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第2章 森林を取り巻く現状等と課題(PDF:1228KB)

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第2章 森林を取り巻く現状等と課題(PDF:1228KB)
第2章
Ⅰ
森林を取り巻く現状等と課題
森林・林業の現状
1
森林の現状
(1) 人工林*と天然林*
森林は、人が苗木を植えるなどして造成された人工林と主として天然の力によ
ってできた森林である天然林に分けられます。
本県における人工林、天然林の概要は次のとおりです。
①人工林
ア.
スギ・ヒノキ等の針葉樹人工林
イ.
クヌギ等の広葉樹人工林
ウ.
クロマツの海岸林(県内沿岸部の大部分)
② 天然林
ア.
照葉樹林*(常緑広葉樹林*:シイ類、カシ類、タブノキなど)
イ.
夏緑樹林(落葉広葉樹林*:ブナ、ケヤキ、サワグルミなど)
ウ.
常緑広葉樹林帯と落葉広葉樹林帯の間に発達する中間針葉樹林
(モミ、ツガなどとア.イ.が混在)
※自然的植生の実態はあくまで二次林*主体で、原生林*はほとんどない。
スダジイ、タブノキ、イスノキなどは亜熱帯林の優占種とも共通している。
(2) 森林面積
・県土の76%、59万ha(民有林41万ha、国有林18万ha)が森林で占められており、その内
約7割が民有林となっています。農地は、10%にも満たない7万haとなってい
ます。
その他
11万ha
農地
7万ha
総土地面積
77万ha
森林
59万ha
民有林41ha
※民有林とは、私有林、市町村有林、県有林等が含まれます。
国有林とは、林野庁等の国の機関が所有している森林です。
資料:地域森林計画書
国有林18万ha
図2ー1
森林面積
- 1 -
○宮崎県における森林の面積・蓄積(森林の木材の量)
(単位:面積はha,蓄積は千㎥、割合は%)
面
区
分
人工林
天然生林
民有林
国有林
合
252,143
104,367
356,510
102,032
[61.4]
[58.7]
[60.6]
[74.3]
143,856
68,947
212,803
35,257
[35.1]
[38.7]
[36.2]
[25.7]
14,474
4,580
19,054
11
[3.5]
[2.6]
[3.2]
[0.0]
410,473
177,893
588,366
137,300
竹林その他
計
※下段[
積
計
蓄積
] は構成比。
※合計は四捨五入の関係で一致しないものがある。
※平成17年3月31日現在。県土(773,476ha)の76%が森林。
1955年当時の民有林面積は、396,221ha(人工林率は24.7%)であった。
1966年当時の民有林面積は、380,703ha(人工林率は43.2%)であった。
(3) 民有林の内容
①人工林の内訳
・民有林41万haの61%、25万haが人工林です。
・人工林の88%、22万haが、スギやヒノキ等の針葉樹であり、残りの12%、3万
haがクヌギやケヤキ等の広葉樹林となっています。
クヌギ等
3万ha
その他
2万ha
天然林
14万ha
図2ー2
民有林
41万ha
ヒノキ
4万ha
人工林
25万ha
民有林の内訳
図2ー3
人工林
25万ha
スギ
18万ha
人工林主要樹種面積
(資料:地域森林計画書)
②人工林の齢級*別構成
・人工林の齢級構成には、団塊の世代ともいうべき偏りがあり、今後、伐採可
能となる森林が急激に増えてきます。
・下刈り*(苗木の植栽後約7年間行う)や除伐*、間伐 *(抜き伐り)等の保育*
作業が必要な35年生以下の森林が約半数、伐採が可能な森林が約半数となっ
ています。
- 2 -
ha
収穫期以上の人工林
50000
45000
40000
35000
30000
25000
20000
15000
10000
5000
0
1齢級
2齢級
