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小学校の環境教育が児童の環境意識に与える影響 -

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小学校の環境教育が児童の環境意識に与える影響 -
筑波大学大学院博士課程
システム情報工学研究科修士論文
小学校の環境教育が児童の環境意識に与える影響
--日中両国を例として --
范琼 (ハンケイ)
(社会システム工学 専攻)
指導教員
小場瀬
2008
年
1
令二
3 月
要旨
現在の環境問題は先延ばしにできない状況になっている。将来の環境の変化は、現
在の環境教育のあり方に左右されるとも言えるだろう。環境教育ついて再確認し、よ
り良い方向に修正する事が必要な時期に来ていると考えるのである。
日本では、平成 9 年度から文部省と通産省の共同により「環境を考慮した学校施設
(エコスクール)の整備推進に関するパイロットモデル事業」が実施され、事業タイ
プ別に認定を行ってきた。中国においても、「クリーンスクール」プログラムが 10 年
ほど行われ、日常生活から確実に児童の環境教育を行い始めた。
そこで、本研究は日本のエコスクールにおける環境教育の実態を調査した上で、日
本におけるエコスクールと非エコスクールに対してアンケート調査を行い、児童の環
境意識を把握し、エコスクールの教育効果について考察する。さらに、中国のグリー
ンスクールを通う児童を対象としてアンケートを行い、中国小学生の環境意識の実態
を把握する。更に、異なる環境教育制度が児童の環境意識に対し、どの項目がどのよ
うな要因によって影響されるのかを解明する。更に、研究成果を用いて環境教育の指
針を求めることを目的とする。
調査を通じて、日本におけるエコスクールは特に「教育に資す」という目的は十分
に実現されておらず、施設が教育と乖離している傾向が見られる。また、児童の知識
や施設に対する記憶は、環境問題に対する関心と環境配慮行動に影響を与えず、環境
問題に対する関心と危機感が環境配慮行動に更に効果的に影響していることが本研究
で明らかになった。更に、児童の環境配慮行動とは学校における環境教育の影響にの
み依存しているわけではなく、地域の経済状況や社会的背景、家庭のライフスタイル
などさまざまな要因が関与していると推測できる。
したがって、今後における環境教育の課題は、ハードである環境施設にソフト的環
境教育を融合させ、「関心引出型環境教育」に「危機警告型環境教育」を融合させ、 学
校環境教育に家庭、社会と連携する環境教育を融合させることが今後の課題である。
2
目次
第1章 はじめに
1
1- 1 本研究の 背景・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 1
1- 2 本研究の 目的・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 2
1- 3 既存研究 の整理 ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 3
1-3-1 日本人の 環境意 識・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ 3
1-3-2 中国人の 環境意 識・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ 4
1-3-3 環境意識 の日中 比較・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ 4
1- 4 本研究の 構成・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 5
第2章 環境教育 の必 要性 お よび 環境 教育 の経 緯
7
2- 1 環境問題 とは・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 7
2- 2 環境教育 の必要 性・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 8
2- 3 環境教育 の経緯 ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ 9
2-3-1 諸外国の 取り組 み・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ 9
2- 3- 2 日本にお ける環 境教育 の経 緯・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 10
2- 3- 3 中国にお ける環 境教育 の経 緯・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・ 12
第3章 日中両国 の小 学校 に おけ る環 境教 育実 態
3- 1 日中小学 校にお ける環 境教 育全般 ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3-1-1 日本・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
3-1-2 中国・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
3- 2 環境教育 認定校 制度・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3-2-1 日本小学 校にお ける環 境教 育認定 校制度 ―― エコスク ール・ ・・・ ・
3- 2- 1- 1 エコスク ール経 緯・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3- 2- 1- 2 エコスク ールの 意義・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3- 2- 1- 3 エコスク ールの 認定方 法・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3- 2- 1- 4 全国にお けるエ コスク ール 認定状 況・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3- 2- 1- 5 エコスク ール事 例紹介 ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3-2-2 その他の 認定制 度・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
3-2-2-1 学校版環 境 ISO ・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・
3- 2- 2- 2 キッズ ISO ・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・
3-2-3 中国小学 校にお ける環 境教 育認定 制度 ―― グリーン スクー ル・・ ・・
3- 2- 3- 1 グリーン スクー ル経緯 ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3- 2- 3― 2 スクール の内容 と意義 ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
3- 2- 3- 3 認定方法 ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
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第4章 日中両国 児童 の環 境 意識 比較
4- 1 日本児童 の環境 意識・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
4-1-1 体験の分 析・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
4-1-2 知識 の分析 ・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・
4-1-3 関心 の分析 ・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・
4-1-4 危機感 の 分析 ・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・
4-1-5 行動の分 析・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
4-1-6 まとめ・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
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4- 2
中国児童 の環境 意識・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
4-2-1 環境意識 全般・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・
4-2-2 中国児童 の環境 配慮行 動意 欲及び 行動率 の特 徴・・ ・・・ ・・ ・・・
4- 3 日中児童 の環境 意識比 較分 析・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
4-3-1 体験によ る分類 ・分析 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・ ・
4-3-2 知識によ る分類 ・分析 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・ ・
4-3-3 関心によ る分類 ・分析 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・ ・
4-3-4 危機感に よる分 類・分 析・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・・ ・
4-3-5 行動によ る分類 ・分析 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・ ・
4-3- 6 まとめ・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ・
4- 4 児童の環 境配慮 行動に 影響 を与え る各要 因・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
4-4-1 エコスク ールと グリー ンス クール ・・・・・・・・・・・・・・・・・
4-4-2 非エコス クール と郊外 非エ コスク ール・・・・・・・・・・・・・・・
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第5章
まとめと 今後 の課 題
5- 1 ハード思 考のエ コスク ール の再検 討・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
5- 2 「関心引 出型環 境教育 」と 「危機 警告型 環境 教育」 に関す る思 考・・ ・・・・
5- 3 学校、家 庭、社 会が連 携し た環境 教育体 系作 り・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・
5- 4 本研究の 特殊性 と有限 性・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・
54
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参考文献 ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・・ 58
付録
1)アンケ ート(八 幡山小 学校 、緑ヶ丘 中学校 版)・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
2)アンケー ト(古河 市総和 中学校 版、グリ ーンス クー ル版(日本 語版 ) ・・・・・・ 64
謝辞
図目次
1
2
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5
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エコスク ールの 視点・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
各年度に おける エコス クー ル認定 校数・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
エコスク ールの 施設数 ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
エコスク ールの 施設類 型・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
パイロッ ト・モ デル事 業の フレー ム・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
各都道府 県にお けるエ コス クール 認定校 数・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
東葛西小 太陽光発 電装置 のパネ ル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・
増林小 太陽光発 電装置 のモニ ター ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東葛西小 屋上まで の階段 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・
八幡山小 太陽熱利 用装置 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・
八幡山小 中水利用 装置 ・・・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・
東葛西小 屋上緑化 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・ ・
八幡山小 屋上緑化 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・ ・
南池袋小 ビオトー プ・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・ ・
南池袋小 風力発電 装置・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・
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Kids’ ISO プ ロ グ ラ ム シ ス テ ム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・31
Kids’ ISO 取り組み 終了し た時の 感想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 32
Kids’ ISO 家庭での 児童の 取り組 み方 法・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 32
Kids’ ISO 保護者に よる Kids’ ISO 入門編の 有効性 の評価 ・・ ・・・ ・・・ ・・ 32
Kids’ ISO 国際認定 書授与 式の様 子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 32
緑丘中学 校、八幡 山小学 校位 置図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 41
総和中学 校位置 図・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ 41
中国実験 小学校 位置図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・ 41
児童がエ コ施設 と環境 教育 授業に 対する 記憶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
学校別環 境知識 正答率 ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・ 43
学校種類 別環境 知識正 答率 ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ 43
学校別環 境問題 に対す る関 心状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 43
学校種類 別環境 問題に 対す る関心 状況・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 43
学校別環 境問題 に対す る危 機感・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・ 44
学校種類 別環境 問題に 対す る危機 感・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 44
学校別児 童の環 境配慮 行動 率・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・ 44
学校種類 別児童 の環境 配慮 行動率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 44
中国児童 環境意 識全般 ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・ 45
中国児童 の行動 意欲及 び行 動率・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・ 46
日中児童 の授業 記憶比 較・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・ 47
日中児童 の環境 知識正 答率 比較・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・ 48
日中児童 の環境 問題関 心率 の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 48
興味から 見た行 動率- 日本 児童・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・ 48
興味から みた行 動率- 中国 児童・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・ 48
日中児童 の危機 感の比 較・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・ 49
危機度か ら見た 環境意 識- 日本児 童・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 49
危機度か ら見た 環境意 識- 中国児 童・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 49
日中児童 の環境 配慮行 動率 の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 49
行動率か ら見た 環境意 識- 日本児 童 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 50
行動率か ら見た 環境意 識- 中国児 童・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ 50
環境配慮 行動に 影響す る各 要因を 解明す る分 析方法 ・・・・・・・・・・・・・・ 52
環境配慮 行動に 影響す る各 要因 ―― エコスク ール、グリ ーンス クール ・・・・・・ 53
環境配慮 行動に 影響す る各 要因 ―― 非エコス クール 、郊外校 ・・・・・・・・・・ 53
表目次
1
2
3
4
エコスク ールの 各事業 タイ プ・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
ヒヤリン グ調査 対象校 概要 ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
ヒヤリン グ結果 の一覧 ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・
学校版環 境 ISO の組系図 ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・ ・・
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第1章 はじめに
1-1
本研究の 背景
地球温暖 化、オゾン層の 破壊、酸性雨、熱帯林減 少、有害廃棄 物 の拡散、海洋汚染、 生
物多様性 の減少 など、 さま ざまな 地球規 模の 環境問 題が世 界共 通の課 題とし て大 きく取 り
上げられ ている 。 環境に関 する多 くの問 題が 指摘さ れ、先 延ば しにで きない 状況 になっ て
いる。 今日の環 境問題 の多く は、 事業活 動や日 常生 活にお ける環 境へ の負荷 が積み 重な っ
て顕在化 してい るもの であ り、こ れらの 問題 の解決 に当た って は、大 量生産 ・大 量消費・
大量廃棄 型のラ イフス タイ ル・社 会経済 活動 を環境 への負 荷が 少ない ものへ と変 えるこ と
が必要で ある。 そのた めに は、環 境や環 境問 題に関 心・知 識を 持ち、 人間活 動と 環境と の
かかわり につい ての総 合的 な理解 と認識 の上 に、環 境保全 に配 慮した 望まし い働 きかけ の
できる思 考力や 判断力 を身 につけ 、より 良い 環境の 保全に 主体 的に参 加し、 責任 のある 行
動がとれ る態度 を育成 する ための 環境教 育が必要 とされ ている 。
将来社会 の担い 手であ る小 学生に とって は、 自分の 未来の 創造 という 非常に 重要 な問題
である。 将来の 環境の 変化 は、現 在の環 境教 育のあ り方に 左右 される とも言 える だろう。
つまり、 環境教 育つい て再 確認し 、より 良い 方向に 修正す る事 が必要 な時期 に来 ている と
考えるの である 。学校 での 環境教 育は、 それ ぞれの 教科の 特性 を生か した取 り組 みが期 待
されてい るが、 その他 にも 総合学 習の果 たす 役割も 重大で ある 。
ヨーロッ パでは、1994 年からエ コスク ールと いう 事業が 始まっ てい る。欧州でのエコ ス
クールで は、児 童を主 体と して、 校内や 周辺 地域の 環境を 良く するた めの活 動を 行う。 そ
の上で、 そのよ うな学 校を エコス クール とし て認証 するの が欧 州型の エコス クー ル事業 で
ある。(鈴木 ,「世界の 環境教 育」)
日本にお いても 、地球 規模の 環境 問題に 対応す るた め、学 校施設 にお いても 環境負 荷 の
低減や環 境共生 を考慮 した 施設の 設置が 求め られて いる。 また 、この ような 視点 で整備 さ
れた学校 施設を 利用し 、環 境教育 や省エ ネ活 動を実 践して いく ことが 求めら れて いる。 こ
のため、 文部科 学省、 農林 水産省 、経済 産業 省およ び環境 省が 連携協 力し、 環境 を考慮 し
た学校施 設 (エコスク ール) のモデ ル整 備を 1997 年から推 進して きた。 タイ プ別に 太陽光
発電型、 太陽熱 利用型 、そ の他新 エネル ギー 活用型 、省エ ネル ギー・ 省資源 型、 自然共 生
型、木 材 利用 型、 資 源リ サ イク ル型 、 その 他 など の事 業 タイ プ 等、 2007 年度 5 月まで に
686 校が認定 されて いる。そのほかに、児童を対象 とした 環境 教育と して、学校版 環境 ISO
や 、“ キッズ ISO”なども挙 げられ る。このように、日本にお いて は多様 な環境 教育 が行 わ
れている といえ る。(古本、「石川学校 版環 境 ISO」,2002)
中国にお いても 、国際 社会に おけ る環境 教育の 影響 を受け 、環境 保護 局(日 本にお け る
環境省相 当)は 1996 年度に「全国環境 宣伝 教育行 動綱要」を公布し、「グリーンス クール 」
6
という概 念の普 及に努 めた 。 「グリー ンスク ール」 の概 念を「 基礎教 育理 念を確 保した 上
