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ダウンロード - 経済産業省

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ダウンロード - 経済産業省
平成 27 年度インフラシステム海外展開促進調査等事業
(リサイクルビジネス海外展開可能性調査)
平成 27 年度
インフラシステム海外展開促進調査等事業
(インド:インド南部におけるアルミニウム
リサイクル事業実施可能性調査)
調査報告書
平成 28 年 2 月
株式会社大紀アルミニウム工業所
経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課
●結果概要
本事業ではリサイクルに関する法制度、アルミの市場規模、アルミリサイクル状況等の
基礎調査を行い、採算性や事業リスクを分析し、インド南部におけるアルミリサイクル事
業の実施可能性の評価を行った。
本事業で得た情報から検討した結果、インド南部におけるアルミニウムリサイクル事業
の実現は可能だと考えられる。しかし、同地域では現段階において十分な量のアルミニウ
ムスクラップが発生しておらず、輸入スクラップが主体となるため、輸入に伴うリスクが
発生する可能性がある。
目次
1. 本調査の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2. インドにおけるアルミニウムリサイクル基礎調査・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
2.1 アルミニウムスクラップ等廃棄物に関する関係法制度等及びその整備計画・・・・3
2.2 スクラップの発生量、二次合金地金の需要量等の推移と今後の予測・・・・・・ 7
2.3 スクラップ及び二次合金地金の輸出入に係る関係法令と輸出入における傾向・・ 10
2.4 現在行われているアルミニウムリサイクル・処理の実態・・・・・・・・・・・・ 16
2.5 アルミニウムリサイクルにおける中央・地方政府の取組の現状及び課題・・・・・ 18
3. インド南部におけるアルミニウムリサイクル実施可能性調査・・・・・・・・・・・・ 20
3.1 事業開始及び継続に必要な行政手続きの整理・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
3.1.1 事業開始に必要な行政手続きの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
3.1.2 事業継続に必要な手続きの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
3.2 インド南部で発生するスクラップ発生量及びその特徴と傾向・・・・・・・・・31
3.3 二次合金地金の予想取扱量及びその推移見通し・・・・・・・・・・・・・・・36
3.4 二次合金地金に対する需要及びその推移見通し・・・・・・・・・・・・・・・38
3.5 スクラップの入手先・取引価格、二次合金地金の販売先・用途、取引価格等・・40
3.6 現地の既存企業の状況、インフォーマルセクターの動向等・・・・・・・・・・43
3.7 競合すると考えられる他国企業の事業展開の有無及び
その状況・ビジネスモデルの比較等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
3.8 その他のリサイクルに関する現状・実態の把握・・・・・・・・・・・・・・・44
3.9 事業パートナーの要否及びその候補者の詳細・・・・・・・・・・・・・・・・48
3.9.1 事業パートナーの要否・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
3.9.2 事業パートナー候補者の詳細・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
3.10 事業活動を支えるインフラの整備状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
4. 日本裨益(我が国への経済効果)に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・52
5. 環境社会的側面に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
5.1 事業実施に伴う環境改善効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
5.2 事業実施に伴う環境社会面への影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
5.3 相手国の環境社会配慮法規の概要及びそのクリアに必要な措置・・・・・・・・56
6. 事業基本計画の策定・評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
6.1 事業拠点を構える地域・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
6.2 集荷-リサイクル・処理-再生資源売却の一連の流れを
考慮したビジネスモデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
6.3 事業実施者のフォーメーション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
6.4 技術・施設設備の導入計画、実施するリサイクルのレベル、投資額の検討・・・62
6.5 候補地域の市場状況、スクラップ予想取扱量、二次合金地金に対する需要、
投資額、運営コストを加味した収益性の分析・・・・・・・・・・・・・・・・64
6.6 事業実施に当たっての技術的・制度的課題等の抽出及びリスク分析・・・・・・66
7. インド基礎情報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
7.1 インド労務調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
7.2 インド税制調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
1. 本調査の背景と目的
インドは BRICs の一つとして数えられて久しく、近年著しい経済発展を遂げている。イ
ンドの GDP は毎年約 7%の成長率にて推移しており、今やその経済動向は世界各国から注
目されている。
一方の環境社会的側面から見ると、他の新興国同様インドにおいても廃棄物による環境
汚染が問題となっているケースが多い。その中で、廃棄物の適正な処置・処理や資源を有
効活用するリサイクル活動はインドの政策において重要な位置付けとなっている。特に、
この数年の経済成長に伴う廃棄物排出量の増加やリサイクル工程における環境汚染が深刻
化しており、2015 年 6 月発布の「Installation of Real time continuous Industrial Effluent
/ Emission monitoring devices in compliance」
、すなわちリアルタイム環境モニタリングシ
ステムからも見られるように、環境汚染を改善しない事業者や環境対策への投資が不十分
な事業者に対して監視を強化する事を決定する等、高い関心が持たれつつある。
今日のインドには多くの日系、外資系企業が進出しており、また多くの地場系製造企業
が躍進している。特に、Delhi を中心とする北部、Mumbai を中心とする西部、そして
Chennai 及び Bangalore を中心とする南部には大手二輪・四輪車メーカー及びその関連企
業群が集中して進出しており、同国において三大生産拠点を築いている。更に、新たな工
業団地の造成も進んでおり、海外投資の軸足を中国から移す候補地として有望視されてい
るインドには、今後ますます多くの企業が進出する事が見込まれる。これらインド進出製
造企業には、アルミニウムを使用する企業も多数存在している。
本来、これらアルミニウムを使用する製造企業の生産工程で発生する端材や不良品、加
工工程で発生する切削粉、アルミニウム溶解時に発生する溶滓(アルミニウムドロス)等
の廃棄物は有価物としてリサイクル事業者と取引され、環境に配慮した適切な処理工程を
踏み再資源化されるものである。しかし、インドでは一部のアルミニウム廃棄物が適切に
リサイクルされておらず、資源の無駄遣いや環境汚染の一因となっている事が確認されて
いる。
我が国におけるアルミニウム二次合金地金精錬業の生い立ちは 1922 年まで遡り、以後日
本及び近隣 ASEAN 諸国において広く展開されている。本事業においては、その歴史の中
で蓄積された、アルミニウム廃棄物に高い付加価値を付与し、アルミニウム二次合金地金
として再資源化する技術やノウハウを活用する事で、インドにおける適切な再資源化や環
境に配慮した持続可能且つ安定的なアルミニウムリサイクルビジネスの実施可能性調査を
行う事を目的とする。
本調査事業において、調査対象地域を Delhi、Mumbai に並ぶ第三の生産拠点として成長
著しいインド南部とし、同地におけるアルミニウムリサイクルビジネスを実施する上での
1
関係法令や規程、一般市中発生及び工場から発生するアルミニウム廃棄物の収集・処理に
関しての実態やアルミニウムマーケットの需給状態を把握し、事業計画の試算を行った上
で、官公庁や工業団地、リサイクル業者等と協調してアルミニウムリサイクルビジネスを
実施する仕組みの構築が可能かを検証する。
なお、本事業において検討するアルミニウムリサイクル事業のビジネスモデルフローは
下図の通りとなる。
【当事業におけるビジネスモデルフロー】
AC /DC メーカー
製品・部品
二輪・四輪部品製造
家電製品部品製造
アッセンブリー
メーカー
製品
二輪・四輪メーカー
家電メーカー
住宅資材メーカー
スクラップ
不良品
市場
消費者
消費
廃家電
廃棄物
スクラップ
不良品
収集業者
アルミスクラップ、ゴミ、廃棄物etc.
アルミスクラップ
非鉄金属原料
海外
検収・処理・調合・溶解
アルミニウム二次合金地金
アルミ
リサイクル
メーカー
2
スクラップ
スクラップ
2. インドにおけるアルミニウムリサイクル基礎調査
2.1 アルミニウムスクラップ等廃棄物に関する関係法制度等及びその整備計画
インドの環境保護に関する法律及び規則は、1986 年に制定された環境保護法(The
Environment Protection Act, 1986)及び環境保護規則(The Environment Protection
Rules, 1986)、そして、それ以前に「水」を対象に制定された水(汚染防止及び管理)
法(The water (Prevention and Control of Pollution) Act, 1975)及び水(汚染防止及び
管理)規則(The water (Prevention and Control of Pollution) Act, 1977)と「大気」を
対象に制定された大気(汚染防止及び管理)法(The air (Prevention and Control of
Pollution) Act, 1981)等がある。それぞれの法律及び規則において、環境関連行政を司
る中央政府、州政府等の行政機関の役割や権限が定められている。
まず中央政府についてであるが、中央官庁には環境政策に関わる省庁が幾つか存在
する。その中でも環境関連行政に関して最も重要な役割を担う組織が環境森林省
(Ministry of Environment and Forests : MOEF)である。MOEF はインド全国の環境
保全、環境関連計画等の全般を担当するインド環境行政の中核となっており、環境政
策の整備、環境汚染の防止、管理や規制、環境基準やガイドラインの整備・通知等を
担当する。
なお、MOEF 以外では、例えば都市部の上下水道や廃棄物インフラの整備を担当す
る都市開発省(Ministry of Urban Development : MOUD)や廃棄物や自然エネルギー等
の推進を担当する再生エネルギー省(Ministry of New and Renewable Energy :
MNES)等も環境行政に関わる中央政府の行政機関の一つとして挙げられる。しかし、
やはりその中心的役割を担うのは MOEF となっている。
その MOEF 内でも中枢的組織であるのが、中央公害管理局(Central Pollution
Control Board : CPCB)である。これは環境汚染防止、管理及び緩和を目的とした独立
機関であり、MOEF 及び州公害管理局(SPCB)に対して技術的な指導や助言を担当する
等、公害管理に関し多々の重要な役割を担っている。
続いて各州政府に関してであるが、各州政府においては環境局の元に SPCB が設置
され、各州の環境行政を所管している。また、その配下に地方事務所州汚染管理局や
地域事務所(Regional Office)等を有し、それらに対して技術的な指導や助言、州毎の環
境基準の策定やその推進を担っている。
「廃棄物の取り扱い及び管理」に関する法制度は、環境保護法(The Environment
Protection Act, 1986)を基本法としており、下記の【表 1】に示す通り各法律及び規則
が存在する。また、インドでは日本のように「産業廃棄物」という分類はなく、工場
から排出される廃棄物であっても、後述する有害廃棄物管理規則(The Hazardous
Wastes (Management and Handling) Rules, 1989)に該当しない場合は「有害廃棄物」
として分類されず、それは「都市固形廃棄物」に分類される。
なお、当事業に関わるアルミニウムスクラップに関しては、以下の二通りに分類さ
3
れる。
-工場発生のアルミニウムスクラップ
工場から発生するアルミニウムスクラップは下記【表 1】に記載の通り、有害廃棄
物管理規則の Schedule 1 が適用されるものは「有害廃棄物」に該当し、それ以外の
ものは都市固形廃棄物管理規則(The Municipal Solid Wastes (Management and
Handling) Rules, 2000)によって「都市固形廃棄物」と規定される。アルミニウム二
次合金地金等のリサイクル事業者から発生する廃棄物は Schedule 1 の「No.11
Production of primary and secondary aluminium」が適用され「有害廃棄物」に該
当する。一方、アルミニウム原料の需要家から発生する廃棄物は Schedule 1 に適用
されず「都市固形廃棄物」に該当する。
【有害廃棄物管理規則の Schedule 1(11 より抜粋)
】
NO. Processes
11
Production of primary and secondary aluminium
アルミニウム新地金及び二次合金地金の生産
Hazardous Wastes
11.1
Sludges from gas treatment
ガス処理から発生するスラッジ
11.5
Wastes from treatment of salts slags and black drosses
塩化スラグ及び黒溶滓の処理から発生する廃棄物
-市中発生のアルミニウムスクラップ
市中から発生したアルミニウムスクラップは下記【表 1】に記載の通り、市中、す
なわち「都市(住宅、農地、オフィス、ホテル、園芸(剪定枝等)等のあらゆる所
から)から排出される商業および生活廃棄物で、固形および準固形のもの。
」より発
生するため、都市固形廃棄物管理規則により「都市固形廃棄物」に該当する。
4
【廃棄物の分類】
都市固形廃棄物(※)
有害廃棄物(※)
廃
棄
医療廃棄物
電気・電子機器廃棄物
鉛酸蓄電池廃棄物
物
有
価
(※)日本のように「産業廃棄物」と
いう分類はなく、工場から排出される
廃棄物であっても、「有害廃棄物」と
して分類されない廃棄物もあり、それ
は「都市固形廃棄物」に分類される。
「資源有効利用」に関して言うと、インドにおいては 1992 年の公害防止に関する政
策文書(Policy Statement for Abatement of Pollution, 1992)を元に、2006 年 5 月に国
家環境政策(National Environmental Policy, 2006)が内閣で採択された。それに係るア
クションプランとして、都市ゴミの分別、インフォーマルセクターによる収集・リサ
イクルの法的規制、e-waste 規制の見直し、リサイクル・リユースの促進等が盛り込ま
れているが、日本の資源有効利用促進法のようなリサイクルを促進する明確な法律制
定には到っていない。
インドにおける廃棄物に関わる環境関連法規及び適正処理のための法規一覧やその
体系をまとめると以下の形となる。
5
【表 1:インドにおける廃棄物に関わる環境関連法規及び適正処理のための法規一覧】
No.
種別
基本法
各廃棄物管理規則
1
都市固形廃棄物管理規則
The Municipal Solid wastes (Management and
Handling) Rules, 2000
2
有害廃棄物管理規則
The Hazardous Wastes(Management and
Handling) Rules, 1989
3
環境保護法
The Environment Protection Act, 1986
4
環境保護
5
6
7
8
9
水(汚染防止及び管理)法
The Water (Prevention and Control of Pollution) Act.
