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自己修復する蓄電池電極を開発(米国) - 新エネルギー・産業技術総合

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自己修復する蓄電池電極を開発(米国) - 新エネルギー・産業技術総合
NEDO海外レポート NO.1103, 2014.1.21
(1103-4)
【蓄電池・エネルギーシステム分野(蓄電池)】
仮訳
自己修復する蓄電池電極を開発(米国)
2013 年 11 月 17 日
カルフォリニア州、メンロパーク― 研究者が自己修復する世界初の蓄電池電極を開発
した。これは、電気自動車、携帯電話及びその他のデバイス用の次世代リチウムイオン
蓄電池を作るための新しい商業的な実現可能性への道を開くものである。発明の鍵とな
るのは、蓄電池の稼働中にできた(ポリマー自身の)微細な亀裂を結合し、自発的に修
復する電極を覆う伸縮性のポリマーである、とスタンフォード大学とエネルギー省(DOE)
の SLAC 国立加速器研究所のチームは言った。
研究チームは研究の進展を Nature Chemistry 誌の 11 月 19 日号に発表する。
「動物や植物の生存や長寿にとって、自己修復はとても重要です。」と語るのはスタ
ンフォード大学のポスドク研究者で本論文の 2 人の主執筆者の 1 人である Chao Wang
氏。「リチウムイオン蓄電池を長寿命化するために、この機能を組み入れたいと思って
います。」
Chao 氏は ロボット、センサー及び義肢などに使われる柔軟性のある電子スキンを研
究しているスタンフォード大学の Zhenan Bao 教授の研究所で自己修復ポリマーを開発
した。蓄電池プロジェクトでは、導電性を持つよう、炭素の微細ナノ粒子をポリマーに
加えた。
「自己修復ポリマーでコーティングした場合、シリコン電極の寿命が 10 倍長くなり、
わずか数時間で(ポリマー自身に発生した)すべての亀裂を修復しました。」と Bao 教
授は言った。
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スタンフォード大学の研究所で開発された、このプロトタイプのリチウムイオン蓄電池は
自己修復ポリマーのコーティングで保護されたシリコン電極を含んでいる。背後のケーブ
ルとチップは複数の充放電サイクルにおける蓄電池の性能をテストするための実験器具
の一部である。(Brad Plummer/SLAC)
「既にエネルギー貯蔵容量は実用化の域にありますが、私たちはそれを確実に向上さ
せたいと思っています。」と語るのは Bao 教授と共に研究を率いた SLAC とスタンフォ
ード大学の Yi Cui 准教授である。電極は、エネルギー貯蔵容量の大幅な劣化はなく、約
100 回の充放電サイクルで作動した。「携帯電話用の 500 回の同サイクル、EV 車用の
3,000 回の同サイクルの達成にはまだ程遠いですが、見込みはあります。我々の全データ
からすると、実現できそうです。」と Cui 准教授は言った。
世界中の研究者たちが、重量を減らしつつ、より高い性能を達成するためにリチウム
イオン蓄電池の陰極により多くのエネルギーを貯蔵する方法を見つけ出そうと競い合っ
ている。最も有望な電極材料の 1 つがシリコンである。シリコン電極は充電中にバッテ
リー液(電解液)からリチウムイオンを吸収し、蓄電池の放電中にはリチウムイオンを
放出するための高い容量を有する。
しかし、こうした高い容量には代償が伴う。シリコン電極は、蓄電池の充放電の都度、
通常の 3 倍の大きさに膨張と収縮を繰り返すため、脆い材料はすぐに割れてバラバラに
なり、蓄電池の性能を劣化させる。これは高容量蓄電池の全ての電極における問題だ、
と元スタンフォード大学のポスドクで、現在は北京の清華大学の教職員である本論文の
もう 1 人の主執筆者の Hui Wu 氏は言った。
自己修復(ポリマー)コーティングを作り出すために、科学者たちはポリマー中の化
学結合 ― すなわち、多くの同一原子結合の長い鎖状の分子を意図的に弱くした。その
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結果生じた(ポリマー)材料は壊れやすいが、DNA などの生体分子が組成、再結合、崩
壊するプロセスのように切断端が化学的に引き合って再び結合する。
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自己修復ポリマーの柔軟性を明らかにするため、研究者たちは風船を同ポリマーで
コーティングし、蓄電池稼働中のシリコン電極の膨張と収縮のように何度も風船を
膨らませたり、へこませたりした。ポリマーは伸張したが、割れなかった。
(Brad Plummer/SLAC)
Cui 氏の研究所や他の場所での研究者たちは、(ポリマーコーティングが)シリコン電
極を損傷しないように保持し、性能が向上するよう多くの方法をテストしている。実用
化を目指して研究されているものもあるが、生産規模を拡大するには新種の材料や生産
技術を必要とするものも多い。
半導体や太陽電池産業で広く使用されているシリコン微粒子から成る自己修復電極は、
実用化の道を前進させると思われる、世界初の解決策である、と Cui 氏。このアプロー
チは他の電極材料にも応用できると考えられるため、シリコン電極の性能と長寿命化を
高める技術を改良していくと、研究者たちは語った。
また、研究チームにはスタンフォード大学の Zheng Chen 氏と Matthew T. McDowell
氏が含まれる。Cui 氏と Bao 氏は SLAC とスタンフォード大学の共同機関である
Stanford Institute for Materials and Energy Sciences の会員である。この研究は SLAC’
の Laboratory Directed Research and Development program を通じて DOE、及びスタ
ンフォード大学の Precourt Institute for Energy が資金提供を行った。
SLAC は、フォトン科学、宇宙物理学、素粒子物理学、及び加速器研究における最先
端の問題を探求しているマルチプログラム研究所である。カリフォルニア州メンロパー
クに位置する SLAC は米国エネルギー省科学局のためにスタンフォード大学によって運
営されている。詳しくはウェブサイトを参照のこと。
The Stanford Institute for Materials and Energy Sciences (SIMES)は、SLAC 国立加
速器研究所とスタンフォード大学の共同機関である。SIMES はクリーンな再生可能エネ
ルギー技術を創り出すため、複雑かつ新種の材料の性質、特性及び合成の研究に取り組
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んでいる。詳しくはウェブサイトを参照のこと。
DOE の科学局(Office of Science)は、米国における物理科学の基礎研究の最大のサポー
ターであり、現在の最も喫緊の課題に取り組んでいる。詳しくはウェブサイトを参照の
こと。
引用:C. Wang et al., Nature Chemistry, 17 November 2013 (10.1038/nchem.1802)
翻訳:NEDO(担当
広報部 勝本 智子)
出典:本資料は SLAC 国立加速研究所の以下の記事を翻訳したものである。
“Scientists Invent Self-healing Battery Electrode”
https://www6.slac.stanford.edu/news/2013-11-17-scientists-invent-self-healing-batter
y.aspx
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