3齢級
4齢級
5齢級
図2ー4
6齢級
7齢級
8齢級
9齢級
人工林の齢級構成
10齢級
11齢級
12齢級
13齢級
14齢級 15齢級以上
(資料:地域森林計画書)
(注)齢級とは、林齢を5ヶ年の幅にひとくくりにしたもので、1齢級は、1~5年生、2齢級は6~10年生
15齢級以上は76年生以上である。
③天然林
・本県の天然林は、シイ、カシ、タブ等の常緑広葉樹林をはじめ、ケヤキ、ブ
ナ等の落葉広葉樹林、モミ、ツガ等の針葉樹林からなっています。
・天然林からは主として広葉樹材が生産され、建築や家具等の用材、木炭やパ
ルプ材等として利用されています。
木炭等に利用する場合は20年位で伐採できますが、建築や家具等の用材とし
て使う場合は少なくとも80年くらいの長い時間がかかります。
※天然林とは、伐採された後、切り株から自然に芽がでたり、近くにある樹木の種子が落ちたりして人が手をかけず、自然の力によって森林となったものです。
- 3 -
2
林業の現状
(1) 木材価格の推移
・スギ丸太価格の平均は、平成18年で10,900円/㎥と昭和54年に比べ約3分の1
近くまでに低下しています。
40,000
円
35,500
35,000
30,000
25,200
25,000
19,900
20,000
16,900
18,900
15,000
11,700
11,100
10,000
12,100
10,700
9,000
10,900
9,900
5,000
0
S54
S57
図2ー5
S60
H2
H7
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
資料:山村・木材振興課
スギの原木価格推移
(2) 林業就業者の推移
・林業就業者数は、昭和55年の7,500人から平成17年には2,300人と約7割減少し、
また、65歳以上が約2割となるなど、高齢化が進行しています。
人
8000
65歳
60~
50~
40~
30~
20~
15~
7 ,5 0 3
6 ,6 3 2
7000
5 ,3 9 2
6000
%
4 0 .0
3 0 .0
高 齢 化 率
4 ,2 3 2
5000
以上
64歳
59歳
49歳
39歳
29歳
19歳
2 0 .0
4000
3 ,2 1 2
2 ,3 1 1
3000
1 0 .0
2000
1000
0 .0
0
昭 55
昭 60
平2
図2ー6
平7
林業就業者数の推移
平 12
平 17
資料:国勢調査
(3) 森林整備の状況
・伐採後、植栽等による更新が行われていない森林が1,959haあります。
なお、1箇所の面積が1ha以上のものは、約1,200haとなっています。
・10年間に一度も間伐などの手入れが行われていない森林が、4.6万ha(間伐対
象面積の約28%)以上あると推計されます。
- 4 -
植栽未済地*
間伐の実施状況(過去10年間)
調査年度
面
積(ha)
平成7年度~16年度
面
積(ha)
平成13年度
1,331
対 象 面 積(a)
167,422
平成14年度
1,432
間 伐 実 績(b)
121,369
平成18年度
1,211
差
(a-b)
注) 伐採後3年以上経過している1ha以上の未済地 資料:環境森林課
人工林伐採跡地
46,053
資料:間伐実行調査
手入れが行われていない森林
人工林を伐採した後は、天然林に戻す部分以外について早期に植栽を行い表
間伐が行われないと、林内が暗くなるため下草も生えず、表層土壌
土の流出等を抑えるとともに、木材資源の着実な育成を図る必要があります。
が流出し、水を貯える能力が低下する恐れがあります。
間伐等の手入れが行われている森林
間伐が行われた森林は日光が差し込み、林内には下草が茂り小さな樹木も生え土壌の流失を防ぎ
雨水を貯える能力も高まります。また、一本一本の木の生長が促進され、根も地中深く張りめぐら
されます。
- 5 -
Ⅱ
自然的条件等