で、持 続 可能 な発 展 の思 想 を持 ち、 環 境を 考 慮し た学 校 施設 管 理や 資源 活 用に 工 夫す る。
また、学 校管理 及び日 常生 活にお いて教 師と 児童の 環境意 識を 養成し ていく 学校 」と定 義
した。2000 年から正 式な認 証を実 行し 始め、全国でグリ ーン スクー ル認定 校は 急進的 増 え
てきた。 グリー ンスク ール の認定 数が増 加す るに従 って、 環境 教育を 重視す る学 校もま す
ます増え てきた 。これ らの 学校は 学校施 設や 日常生 活での 環境 教育を 工夫し 、グ リーン ス
クールと して認 定取得 に向 けて努 力を続 けて きた。2004 年 9 月までに 全国で 1.7 万校が グ
リーンス クール として 認定 され、 2006 年まで 2.5 万校が認 定され た。しかしなが ら、数 多
くの学校 が認定 された のに もかか わらず、
「グリーン スクー ル」という概念 がまだ 十分 に 普
及してお らず、 一般 人にとっ て未知 な概念 であ る。つ まり中 国に おける グリー ンス クール
とは、今 後更に 広く、 深く 推進し ていく こと が必要 である (出 典:中 国環境 保護 局ホー ム
ページ)。
1-2
本研究の 目的
日本では 、平成 9 年度から 5 年間、文部 省と通 産省 の共同 により 「環境 を考 慮した 学 校
施設(エ コスク ール) の整 備推進 に関す るパ イロッ トモデ ル事 業」が 実施さ れた 。その 後
も認定校 を設定 し 、事業タイ プ別に 認定 を行って きた 。 このよう に日本 におけ る環 境教育
は、
「エコスクー ル」などの認証プ ログ ラムを 手本と して、環境 を配慮した 学校施 設 作り や 、
環境 を配慮した 活動に 取り組 む 事 などを 重視し、 施設を 中心に ハー ド面を 生かし た環 境教
育といえ る。日 常生活 と結 びつい た環境 意識 の養成 は児童 が受 けた環 境教育 に大 きく影 響
されると 考えら れるが 、施 設を活 かした 環境 教育に おいて 学習 した内 容が、 児童 の生活 に
結びつき 、生活 を創造 する 力とし て活か され ている とは考 えに くい。
中国にお いても、「クリーンス クー ル」プ ログラ ムが 10 年ほど行 われ、 日常生 活か ら
確実に児 童の環 境教育 を行 い始め た。グ リー ンスク ール認 定制 度は教 師と児 童の 環境意 識
を高める ことを 促し、 また 、学校 環境も 改善 される 。さら に児 童を通 じて家 族に も環境 問
題に関す る情報 を伝え 、環 境意識 を高め たと 言われ ている 。ま た、家 庭を通 じ、 社会全 体
への環境 保全ブ ームを 巻き 起こす ことも 期待 できる という 。
そこで、本 研究 は日本 のエコ スク ールに おける 環境 教育の 実態を 調査 した上 で、日 本 に
おけるエ コスク ールと 非エ コスク ールに 対し てアン ケート 調査 を行い 、児童 の環 境意識 を
把握し、 エコス クール の教 育効果 につい て考 察する 。
さらに、中 国の グリー ンスク ール を通う 児童を 対象 として アンケ ート を行い 、それ を 日
本の児童 の傾向 と比較 し、 日中両 国の小 学生 の環境 問題に 対す る知識 、関心 ・危 機感、 実
生活 に お け る 行 動 な ど の 実 態 を 明 ら か に す る 。 日 中 両 国 の 児 童 の 環 境 意 識 を 把 握 し た 上
7
で、異な る環境 教育制 度が 児童の 環境意 識に 対し、 どの項 目が どのよ うな要 因に よって 影
響される のかを 研究す る。 そして 、それ ぞれ の特徴 を把握 する ことに よって 、環 境教育 の
指針を求 めるこ とを目 的と する。
1-3
既存研究 の整 理
1-3- 1
日本人の 環境 意識
社会的に 環境問 題が注 目さ れるに つれ、 環境問 題に 関する アンケ ート 調査研 究も数 々 行
われてい る。当 初は公 害、 環境問 題に関 わっ て、小 学生・ 中学 生・高 校生の 河川 汚染、 大
気汚染、 騒音な どに関 する 認識様 態及び 異な る河川 の環境 に関 する認 識様態 の調 査が行 わ
れている(藤田ら
1974, 1975, 1976, 1981)。その後、環境教育の目 標とな る具体 的な 行
動を目指 し、家 庭にお いて 日常的 にでき る題 材とし て、ゴ ミの 分別や 古紙回 収な どのリ サ
イクルに 関する ものが 取り 上げら れてき てい る。リ サイク ルに ついて の環境 問題 に関す る
児童・生 徒対象の 調査研 究によ れば 、知識 、関心 が高 いこと や「~ すべ きであ る」と いう
判断を持 つ割合 が高い こと は、必 ずしも 行動 に結び つかな いこ とが明 らかに され てきて い
る(清水 1978, 柄本 1992, 高森ら 1995, 西川ら 1997)。
また、石井 ら( 2002)は、大 学生が 自然事 象に 日常的 に親し むこ とによ って、 環境 問 題
への関心、行動(アルミ缶の 回収な どの リサイ クル活 動)、保全活動への 参加状 況に 影響 が
あると 報 告し てい る 。更 に 、依 藤ら ( 2002)は、 小 学校 高学 年 の児 童 のご み減 量 行動 が、
ゴミ減量 の態度 と規範 意識 の重要 性の要 因に よって 影響さ れて いるこ とを明 らか にして い
る。西川 ら( 2001)は、大 学生と 成人を 対象 にした 調査か ら、 環境に おける 配慮 行動を 進
めていく ために は環境 に関 する知 識の提 供も 必要で あるが 、社 会的影 響から 個人 の意識 を
高めてい くこと が重 要である ことを 明らか にし ている 。
一方、エネ ルギ ー問題 も、電 気や 石油の 使用に 関し ては身 近なと ころ から具 体的に 省 エ
ネルギー 活動に 関する 行動 を起こ すこと が可 能な題 材とし て位 置付け ること がで きる。 ま
た、エネ ルギー 問題に 関わ る成人 の行動 に関 する研 究もい くつ か見ら れる。
学生の環 境意識 に関し ては 、小学 生、中 学生 、高校 生の資 源・ エネル ギーに 関す るイメ
ージ、知識、行動などの 実態 を明ら かにし てい る研究 報告も ある(山下
2000)。それに よ
ると、学 年が進 んでも 資源 ・エネ ルギー に対 する児 童、生 徒の イメー ジはあ まり 広がっ て
いないこ とが指 摘され てい る。知 識調査 にお いては 、初歩 的な 知識が 欠如し てい ること が
報告され ている 。資源 ・エ ネルギ ーに関 する 児童・ 生徒の 行動 に関し ては、 手軽 にでき る
ことはす るが、 努力の 度合 いが必 要なこ とほ どして いない こと が明ら かにな って いる。
エコスク ールに 通う児 童の 環境配 慮行動 に関 しては 、野田 らは 日本の 中学校 に対 するア
8
ンケート 調査を 分析し た結 果、エ コスク ール に通う 生徒が 普通 校に通 う生徒 に比 べて環 境
配慮行動 が高い 傾向が ある ことを 報告した(野田 ,「エコス クール に通う 生徒 の環境 配慮 行
動分析 ,2007.3)。しかし この研 究は太 陽光 発電設 備が設 置さ れたエ コスク ール のみを 対象
として行 われ研 究であ り、 一般性 が欠け てい ると考 えられ る。 更に、 比較対 象と された 各
学校は日 本各地 に位置 して いるた め、児 童の 環境意 識と行 動習 慣は地 域環境 から の影響 も
受けるこ とが考 えられ 、単 純にエ コスク ール の影響 とは言 いが たい。 したが って 、同じ 地
区におけ る比較 研究も 必要 である と考え られ る。
1-3- 2
中国人の 環境 意識
中国 国家 環 保 局は 1998 年に 中国 の 31 の省 、市 、 自 治区 ( 香 港、 マ カ オ、 台 湾 を除 く)
の 11630 世帯の環 境意識 につい て調 査を行 った(任 , 2002)。その結果、環境汚染の 程度 に
ついて「非常 にひど い」、「ひどい」と回 答し た人は 56.7%であり、半数以上 の人が 環境汚 染
を深刻な ものと 受け止 めて いた。
また、 任 ( 2002)によ る と、「環境問 題 に関 して よ く他 の 人と 話し 合 う」、「環境保 護 に
関する知 識を集 めてい る」、「環境保護 に関す るイ ベント に参加 した ことが ある」 とい った
環境保護 行動に 参加し てい る人の 比率は それ ぞれ 53.6%、46.9%、42.7%であっ た。こ の
結果から 、中国 人の約 半数 が積極 的な環 境意 識を持 ってい ると 言える 。しか し、 中国上 海
市お よ び 周 辺 地 域 の 住 民 の 環 境 意 識 は 極 め て 低 い と い う 結 論 を 導 い た 研 究 も あ る ( 蘇 、
2002)。このように中 国にお ける 住民の 環境意 識に 対する 研究で は、必ずしも一 致し た結 果
が得られ ているわ けでは ない。
学生の環 境意識 につい ても 、高校 におけ るエネ ルギ ー・環 境教育 の現 状調査 が行な わ れ
ており、中国の児 童が「光、電気、熱、原子力」などについ て理 解が深 いと指 摘した(毛 、
岡本 ,2006)、その理由 は物理 、化 学科の 入学試 験に 関係が あるた め、 試験の 圧力に より 児
童はエネ ルギー につい てま じめに 勉強し てい ると解 釈した 。ま た、同 研究は 中国 社会が ほ
とんど一 人っ子 社会で あり 、児童 は自分 の要 求を重 視し、 社会 的責任 感が不 足、 環境問 題
に関する 関心も 弱いと 指摘 した。
1-3- 3
環境意識 の日 中比 較
これまで の環境 科学や 社会 科学な どの分 野で 環境意 識に関 する 研究が 行われ 、さま ざ ま
な視点か ら環境 意識の 特徴 を明ら かにし よう とする アプロ ーチ が見ら れる。 その なかに 中
国と日本 の両国 におけ る環 境意識 を比較 する ことに よって 中国 の環境 問題へ の対 応策や 環
境教育の 指導方 針の策 定を 目的と した研 究も ある。
日中両国 住民の 環境意 識を 中心と した研 究で は、日 本の住 民と比 べて 中国住 民はよ り 積
9
極的 な 環 境 対 策 へ の 支 援 意 欲 を 持 っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た ( 李 ・ 川 上 ・ 本 多 ,
1997,1998)。ところが 、馬( 2001)の日中 両国住 民の環 境意 識の研 究では 住民 の自然 環境
への関心 度につ いては 両国 ともに 意識が 高く 、環境 改善へ の努 力意欲 に差異 が見 られな い
と言う結 果に結 びつい た。
このほか 、日中 両国の 青少年 を対 象とし た環境 意識 調査の 結果、 日中 両国と も環境 問 題
に関する 関心度 が高く 、日 本の青 少年は 環境 問題を 早く解 決し ようと いう思 いが 強いの に
対し、中 国の青 少年は 自ら 行動し て解決 しよ うとい う意思 が強 いとい う結果 が報 告され た
(荻原・ 趙・戸 北 , 1998)。
以上の既 存研究 をまと め、従 来の 研究で は環境 意識 に関し て一貫 して いる結 果が得 ら れ
ているわ けでは ないこ とが 明らか になっ た。 なお、 住民の 環境 評価要 素に対 する 認識の 差
異は生活 環境の 現状か ら生 まれて くると 言わ れるよ うに( 李・ 川上・ 本多 ,1998)、日本と
中国は自 然環境 や経済 水準 などが 異なっ てい るため 、それ ぞれ の環境 問題と 関心 領域も 異
なってい ると考 えられ る。 例えば 、中国 には 砂漠が あるた め中 国人は 砂漠化 の問 題につ い
て感心を 持って いるが 、日 本には 砂漠が ない ため日 本人は 砂漠 化につ いて関 心度 が比較 的
に低いと 考えら れる。
このよう に、日 本人と 中国人 の環 境意識 は異な るが 、何が どのよ うに 異なっ ている か に
関して、 従来の 研究で は一 貫した 結果を 得て いない 。また 、小 学校に おける 環境 教育、 小
学生の環 境意識 に関す る研 究は少 なく、 日中 両国の 児童の 環境 意識を 比較す る研 究も少 な
い。更に 、異な る環境 教育 制度が 児童の 環境 意識に 対する 影響 を解明 する研 究も 欠けて お
り、 特 に エ コ ス ク ー ル の 環 境 教 育 効 果 を 全 般 的 に 把 握 す る 研 究 も 少 な い こ と が 挙 げ ら れ
る。
切迫して いく将 来の環 境問 題を勘 案する 時、環 境に 対する 意識を 高め 、実生 活にお け る
具体的な 行動を 促して いく ことが 必要に なっ てくる ものと 考え られる 。今後 環境 問題に 対
する児童 、生徒 の意識 実態 を把握 した上 で、 それら を生か した 啓蒙教 育、初 等教 育から 系
統的に行 われる 環境教 育活 動が期 待され る。
1-4
本研究の 構成
本研究は 次のよ うに構 成さ れる。 研究方 法に ついて 章別に 言及 する。
①
環境教育 の必 要性 お よび 環境 教育 の経 緯 ( 第 2 章)
環境問題を解決するには、法的規則の強化や科学技術による 解決 も重要であるが、
環境 教育により、環境に対して豊かな感受性 と責任を持っている 人を育成することも
大切である。環境問題の定義を把握し、環境教育の必要性について論述する。そして 、
10
外国(欧米)、日本、中国におけるそれぞれの環境教育の経緯をまとめる。
②
日中両国 の小 学校 に おけ る環 境教 育実 態 ( 第 3 章)
日中両国 の小学 校にお ける 環境教 育およ び環 境教育 認定制 度に ついて まとめ る。 特に近
年日本で 話題と なって いる 「エコ スクー ル」 と中国 の「グ リー ンスク ール」 につ いて紹 介
する。さ らに、 エコス クー ルの事 例紹介 、ヒ ヤリン グ調査 を行 い、エ コスク ール の現状 を
把握する 。
③
日中両国 児童 の環 境 意識 比較 ( 第 4 章)
環境教育の効果として児童の環境意識を把握するため、日中両国の小学生(日本の
エコスクール、非エコスクール、中国のグリーンスクール含)に対してアンケート調
査を実施する。 「体験」 →「知識の 取得」 →「意識、関心 、危機感 の発生」 →「行動」 と
いう メカニズ ム を用いて 、エコ スクー ルと 非エコ スクー ルの 児童の 環境意 識を 比較分 析す
ることに より、 エコス クー ルの環 境教育 効果 を把握 する。 そし て児童 の環境 意識 に影響 す
る各要因 を分析 し、ど の要 因がど のよう に児 童の環 境配慮 行動 を影響 してい るの かを解 明
する 。さらに、 日本と 中国児 童の 環境意 識を比 較分 析する ことに より 、両国 の環境 教育 の
効果につ いて検 討する 。
④
研究の総 括と 今後 の 課題 ( 第 5 章)
① ~③までに得 られた 結果を まと め、提案を行う。さらに、今後の課 題につ いて述 べる 。
11
第2章
環境教育 の必 要性 お よび 環境 教育 の経 緯
人類は、生 活や経 済活動 のた めに非 再生資 源(石 油、石炭 など) や再生 可能な 資源 ( 森
林など) を多量 にして いる ととも に、環 境を 汚染す る物質 を大 量に排 出して きた 。その 結
果、地球 全体に 被害を 与え る深刻 な環境 問題 が発生 し、人 類の 生存を 脅すよ うに なって き
た。 深刻化 される 環境問題 は、二 酸化炭 素の 増加に よる地 球温 暖化、 フロン によ るオゾ ン
層の破壊、森林伐採によ る緑の 減少、排ガスによる 酸性雨、環境破壊に よる 生物種 の減少 ・
絶滅、生 活ゴミ 及び産 業廃 棄物の 問題、 ゴミ を燃や すとき に出 るダイ オキシ ン、 河川・ 海
洋汚染、 砂漠化 現象の 加速 化 などが挙 げられ る。
また、近年 におい て開発 途上 国、特に 中国は 、経済 発展が 急速に 進行 し、工場 の新 設 や
自然への 開拓が 盛んに 行わ れてい る。それに伴い、さまざまな 環境破 壊・環境汚染が生 じ 、
深刻な社 会問題 になっ てい る。1995 年の「水資源調 査」によると、中国の河川の 約 46.5%
が汚染さ れ、そのうち 汚染度 が深 刻と判 定され たの は 10.6%だった(小島、2000)。ま た 、
工場から 排出さ れた廃 気に よって 発生し た酸 性雨も 、農地 や森 林に大 きな被 害を 与えて い
る。さ ら にこ こ数 年 来、 中国大 陸 で発 生し た 二酸 化 イオ ウが 北 風に 乗って 日本海 を 渡り,
日本海側 に降る 雪を酸 性に する「越境汚 染」も指摘され ている(明日香・金・相川、1997)。
このよう に中国 では環 境破 壊、環 境汚染 がま すます と深刻 にな り、近 隣諸国 にも 被害を 及
ぼしてい る。こ のよう に国 際的に 見ても 環境 問題の 解決は 急務 となっ ている 。
これらの 環境問 題を解 決す るには 、法的規則の 強化や 科学技 術に よる 解決 も重要で あ る
が、 環境 教育によ り、環境に 対して 豊かな 感受 性 と責任 を持ってい る 人を育成す ること も
大切であ る。自 然 を愛護 する感情 と 環境保全 に関する 責任 について の正し い理解 を 持って
いる児 童を育成 するこ とが、 将来にお ける環 境共生 型 社会 作り につなが るので ある。
2-1
環境問題 とは
環境問題 に関し て、瀬戸・森川・小沢( 1998)は、「環境問題 とは、人間活動の 拡大( 資
源とエネ ルギー 利用の 拡大 )によ る『生 態系 の劣化』、『人間の生存 条件の 劣化』 およ び経
済活動の 基盤で ある『 生産 条件の 劣化』 であ る」と 定義し 、環 境問題 は人間 の健 康への 被
害や生活 上の不 便、そ して 生息環 境への 負荷 を増や し、さ らに 肉体的 、精神 的疲 労、心 理
12
的障害ま で、さ まざま な側 面にお いて影 響を 及ぼす ことを 示し た。ま た、世 良( 1999)に
よると、 環境問 題とは 「人 間を取 り巻く 環境 が好ま しくな い状 況にな る」と 定義 した。 地
球環境問 題は、 人類の 作用 が量的 ・質的 とも に自然 の回復 能力 を超え てしま った ため発 生
したこと である 。環境 問題 は、我 々の生 活に 悪影響 を与え 、人 類の将 来にも 大き な脅威 な
のである 。
環境問題 を解決 するに は、 まず具 体的に どの ような 内容が 環境 問題に 含まれ てい るかを
確認する 必要が ある。 柳下 ( 1992)は、地 球環境 問題を オゾ ン層の 破壊、 地球 温暖化 、酸
性雨、森 林の減 少、野 生生 物種の 減少、 砂漠 化、海 洋の汚 染、 有害物 質の越 境移 動、開 発
途上国 の環 境問 題と 、 9 つの問 題に 分類 して いる 。松 信( 1998)は環 境問 題を その 発生 規
模によっ て地方 的問題(例えば水 俣病、騒音公害な ど)、広域的問題(例えば 酸性雨、大 気
汚染など)、地球規 模の問 題(例 えば地 球温暖 化、オ ゾン層 の破 壊など )に分 類して いる 。
さらに広 瀬( 1994)も、被 害形態 によっ て環 境問題 を資源 枯渇 型問題 (例え ば水 資源の 不
足、非再 生資源 の枯渇 など )と環 境汚染 型問 題(例 えば生 活排 水によ る水質 汚染 など) に
分類して いる。 そのほ か、 環境問 題の影 響時 期の長 さ、被 害の 直接性 や間接 性、 被害対 象
や被害の 深刻さ などに よる 分類も 可能で ある 。
2-2
環境教育 の必 要性
前節 で 述 べ た よ う に 環 境 問 題 は さ ま ざ ま な 特 徴 に よ っ て 、 多 様 に 分 類 が さ れ て い る た
め、環境 問題を 解決す るア プロー チも多 様で ある。 中島( 1997)は、環 境問題 を解決 する
ために必 要な手 段とし て、 規制、 経済的 手段 、環境 教育・ 論理 、国際 調和な どを 挙げて い
る。政治 や経済 手段で の方 法は力 強いが 、そ れとと もに大 きな 体制改 革が必 要と され、 更
に長い時 間と巨 大な社 会的 労力が かかる こと になる 。これ はい わば環 境問題 に対 するト ッ
プダウン 的な解 決策で ある 。それ に対し 、基 盤から のボト ムア ップと いう手 段も 非常に 重
要であ る 。そ もそ も 環境 問 題の 発 端は人 類 自身 の無 制 限的 な 開発 や環 境 破壊 行 動で ある。
したがっ て、我 々は経 済発 展と環 境共生 のバ ランス を再確 認し た上で 、環境 に対 して負 荷
の少ない ライフ スタイ ルを 取る必 要があ ると 考えら れる。 この ボトム アップ 型の アクシ ョ
ンを後押 しする のが「 環境 教育」 である 。
環境教 育 とは、「環境や 環境 問題 に 関心 ・ 知識 を持 ち 、人 間 活動 と環 境 との 関 わり につ
13
いての総 合的な 認識と 理解 の上に たって 、環 境の保 全に配 慮し た望ま しい働 きか けので き
る技能や 思考力 、判断 力を 身につ け、よ りよ い環境 の創造 活動 に主体 的に参 加し 、環境 へ
の責任の ある行 動が取 れる 態度を 育成す る教 育」と 定義し てい る(「環境教育 指導資 料」 ,
文部省 ,
1992,
p.6)。定義を簡 単にま とま ると、 環境教 育と は “環境問題 を解決 するた
めの態 度 と行 動力 を 育む 教 育 ”である 。 環境 問題 が すで に 起こ って い る段 階 はも ちろ ん、
起こ っ て い な い 場 合 も 、 日 常 生 活 か ら 積 極 的 に 行 動 を と る こ と が 必 要 で あ る ( 予 防 的 行
動)。むし ろ環 境 問 題が発 生 した 後に 解 決策 を 探す より も 予防 的 行動 の方 が 重要 だ と考 え
られる。 そのた めに我 々は 環境問 題を解 決す るため に環境 問題 に対す る的確 な認 識、環 境
問題の解 決に対 して積 極的 な姿勢 や態度 、す なわち 高い環 境意 識と行 動力を 身に つける こ
とが求め られて いるの であ る。こ こで、 環境 の大切 さへの 理解 を深め 、環境 を配 慮する 態
度、行動 を促進 するた めに は環境 教育が 重要 な役割 を果た して いる。 環境教 育は 学校で の
教育を始 めとし て、社 会、 家庭、 地域な ど、 様々な スケー ルで 行う生 涯教育 であ り、身 近
な環境問 題への 関心、 理解 から始 まり、 環境 問題の 改 善、解決 を目指 す態度 や姿 勢を育 成
する手段 なので ある。
2-3
環境教育 の経 緯
2-3- 1
諸外国の 取り 組み
1970年には,環境教育に 関して 世界最 初の 法律「環境教育法」
(Environmental Education
Act)がアメ リカで 制定さ れた 。アメ リカ連 邦か らの資 金援助 (カ リキュ ラム開 発に は約
7500万ドルの 補助) の下で ,環 境教育 に関す る研 究・実 践の推 進が 図られ ること を目 的と
された。その関係で 生み出 され たもの は PLT( Project
Learning Tree「樹木に ついて 学 ぼ
う」)である。これはアメ リカ西 部地域 環境 教育評 議会と アメ リカ森 林協会 が共 同で環 境 教
育の専門 家を集 めて創 った 教育プ ログラ ムで ある。PLTの特徴と して「自然に対 する感 受 性
を養うこ とを目 的とし た活 動が多 く見ら れる」「現実の行動 を重視 して いる」「アメリカに
おける環 境教育 の取り 組み」(前出,川嶋ら ,『環境教 育への 招待』)である。木の臭 いを 嗅
ぐなど, 五感を 通して 樹木 という 題材か ら広 く自然 への関 心を 広げ、 更に環 境へ の関心,
理解へと 発展さ せるこ とを 目的と したプ ログ ラムで あった 。
1972 年、ストックホ ルムで 開催 された「国連人 間環境 会議」 では初め て 環境問題 をテ ー
14
マにし た 。こ の会 議 で環 境 教育 の必 要 性と 国 際的 協議 を 踏ま え た計 画づ く りが 薦めら れ 、
これを受 けて 5 年後の 1977 年に、環境教 育に関 する政 府間 会議が トビリ シで 開催さ れた 。
また、1975 年にユー ゴスラ ビアの ベオ グラー ドでた 国際 環境教 育会議 が開 催され、環境 問
題に対し 、「 関心 」「 知識 」「 態度 」「 技能 」「 参加 」という ステッ プを提 言し た( なお、ベ
オグラー ドで開 催され た環 境教育 専門家 ワー クショ ップで は、 上の 5つの項 目 に「評価 能
