ア ウ
トマ ウ ス.胎 仔 毛 細 血 管 は拡 張 し(右 上),周
辺 の トロ
ホブ ラス ト細 胞 に多 くの空 胞 がみ え,状 態 が悪 い ことが
わか る(右 下 の 白色 矢 印).
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★:胎 仔 赤 血 球,★:母
ス ト細 胞(胚 体 外 外 胚 葉)の 成 長,Peg11/Rtl1遺
伝 子 は胎
が 別 の 染 色 体 の 遺 伝 子 の イ ン ロ トン 中 に逆 転 写 を 介 す る転
仔 期 後 期 の胎 仔 毛 細 血 管 の 内 皮 細 胞(胚 体 外 中胚 葉)の 維
位(レ
持,と
領 域 が 生 じ た 例 が,4例
い う,真 獣 類 の 胎 盤 形 成 や 機 能 に重 要 な2つ の段 階
で異 な る役 割 をは た して い る こ とが 明 らか にな っ た.こ れ
トロ トラ ン ス ポ ジ シ ョ ン)を す る こ と で イ ン プ リ ン ト
こ れ ら の 例 で は,レ
は,哺 乳 類 の胎 生 にお い て レ トロ トラ ンス ポ ゾ ンが 大 き く
チ ル 化 さ れ る と,も
関 与 して いた こ とを示 して い る.
う に,イ
乳類進化 とエ ピジェネティクス機構
伝 子 は 有 袋 類 と真 獣 類 の 共 通
祖 先 の ゲ ノ ム に レ トロ トラ ン ス ポ ゾ ンが 挿 入 し,こ
の2つ の
メ
と の 遺 伝 子 の 発 現 が 回 復 す る.こ
の よ
トロ トラ ン ス ポ ゾ ン の 挿 入,
列 の 挿 入,染
色 体 転 座 な ど,真
獣類 の
ゲ ノ ム 配 列 に 大 き な 変 化 が 起 こ っ た 場 所 と一 致 す る.そ
そ も,ヒ
先 述 し た よ う に,PEG10遺
報 告 さ れ て い る16).
トロ トラ ンス ポ ゾ ン 由 来 のDNAが
ン プ リ ン ト領 域 は,レ
正 体 不 明 のDNA配
IV哺
体 赤血 球.
トや マ ウ ス な ど 真 獣 類 の ゲ ノ ム は,そ
も
の約 半 分 が
挿 入 さ れ た レ トロ トラ ン ス ポ ゾ ン の 残 骸 か ら な っ て お り,こ
れ は ゲ ノ ム の 大 き な 謎 の ひ とつ と され て い る.し
か し 逆 に,
グ ル ー プ が 分 岐 す る ま で の あ い だ に レ トロ トラ ンス ポ ゾ ンが
真 獣 類 の ゲ ノ ム は こ の よ う な余 分 な 配 列 を た め 込 む 能 力 を
遺 伝 子 に 変 わ る こ と で 出 現 し た も の で あ る.PPEG10遺
も っ て い る と は 考 え られ な い だ ろ うか.こ
伝子
の 解 析 で 共 同 研 究 を行 な っ た オ ー ス トラ リ ア 国 立 大 学 の
Graves教
授 ら の グ ル ー プ が,PEG11/RTL1遺
伝 子 を含 ん
る の がDNAメ
DNAメ
れ を可 能 に し て い
チ ル 化 な の で は な い だ ろ うか.