1974
10
大気(汚染防止及び管理)法
The Air (Prevention and Control of Pollution) Act, 1981
11
リサイクル
化学薬品取扱い規則
The Manufacture, Storage and Import of Hazard
Chemicals Rules, 1986
医療廃棄物管理規則
The Bio-medecal Waste (Management and
Handling) Rules, 1998
電気・電子機器廃棄物管理規則
E-waste (Management and Handling)
Rules, 2011
鉛酸蓄電池廃棄物管理規則
The Batteries (Management and Handling) Rules,
2001
リサイクルプラスチック再利用規則
The Recycle Plastics Manufacture and Usage
Rules, 1999
環境影響評価
Environmental Impact Assessment notification,
2006
水(汚染防止及び管理)規則
The Water (Prevention and Control of Pollution)
Rules, 1974
大気(汚染防止及び管理)規則
The Air (Prevention and Control of Pollution)
Rules, 1981
法律および規則の内容や対象となる廃棄物等
・都市(住宅、農地、オフィス、ホテル、園芸(剪定枝等)等の
あらゆる所から)から排出される商業および生活廃棄物で、固
形および準固形のもの。
・工場から排出され「有害廃棄物」に該当しない廃棄物
・処理済の医療廃棄物
・健康や環境に害をもたらす可能性のある有害性、可燃性、揮
発性、腐食性などのある廃棄物
・生産プロセスごとの規定(Schedule1)、含有量をもとにした
基準(Schedule2)で定義されている。
・ScheduleⅣではSchedule1で指定されていない業種に適用さ
れる一般的な排水基準、排水発生量基準、排ガス基準、自動車
などの騒音基準が定められている。
化学薬品の製造や輸入などの取り扱いに関する規則
・診察、治療、人類や動物などの疫学研究およびバイオ製品の
生産と実験などの仮定で排出される、未処理の医療廃棄物
廃棄された家電製品と通信機器
自動車などで使われる鉛酸蓄電池
再利用されたものが食品の包装に扱われない事や、薄いプラス
チックの使用を禁止する
環境影響評価を目的とし制定
水質汚染の防止と管理および水質の向上を目的とし制定
大気汚染の防止と管理および周辺地域への影響緩和を目的とし
制定
3Rに向けたアクションプラン等を示した「国家環境政策/
National Envirunment Policy, 2006」2006年5月に内閣で採択
リサイクルを推進する政策法制度は未制定
【法律体系】
環境保護
資源有効利用促進
水(汚染防止及び管理)法
大気(汚染防止及び管理)法
環境保護法
1974年制定
1981年制定
1986年制定
公害防止に関する政策文書(1992年)
国家環境政策(2006年)
↓
日本の「資源有効利用促進法」のようなリサイクルを促進す
廃棄物取扱い
る明確な法律制定には到っていない。
化学薬品取扱い規則
医療廃棄物管理規則
都市固形廃棄物管理規則
1986年制定
1998年制定
2000年制定
有害廃棄物管理規則
リサイクルプラスチック再利用規則
鉛酸蓄電池廃棄物管理規則
1989年制定
1999年制定
2001年制定
環境影響評価
2006年制定
電気・電子機器廃棄物管理規則
2010年制定
インドでのアルミニウムスクラップに対する今後の整備計画については、例えば環
境汚染を改善しない事業者や環境対策への投資が不十分な事業者に対してリアルタイ
ム環境モニタリングシステムを導入することを目的に、2015 年 6 月 16 日に CPCB が
「Installation of Real time continuous Industrial Effluent / Emission monitoring
devices in compliance」を発布した。これにより、実際に事業者を監視する地方事務所
州汚染管理局等が現地に赴き検査する手間が省けるなど、環境モニタリングの効率化
6
が図れることが期待されている。更に、中古自動車や中古トラックのスクラップに関
する規定を策定中であり、実際にデリー首都直轄地域(Delhi National Capital Region)
では、20 年以上の自動車やトラックの使用について今後規制が進む計画である。しか
し、それ以外の地域では未だ策定の動きはなく、仮にこれが発布されたとしても当該
地域以外へこれら自動車が移動するだけであろう事が推測され、全国的な観点での効
果は期待できないとの話も当調査の中で確認することができた。
なお、
【表 1】の中で当事業に適用される規則は、
【No.2】有害廃棄物管理規則、
【No.3】
化学薬品取扱い規則、
【No.8】環境影響評価、【No.9】水(汚染防止及び管理)規則、
そして【No.10】大気(汚染防止及び管理)規則である。これらのクリアランス取得に
必要な手続きは、
「3.1 事業開始及び継続に必要な行政手続きの整理」及び「5.3 相手
国の環境社会配慮法規の概要及びそのクリアに必要な措置」にて詳しく述べる。
2.2 スクラップの発生量、二次合金地金の需要量等の推移と今後の予測
インド全体におけるアルミニウム二次合金地金の需要家を大きく分けると以下の通
り、三つに分類される。
-鋳物・ダイカスト関係メーカー(以下、AC/DC メーカー)
二輪・四輪車並びに関連部品メーカー及び家電部品メーカー等。アルミニウム二
次合金地金を鋳造部品の原料として使用。
-押出メーカー
アルミサッシの製造・加工業。アルミニウム合金を押出材の原料として使用。
-鉄鋼メーカー
高炉メーカー等。アルミニウム二次合金地金を脱酸目的で使用。
これらインドにおける需要家のアルミニウム二次合金地金需要量等は同国の統計が
未整備なことから正確な数値を把握する事は困難であるが、当調査事業でのヒアリン
グ結果及び現地情報提供者からの情報を基に算出を行った。なお、前述の方法により
算出された同国での二次合金地金需要量を【表 2】に示す。
2015 年度予想での総需要量は年間約 97 万トンとなっており、うち鋳物・ダイカス
ト用途としての二次合金地金の需要量は二輪・四輪車等の輸送機器部品メーカー及び
家電部品メーカー合わせて約 79 万トンに上ると見込まれ、その全体需要の多くを占め
ている。なお、一般的に押出メーカーは、ボーキサイトから作られたアルミナを中間
素材として製造されるアルミニウム新地金を原料とするためスクラップから再生され
た二次合金地金は使用しない。しかし、インドに数多くある零細押出メーカーに関し
ては、スクラップから再生された二次合金地金を原料として使用しているため、一定
の需要が発生している。
7
【表 2:インドにおけるアルミニウム二次合金地金の需要量】
AC / DCメーカー
押出メーカー
鉄鋼メーカー
2015年(予想)
791.0
120.0
60.0
合計
971.0
単位:千トン
一方、前述の方法により算出されたインド国内全体におけるアルミニウム二次合金
地金の生産量は【表 3】に示す通り約 79 万トン、うち鋳造・ダイカスト用途としての
二次合金地金生産量は約 61 万トンとなっており、不足分の約 18 万トンは輸入に依存
している。
【表 3:インドにおけるアルミニウム二次合金地金の生産量】
AC / DC用
押出・脱酸用
2015年(予想)
611.0
180.0
合計
791.0
単位:千トン
アルミニウムスクラップは、アルミニウムを使用する製造企業の生産工程から発生
する不良品や端材、切削粉やドロス等の工場発生スクラップと、一般消費者や廃棄物
解体業者から発生する市中発生スクラップに二分される。
アルミニウムスクラップの発生量については、同国の統計が未整備な事からその数
値を正確に把握する事は困難である。しかし、工場発生スクラップに関してはある程
度推測する事が可能である。生産する製品の用途や形状によるものの、一般的に、ア
ルミニウム原料溶解時には溶解量に対して約 3%の溶滓が発生し、その後の機械加工工
程では約 12%ほど社内で再利用できないスクラップが排出される事となる。上記より、
製造企業におけるアルミニウム原料使用量の約 14%がスクラップとして発生すると仮
定できる為、今後のアルミニウムスクラップ発生量の指標とする。
インドにおけるアルミニウム製品別の需要は、大きく AC / DC 材、押出や圧延材、
線・棒材に分類され、前述の方法により算出された各分野での需要割合並びに需要量、
及びスクラップ発生量は【表 4】に示す通りであり、工場発生スクラップとしては約
43 万トンが発生していると推測される。また、聞き取り調査から市中発生スクラップ
は年間約 10 万トン発生すると推測されるため、インド国内では計約 53 万トンのアル
ミニウムスクラップが発生していると見込まれる。
8
【表 4:インドにおける工場発生アルミニウムスクラップの発生量】
AC / DC材
押出材
圧延材
需要割合
26%
14%
18%
需要量
スクラップ発生量
791.0
110.7
425.9
59.6
547.6
76.7
線・棒材
42%
1,277.8
178.9
合計
100%
3,042.3
425.9 単位:千トン
インドにおけるアルミニウム二次合金の需要は、主に二輪・四輪車産業の動向に左
右される。インドでのこれら生産台数は右肩上がりで推移しており、2020 年には二輪
車生産台数が年産 3,400 万台、四輪乗用車生産台数は年産 1,000 万台に達すると見込
まれる。それに伴い、アルミニウム二次合金の需要量も 2015 年の約 97 万トンから、
2020 年度には約 172 万トンに達すると見られる。
【二輪・四輪乗用車の生産台数とアルミニウム二次合金需要の予測推移】
40,000
四輪乗用車
35,000
二輪車
アルミニウム二次合金地金需要
2,000
1,800
1,600
30,000
1,400
25,000
1,200
20,000
1,000
15,000
800
600
10,000
400
5,000
0
200
0
千台
千トン
(Society of Indian Automobile Manufactures : Production Forecast を基に作成)
上図に示す、アルミニウム二次合金地金の需要増加予測より、工場発生アルミニウム
スクラップの発生量も比例的に増加すると予測され、2015 年の約 43 万トンから 2020
年度には約 60 万トンに達すると見込まれる。二輪・四輪乗用車の生産台数の予測推移
に基づく工場発生スクラップの予測発生量を下図に示す。
9
【インドにおける工場発生アルミニウムスクラップの発生量予測推移】
700
線・棒材
圧延材
600
押出材
500
AC / DC材
400
300
200
100
0
千トン
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2020年(予測)
2.3 スクラップ及び二次合金地金の輸出入に係る関係法令と輸出入における傾向
インドにおいては、アルミニウムスクラップやアルミニウム二次合金地金に特化し
た輸出入関係法令や貿易取引に関する規則は認められない。インドでの関税や貿易取
引に関する規則は下記の通り。
・輸出関税
輸出物品に課せられる関税については、1975 年関税率法(The Customs Tariff Act,
1975)にて HS コードに基づく分類ごとに税率が規定されている。しかし、当事業に
係るアルミニウムスクラップや二次合金地金に関わる分類品目、具体的には 7601、
7602、2620 の 4 桁の HS コードから始まる分類品目については特段言及がなく、輸
出関税の課税対象となっていない事が分かる。
・輸入関税
アルミニウムスクラップやアルミニウム二次合金地金を輸入する際には以下の関
税が発生する。
-基本関税(Basic Customs Duty : BCD)
基本関税は評価額(CIF 価格+荷揚げ費用)に対して賦課される関税である。
税率は輸入品目の関税率表の分類に基づいて決定され、0%、5%、15%、25%、
30%、35%のいずれかとなる。税率の決定にあたっては、輸入品目が該当する分
類に関連する通達も考慮する必要がある。
-追加関税(相殺関税)(Additional Duty : AD / Countervailing Duty : CVD)
追加関税は評価額及び基本関税額の合計額に対して賦課される関税である。
税率は該当品目に係る物品税と同率であり、中央物品税率表から確認すること
10
が可能である。大半の製品について税率は 12.5%であるが、適用税率の決定に
当たっては輸入品目が該当する分類に関連する通達も考慮する必要がある。
インド国内での製品製造のための原材料、部品として輸入された物品につい
ては、最終製品に課せられる物品税から輸入時に支払った追加関税額を控除す
ることができる。そのため相殺関税(Countervailing Duty : CVD)とも呼ばれる。
消費財輸出等、ある一定のケースでは評価額及び基本関税額の合計額ではなく、
該当物品の最大小売価格(Maximum Retail Price : MRP)に対して追加関税が課
せられる。この場合、輸入者は輸入品目にかかる MRP を申告する必要がある。
-特別追加関税(Special Additional Duty : SAD)
特別追加関税は、売上税の代わりに課される税目であり、評価額、基本関税
額及び追加関税額の合計額に対して一律 4%を追加的に賦課するものである。た
だし、一定の条件下で免税される可能性がある。
-その他税目
上記三つの主要な税目の他、その時々に応じ輸入品に対して賦課される税目
が存在する。例えば、セーフガード関税、アンチダンピング関税などがある。
これらの税目についても、課税対象となる場合は考慮することを要する。
なお、アルミニウムスクラップやアルミニウム二次合金地金、また、その他アル
ミニウム新地金等に関する輸入関税率については以下のように規定されている。
【アルミニウム関連 HS コードと関税の一覧】
HS code
品名
税目
アルミニウムの塊:アルミニウム(合金を除く。)
7601 10
アルミニウムの塊:アルミニウム合金
7601 20
アルミニウムのくず
7602 00
スラグ、灰および残留物
2620 40
基本関税
5.0%
追加関税
12.5%
特別追加関税
4.0%
教育目的税
3.0%
基本関税
5.0%
追加関税
12.5%
特別追加関税
4.0%
教育目的税
3.0%
基本関税
5.0%
追加関税
12.5%
特別追加関税
4.0%
教育目的税
3.0%
基本関税
5.0%
(砒素、金属又はこれらの化合物を含有するものに限る 追加関税
ものとし、鉄鋼製造の際に生ずるものを除く。)
特別追加関税
:アルミニウムを主成分とするもの
教育目的税
11
基本税率
12.5%
4.0%
3.0%
ただし、インドが輸入先の国家と自由貿易協定を締結している場合、輸入品目に
ついて関税が課される事はない。そのため、自由貿易協定の未締結国から輸入した
場合と比較して商品を安く輸入する事が可能となる。
現時点(2015 年 11 月末現在)において、インドと自由貿易協定を締結済み、或
いは交渉中である協定の一覧を下記表に記す。
【インドが締結している或いは交渉中の自由貿易協定の一覧】
締結済み
・インド-湾岸協力会議自由貿易地域
・インド-アフガニスタン特恵貿易協定
・ASEAN-インド包括的経済協力協定
・アジア太平洋貿易協定
・インド-ブータン貿易協定
・インド-チリ特恵貿易協定
・インド-メルコスール(南米南部共同市場)特恵貿易協定
・インド-シンガポール包括的経済協力協定
・インド-スリランカ自由貿易協定
・インド-韓国包括的経済連携協定
・インド-ネパール貿易協定
・インド-日本包括的経済連携協定
・インド-マレーシア包括的経済協力協定
・南アジア自由貿易地域
交渉中
・ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアティブ自由貿易協定
・インド-オーストラリア自由貿易協定
・インド-ロシア・ベラルーシ・カザフスタン関税同盟自由貿易協定
・インド-カナダ経済連携協定
・インド-エジプト特恵貿易協定
・インド-EFTA(ヨーロッパ自由貿易連合)自由貿易協定
・インド-EU(ヨーロッパ連合)自由貿易協定
・インド-インドネシア包括的経済協力協定
・インド-イスラエル特恵貿易協定
・インド-モーリシャス包括的経済協力連携協定
・インド-南部アフリカ関税同盟特恵貿易協定
・インド-タイ自由貿易協定
・インド-ニュージーランド自由貿易協定
・東アジア地域包括的経済連携協定
12
・貿易取引に関する規則
-輸出手続き
物品を輸出する事業者は、インド国内から輸出した日から 12 ヵ月以内に輸出
した商品の引き渡しを行い、またその販売代金全額を回収しなければならない。
ただし、輸出商品が一旦、国外の倉庫を経由する場合は 15 ヵ月以内まで延長さ
れる。
-輸入手続き
輸入手続については、下記の手続きを実施する必要がある。
・輸出入業者コード(Importer - Exporter Code : IEC)の取得
インドにて輸出入取引を始める場合、まず輸入業者・輸出業者コードをイ
ンド中央政府商工省に属する商務局・外国貿易部(Directorate General of
Foreign Trade : DGFT)の地方事務所から取得する必要がある。当該地方事務
所は 2015 年 12 月現在、インド国内に 36 か所存在する。
・輸入申告書(Bill of Entry)、その他必要書類の提出
輸入者又は輸入代理人は物品の輸入を行った際、輸入申告書と共に下記の
書類を税関に提出する。
【輸入の為のその他必要書類一覧】
その他必要書類の一覧
・サイン済みインボイス
・パッキングリスト
・船荷証券( Bill of Lading )、もしくはDelivery Order / Air Way Bill
・記入済みのGATT関税評価申告書
・輸入者又は通関業者による宣誓書
・事業認可に類するライセンス(※必要な場合に限る)
・信用状( Letter of Credit : L/C )もしくは、銀行為替手形( Bank Draft : B/D )(※必要な場合に限る)
・保険証書
・輸入ライセンス
・産業ライセンス(※必要な場合に限る)
・化学品の検査報告書
・特例の例外指示書
・DEEC ( Duty Exemption Entitlement Scheme ) Book / DEPB ( Duty Entitlement Pass Book )の原本
・機械、スペアパーツ及び化学品等で、要求される場合はカタログ、技術メモ、および書類
・機械のスペアパーツや部品を切り放した場合の個々の価格
・原産地証明書(特恵税率を申請する場合)
・ノーコミッション宣誓書
13
電子データ交換(Electronic Data Interchange : EDI)にて輸入通関手続を実
施する際は、上記書類の代わりに積荷目録(Cargo declaration)をオンラインで
提出する必要がある。これら書類登録後に、情報の正確性を確認するための
チェックリストが出力され、輸入者若しくは輸入代理人はチェックリストの
消し込みを行う。チェックリストにより登録情報に問題がないことが確認さ
れた後、登録された書類は税関へと提出される。税関へ書類一式が提出され
ると輸入通関申告番号(B/E Number)が発行され、提出書類の原本は後の物品
検査時に提出される。
・税関による申告内容の検査及び関税額の計算
税関は、提出された書類若しくは EDI システムを通じて提供された書類を
基に禁制品の有無、輸入ライセンスの要否、関税品目分類の妥当性等を検証
し、輸入物品毎に課される関税額を計算する。なお、通常この段階では輸入
物品が禁制品に該当しない限りは、物品検査が実施されないことが多い。
・関税額の納付(指定銀行での納付)
税関における関税額の計算が完了した後、輸入者若しくは輸入代理人は指
定銀行にて Challan TR-6(関税納付書の様式)を用い、関税額の納付を行う。
指定銀行は税関に対して、納付が完了したことを通知する。
・税関による物品検査
輸入者若しくは輸入代理人による関税納付が完了した後、税関は港湾に蔵
置されている輸入物品の検査を実施する。検査の結果、申告内容と相違が無
いことが確認されると、税関より通関手続きが終了したことを示す“Out of
charge”が通知され通関手続きが終了する。
なお、EDI による申告を行った場合、この段階で EDI システムから出力さ
れた輸入通関申告書及びインボイス、パッキングリスト等のその他の提出済
書類の原本を提出することとなる。
・輸出入における傾向
インドにおけるアルミニウムスクラップ及びアルミニウム合金の輸出入の経年推
移を通関統計データより抽出し、双方の傾向を下記の通り分析した。
14
【アルミニウムスクラップ輸出入推移】
千トン
輸入
869.5
1,000
738.5
721.6
470.3
627.7
800
600
339.6
236.0
245.6
226.1
250.0
400
200
千トン
0.1
0.1
1.1
0.9
0.6
0.9
0.7
0.4
1.4
0.9
2.0
2.4
4.5
3.8
3.4
5.4
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
81.5
60.1
109.6
97.3
107.7
138.5
輸出
0
0
200
400
600
800
1,000
(Government of India, Ministry of Commerce & Industry : Total Trade を基に作成)
【アルミニウム合金輸出入推移】
千トン
千トン
輸入
187.1
200
144.9
147.8
154.8
150
122.5
99.2
100
76.9
75.4
62.6
33.5
42.5
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
10.1
9.2
11.9
15.1
15.3
50
0
5.7
5.7
4.2
7.0
3.5
3.6
輸出