力」を加えた6 項目 を環境 教育・環境学習 の目標 として い る、トビリシ宣 言では、「評価 能
力」は「 技能」 に含め てい る )。
ドイツで は 1970年代から 環境教 育への 取り 組みを 行うよ うに なった 。その 象徴 として 基
礎学校( 国民に 共通の 4年 制の初 等学校 )に 入学す る際に 配ら れるパ ンフレ ット が挙げ ら
れる。地 域ごと にパン フレ ットの 名前が 違う ようで あるが ,ボ ンのも のには 「環 境に優 し
いランド セル」 という タイ トルが つけら れ, ランド セルを はじ め,学 校で使 う文 房具な ど
は環境に 配慮し た素材 やサ イズの ものに する などを 要請し ている(大高泉 ,「ドイツ の環 境
教育」・奥井智久編著『地球規模 の環 境教育 (学校変革 実践シ リーズ 6 )』,1998)。その後 、
環境教育 が各国 に重要 視さ れ、特 にスウ ェー デンや ドイツ にお ける環 境保全 意識 が高く な
り、実際 に保全 活動も 盛ん でいた ことに つい てもい くつか の報 告(金 戸ら「 ドイ ツと日 本
の高校生 の環境 意識の 違い につい て」日本環境教育 学会第 13回大会・報告 2002年仙台)が
ある。そ こで,「エコ・スク ール」 という 概念 が誕生 した。 ドイ ツでは , 94・ 95年に初め
20校の認定 校があ ったが, 02・03年では 540校,スウェー デンで は 96・97年で 70校,02・03
年には 1003校(この うち, 幼稚園 が 423園)と年 々急速 に増加 して きた・
近代に おい て 、 2005 年 1 月 1 日から 始ま る 10 年を「 国連 持続 可能 な開 発の ため の教 育
の 10 年」とすること が国連で決 議 された 。持続可能な 開発を 可能とす るため に 必要不可 欠
な要素 は教育であ ること を強調し 、各国が 持続可 能な開 発 を実現 する ために必 要な教 育を
積極的に 行い、 またそ のた めの国 際協力 を推 進する ことと なっ てい る。(「持続可能 な開発
のための 教育の 10 年」推進 会議( ESD-Jhttp://www.esd-j.org/)
2-3- 2
日本にお ける 環境 教育 の 経緯
日本 の 環 境 教 育 問 題 は 工 業 化 が 進 ん だ 明 治 時 代 半 ば の 足 尾 銅 山 に お け る 渡 良 瀬 川 流 域
での重金 属汚染 や大阪 の大 気汚染 などで 表面 化され た。一 般的 に広く 認知さ れた ように な
った のは 1955~ 1965 年代 の水 俣 病 や四 日 市 喘息 に 代 表さ れ る 公害 問 題 以降 で あ る。 1965
~1975 年代には、ゴミや生活排 水によ る水質 汚染 などで 見られ る生 活様式 の変化 に伴 う 生
15
活環 境の 悪 化 など の 身 近な 環 境 問題 で あ った 。 1960 年代 後半 か ら 自然 を 守 る市 民 運 動が
盛んにな った。 しかし 当時 は、自 然保護 と言 っても 、一般 には その内 容はほ とん ど理解 さ
れてい なかった 。自然 保護の 前提 として 、身近 な自 然 を観察し 、日常生 活 から 自然と触 れ
る機会を 求めるた め 、1968 年に「自然観 察会」が生まれ、東京周辺 で親子 の自然 観察 活 動
をする地 域住民 グル- プ が作られ た 。
自然保 護 教育 と呼 ば れた 自 然観 察を 主 と した 活動は 、 1970 年代以 降 は「 財団 法 人日 本
自然保護 協会」を中心として、自然の生態学 的側面 と自 然接触 の 方法(フィー ルドマ ナー )
の普及と いう 形 で市民に よって 進められ た 。この活 動は、 都市 部の学校教 育で行 なわれ て
きた採集 と標本 づくり 偏重 の自然 教育 であった が、ただ 標本を 提出す るだ け というよ うな
形式化 されてし まった 。
その後自 然に関 する教 育啓 発活動 が全国的に 起こ り、 主要な部 分は市 民団体 に 移行さ れ
た。 自然観察 の野外 活動は 国民 の 自然意識 に大きく 貢献し、自然を守る世 論形成 の原 動 力
となった。 しかしな がら「 真の自然 保護教 育は自 然の 知識や 体験の 普及 ではな く、自然 保
護運動の 進め方 、開発 優先 の制度 や行政 を転 換させ る方法 、ま ちづく りのあ り方 を追究 す
ることだ 」との批判 もあっ た。一方、自然保護・観察団体など では 環境の調 査や 植物 実験 、
あるいは 地域の 歴史風 土や 利用者 動向を 含め た環境 調査が 行わ れ、一 定 程度の 社会的発 言
力を得て いた。
1970 年代半ば から、英語の 直訳と 見られる「環境教育」という用語 が使 われ始 めた。 研
究者や教 員など を中心 とし た小規 模な団 体で ある「環境教育 研究会」が 1977 年末に発 足 し 、
環境教育 の理念 と実践 を考 える活 動が始 まっ た。
1980 年代後半 以降、 人は 地球規模 の環境 問題へ の関 心 が高まり 、それ に応 じて 日本の
環境庁(現・環境省)や文部省(現・文部科学省)は、環境教 育の検 討会設 置や 、講演会 ・
教師研修 会など の普及 活動 を試み始め た。ま た、日 本の 学校教 育課程 には 環境教 育の教 科
がない ため 、理科、 社会科 、家庭 科 など の教科で 、環境 に関連 する 話題を 意識的 に取 り上
げた。
1985 年以降は 地球温 暖化や 酸性 雨、オゾン層 の破壊 などと いっ た地球 規模の 環境 問題 と
して認識 される ように なり 、世界 の国々 の協 力無し には解 決で きない という 共通 認識が 形
成された。その結果、1992 年にはブ ラジル のリオ デジ ャネイ ロにお いて 国連環 境開発 会 議
(地球 サミ ット )が 開催 され、「永続可 能な 開発 」と いう 概念 とみ なさ れ、 21 世紀は 「環
境の世 紀 」で ある と 位置 付 けら れる よ うに な った 。 リオに は 日本 から の NGO 関係者 も 訪
16
れ、政府間会議 と平行 して NGO 会議がも たれた。リオでの会 議で は、環境教育の重 要性 が
議論され、宣言に盛り 込まれ た。これを 受けて 日本 では、『 環境基本 法 』が 1993 年に制 定
され、そ の中に 環境教 育も 位置づ けられ た。 基本法 の影響 を受け、 行政から 環境教 育事業
の委託を 受ける NPO が続々と 生まれ た。
一方、1991~ 1993 年には文 部省が 環境教 育の 推進支 援のた めに 環境教 育指導 資料 を発 行
した。こ れはイ ギリス の環 境教育 をモデ ルと してい ると言 われ 、ベオ グラー ド宣 言など を
基調とし 、さら に地球 環境 問題や 持続的 開発 の概念 などを 意識 し、「 環境に 配慮 するこ と
ができる 人間の 育成」 、「 持続社 会への 転換 」を 目指し 、知識だ けの環 境教育 から の 転換
をめざし た。 また、2002 年の南ア フリカ におけ る環 境サミ ットで は、当時日本 の総理 大 臣
の小泉 氏 が環 境教 育 の重 要 性に つい て 言及 し、「環境 問題 の解 決 に公 言 でき る有 能 な人 材
の育成 が 急務 であ り 、国 際 的に 貢献 で きる 人 材の 養成 は 、日 本 が貢 献し 得 る分 野 であ る」
との認識 を記者 団にコ メン トして いる。
文部科学 省は 2002 年に、学 校教育 の中に 「総 合的学 習の時 間」 を小中 高校に 導入 し、
その内容 に環境 教育を 入れた 。各小学 校が独 自の総 合学 習に取 り組 み、 全校行事 の利用、
低学年の 生活科 との連 携の ほか、 チーム ティ ーチン グ、ボ ラン ティア ティー チャ ーやゲ ス
トティー チャー などの 活用 といっ た教育 方法 の工夫 も織り 込ん でいる。 こうして、環境教
育は多様 な内実 をかか えな がら模 索を続 け、 学校と 社会の 中に 広く知 られる よう になっ
た。
2-3- 3
中国にお ける 環境 教育 の 経緯
中国にお ける工 業化は わず か半世 紀とい う期 間で急 速に発 展し たもの である 。また工 業
化と同時 に人口 急増問 題も 発生し 、環境 汚染 と資源 の大量 消費 という 問題が 深刻 化して き
た。それ らは以 下の 9点に代表 される 。
① 土壌汚染 問題が 日々深 刻化 してい る。そ の被 害に瀕 する面 積は 国土の 38%にまで 及ん
でいる。
② 砂漠化の 進行。砂漠化の危 機に瀕 してい る土 面積は 全国の 約 27%、さらに、毎年2460km
2
のペース で 砂漠化さ れてい る 。森林伐 採、天然性 植物の 破壊と とも に、その役 割で あ
る防風防 砂、水 の涵養 、空 気の浄 化、動 物多 様性の 保護な どの 機能も 失って いる 。
③ 草原にお ける問 題も深 刻化 してお り、主にそ の退化 、砂漠化、 塩害・アルカ リ害 があ げ
られる。 被害面 積は約 全国 の 3割である 。
17
④ 生物多様 性への 危機。 被害 に瀕し ている 動物 の数は 全国の 約 15%から 20%まで及 んで
いる。
⑤ 水汚染。 淡水資 源の枯 渇問 題に直 面して いな がらも 、水資 源の 浪費問 題が深 刻な 現状
にある。
⑥ 大気汚染 。大気 汚染に よっ て、酸 性雨に 被害 される 都市が 増え 続けて いる。 その 影響
を受け、 植物や 建築物 へ侵 食問題 も深刻 であ る。
⑦ 都市にお ける生 活ごみ によ る汚染 問題
⑧ 都市騒音 の問題
⑨ 放射性物 質によ る汚染
となって いる。
これら の 事態 を受 け 、中 国 の環 境教 育 は 1970 年代か ら 始ま った 。 この 当 時、 環境 教 育
は三つの 段階に 分けて 推進 された 。
第一期- 導入段 階( 1973~1983 年 ): 1973 年第一回 全国環 境保全 会議 が行わ れ、その 後
環境保全 は新し い話題 とし て注目 を集め 始め た。そ の後の 十年 間、環 境保護 の話 題は小 学
校教材に 少しず つ取り 入れ られて きた。 小学 校の教 材に環 境保 全に関 する内 容が 見え始 め
た。
第二期- 発展段階( 1983~1992 年):中国教育委員 会は 1987 年に「教育 要綱」を公布 し
た。
「教育要綱」では小学 校教材 と環境 問題 に関す るイベ ント を融合 するよ うに 薦め、更に
エネルギ ー問題 、環境 保全 、生態 保全な どの 話題を めぐっ てセ ミナー やシン ポジ ウムの 形
で選修科 目とし て学校 教育 で取り 上げる よう に薦め た。
第三期- 進歩段 階( 1992年~):中国教育 委員会 は 1992年「新教 育要綱 」を公 布し た。
要綱では 、小学 校教材 に環 境保全 の知識 を入 れるこ とを明 確に 指示し た。 1990年代半ば か
ら中国政 府は国 際組織 と外 国政府 と連携 し、 環境教 育に必 要と される 教師の 育成 に力を 入
れた。国 際レベ ルの環 境教 育を目 指して 世界 の環境 教育組 織と 密接に 交流を 行っ ていた 。
そして、中国 は全世 界へ 持続可 能な発 展を 中心と する発 展の 主旨を 表明す るた め、 1994
年には「 中国ア ジェン ダ 21議定」を 発表し た。こ の議 定にお いて、 「国 際社会 の一員 、且
つ、人口 の最も 多い国 家と して、 地球全 体の 持続可 能な発 展及 び環境 保全に おけ る中国 の
責任を認 識して いる。 した がって 、中国 政府 は歴史 的責任 感を 強く感 じてお り、 自然資 源
と環境の 保護対 策を重 要視 し、全 力かつ 積極 的に地 球生態 環境 の保全 へ自ら の役 割を果 た
していく」と述べられて いる。そして、「持続可能 な発展 に関す る教 育シス テムを 強化 し 」、
18
「小中学 校にお いて環 境教 育を普 及し、学生の環境 に対す る感情 と社 会的責 任感を 持た せ 、
国民の環 境意識 の向上 及び 持続不 可能の 発展 への見 直しを 行う ことが 重要で ある 」など と
指摘して いる。
90 年代半ば から、政 府、国 際機関 、国際 NGO、外資系企 業、 環境 NGO などが学 校環境 教
育事業を 展開す るよう にな った。 これら のア クター と学校 、家 族、地 域が共 同で 環境教 育
活動を計 画し、 地域の 環境 問題解 決のた めに 実施す ること は、 環境ガ バナン スへ の参加 に
結びつい ている 。
1996 年に中国 国家環 境保護局(日本におけ る環境 省相当)と中国教育委 員会が 連携 し て
「全国に おける 環境宣 伝教 育行動 綱要( 1996~2010 年)」を公布 し、初めて「グリ ーン ス
クール」 という 概念を 打ち 出した 。グリ ーン スクー ル認定 プロ グラム は欧米 にお けるエ コ
スクール の中国 版とい える 。国家 環境保 護局 、教育 委員会 と各 地にお ける学 校の 共同努 力
で認定プ ログラ ムが順 調に 進み、 2000 年に国家 環境保 護局は「グリー ンス クール 指南」 を
公開 し、 2001 年 3 月に 105 校の グリ ー ン スク ー ル を表 彰 し た。 2004 年全 国で 1.7 万校 が
グリーン スクー ルとし て認 定され 、 2006 年まで 2.5 万校が認 定され た。
このよう に、中国の 環境教 育は 、国内の環 境保 護政策 と国際 的責 任に端 を発し たも の と
考えら れ る。 環境 教 育は 中 国に おけ る 持続 可 能な 開発 の ため の 手段 の一 翼 を担 っ てい る。
特に、現 在注目 を集め たグ リーン スクー ルプ ログラ ムは、 中国 史上初 の全国 規模 の環境 教
育認定制 度であ り、中 国に おける 環境教 育の ブーム を巻き 起こ すこと が期待 され ている 。
19
第3章
日中両国 の小 学校 に おけ る環 境教 育実 態
今日の環 境問題 の多く は生 産活動 や日常 生活 におけ る環境 負荷 が積み 重なっ て顕 在化し
ているも のであ る。こ れら の問題 の解決 に当 たって は、大 量生 産・消 費・廃 棄型 のライ フ
スタイル と社会 経済活 動を 環境負 荷の少 ない 方向へ と転換 する ことが 必要で ある 。その た
めには、 環境問 題に関 する 知識と 関心を 持ち 、人間 活動と 環境 の係わ りにつ いて 総合的 な
理解と認 識を持 ち、環 境保 全に配 慮する 望ま しい判 断力を 身に つけ、 環境保 全活 動に積 極
的に参加 し、環 境に対 し責 任のあ る行動 がと れる態 度を育 成す ること が大切 であ る。そ の
ための環 境教育 の推進 を図 る必要 が ある。
学校は様 々な教 育活動 を通 じて児 童に知 識や 技能を 「勉強 」さ せる場 である とと もに、
日常生活 の大部 分を過 ごす 「生活 」の場 でも ある。 そこで は同 じ世代 の人や 先生 との交 流
があり、 共同生 活を通 じて 、行動 習慣と 意識 関心が 養われ る。 また、 学校と は、 本来家 庭
で学ぶ生 活習慣 を反省 させ 、改善 させ、 より 社会的 なもの へと 確立し ていく 場で もある 。
3-1
日中小学 校に おけ る環 境 教育 全般
3-1- 1
日本
文部省の 環境教 育指導 資料 ( 1991)によると、小学校におけ る環境 教育 の基本 的考え 方
とは豊か な感受 性を育 て、 活動や 体験、 身近 な問題 を重視 する ことと 記して いる 。その 上
で環境教 育を通 して身 につ けたい 能力や 態度 として
① 環境に対 する関 心・意 欲・ 態度等
② 環境問題 に対す る思考 力や 判断力 及び表 現力
③ 環境問題 の解決 に必要 な知 識・理 解や技 能
などが挙 げられ ている 。
授業以外 でも特 別活動 や総 合的学 習時間 や道 徳時間 を通じ て環 境課題 に取り 組む 機会が
提供され ている。2002 年以降か ら開始 された「総合的な 学習の 時間」には、小学校、中 学
校で年間 100 単位程度 の総合 学習時 間を 設ける ように 決ま ってい る。こ の時 間の使 用は柔
軟であり 、定期 的に実 施す ること も、集 中的 に行う ことも でき るよう になっ てい る。総 合
的な学習 時間の 新設は 問題 解決能 力の育 成が 主なね らいで ある 。学習 指導要 領で は、総 合
20
的な学習 の時間 の取り 扱い を「各 学校は 、地 域、児 童の実 態等 に応じ て、横 断的 ・総合 的
な学習や 児童の 興味・ 関心 等に基 づく学 習な ど創意 工夫を 生か した教 育活動 を行 うもの と
する」と述べている(『「総合的 な学習 の時間」に関する学 習指導 要領の 規定 』,中央教 育
審議会) 。そし てまた 、そ のねら いを
① 問題を解 決する 資質や 能力 を育て ること
② 主体的取 り組む 態度を 育て 、自己 の生き 方を 考える ことが でき るよう にする こと
以上のよ うに規 定して いる 。
総合的な 学習の 時間の 学習 テーマ 例とし て、 国際理 解、環 境、 福祉、 健康な どが 挙げら
れるが、 設定の 判断は 各学 校で決 まって いる 。学習 方法と して は自然 体験や ボラ ンティ ア
など社会 実践、 観察、 見学 などが ある。 また 、学習 成果の まと めとし て成果 発表 を行う こ
とも特徴 である 。「総 合的 な学習 の時間 」の 設置に よって 児童 の学習 意欲を 引き 出し、 問
題解決能 力を高 めるこ とが 期待で きる。
3-1- 2
中国
中国が建 国して 以来、 中国 政府は 生態環 境の 改善に 向けて さま ざまな 努力を して いる。
1980年代以来 、環境 教育に 関し ては中 国の小 中学 校で一 定的な 成績 が得ら れたと いう 報
告がある。環境教育に 関する 多くの 経験 が積み 重ねら れ、環境教育が環 境保全 意識 の普及 ・
向上に大 きな役 割を果 たし た。と ころが 、長 い間、 学校に おけ る環境 教育は 基礎 的な環 境
知識の伝 授に留 まって おり 、価値 観や環 境問 題に対 する思 考力 、判断 力、更 に環 境問題 を
解決する ために 必要と され る積極 的な行 動力 などの 育成が 軽視 され、 学生及 び国 民は環 境
に対する 正確な 環境倫 理と 社会的 責任感 など の面に おいて は欠 けてい る現状 も否 定でき な
い。
それに対 し、進 行中の 中国 第八回 基礎教 育課 程改革 におい て、 教育部 は環境 教育 を正式
に小中学 校の課 程に取 り入 れたの である 。こ れによ って、 環境 教育に おける 小中 学校で の
展開に必 要な組 織・規 制が 確立す る事、 小中 学生の 憂患意 志と 持続可 能な発 展へ の理解、
そして、 人口・ 環境・ 発展 に対す る正確 な認 識の育 成が期 待さ れたの である 。さ らに、 身
の回りの ことに 関心を もち 、積極 的に行 動す ると共 に持続 可能 な 未来を作 り上げ ること も
目的とし ている 。
21
3-2
環境教育 認定 校制 度
3-2- 1
日本小学 校に おけ る環 境 教育 認定 校制 度 ―― エコスク ール
3-2- 1- 1
エコスク ール 経緯
近年,地球規 模の環 境問題 が世 界共通 課題と して 注目を集 め ,日本 において も, 1990 年
10 月に地 球 温暖 化防 止 行動 計 画 が 閣議決 定 され ,1993 年 11 月に環 境 基本 法 が制定 され ,
1994 年 12 月に環 境基 本計 画が 閣議 決定 され る等 ,地 球環 境保 全に 対す る取 組が 強化 され
た。また 、それ らと同 調す るよう に 学校施設 におい ても環 境へ の負荷 の低減 に対 応した 施
設づくり が求め られて きている 。
このよう な要請 に対応 する ため, 文部科学 省は、 1994 年度より「環境を 考慮 した学 校 施
設に関す る調査 研究協 力者 会議」 を設置 し 、 省エネル ギー・ 省資源 シス テムの 導入, エネ
ルギー・ 資源の 有効利 用・ 再利用 ,環境 緑化 等学校 施設に おけ る環境 への負 荷の 低減方 策
等に関す る報告 書を 1996 年 3 月 に取りまと め た。 同年に公 布され たエコ スク ール整 備に
ついての 報告書 による と、 今後の 学校は 「環 境を考 慮して 設計 ・建築 され、 環境 を考慮 し
て運営 され、環 境教育 にも活 かせ るよう な学校 施設 」であ るべき とさ れてい る。持 続可 能
な社会づ くりを 目指し 、施 設・運 営・教 育そ れぞれ の側面 から 環境に 配慮す るこ とがエ コ
スクール の理想 である 。
『環境を考 慮した 学校施設(エコスクー ル )』
の具体的 な推進 と検討 を行 うため 、1997 年か
らは 文部 科 学 省と 経 済 産業 省 の 協同 施 策 であ
る「 環 境 を 考 慮 し た 学 校 施 設 の 整 備 推 進 」、
すな わ ち エ コ ス ク ー ル モ デ ル 事 業 を 開 始 し
た。 この 事 業 では 太 陽 光発 電 、 雨水 利 用 、緑
化型など 、いく つかの パタ ーンが 設定さ れて いる。
この事業 の認定 を受け ると 、文部 科学省 から
図 3-1
エコスクールの視点
出典:文部省ホームページ
基本計画 に関す る調査 研究 費の補 助を受 ける ことが できる とと もに、 建物を 整備 する際 に
補助を受 けるこ とがで きる 。また 、地域 材を 利用し 、内装 など を木質 化する 木材 利用関 係
予算につ いては 農林水 産省 又は文 部科学 省が 補助を 行い、 太陽 光発電 などに つい ては経 済
産業省が 新エネ ルギー 導入 関係予 算の一 部を 用いて 補助す る事 として いる。
22
各年度に おける エコス クー ル認定 校数は 図 3-2 で表して いる。 2001 年から認 定され た
校数が急 激に増 えてき た事がわ かる。2007 年 5 月まで全 国で 686 校がエコ スクー ルとし て
認定され た。認 定され た学 校の中 で、小 学校 の数が 一番多 く、 その次 に中学 校や 幼稚園 が
ある。
400
70
380
350
60
300
50
幼稚園
小学校
中学校
高等学校
他
学校数
30
20
250
200
学校数
40
128
150
86
100
10
50
0
0
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
53
19
2点
3点
平成
2
図 3 -2
4点
26
5点
7
2
6点
7点
施設数
各年度におけるエコスクール認定校数
3
図 3 -3
エコスクールの施設数
各学校に おける 施設数 に関 しては 、図 3-3 でわかる ように 、文部 科学 省が規 定され た
施設のう ち、施 設を一 点 のみ設置 している 学校数 が最も 多く の 380 校である 。 2 点の施 設
を設置し ている 学校は 128 校である 。
エコスク ールで 設置さ れて いる施 設に
4%
4%
太陽光発電型
6%
関しては、太陽光発 電型が 最も多 く、35%
省エネ省資源型
を占めて いる。 その次 は木 材利用 型
35%
8%
木材利用型
(17%)と省 エネ省 資源型 ( 17%)の装
置である (図 3- 4)。
自然共生型
9%
資源リサイクル型
しかしな がら、 エコス クー ル事業 が国
その他
その他新エネ活用型
レベルで 推進さ れるプ ログ ラムで ある
17%
17%
が、現状 のエコ スクー ル事 業は「 学校施
設の整備 」が主 眼とな って いるた め、学
4
図 3 -4
太陽熱利用型
エコスクールの施設類型
校経
営やカリ キュラ ム等の ソフ ト面で の検討
が遅れて いるこ とは否 めな い。今 後のエ コス クール 事業は 、ソ フト・ ハード 両面 ともに バ
ランスよ く研究 開発さ れて いくこ とが望 まれ る。
23
3-2- 1- 2
エコスク ール の意 義
エコスク ールの 整備に 伴い 、以下 のよう なメ リット を挙げ るこ とがで きる。
まず、学 校の 使用など に必要 とされ る エネルギ ー・資 源 の使用量の 全体増 加 が抑え られ
ること ができ 、環境負 荷の低 減が 期待でき る 。また、 地域環境 への貢 献 も期待で きる 。整
備を通じ て、児 童は地 域の 環境 を学び、 これを 自らが 守り 育てる ことに 繋が ってい く。ま
た、学校 と地域 を結び つけ る契機 ともな り 、 自然と 共生 したまち づくり の拠点 と もなる 。
更に、地域 住民 が環境に ついて 学ぶこ との できる 現場 を提供す ること ができる 。地域住
民 や次世代 の担い 手 であ る児 童 に対し 、 環境 ・エ ネ ルギ ー 消費 に対 す る関 心 意識 を高め、
