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債券アンコンストレインド戦略について

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債券アンコンストレインド戦略について
年金コンサルティングニュース
みずほ総合研究所株式会社
年金コンサルティング部
03-3591-8950
CopyrightⒸみずほ総合研究所 2016
無断転載を禁ず
2016.1
債券アンコンストレインド戦略について
米国では昨年12月FOMCで利上げが決定され、いよいよ大規模金融緩和からの転換に向けた歴史的な舵が切られた。
一方、日本や欧州では、当面超低金利状況が継続することが想定されている。その様な状況下、国内外の債券運用に
おける期待リターンは極めて低位な水準とならざるを得ず、当該運用のリターンを投資手法で補う「債券アンコンス
トレインド戦略」が、世界的に普及している。そこで今回は、当該戦略登場の背景やその特徴、戦略評価のポイント、
留意点等について整理してみたい。
■債券アンコンストレインド戦略とは
「アンコンストレインド(unconstrained)」とは、
あり、また合議制による意思決定プロセスでは、機
動的な対応も困難である。
和訳すると「制約が無い」という意味であり、運用
そこで、それらの問題点をプロである運用機関に
戦略的には、ベンチマーク等の制約が少なく自由度
任せてしまおうという意図から、債券アンコンスト
が高いということである。具体的には、①国債、投
レインド戦略が普及してきたと考えられる。
資適格社債、ハイイールド債、新興国債券等の複数
のセクターに幅広く投資を行う。②ベンチマークを
■運用手法の例
意識しない絶対リターン型が多い。③運用環境に応
下記に現在提供されている運用手法の例を示すと
じて、セクター配分比率やデュレーション等を機動
共に、一般的な運用戦略の概要について述べること
的に変更する。④デュレーションは基本ロングで主
とする。
にヘッジ目的でショートとすることもあるが、その
<運用戦略概要>
期間は短期間である。といった特徴が見られる。
運用手法
A
B
投資対象
先進国債券(主に国債)中
心に、投資適格社債、
ABS債、エマージング債、
ハイイールド債、転換社
債、デリバティブ等
国債、政府系機関債、国
際機関債、社債(含むハ
イ・イールド債券)、エマー
ジング債、モーゲージ証
券、アセットバック証券、
デリバティブ等
目標収益率
3ヶ月円Libor+3~5%程度
4~5%程度
想定リスク
5%程度以下
5~6%程度以下
-6年 ~ +12年
(ロングを基本)
ゼロ年を基点に
機動的に調整
ベータ
+ セクターローテーション
アルファ
+ ベータ
+ セクターローテーション
■戦略登場の背景
年金基金の運用では予定利率の引き下げにより、
株から債券への配分シフトが行われ、配分が増加し
た債券部分の運用では投資対象セクターが先進国国
債以外にも分散が図られ、社債、ハイイールド債、
デュレーション
バンクローン、新興国債券等への投資が拡大した。
その後2015年前半までグローバルな過剰流動性供給
により金利及び信用スプレッドは低下を続けた。こ
の結果、足元の超低金利環境では十分な運用利回り
収益の源泉
現物ショートの有無
無し
無し
レバレッジの有無
無し
無し
流動性
日次
日次
(出所:各運用機関からの情報を基にみずほ総合研究所作成)
確保が困難な状況となっている。
更に、米国が利上げを開始し、日欧の先進国中心
に今後の金利上昇局面を想定すると、債券ポートフ
投資対象は流動性を重視し、国債、社債、MBS等を
ォリオの期待リターンは低水準どころか、マイナス
中心とするものが多く見受けられるが、各セクター
となる可能性すら想定される。何とか金利上昇局面
の配分比率は、各運用会社の運用方針、市場見通し
への対応を施そうにも、金利上昇のタイミングや、
等を反映し、運用手法毎にかなり異なった様相を呈
そのスピードを予測するのは一般的にかなり困難で
している。
を見出すことができる。ヘッジファンドは、金利リ
<セクター配分比率(2015年9月末)>
スク、クレジットリスク共にロング/ショートポジ
国債、地方債
ションの機動的な変更を行い、ショートポジション
投資適格社債
HY債
の保有期間も短期間とは限らない。また、リターン
転換社債
MBS
プロダクトA
ABS
プロダクトB
EM債
を積み増す為に、レバレッジを掛けることもある。
一方で、債券アンコンストレインド戦略は、金利
その他
現金等
リスクやクレジットリスクはロングポジションが中
(出所:各運用機関からの情報を基にみずほ総合研究所作成)
心であり、レバレッジを掛けるものはほとんど見受