48.4
57.9
55.8
22.2
31.6
17.6
0
41.6
50
58.9
77.0
84.8
100
150
200
(Government of India, Ministry of Commerce & Industry : Total Trade を基に作成)
-アルミニウムスクラップの輸出入における傾向
上表に示す通り、1999 年以降現在に至るまで輸入量は増加の一途を辿ってお
り、2014 年度においては約 87 万トンものアルミスクラップがインドに輸入さ
れていることが分かる。
一方、インドからの輸出に関しては今回抽出した期間においてほとんどなさ
れていない事が分かった。このことから、インドは極端にスクラップ輸入に依
存している事が読み取れる。
-アルミニウム合金の輸出入における傾向
上表に示す通り、スクラップ同様現在に至るまで輸入量は大幅に増加してい
る。また、輸出量に関しても 2010 年以降は増加傾向にあるが、経年で見ると不
安定に推移しており、その輸入量と比べるとかなり下回る。
これらの背景として、インド経済成長に伴う生活水準の向上によりアルミニウム
15
部品を使用する二輪・四輪車や家電製品等の需要が大きく増加した事が主な要因で
あると考えられる。
インドでは生活水準の向上に伴い二輪・四輪車及び家電製品等の需要が急激に増
加している。それに伴い二輪・四輪車等に供するアルミ鋳造部品の需要、また、ア
ルミ鋳造部品の原料となるアルミ合金の需要、そしてアルミ合金の原料となるアル
ミスクラップの需要が相関的に増加している。しかし、現在のインドにおいては二
輪・四輪車等の需要が増加し続けいている一方、市場に出回ったアルミ関連製品の
大部分が未だライフエンドに到達していない状況にある。その為、インド国内にお
けるスクラップの発生量はまだまだ少なく、近隣諸国やその他地域からの輸入に頼
らざるを得ない状況と考えられる。また、中間材であるアルミニウム合金に関して
も、インド国内の限られたスクラップ原料ソースだけでは十分な生産量を賄えず、
輸入に頼っているのが現状である。今後、ライフエンドを迎えた各種製品が同国内
で適切に処理されるフェーズが到来すれば、輸入量は減少し国内でのリサイクル循
環が構築されると思われる。
【二輪・四輪車の製品ライフサイクル及びそれに伴う需要の動向イメージ図】
導入期
スクラップ
アルミ合金
アルミ鋳造部品
需要増加
需要増加
需要増加
導入期
各種製品が市場に導入され
たばかり
成長期
市場規模が拡大する時期
二輪・四輪車増加
成熟期
市場規模が最大化
製品が市場に行き渡った
時期
衰退期
新機種・新モデルの導入期
初期導入された製品の入替
り時期となる
2.4 現在行われているアルミニウムリサイクル・処理の実態
インドにてアルミニウムスクラップをアルミニウム二次合金地金として再資源化す
る二次合金地金精錬事業者、すなわち二次合金メーカーにおけるアルミニウムリサイ
クル・処理の実態を以下に説明する。
インドにおけるアルミニウム二次合金メーカーは、原料として主に輸入スクラップ
を直接又は商社から、その他工場発生スクラップを直接又は収集業者から購入してい
16
る。一部、国内市中発生スクラップも購入している。これらを原料として加工する事
によりアルミニウム二次合金地金を製造している。製造されたアルミニウム二次合金
地金は日系、外資系及び地場系の鋳造メーカーへと納入される。
国内
二次合金
メーカー
回
収
前
処
理
二次合金製造フロー
調
溶
精
鋳
出
鋳造
アッセンブリー
合
解
製
造
荷
メーカー
メーカー
スクラップ
スクラップ
市場
一般消費者
廃棄物解体業者
廃棄物
収集業者
スクラップ
商社
スクラップ
海外
多くの二次合金メーカーでは適切な環境保全設備が導入されておらず、スクラップ
の溶解工程では黒煙が発生しているにも関わらず集塵していない場面が見受けられる。
また、溶解工程で発生するドロスについては、未溶解のアルミニウムを取り除いたの
ち適切な処理がなされず、建屋内に溜め込むケースが見られた。
【溶解工程で発生する黒煙】
【黒煙を吐出しながらの操業】
17
【ドロスから未溶解のアルミを除去】
【溜まったドロス】
品質面においては、除滓処理や脱ガス処理等の精製がなされないままアルミニウム
溶湯を鋳込み、二次合金地金を製造する二次合金メーカーも確認できた。現状では、
品質の安定しないアルミニウム二次合金地金も市場に出回っている。
【未精製の二次合金地金】
【未精製に因る酸化地金】
2.5 アルミニウムリサイクルにおける中央・地方政府の取組の現状及び課題
インドでは有害廃棄物を扱う事業者に対し、中央政府が有害廃棄物管理規則を設け
て、廃棄物の「廃棄処理と取り扱い及び管理」に関して規制している。また、州政府
が水(汚染防止及び管理)規則、及び大気(汚染防止及び管理)規則を設け、事業所
から排出される水と大気に関して規制している。
しかし、前者はあくまでも事業所内での廃棄物の取り扱い及び管理と廃棄物の処理
を委託する場合のみを対象にしている。また後者はあくまで対象を水と大気に限定し
ている。更に、
「2.1 アルミニウムスクラップ等廃棄物に関する関係法制度等及びその
整備計画」でも述べた通り、国家環境政策(National Environmental Policy, 2006)が内
閣で採択されており、その中のアクションプランとして都市ゴミの分別、リサイクル、
リユースに関する能力を向上させること、インフォーマルセクターによる収集・リサ
イクルの法的規制、e-waste 規制を見直す等の内容で、リサイクル、リユースを促進す
18
ること等が盛り込まれているが、日本の資源有効利用促進法の様にリサイクルを促進
する法律は未だ制定されていない。
各種のガイドラインは 2005 年頃から整備されてきており、これらの内容はアルミニ
ウムを扱う事業者が廃棄物を処理業者に委託処理しようとする場合には、有害廃棄物
に関する情報を提供する義務があること等、その事業者が最終的な適正処理にしっか
りと責任を負うことが明確化されている。
しかし、そういった政府の環境保護に関する規制を強化していく動きの中でも、イ
ンド国内の旺盛なアルミニウム需要の状況から、アルミニウムを扱う事業者は事業か
ら発生するアルミニウムスクラップを委託して処理するのではなく、スクラップ収集
業者等に販売する事もあり、これらはガイドラインの対象外と認識されている。
更に、その販売先の選定においてはフォーマル企業でもインフォーマル企業(アル
ミニウムリサイクル事業を行うための正規の承認を得た事業者以外で同事業を行って
いる企業)でも無関係に高値で買い取る企業を選び販売をしている。インフォーマル
企業は環境に配慮した公害防止設備等への投資等は行なわず、フォーマルな企業に比
べ事業運営コストが抑えられる事から、フォーマルな企業と比較し高値で各事業者か
らアルミニウムスクラップを買い取っているという実状がある。
また、インフォーマル企業はインド国外からも多くのアルミニウムスクラップを輸
入し、アルミニウムリサイクル事業者へ販売を行っている。その結果、インフォーマ
ル企業によって大量のアルミニウムスクラップが取り扱われ、それらの企業による粗
雑な管理や保管により、周辺環境に悪影響を及ぼしている状況にある。
【投棄された廃棄物等】
19
【投棄された廃棄物等】
これらの問題に関し、アルミニウム協会ではインフォーマル企業への規制を強化す
る目的で、
「2.3 スクラップ及び二次合金地金の輸出入に関する関係法令と輸出入にお
ける傾向」にて触れた通り、アルミスクラップの輸入関税を 2.5%から 5%に引き上げ
るようになった等の動きが一部で出始めているが、抜本的な解決にはならないとアル
ミニウム協会自身からのコメントであった。
全体としては上記のような状況にあるため、日本のようにリサイクルを促進する資
源有効利用促進法等の具体的な法律の早期制定や廃棄物の最終処理までを自治体が主
導する仕組み作り、更には最終処分場の増設とその適切な運用の導入など多くの課題
がある。
3. インド南部におけるアルミニウムリサイクル実施可能性調査
3.1 事業開始及び継続に必要な行政手続きの整理
3.1.1 事業開始に必要な行政手続きの概要
・業種による規制
インドにおいては、外国直接投資が可能な業種の指定はネガティブリスト方式が採
用されており、以下のネガティブリストに該当する業種においては外国直接投資が禁
止されている。
20
ネガティブリスト
■ 原子力
■ 宝くじ
■ 賭博
■ 無尽講
■ 相互金融会社
■ 農業(花卉、園芸、種苗、畜産、養殖、野菜・茸類栽培等、管理された条件下で実施されるもの
及び農林水産物の関連サービス業を除く)及びプランテーション(茶園を除く)
■ 住宅・不動産事業(タウンショップ、住居・商業施設、道路・橋梁の建設を除く)
■ 譲渡可能な開発権の取引
■ たばこ、葉巻、またはその代用品の製造
これらネガティブリストに該当しない場合は、政府の事前認可を必要としない「自
動認可ルート」と外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board :
FIPB)の認可を必要とする「政府認可ルート」の二通りの投資認可手続きがある。
「自動認可ルート」の場合は、後述する会社設立手続きをオンライン認証で行う
事を基本として手続きが進められる。一方、インドでは一部の業種において個別に
国内外の出資比率上限が定められており、それら外国企業の出資比率の上限を超え
た場合に「政府認可ルート」が適用される。この場合、出資比率の再設定や投資そ
のものを禁止される場合があるため政府との事前交渉が必須となる。個別に国内外
の出資比率上限が定められている主要な業種を挙げると、例えば、銀行業、ノンバ
ンク、保険業、民間航空業、空港、通信サービス業、石油(精製以外)
、住宅・不動
産業、石炭・褐炭、ベンチャーキャピタル、商業、投資会社、防衛機器産業、農業
(プランテーション含む)
、印刷出版業、放送業、薬品・医薬品、鉱業、宅配便、小
売業、電力取引所等がある。
本事業は前述したネガティブリストには非該当であり、外国直接投資は可能であ
る。また、国内外の出資比率上限規制対象業種にも該当しておらず「自動認可ルー
ト」での手続きが可能となる。
・進出形態
前述の通り、インドへの外国直接投資は業種に応じ「自動認可ルート」と「政府認
可ルート」の二通りの手続きルートが存在するが、それらの進出形態は以下に共通さ
れる。
21
【進出形態及び各準拠法の一覧】
法人格の有無
形態
準拠法
外国企業の完全子会社
(100%外国資本)
有
2013年会社法
インド内資企業もしくは
インド人との合弁会社
有限責任会社(LLP)
2008年有限責任事業組合法
プロジェクト・オフィス
無
支店
1999年外国為替管理法
駐在員事務所
各々の進出形態に関する概要は以下の通りである。
-外国企業の完全子会社
外国企業の完全子会社には、インド内資企業に適用される全ての規制や税制等
が同様に適用されインド内資企業と同等に扱われる。
-合弁会社
合弁会社に関する特別な制約は、一部の業種において外国企業からの出資比
率の上限が定められていること以外特段規定されている内容は認められない。
外国企業の完全子会社同様、インド内資企業に適用される全ての規制や税制等
が適用され、インド内資企業と同等に扱われる。すなわち、インド内資企業に
適用される法律が合弁会社にも等しく適用される。
-有限責任会社(Limited Liability Partnership : LLP)
有限責任会社(LLP)は、2008 年施行の有限責任事業組合法(Limited Liability
Partnership Act, 2008)により導入された。LLP は外国企業の完全子会社及び合
弁会社と同様法人格を有する。LLP は組合の一種であり、組合の構成員が相互
で取り決めた条件に基づき構成員が自由に内部の運営を行う事が可能な形態と
なっている。なお、LLP は外国企業による 100%出資が可能な業種においての
み認められており、
後述する会社申請手続きを行う前に FIPB の事前承認を得る
必要がある。
-プロジェクト・オフィス
プロジェクト・オフィスは、プロジェクト実施に関連するか、それに附帯す
る活動のみを行うことができる。インフラ整備や大規模な建設事業及び土木事
業等の大規模プロジェクトを実施する場合にのみ当進出形態が適用され、プロ
ジェクト終了後は撤退することを前提とする場合に用いられる形態である。
22
-支店
支店は、インド国内において製造・加工といった製造業に関わる事業活動は
行わず、本社の代理として貿易や各種サービスを提供する等といった事業活動
を行う場合に用いられる進出形態である。なお、支店を設立する場合はインド
で行う事業についてインド準備銀行の事前の審査と承認が必要となる。
-駐在員事務所
駐在員事務所は、その本社がインドのビジネス環境や投資環境を理解する為
の情報収集活動、また、本社がインド国内のステークホルダーと連携を密に行
うための支援を実施する事を目的とする場合に用いられ、営業活動や販売活動
等といった商業活動は一切禁止されている。よって、インド国内における駐在
員事務所の活動経費は本社からインド国内への外国為替送金によって全て賄う
必要がある。また、支店と同様にインドで行う事業についてはインド準備銀行
の事前の審査と承認を必要とする。
なお、当事業は製造業に該当するため 2013 年会社法を準拠法とする外国企業の完
全子会社、若しくはインド内資企業やインド人との合弁会社での進出形態に限られる。
・非公開有限責任会社と公開有限責任会社
2013 年会社法によって設立される外国企業の完全子会社と合弁会社は、株式の流
動性(公募発行の可否、株式譲渡の自由の有無等)の観点から非公開有限責任会社と
公開有限責任会社の二種類に分けられる。これらの主な項目における相違点を比較す
ると以下の表となる。
【非公開有限責任会社と公開有限責任会社の相違点】
No.
項目
非公開有限責任会社
公開有限責任会社
1
営業開始
営業開始証明書の入手後
左に同じ
2
株主の人数
2人以上200人以下
7人以上(上限無し)
3
取締役の人数
2人以上
3人以上
4
授権資本額
10万ルピー
50万ルピー
5
株式の引受け
株式又は社債の公募発行は不可
株式又は社債の公募発行が可能
6
株式の譲渡
定款により株式の譲渡は制限されている 株式の譲渡に制限はない
7
株主総会における 最低2名の株主の出席が必要(法人株主
定足数
の場合は、代表者の出席)
最低5名の株主の出席が必要(法人株主
の場合は、代表者の出席)
基本的に公開有限責任会社と非公開有限責任会社の設立手続には相違がなく、外国
企業がインドへ製造業として投資する場合、その殆どが非公開有限責任会社である。
23
そのため、本事業においては非公開有限責任会社の会社設立手続について述べる。
・会社設立証明書の取得および資本金払込
非公開有限責任会社の設立には、以下に記す六つの段階を踏み手続きを行う必要が
ある。
段階
内容
第1段階
取締役の「電子署名認証(DSC : Digital Signature Certificate)」および
「識別番号(DIN : Director’s Identification)」の申請および取得
第2段階
会社名の申請および承認
第3段階
会社設立申請および会社設立証明書の取得
第4段階
基本税務番号および源泉徴収番号の取得
第5段階
銀行口座の開設
第6段階
新株発行に伴う資本金払込
-第 1 段階:
【取締役の電子署名認証及び識別番号の取得】
会 社 設 立 手 続 き に は 、 ま ず 取 締 役 の 電 子 署 名 認 証 (Digital Signature
Certificate : DSC)を取得する必要がある。DSC は認証機関管理局(Controller of
Certification Agencies : CCA)へ申請する事で発行される。次いで、取締役識別
番号(Director’s Identification : DIN)の取得を行う必要がある。DIN は企業省
(Ministry of Corporate Affairs : MCA)が取締役に固有の番号を割り当て識別す
るために発行される。DIN は、CCA から発行される電子署名済み申請書「Form
DIR-3(取締役の氏名、住所、学歴、パスポート番号等)」と「認証された関連
書類(パスポートコピーや日本国内の居住証明等)」を以て、MCA が管理する
Web ページである「MCA21 Portal」へオンライン申請することで取得できる。
-第 2 段階:
【会社名の申請及び承認】
会社名の申請及び承認は、進出地域を管轄する企業登録局(Registrar of
Companies : ROC)へ「会社名の申請書(Form INC-1)」を提出する事で行われる。
「Form INC-1」には「申請者の企業情報、取締役就任予定者の個人情報、基本
定款記載の事業目的、希望するインド現地法人の会社名等」を記入し、MCA が
管理する Web ページである「MCA21 Portal」へオンライン申請することで取
得できる。
-第 3 段階:
【会社設立申請及び会社設立証明書の取得】
会社名の承認を受けた後、以下の書類を準備し会社設立申請手続きを行う。
24
No.
書類およびその内容
1
基本定款(MOA : Memorandum of Association)
:会社名、住所、事業目的、資本金、設立文言、発起人の署名等
2
附属定款(AOA : Articles of Association)
:取締役会の規定や株式譲渡の規定など会社運営上の重要な事項が記載
3
新会社株式取得申込書類、会社代表者および認証者の個人証明書類、住所証明書類
4
払込資本額に関する取締役会決議証明書
5
各設立時取締役および設立時出資会社からの法令順守に関する宣誓書(Form INC9)
6
各設立時取締役および設立時出資会社からの法令に従った送金以外は受け取らない旨の宣誓書
7
設立時取締役に関する届出書(Form INC10)
8
設立時取締役となる事の宣誓書
9
設立時取締役に関する個人情報の届出書(Form DIR2)
10 設立時取締役の利害関係に関する届出書
11 会社設立証明書(登記簿等)
12 設立時出資会社の住所証明(但し、会社設立証明書に記載がない場合)
13 新会社の設置住所に関する証明書類(賃貸借契約書等)
Form INC-7
:2013年会社法が要求する全ての手続が終了したことを証明する書類であり、「会社の基本情
14
報、資本金額(授権資本金額、払込資本金額)、株主数、発起人に関する情報等」の事項を記載
する。
15
Form INC-22の提出:
登録事務所の住所を記載する書類
Form DIR-12の提出:
設立時の各取締役の詳細が記載される書類であり、主に「取締役の個人情報、当該役員の利益相
16
反の状況、その他役員(秘書役、最高財務責任者、最高経営責任者等)に関する個人情報等」の
情報を記載する。
以上の書類が提出され MCA により会社設立の承認が得られると、会社設立証明
書(Certificate of Incorporation : COI)が発行される。以上の手続きで会社設立
が完了する。
なお、上記に記載した各種様式は MCA のホームページからダウンロードが可
能である。
-第 4 段階:
【基本税務番号及び源泉徴収番号の取得】
インド国内で銀行口座を開設するためには、以下の種類の税務署番号を取得
する必要がある。
・基本税務番号/PAN : Permanent Account Number
・源泉徴収番号/TAN : Tax Deduction Account Number
PAN はインドにおける当局の納税管理の基本となる税務番号であり、税務上
の ID 番号となる。次いで、TAN はインドにおける源泉徴収を行うための税務
25
番号である。PAN 及び TAN は、全ての会社が取得すべき税務上の ID 番号であ
る。
-第 5 段階:
【銀行口座の開設】
インドで銀行口座を開設する場合、口座を開設する銀行から指定された内容
が決議された取締役決議書が必要となる。実際の運用では、事前に当該銀行か
ら取締役決議書 Form を取得した上で作成した決議書を以て、当該銀行の口座
を開設する。
-第 6 段階:
【新株発行に伴う資本金払込】
銀行口座が開設されたのち、例えば日本親会社等の株主が資本金の払い込み
を行う。払い込みを受けた現地法人は、資本金払い込みを行った株主に対して
株券を発行する。
なお、資本金の払い込みを受けた現地法人は、受領日から 30 日以内にインド
準備銀行の管轄地方事務所に対して株式払込金を受領した旨を通知する必要が
ある。また、株主に対して株式を発行した日から 30 日以内に、インド準備銀行
管轄地方事務所の外国為替部門に対して、Form FC-GPR Part A 及びその他必
要書類を提出し、報告する義務を負う。
・環境関連の手続き
インドにおいて当事業を開始するには、当事業に関連する環境関連法規「2.1 アル
ミニウムスクラップ等廃棄物に関する関係法制度等及びその整備計画」にある【表 1】
のうち、根本の規則である環境保護規則と以下の各規則のクリアランスを取得する必
要がある。
-【No.2】有害廃棄物管理規則 /
The Hazardous Wastes (Management and Handling) Rules, 1989
-【No.3】化学薬品取扱い規則 /
The Manufacture, Storage and Import of Hazard Chemicals Rules, 1986
-【No.8】環境影響評価 /
Environmental Impact Assessment notification, 2006
-【No.9】水(汚染防止及び管理)規則 /
The Water (Prevention and Control of Pollution) Rules, 1974
-【No.10】大気(汚染防止及び管理)規則 /
The Air (Prevention and Control of Pollution) Rules, 1981
これらのクリアランス取得手順及び申請機関や承認機関をまとめると、以下【表 5】
のようになる。なお、これらの手続きは下記手続きが完了した後に並行して実施する。
-前述の会社設立証明書の取得及び資本金払込
26
-工場用地のリース契約に関わる MOU 締結
-工場用地の手付金支払
【表 5:環境関連法規のクリアランスに必要な手続き】
手続き機関
No.
