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慢性膵炎の経過と予後に関する研究

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慢性膵炎の経過と予後に関する研究
岡 山 医 誌 (1991)
103,
483∼494
慢性 膵 炎の経 過 と予後 に関す る研究
第3編
合 併 症,予
後 お よび 予 後 決 定 因 子 に つ い て
岡 山大 学 医学部 第二 内科 学教 室(指 導:木 村郁 郎教 授)
三
宅
啓
文
(平成3年2月4日
Key words:慢
受 稿)
性 膵炎,合 併症,予 後,予 後 因子
一 般 人 口 と比 較 し た
緒
.ま たCoxの
言
慢 性 膵 炎 の 合 併 症 に は,脂
重 回帰型生 命
表 法(13)をも ち い て 統 計 学 的 に対 象 の 背 景 因 子 を
一 致 させ 予 後 に 影 響 を与 え る 因 子 の 検 討 を行 っ
肪 便や糖 尿病 な ど
病 態 の 進 行 に と もな う合 併 症 と肝 障 害 や 悪 性 疾
た.
患 な ど,慢 性 膵 炎 の 飲 酒 歴 や 喫 煙 歴 と深 い 関 連
対 象
を もつ 合 併 症 が あ る(1).慢性 膵 炎 の 合 併 症 は と き
に 死 に 至 る こ と も あ り,慢 性 膵 炎 の 診 療 に お い
と 方 法
対 象 は 日本 消 化 器 病 学 会 の 慢 性 膵 炎I群
て その 発 現 に は 十 分 な 注 意 が 必 要 で あ る.
断 基 塑14)を 満 足 し,当 科 に お い て1年
慢 性 膵 炎 の 死 亡 率 は 各 報 告(1-8)によっ て こ とな
の診
以上 の経
過 観 察 が な され た170例 で あ る.対 象 の 特 徴 を 表
るが,多 くの 報 告(2-5)にて 高 い死 亡 率 が指 摘 され,
1に 示 す.慢
特 に 発 病 後4∼8年
ア ル コー ル 性 に分 け,非
の 時 期 の 死 亡 率 が 高 い と報
性 膵 炎 の 成 因 は ア ル コー ル性 と非
ア ル コー ル 性 膵 炎 は 胆
告 され て い る(2,5,6).し か し な が ら,慢 性 膵 炎 の 死
石 性 と特 発 性 に分 け た.ア ル コー ル 性 膵 炎112例
亡 率 が 本 邦 の 一 般 人 口 と比 較 して 統 計 学 的 に 有
の1日
意 に 高 い か 否 か の 検 討 は きわ め て 少 な い.
酒3合)以
た.反
慢 性 膵 炎 の 予 後 と そ れ に影 響 を及 ぼ す 因 子 の
研 究 は 臨 床 的 に 重 要 で あ る が,必
ず し も一 致 し
の 飲 酒 量 は エ タ ノー ル に換 算 して819(清
上 で あ り,飲 酒 歴 は5年
以上 で あっ
復 す る胆 石 発 作 を認 め た9例
を胆 石 性 と
し,原 因 不 明 の49例 を特 発 性 と した.経 過 観 察
た 結 論 が 得 ら れ て い な い(5.9−11).また,従 来 の 報
期 間 は,生
存 例 で は 診 断 時 か ら現 在 ま で(1989
告(4-6,8,9,10)では,あ る 因 子 に よ って 分 類 さ れ た 各
年9月)と
し,死 亡 例 で は 死 亡 時 ま で と し た.
群 の 生 存 率 を 比 較 して そ の 因 子 が 予 後 に 影 響 を
ア ル コー ル 性 膵 炎 の1例
与 え るか 否 か を 検 討 し て い た . こ の 方 法 で は,
明 とな っ た.
予 後 に 影 響 を与 え る 背 景 因 子(年
齢,性,喫
が 診 断 後4年
膵嚢 胞 は,慢 性 膵炎 の診 断時 と経過 観察 中に
煙
の有 無 な ど)が 各 群 間 で 一 致 し て い な い た め,
各群 間の生 存率 の相違 が検 討 された 因子 によ る
表1 対 象 の特 徴
のか 背 景 因 子 の 違 い に よ るの か の 判 定 が で き な
い.
そ こ で 本 稿 で は,当
科 に お い て1年 以 上 の 経
過 観 察 が な され た慢 性 膵 炎170例 の 合 併 症 と死 因
に つ い て 検 討 し,慢 性 膵 炎 に お け る 死 亡 率 お よ
び 癌 死 率 をperson-year法(12)を
で行 方 不
もちいて本邦 の
483
484 三
宅
膵 嚢 胞 を疑 っ た 例 に 腹 部 断 層 撮 影(CT),内
鏡 的 膵 胆 管 造 影(ERCP),腹
視
部 超 音 波 検 査(US)
を 施 行 し て 診 断 し た.胆
文
よ び程 度 が 減 少 し,疼 痛 の た め の 入 院 が 不 要 と
な っ た 例 で あ る.節
管 狭 窄 の有 無 は 胆 管 像
が 得 られ た ア ル コー ル 性43例,胆
啓
石 性8例,特
っ た もの の,
し て109以
発 性12例 に つ い て 検 討 し た.消 化 性 潰 瘍 は,慢
性 膵 炎の 診断 時 また はその経過 中に潰瘍 を疑 っ
酒 例 と は,禁
酒 を守れ なか
1日 の 飲 酒 量 が エ タ ノー ル に 換 算
下 に 減 少 し た例 で あ る. PS試
験 が施
行 さ れ た例 は 液 量,最 高 重 炭 酸 塩 濃 度,ア ミ ラ
ー ゼ 排 出 量 を判 定 項 目 と し
,そ の う ち 異 常 を示
た 例 に 消 化 管 内 視 鏡 検 査 を施 行 して 診 断 した .