チ ル 化 は,遺
伝 子 発 現 抑 制 と い うエ ピ ジ ェ ネ テ ィ
だ イ ン プ リ ン ト領 域 に つ い て も 有 袋 類 ゲ ノ ム と単 孔 類 ゲ ノ
ッ ク な 効 果 に よ り,ゲ
ノ ム に レ トロ トラ ンス ポ ゾ ン を た め 込
ム と の 比 較 解 析 を行 な っ た 結 果 を 発 表 し て い る15).こ
む 能 力 を あ た え る.一
方,長
み る と,PPEG11/RTL1遺
は,も
伝 子 を 含 ん だ イ ン プ リ ン ト領 域
と も と存 在 し たDLK1とDIO3と
だ に,PEG11/RTL1遺
伝 子,MEG8遺
い う遺 伝 子 の あ い
伝 子 と そ の 周 辺 のMEG3/GTL2遺
伝 子,MEG9遺
す べ て 非 コ ー ドRNAで
伝 子(こ れ ら の 転 写 産 物 は,
あ る)な ど が 一 挙 に 真 獣 類 ゲ ノ ム に
出 現 し た 領 域 で あ る こ と が わ か る(図4a).ま
Willi/Angelman症
れを
た,Prader-
候 群 の 原 因 と な る イ ン プ リ ン ト領 域 は,
ン は 脱 ア ミ ノ化 に よ りチ ミ ン に 変 わ る た め,DNAメ
ネ テ ィ ッ ク な 効 果 も も つ.そ
れ る.レ
型DNAメ
Dnmt3bの
り17),ま
DMRの
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蛋 白質 核酸 酵素
Vol.53
No.7
(2008)
れ らの レ トロ トラ ンス ポ ゾ ンの
なか か ら胎 盤 形 成 にか か わ る遺 伝 子 が生 じた もの と推 測 さ
も と も と 異 な る 染 色 体 が 転 座 を 起 こ した 位 置 に あ た っ て い
色 体 に 存 在 す る遺 伝 子 のcDNA
チ ル化
は た め 込 ん だ レ トロ トラ ンス ポ ゾ ン に 変 異 を 蓄 積 させ る ジ ェ
る15).そ
の ほ か に も,X染
い 目 で み れ ば メ チ ル 化 シ トシ
トロ トラ ンス ポ ゾ ン のDNAメ
チ ル 化 に はde
novo
チ ル ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ で あ るDnmt3aや
ほ か,補
た,配
助 因 子 と し てDnmt3Lが
必 須 で あ
偶 子 のゲ ノム イ ンプ リ ンテ ィ ングに お け る
成 立 に も こ れ らが 必 須 で あ る18-21).Dnmt3L遺
伝
特集エ
子 は 鳥 類 に は な く,現
在 の と こ ろ,哺
乳 類 で は 有 袋 類 と真
獣 類 に の み 存 在 が 確 認 さ れ て い る22).Dnmt3L遺
得 に よ り,有
袋 類 と真 獣 類 はDNAメ
チ ル 化 を使 った レ ト
ロ トラ ンス ポ ゾ ン の 不 活 性 化 機 構 を 手 に 入 れ,こ
生 じ たDMRに
伝 子 の獲
れ によ り
よ っ て イ ン プ リ ン ト領 域 が 成 立 し5,23,24),新
しい 機 能 を も つ 遺 伝 子 が つ く ら れ た の で は な い だ ろ う か.
ピジ ェネテ ィクスの制 御 機 構
11) Kagami, M. et al: Nature Genet., 40, 237-242 (2008)
12) Moon, Y. S. et al.: Mol. Cell Biol.,22, 5585-5592 (2002)
13) Ono, R. et al.: Genomics, 73, 232-237 (2001)
14) Charlier, C. et al.: Genome Res., 11, 850-862 (2001)
15) Hore, T. A., Rapkins, R. W., Graves, J. A.: Trends Genet., 23, 440448 (2007)
16) Wood, A. J. et al.: PLoS Genet., 3, e20 (2007)
17) Bourc'his, D., Bestor, T. H.: Nature, 431, 96-99 (2004)
お わ りに
18) Bourc'his, D. et al.: Science, 294, 2536-2539 (2001)
19) Hata, K., Okano, M., Lei, H., Li, E.: Development, 129, 1983-1993
有 袋 類 と単 孔 類 の ゲ ノ ムの 比 較 解 析 は,真 獣 類 の ゲ ノ ム
イ ンプ リ ンテ ィ ング に 関 して,筆 者 らの 期 待 どお りの大 き
(2002)
20) Okano, M., Bell, D. W., Haber, D. A., Li, E.: Cell, 99, 247-257 (1999)
な知 見 をあ た えて くれた.有 袋 類 には,PPEG10遺
21) Kaneda, M. et al: Nature, 429, 900-903 (2004)
に もDMRが
あ るの だろ うか?あ
Database Center for Life Science Online Service
由来 のDNA配
列 なの か?真
伝子以外
る とす れ ば,ど の よ うな
獣 類 の よ う に,卵 子 で の メ
22) Yokomine, T., Hata, K., Tsudzuki, M., Sasaki, H.: Cytogenet.
