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音響エネルギ密度

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音響エネルギ密度
D1-7 カーディオイドマイクを用いた矩形空間における音響エネルギ密度の測定に関する検討
-
その1 音圧分布の検討
-
A study on measurement of acoustic energy density in a rectangular chamber
by using cardioid microphones,
- Part 1 Investigation by sound pressure distribution ○堀内達朗1,桐山直己 2,星和磨 3,羽入敏樹 3
1. はじめに
遮音や残響室法吸音率などの測定の際,定在波の
影響で低音域の音圧レベルが測定点により大きくば
らつくことがある.本研究の目的は音圧だけでなく
粒子速度も考慮した音響エネルギ密度を測定し,定
と大きく離れてしまう危険がある.そこで粒子速度
による運動エネルギ EK も同時に測定すれば,ばらつ
きを抑えた安定した音響エネルギ密度を測定できる
と考えられる.
3. C-C 方式による矩形残響室の音場解析
粒子速度を求める手法としては,無指向性マイク 3.1 測定方法
在波音場における測定の不確定性の低減である.
を組み合わせる P-P 方式がよく用いられる.建築音
図 1 に示す W:5m×D:4m×H:3m の矩形残響室に
響分野において P-P 方式の音響エネルギ密度測定の
おいて C-C 方式の 6ch プローブと 4ch プローブ[6]
可能性はいくつかの研究例に示されている[1-2]が,
を用いて,音圧,粒子速度,音響エネルギ密度を測
広く利用されるに至っていない.この理由として,
定した.1m 間隔で格子状に,高さ 1.5m の水平面 20
測定対象周波数によりマイク間隔を変える必要があ
点を測定した.
ることや,音響エネルギ密度を測定する利点が広く
なお,音圧については無指向性マイクでも測定し
認識されるに至っていないこと,などが考えられる. た.音源スピーカ(Bose802)は残響室の隅角部の床に
最近,複数のカーディオイドマイクロフォンを用
置き,壁方向(斜め上方)に向けた.音源には TSP 信
いて粒子速度を測定する C-C 方式が提案されている
号を収録し,インパルス応答に変換した.次に 80Hz
[3-6].本報では C-C 方式により音響エネルギ密度を
と 125Hz の純音を 10 秒間収録した.純音の収録に
実測した結果について報告する.
際しては,スピーカから音が発せられてから 15 秒以
上経過して,音場が定常状態になってから収録を始
2. 音響エネルギ密度
単一平面波音場もしくは拡散音場を仮定した場合,
音響エネルギ密度 E と音圧 P は 1 式の関係になる.
E = P / ρc
2
2
ルギ密度のレベルを測定することは等価である.し
かし定在波音場では上記の関係は成り立たない.定
在波音場において,音響エネルギ密度 E は 2 式のよ
うに音圧 P によるポテンシャルエネルギ EP と粒子
速度 u による運動エネルギ EK の加算で表される.
E = EP + EK =
P
ρu
+
2
2 ρc
2
2
解析方法
オクターブ分析は,C-C プローブで測定した各受
ーブ帯域フィルタに通し各オクターブ帯域波形を求
めた.その波形を基に音圧 P,粒子速度ベクトル u
の各成分,および絶対値,ポテンシャルエネルギ,
運動エネルギ,音響エネルギ密度を算出した[7-9].
10 秒間の純音波形に対しても上記オクターブ波形
と同様の解析を行った.また音圧 P に関しては無指
向性マイクロフォンによるインパルス応答および純
音波形のエネルギ積分からも計算した.
(2)
3.3
定在波音場などリアクティブな音場において音圧
だけで音響エネルギ密度を測定することは,値のば
らつきが大きく不安定となるだけでなく,ポテンシ
ャルエネルギ EP だけでは,実際の音響エネルギ密度
1:日大理工・院・建築 2:日大理工・建築
3.2
音点ごとの ch 数分のインパルス応答波形をオクタ
(1)
この場合,音圧レベルを測定することと音響エネ
2
めた.
