精神的ならびに肉体的労働と尿中アドレナリンおよび

労働科学 3
8巻 1
0号（1
9
6
2
) (5
9
5)
UDC613.6:612.398
精神的ならびに肉体的労働と尿中アドレナリンおよび
ノルアドレナリン排出の態度とに関する研究
〈
第 2報
〉
尿中ア 1－~レナリンおよびノノv ア］，~レナリシ
排出量主尿量主の関係について
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重虫＊
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. 緒 言
著者は前報口において精神的，
Ad,NAd も尿量に影響されることはじゅうぶん考え
肉体的の各種労働負荷
られるのでこれらの関係を検討しておかないと労働負荷
に対する Ad（アドレナリン）および NAd（ノルアドレ
に対する Adおよび NAd の挙動を正確に掌握するこ
ナリン）変化の追跡手段として尿中排出量を測定するこ
とは困難である。
と，ならびにその定量法について報告した。
本報ではこの点に注目し，成人男女 9
0例による測定
しかしながら，尿中排出物は一般に尿量の多少によっ
結果を解析し，尿量による影響の程度ならびにそれを極
て影響されることは周知の事実で， 高木，佐藤ら＇•＂も
この点について検討を行なっている。
々遮蔽するよう検討を行なった。この結果について報告
する。
＊ 労 働 科 学 研 究 所 労 働 生 化 学 第 2研究室
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(596)
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実験方法ならびに結果
0∼70歳までの正常成人男女 9
0名で T
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被験者は 2
1に示す通りである。試料はすべて 9:00∼18:00時ま
での昼間尿を用いた。採尿にあたっては，まず排尿時を
記録し，次回の尿を試料とし，すべて時間当り尿量とし
て表わした。尿中の Adおよび NAd の定量法はすべ
詳出l
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て前報1)に述べた樹脂吸着ルチン鐙光法に従った。
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と NAd,
比と尿量との関係をみた。
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. Adと尿量との関係
Adと尿量との相闘をみると F
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.1の通りで男女差
は無視できる程度に少い。これから相関係数を求めると
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きいので評価には絶対量よりもむしろ相対量に重点をお
くべきである。
3
. Ad と NAd との関係
Ad と NAd とはともに尿量の増加に伴ない増加して
i
g
.3
いる。そこで Adと NAdとの関係をみてみると F
のごとくで一見非常に高い相関がみられ相関係数を算出
.
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3という値が得られ，ほぼ比例関係、にあるこ
すると 0
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標準偏差 σ＝0
.
8
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, M±a=l.26∼3.04であり個体差は
大きい。
2
. NAdと尿量との関係
Adと同様， NAdと尿量との相関をみると F
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示す通りで，同様に男女差は無視できる程度であり相関
係数を求めると r=0.617で Ad より若干高い値を示し
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. 一一一一比と尿量との関係
Ad
3の結果より Ad と NAd とが比例関係にあること
から NAd と Adの比率を求め， これと尿量との相関
i
g
.4である。これから相関係数を算出す
をみたのが F
このように Ad にしろ NAd にしろ尿量との相関係
ると r=0.028となった。
NAd
また一一一比の平均値（M）および標準偏差（a）を算
Ad
出ずると M=3.38, a=0.70となり M±aは 2
.
6
8∼
数は 0
.
5以上であり，時間当りの排出量は尿量によって
4
.
0
8である。しかしながら図からわかるように尿量の少
ている。また M=7.07μ
g
/
h
, a=2.70で la の範囲を
計算すると 4
.
3
7∼9
.
7
7となる。
影響をうけるその量も大きいので，尿量を度外視して絶
ない領域で，ばらつきが大きいようであるが，これらの
対量のみを問題にすることはできない。また個体差も大
結果から NAd と Ad との比率は尿量との関係をある
(597)
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NAd
子の尿量， Ad,NAd，一一ーにつき 24時間の記録例を
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示す。ただし，測定期は 1
2月 26日∼ 1
2月 27日，調査
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はその結果で 8:40に出所し，ただちに排尿を行ない。
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0に第 1回
， 12:00に第 2回
， 13:00に第 3回
，
d
2
17:00に第 4回
， 17:40に第 5回
， 20:20に第 6回
，
22:3
0に第 7回，翌朝 7:30に第 8回目の採尿を行な
っている。
1020ll4050印 7
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との問 17:00∼17:40の第 5回目の尿量が異常に高
い値を示しているが，これは来客接待のためお茶を多量
に飲んだためである。
この図から分る通り，一般に尿量が多いと Ad,NAd
ともに増加しており，特に第 5尿においてはその関係が
程度おさえることができるほか，標準偏差も小さく比較
的一定の値を示すので絶対量の表示とともに有用な表現
法の一つではないかと考えられる。
、
NAd
5
. 同一被験者による尿量と Ad,NAdおよひ一一一
Ad
比との関係
次に 52歳，中等労作の研究業務にたずさわる正常男
NAd の急激な変化にもかかわらず，一定の値を示して
いる。
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約
以上の結果を要約するとつぎの通りである。
当
…
目
明らかである。
NAd
これに反し一一一一の比率についてみる左，いずれの場
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合も先の 90例の M 土6 の範囲内におさまっており Ad,
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. Adおよび NAd の尿中排出量は窒素その他の排
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出物と同様尿量によって影響されておりその相関係数
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. Ad 左 NAd とは略一定の比率をもって排出され
ており両者の相関係数（r）は 0.843である。
NAd
3
. −−ーの比率と尿量との関係、は尿量の少ない領域
Ad
で，ぱらつきが大きいが，多い領域ではほぼ一定となり
は 0.028である。
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. 同一被験者による場合も同様に Adおよび NAd
は尿量によって排出量が異なるので，尿量との関係を考
慮に入れて検討すべきである。また個人差も大きいので
絶対値より比率および比較値が重要である。
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本研究を行なうにあた P終始御指導，御助カをいただ
いた本研究室主任高木和男博士に深〈感謝する。また被
験者の労をわずらわした本研究所所員諸氏に併せ謝意を
表する。
参考文献
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1
）赤羽競：労働科学， 3
7
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7
7
,1
9
6
1
‘
2）高木和男，増田富江：労働科学， 3
1:6
1
3
,1
9
5
5
.
3
）佐藤徳郎：労働科学， 2
8
,8
6
9
,1
9
5
2
.
（受付： 1962年 7月 1
0日
〉