1
気候と土壌
(1) 気候
年平均気温が17.2℃、年間降水量が2,457mm、年間日照時間が2,108時間と温暖
多雨で日照条件にも恵まれており、樹木や草類の生育に適した気候です。また、
2004年総務省統計資料によると、平均気温、年間降水量、日照時間がいずれも全
国3位となっております。(観測数値は気象庁の1971~2000年までの平均値)
(2) 土壌
適潤で肥沃な性質を有する適潤性褐色森林土壌がほぼ県下の森林に全面的に分
布しており総体的に林木の生育に適した土壌条件となっていますが、一部には、
黒ボク土壌が出現したり、乾性褐色森林土壌が稜線(山の尾根の線)及び海岸近
くに分布するなど、土地生産性の劣る地域もあります。
なお、県内の地域ごとに分布する土壌一覧は別紙(参考資料P9~)のとおりで
す。
2
森林帯
森林帯は、森林を気候、特に温度の差によって帯状の地域に区分したもので、熱
帯林・温帯林(暖温帯林・冷温帯林)
・寒帯林に分けられます。
本県は、下記のように、我が国の森林帯の中では温帯林に属しており、概ね高度
1,000mを境にして、下部の暖温帯林と上部の冷温帯林に大別することができます。
・暖温帯林
県内の大部分を占め、照葉樹林(常緑広葉樹林)とも呼ばれ、郷土樹種*となる
植生遷移*の進んだ極相林*を構成する代表的な樹種として、タブノキ、シイ類、カ
シ類などがあります。
・冷温帯林
夏緑樹林(落葉広葉樹林)とも呼ばれ、代表的な樹種としてブナ、ケヤキ、サワ
グルミなどがあります。
・中間林帯(暖温帯林・冷温帯林の中間域)
照葉樹林の上部から夏緑樹林の下部にかけては、モミ・ツガを代表樹種とする中
間帯林(移行帯ともいう)と呼ばれる樹林帯があります。
・その他
県南部の海岸線には、ビロウなどの亜熱帯性の植物群落も見られます。
3
自然景観・動植物等
(1) 自然公園等
県内では、霧島屋久国立公園をはじめ、4か所の国定公園、6か所の県立自然
公園が指定されており、その面積は91,784ha(県土の11.9%)に及んでいます。
そのほか、「宮崎県における自然環境の保護と創出に関する条例」に基づく、
- 6 -
自然環境保全地域や緑地環境保全地域、都市及びその周辺地域における風致地区
など、山岳地帯から都市周辺まで豊かな自然環境に恵まれています。
(2) 動植物
・動物
本県には、哺乳類36種、鳥類336種、両生類19種、爬虫類23種が生息していま
す。また、昆虫類は4,500種をこえる生息が確認され、ゲンジボタル等指標昆
虫7種、特定昆虫88種となっています。
指標昆虫:生息分布域が広く、比較的馴染みがありかつ山地から平地までの良好な自然環
境の指標となる昆虫
特定昆虫:ある基準によって都道府県毎に選定した昆虫で、選定基準は分布域が国内の若干
の地域に限定されている種や当該地域において絶滅の危機に瀕している種など
国の特別天然記念物に指定されているニホンカモシカなども生息しています
が、宮崎県版レッドデータブック(平成12年3月)では、哺乳類で6種、鳥類
で23種、両生類・爬虫類で7種、昆虫で55種が絶滅危惧種となっています。
・植物
本県には、維管束植物(シダ植物と種子植物)2,435種117雑種が生育しており
(宮崎県版レッドデータブック)、地理分布要素としては、南方要素、中国中
部要素、日本要素、中国東北部要素、北方要素などが認められ、ことにシダ植
物では南方要素が多くなっています。
このほか、特定植物群落が177群落、複合群落が112群落(宮崎県レッドデータ
ブック)
、「青島亜熱帯性植物群落」(国・特別)などの天然記念物が47件あり、
絶滅危惧種が487種となっています。
また、本県にしかない植物がキバナノツキヌキホトトギス等6種、隣県境界域
まで拡大した植物がヒュウガトウキ等33種あります。
4
山地災害の状況
本県は急峻な地形や、破砕帯など脆弱な地質構造に加え、県央から県南にかけて