測定結果
測定は,純音とオクターブバンドノイズで行った
が,紙面の都合上,ここでは 63 Hz オクターブ帯域
の解析結果のみ図 1,図 2 に示す.図 1 は,無指向
性マイクロフォンによるポテンシャルエネルギ Eomni,
図 2 は,上から順に各プローブの合成音圧 P による
3:日大短大・教員・建設
311
Eomni
ポテンシャルエネルギ EP,運動エネルギ EK,音響
(m)
4
エネルギ密度 E,粒子速度ベクトルの各成分の結果
3
-5
2
-10
である.なお,横方向を x 軸,縦方向を y 軸,また
0
分布は最大値で正規化してあるが,粒子速度ベクト
-15
1
ルは全データ共通の最大値で正規化してある.
0
0
まず図 1 の無指向性マイクの Eomni と図 2 の各プ
図1
ローブの EP を比較して見てみると,ほぼ同様の分布
2
3
Ep
(m)
4
3
図 2 において,6ch プローブと 4ch プローブの結果
2
2
を全体的に比べると,どちらのプローブを用いても
1
1
おり,EP の谷が EK の山に,あるいはその逆になっ
0
0
1
2
(m)
4
3
4
5 (m)
0
0
3
3
EP に比較して両者を加算した音響エネルギ密度 E の
空間偏差は小さくなる傾向にある.粒子速度ベクト
2
2
1
1
れの軸方向にある壁際で値がきわめて小さくなるな
ど,粒子速度の特徴を測定によって捉えることがで
0
0
1
2
(m)
4
3
4
5
(m)
0
0
3
分布測定の結果より,定在波音場では音圧と粒子
2
2
速度は著しく異なった振る舞いを見せることが確認
1
1
できた.音圧に加え粒子速度を観測することによっ
0
0
てはじめて音場の姿を知ることができる.遮音や残
響室法吸音率の測定の際,音圧レベルだけで評価す
べきではなく,粒子速度を併せて観測することの重
1
2
3
4
5 (m)
Ux
(m)
4
2
0
0
1
2
3
2
2
1
1
4
5 (m)
3
4
5
3
4
5 (m)
3
4
5 (m)
3
4
5 (m)
3
4
5 (m)
(m)
E
1
2
Ux
(m)
4
3
3
Ek
(m)
4
E
3
きている.
1
(m)
4
Ek
ていることが多い.したがって音圧だけを考慮した
ルの x,y 成分 ux,uy の分布を見てみると,それぞ
Ep
(m)
4
3
エネルギ EK を見てみると EP と異なる分布を示して
-20
音圧型無指向性マイクによる
と同等の音圧が算出可能であることがわかる.また
ほぼ同様の結果が得られることがわかる.次に運動
(dB)
5 (m)
4
音圧分布
となっている.このことから,各プローブのすべて
のマイク応答を加算平均することで無指向性マイク
1
要性は明かである.
4. まとめ
0
C-C 方式による実測の結果,定在波音場において
音圧が不安定な場合でも,音響エネルギ密度を測定
1
2
3
4
5 (m)
Uy
(m)
4
0
することで,ばらつきを抑えた測定が可能であるこ
3
3
とがわかった.
2
2
1
1
参考文献
0
0
[1] Khalid H. Miah and Elmer L. Hixson
Univ. of Texas (2006)
[2] David B. Nutter, Timothy W. Leishman,
Scott D. Sommerfeldt, and Jonathan D.
Blotter(2007)
[3] 羽入他,音講論,P719(2006.9)
[4] 羽入他,音講論,P721(2006.9)
[5] 横山他, 建音研資料, AA2007-48(2007.11)
[6] 羽入他,音講論,P1123(2008.3)
[7] 羽入他,音講論,P1123(2008.9)
[8] 羽入他,音講論,P1041(2009.3)
[9] 羽入他, 建音研資料, AA2009-37(2009.5)
312
1
2
3
4
5 (m)
Uz
(m)
4
0
0
3
2
2
1
1
1
2
3
4
6 microphones
63Hz
図2
2
Uy
1
2
Uz
(m)
4
3
0
0
1
(m)
4
5 (m)
0
0
1
2
4 microphones
1/1oct. band
ポテンシャルエネルギ,運動エネルギ,
音響エネルギ密度,粒子速度ベクトル各成分の分布図
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