手続き
クリアランス対象の規則
詳細
申請窓口
バンガロール
【No.2】有害廃棄物管理規則/
The Hazardous Wastes(Management
and Handling) Rules, 1989
1
Consent for Establishment
【No.8】環境影響評価/
Environmental Impact Assessment
notification, 2006
2
Enviromental Clearance
【No.3】化学薬品取扱い規則/
The Manufacture, Storage and Import of
Hazard Chemicals Rules, 1986
3
4
Consent for Operation
5
審査機関
チェンナイ
承認期間
Regional Office
↓
Technical Advisor
↓
Environment Committee
↓
State Level Consent Committee
↓
State Pollution Control Board
State Pollution Control Board
State Level Expert Apprisal
Committee
↓
State Pollution Control Board
↓
Central Pollution Control Board
Central Pollution Control
Board
・有害廃棄物を取り扱う工場の生産能
力が「2万トン以下/年」の場合
State Level Expert Apprisal
Committee
↓
State Pollution Control Board
State Pollution Control Board
・全工程のうち1つでもREDカテゴリ
に該当し、且つ5,000万ルピー以上の
投資の場合
TIGB
Regional Office
↓
Technical Advisor
↓
Environment Committee
↓
State Level Consent Committee
↓
State Pollution Control Board
State Pollution Control Board
TIGB
Regional Office
↓
Technical Advisor
↓
Environment Committee
↓
State Level Consent Committee
↓
Regional Office
Regional Office
・左記【No.2】の「Schedule-1」に
「Processes」及び「Waste」を定義
・生産量や操業エリア等をふまえ、生
産工程毎(保管、移動、処理等)に汚
染の可能性高さを「RED、
ORANGE、GREEN」にカテゴライズ
KUM
TIGB
・有害廃棄物を取り扱う工場の生産能
力が「2万トン以上/年」の場合
KUM
KUM
TIGB
【No.9】水(汚染防止及び管理)規則/
The Water (Prevention and Control of
Pollution) Rules, 1974
【No.10】大気(汚染防止及び管理)規則/
The Air (Prevention and Control of
・全工程のうち1つでもREDカテゴリ
Pollution) Rules, 1981
に該当し、且つ5,000万ルピー以下の
投資の場合
・全工程がORANGEもしくはGREEN
カテゴリに該当する投資の場合
KUM
(注釈 : 表中「KUM」は「KARNATAKA UDYOG MITRA」
、
「TIGB」は「TAMIL NADU INDUSTRIAL GUIDANCE BUREAU」の略)
3.1.2 事業継続に必要な手続きの概要
当事業を継続するにあたり、規定の税金を納税すること等の他に環境関連のクリア
ランスを更新する為の手続きが非常に重要となる。よって、ここでは環境関連クリア
ランスの更新手続きに関して述べる。
・環境関連クリアランスの更新手続き
当事業に必要な環境関連クリアランスの更新に必要な行政手続きとしては、以下
を実施する必要がある。
-SPCB 配下の Regional Office への自社環境検査の報告
-Regional Office による環境影響に関する抜き打ち検査
-「2.1 アルミニウムスクラップ等廃棄物に関する関係法制度等及びその整備計
画」で前述した環境関連のクリアランスの更新
これら検査を実施するに際し事業者が遵守すべき環境基準は「地下水、大気、土壌」
各々に対し定められている。その環境基準は以下の通りである。
27
【地下水の環境基準】
No.
基準値(IS 10500 : 1991)
対象
(pH以外はmg/lit)
1
Arsenic
0.05
2
Cadmium
0.01
3
Chromium
0.05
4
Copper
0.05
5
Cyanide
0.05
6
Lead
0.05
7
Mercury
0.001
8
Nickel
-------
9
Nitrate as NO3
45.0
10 pH
6.5 - 8.5
11 Iron
0.3
12 Total Hardness (as CaCO3)
300.0
13 Chlorides
250
14 Dissolved Solids
500
15 Phenolic Compounds (as C6H5OH)
0.001
16 Zinc
5.0
17 Sulphate (as SO4)
200
【大気の環境基準】
No.
基準値(IS 10500 : 1991)
対象
(pH以外はmg/lit)
1
Sulphur dioxide
120μg/㎥
2
Suspended Particulate
500μg/㎥
3
Methane
Not to exceed 25% of the lower explosive limit
(equivalent to 650mg/㎥)
4
5
Ammonia daily average
(sample duration 24hrs)
Carbon monoxide
0.4mg/㎥ (400μg/㎥)
1 hour average : 2mg/㎥
8 hour average : 1mg/㎥
28
【土壌の環境基準】
No.
基準値
対象
(pHおよびC/N以外はmg/kg)
1
Arsenic
10.00
2
Cadmium
5.00
3
Chromium
50.00
4
Copper
300.00
5
Lead
100.00
6
Mercury
0.15
7
Nickel
50.00
8
Zinc
1000.00
9
C/N ratio
20 - 40
10 pH
5.5 - 8.5
これらの基準を基に各事業所が自ら環境影響調査を実施し、それを Regional
Office へ報告する。報告する上では各事業におけるそれぞれの工程を以下のカテゴリ
に分け、環境影響度を定義する必要がある。
・Red カテゴリ
:High Pollution Potential Unit
・Orange カテゴリ :Moderate Pollution Potential Unit
・Green カテゴリ
:Less Pollution Unit
なお、
「5.3 相手国の環境社会配慮法規の概要及びそのクリアに必要な措置」にて
詳しく述べるが、当事業は「Red カテゴリ」に該当する。各カテゴリにおける報告
実施時期は以下のように規定されており、当事業では「3 ヵ月に一度」の報告義務が
生じる。
事業種別
環境影響報告の実施時期
Redカテゴリに一つでも該当する事業
3か月に一度
Orangeカテゴリに一つでも該当する事業
6か月に一度
Greenカテゴリにのみ該当する事業
登記時にSPCBから指定された時期に一度
また、自社で行った環境影響調査の結果は、下記写真のように自社工場の入り口
近くに掲示することが義務付けられている。
29
【環境影響調査の掲示板】
更に、各環境関連規則のクリアランスの更新期間は投資金額と環境影響カテゴリ
によって異なる。まず、以下の投資金額によるカテゴリ分けを行う。なお、更新に
必要な手続きは事業開始時と同様である。
カテゴリ
投資金額
Large
1億ルピー以上
Medium
5,000万ルピー ~ 1億ルピー
Small
250万ルピー ~ 5,000万ルピー
Micro
250万ルピー以下
【No.2】有害廃棄物管理規則のクリアランス有効期間は、全てのカテゴリにおい
て 5 年と定められている。しかし、それ以外の下記規則については、
【表 6】に示す
通り環境影響カテゴリによって異なる。
・【No.3】化学薬品取扱い規則
・【No.8】環境影響評価
・【No.9】水(汚染防止及び管理)規則
・【No.10】大気(汚染防止及び管理)規則
また、これらクリアランス更新の手続きには「5.3 相手国の環境社会配慮法規の概要
及びそのクリアに必要な措置」にて後述する事業開始時と同様の手続きが必要とな
る。
30
【表 6:環境影響カテゴリ別クリアランス有効期限】
クリアランス有効期間
カテゴリ
RED
ORANGE
GREEN
Large
1 year
2 years
10 years
Medium
2 years
2 years
10 years
Small
5 years
5 years
10 years
Micro
5 years
5 years
必要な時に適時実施
3.2 インド南部で発生するスクラップ発生量及びその特徴と傾向
本事業においては、
「1. 本調査の背景と目的」で前述した通り、対象地域を Delhi、
Mumbai に並ぶ第三の生産拠点として成長著しいインド南部
(Chennai 及び Bangalore)
に絞り調査を実施した。
インド南部におけるアルミニウムスクラップの発生量を把握するためには、工場発
生スクラップと市中発生スクラップの双方を明らかにする必要がある。工場発生スク
ラップについては、同地域でのアルミニウム原料の需要量を掴む事により発生量が把
握でき、市中発生スクラップについては廃棄物解体業者や収集業者等で聞き取り調査
を行う事で明らかになると考え、下記要領にて調査を行った。
・調査期間:2015 年 8 月から 2016 年 2 月
・調査地域:インド南部(Chennai 及び Bangalore 近郊)
・調査対象社数:全 191 社
・調査対象業種分類:
*工場発生スクラップ
-AC / DC メーカー
二輪・四輪車並びに関連部品メーカー及び家電部品メーカー等。
-押出・圧延材メーカー
アルミサッシ等の製造・加工業。
*市中発生スクラップ
-廃棄物解体・収集業者等
二輪・四輪車、機械装置及び家電製品等廃棄物の解体及び収集業者。
・調査方法:
本事業以前の独自調査における資料と関係会社からの情報提供を基にリストア
ップし、現地訪問により各社からヒアリング調査を実施。
調査の結果、インド南部におけるアルミスクラップの発生量及びその特徴等は下記
31
の通りとなった。
・工場発生スクラップ
インド南部における最大の特徴は、主要なアルミニウム新地金メーカーの大半が
インド北東部に集中しているため、アルミニウム新地金を主原料とする押出メーカ
ーや圧延メーカー、線・棒メーカー等の殆どが南部に所在していない事である。従
って、インド南部地域には新地金に関連する企業はほぼ見受けられなかった。
対象地域における工場発生のアルミニウムスクラップは、その多くがアルミニウ
ム二次合金地金を使用している AC/DC メーカーから発生していることが分かった。
これら、インド南部におけるアルミニウム需要及び工場発生スクラップの概要に
関し、当調査事業での聞き取り結果及び現地情報提供者からの情報を基に、以下の
通り整理する。
【インド南部及びその他地域におけるアルミニウム原料需要】
南部
その他地域
222.3
568.7
12.0
413.9
4.8
542.8
0.0
1,277.8
AC / DC材
押出材
圧延材
線・棒材
合計
239.1
2,803.2
全体
791.0
425.9
547.6
1,277.8
3,042.3 単位:千トン
【インド全体における南部の業種別需要割合】
99%
72%
AC / DC材
97%
28%
圧延材 1%
100%
:インド南部
押出材 3%
線・棒材 0%
:その他地域
インド南部におけるアルミニウム原料の需要は年間約 24 万トンとみられ、各製造
32
工場からは約 3.3 万トンのスクラップが発生するものと推測される。その殆どは前述
の通り、AC/DC メーカーからの発生である。
【溶解工程で発生するドロス】
【切削加工工程で発生する切粉】
・市中発生スクラップ
「2.3 スクラップ及び二次合金地金の輸出入に関する関係法令と輸出入における傾
向」にて前述した通り、現在のインド南部においては市場に出回ったアルミ関連製
品の大部分が未だライフエンドを迎えておらず、その発生量はまだまだ少ない。そ
のため、需要家達は輸入スクラップに頼らざるを得ない状況となっている。とは言
え、インド南部においても少量ながら市中よりスクラップは発生し、それを取り扱
う事業者も存在する。
インド南部における市中発生スクラップのフローを下記に示す。
33
【市中発生スクラップのフロー図】
二次合金
メーカー等
廃棄物収集業者
廃棄物解体業者
廃家電
一般市中
廃四輪車
廃二輪車
その他廃材
一般市中より発生した廃車や廃家電、その他廃材等は廃棄物解体業者の手によっ
て解体され、リユース可能な物とそうで無い物に分類される。リユース可能な物は
再び一般市中に供され、一方、リユースが不可能な物はリサイクル用スクラップと
して廃棄物収集業者等を経由し、二次合金メーカー等のリサイクル事業者へと辿り
着く。廃棄物収集業者は回収したスクラップを単純に横流しするのではなく、運搬
の便宜上プレスしたり、また電線等は被覆線を剥くなどの加工を行い、付加価値を
付け、二次合金メーカー等のリサイクル事業者へ納入するケースが見受けられる。
ところで、インド南部ではリサイクル目的で廃棄物の解体や選別が行われている
というより、パーツ類を外してリユースに用いるケースが多い。その背景として、
経済発展著しい同国であるが、まだまだ新車や新品家電等を購入できる層が限られ
ているため、故障したパーツのみを取り替えて使用し続ける等していることが挙げ
られる。また、同国においては未だ再資源化に至るまでのリサイクル循環システム
が構築されていないため、リユース産業に一定の需要が発生しているものと推測さ
れる。これらリユース産業の需要も同国における市中発生スクラップ発生量の少な
さの要因の一つであると考えられる。
34
【廃棄物解体業者】
【リユース用の解体されたパーツ】
【リユース用の解体されたパーツ】
【廃棄物収集業者へ運搬されるスクラップ】
【線材スクラップの加工風景】
35
【廃棄物収集業者が回収したスクラップ】
インド南部での市中発生スクラップについては、殆どの廃棄物解体業者や収集業
者は法人として組織化されておらず、また同国の統計が未整備である事からその発
生量の正確な数値を把握する事は困難であるが、現地情報提供者によれば推定で年
間約 1 万トンの市中発生スクラップが発生していると思われる。
以上の事から、インド南部におけるアルミニウムスクラップの発生量は下記の通り
と考えられる。
【インド南部でのアルミニウムスクラップ推定発生量】
工場発生スクラップ
市中発生スクラップ
2015年(予想)
33.0
10.0
合計
43.0 単位:千トン
なお、同地においてはアルミニウム需要に対して発生するスクラップが慢性的に不
足している。不足分に関しては、海外からの輸入に頼っていることも裏付けられた結
果となる。
3.3 二次合金地金の予想取扱量及びその推移見通し
インド南部における二次合金地金の取扱に関し、前項同様の要領にて調査を行った。
・調査対象社数:全 21 社
・調査対象業種分類:
-二次合金メーカー
アルミニウム二次合金地金を製造するリサイクル事業者。
インド南部でのアルミニウム二次合金地金の取扱を把握するため、同地域における
36
二次合金メーカーにて聞き取り調査を実施した。なお、内訳は Chennai 近郊 11 社、
Bangalore 近郊 10 社となる。これら二次合金メーカーの生産量等を下記に示す。
【インド南部での二次合金メーカー概要】
地域
事業者数
Chennai
11社
生産量
6,800 トン/月
生産
8,600 トン/月
Bangalore
合計
10社
21社
5,700 トン/月
12,500 トン/月
8,000 トン/月
16,600 トン/月
上記の通り、インド南部でのアルミニウム二次合金の供給量は月間約 1.25 万トン、
年換算すると約 15 万トンとなる。
【インド南部でのアルミニウム二次合金地金 年間生産量予測】
2015年(予想)
Chennai
81,600
トン/年
Bangalore
68,400
トン/年
150,000
トン/年
合計
今後、益々増加すると見込まれている二輪・四輪車生産台数に比例してアルミニウ
ム二次合金地金の使用量も増加し、それに伴い、各事業者の投資も順調に進めばその
供給量も増加していく事が予想される。また、自動車産業以外にも、例えば一般家庭
で使用される家電製品等への普及拡大も大いに期待できる。
「2.2 スクラップの発生量、
二次合金地金の需要量等の推移と今後の予測」にて述べたように、今後の二輪・四輪
車生産台数及びアルミニウム二次合金需要の予測推移等を鑑みると、インド南部にお
ける二次合金地金の生産量は現在の約 15 万トンから 2020 年には約 27 万トンにまで到
達する事が予想される。
アルミニウム二次合金需要の予測推移に基づく、インド南部における二次合金生産
量の予想推移を下図に示す。
37
【インド南部におけるアルミニウム二次合金生産量の予測推移】
1,400
その他地域生産量
インド南部生産量
1,200
1,000
800
600
400
200
0
千トン
91
108
119
125
130
150
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
266
2020年(予測)
3.4 二次合金地金に対する需要及びその推移見通し
インド南部における二次合金地金に対する需要に関し、前々項及び前項同様の要領
にて調査を実施した。
・調査対象社数:全 57 社
・調査対象業種分類:
-AC/DC メーカー
二輪・四輪車並びに関連部品メーカー及び家電部品メーカー等。アルミニ
ウム二次合金地金を鋳造部品の原料として使用。
但し、これらには鋳造内製を行わず外注先に委託生産している事業者も含
む。
インド南部におけるアルミニウム二次合金地金の需要を把握するため、同地域にお
ける AC/DC メーカーにて聞き取り調査を実施した。
なお、
内訳は Chennai 近郊 33 社、
Bangalore 近郊 24 社となる。
これら AC/DC メーカーでの二次合金需要を下記に示す。
なお、
「2.2 スクラップの発生量、二次合金地金の需要量等の推移と今後の予測」に
て、インドにおけるアルミニウム二次合金の需要家は大きく AC/DC メーカー、その他
として押出メーカーや鉄鋼メーカーがある事を言及した。本事業調査の結果、インド
南部においては押出メーカーや鉄鋼メーカー等向けの二次合金需要は認められず、そ
の殆どが AC/DC メーカーにおいて発生している事が確認できた。
38
【インド南部:Chennai 及び Bangalore 近郊での AC/DC メーカー概要】
地域
事業者数
合金需要量
Chennai
33社
12,550
トン/月
Bangalore
合計
24社
57社
5,950
18,500
トン/月
トン/月
上記の通り、インド南部でのアルミニウム二次合金地金の需要量は月間約 1.85 万ト
ン、年換算すると約 22 万トンとなる。
【インド南部でのアルミニウム二次合金地金 年間需要量予測】
2015年(予想)
Chennai
Bangalore
合計
150,600
トン/年
71,400
トン/年
222,000
トン/年
前項で述べた通り、インド南部におけるアルミニウム二次合金の供給量が年間約 15
万トンであるのに対し、消費者である AC/DC メーカーの総需要は年間約 22 万トンで
ある。よって、その不足分は輸入に頼っており域内供給だけではその旺盛な需要を賄
い切れていない。
今後、益々増加すると見込まれている二輪・四輪車生産台数に比例して、同地にお
けるアルミニウム二次合金地金の需要量も比例的に増加していく事が予想される。今
