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4.2 潤滑技術の概要
4.2.1 潤滑方式
潤滑方式には油潤滑法、グリース潤滑法、固体潤滑法がある。油潤滑法は潤滑箇所に油
が出入りしやすい、軸受、歯車など、どの部位の潤滑も共通にできる、油中のきょう雑物
を除去しやすく、反復使用できる、および油温コントロールができるなどの利点を有する。
グリース潤滑はハウジングの密封構造が単純化できる、保守が比較的容易である、およ
び外部からの異物侵入防止が容易にできるなどの利点がある。
固体潤滑法は，油潤滑法、グリース潤滑法などが適用できない特殊条件下で用いられ、
乾燥皮膜潤滑、粉体潤滑などがある。
(1) 潤滑油給油法
潤滑給油法には循環式と全損式とがあり、給油法の種類と特徴を表 4.2.1-1 に示す。
循環式は潤滑箇所に給油される油量は比較的多く、冷却効果が期待できるもので多くの
機械潤滑に採用されている潤滑法である。
全損式は潤滑に必要な最小限の給油をするもので、噴霧・オイルエア給油を除き、冷却
効果は期待できない。給油法の選定は対象とする機械の潤滑に最適なものということにな
るが、使用者側のメインテナンスを考慮した選定も必要である。
強制循環給油は潤滑油タンク（オイルパン、オイルリザーバを含む）に蓄えらえた潤滑
油を油ポンプによって、配管、ホース、ノズルなどを通して一定量を潤滑部に供給する方
式であり、内燃機関、タービン発電機（蒸気、ガス）、建設機械、大型機械設備など多くの
機械に採用されている。内燃機関では潤滑油タンクを機関外に設置するドライサンプ方式
と、機関内に設置するウエットサンプ（オイルパン）方式がある。強制循環給油の特徴を
まとめると次のような点があげられる。
i.
多数の潤滑部に温度、圧力、油量をきめ細かく調整して供給でき、潤滑効果も高く、
また自動化も容易である。
ii.
大量の油を供給することができ、潤滑油による冷却効果も高く、大型機械に適する。
機械内部からの発熱の大きい内燃機関や摩擦熱の大きい機械の潤滑では、潤滑油に
よる潤滑作用より、むしろ油による冷却効果をより重視しており、これで不足する
場合は冷却水を循環して放熱することが一般的に行われる。
iii.
タンク内での沈降作用や別途フィルタを使用することで、油中異物や水分が分離さ
れ、常に清浄な油を潤滑部に供給することができ、摩耗防止効果が大きい。フィル
タを持たない循環式給油方式では、一般的にタンク内に摩耗粉を付着する磁石式の
栓を装着する。
強制循環給油システムの構成は、タンク、ポンプ、フィルタ、油温コントロールのため
のクーラ、ヒータ、油面レベル計、給油圧力計などの各種計測器から構成されている。そ
の他、圧力タンクやヘッド差で油を供給する重力タンクを併設したタイプもあり、停電時
などに機械の作動中にも給油できるようにしている。中小型の増減速機では一般的にはケ
ーシング下部をタンクとして利用し、装置内部で循環する方式が多い。
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4.2.1-1 潤滑給油方式（循環式、全損式）の種類と特徴
分類
給油方式
循環式
強制循環
(回収式）
概要
油タンク、ポンプ、ろ過器
冷却器、配管系をもつ強制
循環方式で油は絶えず循
環給油される。
適用範囲
特徴
設備費 保全費
内燃機関、設備 給油量、給油温度、給 高価
高価
機械用
油圧力の調整がきめ細
（高速、高温、かくでき、信頼性が高
高荷重）
い。冷却効果が大きい。
飛沫給油
全損式
回 転 体 で 油 だ め の 油 を た 中小型減速機、多 少 の 冷 却 効 果 が あ 安価
不要
たいたり、かきまぜて油粒 小 型 往 復 動 圧 る。低速、高速には不
子をはねかけて給油する。 縮機、小型内燃 適。
機関
油浴給油
軸受、歯車部分を油中に浸 低、中、高速軸 油面の変動により給油 安価
不要
す方法で給油する。
受、歯車
量や冷却効果に与える
影響が大きい。オイル
レベル管理が重要。
リング・
軸にかけたオイルリング、 中 速 、低・中 ・ 冷却効果は中程度期待 安価
不要
ディスク・
チェーン、軸に設定したデ 高 荷 重 、 電 動 できる。低速回転や高
チェーン給油 ィ ス ク の 回 転 に よ り 油 を 機、ポンプ軸受 粘度油では潤滑不良と
なる。たて軸のものに
かき上げて給油する。
は使用できない。
遠心給油
油 ポ ン プ が 配 置 で き な い 小型圧縮機、小 冷却効果は中程度期待 安価
不要
装置で、軸に簡単な翼装置 型冷凍機
できる。油が冷媒等で
を取付け、回転遠心力で給
希釈された場合の給油
油する。
法としても使用され
る。
集中給油
強制給油の一種であるが、 大 型 設 備 機 械 大型機械の給油設備を 高価 やや高
価
１ 個 の 集 中 給 油 装 置 か ら （鉄鋼熱間、冷 配 管 系 を 通 じ て 集 中
自 動 的 に 適 時 適 量 の 潤 滑 間 圧 延 等 ）、 建 化、自動化できる。流
油を配管、分配弁、圧力調 設機械、農業機 量、圧力制御等が重要
となる。
整弁等を介して給油する。 械
全損式としても使われる。
安価
手差し給油
給 油 孔 を 設 け て 手 差 し 給 低・中速、低荷 装置が簡単、しかし頻 安価
油器により適時給油する。 重（間欠運転機 繁な給油が必要。オイ
械の軸受、摺動 ルキャップからのゴミ
部、開放歯車、の侵入に要注意。
チェーン、ワイ
ヤロープ）の機
械
滴下給油
視滴形、びん形給油器から 低・中荷重の軸 省力化、信頼性が高い。 安価
普通
の 一 定 油 量 を 細 孔 か ら 常 受 （ 周 速 ５ m/s 油量調整可能。温度、
時滴下給油する。
以下）
油面高さにより給油量
が変化する。
安価
灯心・
油だめ、オイルカップから 低・中荷重の軸 温度、油粘度により給 安価
パッド給油
灯心、パッドの毛細管作用 受 鉄 道 車 両 軸 油量が変化。目詰まり
を利用して常時給油する。 受、クレーン車 に注意が必要。鉄道車
軸軸受、ドラム 両では循環給油にも使
用。
軸受
噴霧・
オ イ ル ミ ス ト 発 生 器 で 圧 高 速 こ ろ が り 空気による冷却効果が 普通∼ 普通∼
オイルエア給 縮 空 気 に よ り オ イ ル ミ ス 軸受、工作機械 ある。空気のろ過、保 高価
高価
油
ト化し、空気とともに配管 用精密軸受、高 温が必要。オイルミス
を通して給油する。エアオ 速 ス ピ ン ド ル トによる工場環境汚染
イルはポンプとミキシン 等
がある。オイルエア給
グバルブを組合せて、オイ
油は微少量給油が可能
ルを微少量ずつ空気とと
で、低温度上昇に制御
もに配管を通して給油す
できる。いずれも集中
る。
化、自動化可能。
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