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Development of Production Management System for Casting Industry

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Development of Production Management System for Casting Industry
技術TREND
鋳造業向け生産管理システム開発
̶ 鋳造業界に MRP を̶
クオリカ ㈱ 新
保雄一 生産管理パッケージの普及により加工組立業で一般的になった MRP システムを鋳造業
にも適用し、MRP の利点である在庫や進捗の見える化、在庫削減を目指して「鋳造業
向け生産管理システム」の構築を行った。
1.はじめに
2.MRP システムとは
コンピュータを用いて生産計画や管理を行っている
まず、MRP システムについて事前に触れておきたい。
製造業は多いが、鋳造品の製造業においては、まだま
MRP は 1960 年代に提唱されたコンピュータによる
だコンピュータ化が進んでいないのが現状である。今
調達計画策定の考え方とそのアルゴリズムである。
日、ほとんどの生産管理パッケージが加工や組立業向け
材料や部品の調達計画作成を目的とし、資材所要
に作られており、鋳物メーカーでは業務に合わないパッ
量計画(Material Requirements Planning)とよばれ、
ケージを我慢しながら使っているのが実情であろう。
組立や製造を行うために、いつまでに、何が、何個必
計画策定にコンピュータが使えない、コンピュータ
要かの計算を行う。
化を進めにくい、には理由がある。それは、生産品目
計算のための要素としては、① 基準日程計画、②部
の特性上、決められたパターンや基準で計画策定が行
品表、③現在在庫数、④ 仕掛数(発注残数)があり、
えないところに難所がある。大手企業であれば、自社
これらの情報を元に各構成品目の必要日と必要数の計
独自の特性に合わせてシステムを作り込む事も一部で
算を行う。
は可能であろうが、一般的にはそこまで投資できない
① 基準日程計画
事も理由にあると思われる。
製品の生産計画を指し、MPS(Master Product-
生産計画システムと言うと、多くの製造業は MRP
ion Schedule)と呼ばれる。受注生産型の製造業
を用いた計画システムで生産計画、調達計画の策定を
は、顧客からの受注や内示(顧客の購買計画)を
行っている。特に、組立製造を主とする製造業におい
元に作成し、見込み生産型の製造業の場合は、需
ては、多数ある部品が組立実施時期に合わせて調達が
要予測、販売計画を経て作成を行う。
完了し、生産に支障が出ないように計画策定を行って
② 部品表
いるところに大きな意義がある。
狭義の意味としては、品目と品目の親子の関係
今般、鋳造業向けの生産管理システム開発にあたっ
を持つ。この製品はどんなユニットで構成される
て、この MRP をベースにした弊社生産管理ソリュー
か、このユニットを作るにはどんな部品をいくつ
ション(AToMsQube:アトムズキューブ
)に鋳造
使用するかを定義する。0 レベルが最上位(製品)、
業特有の造型計画立案機能を付加することでトータル
1 レベルが子品目、2 レベルが孫品目となるが、
生産管理システムとして構築を行った。今回は、本シ
実際のコンピュータ内部では、親と子の関係だけ
ステムの考え方について紹介させて頂き、担当者個人
を持つ事で品目の共通化を図り、在庫削減と設計
に依存した計画・管理業務がコンピュータに乗ること
変更の簡素化に対応している(このような持ち方
により社内全体で情報共有ができ、生産管理における
をストラクチャー型部品表と呼ぶ)。ただ、これ
問題点の把握や対策検討につながるシステム化を目指
だけでは製品に必要な部品や材料の把握はできて
していくためにも参考にして頂きたい。
も、いつまでに、どこで等の算出を行うことがで
※1
きないため、広義として原単位情報である品目ご
との内外製、リードタイム、ロットサイズ、発注先、
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工順、作業場所、標準作業工数等の情報を持つ。
ネックは調達部品なので、MRP による計画策定が有