後の二輪・四輪車生産台数予測推移に基づくと、インド南部における二次合金の需要
量は現在の年間約 22 万トンから 2020 年には約 43 万トンにまで到達する事が予想され
る。
二輪・四輪乗用車生産台数の予測推移に基づく、インド南部における二次合金需要
量の予想推移を下図に示す。
39
【インド南部におけるアルミニウム二次合金需要量の予測推移】
2,000
1,800
1,600
その他地域需要量
インド南部需要量
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
千トン
124
155
172
179
185
222
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
432
2020年(予測)
インド南部におけるアルミニウム二次合金生産量及び需要量の予測推移を比較衡量
したところ、域内供給量のみではその需要をカバーし切れない状況は当面続くと予想
される。結果、その不足分については輸入に依存せざるを得ない基本的な構図は変化
しないと見込まれる。
【インド南部におけるアルミニウム二次合金需要量の予測推移】
500
450
400
350
インド南部生産量
インド南部需要量
南部における輸入量
300
250
200
150
100
50
0
千トン
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2020年(予測)
3.5 スクラップの入手先・取引価格、二次合金地金の販売先・用途、取引価格等
インド南部において当事業を展開するに際し関連するアルミニウムスクラップの仕
入や二次合金地金の販売につき、同地域での実状等を下記に記載する。
40
・スクラップの入手先・取引価格
アルミニウムスクラップに関しては、地場スクラップ発生量の不足感から輸入ス
クラップを主な原料ソースとして検討する事が不可欠となる。一方の地場スクラッ
プは市中発生スクラップと工場発生スクラップの二通りに分類されるが、市中発生
スクラップ及び多くの工場発生スクラップはインフォーマル企業により取り扱われ
るケースが多く、「3.6 現地の既存企業の状況、インフォーマルセクターの動向等」
にて後述するが、我が国企業による直接の入手は困難となる。
しかし、排出元責任等コンプライアンスを重んじる日系製造企業から発生するア
ルミニウムスクラップについては、その入手は十分可能だと考えられる。
なお、本調査事業を通して判明した、当事業において想定されるスクラップの入
手先及び取引価格は以下の通りである。
【スクラップ入手先及び取引価格(2015 年 12 月現在)
】
品種
Tense
Taint Tabor
Extrusion
Telic
工場発生
Dross
輸入
単価
USD/kg
1.25
1.15
1.35
ー
ー
INR/kg
83
76
89
70
40
(USD=66.18INR : 2015 年 12 月末)
【TAINT TABOR】
【TENSE】
41
【EXTRUSION】
【TELIC】
【DROSS】
・二次合金地金の販売先・用途、取引価格等
インド南部において、再資源化されたアルミニウム二次合金地金は Chennai 近郊
及び Bangalore 近郊所在の日系、外資系及び地場系 AC/DC メーカーに向けて販売さ
れる。二次合金地金はこれら AC/DC メーカーでの鋳造工程を経て、主に二輪・四輪
車用鋳造部品へと加工される。現在、同地域の AC/DC メーカーは主に地場系二次合
金メーカーで製造される二次合金地金を、そして「3.4 二次合金地金に対する需要及
びその推移見通し」で前述した様に、同地での供給能力が追い付いていない事から
不足分については輸入品を使用している。なお、二次合金地金の取引価格について
は、インド北部に古くから進出している大手日系自動車メーカーの購買価格が同国
での指標となっており、インド南部においても同様である。本調査事業を通して判
明した、二次合金地金の平均的な取引価格帯は以下の通りである。
【スクラップ入手先及び取引価格(2015 年 12 月現在)
】
販売単価 (INR/kg)
地場二次合金地金
125~130
輸入二次合金地金
120~125
42
3.6 現地の既存企業の状況、インフォーマルセクターの動向等
本事業を通し、インド南部におけるアルミニウムリサイクル事業者の実態を調査し
た。これら事業者は以下の通り大きく二通りに分類される。一方は、法人格を有しア
ルミニウムリサイクル事業を行うための正規の承認を得たフォーマル企業であり、他
方は正規の承認を得た事業者以外で同事業を行っているインフォーマル企業である。
フォーマル企業は、一般的に環境保全対策として集塵機を導入しており、海外から
の輸入スクラップや一部国内発生スクラップを原料とした二次合金地金の製造・販売
を行っている。これらフォーマル企業は、国内だけでは十分は数量のスクラップが確
保できず、海外からの輸入品に頼らざるを得ない状況におかれている。なぜなら、イ
ンド南部に多く存在すると考えられるインフォーマル企業は環境保全に対する十分な
投資を行わないため事業コストが抑えられ、安価なコストを武器に国内発生スクラッ
プを高値で購入しているためである。同国においては、国内発生スクラップはとにか
く高値で買い取る企業へと販売され、結果、インフォーマル企業によって取り扱われ
る。
更に、これらインフォーマル企業は海外からも輸入スクラップを調達し、自社で使
用したり、他のアルミニウムリサイクル事業者へ販売を行っている。
これらの事から、インフォーマル企業が環境への配慮に欠如した粗雑な管理下で大
量のアルミニウムスクラップ取り扱う事となり、当該従業員や周辺住民、周辺環境へ
の悪影響を及ぼしている。
【周辺水路の状況】
【投棄されている様子】
3.7 競合すると考えられる他国企業の事業展開の有無及び
その状況・ビジネスモデルの比較等
本調査事業を通し、インド国内において当事業と同様のビジネスを展開している外
国独資での企業体の存在は確認できなかった。また、今後展開を検討している他国企
業の噂も耳にしなかった。ただ、合弁での事業展開については、二社の日系企業がイ
ンド大手非鉄メーカーと協調し、同国においてアルミニウムリサイクル事業を展開し
43
ている。内一社は北部で事業展開をしており、もう一社は 2005 年より南部 Chennai
地域にて操業している。
上述の通り、日系二社の合弁会社を除くと同国での他国企業による事業展開は確認
できなかったが、インド国外からインド市場をターゲットにした動きは見られた。
例えば、主に他国向けの輸出販売を基本戦略としているマレーシアやベトナム等の
二次合金メーカーがそうである。アセアン諸国からインドに向けたアルミニウム合金
の輸出販売は、
「2.3 スクラップ及び二次合金地金の輸出入に関する関係法令と輸出入
における傾向」にて述べた通り、
「ASEAN-インド包括的経済協力協定」
、すなわち FTA
が適用され関税が免除されるため、インドマーケット向けの輸出販売展開を行ってい
る。
3.8 その他のリサイクルに関する現状・実態の把握
当事業を通し、インド南部におけるアルミニウムリサイクルに関する実態を調査し
たところ、リサイクル事業者として本事業モデルである二次合金メーカーの他、押出
メーカー及び鍋メーカーを確認する事ができた。これら事業者にて行われているアル
ミニウムリサイクル・処理の実態を業種別に以下にまとめる。
-押出メーカー
押出メーカーとはアルミサッシの製造・加工事業者を指す。インドにおける押出
メーカーは大きく二通りに大別される。一方はボーキサイトから作られたアルミナ
を中間素材として製造されるアルミニウム新地金を主要原料とする押出メーカーを
言い、インドにおいては大手事業者がこれにあたる。他方はアルミスクラップであ
るアルミサッシを主に原料とする押出メーカーであり、同国の零細押出メーカーに
良く見られる。リサイクルの観点から、本項では後者に関して述べる。
零細押出メーカーはその財務体質や、客先品質要求レベルの低さからアルミニウ
ムスクラップを主要原料として使用しているが、スクラップ品種は押出製品と同等
の成分規格が見込まれるアルミサッシのみを使用している。サッシスクラップは主
に輸入品を直接又は商社から、その他に国内市中発生スクラップを直接又は廃棄物
収集業者から購入している。ごく一部、住宅資材メーカー等から発生する工場発生
スクラップも購入する。これらを原料として加工する事によりアルミサッシを製造
している。製造されたアルミサッシは住宅資材メーカーや一般市中へと納入される。
44
【押出成形品】
国内
押出
メーカー
回
収
前
処
理
溶
精
鋳
加
予
押
出
解
製
造
工
熱
出
荷
押出製造フロー
市場
住宅資材
メーカー
スクラップ
廃棄物解体業者
廃棄物
スクラップ
収集業者
商社
スクラップ
海外
これら押出メーカーにおいては、廃棄すると廃棄費用や処理費が発生するような
廃棄物、例えばアルミ溶滓の塊などについては自社工場敷地内へ散布されている状
況が確認された。また、切削油が付着している切削粉は溶解前に乾燥キルン等を用
いた前処理乾燥工程を経る必要があるが、アルミサッシ切削粉を地面に広げて天日
干しを行っている押出メーカーも確認できた。これにより切削油が敷地内コンクリ
ートに浸透し、そこから土壌へと浸潤する可能性が高く、土壌汚染が懸念される。
45
【散布された溶滓】
【天日干しされた切削粉】
【アルミサッシスクラップ】
-鍋メーカー
鍋メーカーとはアルミ鍋の製造・加工事業者を指す。インドでのアルミニウムリ
サイクル事業者は、本事業モデルである二次合金メーカーや前述した押出メーカー
が主要であるが、一部、アルミニウム鍋メーカーの存在も確認できた。これら鍋メ
ーカーは、その殆どが法人格として組織化されておらず、家内工業的商店規模でイ
ンフォーマルに事業を行っている。アルミ鍋の原料はアルミスクラップであるが、
その品種や成分組成などに制限はなく、最終製品を鍋の形状にする事のみが要求さ
れる。また、原料スクラップはほぼ国内市中発生品で構成される。
なお、これら鍋メーカーではタイヤ廃材をスクラップ溶解に要する熱源として利
用しており、環境保全設備等も導入していない事から深刻な環境汚染が懸念される。
46
【アルミニウムスクラップ溶解】
【鋳込まれたアルミ鍋】
【アルミニウムスクラップ】
【熱源タイヤ廃材】
インド南部におけるアルミニウムリサイクル事業者として、当事業モデル以外に上
記の通り二通りの事業種を確認する事ができた。本事業モデルである二次合金メーカ
ーとこれら押出メーカーや鍋メーカーとの比較対比を下記表に示す。
47
【アルミニウムリサイクル事業者の比較】
二次合金メーカー
スクラップ
入手先
品種
押出メーカー
主に輸入スクラップ
主に輸入スクラップ
一部工場発生スクラップ
一部市中発生スクラップ
どのような品種でも使用可
サッシスクラップのみ
鍋メーカー
主に市中発生スクラップ
ー
どのような品種でも使用可
前処理
○
○
×
調合
○
×
×
溶解
○
○
○
精製
○
○
×
鋳造
○
○
○
出荷
○
○
○
製造工程
品質
販売先
用途
◎
△
×
AC/DCメーカー等
一般市中
一般消費者
二輪・四輪車部品等
アルミサッシ等
調理用鍋
3.9 事業パートナーの要否及びその候補者の詳細
3.9.1 事業パートナーの要否
インドに進出する大手日系企業の多くは、インド内資企業である現地事業パートナ
ーとの合弁会社という進出形態を採用している。
インドは経済成長著しく、またその人口の多さから日系企業にとって非常に魅力的
な市場であるが、同国でのビジネスを取り巻く環境においては下記に挙げるような
様々なリスクが潜んでいる。
-不透明な許認可プロセス
インドのビジネス社会においては、許認可プロセスが不透明であると言った声が
聞かれる。各種申請時にて、書類修正が幾度も発生したり、追加資料提出が求めら
れるケースがある。また、申請から相当時間が経過しても許認可が下りず、半ば恣
意的に時間を掛けられている印象を受けるとの話も聞くことができた。これらによ
って、スケジュールよりも事業開始が遅れる事が懸念されるため、余裕を持った事
業スケジュールが必要となる。
-労務リスク
同国では離職率の高さが大きな課題となっている。高学歴且つ高度なスキルを持
つ人材ほど頻繁に職場を変え、更なるスキルアップや高収入を求める傾向がある。
また、インドでは労働争議が多発しており、特に近年、労働者が待遇改善を求め
てストライキやデモを起こすケースが日系企業においても発生している。
加えて、ヒンドゥー社会における基本的な社会構造である身分制度が未だ色濃く
残っておるケースもあり、待遇差別等で日常のコミュニケーションが困難なものと
なっている場合もある。
48
これらリスクを回避し、事業活動に専念できる体制を構築するためには現地事業パ
ートナーの存在が必要不可欠となる。
3.9.2 事業パートナー候補者の詳細
前述の通り、インド国内で事業展開を検討する上で事業パートナーの存在は不可欠
である。実際、同国へ進出する日系企業の多くは事業パートナーと合弁にて事業展開
している。なぜならば、事業パートナーの存在が潜在的ビジネスリスクやヒンドゥー
社会特有のコミュニケーション問題に対して柔軟且つ迅速に対応するための最も有効
な手段だからである。
インド南部において本事業ビジネスモデルを展開する当たり、事業パートナーは当
事業における管理部門に関する知識や能力が必須であり、官公庁を含む関係各方面に
対する人脈が広い事も求められる。無論、スムーズな事業展開のためにも、当アルミ
ニウムリサイクル事業に係る経験や知識は事業パートナー選定の前提条件となる。事
業パートナーが果たすべき役割及びパートナーが持つべき能力等について下記に整理
する。
・管理部門
-人脈:
各種申請・手続きを滞り無く進めるための、関係各方面との繋がり
-労務:
従業員の人事管理や労使関係等の集団的・個別的管理の経験及びノウハウ
-税法務 :
複雑且つ頻繁に改正される法規制に対する理解及びコンプライアンス対応能力
・当事業ノウハウ
-スクラップ調達に関するノウハウ:
国内発生スクラップの発生源や流通経路に関する知識、調達経験等
-二次合金販売に関するノウハウ:
二次合金地金の品種、使用用途や需要家に関する知識、販売経験等
本事業における事業パートナーには、スムーズな事業立上げの支援を期待するだけ
でなく、事業開始後の事業運営に関わる労務・税法務など管理面の一切や原料調達・
製品販売の一部が重要な役割として期待される。
3.10 事業活動を支えるインフラの整備状況
本事業を通し、インド南部におけるインフラ整備状況について調査を実施した。本
調査において判明した同地域のインフラ事情について項目別に下記に記す。
49
-道路インフラ事情
同地域では街中・郊外を問わず未舗装な凸凹道が多々見られ、また交通量が非常
に多いため時間に関係なく交通渋滞が至るところで発生する。また、牛や羊が車道
を闊歩しているため交通渋滞をより助長させる一因ともなっている。
本事業を展開する上でも、同地域における道路事情による悪影響は少なくない。
鋳造されたアルミニウム二次合金地金は一般的に、横 7 本縦 14 段を 1 梱包として組
上げられ、複数梱包を配送トラックに積み込み需要家の元へと納められる。しかし、
前述した同地域の道路事情から、地金の梱包が崩れてしまい品質問題に発展する可
能性が否めない。
-電力インフラ事情
当事業を開始するに当たり工業団地へ入居する事となる。同地域における工業団
地では工場建設段階に入っても通電されていないことが多々ある。調査を通じ、建
設工事を進めるためだけに発電機を導入した企業や操業開始後もまともに通電され
なかったため発電機投資の必要が生じた企業を確認する事ができた。事実、本調査
期間中においても瞬間停電や停電には頻繁に見舞われた事から安定的な電力供給の
ための措置は必要不可欠であると考えられる。
例えば本事業では、アルミニウム二次合金地金の鋳造工程における鋳造コンベア
を電力で稼働させるため、停電の際はコンベアが停止し操業が阻害される。また、
鋳型からアルミニウム溶湯が溢れ出し、火災の原因となる可能性が否めない。更に
は、排気ガスや黒煙などを集塵する環境保全設備も動力が電力であるため、停電時
には有害物質が大気中へ放出される恐れが発生する。
-水インフラ事情
工業団地で使用する工業用水に関してであるが、いずれの工業団地においても工
場内には必ず水循環設備を導入する必要がある事が定められている。水は循環設備
にて濾過・浄化させた後、工場敷地内で再利用する事となる。調査を通し、殆どの
企業では循環後の水は一旦貯水し、緑地帯への散水用として利用している事が確認
できた。
なお、同地域の配水インフラによって本事業に与える影響は特に認められなかっ
た。
一方、インド南部における排水インフラの脆弱さは非常に深刻な問題であると言
える。同地域では排水設備が未整備のエリアも多く、また排水設備自体も脆弱であ
るため、大雨が続くと一般道路は勿論、高台に位置する高速道路や家屋が浸水する
ほどの大洪水が発生する。本調査事業中にも大洪水に遭遇した。このような大洪水
が発生すると、事業活動はおろか社会活動を行う事も困難となる。
50
【Chennai にて発生した洪水の様子】
また、インド南部における主要工業団地の概要を Chennai 近郊エリア、Bangalore
近郊エリア別に下記に示す。
【Chennai 近郊エリアにおける主要工業団地一覧(2015 年 3 月現在)】
工業団地名
Thervoy Kandigai
Gummidipoondi
Irungattukottai
Pillaipakkam
Sriperumbudur
Oragadam
所在する州
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Chennai中心部より
Chennai中心部より45km
Chennai中心部より35km
Chennai中心部より50km
Chennai中心部より45km
Chennai中心部より50km
北西約50km
国道(NH)5号線沿い
国道(NH)4号線沿い
国道(NH)4号線沿い
国道(NH)4号線沿い
州道(SH)48,57号線沿い
開発主体
SIPCOT
SIPCOT
SIPCOT
SIPCOT
SIPCOT
SIPCOT
土地価格
INR 550万/acre
INR 550万/acre
INR 900万/acre
INR 900万/acre
INR 900万/acre
INR 900万/acre
アクセス方法
現状
総面積:819acre
総面積:1,182acre
総面積:1,363acre
総面積:712acre
総面積:1,893acre
総面積:2,769acre
空き有り 約220acre
空き有り 約50acre
空き有り 約5acre
空き有り 約25acre
空き有り 約200acre
空き有り 約20acre
工業団地名
Mahindra World City
Vallam Vadagal
Siruseri IT Park
SOJITZ Motherson
Cheyyar
OneHub Chennai
所在する州
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Chennai中心部より55km
Chennai中心部より50km
Chennai中心部より
Chennai中心部より
Chennai中心部より
Chennai中心部より
の
進出余地
アクセス方法
国道(NH)45号線沿い
州道(SH)48号線沿い
南へ30km
南西35km
南西100km
南50km
開発主体
Mahindra Group
SIPCOT
SIPCOT
SOJITZ/Motherson
SIPCOT
Asendas/Nikki/Mizuho
土地価格
INR 4,000万/acre
INR 1,250万/acre
INR 4,500万/acre
未定
INR 128万/acre
個別開示
現状
の
進出余地
総面積:1,550acre
総面積:866acre
総面積:581acre
総面積:270acre
総面積:619acre
総面積:1,450acre
空き有り 約40acre
空き有り 約550acre
空き有り 約60acre
現在開発中
空きなし
空き有り
(JETRO : 日系企業が進出している主要工業団地及び今後進出が有望視されている工業団地を基に作成)
51