広く分布しているシラスなど特殊土壌もあり、特に近年、梅雨や台風等による集中
豪雨に見舞われる機会が多く、山地災害が極めて発生しやすい状況にあります。平
成17年度末に県が指定した山地災害危険地区 *は4,363か所ありますが、治山事業*
による復旧や予防の着手率は42%となっています。
山地災害危険地区の現状(平成17年度)
区
分
山腹崩壊
地すべり
治 山
既 着 手
684
24
事 業
着 手
状 況
未
着
合
治山事業着手率
(単位:箇所)
崩壊土砂流出
合
計
1,122
1,830
手
1,767
3
763
2,533
計
2,451
27
1,885
4,363
28%
89%
60%
42%
資料:宮崎県自然環境課
- 7 -
Ⅲ 社会的条件等
1
本県の林業を取り巻く現状
本県は、スギの素材生産量が16年連続日本一になるなど、我が国を代表する林業
県であり、木材生産に乾しいたけ(生産量全国第2位)などを合わせた林業産出額
が約194億円(全国第4位)となるなど、林業は農山村地域の経済を支える基幹産
業といえます。
一方で、木材価格の低迷による林業採算性の悪化から、森林所有者の経営意欲の
減退や林業就業者の減少・高齢化など厳しい環境にあります。
また、これらを背景として、長期間手入れのされない森林や伐採後に植栽が行わ
れない森林が増加の傾向にあるなど、森林の公益的機能の発揮に支障を来すことが
危惧されています。
(単位:千万円)
林 業 産 出 額
年
木材生産
薪炭生産
きのこ類
合
計
平15
1,653
31
385
2,069
平16
1,714
26
409
2,149
平17
1,547
30
367
1,944
資料 農林水産省統計部
2
森林に対する社会的要請
(1) 国民の期待
内閣府が実施している「森林と生活に関する世論調査」等によると、森林に対
する国民の期待は、災害防止や地球温暖化防止が上位にあるほか、近年、保健休
養への期待が高くなってきています。
図2ー7
「森林に期待する働き」
(2) 京都議定書*の発効
平成17年2月に発効した「京都議定書」において、我が国は、二酸化炭素等の
温室効果ガス*を平成20年から24年までの間に基準年である平成2年の水準に比
- 8 -
べて6%削減することを約束しており、この内3.8%は、植栽等の森林吸収源
対策により確保することになっています。
(3) 循環型社会の構築
「循環型社会形成推進基本法」の趣旨にもあるとおり、我が国は、「大量生産
・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、環境への負荷が少ない「循環
型社会」を構築することが急務になっています。
木材は、太陽エネルギーによって作り出される再生産可能な資源であり、循環
型社会の構築のためには、その利用促進を図るとともに、植栽等による森林の再
生が不可欠です。
(4) 本県における森林環境税の導入
本県は、森林を県民共有の財産と位置づけ、県民みんなで守っていく仕組みの
一つとして、平成18年4月に森林環境税を導入しました。
この税を活用して、県民参加の森林づくりや、広葉樹の植栽、針広混交林*へ
の誘導などにより、水を貯え、災害に強い森林づくりを進めています。
3
環境保全意識の高まり
自分の持てる力を社会に役立てたいという意識や環境問題への関心の高まり等を
背景に、植栽等の森林の整備にかかわろうという活動が徐々に増えてきており、ボ
ランティア団体や地域住民、企業などによる森林づくりの応援団の裾野が広がりつ
つあります。
平成18年 宮崎市石崎浜 地域住民による海岸松林の整備
平成18年 東臼杵郡椎葉村 上下流域の住民連携による森林づくり活動
①
県内の森林づくりボランティア団体の概要
区
分
団体数
会 員 数
市民グループ
42
15,000
松を守るグループ
12
13,177
漁民の森グループ
8
2,903
企業・団体グループ
8
21,792