認識を深 め る事が期 待され る。環 境教 育の現 場として 、エコ スクー ルの シンボ ル性及 び実
物教材と しての 施設機 能の 果たす 役割も 大き い だろう 。
3-2- 1- 3
認定方法
エコスク ール事 業は 文部科学 省,農 林水産 省及 び経済 産業省 が協 力し実 施する 事業であ
る。エコスク ールの 事業実施 対象 は都道府県 又は市 町村(特別区を含 む。以下同じ。)であ
る。 原則とし て 、公立学校 施設整 備事業 の新 増改築 事業又 は大 規模改 造事業 に併 せて実 施
し、 初年度は 児童生 徒等の 環境 教育へ 活用す るこ とを踏 まえ 、 環境を考 慮した 学校施 設の
具体的な 整備方 法等に つい て調査 研究し 基本 計画の 策定を 行い 、次年度以 降 は 基本計画 に
基づき建 物等の 整備を 行う(「 環境を考 慮した 学校施設(エコス クール)の整備推 進に関 す
るパイロ ット・ モデル 事業 実施要 項 」 ,2000 年 5 月 , 文部省教 育助成 局施設 助成 課 )。
エコスク ール 事業のタ イプは 以下の 通りであ る 。ただし ,複数 のタイ プを 併用す ること
も可能 である 。
(1) 新エネル ギー活 用型
ア
太陽光発 電型
イ
太陽熱利 用型
ウ
その他新 エネル ギー活 用型 (風力 ,燃料 電池 等)
(2) 省エネル ギー・ 省資源 型
(3) 自然共生 型
(4) 木材利用 型
(5) 資源リサ イクル 型
24
(6) その他
エコスク ールの 各事業タイ プ は以下の ような 内容で 分類 されて いる。
表 3-1
エコスク ールの 各事業 タイ プ
事業タイ プ
新エネル ギー
活用型
事
業
内
容
太陽光発 電型
屋上,屋 根等に 太陽電 池を 設置し ,発電 した 電力を
活用する 。
太陽熱利 用型
屋上等に 太陽熱 集熱板 を設 置し,暖 房(床暖 房等) ,
給湯(シ ャワー ,給食 等) ,プー ル加熱 等に 利用す
る。
その他新 エネル
ギー活用 型
・風力: 屋上, 校庭等 に風 車を設 置し、 発電 した電
力を活用 する。
・地中熱 :換気 用チュ ーブ を地中 に埋設 し, 室内空
気を循環 させて 熱交換 する 。
省エネル ギー・ 省資源 型
・省エネ 型設備 の導入 :照 明、空 調等
・中水利 用:雨 水再利 用、 排水再 利用等
・断熱性 能の向 上:断 熱材 、断熱 サッシ 、複 層ガラ
ス等
自然共生 型
・建物緑 化: 屋上緑化 、 壁面緑化 等
・屋外緑 化:学 校ビオ トー プの設 置、 校庭芝生 化 等
木材利用 型
・森林資 源の保 全に資 する 地域材 の活用 :内 装等の
木質化
資源リサ イクル 型
・リサイ クル建 材の活 用
・生ゴミ 堆肥化 装置の 設置
その他
・自然採 光、自 然換気 、日 射調節 等
出 典 :「 環境を考 慮した 学校施 設 (エコスク ール )の整備推 進に関 するパ イロ ット・モデ ル
事業実施 要項 」、 文部科学 省初等 中等教 育局 、2002 年 3 月
エコスク ール を実施し ようと する都 道府 県又は 市町村 は 、事業計画 書を文 部科学 省に 提
出し、 文部科学 省 、農林水産 省及び 経済産 業省 は事業 計画書 の内 容を審 査し 、 事業内容 に
応じ協議 した上 で事業 実施 対象を 決定す る。
エコスク ールパ イロッ ト・ モデル 事業の フレ ームは 以下の よう な組織 図で表 示で きる。
25
図 3-5
パイロット・モデル事業のフレーム
出典:「環境を考 慮した学校施設 (エコスク ール )の整備推 進に関するパイ ロット・モデル 事業
実施要項 」、 文部科学 省初等中等教育局 、2002 年 3 月
3-2- 1- 4
全国にお ける エコ ス クー ル認 定状 況
60
50
エコスクール校数
40
30
20
10
0
沖縄
鹿児島
宮崎
大分
熊本
長崎
佐賀
福岡
高知
愛媛
香川
徳島
山口
広島
岡山
島根
鳥取
和歌山
奈良
兵庫
26
大阪
各都道府県におけるエコスクール認定校数
京都
滋賀
三重
愛知
静岡
岐阜
長野
山梨
福井
石川
富山
新潟
神奈川
東京
千葉
埼玉
群馬
栃木
茨城
福島
山形
秋田
宮城
岩手
青森
北海道
6
図 3 -6
2007 年 5 月まで全 国で 686 校がエコ スクー ルとし て認 定され た。認定校の最も 多い地 区
は兵庫 県 で 50 校も認 定 され た。 そ の次 は 北海 道 38 校、埼 玉 県と 三重 県 は 35 校、東 京 都
と愛知県 は 34 校が認定 された。認定校 の少な い地区 は青 森、宮城、徳島、愛媛、高知、 佐
賀、沖縄 県で、 3 校である 。
日本全国 の小学 校数は 2003 年で 23,633 校(「地域別 統計デ ータベ ース の整備」、総務省
統計局ホ ームペ ージに より )であり、その中エコ スクー ルは 僅か3 %に過 ぎな い。今後と も
多くの学 校がエ コスク ール に認定 される こと が見込 まれる 。
3-2- 1- 5
エコスク ール 事例 紹 介
(1) 対象校:①埼玉県越 谷市増 林小学 校 ② 東京都江 戸川区 東葛西 小学 校 ③東京都豊 島 区
南池袋小 学校 ④ 東京都世 田谷区 八幡山 小学 校
(2) 調査方法:校長や副校長 に対し てエコ 施設 の日常 利用状 況に ついて ヒヤリ ングし た
(3) 実施日:埼玉県越 谷市増 林小学 校は 2007 年 6 月 22 日にヒヤ リング を行い、東京 都
江戸川区 東葛西 小学校 と東 京都豊 島区南 池袋 小学校 は 2007 年 6 月 23 日の午前 と 午
後に分け てヒヤ リング を行 った。東京都世田 谷区八 幡山 小学校 は 2007 年 11 月 7 日
にヒヤリ ング調 査を行 った 。
(4) 八幡山小 学校の 取り扱 いに ついて
八幡山小 学校は 「エコ スク ール」 として 認定 されて いない が、 世田谷 区の「 学校 施
設整備基 本計画」に基づいて、「学ぶ場とし ての学 校を 目指し、区民の生涯学 習の 場
として機 能でき る施設 環境 にする」
(「八幡山小学 校設計 コン セプト」,文部科学 省 公
布資料)を目標とし て 1996 年からエ コスク ール施 工を 行った。文部省と通産 省の 共
同による 「環境 を考慮 した 学校施 設(エ コス クール )の整 備推 進に関 するパ イロ ッ
トモデル 事業」は 、まだ正式 的に実 施して いない( 1998 年度から 正式的 に実施 さ れ
た)ため 、八幡 山小学 校は 一部の エコス クー ル一覧 表に登 録し ていな いが、 その 改
築整備は エコス クール 整備 事例と して文 部省 ホーム ページ に記 録して あり、 その 後
の管理も すべて エコス クー ルの基 準にし たが って行 ってき たた め、本 研究で は八 幡
山小学校 をエコ スクー ルと して取 り扱う もの とした 。
27
表 3-2
認定年
竣工年
(施工年)
1996
1999
1999
2001
2001
2002
2002
2003
学校名
所在地
東京都
世田谷区
埼玉県
増林小学校
越谷市
東京都
東葛西小学校
江戸川区
南池袋小学校
エコ施設
教室・校庭から見えるか
どうか
アクセス
児童用観察モニター
太陽光
発電 売電状況
学校要覧に施設の紹介
児童が施設の存在に対し
環境教育に活かす状況
教室・校庭から見えるか
どうか
アクセス
太陽熱
学校要覧に施設の紹介
利用
児童が施設の存在に対し
利用季節
環境教育に活かす状況
教室・校庭から見えるか
どうか
アクセス
中水
利用 利用状況
学校要覧に施設の紹介
児童が施設の存在に対し
環境教育に活かす状況
教室・校庭から見えるか
どうか
アクセス
屋上
学校要覧に施設の紹介
緑化
児童が施設の存在に対し
風力
発電
太陽光 太陽熱
発電型 利用型
八幡山小学校
東京都
豊島区
表 3-3
ビオ
トープ
ヒヤリン グ調査 対象校 概要
環境教育に活かす状況
教室・校庭から見えるか
どうか
アクセス
学校要覧に施設の紹介
児童が施設の存在に対し
環境教育に活かす状況
教室・校庭から見えるか
どうか
アクセス
学校要覧に施設の紹介
児童が施設の存在に対し
新エネ
活用型
○
省エネ
省資源型
自然
共生型
□
▲
木材
利用
(中水利用) (屋上緑化)
○
□
○
▲
(中水利用) (屋上緑化)
▲
□
△
○
■
(風力発電) (中水利用 )
(屋上緑化、
ビオトープ)
ヒヤリン グ結果 の一覧
増林小学校
東葛西小学校
南池袋小学校
見えない
見えない
見えない
立ち入り禁止
なし
売電している
なし
立ち入り禁止
あり
夜間照明に使用
なし
ある程度意識し
意識していない
ている
未活用
未活用
立ち入り禁止
あり
売電しない
あり
ある程度意識して
いる
未活用
八幡山小学校
設置なし
見えない
設置なし
設置なし
設置なし
設置なし
設置なし
立ち入り禁止
口頭説明
意識していない
夏場のみ使用
未活用
見えない
見えない
見えない
室内からロック
されている
トイレ洗浄
なし
意識していない
未活用
室内からロックさ
れている
トイレ洗浄
なし
意識していない
未活用
室内からロックさ
れている
トイレ、校庭散水
なし
意識していない
未活用
見えない
見える
一部見える
立ち入り禁止
なし
自由に入れない
なし
意識していない
意識している
未活用
少し活かしている
立ち入り禁止
口頭説明
ある程度意識して
いる
未活用
見える
設置なし
設置なし
アクセス自由
あり
意識している
活かしている
設置なし
見えない
設置なし
設置なし
環境教育に活かす状況
28
立ち入り禁止
あり
意識していない
故障中
未活用
設置なし
①
太陽光発 電装 置
太陽光装 置が設 置して ある 学校は 増林小、東葛西小 、
南池袋 小 三校 であ る 。三 校 とも 、校 庭 や教 室 から 太陽 光
発電装 置 は見 えな い 。増 林 小で はバ ル コニ ー から 装置 の
一部を 望 める が、 バ ルコ ニ ーか ら眺 め るこ と は危 険な の
で、児 童 の安 全面 か ら基 本 的に はバ ル コニ ー には 出な い
ように 指 導し てい る との 事 であ る。 つ まり 、 三校 とも 実
質的には 太陽光 発電装 置自体を 日常生 活にお いて 見るこ
図 3-7
東葛西小
太陽光発電装置のパネル
とはない という 点で共 通し ている 。
しか し、 東 葛 西小 、 南 池袋 小 に おい て は 玄関 に 大 きな
表示 パネ ル が 設置 し て あり 、 発 電し て い る電 力 と 学校 が
消費して いる電 力など を表 示して いる( 図 3-7)。この表
示パ ネル の 設 置に よ り 、児 童 が 太陽 光 発 電施 設 の 存在 に
対してあ る程度 意識す る可 能性が あると 言え るだろ う。
増林 小で は 大 きな 表 示 パネ ル を 設置 し て いる わ け では
ない が、 玄 関 の一 角 に 太陽 光 発 電を 紹 介 して い る モニ タ
ーが設置 してあ る。と ころ がこの モニタ ーは 目立た ない
図 3-8 増林小
太陽光発電装置のモニター
場所に 設 置し てあ る ため 、 児童 から の 注目 度 も低 いと 考
えられる (図 3-8)。
アクセ ス に関 して は 、ソ ー ラー 装置 が 屋上 に 設置 して
あり、児童が屋上に 上るこ とが危 険な ため、“アクセス 禁
止 ”という 状 態で ある 。 東葛 西 小は 更に 、 屋上 ま での 階
段にロー プを張り『立ち入り禁 止』としている(図 3-9)。
ただし、 児童や 外来客 が施 設を見 学した い旨 を学校 に
図 3-9
東葛西小
屋上までの階段
申し込め ば指導 教員に 従っ て屋上 までア クセ スする こと
が可能だ という 。
発電状況 に関し ては、 増林 小では 週末や 夏休 み、冬 休みで 貯ま った電 力を東 京電 力に売
電してい る。校長 の話 による と、増 林小は 昨年 13200 円分の電 気を東 京電力 に売 電した 実
績がある 。しかし なが ら、昨年 の年 間電気 費用 227 万円に比 べたら ソーラ ー発 電の電 力 は
遥かに足 りない ことが わか った。 一方、 東葛 西小は 売電せ ずに 、貯ま った電 気を 学校周 辺
29
の夜間照 明に使 用して いる 。南池 袋小も 休日 に発電 した電 力を 貯まっ て平日 の学 校用電 力
として使 用し、 売電は 行っ ていな いとい う。 太陽光 発電装 置の 売電デ ータや 施設 に関す る
情報に関 しては 、三校 とも 児童に 対して 積極 的な公 表を行 って いない 。ただ し、 南池袋 小
では出版 された 学校要 覧パ ンフレ ットに 太陽 光発電 装置を 学校 施設と して簡 単に 紹介し て
いる。し かし、 詳しい 発電 データ や日常 のメ ンテナ ンスな どを 区で管 理して いる ため、 学
校の方で は詳し いデー タを 把握し ていな いと いう現 状体制 の問 題点も 存在し てい る。
施設を活 かした 授業に 関し ては、 三校と も特 に行わ れてい ない 。よっ て施設 の存 在につ
いて、児 童自身 の意識 の欠 除が三 校とも 指摘 されて いる。
このよう に、太 陽光発 電装 置は児 童に対 し見 えない 、自由 にア クセス できな い、 施設に
関する情 報も積 極的に 公開 してい ない、 施設 を活か した授 業を 実施し ていな いな どの現 状
から、装 置の存 在に関 する 意識の 欠除が 考え られる 。した がっ て、太 陽光発 電装 置は環 境
教育に有 効に活 用され てい ないと いえる だろ う。
②
太陽熱利 用装 置
太陽 熱利 用 装 置を 設 置 して あ る 学校 は 八 幡山 小
学校 であ る 。 太陽 熱 利 用装 置 は 水道 水 を 屋上 に 流
し太 陽熱 を 用 いて 温 め 、温 水 を 給食 室 な どに 利 用
して いる 。 装 置は 屋 上 に設 置 し てあ る た め、 校 庭
や教 室か ら 装 置を 見 る こと が で きな い 。 屋上 へ の
階段 も完 全 に 施錠 さ れ 、児 童 は 日常 生 活 にお い て
装置に直 接的に 接触す るこ とはで きない 。し かし
図 3-10
八幡山小
太陽熱利用装置
太陽光発 電装置 と同じ よう に、見 学した い場 合は
申し込め ば屋上 に上る こと が可能 である 。実 際には 児童や 周辺 住民が 施設を 見学 しに来 る
ことはほ とんど ないと いう 状況で ある。 エコ スクー ルのモ デル として 区や他 の小 学校等 か
らの来客 に施設 を見せ るこ とがあ るが、 その 頻度も 低い。 また 、冬に 気温が 低い ため、 太
陽熱利用 が難し く、装 置を 完全に 止め、 夏場 だけ使 用して いる ようで ある。 また 、施設 を
活かした 授業は 特に行 って いない が、新 入生 に対し ての学 校施 設紹介 で太陽 熱利 用装置 を
口頭で説 明でし ている 。こ のよう な現状 から 、児童 は施設 の存 在に対 してあ る程 度認知 し
ているが 、意識 関心は 希薄 である と考えら れる。 したが って 、施設 を設置 しな がらも それ
を環境教 育に活 用して いな いとい う現状 がわ かった 。
30
③
中水利用 装置
中水 再 利 用 装 置 が 設 置 し て あ る 学 校 は 東 葛 西 小、
南池袋小 、八幡 山小の 三校 である 。
中水再 利 用装 置は 地 下に 設 置し てあ り 、そ れ をコ
ントロ ー ルす る部 屋 やモ ニ ター など は 常に 施 錠さ れ
ている状 態であ る。
東葛西 小 と南 池袋 小 は再 利 用し た中 水 をト イ レの
洗浄に使 い、八 幡山小 では さらに 校庭散 水に 使って
図 3-11
八幡山小
中水利用装置
いる。ヒ ヤリン グの結 果、 三校と も中水 装置 を児童
が意識す るとは 考えら れな いと言 う認識 で共 通して いた。 また 、装置 に関す るデ ータも 区
で管理し 、維持 管理も 区で 行うた め、学 校は 装置に 対して 特に 関与せ ず、デ ータ も把握 し
ていない 事がわ かった 。こ れまで の施設 と同 様に、 中水に 関す る説明 や授業 も実 践され て
いない。 結果と して児 童が 装置に 対する 意識 や印象 は希薄 であ ると考 えられ る。 したが っ
て、三校 とも中 水利用 装置 を環境 教育に 活か してい ないと いえ る。
④
屋上緑化
屋上緑化 が設置 してあ る学 校は東 葛西小 、南 池袋小 、八幡 山小 の三校 である 。
東葛西 小 はセ ダム を 主と し た薄 型緑 化 であ り 、人 が入 ら ない よ うに 柵に 囲 まれ て いる。
また、太 陽光発 電装置 と同 じよう に、屋 上へ 立ち入 り禁止 のた め、児 童の屋 上緑 化を生 か
した活動 はほと んどな いと 考えら れる。
南池袋小 は屋上 ガーデ ンを 設置し てある 。面 積が広 く、植 物の 種類も 豊富で ある 。さら
にベンチ なども 設置し てあ り、児 童が楽 しめ るよう にして いる 。東側 の屋上 緑化 はフェ ン
スがない ためア クセス が禁 止され ている が、 植物の 観察や 環境 教育な どに使 って いる。 た
だし、屋 上に入 るのは 危険 なため 、児童 は決 まった 時間で 教員 の指導 のもと でガ ーデン に
入るきま りにな ってい る。 また、 学校で 出版 された 学校要 覧パ ンフレ ットに も屋 上緑化 に
ついて簡 単では あるが 、説 明して あり、 外来 客も見 学可能 であ る。ま た、児 童が 屋上緑 化
の風景を 楽しめ るよう に教 室や廊 下 、図書館 など複 数のと ころ にガラ スドア を設 置し、 屋
上緑化を 各角度 から見 える ように 工夫し てい る。つ まり南 池袋 小は屋 上緑化 を日 常生活 に
取り入れ ること で環境 教育 の場と して活 かし ている といえ る。
31
八幡小は 、廊下 から屋 上緑 化の一 部が見 える 。それ に加え て、 新入生 に対し 学校 施設と
して屋上 緑化を 口頭で 説明 をして いる。 省管 理型の 屋上緑 化で 、設置 してか ら一 度も水 遣
りを行っ たこと がなく 、雨 水で自 生して いる という 。児童 や学 校職員 による 水や りなど の
管理が行 われて いない ため、児童は屋上緑 化の 存在に ついて 認知 してい るが、関心は低く 、
環境教育 の場と して役 割を 果たし ていな いと 考えら れる。
図 3-12
東葛西小
屋上緑化
4
図 3-1
3-14
八幡山 小
屋上緑化
⑤
図 3-13
南池袋 小
屋上緑化
ビオトー プ
ビオトー プを設 置して ある 学校は 南池袋 小で ある。 校外か らも 見える ビオト ープ は池と
木製の橋 で構成 され、 さら に周り に木や 草が 密生し ている 。学 校で出 版され た要 覧パン フ
レットに もビオ トープ の写 真と簡 単な説 明を 載せて いる。 ビオ トープ は校庭 に設 置して あ
るため児 童が自 由にア クセ スでき る。さ ら
にビオと ープを 教材と して 自然観 察や飼 育な ど多様 な環境 教育 が行わ れてい る。 南池袋 小
のビオト ープは 環境教 育の 場とし て有効 に活 用して いると 言え る。
32
図 3-15
⑥
南池袋小
ビオトープ
図 3-16
南池袋小
風力発電装置
風力発電 装置
風力発電 装置も 設置し てあ る学校 は南池 袋小 である 。装置 が小 さく、 屋上か らで ないと
見る事が できな い。ま た、 柵に囲 まれ、 近づ いて観 察する 事も 難しい 状態で ある 。南池 袋
小の学校 要覧パ ンフレ ット には風 力発電 装置 を活用 して環 境教 育を行 ってい ると 書いて あ
るが、実 際に装 置を活 かし た授業 は行わ れて いない 。さら に、 以前故 障した 際に 修理を 怠
ったため 、現在 は稼動 して いない という 。風 力発電 装置に 関す るデー タは他 のエ コ施設 同
様、区で 把握し ている ため 学校は 関知し てい ない。 また発 電し た電力 はかな り少 なく、 省
エネルギ ーにほ とんど 影響 を与え て いない状 態にあ る。し たが って、 南池袋 小の 風力発 電
装置は環 境教育 に有効 に活 用され ていな いと 考えら れる。
3-2- 2
その他の 認定 制度
3-2- 2- 1
学校版環 境I SO
ISO(国際標 準化機 構:International Organization for Standardization)の環境監 査
は、国際 社会に 急速に 浸透 し、広 汎的に 使用 されて きてい る。 日本で も ISO14001の認証取
得件数が、約17,000 件に達し ている( 2005年9月まで)(石井 ,「地方自 治体と 学校に おけ る
環境監査 の導入」)。認証を取得 した組 織は社 会の 様々な 分野に おり 、地方 自治体 にお ける
ISO14001の認証取 得は都 道府県、市町村、自治体部局の 合計で、約500件にのぼ っている(石
井,同研究)。学校等 教育関 係の組 織に おいて も、大 学、 高校、 専門学 校な どを中 心に、
ISO14001の認証取 得は約 100件に達し ている 。地方 自治 体と学 校にお ける 環境監 査の導 入
の主要な 問題領 域とし て、
(1)地方自治 体や学 校にお ける ISO14001の認証取 得、対 応
33
(2)地方自治 体にお ける学 校版 ISO、企業版 ISO、家庭版 ISOの導入
(3)学校にお ける学 校版 ISOの導入
(4)地方自治 体や学 校にお ける 自己宣 言への 対応
などがあ る。「学校 版環 境 ISO」とは、ISO 14001 (環境マネ ジメン トシス テム の国際 規格 )
に基づき 、各学校が 学校 環境に ついて の宣 言し、そして、宣言項目 に従っ て児童・教員が 一
体にな って取り 組むも のであ る。更に、その実績を評 価し、不 十分な ところ を見 直しな が ら
環境を改 善し続 けてい くた めのプ ログラ ムで ある。 全校をあ げて学 校版環 境 ISO に取り組む
ことで、 環境に やさし い学 校づく り が期待さ れる 。 幼少期 から環境 につい て考え る機 会と
実践を通 して環 境意識 を高 める 事が ねらい である 。
各学校で はこれ まで の環境教 育を児 童及び 地域 の環境 実態に 合わ せて宣 言項目 を設 定
し、節電、節水の ほか 、ゴミの分 別や 再利用 、生ゴミ の減量 化や堆 肥化 など、日常 的な 取組み
へと広が り、深まってい くよう にする 。近年に おいて、環境教育を実 施し て行動 の意欲 を 高
めたり、児童 生徒が 中心 となっ て取り 組む 学校も 多くみ られ るよう になっ てき た。
表 3-4
仕組み
学校版環 境 ISO の組系図
各学校が環境問題に取り組むことを宣言し、それを記録、見直し
ながら、次の行動に活かしていく
学校版環境ISO 仕組み図
学校内での役割と責任を分担する
例:
・校長先生は責任者(他の先生や子どもが宣言どおり取り組んで
いるかのチェックなど)
役割分担
・他の先生は実践(先生はパソコンの電源をこまめに切る、紙は
両面を使うなど)
・子どもたちも実践(歯磨き中の水は垂れ流しをしない、環境に
ついて勉強するなど)
必要に応じ、記録に基づいて、今までの行動を振り返り、取り組
見直し
み状況を確認する。
各学校で2~3ヶ月間、宣言に基づいて行動・記録・見直しを
審 査
行ったあと、認定のための審査を町が行う。
審査に合格した学校は、立山町教育長が認定します。認定の有効
認 定
期間は、3年間です。認定後は1年に1回、定期審査を行う。
(出 典:立山町 住民環境課環境地域安全 係 ホームページ)
34
3-2- 2- 2
Kids’ ISO
現在、多 くの環 境問題 は我 々の生 活と密 接に 関連し ている こと から、 次世代 を担 う児童
を環境に 配慮し て積極 的な 行動を 取るこ との できる 「エコ 市民 」に成 長させ る事 が重要 で
ある。日本では 2006年から、家庭における CO2 削減の取 り組み を一層 進め るとと もに、
「150
万人エコ 市民づ くり」 の実 現を図 るため 、児 童が成 長に応 じて 環境に 配慮し た実 践活動 を
行い、継続的にステ ップア ップ してい く環境 教育 プログ ラムで ある「 Kids’ISO 」を導入 し
た。
Kids’ ISOと は、ArTech(国際芸術 技術協 力機構)が開発した 児童向け の環境教 育支援 プ
ログラム で ある。 ISO14001規格をも とに「 省エネ ・リ サイク ル」を 中心 として 環境保全 活
動を行う ための 管理シ ステ ムで ある 。 児童 が中心と なり、 電気使 用量 や水使 用量な どを チ
ェックし た上で 使用量 を削減 する ための作 戦を考 え る。そして 家族全 員で話 し合 い、作 戦
を実行し てい く 。家族全 員で取 組 む形にな ってい るが 、計画を 立て実 行に移 すリ ーダー は