【Bangalore 近郊エリアにおける主要工業団地一覧(2015 年 3 月現在)
】
工業団地名
Bidadi
Electronics City
Narsapura
Doddaballapura P-Ⅲ
Harohalli P-Ⅲ
所在する州
Karnataka
Karnataka
Karnataka
Karnataka
Karnataka
Karnataka
Bangalore中心部より28km
Bangalore中心部より22km
Bangalore中心部より55km
Bangalore中心部より36km
Bangalore中心部より45km
Bangalore中心部より約86km
カナクプラ行き国道209号線沿い
国道4号線沿いトゥムクル市より約15km
アクセス方法
Chennai行国道4号線沿い
マイソール行き州道(SH-17)沿い
Vasantha Narasapura P-Ⅱ,ⅢZ&P-Ⅳ
開発主体
KIADB
KIADB
KIADB
KIADB
KIADB
KIADB
土地価格
販売済み
販売済み
INR 3,400/㎡(予定)
INR 3,100/㎡(予定)
INR 3,100/㎡(予定)
INR 1,700/㎡(予定)
空きなし
空きなし
販売済み
申請受付中
申請受付中
申請受付中
工業団地名
Vemgal
Malur P-Ⅳ
Gauribidanur
Dabaspet P-V
Hosur
GMR Krishnagiri SEZ
所在する州
Karnataka
Karnataka
Karnataka
Karnataka
Tamil Nadu
Tamil Nadu
Bangalore中心部より約50km
Bangalore中心部より45km
Bangalore中心部より約70km
Bangalore中心部より約50km
Bangalore中心部より約40km
Bangalore中心部より約65km
国道7号線沿い
現状
の
進出余地
アクセス方法
国道4号線沿い
州道99号線沿い
州道7号線沿い
州道4号線沿い
国道7号線沿い
開発主体
KIADB
KIADB
KIADB
KIADB
SIPCOT
GMR
土地価格
INR 3,185/㎡(予定)
INR 2,890/㎡(予定)
INR 3,088/㎡(予定)
INR 3,700/㎡(予定)
未定
INR 2,250/㎡(予定)
申請受付中
申請受付中
申請受付中
申請受付中
P-ⅠとP-Ⅱは開発済み
申込受付中
現状
の
進出余地
(JETRO : 日系企業が進出している主要工業団地及び今後進出が有望視されている工業団地を基に作成)
【Chennai 近郊地図】
【Bangalore 近郊地図】
(出典 JETRO : Industrial Map of GREATER CHENNAI, Industrial Map Bangalore & Surrounding )
4. 日本裨益(我が国への経済効果)に関する調査
アルミニウムリサイクル事業をインド南部で展開することにより、同地域に進出し
52
ている日系企業へ高品位且つ安定した品質のアルミニウム二次合金地金を供給するこ
とが可能となる。これに伴い、既進出企業の原価低減や品質問題の防止に寄与するこ
とができる。現状、使用するアルミニウム二次合金地金の一部を国外からの輸入に頼
っている需要家は、いつでも指定納期に必要量を入庫することが可能となり、大幅な
在庫削減に繋がる。また、現状は技術力の乏しい地場アルミニウム二次合金地金をや
むを得ず使用しているが、同地域において本事業を展開する事によりいつでも日本品
質のアルミニウム二次合金地金が調達可能となり、生産性の改善や歩留向上も期待す
る事が可能となる。
我が国企業の持つ技術を
活用した二次合金地金
地場二次合金地金
輸入二次合金地金
納入
短納期・小ロット対応
短納期・小ロット対応
リードタイムを考慮した
手当・在庫が必要
品質
歩留の向上
未熟な技術力
未熟な技術力
更に、従来適切に処理されていなかったドロス等のスクラップについても適正価格
を設定した上で有価物として取引可能となる。これらの事から、結果的に安価なアル
ミニウム二次合金地金を調達することに繋がる。我が国企業の持つ技術を活用し、当
事業で製造された二次合金地金のコストメリットを下記に示す。
販売単価
(INR/kg)
溶解歩留
溶湯単価
(INR/kg)
地場二次合金地金
130
93%
140
輸入二次合金地金
我が国企業の持つ技術を
活用した二次合金地金
125
96%
130
125
99%
126
上記の通り、今まで適切に処理されていなかったドロス等を取り扱う事により、当
事業での二次合金地金は地場メーカーのそれより販売単価を低減する事が可能となる。
また、二次合金地金投入量に対して発生したアルミニウム溶湯量を表す指標である溶
解歩留は無論高い方が好ましく、地場や輸入二次合金地金と比べ、当事業での二次合
金地金の方がより高い。販売単価を溶湯歩留で割る事によって算出される溶湯単価は、
AC/DC メーカー等の需要家が鋳造工程で使用するアルミニウム溶湯のコストを表して
いる。上表に示す通り、我が国企業の持つ技術を活用した二次合金地金は表面的な販
売単価のみならず、品質に裏付けされた溶解歩留の高さから、安価なアルミニウム溶
湯を需要家である日系企業の AC/DC メーカーへ供給する事が可能となり、それら企業
53
の収益改善に寄与する事となる。
上述した事柄から、日系企業の収益改善に起因した更なる案件受注や追加設備投資
も期待できる。そうなることで、本事業に関わる全ての日系企業に裨益がもたらされ
ると考えられる。そして、既進出企業によるインドでの収益は配当や技術支援料とい
う形で日本本社へ還流させることが可能となり、ひいては日本の経済成長に貢献する
ことが可能になると考えられる。
5. 環境社会的側面に関する調査
5.1 事業実施に伴う環境改善効果
インド南部においてアルミニウムスクラップを溶解するリサイクル事業者、例えば
二次合金メーカー、押出メーカー等の殆どは、熱源として容易に入手でき汎用性が高
い燃料である重油(Furnace Oil)を使用している。重油のように原油に起源する燃料を
使用すると、水・二酸化炭素(CO2)・窒素化合物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)が、またスク
ラップを溶解する事で黒煙や煤塵、ダイオキシン等が発生・排出されるため、我が国
企業においてはその環境影響を十分理解し、それに応じた公害防止設備を導入した上、
日々の保全管理を実施するものである。
しかし、インド南部における地場零細企業やインフォーマル企業においては環境対
策を怠っている企業が多数存在している。前述の通り、重油を使用しスクラップを溶
解する事で黒煙等が発生するため環境保全用集塵設備が必要となるが、これら環境対
策への設備投資を怠ったまま操業を行うため、ひたすら黒煙を吐き出し続けているの
が現状である。それら企業の中には、重油ではなくタイヤ廃材を熱源として使う事業
者もおり、その環境影響はより深刻である。
本事業において調査した、排出ガスに関する同地リサイクル事業者の現状と我が国
企業による環境保全の一例を比較すると下記の通りとなる。
インド南部事業者
溶解炉
⇒
煙突
⇒
大気
我が国企業
溶解炉
⇒ 二次燃焼室 ⇒ 強制空冷 ⇒
集塵機
⇒
煙突
⇒
大気
地場零細企業やインフォーマル企業の現状では溶解時に発生する黒煙や煤塵が煙突
を通じそのまま大気へ放出されている。一方、我が国企業においては先ず溶解時に発
生する煤塵やダイオキシン類を二次燃焼室で高温焼成し分解、無害化させる。ダイオ
キシン類は漸次温度が低下すると再合成するので、それを防ぐために強制空冷を行い、
集塵機を通過させて煤塵等を除去し、大気へ放出するといった環境保全を実施してい
る。同地におけるフォーマルなアルミニウムリサイクル事業者においても、集塵機は
設備していたとしても、二次燃焼や強制空冷等の無害化プロセスを導入している企業
54
は確認する事ができなかった。
以下は、環境保全を一切行わなかった場合と我が国企業による環境保全を行った場
合の、ダイオキシン類の毒性等量の測定データの一例である。
【毒性等量 TEQ 測定データ】
サンプル①
サンプル②
環境保全無し
4.30
4.13
環境保全有り
0.76
0.26
(単位:ng-TEQ/m3、条件: 0℃, 101.32kPa)
毒性等量(TEQ)とは、ダイオキシン類の濃度(毒性の強さ)を表示する際に用いられ
る単位である。当事業における日本国規制値は【1.0ng-TEQ/㎥】とされているが、イ
ンドにおいて当指標に対する規制は未だ敷かれていない。上記測定データは日本国で
試験的に採取されたものであるが、上表の「環境保全無し」の数値は、インド南部に
おけるインフォーマルなアルミニウムリサイクル事業者が排出するガスの数値と変わ
らない事が予測される。
よって、これらデータから分かるように、本事業において我が国技術を活かした環
境保全設備を導入する事で排出ガス中の毒性等量(TEQ)が少なくとも 80%以上削減す
る事が可能となる。
また、現状適正に処理されていなかったり不法投棄されている一部のアルミニウム
スクラップを、当事業モデルにおいて有価物として回収し、適切なリサイクル処理を
行う事で、これらをリサイクル循環の中に組み込む事が可能となり、且つ当事業にお
ける我が国企業の持つリサイクル技術を同国内へ展開することができると考える。
5.2 事業実施に伴う環境社会面への影響
本調査において確認できたアルミニウムリサイクル事業者の中で、当事業モデルと
同様の事業者、すなわち二次合金メーカーにおいては現状適切なリサイクルがなされ
ているとは考えられない。前述した通り、環境に配慮した公害防止対策が不十分な事
から黒煙等が大気に放出され、また、アルミニウムドロスなど一部のアルミニウムス
クラップが適切に管理がされていない為である。
このような不適切なリサイクル事業によって黒煙排出や粉塵飛散、野焼きによる有
害物質や灰の発生、加熱作業による有害物質の揮散、不法投棄現場からの重金属放出、
シアンや酸の処理排水などが問題となっており、近隣地域の人々や周辺環境への被害
が懸念される。
本事業モデルは環境配慮型リサイクルビジネスである。適切な環境保全対策やリサ
55
イクル処理を行う事により、当事業工場からの有害物質排出は防止可能となる。無論、
各製造工程でどのような処理がなされ、どのような環境対策が必要なのか、各々の役
割や重要性を当事業に係る従業員へ教育することで意識付けを実施する。また、地域
社会へ与える影響に責任を持ち、近隣地域の清掃活動やリサイクル啓蒙活動を定期的
に実施することで、地域社会とのコミュニケーションを図り、リサイクル活動の意義
の普及や環境モラルの向上を図ることができると考える。
5.3 相手国の環境社会配慮法規の概要及びそのクリアに必要な措置
「3.1 事業開始及び継続に必要な行政手続きの整理」にて述べた通り、インドにおい
て当事業を開始するにあたり適用される環境関連法規は、根本の規則である環境保護
規則と以下の各規則が適用され、それぞれのクリアランスが必要となる。
-【No.2】有害廃棄物管理規則
-【No.3】化学薬品取扱い規則
-【No.8】環境影響評価
-【No.9】水(汚染防止及び管理)規則
-【No.10】大気(汚染防止及び管理)規則
これらクリアランス取得手順及び申請機関や承認機関は、前述の【表 5】において既に
まとめている。またこれらの手続きは、以下の手続きが完了した後に並行して実施す
る。
・企業登記及び営業ライセンスの取得
・工場用地のリース契約に関わる MOU 締結
・工場用地の手付金支払
先ず、これら規則の基礎となる環境保護規則の Schedule 1 において、90 以上の業種
(プロセス)に対しそれぞれ排水、排ガス、騒音、煙突高等の基準が設定されており、
各業種によって対象物質が異なる。また、一部の業種には特別な条件が設けられてい
る場合もある。以下は、環境保護規則の Schedule 1 に規定されている当該事業に関す
る抜粋である。
56
【環境保護規則の Schedule 1】
Category with threshold limit
No.
Project or Activity
A
B
(生産量 20,000t以上/年)
(生産量 20,000t以下/年)
(a)Primary metallurgical
industry All projects
Condition if any
Sponge iron manufacturing
< 200TPD
Secondary metallurgical
(b)Sponge iron
processing industry
manufacturing > 200TPD
Metallurgical
3(a)
(1) All toxic and heavy
有害廃棄物管理規則に
industries
(c)Secondary metallurgical metal producing units
おいて承認されたリサ
(ferrous &
non-ferrous)
processing industry All toxic < 20,000t/annum
イクル事業は免除とな
る
and heavy metal producing
units
(2)All others non-toxic
> 20,000t/annum
secondary metallurgical
industries
< 5,000t/annum
(注釈:TPD とは total and permanent disability の略)
次に、
【No.2】有害廃棄物管理規則において、有害廃棄物は「健康や環境に害をもた
らす可能性のある有害性、可燃性、爆発性、腐食性等のある廃棄物」と明確に定義さ
れ、当規則の Schedule 1 において、プロセス及びそこから発生する廃棄物が指定され
ており、これら指定されている廃棄物は自動で有害物とみなされる。また、当規則の
Schedule 1 には該当しないが、Schedule 2 で規定された重金属やその他の物質の基準
を超えた廃棄物も有害物とみなされる。なお、当事業のアルミニウムは Schedule 1 に
該当する。以下がその抜粋である。
【有害廃棄物管理規則の Schedule 1(アルミニウム抜粋)】
NO. Processes
11
Production of primary and secondary aluminium
アルミニウム新地金及び二次合金地金の生産
Hazardous Wastes
11.1
Sludges from gas treatment
ガス処理から発生するスラッジ
11.2
Cathode residues including pot lining wastes
炉内廃棄物を含むカソード残渣
11.3
Tar containing wastes
タールを含む廃棄物
11.4
Flue gas dust and other particulates
排煙ダスト及びその他粉塵
11.5
Wastes from treatment of salts slags and black drosses
塩化スラグ及び黒溶滓の処理から発生する廃棄物
57
次に、
【No.8】環境影響評価手続きにおいては、各事業のそれぞれの工程を以下のカ
テゴリに分け、環境影響度を定義する。
・Red カテゴリ
:High Pollution Potential Unit
・Orange カテゴリ :Moderate Pollution Potential Unit
・Green カテゴリ
:Less Pollution Unit
当事業においては、以下の二項目が「Red カテゴリ」に該当すると記載されている。
【当事業の Red カテゴリ】
No.142
Recycling of Ferrous / Non-ferrous metal units covered HWM Rules
No.153
Aluminum Alloy Ingots
「3.1.2 事業継続に必要な手続きの概要」での記載事項及び上記事項より、当事業は
【投資金額 1 億ルピー以上且つ Red カテゴリに該当し、
環境影響報告は 3 ヵ月に一度、
クリアランスの有効期限は 1 年間】が適用される。これら当事業に係る環境影響カテ
ゴリをまとめると下表の通りとなる。
【当事業の環境影響カテゴリ】
クリアランス有効期間
投資金額
RED
ORANGE
GREEN
Large
1億ルピー以上
1 year
2 years
10 years
Medium
5,000万ルピー ~ 1億ルピー
2 years
2 years
10 years
Small
250万ルピー ~ 5,000万ルピー
5 years
5 years
10 years
Micro
250万ルピー以下
5 years
5 years
3か月に一度
6か月に一度
環境影響報告の実施時期
必要な時に適時実施
登記時に指定された
時期に一度
次に、
【No.3】化学薬品取扱い規則においては、有害廃棄物を取り扱う工場の年間生
産能力に基づき審査および承認する機関を下記の通り規定している。
58
有害廃棄物を取り扱う
工場の年間生産能力
審査機関
承認機関
State Level Expert Appraisal Committee
↓
2万トン以上
Central Pollution Control Board
State Pollution Control Board
↓
Central Pollution Control Board
State Level Expert Appraisal Committee
↓
2万トン以下
State Pollution Control Board
State Pollution Control Board
最後に、
【No.9】水(汚染防止及び管理)規則、および【No.10】大気(汚染防止及
び管理)規則に関して述べる。これらは州政府が所管している規則であり、先に述べ
た工程毎の環境影響カテゴリと投資額に基づき、審査機関や承認機関を以下の通り規
定している。
環境影響カテゴリ
REDカテゴリ有
投資額
5,000万ルピー以上
審査機関
Regional Office
承認機関
State Pollution Control Board
↓
Technical Advisor
↓
Environment Committee
↓
State Level Consent Committee
↓
State Pollution Control Board
5,000万ルピー以下
REDカテゴリ無
Regional Office
※全行程がOrangeもしくは
Regional Office
↓
規定なし
Technical Advisor
↓
Greenカテゴリ
Environment Committee
↓
State Level Consent Committee
↓
Regional Office
6. 事業基本計画の策定・評価
本調査においては、インド南部の二大都市である Chennai と Bangalore 地域に絞り
込み重点的に調査を実施した。市場規模、需給バランスや採算性等を考慮した上で、
事業基本計画を策定の上で検討した結果、事業展開の可能性があると判断した。以下
にその概要を示し、次項より其々について述べる。
59
【事業基本計画の骨子】
事業領域
アルミニウム二次合金地金精錬業
事業拠点
リサイクル
Tamil Nadu州Chennai
・地場アルミニウムスクラップ
対象物
原料調達
・輸入アルミニウムスクラップ
・当事業者が日系工場発生スクラップを直接調達
地場
・事業パートナーが市中発生スクラップや非日系
輸入
工場発生スクラップを収集業者から調達
・当事業者が海外より調達
現地事業パートナーとの合弁
・調達販売:当事業者及び現地パートナー
フォーメーション
工場規模
・技術設備:当事業者
・管理部門:現地パートナー
投資金額 約4億円(約2億2千万ルピー)
生産能力 月産1,250トン アルミニウム二次合金地金
日系
製品販売 外資系
・当事業者が販売
・事業パートナーが販売
地場系
・事業パートナーが販売
・土地所有権問題
・税制問題
その他課題等
・労務問題
・スクラップの集荷問題
6.1 事業拠点を構える地域
本事業では、インド南部の Chennai 及び Bangalore にて調査を実施した。立地、原
料となるアルミニウムスクラップの仕入、また二次合金地金の販売等の観点から
Chennai 地域に事業拠点を構えることを前提とし、事業基本計画の内容を検討して行