平成18年3月31日現在
計
70
52,872
資料:自然環境課調べ
② 森林づくりボランティア活動参加者数の推移
(単位:人)資料:自然環境課調べ
年
度
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
参加者数(延べ)
6,598 10,452 13,047 15,612 17,899 18,446 21,648
- 9 -
Ⅳ
森林の果たしている役割
森林は、木材やきのこなどの林産物供給だけでなく、土砂災害の防止、水源のかん
養、保健休養の場の提供、生物多様性の保全など、多面的な機能を有しており、私た
ちの生活と深くかかわっています。
日本学術会議の答申(平成13年11月)では、森林には、次のような機能があるとさ
れています。
【森林の機能一覧】
① 生物多様性保全機能
⑤ 快適環境形成機能
・遺伝子保全
・気候緩和
・生物種保全
夏の気温低下(冬の気温上昇)、
植物種保全
木陰
動物種保全(鳥獣保護)
・大気浄化
菌類保全
塵埃吸着、汚染物質吸収
・生態系保全
・快適生活環境形成
河川生態系保全
騒音防止、アメニティ
沿岸生態系保全(魚つき)
②
地球環境保全機能
・地球温暖化の緩和
二酸化炭素吸収
化石燃料代替エネルギー
・地球気候システムの安定化
⑥
保健・レクリエーション機能
・療養
リハビリテーション
・保養
休養(休息・リフレッシュ)、
散策、森林浴*
・レクリエーション
行楽、スポーツ、つり
③
土砂災害防止機能/土壌保全機能
・表面侵食防止
・表層崩壊防止
・その他の土砂災害防止
落石防止
土石流発生防止・停止促進
飛砂防止
・土砂流出防止
・土壌保全(森林の生産力維持)
・その他の自然災害防止機能
雪崩防止
防風
防雪
防潮など
⑦
文化機能
・景観(ランドスケープ)
・風致
・学習・教育
生産・労働体験の場
自然認識・自然とのふれあいの場
・芸術
・宗教・祭礼
・伝統文化
・地域の多様性維持(風土形成)
⑧
物質生産機能
・木材
燃料材、建築材、木製品原料、
パルプ原料
・食糧
・肥料
・飼料
・薬品その他の工業原料
・緑化材料
・観賞用植物
・工芸材料
④
水源かん養機能
・洪水緩和
・水資源貯留
・水量調節
・水質浄化
- 10 -
1
森林の公益的機能*
森林の有する多面的機能の内、木材等林産物の生産を除く機能を森林の公益的機
能といい、代表的なものとして、土砂災害防止機能や水源かん養機能、地球環境保
全機能等があげられます。
(土砂災害防止機能/土壌保全機能)
森林は、低木や草本などで土壌が覆われるとともに、樹木の根によって土砂
や岩石をしっかりと固定していることから、土壌の侵食や流出、山崩れを防ぐ
働きをします。
(水源かん養機能)
森林の土壌は、落枝落葉などによる有機物の供給や土壌微生物の働きにより、
穴の多いスポンジのようになっています。このため、雨水をすみやかに地中に
浸透させ、貯え、ゆっくりと河川に流すことから、洪水や渇水をやわらげる働
きをもっています。
(地球環境保全機能)
樹木は大気中の二酸化炭素を吸収して成長し、数十年にわたって貯えること
から、近年、地球温暖化防止の働きが注目されています。
裸地
草地
mm/h
mm/h
森林
森林2t・年/ha
浸
透
能
裸地15t・年/ha
裸地87t・年/ha
mm/h
荒廃地307t・年/ha
図2ー8 植生による雨水の浸透能力
(森林は裸地の3倍)
図2ー9 森林と裸地の土砂流出量の違い
(森林は荒廃地の1/150)
- 11 -
地表の様子の比較
樹木の根の様子
落葉・腐葉が雨滴の衝撃を吸収
土粒子がつぶされてできた膜
土壌層
浸
透
浸
透
基岩層
地表の浸食がない森林地
地表が浸食されやすい草地・畑地
図2ー10 森林の表面侵食防止機能
図2ー11 森林の土砂崩壊防止機能
7100万t
9700万t
図2ー12
2
森林の二酸化炭素吸収(酸素放出)能力
図2ー13
注) 林野庁資料