し た 項 目数 に よ り膵 外 分 泌 機 能 の 障 害 程 度 を 高
肝 障 害 の 程 度 の 検 討 は,組 織 学 的 に 確 認 した 肝
度(3項
硬 変 の1例
CT検
を 除 き,主 と して 血 液 検 査, US検
査 な どで 行 な っ た.膵
査,
内外 分 泌機 能 障 害
目低 下),中
(1項
目低 下),正
等 度(2項
目低 下),軽
常 範 囲 内 に分 類 し た(15).
統 計 学 的 検 討 に はStudentのt一
検 定 法 とx2
に 由 来 す る脂 肪 便 や 糖 尿 病 に つ い て は,第2編
検 定 法 を用 い,危
に お い て す で に 報 告 した の で,今
し た.生 存 曲 線 はKaplan-Meier法(16)に
回 の検 討 で は
除 外 し た.
険 率0.05未 満 を も っ て有 意 と
有 意 差 の 検 討 はGeneralized
慢 性 膵 炎 患 者 と一 般 日本 人 の 死 亡 率 お よ び 癌
死 率 を比 較 す る 目的 で,性
比 と年 齢 構 成 が 同 じ
number)をperson-year
結
1.
法(12)にて 計 算 し,実 際 に 観 察 さ れ た 慢 性 膵 炎 患
者 の 死 亡 者 数 お よ び 癌 死 者 数(observed
ber)と 比 較 した.一
num
年 齢 別 お よ び 性 別 の 死 亡 率 と癌 死 率 は,厚
生統
Wilcoxon法(17)を
果
合 併症
診 断 時 ま た は 経過 中 に 認 め た主 た る 合 併 症 を
表2に
般 日本 人 に お け る 各 年 代 の
て 求 め,
用 い た.
で あ る一 般 日本 人 に て予 測 さ れ る 死 亡 者 数 お よ
び 癌 死 者 数(expected
度
示 す.膵
%),胆
嚢 胞 は ア ル コー ル 性 の21例(19
石 性 の2例(22%),特
発 性 の6例(12
%)に
認 め,こ
計 協 会 よ り毎 年 発 刊 さ れ る 「国 民衛 生 の 動 向 」
性2例
お よ び 特 発 性5例
の う ち ア ル コー ル 性11例,胆
よ り求 め た.
術 が 施 行 さ れ た.手 術 理 由 は,嚢
の 計18例(62%)に
石
手
胞 の破 裂(1
慢 性 膵 炎 の 予 後 に影 響 を 与 え る因 子 はCoxの
例),嚢
重 回 帰 型 生 命 表 法(13)を用 い て 検 討 した.予 後 因
例)お
子 とそ の 因 子 内 の 分 類 は,性(女:
の 経 過 は 縫 合 不 全 に て 死 亡 し た ア ル コー ル 性 膵
診 断 年(昭 和49年 以 前:
昭 和60年 以 後:
1),喫
2),膵
0,昭
石 の 有 無(無:
酒:
0,節
酒:
診 断 時 の 糖 尿 病 の 治 療 法(無:
1,糖
尿 病 経 口剤:
(ア ル コー ル 性:
術 の 有 無(無:
た は 無 痛:
0,軽
2,イ
0,非
0,有:
減:
0,有:
3),診
1),疼
%)に
続:
尿 病 食:
2),
3),成
認 め,す
べ て アル コール性 膵炎例 で あっ
表2 成 因別 にみ た合 併 症 の例 数
因
1),手
痛 経 過(消 失 ま
続:
2)で
あ る.
さ ら に各 項 目の 予 後 に 対 す る重 み を 比 較 す る 目
的 で,各
デ ー タ ー を標 準 化 し 同 様 の 検 討 を行 な
っ た.
経 過 観 察 中 の 疼 痛 状 態 は 継 続,軽
分 け,ア
減,消
失に
ル コ-ル 性 膵 炎 の 飲 酒 状 態 は 継 続,節
酒,禁 酒 に分 け た(7).疼 痛 の 軽 減 例 とは,疼 痛 が
完 全 に は 消 失 し な か っ た が,疼
後
を 除 く と,他 は す べ て 良 好 で あ っ た.
断後
0,糖
ン ス リ ン:
炎 の1例
あ っ た.術
胆 管 狭 窄 は 胆 管 像 が 得 ら れ た63例 中20例(32
1,継
ア ル コー ル性:
1,継
1,
0, 10本 以 下/日:
2, 30本 以 上/日:
の 飲 酒 状 態(禁
1),
和50∼59年:
煙 状 態(喫 煙 し な い:
1,約20本/日:
0,男:
胞 に よ る 十 二 指 腸 ま た は 大 腸 の 狭 窄(2
よ び嚢 胞 の 存 続(15例)で
痛発作 の頻 度お
()内
に 手 術 例 数 を示 し た
慢性 膵炎 の経過 と予 後 た.胆 管 狭 窄 症 状(胆
管 炎,黄
上 昇 な ど)を
に 手 術 が 施 行 さ れ た.手
示 す9例
疸,胆
道 酵素 の
術 を拒 否 し た ア ル コー ル 性 膵 炎 の1例
に胆 管炎
の 反 復 を 認 め た.
485
部 に 仮 性 嚢 胞 を 認 め た 特 発 性 膵 炎 症 例 で,手
に よ り軽 快 し た.他
の1例
瘤 を 認 め た ア ル コー ル 性 膵 炎 症 例 で あ り,癌 の
可 能 性 も 否 定 で きな い た め に 手 術 が 施 行 さ れ 術
消 化 性 潰 瘍 は26例(15%)に
認 め られ,成
別 の 発 生 頻 度 は ア ル コー ル 性(20%)が
コー ル性(7%)と
因
中 に採 取 さ れ た組 織 よ り炎 症 の 波 及 に よ る十 二
非 アル
指 腸 狭 窄 と判 明 し,そ の 後 の 内 科 的 治 療 に よ り
比 較 す る と有 意 に 高 率 で あ
っ た(p<0.05).
PS試
軽 快 した.