く。
【Chennai 及び Bangalore 各項目比較表】
Chennai
立地
気候
インフラ
二次合金地金
販売
地場
内陸部に立地
年間通じて暑く、湿度が高い
年中穏やかな気候
道路
幹線道路は整備されているが郊外では劣悪
幹線道路は整備されているが郊外では劣悪
電力
供給状況不安定なため停電は避けられず、
自家発電装置は必須
供給状況不安定なため停電は避けられず、
自家発電装置は必須
水
スクラップ
仕入
Bangalore
沿岸部に立地
配水状況は問題無し
配水状況は問題無し
市中発生 発生量は十分でない
発生量は十分でない
工場発生 発生量は十分でない
発生量は十分でない
輸入
港が近く輸入時のコスト低
内陸に立地するため国内運賃が高い
需要量
年間約15万トン
年間約7万トン
販売先
日系・外資系の需要家が多い
日系大手自動車メーカー系列は存在するが、
同メーカー直系商社との競合となる可能性が高い
Chennai は沿岸部に立地する。原料ソースを輸入に頼らざる得ない事から、事業拠
点を港の近くに構えることは輸送コストやリードタイムの削減となり、当事業を行う
60
上で有利に働くと考えられる。また、需要家である AC/DC メーカー等の販売先につい
ては、前述した通り、その企業数及び二次合金地金の総需要量は Chennai 域の方が多
く、Bangalore と比較して日系需要家が多い事が利点して挙げられる。
但し、Chennai に事業拠点を構えたとしても Bangalore エリアへの販売は十分可能
である。
6.2 集荷-リサイクル・処理-再生資源売却の一連の流れを考慮したビジネスモデル
現時点において、インド南部から集荷できる市中発生及び工場発生スクラップのみ
では検討している本事業の事業展開はできない。当事業のコンセプトは、地域で発生
するアルミニウムスクラップを二次合金地金に再資源化し、同地の需要家へ販売する
「地産地消」をモデルとしている。しかし、同地域で発生するスクラップだけでは満
足に必要量を満たすことができず、原料ソースとして海外からの輸入スクラップに頼
らざるを得ないため、国内完結型循環リサイクルビジネスの構築は難しいと判断する。
今後インド国内でのアルミニウム消費が進み、各種アルミニウム製品のライフサイ
クルにおいてライフエンドを迎えた廃棄物が同国内で適切に処理されるフェーズが到
来すれば、集荷のバランスが変わり、国内でのリサイクル循環が構築され、
「地産地消」
モデルが成立すると思われる。
なお、当事業において事業者は原料調達、製造含む工場経営、そして製品販売に従
事する。其々の工程における当事業者及び事業パートナーの担当範囲を含めた当事業
ビジネスモデルを下図に示す。
【当事業におけるビジネスモデル】
【 工場規模】
【フォーメーション 】
当事業者
調達/販売:日系
事業パートナー
調達/販売:外資/地場系
技術設備
管理部門
投資金額:約4億円
月産:1,250トン
二次合金地金
工場発生
日系
外資系
海外
日系
外資系
地場系
海外
【製品販売】
【原料調達】
輸入
61
市中
【原料調達】
インド国内
地場系
6.3 事業実施者のフォーメーション
本事業における独資での展開は、
「3.9 事業パートナーの要否及びその候補者の詳細」
にて述べた通り、同国におけるビジネス商習慣や労務管理等への対応が難しく、また
同国の複雑な法制度や税制に苦労することが予想される。そのため、当事業において
は我が国企業がマジョリティーを持った合弁での事業展開が理想となる。フォーメー
ションを以下に図示する。
【事業実施者のフォーメーション】
80%
20%
我が国企業
事業パートナー
・リサイクル技術
・労務 / 税務 /
・環境保全技術
法務等の管理面
・スクラップ集荷
・スクラップ集荷
・二次合金販売
・二次合金販売
6.4 技術・施設設備の導入計画、実施するリサイクルのレベル、投資額の検討
当事業においては、我が国企業が培ってきたアルミニウムリサイクル技術及びノウ
ハウを以て事業展開を実施する。我が国リサイクル技術をインドにて根付かせる為、
我が国技術を有する熟練技能者を派遣すると共に以下に一覧する設備を導入すること
で、日本基準での再生資源リサイクルを行う。
62
【導入設備一覧】
設備
10トン溶解炉
4トン揺動型溶解炉
800kgるつぼ溶解炉
環境保全設備
灰冷却装置
鋳造設備
灰搾機
内装工事
3.5トンフォークリフト
コンプレッサー
水道設備
水循環設備
個体発光分光分析装置
その他
計
数量
単価(円)
2
1
2
1
1
1
1
1
3
1
1
1
1
1
30,000,000
27,000,000
2,500,000
80,000,000
12,000,000
1,500,000
9,000,000
2,000,000
5,000,000
3,000,000
6,156,000
5,000,000
15,000,000
2,000,000
合計(円)
合計(INR)
60,000,000
27,000,000
5,000,000
80,000,000
12,000,000
1,500,000
9,000,000
2,000,000
15,000,000
3,000,000
6,156,000
5,000,000
15,000,000
2,000,000
242,656,000
32,924,527
14,816,037
2,743,711
43,899,370
6,584,905
823,113
4,938,679
1,097,484
8,231,132
1,646,226
3,378,057
2,743,711
8,231,132
1,097,484
133,155,569
合計(円)
合計(INR)
【導入施設一覧】
施設
事務所棟
溶解工場
倉庫
原料ヤード
バイクパーキング
電気室・ポンプ室
計
単価(円)
㎡
500
2,000
1,500
1,000
450
40
42,000
26,400
26,400
26,400
15,800
310,000
21,000,000
52,800,000
39,600,000
26,400,000
7,110,000
12,400,000
159,310,000
11,523,585
28,973,584
21,730,188
14,486,792
3,901,556
6,804,402
87,420,108
当事業計画におけるリサイクル事業規模及び投資額等は下記を前提とする。
-事業領域:アルミニウム二次合金地金精錬業
-生産能力:月産 1,250 トンのアルミニウム二次合金地金製造
-投資金額:約 4 億円(約 2 億 2 千万ルピー)
-主要設備:アルミニウム溶解炉、環境保全設備、灰冷却装置、灰搾機、
フォークリフト、分析装置、他
63
6.5 候補地域の市場状況、スクラップ予想取扱量、二次合金地金に対する需要、
投資額、運営コストを加味した収益性の分析
インド南部における市場状況やアルミニウムスクラップ予想取扱量、アルミニウム
二次合金地金需要量に関し下記に整理する。
・インド南部の市場状況
南部には日系、外資系及び地場系二輪・四輪車メーカーが存在しており、それに
まつわる関連部品メーカーも多数進出している。それら企業の中にはアルミニウム
を使用する企業も多く存在しており、その殆どがアルミニウム二次合金地金を使用
する AC/DC メーカーである。
・インド南部でのアルミニウムスクラップ予想取扱数量
-工場発生スクラップ:年間約 33,000 トン
-市中発生スクラップ:年間約 10,000 トン
・インド南部でのアルミニウム二次合金地金需要
-C h e n n a i :年間約 150,600 トン
-Bangalore:年間約 71,400 トン
これらを踏まえた上で、当事業では第 1 期から第 5 期までの 5 ヵ年計画にて事業基
本計画を策定している。当ビジネスモデルによるリサイクル・処理コストや収益は下
記のように推移すると想定される。
・リサイクル・処理コスト
我が国企業の持つ技術を活用し、地場発生や輸入アルミニウムスクラップを前処
理し、調合、溶解、精製、鋳造してアルミニウム二次合金地金として再資源化させ
るリサイクルコストは 5 ヵ年に渡り下記のように推移すると想定する。
【当事業によるリサイクルコスト予測推移】
第1期
INR/トン
生産量(トン)
人件費
償却費
燃料費
電力費
修繕費
消耗品費
処理費
その他
小計
INR/月
500
1,984
992,000
11,389 5,694,724
3,000 1,500,000
1,330
664,830
132
66,178
1,721
860,318
0
0
1,400
700,000
20,956 10,478,050
第2期
INR/トン
INR/月
第3期
INR/トン
750
1,389
4,870
3,000
931
106
1,721
0
980
12,996
1,041,600
3,652,536
2,250,000
698,072
79,414
1,290,477
0
735,000
9,747,099
INR/月
1,000
1,094
2,323
3,000
733
95
1,721
0
772
9,738
1,093,680
2,323,500
3,000,000
732,975
95,297
1,720,636
0
771,750
9,737,838
第4期
INR/トン
INR/月
1,250
919 1,148,364
1,192 1,490,431
3,000 3,750,000
616
769,624
91
114,356
1,721 2,150,795
0
0
648
810,338
8,187 10,233,907
第5期
INR/トン
INR/月
1,250
965
791
3,000
616
110
1,721
0
648
7,850
1,205,782
988,852
3,750,000
769,624
137,227
2,150,795
0
810,338
9,812,618
生産量が増加するにつれ、全体のリサイクルコストは上昇する。しかし、生産品
であるアルミニウム二次合金地金 1 トン当たりのコストという視点から見ると、生
産量が増加すればするほど、漸次トン当たりコストは減少する。第 5 期には上表の
64
通りトン当たりリサイクルコストは 7,850 インドルピー程度になると想定される。
・事業収益性
当事業における第 1 期から第 5 期までの 5 ヵ年計画にて事業基本計画を策定した。
当事業での事業収益は 5 ヵ年に渡り下記のように推移すると想定する。
【事業基本計画】
年度
月産(トン/月)
第1期
500
第2期
750
第3期
1,000
第4期
1,250
第5期
1,250
500
750
1,000
1,250
1,250
販売量(トン/月)
単価
金額
単価
金額
単価
金額
単価
金額
単価
金額
(INR/kg) (1,000INR) (INR/kg) (1,000INR) (INR/kg) (1,000INR) (INR/kg) (1,000INR) (INR/kg) (1,000INR)
売上高
原料費
製造費
製品原価
売上総利益
運送費
一般管理費
小計
営業利益
営業外利益
営業外費用
経常利益
法人税等
当期純利益
125.0
105.0
21.0
126.0
-1.0
4.0
5.0
9.0
-10.0
0.0
3.1
-13.1
0.0
-13.1
62,500
52,500
10,478
62,978
-478
2,000
2,500
4,500
-4,978
0
1,563
-6,541
0
-6,541
125.0
105.0
13.0
118.0
7.0
4.0
3.5
7.5
-0.5
0.0
3.1
-3.6
0.0
-3.6
93,750
78,750
9,747
88,497
5,253
3,000
2,625
5,625
-372
0
2,344
-2,716
0
-2,716
125.0
105.0
9.7
114.7
10.3
4.0
2.8
6.8
3.5
0.0
3.1
0.4
0.1
0.3
125,000
105,000
9,738
114,738
10,262
4,000
2,756
6,756
3,506
0
3,125
381
114
267
125.0
105.0
8.2
113.2
11.8
4.0
2.3
6.3
5.5
0.0
3.1
2.4
0.7
1.7
156,250
131,250
10,234
141,484
14,766
5,000
2,894
7,894
6,872
0
3,906
2,966
890
2,076
125.0
105.0
7.9
112.9
12.1
4.0
2.3
6.3
5.8
0.0
3.1
2.7
0.8
1.9
156,250
131,250
9,813
141,063
15,187
5,000
2,894
7,894
7,293
0
3,906
3,387
1,016
2,371
前述した通り、インド南部には日系、外資系及び地場系の二輪・四輪車メーカー
が進出しており、AC/DC メーカーなどの鋳造部品メーカーも多く存在する。同地域
において、これら企業のアルミニウム二次合金地金の需要は年間約 22 万 2 千トンと
想定され、現状その多くを輸入に頼っている事から当事業モデルを展開する事によ
り地域密着型の地金供給が可能となり、双方に有益をもたらすることが期待できる。
しかし、その旺盛な需要に対して同地域から回収できるアルミニウムスクラップ
は年間約 4 万 3 千トンと予測され、本事業における原料ソースの大半を輸入に頼ら
ざる得ない事から輸送コスト等が嵩み、収益性を圧迫する要因となる。
また、生産設備については現地調達が困難なものもあるため主に日本からの輸入
が前提となるが、その他工場建屋等の工事は現地調達が可能となる。運営コスト等
は我が国技術を有する熟練技能者の派遣、現地発生雇用や賃金上昇率を加味して試
算。
これらを鑑み策定した事業計画を分析した結果、当収益性より Chennai における
アルミニウムリサイクル事業展開は有効であると判断される。
65
【月間純利益の推移予測】
INR
月間純利益
円(INR = 1.82)
第1期
-6,540,550
-11,919,169
第2期
-2,715,849
-4,949,227
第3期
266,639
485,909
第4期
2,076,046
3,783,282
第5期
2,370,948
4,320,697
想定するビジネスモデルにおいては、初年度及び第 2 期迄は初期投資の影響や生
産数量が少ないことからマイナス収益が見込まれるが、第 3 期以降は順調に推移し、
計画通りの最大生産量を維持できれば順当な収益が確保できるものと考えられる。
また、インド国内で各種アルミニウム製品がライフエンドを迎え、同国内で十分
な量の市中発生スクラップの確保が可能となれば、輸送コスト等が軽減出来る事か
ら更なる収益の改善が可能となると思われる。
6.6 事業実施に当たっての技術的・制度的課題等の抽出及びリスク分析
当事業実施に伴う技術的問題は特に無いと考える。しかし、その他制度的及びスク
ラップ集荷に関する問題等は本事業ビジネスモデルを実施するに際し課題となる。こ
れらについて項目別に下記に述べる。
-土地所有権問題
工場設立に際しては工業団地の選定を行い、入居場所が決まり次第工業団地管理
会社等を介して適正に土地所有権(権利書)の移行が進められる。権利移行後は工
場建設工事が開始される運びとなる。しかし、建設途中あるいは工事完了後に、土
地登記以前から先祖が住んでいた、若しくは所有していたと主張する者が現れ金銭
や雇用を要求するケースが起きている。
-税制問題
インドでは新税制として 2016 年度中に GST(Goods & Services Tax)が施行される
予定となっている。施行までは従来の CST(Central Sales Tax)が適用されることと
なる。同国における税制は複雑であり、また頻繁に改正されるため、新税制が各州
の隅々まで行き届き正確に運用されるまでは混乱が生じ、二重課税や追徴課税のリ
スクが想定される為、税制に明るい有能な人材の採用や外部コンサルへの委託も必
要となる可能性がある。
-労務問題
インドでの労務問題として近年取り上げられているのが、労働者が待遇改善を求
めてデモやストライキ等を起こす労働争議である。これらは日系企業においても例
外ではない。加えて、ヒンドゥー社会での身分制度の影響による待遇差別等が同国
の労務管理をより難しくしている。
66
また、従業員の高い離職率も深刻な問題の一つとして挙げられる。優秀な人材ほ
ど、より高収入を求めて転職する傾向が見られる。
これらを回避するためには、人事担当者に中立な立場の者を就けて管理し、適正
な人事評価を行うと共に、個々人とのコミュニケーションを密に取る事が重要とな
る。
-スクラップの集荷問題
前述した通り、同国では地場のスクラップ発生量が絶対的に不足しているため、
当事業モデルにおいては主な原料ソースとして輸入スクラップを想定している。し
かし、政治的、外交的事情による輸入関税上昇等のリスクを孕んでおり、その際は
抜本的な事業構造の見直しを迫られる。
しかし、上記の問題は同国内で十分な量の市中スクラップが発生する段階となれ
ば自ずと解消すると思われる。
7. インド基礎情報
7.1 インド労務調査
インド国内において当事業を行う場合に適用される各労働関連法規を以下に述べる。
・1948 年工場法(The Factories Act, 1948)
1948 年工場法は、工場労働者を規制する法律を統合、及び修正する為に制定され
たものである。同法の適用範囲はインド全土に渡り、20 人以上の労働者が正規雇用
されている全ての工場が対象となる。同法の趣旨及び目的は労働者の利益擁護と搾
取からの保護であり、同法は労働者の安全並びに福利厚生及び雇用時間に関する一
定の基準を他の規定とは別に定めている。
ここでいう工場とは、動力の補助を受けて稼働する製造工程にて 10 人以上が従事
している、若しくは動力の補助を受けずに稼働する製造工程にて 20 人以上が従事し
ている施設及びその敷地と定義されている。
また、同法では工場労働者の安全衛生の観点から工場内の適切な労働環境が整備
されることを要請している。主な安全衛生規定としては、以下の項目が挙げられる。
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安全衛生規定
・工場内が清潔に保たれ、排水溝、便所等から生じる臭気が遮断されること
・製造工程から生じる排水については、無害化した上で排水されるよう適切な
措置を講じること
・健康を維持し快適な作業が可能な気温、及び、十分な換気が維持されるように
適切な措置を講じること
・製造工程から生じる有害ガスおよび粉塵の吸引を防ぐ適切な措置を講じること
・稼働中の機械に近接して業務に従事できるのは、訓練された成人男性従業員のみ
であり、作業着着用の必要があること
・危険回避のため、動力により作動する機械に適切な囲いを設置すること
・事故防止のため、自動で作動する機械に関して、適切な警告が実施されること
・リフトや昇降装置については、定期的に適切な資格及び能力を持った
検査官による検査が必要なこと
・1952 年従業員積立基金制度(The Employees’ Provident Fund Scheme, 1952)
本制度は、1952 年従業員積立基金及び雑則法(Employees' Provident Funds and
Miscellaneous Provisions Act, 1952)に基づき運用されるものであり、その他、同法
に 基 づ き 1976 年 従 業 員 預 金 付 帯 保 険 制 度 (The Employees’ Deposit-Linked
Insurance Scheme, 1976)、及び 1995 年従業員年金制度(The Employees’ Pension
Scheme, 1995)が整備され、当該三制度に基づき退職年金及び遺族年金等の各種年金
の支給が実施される。
なお、1952 年従業員積立基金及び雑則法の適用範囲は中央政府の通達等により別
途規定されている 187 業種(Non-ferrous metals and alloys in the form of ingots
industry(非鉄金属(合金含む)地金)を含む)に属する、20 名以上の従業員を有
する全ての工場及びその他の事業所である。