児童であ る 。Kids’ ISOは児童が 本来持っ ている 環境に 対す る潜在 的な感 性を 引き出 し、科
学的な問 題解決 能力を つけ 、環境をテ ーマに した 児童向け の教育プ ログラ ム である 。環境
問題に取 り組む ための 一つ の方法 として
①児童 の環境意 識を高 め る
②日常生活 環境を 良く する 「科学的 な方法 」を体 得
③ 地域(中級編) や 国際的(上級編 ) に、環境とい うテ ーマに ついて 児童 同士がネ ット ワ
ークを形 成して 環境改 善活 動を始 めて いく
という プログラ ムで ある 。 児童 の居場所 にもな り、さ らに 国際理 解のき っか けとな る 。最
終的には 児童 が 「 自 分 達 の 行 動 で 環 境 が 良 く な る 」 と い う 確 信 が 得 ら れ 、 生きる力 に
なる 。
Kids’ ISO プログラ ムシス テム は次の図 で表し ている 。
35
図3-17
Kids’ ISOプログラムシステム (出典:「Kids’ISO
Program」ホームページ )
Kids’ISOは 10才 以上の児 童が参 加可能 な 内容で ある 。小学校 高学年 から高 等学 校まで
取り組ん でい くことが できる 。学校で は総合 学習、 教科 (理科 、社会 科、 家庭科 、国語 な
ど)授業 、また は夏休 みの 課題な どとの 関連 をつけ 、授業 で取 り上げ 、 児童 の家庭で 実施
する 。
児童は 家庭の環 境に取 り組む 入門 編(2 週間・ ワー クブッ ク)か ら開 始し 、そして、 初
級編(2ヶ 月間 ・ワー クブッ ク)、 地域の 環境問 題を 中級編 (数ヶ 月・ Web)で取り組 み 、
最後に海 外と連 携して 環境 問題に 取り組 む上 級編( 1年以 上・ Web)へ と進む 。
児童 の実施し た結果 に対し 、
▽ 入門編: 提出し た 児童 にマネジ メント 評価表 、デ ータ評 価表
▽ 初級編: よく出 来た 児童 には初級 国際認 定証
▽ 中級編: よく出 来た 児童 には中級 国際認 定証
▽ 上級編: よく出 来た 児童 には上級 国際認 定証
を発行し 、国際 機関で 授与 式を行 う。 Kids’ ISOを 他の環境 教育プ ログラ ムと の組み 合わ
せること により、相乗効果が 高い ことを 示して い る 。そのほか に、国連機関(国連大学 UNU、
国連環境 計画 UNEP)や国際標準化 機構 ISOなどの国 際機関、文部科学省 など 政府機 関、東京
36
都など自 治体、 企業他 、多 くの機 関が Kids’ ISOプログラ ムをサ ポート して いる。
藤田らの 調査に よると 、 Kids’ ISO を契機と して、 80%以上の 児童が 夏休み 中、 電気、
水道、ガ スの使 用量の 削減 、ごみ の減量 ・資 源化に 取り組 んだ 。この 児童た ちは 、取り 組
みの終了 時や評 価書の 返却 時に、 充実感 や満 足感を 得てい たと いう (図 3-18) 。また、 児
童の取り 組みを 契機と して、90%以上の 家庭で、家族も一緒 に削減 に取 り組む ように なり 、
家庭での 取り組 みの輪 を広 げる手 段とし ても 有効で あると いえ る (図 3-19)。更に、 夏休
みから三 ヶ月経 過した 時点 でも、 70%以上の 児童が 、節電 や節 水など 何らか の取 り組み を
継続し、児童が環境に 配慮し た生 活習慣 を身に 付け る上で Kids’ISO は有効な 手段で ある 。
保護者に 関して も、 Kids’ ISO の取り組 みを契 機とし て 80%の児童 で考え 方や行 動に 何ら
かの変化 が見ら れ、家 族に も同様 の傾向 が見 られた と評価 して いた。 これら の点 を踏ま え
て、 90%の保護 者は Kids’ ISO の取り組 みを「 有効」 と考 えてい た (図 3-20) 。(『「 こ
どもエコ チャレ ンジ 21 事業」で 初取り 組み Kids’ISO( 入門編 )の効 果』 ,環境局地 球
環境課 ,2006年3月)
図 3-18
取り組 み終了した時の感想
図 3-19
図 3-20 保護者に よる Kids’ ISO 入門
編の有効性の評価
家庭での児童の取り組み方法
図3-21 国際認定書授与式の様子
月24日、国連大学
写真 :「アーテク」 ホームページ
37
2004年1
東京都で は、2004年度に 10校で約 670人が Kids’ISO14000(入門編)に取り組 んだ。 2005
年になる と がKids’ISO14000(入門編)に取り組 んだ児童 数は 110校 の約8,000人まで増え 、
2006年に 113 校の小学 校 の約8,000人の児童 が 参加した。(東京都環 境局総 務部企 画調 整課
ホームペ ージに より)
3-2- 3
中国小学 校に おけ る環 境 教育 認定 制度 ―― グリーン スク ール
3-2- 3- 1
グリーン スク ール 経 緯
中国にお ける環 境教育 はこ れまで 30 年かけて 行われ てきた。環境知識を 受験勉 強と し
て学生に 注ぎ込 むとい う教 育形式 から、 だん だん知 識と興 味を 繋ぎ、 児童に 環境 問題を 意
識させる ように 工夫す るよ うにな ってき た。 そして 、この よう な背景 を踏ま え、 グリー ン
スクール プロジ ェクト も話 題にな ってき た。
ところで ,「エ コスク ール 」はす でにそ れ以 前から 始まっ てい た。環 境教育 の先 進地域
と言われ るヨー ロッパ では 1994 年から「 ヨーロ ッパ環 境教 育財団 」( Foundation for
Environmental Education in Europe;FEEE)によって「エコ・スクール プログ ラム」 (EcoSchools Programme)が作られ た。2001 年になっ てこの プログ ラム が 21 カ国の約 6000 弱の
学校にま で発展 した。 エコ スクー ルは定 期的 に学校 で会議 を行 い、関 連の書 籍を 出版し、
更にウェ ブサイ トも作 り、 各エコ スクー ルの 間で教 育経験 を交 流しな がらヨ ーロ ッパ各 国
の環境教 育を推 進して きた 。
この影響 を受け 、「エ コス クール 」とい う概 念はオ ースト ラリ ア、イ ンド、 タイ 、南ア
フリカ、 中国香 港と中 国台 湾にま で流行 り、 アジア でもエ コス クール プロジ ェク トを企 画
し始めた 。
1996 年中国国 家環境 保護局(日本におけ る環境 省相当)と中国教育委 員会 が連携 して「全
国におけ る環境 宣伝教 育行 動綱要 ( 1996~2010 年)」( 以降「 綱要」 とす る)を 公布し、
初めて「 グリー ンスク ール 」とい う概念 を打 ち出し た。「 綱要 」では 外国に ける エコス ク
ールのコ ンセプ トを参 考し 、環境 教育の 経験 を手本 にする 上で 、中国 の国情 にあ った環 境
教育を発 展して いくと 計画 した。 また、 「グ リーン スクー ル」 の概念 を「基 礎教 育理念 を
確保した 上で、 持続可 能な 発展の 思想を 持ち 、環境 を考慮 した 学校施 設管理 や資 源活用 に
工夫する 。また に 、学校管 理及び 日常生 活に おいて 教師と 児童 の環境 意識を 養成 してい く
38
学校」と 定義し た。更 に、 「環境 意識を 高め ること をめぐ って ①
授業に環 境意識 を高め
るよう工 夫し、 ②環境を考 慮した 学校づ くり に努め 、 ③ 日常生活 におい て環境 にや さしい
行動をと るよう に児童 に注 意し、 ④校庭環境 を整頓 する。 」と 規定し た。
「綱要」 では 2000 年までに 全国各 省にお いて グリー ンスク ール スクー ルプロ ジェ クトを
徐々に展 開する と計画 した 。それ を受け 、各 地の教 育委員 会と 環境保 護局が 連携 し、地 域
の小学校 、中学 校にエ コス クール プロジ ェク トを企 画し始 めた 。
2000 年 11 月に国家 環境保 護局は 「グ リーン スクー ル指 南」を 公開し 、 2001 年 3 月に、
国家環境 保護局 と国家 教育 委員会 は「エ コス クール プロジ ェク トに積 極的に 参加 した学 校
に対する 表彰通 知」を 公布 し、当 時の 105 校のグリ ーンス クール を表 彰した 。その 経験 を
踏まえ 2003 年 3 月に改め て「グ リーン スク ール指 南・暫 定版 」を出 版した 。「 グリー ン
スクール 指南・ 暫定版 」で はグリ ーンス クー ルの申 請手続 き、 評価基 準、管 理指 南など を
公布し、 体系化 した認 定プ ロセス が初め て形 成され たと考 えら れる。
その後も グリー ンスク ール プロジ ェクト が順 調に展 開され 、小 学校、 中学校 だけ ではな
く、幼稚園、大学にも及 んだ。 2004 年 9 月まで全 国で 1.7 万校がグ リーン スクー ルと し て
認定され 、 2006 年まで 2.5 万校が 認定され た。
更に、 2 年ごとに 1 回グリー ンスク ールの 先進 学校を 表彰す る。 更に国 際会議 も行 い、
積極的に 外国の 経験を 勉強 し、グ リーン スク ールプ ロジェ クト を改善 し、小 学校 学長と 教
師を対象 とした 生涯教 育も 定期的 に行っ てき た。児 童を対 象と しても 、環境 教育 に関す る
作文コン テスト やシン ポジ ューム を頻繁 的に 行い、 外国の 児童 との交 流も強 めた 。
グリー ン スク ール プ ロジ ェ クト も問 題 点が あ る。 それ は 各地 に おけ る小 学 校教 師 は環
境問題に 関する 知識不 足と いうこ とであ る。 現在、 各地域 の環 境保護 部門で は教 師を対 象
とした生 涯教育 プログ ラム を行い 、年間 二万 人の教 師が講 義を 受けて いるが 、受 講待ち の
教師の数 が非常 に多く、需要に対し て供給 が追 いつい ていな い現 状が挙 げられ る。そして 、
各地域の 環境教 育に関 する 交流も まだ十 分行 ってお らず、 他地 域の経 験を参 考に するこ と
ができな い。ま た、環 境レ ベルの 高い地 域に おける 学校は 、汚 染意識 が比較 的低 く、環 境
教育も十 分重視 されて いな い。
グリーン スクー ル認定 制度 は教師 と児童 の環 境意識 を高め るこ とを促 し、ま た、 学校環
境も改善 され、 さらに 児童 を通じ て家族 にも 環境問 題に関 する 情報を 伝え、 環境 意識を 高
めたとい われる 。また 、家 庭を通 じ、社 会全 体的な 環境保 全の ブーム を巻き 起こ すこと も
期待でき るとい う。加 えて 、環境 保全運 動の モデル 都市や 、環 境の良 い都市 など として 評
39
価される にも、 その都 市に おける グリー スク ールの 数も重 要な 条件と なりつ つあ る。グ リ
ーンスク ールプ ロジェ クト を地方 の行政 制度 などに 取り組 まれ る都市 もある とい う。
中国にお ける小 学校、中学校が合 わせて 約 60 万校ある。そのうち、グリーン スクー ル と
して認定 されて いた学 校は 2.5 万校(4 %)し かない 。ま た、今 までグ リー ンスク ールは
幼稚園、 小学校 、中学 校、 専門学 校、師 範学 校を対 象に行 われ てきた が、今 後、 大学に 対
しても展 開する 予定で ある 。中国 環境保 護局 グリー ンスク ール 課担当 の曾さ んよ ると、
2008 年までグ リーン スクー ルを 7 万校、全国小学校、中学校の 11%まで増 やす予 定であ る
という。
3-2- 3- 2
グリーン スク ール の内 容 と意 義
1996 年には、 中国が 「科教 興国」(科学及び教 育によ る興 国)と 「持続 可能 な発展 」と
いう戦略 を打ち 出した。 10 年ほどの 間、政府は環境 保全を 重要 視し、この戦略 を実 施し て
いた。そ の反映 として 、一 連の環 境保全 法律 、法規 、政策 を作 り上げ 、積極 的に 環境保 全
と生態系 保全に 力をい れて いる。 95 年から「画期的緑 色プロ ジェク ト計 画」という環境 汚
染の予防 的プ ロジェク トを実 施した 。ま た、生 態系保 全に おける 、天然 林の 保全プ ロジェ
クトでは、「退耕還林・ 還草」(耕地を林地 ・草地 に帰 す)を 実施し た。 その結 果とし て、
生態環境 の悪化 が基本 的に 抑制さ れつつ ある 。しか し、中 国の 生態環 境が依 然と して脆 弱
な状況に あり、 環境保 全に おいて は楽観 視す る事は できな いだ ろう。
このよう な流れ からグ リー ンスク ールプ ログ ラムは 実施さ れた 。 グリーン スクー ルプ
ログラム は水不 足や砂 漠化 、環境 汚染な どの 危機に さらさ れて いる中 国の国 情に あった 環
境教育方 法とい える。 学校 は児童にと って 学習 のための 豊かな資 源であ り、身 近な 環境で
もある。校 庭改善 の環境 デザ インと 改造を 行う ことに より 児童の環 境意識 を育成 し、 継続
可能な発 展につ いて理 解を 深める ことが でき る。ま た今後 の環 境を大 事にす る姿 勢を育 成
すること に対し ても有 効で あると 考えら れる 。 環境学習 は、知 識や技 術を 習得す ると言 う
よりは、 環境問題 に対す る 考え方の プロセ スを身 につ けるこ とに意 味が ある。 教師 は 児童
にただ 知識を 詰込む 方 法ではなく 、 児童の 好奇心を 引き出 し、実 際の 経験を 支援す るよ う
な役割を しなく てはい けな い。 環境保護 局グリ ーンス クー ル課担 当の曾さ んは「 児童は 若
い頃から自 分の 身近な 環境から 学びた い、参 加し たいと いう欲 求を 持って いる。 児童 をと
りまく 学校での 環境 学習は、 児童の環 境問題 に対す る意 識を高 めるこ とに 効果的 である」
と述べた 。
40
グリーン スクー ルの基 本理 念とし て、以 下の ように まとめ るこ とがで きる:
①
物事の普 遍的な 関連性 及び 相互依 存性を 世界 的な視 点から 認識
②
生物多様 性と文 化多様 性へ の関心 の育成
③
持続可能 な発展 の意義 を理 解
④
自主的な 取り組 み及び 環境 責任感 の向上
このよう に、グ リーン スク ールは 児童の 意識 と価値 観を自 然へ の関心 と生命 への 尊重に
導き、他 人を大 事にし 、積 極・平 等・公 正的 に友好 関係を 築く ように 指導す る。 さらに、
環境に関 心をも ち、積 極的 に環境 保全に 関す る活動 へ参加 し、 責任感 のある 国民 になる よ
うに努め ている 。
ここで指 導の内 容につ いて 簡単に 触れて おき たい。 まず、 児童 の環境 意識・ 関心 を育成
すること では、 児童は 周囲 環境の 状況及 び変 化を観 察、調 査し 、家庭 ・学校 ・居 住地域 の
環境問題 を認識 する。 ここ では、 多様な 手段とル ートを 利用し 、主 動的に 環境に 関す る情
報を集積 する能 力も育 てら れる。次 に、身 近な環 境問 題解決 におけ る設 計・実 施・評 価・
解決法案 を考え る。そ して 、自己 観点を 表明 し、回 りの人 との 交流し 合い、 地域 及び世 界
的な環境 問題へ の批判 的思 考及び その解 決策 を持つ ように する 。
一方、環 境問題 の解決 に必 要とさ れる知 識能 力の育 成も重 要視 されて いる。 教師 は人類
の環境に 対する 依存性 及び 、個人 生活の 環境 への影 響につ いて 説明し 、環境 問題 への理 解
及び個人 ・家庭 の行動 がと 居住地 域にお ける 影響を 理解し ても らう。 そして 、理 科の授 業
を通じ、 自然環 境と生 態系 との構 造・機 能・ 進化過 程につ いて 理解し てもら い、 文科授 業
では経済 ・技術 ・社会 ・生 活・政 策・法 案と 環境と の総合 作用 などに ついて わか りやす く
紹介する 。さら に、日 常生 活にお いてそ れら の教育 効果を 対比 しなが ら対話 型教 育やク ラ
ス会、作 文コン テスト など を行っ て 議論する 。
このよう に、中 国にお ける グリー ンスク ール 認定制 度は日 本の エコス クール 認定 制度の
ようにハ ード- 施設を 重視 するの ではな く、 日常生 活での 教育 や啓発 的教育 、議 論式教 育
などのよ うにソ フト- 教育 プログ ラムを 採択 してい る。そ の理 由は主 として 以下 のよう で
ある。
①
資 金の不足
中国の小 学校で は太陽 パネ ルや風 力発電 など のエコ 施設を 設置 するほ どの資 金的 余裕は
無いこと に加え 、政府 から の補助 制度が ない ことが 挙げら れる 。更に 、製造 、設 置など に
関する技 術は日 本やド イツ に依頼 する傾 向が あり、 エコ施 設の コスト も高い 。従 って、 太
41
陽光発電 装置な どの施 設現 場とし た環境 教育 は現在 の中国 では 、まだ 実現し にく い教育 方
式である 。
②
受験教育 によ る教 師 の指 示の 重視
中国の小 学校教 育は受 験教 育であ る。中 国で は小学 校から 中学 校に進 学する 際に 中学校
の入学試 験を受 けなけ れば いけな い。教 師も 児童も 親もと にか く良い 中学校 に入 れるよ う
に受験勉 強をと ても重 視し ている 。その ため 、児童 は教師 から 教えら れたこ とを きちん と
信頼し、 聞き入 れてい る。 各科目 の知識 のみ ならず 、日常 生活 の生活 習慣の 養成 やマナ ー
において も、教 師の指 示を 拒否な く信頼 して 受け取 るのは 一般 的であ る。す なわ ち、教 師
の指示は 児童の 判断力 に大 きな影 響を与 えて いると 考えら れる 。した がって 児童 は担当 教
師が日常 生活に おいて 環境 問題に 関する説 明や、 環境に 配慮 した生 活習慣 に関 する呼 びか
けや指示 などに 対して 従順 に受け 止める 傾向 がある 。教師 の指 示を規 範とし て覚 え、正 誤
判断の基 準へと 変え、 積極 的に習 慣づけ て行 動して いく。 つま り、中 国にお ける 環境教 育
は、各教 科の内 容に浸 透す ると共 に、日 常生 活での 呼びか けも 重視し 、教師 の指 示を 重視
するとい う児童 の行動 傾向 を活か した環 境教 育も効 果的と いえ るだろ う。
③
身近な環 境問 題
中国では さま ざまな環 境問題 が発生 して おり、 特に水 不足 問題、 砂漠化 、汚 染など の環
境問題は 身近に 発生し てお り、児 童はそ れに 対して も体験 して いると いえる 。一 例を挙 げ
てみると、中国の東 北地方 は水資 源が 足りな く、水道水を 24 時間連続 供給が できな い地 区
も存在し ている 。更に 、春 になる と内モ ンゴ ル地区 からの 砂ぼ こり被 害が著 しく なる。 こ
れらの環 境問題 は児童 に対 し決し て想像 ので きない 事では ない 。この ような 経験 や記憶 を
持ってい る児童 に対し 、環 境教育 は児童 の共 感や危 機感を 呼び 起こす ことが 比較 的に容 易
であると 考えら れる。
中国は面 積が広 く、各 地の 自然条 件、経 済的 条件及 び文化 的背 景にお いては 顕著 に異な
り、学校 の社会 背景、 経済 力、施 設、師 資、 児童、 資源及 び地 域環境 条件等 面に おいて も
異なって いる。 それゆ えに 、学校 は自分 なり の条件 に立脚 し、 人的、 物的ま た財 的資源 な
どを有効 に利用 すると いっ た、各 地域の 特徴 を発揚 する環 境教 育とい える。 つま り、中 国
における グリー ンスク ール プログ ラムと は中 国の国 情を活 かし 、日常 生活と 関連 づける 事
で効果を あげて いる教 育方 式であ ると言 える 。
42
3-2- 3- 3
グリーン スク ール の認 定 方法
省級(日本の県 相当)グリーン スクー ルの命 名は 詳細な 評価を 基準 として 従う。市級(日
本の市相 当)の 命名は 省級 管理機 構の指 導を 受け、 省級グ リー ンスク ールの 標準 と基本 的
に一致す る。
グリーン スクー ルの認 証に 関して は主と して 以下の ような ステ ップで 行う。
①
学校はグ リーン スクー ル申 請を決 定し、 相応 の機構 を成立 させ る。
②
グリーン スクー ル計画 の制 定(宣 言)と 実施
③
検証と改 善
④
認証機構 に申請
そして、 申請の 際、必 要と される 条件は 以下 のよう である 。
①
環境教育 リー ダー グ ルー プ
学校で環 境教育 リーダ ーグ ループ を成立 し、 本校の 環境保 全監 督を任 命し、 仕事 の配分
を決め、 責任を 明確に する 。そし て、切 実な グリー ンスク ール の創立 計画を 作る 。環境 保
全の理 念 を反 映す る 環境 管 理措 置を 制 定し 、 実行 する 。 特に 、 汚染 の低 減 、ご み の削 減、
資源の節 約とリ サイク ル、 省エネ などに 努め 、且つ 効果を 出す 。
②
教員の生 涯教 育
環境教育 におけ る研究 が実 施され ており 、教 員が環 境教育 に関 する生 涯教育 を受 け、相
関的な研 修も行 う。
③
各教科に おけ る教 育 浸透
学校は各 教科に おいて 環境 教育の 浸透に 努め 、良好 的な効 果が 見られ る。
④
日常生活 にお ける 教 育浸 透
学校は児 童に環 境保全 的な 生活ス タイル を呼 びかけ 、教師 及び 生徒は 地域ま た個 人生活
の中で自 主的に 環境保 全的 行動を 行い、 積極 的に各 種の環 境保 全活動 に参加 して いる。 学
生は校内 で環境 保全チ ーム を作り 、学校 の環 境管理 に参加 して いる
⑤
学校環境
学校は「 グリー ン・エ コ的 な学校 」作り に努 力し、 教師及 び生 徒のた めに良 好的 な生活
環境を提 供して いる。
⑥
データ完 備
学校の環 境に関 するデ ータ と資料 を完備 させ、多様な形式 に分類 し、長期的に累積 する 。
43
グリーン スクー ルの申 請、 評価な どが当 地域 の主要 管理機 構が 行う。 申請に 対し 審査が
必要と さ れる 。審 査 グル ー プの メン バ ーは 環 境保 全に 関 する 部 門と 教育 部 門の 人 員ま た、
環境教育 と環境 保護の 専門 家とな ってい る。
「グリー ンスク ール申 請書」を審査したう え で
通過した 学校に 対し、 検査 方案に よって 現地 検査を 行い、 検査 対象校 に書面 意見 を提出 す
る検査 を 行う 。検 査 終了 後 二ヶ 月内 、 主管 機 構は 認証 結 果( 書 類) を申 請 校に 通 知す る。
また、グ リーン スクー ルを 認証す る際、 以下 のよう な項目 を重 視する :
①
客観性
グリーン スクー ルの認 証は、「国家グリ ーンス クー ル認証 基準」に 既定 された とデー タ 、
申請校の データ 及び現 地検 査を根 拠とし 、グ リーン スクー ルの 認証の 客観性 を保 証する 必
要がある 。
② 公開性、 公正 性
申請、審 査、検 査など の過 程を全 て公開 する 。学校 での現 地検 査終了 後、検 査グ ループ
が問題点 などを 書面で 明示 する必 要があ る。原記録のデー タ・資料を保 留する 必要が あり 、
認証は公 正的行 い、認 証結 果を学 校と学 校所 在の地 域で公 開す る。
③
ローカル 化
各地は「 国家グ リーン スク ール認 証基準 」に 従い、 各地域 の地 域特色 を特化 し、 地域の
条件(自 然環境 、経済 条件 、気候 など) に適 した認 証基準 を作 成する 。また 、認 証基準 に
満たす目 標へ向 かうほ かに も、地 域と連 携し た環境 保全活 動の 特色と 多様性 を作 り出す こ
とを推奨 する。
④
「激励」 重視
2 年ごと に 1 回グリ ーン スク ール の先 進学 校を 表彰 する 際、 学校 が環 境教 育で 取得 した
成果を十 分に認 め、こ れか らの更 なる進 展を 目指す ことを 激励 する。
44
第4章 日中両国 児童 の環 境 意識 比較
環境教育 の効果 として 児童 の環境 意識を 把握 するた め、日中両国 の小学 校六年 生あ る い
は中学校 一年生 に対し 選択 式アン ケート 調査 を実施 した。 日本 の学校 で 3 校、中国 の学校
で 1 校の回答 を得た ( 表 4-1)。
表 4-1
調査対象 校概要
学校
学級
経堂小学校出身
1年
緑ヶ丘
中学校 上北沢小学校出身 1年
東京都
(114人 ) 八幡山小学校出身 1年
世田谷区
八幡山小学校
6年
総和中学校
茨城県古河市
1年
実験小学校
中国 遼寧省 6年
地区
回答数
児童該当
51
非エコスクール出身生
37
非エコスクール出身生
26
エコスクール出身生
68
エコスクール在校生
188 郊外非エコスクール在校生
71
グリーンスクール在校生