験 が 施 行 され た 潰 瘍 合
そ の ほ か,肺
炎,腎
不 全,心
併 例 の膵 外 分 泌 機 能 を検 討 す る と,胃 潰 瘍 合 併
血 な どの 合 併 症 に つ い て は,つ
例 の膵 外 分 泌 障 害 は 高 度3例,中
述 べ る.
度2例,正
常 範 囲 内3例
等 度2例,軽
で あ り,十 二 指 腸 潰 瘍
合 併 例 の 膵 外 分 泌 障 害 は 高 度3例,軽
正 常 範 囲 内1例
で あ っ た.十
度1例,
2.
予
不 全,消
後
経 過 中 に39例 の 死 亡 を 認 め,死
二指腸 潰瘍 合併例
化管出
ぎの予後 の項 で
あ っ た.表3に
亡 率 は23%で
死 因 と死 亡 時 の 平 均 年 齢 を示 す.
に て 膵 外分 泌 の 高 度 障 害 例 の 割 合 が や や 多 い傾
死 亡 時 の 年 齢 で は ア ル コー ル 性(59.7歳)は
向 に あ っ た.潰
酒状 態
ア ル コー ル 性(69.7歳)と
との 間 に は有 意 な 関 連 を 認 め な か っ た.消 化 性
年 齢 で あ っ た(p<0.01).
瘍 の 合 併 と喫 煙 状 態,飲
潰 瘍 は 全 例, H2受 容 体 拮 抗 薬 な ど制 酸 剤 を 中 心
と した 治 療 に よ り治 癒 した.
発 性 の6例(12%)に
石性
非
比 較 す る と有 意 に 低
悪 性 腫 瘍 の 内 訳 は ア ル コー ル
図生に て 胃 癌2例,
喉 頭 癌2例,食
肝障 害はア ル コー ル 性
生の28例(25%),胆
の1例(11%),特
膵 癌1例,胆
道 癌1例,肺
癌1例,肝
癌1例,
石 性 に て 前 立 腺 癌1例,特
発性 に
認 め た.
て 膵 癌2例,腎
軽 度 の 肝 障 害 ま た は 慢 性 肝 炎 を合 併 した ア ル コ
ー ル 性 膵 炎 の 飲 酒 状 態 は 継 続10例
,節 酒5例,
頓死 した7例
糖,
禁 酒5例
1例 は 剖 検 に て ク モ 膜 下 出 血 と判 明 した.肺
で あ り,肝 硬 変 合 併 例 の 飲 酒 状 態 は 継
続7例,禁
酒1例
術
は膵頭 部 に炎症性 腫
で あ っ た.す
な わ ち,肝 硬 変
癌1例,胆
管 癌1例
で あ っ た.
の 内 訳 は 臨 床 経 過 よ り3例 の 低 血
2例 の 心 筋 梗 塞,1例
で死 亡 した6例
の 脳 梗 塞 が 疑 わ れ,
炎
は い ず れ も,強 力 な 内科 的 治 療
を合 併 し た ア ル コー ル 性 膵 炎 に は飲 酒 を 継 続 し
に もか か わ らず 不 応 性 で あ った.そ
た例 が 多か っ た.ア
は糖 尿 病 の 合 併 例 で あ り,イ ン ス リ ン投 与 必 要
ル コー ル 性 膵 炎 に お け る肝
障害 と膵 外 分 泌 機 能 との 関 連 を検 討 す る と,軽
者 が2例,経
度 の 肝 障 害 ま た は慢 性 肝 炎 合 併 例 に お け る膵 外
の み の 治 療 者 が1例
分 泌機 能 障 害 は 軽 度1例,中
例 は2例
0例, PS試
験 未 施 行7例
等 度2例,高
度1
口 剤 投 与 必 要 者 が2例,糖
で あ っ た.イ
0例,
3例,
3例 で あ っ た.
今 回 の検 討 で は,膵
外 分 泌 機 能 の 障 害 程 度 と肝
障 害 の程 度 に は 関 連 を 認 め な か っ た.肝 硬 変9
例 中5例 に 食 道 静 脈 瘤 の 合 併 を 認 め た.し か し,
肝 不 全 や 食 道 静 脈 瘤 の 破 裂,お
よ び そ れ らに 起
因す る死 亡 は 認 め な か っ た.
経 過 観 察 中に 悪 性 腫 瘍 の 発 生 を14例 に 認 め た.
肺 癌 を合 併 し た 特 発 性 膵 炎 の1例
現 在 も生 存 し て い る が,他
は 術 後4年
の
の13例 は 発 見 時 に す
で に 進 行 した 癌 で あ り,そ の 癌 の た め に 死 亡 し
た.
に 認 め,
2例 と も上 腹
部 痛 と嘔 吐 を 主 訴 と して 来 院 し た.
1例 は 膵 頭
尿病 食
ン ス リ ン投 与
と も コ ン トロ− ル が 困 難 な 症 例 で あ り,
で あ り,肝 硬 変 合 併 例
で は そ れ ぞれ2例,
十 二 指 腸 の 狭 窄 を2例
の う ち5例
表3 成 因別 にみ た 死 因 と死亡 例数
486 三
宅
啓
文
表4 死 亡 例 と生 存 例 の特 徴
表5 慢 性膵 炎 の死 亡 頻 度 と癌 死頻 度
(一般 人 口 との比 較)
B)P<0
.01
経 口 剤 投 与 の1例
と糖 尿 病 食 に よ る治 療 の1例
は い ず れ も高 齢(84歳,
88歳)で
あ っ た.経
口
図1 成 因別 にみ た慢 性 膵 炎 の生 存 曲線
糖 負 荷 試 験 に て 境 界 型 を 示 した ア ル コー ル 性 膵
炎 の1例
が 原 因 不 明 の 肺 炎 に て 発 症 後1週
死 亡 し た.糖
例 は,い
間で
尿 病 に よ る 腎 不 全 に て 死 亡 し た3
ず れ も コ ン トロ ー ル の 困難 な イ ン ス リ
胆 石 性 膵 炎 例 で,焜
炉 の 火 が 衣 服 に 燃 え移 り焼
死 し た.