③ 現在在庫数
効で広く浸透してきたわけだが、鋳造業の場合は、ネッ
現在の品目毎の数量を指す。製造中のものは在
ク工程が鋳込み工程にあり、造型計画に種々特殊な制
庫とは言わず、MRP の世界では仕掛りとして識
約条件がある事が、生産計画のシステム化を遅らせて
別する。よって、在庫入庫は当該品目の最終工程
きた原因である。
の出来高報告で計上される。
④ 仕掛数(発注残数)
< 鋳込み工程の制約条件 >
製造指示や購買発注として発行(リリース)さ
① 材質の制約、材質順序の制約
れたもので、まだ入庫や受入れされていないもの
1 回に溶解チャージする材質は単一であり、鋳込
を指し、指定された期日で在庫になると見込まれ
む品目(造型)をチャージ量の単位にまとめなけれ
ているものを指す。
ばならない事。また、溶解する粗材材質の順序に前
後関係の制約がある場合がある。
MRP は ① 基準日程計画と ② 部品表を用いて、いつ
② 1 溶解あたりの鋳込み量の確保
までに何がいくつ必要かの計算を行い、品目毎に ③
1 回の溶解で作られる湯は、限られた時間内で使
現在在庫数と ④ 仕掛数の引当てを行い、本当に製造
い切らなければならない事。また、湯を無駄にしな
や調達しなければならない数量と期日の算出を行う。
いために、オーダーが無くても近々来るであろう品
この本当に製造しなければならない数量に基づき、下
目を見込んで生産しなければならない。
位の品目がいつまでにいくつ必要かの計算につなげて
③ 型と品目のパターン、型と型の組み合わせ
いく。このように上位の製造計画数量が下位の必要数
1 つの型には数種類の品目が複数込められている
とする考え方に基づき、上位レベルから下位レベルへ
場合(相込め)があり、必要な品目を製造すると副
連携して順番に計算を実施する(レベルバイレベル展
産物として別のものが出来る。また、1/2 型や 1/4
開と言う)。
型同士の型の組み合わせを行って造型するケースも
このように MRP は、無駄な在庫を作らない画期的
あり、1 回の鋳込みで数種類、複数の品目が同時に
な理論として、現在では多くの製造業で採用されてい
製造されること。
る計画策定システムではあるが、資材調達計画の計算
④ 高い不良率とそのばらつき
にしか使用できないところに難点がある。
注湯時の温度や型の組み合わせ相性等、複雑な製
1980 年 代 に 社 内 製 造 で も MRP を 適 用 で き な い か
造条件のからみによっては加工や組立業に比べて遥
と MRP Ⅱ(製造資源計画:Manufacturing Resource
かに不良率が高く、また、そのばらつきが大きいこと。
Planning)としての考え方が出てきたが、原単位情報
⑤ 温度管理
に標準工数をもつ事により作業場所別に負荷工数を積
同一材質でも、湯の温度によって不良発生率が異
み上げてラフな操業度計画を得る程度のものであっ
なることにより、注湯工程で徐々に降下する温度に
た。結局のところ、社内の製造工程の計画を MRP の
合わせた造型順番設定が必要なこと。
ようなリードタイムでズラすような概念では実態とし
⑥ 冷却時間
て合わないので、かんばんや MES(製造実行システム:
製品の肉厚によって冷却時間が異なることによ
Manufacturing Execution System)分野のスケジュー
り、鋳放し作業の効率化、平準化を目指した順序計
リングソフトで行う方が製造現場で使える仕組みにな
画が必要なこと。
るようであり、MRP と切り離して行っている企業も
⑦ 治具資源の制約
見受けられる。
製品の大きさによって異なる金枠の種類が多く、
この社内製造における MRP 適用の短所に対応する
それぞれの数と使用不可能期間(造型∼解枠)の制
ために、作業場所や機械群を幾つかまとめた大きなレ
約を受けて計画を立てなければならないこと。
ベルの作業区や職場への指示を MRP で計算し、その
作業区や職場内は、別の現場システムやかんばん型で
上記制約のすべての組み合わせに対応した計画を自
運用する企業が多い。
動的に作り上げる事は不可能に近いといえる。また、
仮に、ある企業の条件で計画システムを構築しても、
3.鋳造業の制約
他の企業に適用できるとは限らないし、将来生産条件
組立製造においては、部品調達が必須でありボトル
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や製造品目の変化で条件が変わっていく場合も大いに