以降の分 析では 、エコスクー ルに通 ってい る児童(八幡 山小学 校)は「 ecoh 校」で 表示
し、 エコスク ールに 卒業し 、別 の中学 校に進 学し た児童 (緑ヶ 丘中 学校に おける 八幡 山小
学校の出 身者)は「 ecoH 読み方は はちま んやま 校」で表す。また、上北沢 小学校 を「都 会
U 校読み方 はかみ きたざ わ」、経堂小学校を「都会 K 校」、古河市総和 中学校 は「郊外 S 校 」
と表示す る。
(1) 調査時間 :
2007 年 11 月~ 12 月
(2) 調査方法 :
アンケー ト用紙( A3 一枚、両面)を対象学校 に郵送し、対象学級 の 全員に配 り、後日 提
出しても らう形 式をとっ た。調 査は対 象校 の校長 先生に 依頼 し実施 、郵送 にて 返却し ても
らった。回収率は 緑丘 中学校 95.4%、八幡山 小学校 90.7%、総和中 学校は 89.5%、中国 実
験小学校 は 98.6%である 。
(3)調査対 象校 につ い て:
世田谷区 の八幡 山小学 校は 最も早く( 1996 年)からエコ スクー ルとし て整 備され た小 学
校であり 、 今年で整 備後 10 年が経過 した。 更に、 太陽 熱利用 装置、 中水 利用装 置と屋 上
緑化など のエコ 施設を 有し 、施設 数がエ コス クール の中で も多 い部類 に属す る 。従って、
八幡山 小学校 に 通った児 童の環 境意識 と非 エコス クール (同 じ学区 に位置 する 上北沢 小、
経堂小学 校)に 通った児 童の環 境意識 では差異 が 生じる と予測し、三校の進学先 の 緑 ヶ丘
45
中学校の 一年生 を対象に 調査を 行った 。それに加 え、八 幡山小 学校 の現六 年生に 対し ても
アンケー トを実 施した 。
また、都市部小学 校に通 う児 童と郊 外部小 学校 に通う 児童の 環境 意識に も差異 が存 在 す
ると予測 し、古 河市総 和中 学校一 年生に 対し てアン ケート を行 った。 総和中 学校 は 2007
年にエコ スクー ルとし て認 定され たが、 調査 当時は まだ改 築事 業を始 まって いな いため、
ここでは 非エコ スクー ルと して扱 う。
更に、日中両 国の児 童の環 境意 識を比 較する ため 、中国遼寧 省実 験小学 校にア ンケ ー ト
を行った 。実験 小学校 は 2004 年からグ リーン スクー ルと して認 定され た。
図 4-1 緑丘中学校、八幡山小学校位置図
図 4-2
総和中学校位置図
図 4-3
中国実験小学校位置図
(4)アンケ ート につ いて :
本アンケ ート調 査は「 体験 」 →「知識の 取得」 →「意識、 関心 、危機感 の発生」 →「行
動」とい う四つ のステ ップ で出題 した。 児童 は環境 教育を 受け (体験 )、は じめ て知識 と
して身に つ ける 。そして 勉強し た知識 より 判断を 行い、 自分 なりの 理解に 至 る (関心 、危
機感 )。更に 、児童 は自分 なり の理解 や考え にし たがっ て行動 を起 こす、 といっ たメ カニ
ズム の解明 を目的と した もので ある 。
「体験」:児童が 小学 校 で環 境教 育 を受 け た記 憶に つ いて 調 査 する 。小学 校 で行 って い
た環境教 育に対 し、児 童が どのよ うに思 って いるの か、ど のよ うな記 憶が残 って いたの か
を測る 。
「知識」:環境問 題につ いて児 童の 常識 を測る 。
「関心 、危機 感 」:この部 分で は 、児 童が 環 境問 題 に対 する 自 分の 判 断や 意識 、 自分 な
りの理解 を 測る 。更に、環境問題へ の興味 や関 心につ いて 把握する 。
「理解」というプロ セ
46
スは、受 け入れ た「常 識」 を自主 的な「 行動 」 に導くポイ ント になると 考えら れる
「行動」:児童が 日常生 活にお ける 環境保 全行動 状況 を把握 する 。
本アンケ ートで は、環 境問題 を「 エネル ギー」、「地球温 暖化」、「砂漠化」、「森林・ 緑 危
機」、「環境汚染 、リ サイ クル 」と 五つ の分 野( この 5つ の分 野は 、環 境省 が 2005 年に出
版された 「環境 白書」 に掲 載され た各環 境問 題分野 に基づ き、 児童向 き出題 の視 点から ま
とめたも のであ る)に 分け て出題 し、各 分野 の授業 体験、 知識 、関心 意識、 危機 度と行 動
について 調査を した。
4-1
日本児童 の環 境意 識
4-1- 1
体験の分 析
児童が エコ施設 に対す る記憶 と、 施設を 活かし た環 境教育 授業に 対す る記憶 につい て調
査した(図 4-4)。太陽熱利用 装置 と中水 利用装 置に 対し、ecoh 校の児童 の八割 が施設 の 存
在を認識 してい るのに 対し、ecoH 校では施 設に対 する記 憶が 5 割まで減 少して いる。屋 上
緑化に対 する記 憶は ecoh 校と ecoH 校はほぼ 同じで ある。 ヒヤ リング 調査で 、太 陽熱施 設
と中水利 用施設 が児童 の日 常生活 におい てア クセス できな いと 同時に 不可視 の状 態であ る
のに対し 、屋上 緑化は 校庭 や廊下 から可 視的 施設で あるこ とが わかっ た。つ まり 、児童 の
エコ施設 に対す る記憶 は施設の 可視度 やアク セス 容易度 などを はじ めとし た日常 生活 との
密接度に 影響を 受けて いる と考え られる 。
屋上緑化
また、施設を活か した環 境教 育につ いて 、
屋上緑化に関する授業
太陽 熱利 用 に 関す る 授 業の 記 憶 が最 も 多 い
中水利用設置
こと に対 し 、 中水 利 用 装置 と 屋 上緑 化 を 活
中水に関する授業
かした授 業が少 ないこ とが わかっ た。また 、
太陽熱利用施設
施設 の記 憶 度 と同 様 に 、エ コ ス クー ル を 離
太陽熱利用に関する授業
れる につ れ 、 授業 に 対 する 記 憶 も減 少 す る
0.0%
ecoH校
こと もわ か っ た。 こ れ は現 在 の 施設 的 環 境
教育 の効 果 期 間の 短 さ を示 唆 し てい る と 考
図 4-4
えられる 。
47
ecoh校
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
100.0%
エコ施設や環境教育授業に対する記憶
度(%)
児童がエコ施設と環境教育授業に対する記憶
4-1- 2
知識の分 析
各分野の 環境問 題につ いて 基本常 識程度 の正 誤判断 を出題 した 。
地球温暖 化に関 する正 答率 が最も 高く、砂漠化の正答 率は 低いこ とがわ かった(図 4-5)。
また、都 市部校 (エコ スク ール含 )の正 答率 は郊外 非エコ スク ールよ り高い こと がわか っ
た。また 、エコ スクー ルに 通って いる( 通っ た)児 童の平 均正 答率は 非エコ スク ールと ほ
ぼ同等 であ り、 エコ スク ール の優 位性 はほ とん どみ られ なか った 図 4-6。これ は単 純な 施
設の設置 では児 童の興 味、 関心に は影響 をほ とんど 与える こと ができ ないと いう ことが 考
90.0%
90.0%
80.0%
80.0%
率
ル
答
平
リ
均
サ
正
イ
漠
砂
染
汚
正
境
均
環
汚
染
ク
化
化
暖
温
ネ
エ
答
ク
率
ル
ecoh 校
平
リ
砂
サ
漠
イ
化
化
暖
温
球
地
エ
ネ
ル
ギ
ー
30.0%
30.0%
球
ecoH校
40.0%
ー
都会U校
40.0%
50.0%
地
都会K校
50.0%
60.0%
ギ
郊外S校
60.0%
70.0%
ル
70.0%
知識正答率(%)
知 識 正 答 率 ( %)
えられる 。
非エコスクール
環
境
エコスクール
5
図 44-5
学校別環境知識正答率
4-1- 3
6
図 44-6
学校種類別環境知識正答率
関心の分 析
児童の環 境問題 に対す る関 心を把 握する ため 、各分 野の環 境問 題につ いて「 興味 を持っ
ている」「友人と 話した い」「両親と話 した い」「先生にそ の知識 を更 に教え てもら いた い」
「それに 関する クラブ ・ボ ランテ ィアに 参加 したい 」など の多 肢選択 問題を 出題 した。 結
果として 、地球 温暖化 と環 境汚染 ・リサ イク ルに関 する関 心が 比較的 高く、 砂漠 化・エ ネ
ルギーに 関する 関心が 比較 的低い ことが わか った(図 4-7)。また、都市部校児 童の 環境 に
対する関 心は郊 外非エ コス クール 児童よ りや や高い ことが わか った。 さらに エコ スクー ル
に通って いる(通った)児童の関心 は非エ コスク ール 児童よ りやや 高い ことが わかった(図
4-8)。
35.0%
35.0%
30.0%
(%
)
R
学校別環境問題に対する関心状況
図 4-8
48
非エコスクール
平
均
積
環
極
度
・
3
林
境
森
化
漠
砂
温
暖
ネ
化
10.0%
エ
積
均
環
15.0%
エコスクール
平
図 4-7
20.0%
球
)
度
極
・
境
(%
R
3
林
森
砂
漠
化
化
暖
温
球
地
エ
ネ
ル
ギ
ー
10.0%
25.0%
地
15.0%
郊外S校
都会K校
都会U校
ecoH校
ecoh校
ー
20.0%
ル
ギ
25.0%
環境意識積極率
環境意識積極率
30.0%
学校種類別環境問題に対する関心状況
4-1- 4
危機感の 分析
児童の環 境危機 感を把 握す るため 、環境 問題 の各分 野で「 ~に ついて 危機に さら さ比率
を危機度 として 計算し た。図 4-9 でわかる ように 、地球 温暖化 に対す る危 機度は 比較的 高
いが、エ ネルギ ーに対 する 危機感 は低い こと が分か る。ま た、 都市部 校児童 は危 機感が 郊
外非エコ スクー ル児童 より やや高 いこと がわ かった。また、エコスクール に通っ ている(通
っていた )児童 と非エ コス クール の児童 にお ける危 機感の 差異 はほと んど見 られ なかっ た
(図 4-10)。
90.0%
90.0%
80.0%
80.0%
70.0%
70.0%
60.0%
図 4-9
森
染
汚
環
林
境
減
少
暖
化
温
化
漠
砂
エコスクール
学校別環境問題に対する危機感
4-1- 5
球
ecoh校
ネ
環
境
汚
染
地
球
温
暖
化
砂
漠
化
森
林
減
少
エ
ネ
ル
ギ
ー
ecoH校
30.0%
地
都会U校
30.0%
40.0%
ギ
ー
都会K校
40.0%
50.0%
エ
危機度(%)
50.0%
ル
郊外S校
危機度(%)
60.0%
図 4-10
非エコスクール
学校種類別環境問題に対する危機感
行動の分 析
児童が日 常生活 におい て実 行し得 る環境 配慮 行動を 挙げ、 児童 が実際 に起こ って いる行
動に チ ェ ック を 入 れ た 数 と 全て の 行 動 数 に お ける 比 率 を 行 動 率 とし て 計 算 し た 。 図 4-11
から見れ ば、地 球温暖 化、 省エネ 行動が 最も 実行さ れ、砂 漠化 や緑に 関する 行動 率が低 い
ことがわ かった 。これ は日 本にお ける砂 漠の 危機が 少なく 、且 つ緑で 囲まれ てい る豊か な
環境に恵 まれた ため、 児童 は砂漠 化や緑 に特 に危機 を感じ てい ない事 を原因 とし 、それ に
伴って行 動率も 減少し てい ること が考え られ る。ま た、都 市部 校児童 の環境 配慮 行動率 は
郊外非エ コスク ール児 童よ りやや 高いこと がわか った。 また 、エコ スクー ルに 通って いる
(通って いた)児童と非エ コスク ールの 行動 率の差 はほと んど 見られ なかった(図 4-12)。
55.0%
学校別児童の環境配慮行動率
図 4-12
49
率
R
均
平
染
汚
環
境
行
・
動
3
緑
森
化
漠
暖
温
球
地
図 4-11
林
エ
省
動
行
均
平
化
率
R
3
・
染
汚
境
ecoh校
環
化
漠
砂
ecoH校
地
球
温
暖
化
森
省
林
エ
緑
ネ
都心U校
ネ
都心K校
行動率(%)
郊外S校
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
行動率(%)
55.0%
50.0%
45.0%
40.0%
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
砂
50.0%
45.0%
40.0%
35.0%
エコスクール
非エコスクール
学校種類別児童の環境配慮行動率
4-1- 6
まとめ
エコ施設 に関し ては、施設の 存在に よって 児童 の環境 に対す る興 味が増 加する こと は 期
待できな いと考 えられ る。 これは 施設の 環境 教育へ の導入 方法 にも関 わって くる と考え ら
れるが、 施設の 位置や アク セス容 易度、 可視 度など の日常 生活 との密 接性に も影 響を受 け
ていると 思われ る。単 純に 施設を 導入し ただ けでは 、児童 の勉 強意欲 や努力 、知 識度に 対
し影響力 を持ち 得ない と推 測でき る。ま た、 このこ とは環 境教 育の効 果期間 -記 憶期間 に
も影響を 与えて いる。 つま り卒業 により 施設 から離 れるこ とに よって 関心が 低く なり、 施
設に関連 した環 境教育 に対 する記 憶 も徐々に 減少す る傾向 が表 れるの である 。
エコスク ールに 通って いる(通 ってい た)児童 の関心 が非エ コス クール 児童よ りや や 高
いが、危 機感や 環境に 配慮 した行 動率の 差は ほとん ど見ら れな かった 。した がっ てエコ 施
設は児童 の危機 感や行 動に 影響を 与えて いな いと考 えられ る。
また、都市部 校児 童の環 境に対 する 関心、危 機感、環 境配慮 行動 の行動 率が郊 外非 エ コ
スクール 児童よ りやや 高い ことが わかっ た。 この理 由とし て都 市部校 は日常 生活 におけ る
環境教育 に比較 的力を 入れ 、環境 問題の 現状 や将来 におけ る影 響に関 する情 報を 効果よ く
児童に教 えたこ とが考 えら れる。 また、 都市 部の公 共空間 (電 車や商 店街な ど) では環 境
問題に関 するマ スコミ・看板・ポスターなど が数多 く見受 けら れる。これらも児童 の意 識 、
危機感に 影響を 与えて いる と考え られる 。
4-2
中国児童 の環 境意 識
4-2- 1
環境意識 全般
90.0%
80.0%
70.0%
中国 児童 は 各 環境 問 題 分野 に お ける 「 知
識」、「体験 」、「関心 ・ 危 機 感」、「行動 」 に
ついて分 析をし た。図 4-13 から見る と、各
60.0%
エネルギー
50.0%
地球温暖化
40.0%
砂漠化
30.0%
森林緑
20.0%
環境汚染
リサイクル
10.0%
動
行
識
関
心
・
の影響が 少ない 傾向は 見ら れた。
意
験
体
識
0.0%
「知識」に差別が 出てき ても、「行動」ま で
知
分野 の環 境 問 題に 対 し 、授 業 の 「体 験 」 や
図 4-13
50
中国児童環境意識全般
4-2- 2
中国児童 の環 境配 慮行 動 意欲 及び 行動 率の 特 徴
中国 児 童 の環 境 配 慮 行 動 意 欲お よ び 行 動
エスカレーターより階段を利用している
率を 分 析 し 、 図 4- 14 に赤 色 で 表 示 し た 。
普段より厚着をしている
参考 とし て 、 日本 児 童 の行 動 意 欲と 行 動 率
身近な緑を大切にしている
温暖化の授業をしてもらいたい
を青、緑 色で表 示した 。
砂漠化の授業をしてもらいたい
日本 児童 は 「 エス カ レ ータ ー よ り階 段 を
環境汚染・リサイクル授業をしてもらいたい
利用 した い」、「暖房 の温 度 を 下げ る た めに
エネルギー分野専門家になりたい
自分で勉強し、知識を集めている
普段 より 厚 着 して も い い」、「ゴミを 分 別し
自分で勉強し、知識を集めている
てい る」 な ど 、個 人 で 実行 で き るよ う な 行
自分で勉強し、知識を集めている。
動に 関 し て は 、 行 動 意 識 も 行 動 率 も 高 い。
自分で勉強し、知識を集めている
温暖化:クラブ・環境活動に参加したい
また 環境 問 題 に関 す る 授業 を し ても ら い た
砂漠化:クラブ・環境活動に参加したい
いと いう 要 望 も比 較 的 高い 傾 向 にあ る 。 そ
森林・緑:クラブ・環境活動に参加したい
れに 対し 、 環 境問 題 に つい て 「 友人 や 親 と
他人にもごみを分別してもらいたい
地球温暖化について友達や両親と話をしたい
話し たい」「環境 活動 に 参 加し た い 」な ど、
両親や友達と話している
他の 人と 交 流 が必 要 と され る 行 動に 関 し て
両親や友達と話している
は、 行 動 意 識 も 行 動 率 も 低 い 傾 向 で あ る。
友達や両親と話している
両親や友達と話している
また 、エ コ ス クー ル は 非エ コ ス クー ル ( 郊
0.0%
エコスクール
外非 エコ ス ク ール も 含 む) よ り 各環 境 意 識
や行 動 率 に お い て や や 高 い 傾 向 が 見 ら れ
図 4-14
20.0%
非・エコスクール
40.0%
60.0%
80.0%
中国 グリーンスクール
中国児童の行動意欲及び行動率
た。 それに比 べ、 中国児童 は比較 的行動 全般 に分布 し、行 動意 欲も行 動率も 高い 傾向に あ
る。
日中児童 の環境 配慮行 動意 欲およ び行動 率の 差の理 由とし て考 えられ るのは 、日 本の 少
子化や核 家族化 の影響 を受けて 異世代間 の交流 不足 、親子の 間の会 話や交 流の 不足な どが
うかがえ る。近 代の社 会問 題とし て言わ れて いるコ ミュニ ケー ション 力の低 下は 児童の 行
動意欲に も影響 を与え てい ること も原因 の一 つとし て考え られ る。
それに対 し、中国 では一 人子政 策に より、親 は唯一 の子供 を非 常に大 切にし 、家庭 に よ
る対話式 教育の 効果が 大き いと考 えられ る。 そのほ かにも 、環 境破壊 を体験 した 親世代 の
資源節約 型ライ フスタ イル や、中 国社会 の経 済状況 なども 児童 の環境 配慮行 動に 影響を 与
えている と考え られる 。
51
100.0%
4-3
日中児童 の環 境意 識 比較 分析
4-3- 1
体験によ る分 類・ 分析
図 4-15 でわ か る よ う に 、 中 国 児 童 は エ ネ ル ギ ー に 関 す る 授 業 の 記 憶 が 明 ら か に 高 い。
また、砂 漠化授 業の記 憶も 日本に 比べる と高 い。こ れは、 近年 におい て中国 のエ ネルギ ー
危機や砂 漠化危 機が深 刻に なって きたた め、 学校教 育にお いて も特に これら の分 野に関 す
る環境教 育に力 を入れ たこ とが原 因だと 考え られる 。また 、地 球温暖 化や環 境汚 染に関 す
る授業の 記憶は 、日本 児童 のほう が高い こと がわか った。 この 結果に ついて 、調 査対象 と
なる中国 J 小は中国 東北地 方の瀋 陽に 位置し 、夏が 比較 的短い ことに 加え 、それ ほど暑 く
もならな いこと による 危機 意識の 緩みが考 えられ る。地 球温 暖化や ヒート アイ ランド 現象
等が日本 の東京 ほど著 しく ないた め、学 校で の環境 教育も 地球 温暖化 分野に つい てそれ ほ
ど力を入 れてい ないと 考え られる 。もし くは 地球温 暖化を 実感 してい ない児 童は 授業に 対
する興味 や記憶 が比較 的希 薄であ るとい う状 況が予 想され る。 また、 瀋陽に おい て市民 レ
ベルのゴ ミ分別 は未実 施で あり、 学校で の環 境汚染 やリサ イク ル教育 も日本 に比 べ積極 的
でないと いうこ とが考 えら れる。
授業の記憶率(%)
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0 %
エコスクール
図 4-15
非エコスクール
グリーンスクール
日中児童の授業記憶比較
4-3- 2
知識によ る分 類・ 分析
中国児童 は日本 児童に 比べ 、エネルギ ー、砂漠 分野で の知識 が比 較的高 いこと が挙 げ ら
れるが、 地球温 暖化や 環境 汚染・ リサイ クル におけ る正答 率は 低い。 この結 果は 授業に 対
する記憶 の分析 結果と ほぼ 一致で ある。 また 、知識 の平均 正答 率につ いて、 砂漠 化分野 を
除いて、 日本の エコス クー ルと中 国のグ リー ンスク ールは ほぼ 同じで あり、 日本 の非エ コ
スクール よりや や高い とい う状況 である (図 4-16)。
52
70.0%
環境知識正答率
60.0%
80.0%
50.0%
環境意識積極度(%)
90.0%
70.0%
50.0%
40.0%
10.0%
環境意識
積極度(%)
環境 ・3R
図 4-17
非エコスクール
森林
エコスクール
日中児童の環境知識正答率比較
4-3- 3
20.0%
砂漠化
グリーンスクール
個人平均正答率
非エコスクール
ゴミ
リサイクル
砂漠化
図 4-16
地球温暖化
エネルギー
エコスクール
30.0%
地球温暖化
30.0%
40.0%
エネルギー
知識正答率(%)
60.0%
グリーンスクール
日中児童の環境問題関心率の比較
関心によ る分 類・ 分析
図 4-17 で わか るよ う に 、中 国 児 童は 環 境 問題 に 対 する 関 心 が明 ら か に高 い こ とが わ か
る。これ は近年 全国規 模の 環境問 題が深 刻化 するこ とにつ れ、 中国社 会は全 体的 に環境 問
題に対す る注目 が高く 、学 校にお ける環 境教 育も特 に力を いれ 、児童 に環境 危機 を意識 さ
せるよう な啓発 式教育 をし てきた ことが 理由 として 考えら れる 。また 、中国 にお ける環 境
問題は確 実に身 近に発 生し ており 、児童 は環 境問題 に対し ても ある程 度の体 験を してい る
ため、教 育内容 に比較 的に 容易に 共感し 、そ の解決 に興味 を持 ってい ること も考 えられ る
また 、 各 分野 の 環 境 問 題 に 対し て 児 童 の 行 動 意欲 と 実 際 の 行 動 率を 比 較 し た 。 図 4-24
でわかる ように 、日本 児童 の行動 意欲と 実践 率は単 独で可 能な 行動に 偏り、 他人 との交 流
や協力が 必要と される 行動 に対す る意欲 と実 践率は 低い。 一方 、中国 児童は 比較 的行動 全
般に分布 し、行 動意欲 も行 動率も 高い傾 向に ある。
また、図 4-18、図 4-19 から、興味から 行動 に移行 すると いう 予測に 対して、「経験」 や
「知識」は影響を してい ないこ とが わかっ た。ただし、中国児童に おい ては「関心」が「興
味」、「行動」の 実践 に大き く影響 して いると 考えら れた 。
100.0%
80.0%
90.0%
70.0%
80.0%
60.0%
70.0%
50.0%
60.0%
40.0%
50.0%
30.0%
40.0%
30.0%
20.0%
20.0%
10.0%
10.0%
0.0%
0.0%
経験
知識
Rank3
図 4-18
関心
Rank2
危機感
行動
経験
Rank1
知識
Rank3
興味から見た行動率-日本児童
図 4-19
53
関心
Rank2
危機感
行動
Rank1
興味からみた行動率-中国児童
4-3- 4
危機感に よる 分類 ・分 析
図 4-20 でわかる ように、中国児童の危 機感 は
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
日本 児童 よ り 全般 的 に 高い 。 特 にエ ネ ル ギー や
危機意識(%)
砂漠化、 環境汚 染分野 の危 機感が 著しく 高い 。
また 、危 機 度 に関 し て 、日 中 と も危 機 度 の高
い児 童は 関 心 、行 動 率 も比 較 的 高い こ と がわ か
児童では 著しい 傾向が 見ら れなか った(図 4-21,
図 4-20
非エコスクール
環境汚染
エコスクール
砂漠化
森林減少
を比 較的 に 強 く影 響 し てい る こ とに 対 し 、日 本
地球温暖化
エネルギー
った 。 特 に 、 中 国 児 童 は 「 関 心 」 は 「 危 機 度 」
グリーンスクール
日中児童の危機感の比較
図 4-22)。
80.0%
60.0%
70.0%
50.0%
40.0%
危機度0
60.0%
危機度1
50.0%
30.0%
危機度2
40.0%
20.0%
危機度3
10.0%
危機度4
危機度0
危機度1
30.0%
危機度2
20.0%
危機度3
10.0%
0.0%
0.0%
経験
図 4-21
知識
関心
行動
経験
危機度から見た環境意識-日本児童
4-3- 5
図 4-22
知識
関心
行動
危機度から見た環境意識-中国児童
行動によ る分 類・ 分析
両国児童 の環境 配慮行 動率 を比較 した。中国児 童の環 境配慮 行動 率は全 般的に 高い こ と