死 亡 例 と生 存 例 の 特 徴 を表4に
示 す. 喫煙状
ン投 与 症 例 で,飲 酒 を継 続 した ア ル コー ル 性 膵
態,糖
炎 で あ っ た.心
態 は 死 亡 と有 意 な 関 連 が あ り,内 分 泌 機 能 が 低
不 全 に て 死 亡 し た3例
の う ち,
1例 は 経 口剤 の 投 与 が 必 要 で あ っ た73歳 の 糖 尿
病 合 併 例 で あ り,他 の2例
歳)で
あ っ た.膵
は 高 齢 者(78歳,
炎 に て死 亡 し た2例
は,い
尿 病 の状 態 とア ル コー ル 性 膵 炎 の 飲 酒 状
下 す る ほ ど,
1日 の 喫 煙 量 が 多 い ほ ど,ま た 飲
87
酒 を継 続 す る ほ ど慢 性 膵 炎 の 死 亡 率 は 高 値 を示
ず
した.
れ も 飲 酒 を継 続 し疼 痛 が 続 い た ア ル コー ル 性 膵
実 際 に観 察 され た 慢 性 膵 炎 の 死 亡 者 数,癌
炎 で あ り,急 性 膵 炎 様 の 症 状 を呈 し,多 臓 器 不
者 数 とperson-year法
全 に て 死 亡 し た.術
本 人 の 死 亡 者 数,癌
例 の うち,
後 の 合 併 症 に て 死 亡 し た2
1例 は 疼 痛 軽 減 の た め に 膵 部 分 切 除
術 が 施 行 さ れ,他
の1例
は 膵 嚢 胞 に よ る下 行 結
腸 の 狭 窄 に 対 す る手 術 が 施 行 さ れ た.い
ずれ も
術 後 の 縫 合 不 全 に て 死 亡 し た.消 化 管 出血 に よ
る死 亡 例 は 糖 尿 病 を合 併 して い た76歳 の ア ル コ
ー ル性 膵 炎 例 で あ り,急 激 な大 量 の 出 血 に よ り
出 血 死 した.自 殺 に よ る死 亡 例 は69歳 の ア ル コ
ー ル依 存 症 例 で あ り,他 院 に て 入 院 中 に 飛 び 降
り 自 殺 を は か っ た.事
故 に よ る死 亡 例 は70歳 の
死
にて計 算 された一般 的 日
死 者 数 を 表5に
示 す.慢
性
膵 炎 の 死 亡 者 数 と癌 死 者 数 は一 般 日本 人 と比 較
す る と有 意 に 多 か っ た.成
性 膵 炎 が 死 亡 者 数,癌
因別 で は ア ル コー ル
死 者 数 と も有 意 に 多 く,
非 ア ル コ一 ル性 も 多 い 傾 向 に あ っ た.
Coxの
重 回帰 型 生 命 表 法 に よ り予 後 と有 意 な
関 連 を認 め た 因 子 を 表6に 示 す.標 準 化 した デ
ー タ ー を用 い て検 討 す る と
,最 も予 後 と関 連 が
深 い の は 診 断 時 の 年 齢 で あ り,つ い で 喫 煙 状 態,
糖 尿 病,性
別,疼
痛 経 過,成
因,診
断 時の年代
慢性 膵 炎の経過 と予後 487
表6 慢 性 膵 炎 の予 後 に 関す る因子
Coxの
重 回 帰 型 生 命 表 法 を 用 い た. a)p<0.05b)
p<0.01
表7 ア ル コー ル 性膵 炎 と非 アル コー ル性 膵炎 の 予後 に 関 す る因 子
Coxの
重 回 帰 型 生 命 表 法 を 用 い た.
で あ っ た.単
a)p<0.05
な る 生 存 率 の検 討 で は,図1に
b)p<0.01
示
率 で あ っ た(p<0.05).非
ア ル コー ル性 膵 炎 の
す ご と く成 因別 の 生 存 率 に 有 意 差 を 認 め な いが,
予 後 と有 意 な 関 連 を もつ 因 子 は表7に
Coxの
く診 断 時 の 年 齢,喫
重 回帰 型 生 命 表 法 に よ りア ル コー ル 性 と
非 ア ル コー ル 性 の 背 景 因 子 を一 致 さ せ る と ア ル
考
コー ル 性 は非 ア ル コー ル 性 よ り有 意 に 予 後 不 良
1.
で あ っ た.
表7に
ア ル コー ル 性 膵 炎 の 予 後 と有 意 な関 連
示す ご と
尿 病 で あ っ た.
察
合併 症
慢 性 膵 炎 に は そ の 病 態 と関 連 し た合 併 症 と慢
準 化 し た デ ー ター の 検 討
性 膵 炎 の 飲 酒 歴 や 喫 煙 歴 と関 連 し た合 併 症 が あ
も予 後 と関 連 が 深 い の は 診 断 時 の 年 齢 で
る(1),いず れ の合 併 症 もそ の 発 現 頻 度 は 報 告 に よ
を もつ 因 子 を 示 す.標
で,最
煙 状 態,糖
あ り,次 い で 糖 尿 病,喫
酒 状 態,診
煙 状 態,疼
断 時 の 年 代 で あ っ た.診
痛 経 過,飲
り こ と な り,Worning(1)は
断後 の飲 酒
象 の 母 集 団 が こ とな る こ と,合 併 症 の 検 出 に 対
そ の 原 因 と して調 査 対
ル コー ル
す る研 究 者 の 熱 意 が こ と な る こ と,合 併 症 の 頻
性 膵 炎 に お い て 禁 酒 ま た は 節 酒 を守 っ た 例 の 生
度 が 慢 性 膵 炎 の 経 過 と と も に 変 化 す る こ と を挙
存 率 は飲 酒 を 継 続 した例 と比 較 す る と有 意 に 高
げ て い る.