考えられる。
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よって、今回開発した生産管理システムでの造型計
の品番にまとめて、部品表を浅めの階層にした方が
画策定機能は、最終的には人手での調整が必要になる
MRP 計算結果(計画)、在庫や生産進捗もわかりやす
事を前提に、MRP で作成された鋳造品の製造オーダー
くなる。
を材質別に一旦簡易割付けを行い、そのあとで縦型山
一つの例として、[中子][造型∼仕分][研削∼仕
積みガントチャート(縦:重量、横:日程)上でマウ
上げ][機械加工]の 4 品目で持ち、部品表の親子関
ス操作による編集にて造型計画を作成する仕掛けに
係で定義する(図 1:システム全体フロー 部品表、
なっている。
品番の考え方)。
まず、MRP によって[機械加工]、
[研削∼仕上げ]、
4.鋳造計画(造型計画)の作成
[造型∼仕分]のそれぞれの日程計画を行い、[造型]
についてはガントチャート編集を行う(図 2:造型計
今回開発した生産管理システムは、鋳造計画策定に
画ガントチャート)。ガントチャート編集し造型計画
おいても基本的に MRP システムを踏襲している。
を確定した後で、再度 MRP を実施し[中子]の製造
鋳造品の生産工程は、[中子→造型→注湯→鋳放→
や調達計画の作成を行う。また、再度 MRP を実施す
ショット→仕分→研削→仕上げ→機械加工]と言うよ
る意味には、ガントチャート編集で動かした計画の妥
うな工程順序(図 1:システム全体フロー)の流れにな
当性を検証する意味もある。変更した造型計画と上位
るが、これを部品表の考え方で再表現する必要がある。
の研削計画との整合確認を行い、MRP は欠品予告や
全工程についてそれぞれ品番を付与してそれぞれ親
納期繰り上げの警告を促す。
子関係でつなげる事も可能ではあるが、それでは階層
実績系については、中子、仕分け終了後の鋳放品、
が深くなってしまい、かえって需要変化からの影響の
仕上げ終了後の鋳造品、機械加工終了後の製品の在庫
ブレについてわかりにくくなり運用が複雑になる。前
およびそれぞれの途中工程の進捗状況の見える化につ
工程が終われば後工程に流れる工程はなるべく 1 つ
いても推進できる仕組みになる。
図 1 システム全体フロー
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図 2 造型計画ガントチャート
5.鋳込み工程制約条件への対応
る追加オーダーの発生を抑制でき、緊急飛び込みに
<MRP システムでの対応 >
よる現場の混乱を少なくする事ができる。
相込め品については、副産物として製造された品
鋳造品生産の特性である、1 型当りの生産数量、高
目について、自動的にオーダーが作成され、注湯実
い不良率に対応するには、MRP が本来持つ以下機能
績の報告で自動的に副産物側の進捗や在庫計上につ
を利用でき、鋳造品の計画策定においても有効に働く
ながるような仕掛けを追加した。副産物として生産
ので以下に説明する。
された品目についても MRP の引き当て対象になり、
・ロットサイズ
次回以降に必要数として発生すれば在庫抑制がかか
型当り取り数の対応については鋳造品にロットサ
る仕組みになっている。
イズを指定する。
MRP は必要数に対してロットサイズの倍数で手
配データの作成を行う。本来の必要数より切り上げ
・材質による割付け
られて過剰に手配されたものは、次回 MRP にて引
カレンダー上の日別に鋳込む材質を設定しておく
当てられ在庫抑制がかかる。
・不良率
事で、MRP で算出された鋳物の生産日程計画を当
該材質が鋳込まれる予定日に自動割付けを行う。
鋳造品に不良率を予め設定しておくことで、MRP
は不良率を見込んだ手配データの作成を行う。製造
1 日内の鋳込み順序についても予め設定しておく
ことでその順番で割り付けを行う。
実績の結果として良品が多ければ次回 MRP で手配
また、同一材質でも温度によって分類したい場合
オーダーの抑制がかかり、不良が多ければ追加オー
は、温度レンジによって材質記号を分けて運用する
ダーが作成される。
事で対応する。
・安全在庫数
安全在庫数を設定しておけば、想定外の不良によ
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< 造型計画初期割付け時の対応 >