がわかっ た。特に「身近な緑を 大切に して いる」
「砂漠化に ついて 友人や 両親 と話し てい る 」
など、砂漠化・森林・緑分野の行動 率が著 しく高 い。この理由は 中国に おけ るエネ ルギー 、
資源欠乏 危や親 世代の ライ フスタ イルか らの 影響、 経済か らの 影響な どが考 えら れる。
65. 0%
55. 0%
45. 0%
行 動 率 (%)
35. 0%
25. 0%
地
図 4-23
エコスクール
率
R
動
3
均
行
染
・
平
汚
境
環
化
漠
砂
球
温
暖
化
森
省
林
エ
緑
ネ
15. 0%
非エコスクール
日中児童の環境配慮行動率の比較
54
グリーンスクール
行動率に 関して は、日中 とも「 関心」が「 行動 」に対 して比 較的 強く影 響して いる と 考
えられた。特に中国 児童は「関心」が興味の実 施に大 きく 影響し ている と思 われる(図 4-24,
図 4-25)。また、興味から 行動 に発展 するこ とに 関して、「経験」や「知識」は影響 をし て
いないこ とが予 想され た。
80.0%
100.0%
90.0%
70.0%
80.0%
70.0%
60.0%
60.0%
行動率(中国)
行動率(日本)
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
経験
知識
30%以下
図 4-24
関心
30%~60%
経験
危機度
40%以下
60%以上
行動率から見た環境意識-日本児童
4-3- 6
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
図 4-25
知識
関心
40%~80%
危機度
40%以上
行動率から見た環境意識-中国児童
まとめ
日中両国 児童の 環境意 識の 比較分 析から 、次 のよう な結論 を導 いた。
①
日本児 童 は「 地球 温 暖化 、 環境 リサ イ クル 」 に関 する 知 識が 比 較的 高い こ とに 対 し、
中国児童 は「エネ ルギー 、砂漠化 」に関す る知識 が比 較的高 いこと がわ かった 。こ れ
は、授業 に対す る記憶 とほ ぼ一致 してい る 。
②
日中両国 児童の 勉強意 欲は「関 心」から の影響 が比較 的強 いと考 えられ た。特 に中 国
児童は関 心から の影響 が比 較的強 い。また 、中国児 童は「危 機感」 からの 影響 も強 い
ことが わ かっ た。 す なわ ち 、日 本児 童 は「 関 心」 を持 っ て勉 強 して いる こ とに 対 し、
中国児童 は「関 心」に 加え て「危 機感」 を持 って勉 強して いる と考え られた 。
③
日本児童の 行動意 欲と実 践率 は単独 で可能 な行 動に偏 り、他人との交 流や協 力が 必 要
とされる 行動に 対する 意欲 と実践 率は低 いこ とがわ かった 。一方、中国児 童は 行動 全
般に対し て平均 的に分 布し 、関心 も行動 率も 高いこ とがわ かっ た。
日本児童 の行動 意欲と 実践 が単独 で可能 な行 動に偏 ってい る理 由の一 つとし て、親子 の
交流の欠 如など コミュ ニケ ーショ ン力の 不足 が考え られる 。日 本にお ける親 子の 交流欠 如
は社会的 な問題 になっ てお り、親 に対す る信 頼や対 話する 意欲 なども 比較的 低い のでは な
いだろう か。近 年、児 童は 物事に 対する 感想 や学校 での経 験な どを親 と対話 する 頻度が 少
55
ないと言 われて いる。 それ に対し 、中国 では 一人子 政策が 施行 されて おり、 三人 家族( 両
親、子供 )や五 人家族 (両 親、子 供、祖 父母 )が一 般的で ある 。親は 唯一の 子供 を非常 に
大切に教 育し、 親子の 交流 も盛ん に行っ てい る。
また、中 国児童 の行動 率が 特に高 い理由 とし ては、 以下の よう なこと が考え られ る:
中国にお けるエ ネルギ ー危 機が著 しく、十年ほ ど前か ら停電 や断 水など のトラ ブル が 発
生する。 現在で もその トラ ブルに 苦しん でい る地域 がある 。三 十、四 十代( すな わち、 現
在の小学 生の親 世代や 小学 校教員 など) の住 民が特 にその 経験 を体験 した世 代で あり、 生
活習慣も 資源節 約型ラ イフ スタイ ルであ る。 加えて 、近年 の環 境問題 は社会 的な 注目を 集
め、一般 住民も 危機感 を感 じてい る。結 果と して児 童の親 世代 や学校 教師は 日常 生活に お
いて、節 約行動 をこま めに 実施す るとい う状 況に至 ってい る。 これら 親や教 師世 代の影 響
から児童 は小さ いころ から 常識的 、 習慣的に 環境配 慮行動 を実 行して いるこ との 影響は 非
常に大き いと考 えられ る。
また、中国住 民の経 済レベ ルは 日本ほ ど裕福 では なく、日常 生活 におい て使い 捨て の ラ
イフス タ イル より 、 リサ イ クル して 永 く使 う とい うラ イ フス タ イル の方 が 一般 的 であ る。
それに加 え、使い捨ての 紙コッ プ、割り箸な どの製 造によ る木 材の使 用、森林の過度伐 採 、
それ に 伴 う 森 林 の 減 少 に よ る 河 川 氾 濫 、 洪 水 の 被 害 は 社 会 的 問 題 と し て 注 目 を 集 め て い
る。その 影響を 受け、 資源 の大量 消費に よる 「過快 適」な ライ フスタ イルが 見直 され、 使
い捨て商 品の使 用や過 度の 包装な どをな るべ く抑え 、資源 を守 るとい う社会 的認 識が普 及
され、リ サイク ル行動 をす る人が 増 加してい る。よ って児 童が 紙の両 面を使 うな どの省 消
費行動は 一般的 であり 、親 も使い 捨て商 品を 使うこ となど の大 量消費 行動は 少な くなっ て
いる。結果として、社会全体に おける 環境 配慮行 動の行 動率 は向上 してい ると 考えら れる 。
4-4
児童の環 境配 慮行 動 に影 響を 与え る各 要因
児童の環 境配慮 行動に 影響 を与え る各要 因を 解明す るため に分 析をし た。環 境配 慮行動
にクラス ター分 析をし 、相 似性に よって グル ープを 分けた 。さ らに行 動に対 し影 響を与 え
ると考え られる 各要因 (授 業体験 、知識 、関 心・危 機感) に対 して数 量化二 類分 析を行 っ
た。
56
図 4-26
4-1- 1
環境配慮行動に影響する各要因を解明する分析方法
エコスク ール とグ リー ンス ク ール
エコ ス ク ー ル と グ リ ー ン ス ク ー ル は 相 関 比 が 0.43 と 0.40 で比 較 的 高 い こ と が わ か っ
た。つま り、学 校にお ける 環境教 育は児 童の 環境配 慮行動 にあ る程度 の影響 を与 えてい る
と考えら れる。
その中で も、日 本エコ スク ールで は施設 に対 する「 記憶」 は児 童の環 境配慮 行動 におけ
る影響が とても 希薄で ある ことが わかっ た。
また、「交流参加 意識」が行動に最 も相 関して いると 言え る。したがって、エコスク ー ル
児童の環 境配慮 行動を 高め るため に、
「交流参加 意識」を刺激するこ とがも っとも 効果 的 で
あると考 えられ る。
57
エ コ スクー ル
ア イテム
カテゴリ
1
2
施設
3
4
1
環境教育
2
授業
3
4
1
2
知識
3
4
1
興味
2
危機感
3
4
1
交流
2
参加意識
3
4
図 4-28
4-1- 2
例数
5
8
21
59
16
25
35
17
9
21
22
41
13
35
26
19
46
29
13
5
第 1軸
カ テ ゴ リ数
0.27
-0.40
0.38
-0.10
0.51
0.18
-0.24
-0.25
0.54
0.63
-0.27
-0.30
-0.07
-0.30
0.26
0.24
-0.41
-0.28
1.45
1.61
中国グリーンスクール
相関比
0.43
第 1軸
範囲
第 1軸
偏相関係数
0.77
0.20
アイテム
環境教育
授業
0.76
0.24
0.93
0.34
0.56
0.20
興味
危機感
2.02
0.51
交流
参加意識
知識
相関比
カテゴリ
例数
第1軸
カテゴリ数
1
2
3
4
5
6
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
6
12
22
20
6
4
4
9
31
26
4
11
15
40
8
6
21
35
1.21
0.33
-0.38
-0.12
-0.12
0.05
-0.58
0.08
0.05
0.00
-1.36
-0.77
-0.06
0.37
-1.28
-0.87
0.18
0.33
0.40
第1軸
範囲
第1軸
偏相関係数
1.59
0.33
0.66
0.12
1.73
0.31
1.61
0.33
環境配慮行動に影響する各要因 ―― エコスクール、グリーンスクール
非エコス クー ルと 郊外 非 エコ スク ール
非エコク ールと 郊外非 エコ スクール(郊外校)の相関比は 0.33 と 0.23 で、比較的低い 。
つまり、 学校に おける 環境 教育は 児童の 環境 配慮行 動に与 える 影響が とても 希薄 である こ
とが考え られる 。その 中で も、興 味・危 機感 の偏相 関関数 が比 較的高 く、環 境問 題に対 す
る興味・ 危機感 は環境 配慮 行動に 与える 影響 が小さ いであ るが ある程 度相関 して いると 考
えられる 。また 、児童 の環 境配慮 行動は 、学 校にお ける環 境教 育以外 にも、 生活 スタイ ル
や家庭環 境、社 会背景 など の影響 を受け てい ると考 えられ る。
非エコスクール
アイテム カテゴリ 例数
1
17
2
8
環境教育
3
16
授業
4
18
5
18
6
10
1
12
2
23
知識
3
27
4
25
1
16
興味
2
38
危機感
3
33
4
0
1
65
交流
2
13
参加意識
3
6
4
3
図 4-29
第1軸
カテゴリ数
-0.03
0.75
0.46
-0.11
-0.31
-0.53
0.97
0.28
-0.42
-0.27
-1.75
0.44
0.34
0.00
-0.05
-0.09
0.74
0.02
郊外校
相関比
0.33
第1軸
範囲
第1軸
偏相関係数
1.28
0.25
1.40
0.31
2.18
0.50
0.82
0.13
アイテム カテゴリ 例数
1
43
2
47
環境教育
3
41
授業
4
32
5
14
6
10
1
36
2
51
知識
3
57
4
43
1
45
興味
2
75
危機感
3
41
4
26
1
121
交流
2
46
参加意識
3
16
4
4
環境配慮行動に影響する各要因 ―― 非エコスクール、郊外校
58
相関比
第1軸
カテゴリ数
-0.18
-0.08
0.30
0.09
-0.09
-0.22
0.01
0.00
0.05
-0.07
-1.18
0.11
0.91
0.29
-0.31
0.36
0.87
1.80
0.23
第1軸
範囲
第1軸
偏相関係
0.52
0.10
0.12
0.02
2.09
0.36
2.11
0.25
第5章
5-1
まとめと 今後 の課 題
ハード思 考の エコ スク ー ルの 再検 討
日本 にお け る エコ ス ク ール は 施 設設 置 に 重点 を 置 いた ハ ー ド的 教 育 プロ グ ラ ムで あ り、
「(環境に)やさしく つくる、賢く・永く使用、教育に 資す」というふ うに 期待さ れてき た
(文部省 ,「環境を考 慮した 学校施 設(エ コスク ール )の現状 と今 後の整 備推進 に向 けて 、
2002」)が、これまでの 考察で は、十分な効果 を見 る事が できな かっ た。特に「教育に資 す 」
という目 的は十 分に実 現さ れてお らず、 施設 を活か した環 境教 育が実 際には 、極 稀にし か
実施され ていな いとい う現 状がわ かった 。更 に、施 設自体 が日 常生活 におい てア クセス で
きない、 不可視 の状態 であ り、施 設が教 育と 乖離し ている 傾向 が見ら れる。 その ため、 施
設は児童 の記憶 に残ら ず、 エコス クール を離 れるに つれ、 施設 に対す る記憶 も減 少する こ
とが本研 究でわ かった 。こ れはハ ード重 視志 向であ るエコ スク ールの 環境教 育効 果期間 の
短さを示 唆して いると 考えられ る。
今後の 環 境教 育に お いて は 、エ コ施 設 の日 常 的可 視性 、 親密 性 が重 要だ と 考え ら れる。
施設を環 境教育 に活か すた めには、単に施設を設 置す るので はなく、児童に施設を「見る 、
触る、感 じる、 勉強す る」 という 実践型 環境 教育へ と転換 する ことに 力を入 れる ことが 必
要であろ う。政 府は単 に施 設の設 置を補 助し 、維持 管理を 行う のでは なく、 環境 教育へ の
施設利用 という 視点に 立っ て、施 設を活 かし た参加 型環境 教育 プログ ラムに 最適 な施設 選
びを行う 工夫も 必要だ と考 えられ る。学 校に おいて も、教 員の 生涯教 育や、 施設 を活か し
た教育を するよ うに力 を入 れなけ ればいけ ない。
日本にお けるエ コスク ール の認証 プログ ラム は環境 教育の 新た な始ま りであ る。 これま
で十年と いう時 間をか けて 試行が 行われ てき たが、 環境教 育の 道にお いてま だ摸 索の段 階
である。 今後、 ハード であ る環境 施設に ソフ ト的環 境教育 を融 合させ 、わか りや すく興 味
深い 教 育 を 行 う こ と を 通 じ 、 児 童 に 鮮 明 な 印 象 を 残 ら せ る よ う に す る 工 夫 が 必 要 で あ ろ
う。更に 環境問 題に対 する 積極的 な関心 、思 考力を 導くこ とが 重要な 課題で ある 。
5-2
「関心引 出型 環境 教 育」 と「 危機 警告 型 環境 教育 」に 関す る思 考
本研究を 通じ、 児童の 知識 や施設 に対す る記 憶は、 環境問 題に 対する 関心と 環境 配慮行
動に影響 を与え ていな いこ とがわ かった 。児 童は物 事に対 する 正誤判 断は知 識に ある程 度
依存して いるか もしれ ない が、関 心興味 や日 常行動 まで影 響を 与える 傾向は 見ら れなか っ
た。それ に対し 、環境 問題 に対す る関心 と危 機感が 環境配 慮行 動に更 に効果 的に 影響し て
いること が本研 究で明 らか になっ た。特に、中国の場 合は更に「危機感」という要因が「行
動」と比 較的に 強く関 係し ている 。この 結果 から見 ると、 今後 の環境 教育は 「関 心を引 き
59
出し」と 「危機 を警告 」と いう二 つの課 題が あると いえる 。
①「関心引 出型 環境 教 育」
授業での 知識注 入型教 育よ りも、 多様な興 味・関 心や適 性課 題を設 定し, 探求 の方法 を
考え るなど一人 一人の 個性を 生か した 環境教育 を展開す ること が 重要であ る。児 童の関 心
を引出す ことに より、 関心 を持っ て自主 的に 新しい 知識を 探求 し、環 境問題 につ いて積 極
的に思 考 する 事、 環 境配 慮 行動 を実 行 する 事 が期 待で き る。 今 回の アン ケ ート 調 査で は、
児童が自 由解答 欄に印 象に 残った 環境教 育授 業を記 入した。
「~授業が おもし ろかっ た」と
いう記入 が非常 に多い 。特 に施設 等の見 学や エコグ ッズの 製作 、環境 教育の ビデ オを見 る
などの環 境教育 方式は 児童 の歓迎 を受け てい る。こ のよう に、 これか らの学 校に おける 環
境教育は 多様な 授業活 動を 通じて、「楽しみなが ら勉強 する」、
「勉強を楽 しむ」といった 児
童の好奇心 を満足 させな がら 知識を 伝える よう な授業 を創り 出す 工夫の 必要が ある と思わ
れる。
②「危機警 告型 環境 教 育」
分析から 見ると 、日本 児童 は全体 的に環 境問 題に対 する危 機感 が中国 児童よ り低 いこと
がわかっ た。中 国にお いて は、エ ネルギ ー危 機等が 顕在化 し、 十年ほ ど前か ら停 電や断 水
などのト ラブル が発生 して いる。 環境問 題は 児童に とって 身近 な存在 であり 、中 国児童 は
環境問題 に比較 的深い 理解 を持っ ている と言 える。 そのた め、 被害の 回避・ 軽減 といっ た
気持ちが 危機感 の元と なり、
「もったいな い」などの言葉 に対し より 深い共 感を持 って い る
人が多い 。それ に対し 、日 本は環 境問題 によ る直接 的被害 (断 水や断 エネル ギー 等)が 比
較的少な い。そ のため 、日 本の児 童は環境 教育を 受けな がら も、実 際に環 境危 機にさ らさ
れたこと が少な いため 、環 境被害 に対す る具 体的な イメー ジが つき難 いため 、環 境問題 に
対する自 分なり の理解 が少 ないと 考えら れる 。環境 問題は 自分 に遠い イメー ジを 持ちや す
く、中国 児童に 対し比 較的 楽天的 である と推 測され る。
従って、 被害経 験の少 ない 日本児 童に対 し、 環境問 題の厳 しさ をより 理解し ても らうた
めに、環境危機 を警告 するこ とが 大切で あると 考え られる。「関心引出型 環境教 育」で児 童
の興味を 心地よ く引出 すと 同時に、
「危機警告型 環境 教育」で児童の 楽天的 思考を 変容 さ せ
る教育プ ログラ ムも重 要で あろう 。
5-3
学校、家 庭、 社会 が 連携 した 環境 教育 体系 作 り
本研 究 で は 環 境 問 題 に 対 す る 関 心 と 危 機 感 は 環 境 配 慮 行 動 に あ る 程 度 の 影 響 を 与 え て
いること がわか ったが 、い ずれも 強い傾 向が 見られ なかっ た。 従って 、児童 の環 境配慮 行
動とは学 校にお ける環 境教 育の影 響にの み依 存して いるわ けで はない 事が推 測で きる。 つ
60
まり、地 域の経 済状況 や家 庭の経 済状況 、住 環境の 状況、 社会 的背景 、更に 各家 庭にお け
るライフ スタイ ルなど さま ざまな 要因が 関与 してい ると考 えら れる。 従って 、環 境教育 を
効果的に 行うに は、学 校の 枠を超 えて、 家庭 教育や 地域教 育と いった より多 くの 集団や 場
と連動し て、様 々な国 情や 地域の 状況に 合っ た環境 教育プ ログ ラムを 考える 必要 がある 。
日本で は 児童 の行 動 意欲 と 実践 が単 独 で可 能 な行 動に 偏 って い る傾 向が 見 られ て いる。
中国では 一人子 政策が 施行 されて おり、 親は 唯一の 子供を 非常 に大切 に教育 する 。この よ
うな社会 背景か ら親子 の交 流が盛 んに行 い、 児童が 学校で の出 来事な どを両 親と 話し合 う
習慣があ る。こ れに対 し、 日本の 親子の コミ ュニケ ーショ ン時 間の不 足、親 に対 する信 頼
や対話 意 欲な ども 比 較的 低 いこ とは 、 特に 注 意を 払う べ き事 だ と考 えら れ る。 す なわ ち、
日本 で は 家庭 に お け る 環 境 教育 が 比 較 的 行 わ れて い な い と 考 え られ る 。 つ ま り 、 今後 は
PTA(Parents and Teachers Association,「親と先生 協会 」 ,環境省) 式環境 教育に 力を 入
れるこ とが 必要 とさ れる だろ う。 PTA 式環境 教育 の意 義は 、環 境教 育の 指導は 学校 の先 生
が担任す ること に対し 、 その基と なる家 庭での 基本 的な生 活習慣 を しっかり 身につ けた上
で成り立 つ もので ある 。この方法 におい ては児 童へ の環境 教育は 学校 による ものだ けで は
なく、親 の協力が 不可欠 である。 更に、 学校と 親と地域社 会が一 体 となり、 児童へ の環境
教育に取 り組む ことも 期待 できる 。しか しこ れの実 現のた めに は、親 世代を 中心 とした 成
人生涯教 育も課 題とし て挙 げられ る。
本研究で は、グ リーン スク ールは 日本に 比べ て高い 効果を 上げ ている と考え られ る。し
かし、中 国児童 は受験 勉強 重視と いう社 会背 景から 、学校 や教 師の意 思に依 存す る傾向 が
ある。児 童の意 思とは 必ず しも言 えない 。中 国にお ける環 境教 育は、 各教科 の内 容に浸 透
すると共 に、日 常生活 での 呼びか けも重 視し 、教師 の指示 を重 視する という 児童 の行動 傾
向を活か したも のであ る。 受験勉 強重視 とい う教育 法によ り、 児童は 各科目 の知 識のみ な
らず、日 常生活 の生活 習慣 の養成 やマナ ーに おいて も、教 師の 指示を 拒否な く信 頼して 受
け取る傾 向があ る。た だし 、この よ うな教育 法は行 動マナ ーの 形成に 効果的 であ るが、 教
師の指示 を重視 する傾 向が 強いた め、児 童は 決まっ たルー ルに 従って 行動し 、自 分で方 法
を考える 思考力 が低く なる 懸念が ある。 今回 のアン ケート 調査 におい ても、 児童 の回答 に
関して判 断や関 心が比 較的 に同一 してお り、 自分な りの回 答や 個性が 欠乏し てい る傾向 が
見られた 。 将来 中国にお いて将 来一人 子政 策が続 き、教 育一 般につ いて児 童の 個性が 重視
されるよ うにな ると思 われ る。そ のよう にな った場 合、現 在の 環境教 育プロ グラ ムが合 理
的である か、高 い教育 効果 を維持 できる かは 懸念が 残る 。従って、 中国に おける 今後 の環
境教育は 学校内 に限ら ずに 、社会 参加型 環境 教育へ と転換 する ことが 必要で あろ う。多 様
な環境活 動を経 験する こと によっ て、環 境問 題に対 する自 分な りの理 解を育 成す ること が
大切であ る。更 に、授 業で 教えら れた知 識に 留まら ず、多 様な 解決策 を考え てい くこと に
期待が持 たれる 。
61
5-4
本研究の 特殊 性、 有 限性
本研究で は、比 較対象 とす る日本 の学校 は世 田谷区 特定学 区内 の小学 校と茨 城県 古河市
の中学校 にした が、前 述し たよう に、学 校に おける 環境教 育は 児童の 環境配 慮行 動に与 え
る影響の 相関比 はいず れも 0.5 より小さ く、学 校にお ける 環境教 育は児 童の 行動に 与える
影響は有 限であ ると考 えら れる。 したが って 、児童 の環境 意識 は家庭 環境や 社会 背景な ど
にも影響 を受け 、地域 によ って学 校環境 教育 現状や 、児童 の環 境意識 も大い に差 が出て い
ると考え られる 。した がっ て、世 田谷区 や古 河市の 児童の 環境 意識は 日本児 童の 平均レ ベ
ルを代表 するこ とがで きな く、 一定的な 特殊性 がある と考 えられ る。中 国に おいて も同様
に、中国 遼寧省 実験小 学校 児童の 環境意 識は 中国児 童平均 レベ ルを代 表する こと ができ な
く、説明 できる 範囲は とて も有限 である 。し たがっ て、各 地域 におけ る学校 環境 教育の 現
状や児童 の環境 意識を 更に 総合的 に把握 する ことが 今後の 課題 として 残され ると 考えら れ
る。
また、学 校の学 力もア ンケ ート調 査の結 果を ある程 度左右 して いると 考え、 今回 の調査
対象校の 学力は どのレ ベル に位置 してい るか も評価 するべ きで あった が、本 研究 では学 力
がアンケ ート調 査の結 果に 与える 影響を 取り 除くこ とがで きな かった 。特に 、中 国遼寧 省
実験小学 校は省 立(日 本の 県立相 当)小 学校 であり 、学力 は高 い。し たがっ て、 今後に お
いては、 学力レ ベルも 考慮 した調 査が必 要と される だろう 。
最後に、 調査は 学校や 児童 にかか る負担 をな るべく 小さく する ため、 アンケ ート 調査に
出題す る問 題数 も有 限で あっ た( A3 一枚両 面)。このアン ケー ト調 査の 結果 のみ で児 童の
環境 意 識 や 学 校 の 環 境 教 育 効 果 を 断 言 す る こ と が で き な い と 考 え ら れ る 。 今 後 に お い て
は、アンケート調 査に基 づき、児童を対象 とした ヒヤリ ング 調査や グルー プイ ンタビ ュー 、
ワークシ ョップ など通 じた 調査研 究によ り更 なる説 得力が 得ら れると 考えら れる 。
62
参考文献
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純子 ,善養寺
幸子 ,宿谷
昌則 ,「小学校 におけ る系統 的な 住環境 の試行 と そ
の調査」 ,日本建築 大会学 術講演 梗概 集(関 東) ,2006,pp579- 580.