状 態 別 の 生 存 曲 線 を 図2に
示 し た.ア
488 三
宅
啓
文
胃・
十 二 指 腸 潰 瘍 は 膵 炎 類 似 の 腹 痛 を呈 す る が,
膵 炎 の 場 合 とは こ とな りH2受
容 体 拮 抗 薬 な どの
治 療 に よ る 反 応 が極 め て 良 好 な の で,早
急 に発
見 し,治 療 す る こ とが 重 要 で あ る.
慢 性 膵 炎 に お い て 肝 障 害 の 合 併 率 が 高 い とす
る 報 告 は 多 い(18,
36−38).膵臓 と肝 臓 の 障 害 程 度 に
関 しては,相 関 を認 め な い報 告(37)と認 め る報 告(38)
とが あ るが,今
回 の 検 討 で は 膵 外 分 泌機 能 の 障
害程 度 と肝 障 害 の 程 度 とは 相 関 を認 め な か っ た.
本 報 告 で は合 併 した 肝 疾 患 に よ る死 亡 は 認 め な
か っ た が,肝 硬 変 に よ る肝 不 全 や 食 道 静 脈 瘤 の
破 裂 に よ る死 亡 の報 告(6.11)もあ り,そ の早 期 診 断
と治 療 が 重 要 で あ る.
慢 性 膵 炎 に は,本
図2 診 断 後 の飲 酒 状 態別 にみ た ア ル コー ル 性慢 性
膵 炎 の 生存 曲線
報 告 と 同様 に 十 二 指 腸 狭 窄
の 合 併 が 低 頻 度 な が ら報 告 さ れ て い る(22,
39).主
訴 は 上 腹 部 痛 と嘔 吐 で あ る こ とが 多 く,治 療 に
関 し て は 最 終 的 に は 手 術 が 施 行 さ れ る例 が 多 い
本 報 告 で は 膵 仮 性 嚢 胞 の合 併 を29例(17%)
が,十 二 指 腸 狭 窄 が 可 逆 性 で あ る場 合 もあ る た
に 認 め たが,報 告 に よ り(2,
18,19)その合 併 率 は9∼45
め 一 般 的 に は3∼4週
%と
適 応 を決 定 す る(40).
こ と な る.治 療 法 と して は,嚢
失 を期 待 して6週
胞 の 自然消
間 前 後 の 経 過 観 察 を行 な うが,
そ の 他 の 合 併 症 に 関 す る考 察 は,つ
嚢 胞 が 消 失 し な い 場 合 に は膵 炎 の病 態 が 遷 延 し
の項 で お こ な う.
た り,あ
2.
る い は 出 血,穿
孔,感
染 な ど を併 発 し
て 死 に至 る可 能 性 が あ る の で手 術 が 必 要 とな
間の保 存的 治療後 に手術
予
ぎの 予 後
後
慢 性 膵 炎 の死 亡 率 は5∼53%と,報
告により
る(20,
21).本 報 告 で も膵 嚢 胞 合 併 例 の18例(62%)
異 な る(2,
3,5,6,9,10,22). Worning(1)は,報
告により
に 手 術 が 必 要 で あ っ た.
死 亡 率 が こ とな る原 因 は不 明 で,治 療 法 や 観 察
膵 内 胆 管 の 狭 窄,閉
期 間 と関 連 が な く,地 域 差 もな く,ま た こ の10
塞 は慢 性 膵 炎 の8∼55%
に 認 め られ る(14,
22−24).治療 法 に 関 し て は 肝 障 害
年 間 で慢 性 膵 炎 の 死 亡 率 に 変 化 は な い と指 摘 し
と胆 管 炎 を併 発 す る た め に手 術 が 必 要 で あ る と
て い る. Pedersenら(5)は
す る報 告(25−27)と
黄 疸 が 出 現 して も手 術 の 適 応 は
炎 の 死 亡 率 が 一 般 人 と比 較 して 有 意 に 高 い と報
少 な い とす る 報 告(28,29)があ る.本 報 告 の 症 例 で
告 して い る.
は,黄
疸 が 遷 延 す る胆 管 狭 窄 例 は胆 管 炎 や 肝 障
害 の 併 発 を懸 念 して 積 極 的 に 手 術 を施 行 し た.
十 二 指 腸 潰 瘍 の 合 併 率 は2∼38%と
本 報 告 と 同様 に慢 性 膵
慢 性膵 炎の主 た る死 因は膵炎 の増悪 発作 や糖
尿 病 な ど膵 炎 と関 連 し た合 併 症 で あ る とす る報
報告 によ
告(4,5,36,41),悪 性 疾 患 で あ る とす る 報 告(7,39),合併
り こ と な る(5,
9,15,30−32).発生 機 序 は膵 液 の 分 泌 低
す る肝 障 害 で あ る とす る報 告(6.11,18)など種 々 で あ
下 に よ り十 二 指 腸 腔 内 のpHが
る.今
低下 す るため と
され て い る(9,
31−34).本
報 告 で も 同様 の結 果 を得 た.
欧 米 の 報 告 に は 胃潰 瘍 の 合 併 は 少 な い.こ
れは
回 の 検 討 は 合 併 し た 悪 性 腫 瘍 が 主 た る死
因 で あ り,ま た 悪 性 腫 瘍 に よ る 死 亡 率 はRocca
ら の 報 告(42)と同 様 に 一 般 人 と比 較 す る と有 意 に
欧 米 で の 胃 潰 瘍 の 発 生 率 が 本 邦 よ り低 率 で あ
高 値 で あ っ た. Ammannら(39,
る(35)こと と関 連 が あ る と思 わ れ る.慢 性膵 炎 に
は 膵 以 外 の 悪 性 腫 瘍 と くに 口腔 内,喉
お け る 胃潰 瘍 の 成 因 は い ま だ に解 明 され て い な
食 道 な ど の 悪 性 腫 瘍 の 発 生 率 が 高 く,飲 酒,喫
い. Vantiniら(34)は 本 報 告 と 同様 に 潰 瘍 の 合 併
煙,糖
と喫 煙,飲
い る,し
酒 と は 関 連 が な い と報 告 して い る.