ショートポジションはヘッジ目的での保有が中心
けられない。しかし、決まった定義が有る訳ではな
である。現物をショートすることは稀で、指数先物、
いので、様々な運用機関から提供されている「アン
クレジット・デリバティブ・スワップ(CDS)等のデ
コンストレインド」と名の付く運用戦略の中には、
リバティブ取引を用いることが多い。また、ショー
ヘッジファンドとの違いが微妙なものが存在してい
トポジションの保有期間は短期間であることが一般
るのも事実である。
的である。
<イメージ図>
デュレーションは基本ロングで、相場動向により
一定のリスク配分の中で機動的に調整を行ってい
ヘッジファンド
金利リスク
シティWGBI
バークレイズ
グローバル債券総合
インデックス
債券アンコンス
トレインド戦略
る。相場見通しに強い確信を持つ時には、一時的に
ショートとすることもあり、2014年半ばに米国の利
上げ懸念が高まった時には、多くの債券アンコンス
トレインド戦略が米国を中心にデュレーションを
クレジットリスク
ショートとした。その後米国利上げの可能性が低下
していく中で、ショートデュレーションの修正をど
のタイミングで実施したかが、その後のパフォーマ
ンスの優劣に繋がった。また、金利リスクは基本的
(出所: みずほ総合研究所作成)
に中立化することを標榜し、デュレーションの基点
をゼロ近傍としている戦略も見受けられる。
また、債券アンコンストレインド戦略の収益の源
■評価のポイント
泉は、主に機動的なセクターローテーションに見出
ポートフォリオマネージメントチーム(以下、
「PM
すことが出来るが、プロダクトによっては、各セク
チーム」)が各セクターチームにリスクバジェッティ
ターにおけるアルファ追求にも注力しているもの
ングを行い、各セクターチームが個別銘柄選択を行
もある。
う運用体制であることが一般的である為、PM チーム
の運用能力が評価上の重要なポイントになる。その
■ヘッジファンドとの違い
能力を測るには、過去の金利上昇局面や、市場のボ
債券アンコンストレインド戦略は、世の中に明確
ラティリティが高まった局面での対応事例を振り返
な定義が存在する訳ではなく、また機動的にセクタ
り、セクター配分比率の変更が実際に機動的に行わ
ー配分やデュレーションを変更することから、ヘッ
れたか(市場の後追いとなっていないか)、逆にリス
ジファンドとの区別が付き難い戦略である 。ここ
クオフからリスクオンのポジションに戻す際のタイ
で、現在世の中に存在している債券アンコンストレ
ミングも機動的に行われているか等について、その
インド戦略をベースに整理すると、次の様な相違点
判断プロセスと共に確認すると良いであろう。また、
機動的なセクターローテーションを主な収益の源泉
としつつ 、各セクターチームにおけるアルファ追求
も収益の源泉として標榜している戦略もある為、そ
の際には、主力となるセクターチームの優位性がど
こにあるのか等を評価することも重要である。
またPMチームによるセクター配分が、主にリスク
バジェッティング方式で行われる為、その算出を支
えるリスク管理体制、インフラ、人員等についても
確認が必要であろう。
■留意点
債券アンコンストレインド戦略と称される運用手
法が登場してから未だ歴史が浅い為、過去の本格的
な金利上昇局面を実際に経験した運用機関は限られ
ている。運用機関によっては、当該期間の運用実績
をシミュレーションやバックテストという形で示し
ている先も多い。
また、最近のセクター配分比率を見ると、超低金
利局面において少しでも利回りを追求する為に、ク
レジットものにウェイトが傾斜している戦略が数
多く見られる。過去実績への寄与がクレジットもの
に偏っている場合、今後の市場環境への変化に柔軟
に対応出来るか否かについては、留意しておく必要
があろう。
政策アセットミックスとの関係では、オルタナテ
ィブ枠、外国債券代替、ヘッジ付外国債券として円
債代替と位置付ける等、年金基金による対応は様々
である。大切なのは一連の検討プロセスを経て、組
織的に方針が決定されることであり、単一の正解が
ある訳ではない。
上記の様な留意点はあるものの、投資家によって
は採用メリットもある為、それらの考え方を整理し
た上で 、債券アンコンストレインド戦略の採用を
考えてみても良いであろう。
本件に関してご不明点 等ございましたら、ご遠慮なく右記電話番号までお問い合わせください。みずほ総 合研究 所株式会社 年金コンサルティング部 ℡.03-3591-8950
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が
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