以下ホームページ
立山町 住民環境 課環境 地域安 全係
ホームペ ージ :http://www.town.tateyama.toyama.jp/pub/top.aspx
日本環境 省ホー ムペー ジ : http://www.env.go.jp/
東京都教 育委員 会ホー ムペ ージ: http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/
中国教育 委員会 ホーム ペー ジ : http://www.bjedu.gov.cn/
中国環境 保護局 ホーム ペー ジ : http://www.zhb.gov.cn/
中国グリ ーンス クール ホー ムペー ジ : http://www.cgsp.org/main/cgsp/
64
付録・資料
1)アン ケート (八幡 山小 学校、 緑ヶ丘 中学 校版)
環境意識に関するアンケート調査
あなたの出身校を書いてください
あなたの性別にチェックを入れてください
小学校
□ 男性 □ 女性
Ⅰ 施設
次の中からあてはまるものに「○」をつけてください
1 ソーラー
ソーラー(太陽光発電)とは、自宅の屋根などに設置した 太陽電池で暮らしに必要な電気を
生み出す装置です。
1.1
あなたの出身校にソーラーは設置してありますか。
A はい B いいえ C 知らない
1.2
ソーラーについて考えたり調べたりする授業を、学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
1.3
ソーラーに関しては、あなたの感想やおもしろいと思ったこと、授業で勉強したことや、印
象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
2 中水利用
中水利用とは、屋根の雨水を貯留槽にまとめて、トイレの洗浄水に使うなど、環境に配慮す
るエコ行動です。
2.1
あなたの出身校に中水利用装置は設置してありましたか。
A はい B いいえ C 知らない
2.2
中水利用ついて考えたり調べたりする授業を、学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
2.3
中水利用に関しては、あなたの感想やおもしろいと思ったこと、授業で勉強したことや、印
象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
3 屋上緑化
屋上緑化とは、建物の屋上に木や花を植えることをいいます。屋上緑化は環境をきれいにし
、ヒートアイランド現象や、地球温暖化を緩和する効果もあります。
3.1
あなたの出身校の屋上に木や花などは植えてありましたか。
A はい B いいえ C 知らない
3.2
屋上緑化ついて考えたり調べたりする授業を、学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
3.3
中水利用に関しては、あなたの感想やおもしろいと思ったこと、授業で勉強したことや、印
象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
1
65
Ⅰ 体験
次の中からあてはまるものに「○」をつけてください
1 エネルギー
エネルギーとは、電気やガス、燃料などによって光や熱を出せたり、何かものを動かし
たりする力のことです。太陽光、石油、風力などがエネルギーです。
1.1 エネルギーについて考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
1.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
2 地球温暖化
地球温暖化とは、地球表面の大気や海洋の平均温度が長期的に上昇する現象です。温暖
化によって、気候が変わり、農業生産への影響がでたり、海面が上昇して、小さな島が
沈んでしまうのです。
2.1 地球温暖化について考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
2.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
3 砂漠化
砂漠化とは、植生に覆われた土地が植物が育たなくなっていく現象を言います。
3.1 砂漠化について考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
3.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
4 森林、緑
森林はさまざまな生物をはぐくみ水をたくわえ、土砂を防ぎ、空気をきれいにするなど
の働きを持っています。
4.1 森林について考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
4.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
5 環境汚染、リサイクル
水・土壌・大気などが有毒な物質によって汚染され、生き物の生存に適さなくなってし
まう状態になること
5.1
環境汚染、ごみ、リサイクルについて考えたり調べたりする授業を、小学校で
受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
5.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
2
66
Ⅱ 知識
以下の説明に「○」か「×」、「わからない」にチェックを入れてください。
今地球上で最も多く使われているエネルギーのは石油
二番目に多く使われているエネルギーは風力
エネルギー 水や電気は生活になくてはいけない資源だ
石油資源はあと50年で切れる
石油や石炭は循環利用できる
地球は年々温暖化していく
地球温暖化の原因は主に温室効果ガス(二酸化炭素)
地球温暖化
二酸化炭素は植物が光合成によって吸収される
二酸化炭素は動物の呼吸によって吸収される
砂漠化の多くは人類の活動が原因となる
砂漠化
放牧のし過ぎで砂漠化を引き起こす
森林は有害な気体を浄化することができる
森林
砂漠の面積が年々縮小している
環境汚染 大気汚染、酸性雨の発生原因は工業の発展や自動車の普及である
リサイク 水俣病は生活ごみが自然に流出し、発生した公害問題である
環境汚染は野生動物にも影響をもたらす
ル
「ごみの3R」とは、リデュース、リユース、リニューアルの
○
×
わからない
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
Ⅲ 関心、意識
あなたの考えと当てはまるものにすべてチェックを入れてください
1
2
3
エネルギー
□
□
□
エネルギー問題が危機にさらされている
「ソーラー」は環境にやさしい発電施設だと思う
エスカレーターやエレベーターを利用せずに階段を利用したいと思う
□
□
□
□
□
□
自然エネルギーについて興味を持っている
ソーラーについて興味を持っている
エネルギー問題について友達や両親と話をしたい
先生にエネルギーの授業をしてもらいたい
エネルギー分野で勉強し、専門家になりたい
エネルギーに関するクラブやボランティア活動に参加したい
地球温暖化
□
□
地球温暖化が危機にさらされる
暖房の気温を下げるために普段より厚着をしてもいい
□
□
□
□
□
地球温暖化問題について興味を持っている
地球温暖化について友達や両親と話をしたい
先生に地球温暖化の授業をしてもらいたい
地球温暖化分野で勉強し、専門家になりたい
地球温暖化に関するクラブやボランティア活動に参加したい
砂漠化、森林、緑
□
□
砂漠化が危機にさらされる
身近な緑を大切にしたいと思う
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
砂漠化問題について興味を持っている
砂漠化について友達や両親と話をしたい
先生に砂漠化の授業をしてもらいたい
砂漠化の分野で勉強し、専門家になりたい
砂漠化に関するクラブやボランティア活動に参加したい
森林や植物について興味を持っている
森林や植物について友達や両親と話をしたい
先生に森林や緑の授業をしてもらいたい
森林や緑の分野で勉強し、専門家になりたい
森林や緑に関するクラブやボランティア活動に参加したい
67
3
4
環境汚染、リサイクル
□
□
環境汚染が危機にさらされる
ごみを分別して、環境を大切にしなくてはいけない
□
□
□
□
□
□
□
清掃工場やリサイクルセンターを見学したい
環境を守るための取り組みを知りたい
他人にもごみを分別するようにしてもらいたい
環境汚染やリサイクルなどについて友達や両親と話をしたい
先生に環境汚染、リサイクルやごみ処理の授業をしてもらいたい
環境保全分野で勉強し、専門家になりたい
これに関するクラブやボランティア活動に参加したい
Ⅳ 行動
あなたの生活習慣に当てはまる行動にすべてチェックを入れてください
1
地球温暖化対策、省エネルギー
□ テレビやパソコンなどの家電製品を使い終わったら電源をこまめに消す
□ 使っていない部屋やトイレ、お風呂の照明を消す
□ 水やシャワーを流しっぱなしをしない
□ 冷蔵庫を使い終わったら早めにドアを閉める
□ エスカレーターやエレベーターを利用せずに階段を利用している
□ 電気カーペット、電気こたつ等の温度設定を低めにしている
□ 暖房の気温を下げるために普段より厚着をしている
□ 友達や両親とよくこの話題を話す
□ エネルギーや地球温暖化問題について自分で勉強したり調べたり、知識を集めている
資源やエネルギー、温暖化防止に関するクラブやボランティア活動に参加している
□
(参加していた)
2
砂漠化、森林、緑
□ 身近な緑を大切にしている
□ 自分で植物を育ている
□ 庭の手入れを手伝う
□ 森林や植物について自分で勉強したり調べたり、知識を集めている。
□ 森林や植物に関するクラブやボランティア活動に参加していた、あるいは参加している
□ 友達や両親とよく森林や植物の話題を話す
□ 砂漠化問題について自分で勉強したり調べたり、知識を集めている
□ 砂漠化に関するクラブやボランティア活動に参加していた、あるいは参加している
□ 友達や両親とよく砂漠化の話題を話す
3
環境汚染、リサイクル
□ 生ごみを捨てる時水切りをする
□ 料理を食べ残さない
□ 買い物をする時に、ビニール袋を使わずにエコバッグやカバンに入れる
□ 紙カップやペーパータオルなどはなるべく使わない
□ 紙の裏面も使う
□ 洗剤を使いすぎない
□ 他人にごみを分別するように呼びかける
□ 環境を守るための取り組みに興味持って調べている
□ 環境を守るためにできる工夫について考えたり、友達と話している
□ ビン、缶、ペットボトルなどのごみを分別している
4
その他の感想や、環境問題について考えている事がありましたら、自由にご記入ください。
ありがとうございました。
68
4
2)アン ケート (古河 市総 和中学 校版、 グリ ーンス クール 版( 日本語 版)
環境意識に関するアンケート調査
あなたの性別にチェックを入れてください
□ 男性 □ 女性
Ⅰ 経験
次の中からあてはまるものに「○」をつけてください
1 エネルギー
エネルギーとは、電気やガス、燃料などによって光や熱を出せたり、何かものを動かし
たりする力のことです。太陽光、石油、風力などがエネルギーです。
1.1 エネルギーについて考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
1.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
2 地球温暖化
地球温暖化とは、地球表面の大気や海洋の平均温度が長期的に上昇する現象です。温暖
化によって、気候が変わり、農業生産への影響がでたり、海面が上昇して、小さな島が
沈んでしまうのです。
2.1 地球温暖化について考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
2.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
3 砂漠化
砂漠化とは、植生に覆われた土地が植物が育たなくなっていく現象を言います。
3.1 砂漠化について考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
3.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
4 森林、緑
森林はさまざまな生物をはぐくみ水をたくわえ、土砂を防ぎ、空気をきれいにするなど
の働きを持っています。
4.1 森林について考えたり調べたりする授業を、小学校で受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
4.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
69
1
5 環境汚染、リサイクル
水・土壌・大気などが有毒な物質によって汚染され、生き物の生存に適さなくなってし
まう状態になること
5.1
環境汚染、ごみ、リサイクルについて考えたり調べたりする授業を、小学校で
受けたことがありますか。
A はい B いいえ C 知らない
5.2 「はい」と答えた方にお伺いします。
その授業の記憶や感想、印象に残ったことがありましたら、ご自由に書いてください。
Ⅱ 知識
以下の説明に「○」か「×」、「わからない」にチェックを入れてください。
○
×
わからない
今地球上で最も多く使われているエネルギーのは石油
二番目に多く使われているエネルギーは風力
エネルギー 水や電気は生活になくてはいけない資源だ
石油資源はあと50年で切れる
石油や石炭は循環利用できる
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□
地球は年々温暖化していく
地球温暖化の原因は主に温室効果ガス(二酸化炭素)
地球温暖化
二酸化炭素は植物が光合成によって吸収される
二酸化炭素は動物の呼吸によって吸収される
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砂漠化の多くは人類の活動が原因となる
放牧のし過ぎで砂漠化を引き起こす
森林は有害な気体を浄化することができる
砂漠の面積が年々縮小している
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砂漠化
森林
大気汚染、酸性雨の発生原因は工業の発展や自動車の普及である
環境汚染 水俣病は生活ごみが自然に流出し、発生した公害問題である
リサイク 環境汚染は野生動物にも影響をもたらす
ル
「ごみの3R」とは、リデュース、リユース、リニューアルの
ことである
Ⅲ 関心、意識
あなたの考えと当てはまるものにすべてチェックを入れてください
1
エネルギー
□
□
□
エネルギー問題が危機にさらされている
「ソーラー」は環境にやさしい発電施設だと思う
エスカレーターやエレベーターを利用せずに階段を利用したいと思う
□
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□
□
自然エネルギーについて興味を持っている
ソーラーについて興味を持っている
エネルギー問題について友達や両親と話をしたい
先生にエネルギーの授業をしてもらいたい
エネルギー分野で勉強し、専門家になりたい
エネルギーに関するクラブやボランティア活動に参加したい
70
2
2
3
4
地球温暖化
□
□
地球温暖化が危機にさらされる
暖房の気温を下げるために普段より厚着をしてもいい
□
□
□
□
□
地球温暖化問題について興味を持っている
地球温暖化について友達や両親と話をしたい
先生に地球温暖化の授業をしてもらいたい
地球温暖化分野で勉強し、専門家になりたい
地球温暖化に関するクラブやボランティア活動に参加したい
砂漠化、森林、緑
□
□
砂漠化が危機にさらされる
身近な緑を大切にしたいと思う
□
□
□
□
□
□
□
□
□
□
砂漠化問題について興味を持っている
砂漠化について友達や両親と話をしたい
先生に砂漠化の授業をしてもらいたい
砂漠化の分野で勉強し、専門家になりたい
砂漠化に関するクラブやボランティア活動に参加したい
森林や植物について興味を持っている
森林や植物について友達や両親と話をしたい
先生に森林や緑の授業をしてもらいたい
森林や緑の分野で勉強し、専門家になりたい
森林や緑に関するクラブやボランティア活動に参加したい
環境汚染、リサイクル
□
□
環境汚染が危機にさらされる
ごみを分別して、環境を大切にしなくてはいけない
□
□
□
□
□
□
□
清掃工場やリサイクルセンターを見学したい
環境を守るための取り組みを知りたい
他人にもごみを分別するようにしてもらいたい
環境汚染やリサイクルなどについて友達や両親と話をしたい
先生に環境汚染、リサイクルやごみ処理の授業をしてもらいたい
環境保全分野で勉強し、専門家になりたい
これに関するクラブやボランティア活動に参加したい
Ⅳ 行動
あなたの生活習慣に当てはまる行動にすべてチェックを入れてください
1
地球温暖化対策、省エネルギー
□ テレビやパソコンなどの家電製品を使い終わったら電源をこまめに消す
□ 使っていない部屋やトイレ、お風呂の照明を消す
□ 水やシャワーを流しっぱなしをしない
□ 冷蔵庫を使い終わったら早めにドアを閉める
□ エスカレーターやエレベーターを利用せずに階段を利用している
□ 電気カーペット、電気こたつ等の温度設定を低めにしている
□ 暖房の気温を下げるために普段より厚着をしている
□ 友達や両親とよくこの話題を話す
□ エネルギーや地球温暖化問題について自分で勉強したり調べたり、知識を集めている
資源やエネルギー、温暖化防止に関するクラブやボランティア活動に参加している
□
(参加していた)
3
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2
砂漠化、森林、緑
□ 身近な緑を大切にしている
□ 自分で植物を育ている
□ 庭の手入れを手伝う
□ 森林や植物について自分で勉強したり調べたり、知識を集めている。
□ 森林や植物に関するクラブやボランティア活動に参加していた、あるいは参加している
□ 友達や両親とよく森林や植物の話題を話す
□ 砂漠化問題について自分で勉強したり調べたり、知識を集めている
□ 砂漠化に関するクラブやボランティア活動に参加していた、あるいは参加している
□ 友達や両親とよく砂漠化の話題を話す
3
環境汚染、リサイクル
□ 生ごみを捨てる時水切りをする
□ 料理を食べ残さない
□ 買い物をする時に、ビニール袋を使わずにエコバッグやカバンに入れる
□ 紙カップやペーパータオルなどはなるべく使わない
□ 紙の裏面も使う
□ 洗剤を使いすぎない
□ 他人にごみを分別するように呼びかける
□ 環境を守るための取り組みに興味持って調べている
□ 環境を守るためにできる工夫について考えたり、友達と話している
□ ビン、缶、ペットボトルなどのごみを分別している
4
その他の感想や、環境問題について考えている事がありましたら、自由にご記入ください。
ありがとうございました。
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謝辞
本研究に 当たり 、ご多 忙の 中ご指 導して くだ さいま した小 場瀬 令二先 生に深 く感 謝いた
します。 研究テ ーマの 設定 、研究 方法、 アン ケート 調査ま で、 さまざ まの面 で大 変多く の
アドバイ スをい ただき まし た。
そして 、いつも 私を支 えてく れた 中国に いる家 族に 感謝し ます。
また、調 査に協 力して くだ さいま した世 田谷 区教育 委員会 の進 士五十 八会長 、指 導課の
山口指導 主事、 東京都 世田 谷区八 幡山小 学校 、緑丘 中学校 、希 望丘小 学校、 茨城 県古河 市
総和中学 校 、元中国 遼寧省 瀋陽市 教育 委員会 曹洪仁 先生 及び 中国遼寧 省実験 小学校 の教 員
を始め、 児童の 方々に 深く 感謝い たしま す。
また、都 市環境 設計研 究室 の学生 の方々 にも 大変お 世話に なり ました 。特に 研究 面に限
らずさま ざまな 場面で 心身 ともに サポー トし てくだ さった 鈴木 さん、 アンケ ート 入力作 業
に手伝っ てくだ さった 宮下 さん、 本当に あり がとう ござい まし た。本 研究は 皆さ んの協 力
なしには 完成す ること はあ りませ んでし た。 深く感 謝をし てお ります 。
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