尿 病,免
43)は,慢 性 膵 炎 で
頭,肺,
疫 能 の 低 下 な ど を 原 因 と考 え て
か しRoccaら(42)は
合 併 す る悪 性 腫 瘍
慢 性 膵 炎 の 経 過 と予 後 の 発 生 率 は 年 齢 と有 意 な 相 関 を示 す が,飲
喫 煙,糖
酒,
尿 病 とは 有 意 の 関 連 を 認 め な い と報 告
して い る.本 報 告 で は,悪
喫 煙,糖
性 腫 瘍 全 体 は飲 酒,
尿 病 と有 意 の 関 連 を 認 め な か っ た が,
489
しや す い 要 因 と して糖 尿 病 と加 齢 とが 推 察 さ れ
た.糖 尿 病 を と もな わ な い53歳 の ア ル コー ル 性
膵 炎 例 の死 因 とな っ た 肺 炎 は 原 因 不 明 で あ るが,
多 量 の飲 酒 と喫 煙 と と もにMasoeroら(48)が
指
飲 酒 や 喫 煙 と関 連 が 深 い とされ る悪 性 腫 瘍 例(喉
摘 す る慢 性 膵 炎 に お け る肺 の 機 能 障 害 が 関 与 し
頭 癌,食
て い る可 能 性 も あ る.
道 癌,肺
癌)は
も 多 い例 で あ っ た.い
飲 酒 を 継 続 し,喫 煙 量
ず れ に して も,本 邦 に お
本 報 告 で は膵 炎 に よ る死 亡 と手 術 後 の 合 併 症
い て も慢 性 膵 炎例 に は膵 の み な らず 他 臓 器 の 悪
に よ る死 亡 を2%に
性 腫 瘍 の 発 生 率 が 高 い こ とが 判 明 した わ け で,
Ammannら(4%)(47),
Legerら(3%)(49),
患 者 管 理 中 に は そ の 早 期 発 見,早
Moreauxら(4%)(50)の
報 告 とほ ぼ 一 致 す る.
期 治療 に心が
け る必 要 が あ る.
の発 現 頻 度 は
膵 炎 そ の もの に よ る死 亡 は 意 外 に 少 な い こ とが
糖 尿 病 に と も な う合 併 症 が 慢 性 膵 炎 の 主 た る
死 因 で あ る とす る報 告(36,41)は多 い が,反 対 の 報
告(11,44)もあ る.本 報 告 で は 腎 不 全 の3例,頓
の5例(3例
認 め た.こ
死
わか る.
自殺 は ア ル コー ル 依 存 症 例 と と も に 慢 性 膵 炎
例 に もそ の 頻 度 が 高 い(43,
45,51,52).今回 の 検 討 で は
の 低 血 糖 疑 い,
2例 の 心 筋 梗 塞 疑
飲 酒 を継 続 し た1例
い),治 療 不 応 性 の肺 炎 の2例
が糖 尿病 の合 併症
性膵 炎の 診療 にあた って は内科的 な面 ばか りで
に よ る死 亡 と考 え られ た.従
来 い われて い たこ
な く精 神 医 学 的 な面 の ア プ ロー チ も必 要 で あ る.
と と こ とな り,膵 性 糖 尿 病 で も糖 尿 病 合 併 症 の
発 生 頻 度 が 本 邦 に お い て もか な り高 く,悪 性 腫
瘍 に つ い で慢 性 膵 炎 の死 因 の 第2位
とが 判 明 し た わ け で,慢
を占め るこ
性 膵炎 の治療 に おけ る
糖 尿 病 管 理 の 重 要 性 を 見 な お す 必 要 が あ る.
回 の 検 討 で は,頓
死 の 原 因 と して1例
クモ 膜 下 出 血 と判 明 し,他 の6例
塞,低
血 糖,脳
消 化 管 よ りの 大 量 出 血 に よ る死 亡 を1例(1
%)に
認 め た.慢
性膵 炎の 消化管 出血 の原 因 と
し て は,膵 周 囲 の 血 管 の 炎 症 性 侵 襲 に よ る 出 血,
食 道 ・胃静 脈 瘤 か ら の 出 血,消
化 性 潰 瘍 か らの
出 血 な ど が 報 告 され て い る(1).早期 発 見,早 期 治
慢 性 膵 炎 の 死 因 と して 頓 死 の 報 告(4,5,7,43)は多
い.今
が 自殺 し た. し た が っ て 慢
は
療 が 重 要 で あ る.
慢 性 膵 炎 の 成 因 別 の 予 後 の 検 討 に 関 して は,
は急性心 筋梗
ア ル コー ル性 膵 炎 が 非 ア ル コー ル 性 に く らべ て
梗 塞 が 疑 わ れ た.慢 性 膵 炎 の 死
予 後 不 良 で あ る との 報 告(41,45)と差 を認 め な い と
因 に 心 筋 梗 塞 を認 め る報 告(8,10,22,24)は多 く,飲 酒,
の 報 告(5,53)があ る.ア ル コー ル 性 と非 ア ル コー ル
喫 煙,糖
性 とで は 性,年
尿 病 な ど と の 関 連 が 考 え ら れ る.低 血
齢 構 成 な ど の 背 景 因 子 が こ とな
糖 に よる死 亡 例 を認 め た 報 告(4.7,45)も多 く, Linde
り,単 に 死 亡 率 の み の 比 較 で は 不 十分 で,本 報
ら(46)は
慢 性 膵 炎 で は イ ン ス リン と と もに グ ル カ
告 と同 様 に種 々 の 背 景 因 子 を 統 計 学 的 に 一 致 さ
ゴ ン の 分 泌 も低 下 し,低 血 糖 を起 こ しや す い と
せ て 比 較 す る必 要 が あ る(7).本報 告 に お い て は,
指 摘 して い る.ま た 飲 酒 の 継 続 例 で は,ア ル コ
ー ル 自体 の 作 用 と 食 生 活 の 乱 れ に よ る 不 節 制 が
死 亡 率 を単 純 に 成 因 別 に 比 較 し た場 合 に は 有 意
血 糖 値 に 影 響 を 与 え る と考 え ら れ,本
に よ る検 討 で は ア ル コ ー ル 性 膵 炎 の ほ うが 有 意
も低 血糖 に よ る と思 わ れ る死 亡3例
報告 にて
は 飲 酒 を継
差 を認 め な か っ た が, Cox の 重 回 帰 型 生 命 表 法
に 予 後 不 良 で あ っ た.慢
続 し,イ ン ス リ ン の 治 療 を受 け て い た ア ル コー
だ す に と ど ま ら ず,成
ル 性膵 炎 例 で あ っ た.