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< 造型計画ガントチャートでの対応 >
になる。顧客からの需要変動には MRP システムで対
・ガントチャート上での計画編集
応する。内示から確定に変わったときの需要変動や、
初期割り付けされた造型計画をガントチャート上
鋳造工程はもちろん、上位の加工工程で不良が発生し
でドラックアンドドロップ操作にて編集を行う。ま
た場合は、MRP は不足を検知し追加オーダーの作成
た、操作ミスの削減を目的に、間違った割り付け
を行う。計画確定済み期間に飛び込んできたこれらの
行った場合は以下のようなエラーアラートが表示さ
緊急オーダーについては、造型計画ガントチャート上
れる。
では色分けされ一目で識別できるようになっている。
・エラーアラートの表示
昨日立てた計画について余儀なく変更を強いられる
組合せ不可の型(材質、型厚、湯口パターン)
ケースもあるが、現場で起こった実績報告を元にして
材質別の日当たりの重量不足、重量超過
遅くても翌日には手が打てる仕掛けになっている。
材質別の日当たりの枠数不足、枠数超過
また、湯量やラインの制約で後ろに倒した造型計画
チャージ当りの鋳込み重量不足、重量超過
の影響についても、MRP を実施する事で、どこで不
前提(先行)材質の計画の有無
足を起こすのか、どこのどの品目のオーダー(計画)
MRP 納期より後ろ倒しした場合の警告
に調整が必要なのか、以下の画面のようにわかる仕掛
けが施されている。
6.MRP と融合したシステムを目指して
・上位品目引当照会:(図 3)
MRP 用語でフルペギングと言うが、下位の鋳造
鋳造品製造における計画策定の難しさは、初工程に
品を指定して上位の加工品や製品の出荷予定までで
近い造型工程がボトルネックになり、その計画立案に
不足する箇所が無いかを確認できる。
さまざまな制約条件があることである。そのボトル
・欠品予告照会:(図 4)
ネック工程と顧客からの製品受注との間がシステムで
全品目について、現在在庫、入庫予定、出庫予定
見える化できるようになっていなければスムーズな生
の総検索を行い、在庫不足を起こす品目についての
産を実現する事ができないことにある。
照会が行える。また、製品指定も可能としており、
本システムを使用した場合は、MRP と造型計画を
下位品目への子部品展開を行いそれぞれの品目で在
繰り返しながら、日々計画策定業務を遂行して行く事
庫不足を起こす日の確認が行える。
図 3 上位品目引当状況照会
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図 4 欠品予告照会
7.最後に
の削減とリードタイム短縮活動に寄与し、需要変動に
鋳造品の生産には特殊な制約条件があるわけだが、
対応できる変化に強い生産管理システムを目指してい
きたいと思う次第である。
どんなものであっても物づくりの計画作成は、いつま
でに何を何個が原則である。と言う事は、計算の元と
なる基準日程計画が生産の前提となる材料や部品の計
クオリカ株式会社 アトムズキューブ室
画や在庫とつながらなければならない MRP の考え方
〒 135 - 0016 東京都江東区東陽 5 - 29 - 15
TEL. 03 - 5857 - 8152
http://www.qualica.co.jp/
が十分適用できると確信している。鋳造業への本シス
テムの導入を通じて、製造業の永遠の課題である在庫
※ 1:AToMsQube(アトムズキューブ)
加工組立型の製造業(特に機械や輸送機器を製造する企業)を導入先として、クオリカがコマツを始めとする先進企業向け
のシステム構築・運用ノウハウを織り込んで開発した生産管理システムで、受注管理・生産計画・資材所要量計画・在庫管理・
出荷管理・売上管理など、生産管理システムに必要な機能を備える(図 5:AToMsQube システム機能全体図)。
クラウド対応でカスタマイズも可能であり、最適なシステムを、初期導入コストを抑えながら早期に導入したいという顧客
のニーズに対応する。 また、導入企業の海外進出をサポートするためにマルチ言語にも対応している。
図 5 AToMsQube システム機能全体図
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