森林の公益的機能の評価額
日本学術会議では、平成13年に全国の森林について、その公益的機能が失わ
れた場合の損失を貨幣により換算する方法で評価し、その額を年間70兆2600億円
程度と試算しています。
この方法に基づいて本県の森林を試算すると、年間1兆9千億円程度になりま
す。また、これを県民一人当たりに換算すると年間160万円程度になります。
本県森林の公益的機能の評価額の試算(年間)
(単位:億円、%)
評価額
構成比
評価額 構成比
洪水緩和機能
2,266
12.0
表層崩壊防止機能
水資源貯留機能
3,063
16.3
水質浄化機能
3,421
表面浸食防止機能
7,007
1,977
10.5
保健・レクリエーション機能
528
2.8
18.2
二酸化炭素吸収機能
531
2.8
37.2
化石燃料代替機能
24
0.1
18,817
100.0
注)平成13年日本学術会議答申に基づき試算
計
- 12 -
Ⅴ
森林を取り巻く課題
1
健全な森林整備による山地災害防止など水土保全機能の向上
本県の民有林の約6割がスギ、ヒノキなどの人工林となっていますが、林業採算性
の悪化や森林所有者の高齢化などから、伐採後の適切な更新が行われない森林や間伐
などの手入れが十分行われない森林が顕在化してきており、表土が流出したり、林内
の下層植生が乏しくなるなど、保水力等の低下した森林が見受けられるようになって
います。
その一方で、本県は、急峻な地形や破砕帯などの脆弱な地質構造に加え、台風の常
襲地帯であることなどから災害を受けやすい環境にあり、平成16年、17年の台風
がもたらした記録的な豪雨による山地災害や下流域での水害等の激甚な被害は記憶に
新しいところです。
このため、人工林を中心に、適切な更新や間伐の実施等により森林の健全性を確保
するとともに、立地条件によっては、広葉樹林化や針広混交林化、長伐期化など多様
な森林の整備を行い、水土保全機能の向上を図る必要があります。
2
人と自然とのふれあいや多様な動植物が生息、生育できる森林環境の整備
本県は、県土の約8割が森林に覆われるなど豊かな自然環境に恵まれていますが、
この森林の約6割はスギ、ヒノキ等の人工林であり、人が自然とふれあえる場所は限
られたものになっています。
また、県内には、恵まれた気象条件等を背景に多様な動植物が分布していますが、
野生動物による農作物等への被害が発生しています。また、その一方で、一部には、
個体数が減少してその絶滅が危惧されるような状況もあります。
このため、海岸松林等身近な森林を活用しながら人と自然がふれある森林づくりを
進めるとともに、自然性の高い森林の配置など多様な動植物が生息、生育できる環境
の整備を図る必要があります。
3
資源の循環的利用による安定的な木材供給と二酸化炭素吸収能力の向上
本県は、日本一のスギ生産県であり、木材生産を主体とする林業は、山村地域の重
要な基幹産業の一つになっています。森林は、再生産可能な資源であり、林業経営の
安定のため、さらには、地球環境の保全のためにも、森林資源を循環させていくこと
が重要になっています。
また、成長力旺盛なスギをはじめとする針葉樹人工林は、広葉樹に比べ高い二酸化
炭素吸収能力があり、京都議定書で我が国が約束した温室効果ガス削減のためには、
針葉樹人工林を中心とする森林の適切な整備が不可欠となっています。
このため、スギなどを主体とした森林資源の利用、再生といった循環利用に努める
とともに、適切な間伐の実施等により二酸化炭素吸収能力の向上を図る必要がありま
す。
なお、森林資源の循環的利用にあたっては、標準伐期齢を目安とした施業を行うと
ともに、本県人工林の齢級構成の偏り等を考慮して、立地条件によっては長伐期施業
へ移行することなどにより、伐採量等の平準化を図る必要があります。
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