が あ る.
慢 性膵 炎 の 死 因 に 肺 炎 が 含 まれ た報 告 は 多
い(7,10,47). Ammannら(43,
47)は,肺 炎 に よ る死 亡
ア ル コ-ル
との 間 に は,本
性膵 炎 はその診 断 を く
因 の 診 断 も重 視 す る必 要
性
生膵 炎 の 予 後 と診 断 後 の 飲 酒 状 態
報 告 と同様 に 有 意 な 関 連 を認 め
率が アル コール性 膵炎 に て有 意 に高値 であ るこ
る報 告(7,19)と,認 め な い 報 告(5,9)とが あ る. White
と よ り治 療 抵 抗 性 の 肺 炎 は 多量 の 飲 酒 と関 連 が
ら(6)は飲 酒 継 続 者 は 合 併 す る肝 不 全 にて 死 亡 す る
あ る と報 告 して い る が,本
と報 告 して い るが,今
報告 では肺 炎に よ る
死 亡 率 に は 成 因 に よ る差 を 認 め ず,肺
炎 を合 併
回の検 討 では肝障 害 に よ
る死 亡 は な く,悪 性 腫 瘍,膵
炎,糖
尿病 の合併
490 症,自
三
殺 が 死 因 で あ っ た.ア
お い て は,禁
宅
ル コー ル 性 膵 炎 に
酒 は疼 痛 の 緩 和 や 生 活 の 質 の 維 持
啓
文
例,消
化 性 潰 瘍26例 の 合 併 を 認 め た.消
化性 潰
瘍 に よ る腹 痛 は 治 療 に き わ め て 良 好 に 反 応 す る
ば か り で な く生 命 の 予 後 の 改 善 に も重 要 で あ る
ため,慢
こ とが わ か る(15).
増 悪 と消 化 性 潰 瘍 との 鑑 別 が 必 要 で あ る.肝 障
喫 煙 は 一 般 人 の生 存 率 を有 意 に低 下 させ る(54).
慢 性 膵 炎 で もア ル コー ル 性,非
ア ル コー ル 性 と
も に 喫 煙 は 予 後 と有 意 な 関 連 を 示 し た.す
ち,慢 性 膵 炎 の 患 者 管 理 に お い て は,禁
なわ
煙 の指
導 も重 要 で あ る こ と が 判 明 し た.
性 膵 炎 の 経 過 中 の 腹 痛 に対 して は 膵 炎
害 を35例 に 認 め,そ
の うち 肝 硬 変 は9例
た.十 二 指 腸 の 狭 窄 を2例
2)
経 過 観 察 中 に39例
で あっ
に認 め た.
の 死 亡 を 認 め た.ア
ル コ ー ル 性 の 死 亡 時 の 平 均 年 齢 は 非 ア ル コー ル
性 に 比 較 す る と有 意 に 低 年 齢 で あ っ た.死
糖 尿 病 患 者 は − 般 人 よ り も予 後 が 不 良 で あ
因の
内 訳 は 悪 性 腫 瘍 が 最 も 多 く, 13例 の死 亡 を 認 め
る(55).慢 性 膵 炎 に お い て も糖 尿 病 の 合 併 は 予 後
た.頓
を不 良 とす る 因 子 で あ っ た.糖
性 の 肺 炎 に て6例
が 死 亡 した.ま
る 腎不 全 に て3例
が 死 亡 し,心 不 全 に て3例
尿病 管理 の重要
性 に つ い て は す で に 述 べ た.
慢 性 膵炎 の死 亡者 に疼痛 継続 者が 多い こ とは
Hayakawaら(56)やGastardら(18)に
よ り報 告 さ
死 に よ る 死 亡 を7例 に 認 め,治
療 に不応
た糖 尿 病 に よ
が
死 亡 した.
3)
慢 性 膵 炎 の 死 亡 率 と癌 死 率 は性 と年 齢 構
れ て い る.今 回 の検 討 で も 同 様 の 結 果 で あ っ た.
成 を一 致 させ た一 般 的 日本 人 よ り有 意 に 高 率 で
禁 酒 や 食 事 療 法 の 指 導 に 加 え て,薬 物 療 法 に よ
あ っ た.成 因 別 で は ア ル コー ル 性 膵 炎 が 死 亡 率,
っ て 疼 痛 の軽 減 をは か る こ とが 重 要 で あ る.
癌 死 率 と もに 有 意 に 高 率 で あ っ た.対
膵 石 と予 後 との 関 係 につ いて は, Gastardら(18)
の 関 連 が あ る とす る報 告 とPedersen(5)ら
い とす る報 告 が あ る.今
のな
回の検 討で は膵石 は予
象の背景
因 子 を一 致 させ る と ア ル コ ー ル 性 は 非 ア ル コー
ル 性 よ り有 意 に 予 後 不 良 で あ っ た.ア
ル コー ル
性 膵 炎 で は,予 後 と関 連 が 深 い 因 子 は 診 断 時 の
後 と の 関 連 を認 め な か っ た.一 般 に 膵 石 は慢 性
年 齢,糖 尿 病,喫
膵 炎 進 展 例 に 多 い が,例 外 も少 な くな い(57).こ
診 断 時 の 年 代 で あ り,非 ア ル コー ル 性 膵 炎 で は
の 事 実 が 今 回 の 成 績 を説 明 す る と考 え られ る.