従業員積立基金への拠出額は雇用者、従業員共に基本給与の 10%(中央政府が別
途官報で定めた業種については 12%)に物価調整手当を合計した額であり、雇用者
が労使拠出額共に納付を実施する。なお、従業員積立基金の雇用者拠出額のうち従
業員積立基金の従業員拠出額の 8.33%相当が毎月従業員年金基金の積み立てへと回
されている。
・1972 年退職一時金支払法(The Payment of Gratuity Act, 1972)
退職金は従業員が退職又は定年となった際、当該従業員の長期にわたる貢献に対
して雇用者が謝意を表すために支払う報奨の一種であるが、1972 年退職一時金支払
法が適用される一定の拠点及び事業所の雇用者に対しては、その支払いは法的に義
務付けられている。退職一時金支払法の適用範囲は全ての工場及び過去 1 年以内に
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10 名以上の従業員がいた事業所となる。
退職一時金は 35 万ルピーを上限とし、勤続年数に 15 日間分賃金を乗じて算定さ
れ、被雇用者への支払い義務が生じてから 30 日以内に支給する必要がある。
・1948 年従業員国家保険法(The Employees' State Insurance Act, 1948)
同法の目的は労働者に対して医療給付、出産給付、障害給付等を拠出基金からま
とめて給付することであり、同法は工場(国営工場を含むが期間的な臨時なものを
含まない)
で 10 人以上の労働者を雇用し動力の補助を受ける製造工程を有するもの、
又は 20 人以上の労働者を雇用し動力の補助を受けない製造工程を有するもの、若し
くは政府が指定するその他の事業拠点に適用される。
一般的に 20 人以上の労働者が雇用される事業拠点で、ホテル、レストラン、クラ
ブ、映画館、新聞社及び販売店等は同様に同法規定の対象となる。
なお、同法に基づく具体的な給付内容は以下の通りである。
従業員国家保険法
疾病時所得補償給付
出産給付
障害給付
扶養給付
医療給付
内容
保険対象である従業員に対して、疾病期間中、指定された医師の証明を得た上で
定期的な金銭給付が行われる。
妊娠中絶、未熟児、妊娠に起因する疾病等に対して、保険対象となる女性従業員へ
定期的な金銭給付が行われる。
業務に起因して従業員が障害を負った場合、当該従業員に対して、定期的な金銭給
付が行われる。
業務に起因して従業員が死亡した場合、当該従業員の扶養者に対して、定期的な金
銭給付が行われる。
従業員及びその家族が医療機関への受診が必要となった場合、当該従業員及び家族
に対して、従業員国家保険の病院での医療サービスが、現物給付として支給され
る。
・1965 年賞与支払法(The Payment of Bonus Act, 1965)
全ての雇用者は 1979 年の任意の日から開始する会計期間及びその後の会計期間に
おいて、全ての従業員に賞与を支払う義務がある。賞与の最低金額は従業員が当該
会計期間に稼得した給料や賃金の 8.33%か 100 ルピーのいずれか高いほうであり、
雇用者が当該会計期間に賞与支払いに充てられる利益が出たか否かを問わず支払の
義務が生じる。
なお、会計期間の開始時点で従業員の勤続年数が 15 年に満たない場合は「100 ル
ピー」とされている記載されている箇所を「60 ルピー」と読み替えた上で、当該従
業員に同法律の規定が適用される。
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・1926 年労働組合法(Trade Union Act, 1926)
労働組合の規制、保護に関する法律は 1927 年 6 月 1 日に施行された 1926 年労働
組合法に含まれる。同法の対象範囲は Jammu and Kashmir 州を除くインド全土に
及ぶ。労働組合は 1926 年労働組合法に基づき、最低従業員を有する機関において労
働組合を設立する権利及び労働組合のメンバーの選出を行う権利を保障することを
目的とする。具体的には労働者を使用者の搾取から保護、労働者を代表して労働者
の不平・不満を使用者へ表明、労働法により与えられた労働者の権利の保護、労働
者に関連する会社の意思決定に介入、規律に反する行動を取った労働者に対して懲
戒を与える権利を有する。
インドにおける中央労働組合組織は以下の通りである。
中央労働組合組織
・全インド労働組合会議 ( AITUC : All India Trade Union Congress )
・Bharatiya Mazdoor Sangh( BMS )
・インド労働組合センター ( CITU : Centre of India Trade Unions )
・Hind Mazdoor Kisan Panchayat ( HMKP )
・Hind Mazdoor Sabha ( HMS )
・インド自由労働組合連合 ( IFFTU : Indiaa Federation of Free Trade Unions )
・インド国民労働組合会議 ( INTUC : Indian National Trade Unions Congress )
・インド労働組合国民戦線 ( NFITU : National Front of Indian Trade Unions )
・国民労働機関 ( NLO : National Labor Organization )
・労働組合調整センター ( TUCC : Trade Unions Co-ordination Centre )
・National Mazdoor Union ( NMU )
各企業の労働組合は、上記の中央労働組合組織の会員が属している産業及び中央
労働組織組合の方針や目的等を考慮し、所属する組織を決定することとなる。イン
ドでは、近年の急速な経済発展に伴う急激なインフレーションの一方、労働者賃金
水準が伸び悩んでいる影響で労働者の不満が溜まっており労働争議が頻発している。
例えば、2012 年に日系大手自動車メーカーで発生した労働争議では 1 名が亡くなり
100 近くが負傷した事態にまで発展した。このような事態を防ぐには、インフレーシ
ョンに対する労働者の不満や労働者とのコミュニケーションに十分に配慮する必要
がある。
7.2 インド税制調査
インド国内において当事業を行う場合に適用される各税制を以下に述べる。
・法人所得税(Corporate Income Tax : CIT)
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内国法人1は全世界所得に対して法人税が課される一方、外国法人(インド以外の
国の法令に基づいて設立された法人をいう)はインド国内において受領又は発生し
た、若しくは発生したとみなされた所得に対してのみ法人税が課される。内国法人
に適用される法人所得税率は 2015 / 2016 年度において 30%(別途、課徴金、教育目
的税2が付加される)である。内国法人は合計所得が 1 千万ルピーを超えた場合は法
人所得税額に対し 7%、合計所得が 1 億ルピーを超えた場合は法人所得税に対して
12%の課徴金を支払わなければならない。所得が 1 千万ルピー以下の場合の法定実
効税率は 30.9%で不変である。なお、内国法人に対する法人所得税率は 2016 年度以
降 4 年間に渡って 30%から 25%まで段階的に引き下げられる予定である。
外国法人でインドにて事業を行うもの(外国企業の支店及びプロジェクト事務所
が該当)には 40%(別途、課徴金、教育目的税が付加される)の法人税が課される。
2015 年度、外国法人に課される課徴金は所得が 1 千万ルピーを超える場合は 2%、
所得が 1 億ルピーを超える場合は 5%となっている。所得が 1 千万ルピー以下の場合
の法定実効税率は 41.20%で不変である。
なお、所得金額別の法定実効税率は下表のようになる。
所得金額別の法定実効税率
1億ルピー以上
内国法人
外国法人
1億ルピー以下1千万ルピー超
1千万ルピー以下
34.608%
33.068%
30.900%
(基本税率 30% + 課徴金 12% + 教育目的税 3%)
(基本税率 30% + 課徴金 7% + 教育目的税 3%)
(基本税率 30% + 教育目的税 3%)
43.260%
42.024%
41.200%
(基本税率 40% + 課徴金 5% + 教育目的税 3%)
(基本税率 40% + 課徴金 2% + 教育目的税 3%)
(基本税率 40% + 教育目的税 3%)
参考に法定実効税率の計算方法を下記に示す。内国法人で 1 億ルピー超の場合を
例とすると、
(基本税率 30%+基本税率 30%×課徴金 12%)×(1+教育目的税 3%)=34.608%
となる。
法人所得税は 1961 年所得税法(Income Tax Act, 1961)に基づく法人課税である。
連邦政府管轄の税目で、所管は財務省歳入局の傘下の中央直接税委員会(Central
Board of Direct Taxes : CBDT)となる。
・最低代替税(Minimum Alternate Tax : MAT)
1961 年所得税法(Income Tax Act, 1961)の通常の規定に基づいて計算された課税
額が、会計上の利益(生命保険から生じた所得以外で所定の調整計算後)の 18.5%
1 外資系企業であっても、インド会社法に基づいて設立された場合は、内国法人として取り扱われる。
2 教育目的税は、多くの直接税、間接税に賦課される税金であり、教育への支出を目的とする税目である。税率の内訳
は、教育目的税(基礎教育課程向け)2%+二次高等教育目的税(二次および高等教育向け)1%の合計 3%である。
71
(課徴金、教育目的税を除く)を上回らない場合、法人は当該利益について最低代
替税を支払わなければならない。支払った最低代替税と計算上の法人税の差額はタ
ックスクレジットとして以降最長 10 年間に渡り繰越しが可能となる。1961 年所得
税法の通常の規定に基づいて計算した法人所得税額が最低代替税額を上回る場合は、
その差額の範囲内で繰越額を控除することができる。
なお、証券売買から生じたキャピタルゲイン、利息、ロイヤルティー及び技術サー
ビス料で外国法人に帰属する発生所得は当該所得に対する法人所得税が 18.5%(課徴
金、教育目的税等を除く)を下回る場合、最低代替税の課税対象からは除外される。
内国法人、外国法人其々についての最低代替税の法定実効税率は下表のようになる。
なお、計算方法は法人所得税の法定実効税率計算方法と同じである。
会計上の利益金額(所定の調整計算後) 別の法定実効税率
1億ルピー以上
内国法人
外国法人
1億ルピー以下1千万ルピー超
20.96050%
20.00775%
1千万ルピー以下
19.05500%
(基本税率 18.5% + 課徴金 10% + 教育目的税 3%) (基本税率 18.5% + 課徴金 5% + 教育目的税 3%) (基本税率 18.5% + 教育目的税 3%)
20.00775%
19.43610%
19.05500%
(基本税率 18.5% + 課徴金 5% + 教育目的税 3%) (基本税率 18.5% + 課徴金 2% + 教育目的税 3%) (基本税率 18.5% + 教育目的税 3%)
・個人所得税
個人所得税は個人の所得に課せられる直接税である。暦年単位で納税額を計算し
て税務申告を行い納税額を支払う必要がある。個人、ヒンドゥー非分割家族、会社、
組合、団体、地方当局、及びその他法人を含む全ての者の課税所得に対し所得税が
課される。税の徴収は各個人個別に実施される。徴収は 1961 年所得税法により規律
される。1961 年所得税法は財務省歳入局の傘下にある CBDT の所管となっている。
個人所得税は法人所得税と同様、所得税(Income Tax)として連邦政府管轄の税目であ
る。
所得レンジ
(個人居住者(60歳未満)
もしくは
NRI/HUF/AOP/BOI/AJP)
所得レンジ
(Resident senior citizen
(60歳以上))
250,000INR以下
300,000INR以下
250,001-500,000INR
300,001-500,000INR
500,001-1,000,000INR
500,001-1,000,000INR
1,000,000INR超
1,000,000INR超
所得レンジ
(Super senior citizen
(80歳以上))
500,000INR以下
所得レンジ
(会社及び
協同組合を除く者)
所得税率
200,000INR以下
無し
200,001-500,000INR
10%
500,001-1,000,000INR
500,001-1,000,000INR
20%
1,000,000INR超
1,000,000INR超
30%
-
NRI : Non-resident Indian and person of Indian origin
BOI : Body of Individuals
HUF : Hindu Undivided Family
AJP : Artificial juridical person
AOP : Association of Persons
・源泉徴収税
源泉徴収とは事業所得及び個人所得から税金を控除、若しくは源泉徴収すること
72
により、適切な税金の納付が行われることを担保するための政府による税金徴収方
法である。インド顧客に提供されるサービスの中で源泉徴収税の対象となるものが
存在するため、拠点を持っていないもののインドで事業活動を行っている外国法人
にとっても留意すべき内容である。また、源泉徴収税は多国籍企業の外国子会社に
も会社間取引において影響を与える。
非居住インド人及び外国法人に対する源泉徴収税に関し、非居住者に対して対価
が支払われた際の源泉徴収税率は、国会にて定期的に改正される財政法によって決
定される。なお、現行の税率(2015 年 11 月末現在)は以下の通りである。
源泉徴収税
税率
■ 利子
20%
■ 配当
10%
■ ロイヤルティー
25%
■ 技術サービス料
25%
■ その他サービス(個人)
30%
■ その他サービス(法人)
40%
・配当分配税(Dividend Distribution Tax : DDT)
配当分配税は投資家に支払われた配当に基づきインド政府により支払側会社に課
される税金である。2007 年インド予算によれば、現在配当分配税は 15%となってい
る。現行の規定に基づけば、配当収入は受取側では非課税である。一方、配当の 15%
が配当分配税(1961 年所得税法に基づく)として支払側の利益から徴収される。配
当分配税については課徴金 12%及び教育目的税 3%が附加される。
・物品税(Excise duty)
中央物品税はインド国内で製造され国内消費が前提の物品に対して課される間接
税である。課税要件は製造であり、物品税の納税義務は物品の製造時点において発
生する。
「excisable goods」という用語は 1985 年中央物品税率法(The Central Excise
Tariff Act, 1985)の別紙 1 及び別紙 2 にて物品税の課税対象として明示されている物
品であり、それに「塩」を加えたものである。物品税は国内課税であるが、関税は
越境税である。中央物品税は間接税とされることから、政府に納税を行った製造者
又は販売者が価格に転嫁することで税金を取り戻そうとすることが意図されている。
物品税は基本的に売上税や付加価値税(VAT)等の他の間接税に加えて賦課される。一
般的な用語(必ずしも法的ではないが)で説明すると、以下の三つの点で物品税は
売上税や付加価値税から区別される。
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物品税と売上税 / 付加価値税の区別
■ 物品税は基本的により狭い範囲の製品に賦課される
■ 物品税は基本的に税負担が重く、対象となる製品の小売価格の重要な部分を占める
■ 物品税は基本的に従量税であり、製品の量ないし単位に比例する一方、
売上税/付加価値税は従価税であり、製品の価格に比例する
典型的な物品税の例はガソリン、その他燃料に係る税金及び煙草、アルコールに
係る税金である。インドでは下記条件を満たす限り全ての製品が物品税の課税対象
となる。
物品税の課税対象条件
■ 製造活動があること
■ 製造はインド国内で行われたこと(特別経済特区を除く)
■ 製造活動の結果、物品が製造されること
■ 製造された物品が「excisable」(中央物品税率表で指定された物品)であること
物品税率は HS Code に対応して決定されており、中央物品税率表によればアルミ
ニウム二次合金地金の製造に係る税率(HS Code で 7601 及び 7062 の 4 桁から始
まるもの)は 12.5%である。
・付加価値税及び中央販売税
インドにおける付加価値課税制度は 2005 年 4 月 1 日より間接税の付加価値税
(VAT)としてインド租税体系に導入された。従前の一般売上税法は 2005 年付加価値
税法(The Value Added Tax Act, 2005)及び関連規則に置き換わった。Haryana 州は
2003 年 4 月 1 日に付加価値税を導入しインドで初めて付加価値税を導入した州とな
った。Gujarat 州、Rajasthan 州、Madhya Pradesh 州、Chhattisgarh 州、Jharkhand
州、Uttarakhand 州及び Uttar Pradesh 州は付加価値税導入初期では付加価値課税
制度から距離を置く姿勢だったが、
後に導入を開始している。
2014 年 6 月 2 日にて、
付加価値税は Andaman and Nicobar 諸島、Lakshadweep 諸島を除くインドの全州
及び連邦直轄領にて導入されている。
アルミニウムスクラップ及びアルミニウム二次合金地金に係る州 VAT の税率であ
るが、Chennai を擁する Tamil Nadu 州では 5%であり、一方の Bangalore が所在
する Karnataka 州では 5.5%である。
また、州を越えた販売については中央販売税(Central Sales Tax)が課税される。税
率は販売者と購入者が適切に登録を行っており、所定の申告を行うこと等法令遵守
されることを前提に 2%となっているが、それ以外の場合は販売者の州で適用される
州 VAT に準じることとなる。
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・移転価格税制
移転価格は事業内部の支配(関連)法人間での商品の販売及び役務の提供に係る
価格の設定を言う。例えば、子会社が親会社に商品を販売した場合、親会社が子会
社に支払った仕入価格が移転価格となる。ある一法人の支配下にある法的事業体は、
支店及び完全、若しくは過半数を最終的に当該親会社によって支配されている会社
を含む。法制度によっては、其々の取締役会に共通の家族構成員がいる場合、当該
事業体は同一支配下にあると判断する場合もある。移転価格は多国籍企業の税引き
前純利益(純損失)を、事業を行っている国々に割り当てる方法としても利用され
得る。移転価格は事業内部の部門間の値段設定に他ならない。
原則として、移転価格は売手が独立第三者の顧客に売却した際の売却価格、若し
くは買手が独立第三者の仕入業者から購入した際の購入価格のいずれかに整合する
必要がある。未実現移転価格は直接的には全体の事業に影響を与えるわけではない
が、高税率国の事業部門の利益を減らし、無税・低税率国の事業部門の利益を増や
すために移転価格が利用された場合は政府税務当局にとって懸念事項となる。
移転価格は、税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting : BEPS)とし
ても言及される法人課税の租税回避の主な手段である。
・GST (Goods & Services Tax)
GST は現行の様々な間接税を一つの法体系に統一させた総合的な間接税であり、
日本の消費税に対応するものである。GST については前回の予算案にて 2016 年 4
月 1 日から導入することとされ、現在その準備が進められている。しかし、予定通
り導入されるか否かについては現時点では不明な状況である。
以上
75
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