Genome Res., 113, 75-80 (2006)
23) Barlow, D. P.: Science, 260, 309-310 (1993)
チ ル化 と精 子 で の メチ ル化 とい う2つ の イ ンプ リ ン ト機 構 が
24) Yoder, J. A., Walsh, C. P., Bestor, T. H.: Trends Genet, 13, 335-340
存 在 す るの か?イ
(1997)
25) Kaneko-Ishino, T., Kohda, T., Ishino, F.: J. Biochem., 133, 699-711
ンプ リ ン ト遺 伝 子 は ク ラス ター を な し
て 存 在 し,そ の領 域 で の 制 御 を受 け る の か?今
後 も,そ
の よ うな疑 問 に対 す る解 答 を求 め て研 究 を進 め て い きた い
(2003)
26) Kaneko-Ishino, T., Kohda, T., Ono, R., Ishino, F.: Cytogenet.
と考 え て い る.
Genome Res., 113, 24-30 (2006)
27) Lewis, A., Reik, W.: Cytogenet. Genome Res., 113, 81-89 (2006)
本稿 に まとめた筆 者 らの研 究 にお い て,精 力 的 に研 究 を進 め て くれ た
東京 医科 歯科 大 学 の幸 田 尚講 師,小 野竜 一助教,鈴 木俊 介特任 助 教,
関 田洋 一特 任助 教 に感 謝 いた します.
28) Thorvaldsen, J. L.,Duran, K. L., Bartolomei, M. S.: Genes Dev., 12,
3693-3702 (1998)
29) Hark, A. T. et al.: Nature, 405, 486-489 (2000)
30) Bell, A. C., Felsenfeld, G.: Nature, 405, 482-485 (2000)
31) Lee, J. et al.: Development, 129, 1807-1817(2002)
文
献
1) O'Neill, M. J., Ingram, R. S., Vrana, P. B., Tighman, S. M.: Dev.
32) Ueda, T. et al: Genes Cells, 5, 649-659 (2000)
33) Obata, Y., Kono, T.: J. Biol. Chem., 277, 5285-5289 (2002)
Genes Evol., 210, 18-20 (2000)
2) Killian, J. K. et al.:Mol. Cell, 5, 707-716 (2000)
3) Suzuki, S. et al.: Mech. Dev., 122, 213-222 (2005)
4) Ager, E. et al.: Dev. Biol.,309, 317-328 (2007)
金 児-石 野 知 子
5) Suzuki, S. et al.: PLoS Genet., 3, e55 (2007)
略 歴:1988年
6) Ono, R. et al.: Nature Genet., 38,101-106 (2006)
興会 特 別研 究 員,British Council Fellowshipで 英 国AFRC動
物
生理 ・遺 伝学 研 究 所 に留 学,東 京 工 業大 学 遺伝 子 実験 施 設 を経
7) Sekita, Y. et al.: Nature Genet, in press
8) Davis, E. et al.: Curr. Biol., 15, 743-749 (2005)
9) Georgiades, P., Watkins, M., Surani, M. A., Ferguson-Smith, A. C.:
Development, 127, 4719-4728 (2000)
て,1995年
東京 大学 大 学院 理学 系研 究 科 修 了,日 本 学 術振
東海 大 学健 康科 学 部 助 教授,1999年
研究 テ ーマ:レ
よ り同 教授.
トロ トランスポ ゾン とゲ ノムイ ンプ リンテ ィング.
関心 事:進 化 の研 究 にゲ ノム考 古学 的 ア プローチが有 効 か どうか
興味 が ある.
10) Lin, S. P. et al.: Nature Genet., 35, 97-102 (2003)
蛋白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 7
(2008)
843
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