診 断 時 の 年 齢,喫
今 回 の 検 討 で は,診
断 時 の 年 齢 と性 別 が 予 後
と有 意 の 関 係 を示 し た.慢
性膵 炎で は膵炎 その
も の に よ る死 亡 率 は 低 くむ し ろ 膵 炎 と直 接 関 連
の 少 な い 疾 患 に よ る死 亡 率 が 高 い た め,一
に て 認 め ら れ る生 命 へ の 予 後 因 子(年
な ど)は,慢
煙 状 態,糖
尿 病 で あ っ た.し
たが って慢性 膵炎 の予 後改善 の ため には禁酒や
禁 煙 を守 り,糖 尿 病 に 対 す る十 分 な 治 療 が 必 要
で あ る.
般人
齢や性 別
稿 を終 え るに あた り,御 懇 篤 な る御 指 導 な らびに
性 膵 炎 症 例 に お い て も適 応 さ れ る
御 校 閲 を賜 わ りま した恩 師木 村郁 郎教 授 に深 甚 の謝
と考 え られ る.ま
た 慢 性 膵 炎 と 診 断 さ れ た年 代
近 年 に お け る 医 療 施 設 の 充 実,治
た岡 山大 学 環境 病 態研 究 施 設 原 田英雄 教 授 に深謝 申
療 の 進歩 お よ
し上 げ ます . さ らに研 究 に御 協 力 い ただ きま した諸
び 検 診 の 充 実 な ど の 医 療 体 制 の 改 善 が,慢
性膵
炎 の 死 因 と な る疾 患 の 早 期 発 見 や 早 期 治 療 に 結
論
1年 以 上 の 経 過 観 察 が な さ れ た慢 性 膵 炎 Ⅰ群
170例(ア
ル コー ル 性112例,胆
性49例)に
お け る合 併 症,死
因 子 の検 討 を行 い.以
先 生 に 感謝 致 します.
本 論文 の要 旨 は第75回 日本消 化 器病 学 会総 会 にお
いて 発 表 した.
び つ い た た め と考 え ら れ る.
結
意 を表 します.ま た終 始御 懇 篤 な る御 指 導 を賜 わ っ
れは
と予 後 との 間 に も有 意 な 関 連 を認 め た.こ
1)
煙 状 態,一疼 痛 状 態,飲 酒 状 態,
石 性9例,特
発
因お よび予 後決定
下 の 結 論 を得 た.
経 過 観 察 中 に 膵 嚢 胞29例,胆
管 の狭 窄20
慢 性 膵炎 の経過 と予 後 文
1)
Worning
H:
Clinics
2)
the
last
(1984)
pp
Potts
Dani
21
years:
in
and
IN,
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10)
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calcific
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(1982)
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of
142
4,
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L,
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DR:
G
Fennelly
Piubello
Greenlee
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Louw
Kunichika
Dig
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Diabetologica
13)
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I,
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P,
B
57,
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Vaona
operated
Green
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12)
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189,
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Bernades
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LA,
Marzoli
natural
operated
therapy
142,
BN,
Harada
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J
Slavotinek
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Scuro
Med
of
Surg
panceatitis.
9)
145
Gyr,
AH,
Afr
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Ann
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W,
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38)
associated
-599
39)
40)
Benini
ci
Ilmann
pancreatic
P,
peptic
G,
in
SJ:
Gut
Benini
Digestion
ulcer;
Rune
function.
Talamini
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pp
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Scuro
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rgensen
reduced
Scuro
Duodenal
Philadelphia
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494 三
Studies
on clinical
Part
宅
course
and
3. Complications,
啓
prognosis
prognosis
Hirofumi
Okayama
University
(Director:
(CP), 170 patients
Pancreatic
prognosis
relieved
stenosis
was found in two patients.
Thirty-nine
was observed
patients
younger
patients
malignancy
died from
pancreatitis
CP and 49 with idiopathic
the abdominal
treatment.
those
with CP;
the follow-up
antagonist.
patients
Mild liver damage
Patients
with alcoholic
cause of deaths.
died from pneumonia
renal
failure
CP
Thirteen
Sudden
deaths
which was refractory
died from diabetic
or
in nine. Duodenal
CP at the time of death.
which was the most frequent
Three
pain due to peptic
and liver cirrhosis
period.
and
pain is caused by acute
because abdominal
with nonalcoholic
Six patients
in 20 patients,
to the
and three
from
failure.
The observed
sex-age-matched
obtained
number
outcome
of CP was significantly
general
in alcoholic
Contributing
habit,
than
in seven patients.
medical
for chronic
with CP, biliary stenosis
of HZ-receptor
in 26 patients
with CP died during
were significantly
were observed
factors
CP, nine with biliary
of whether
by administration
hepatitis
heart
and prognostic
Determination
chronic
intensive
I. Kimura)
of CP or by the peptic ulcer is important,
is easily
Medicine,
700, Japan
were found in 29 patients
a peptic ulcer in 26 patients.
ulcer
factors
up.
pseudocysts
exacerbation
prognostic
Medical School,
Prof.
with CP (112 with alcoholic
CP) were followed
pancreatitis
of Internal
Okayama
complications,
and
of chronic
MIYAKE
Second Department
To investigate
文
factors
population
CP. Alcoholic
CP showed
to the prognosis
of pain, years at diagnosis
smoking
habit
and
smoking,
and careful
diabetes
treatment
higher
in total deaths
than
and cancer
poorer
the expected
deaths.
prognosis
than
were age at the time of diagnosis,
in alcoholic
in nonalcoholic
for diabetes
CP, whereas
CP. This
are important
indicates
number
A similar
for the
finding
nonalcoholic
diabetes,
was
CP.
smoking
they were age at diagnosis,
that
for improving
abstinence,
the prognosis
quitting
of CP.
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