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山羊の下垂体前葉の細胞学的研究 (第 5 報): 卵巣嚢種の
Kobe University Repository : Kernel Title 山羊の下垂体前葉の細胞学的研究 (第5報) : 卵巣嚢種の 山羊に於ける下垂体前葉細胞の変化(Cytological Studies on the Anterior Pituitary in the Goat (V) : Changes of the anterior pituitary cells in the goat with ovarian cyst) Author(s) 石橋, 武彦 / 中原, 達雄 Citation 兵庫農科大學研究報告. 畜産学編,4(1):25-26 Issue date 1959 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher DOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006330 Create Date: 2017-03-31 山羊の下垂体前葉の細胞学的研究 第 5報 卵巣嚢腫の山羊に於ける下垂体前葉 細胞の変化 石橋武彦・中原達雄 Cytological Studies on the Anterior P i t u i t a r yi n the Goat V .Changesoftheanteriorpituitaryc e l l si nthegoat withovariancyst T a k e h i k oI S H I B A s H IandT a t s u oNAKAHARA 層の発達もよかった.また著しく大きな黄体の存在する 緒 論 個体はみられなかった. 2 ) 下垂体前葉 下重体前葉にみられる各種の細胞型の生理作用を決定 するには関連器官が何らかの病的原因で機能允進或は減 非発情期の成烹山羊の下垂体前葉では酸好性細胞の占 退を生じた場合の下垂体前葉に於ける細胞学的変化を観 .5%である.これに反し める割合が多く,全細胞数の 41 察することも一つの有力な手掛りとなる.著者等は山羊 て塩基好性細胞は極めて僅かで腺体底部及び中央部に酸 を実験材料として第 1報1) から第 4報2)3)4)までに性や年 好性細胞に混じて存在する.塩基好性細胞の大きさは一 齢,妊娠.~乳等の生理的状態を異にしたもの,去勢, . p 巣護腫をもった 般に小型でその相対値は 3.1%である.g 甲状腺除去等の実験処置を施したもの,更にはメチルサ ものの下垂体前葉も対照のものと同様酸好性細胞が極め イオユラシ{ル等の薬剤を投与した場合の下垂体前葉の て多数存在する.細胞数の相対値は 42.0%でその中 α一 細胞学的変化について報告した.今回は肝巣に襲腫をも 細胞が23.0%. e-細胞が 19.0%である.細胞の形は αー った山羊の下垂体前葉の細胞学的変化について記載す 細胞は円形及び精円形のものが多く,か細胞は多角形の ものが多い. 核はいずれの細胞も大きく, る. 額粒に富む 細胞が多数である.酸好性細胞の割合が多いために対照 実験材料及び方法 n at u b e r a l i sは不明瞭である.塩基好 のものと同様Zo 材料はー側の卵巣に裏腹をもった経産の山羊である. 性細胞は数に於いてはそれ程多くなく,全体の 3.8%に 頚動脈切断によって放血屠殺し,直ちに解体して下垂体 箇の細胞が一団となりて酸好性細胞の 過ぎないが 10-15 及び!ir-巣を取出し,組織標本を作成した.下丞体は昇采 聞に存在する.細胞の大きさは一般に大きいものが多 OLDBERGandCHAホルマリン液で固定し,主として G し惰円形及び卯円形を呈している.核は胞体の割に小 I K O F F の変法で染色した. 卵巣は B o u i n 液で固定後 H a e m a t o x y l i n e o s i n或は H e i d e n h a i nのIr o nh a e m a - さく,円形で明るい.塩基好性の分主巨額粒は胞体全域に 存在するが強拡大でみると分主巨額粒の一部が溶けて小さ t o x y l i nで染色した.筒同年齢の非発情期の成烹雌山羊 な液胞や空胞を形成しているものが多い.更に若干のも を対照として用いた. a c u o l e が形成されて核や分泌顎 のでは極めて大きな V 粒がー側に押しやられている細胞も認められる. β一細 観 察 i 1 in eb l u eに非常に濃く染まる細胞は 胞とみられる An 1 ) 卵巣の状態 比較的小型で腺体底部にみられる. 採取した材料ではいずれも左側の卵巣にー箇の極めて 考 察 y s tを有するものでゐる. c y s t の大きさは I 直 大きな c 径2 0 0粍以上もあった.肥大した C y s tの壁は薄<.穎 卵巣護腫を有する動物では恩牡狂を呈するものと無発 粒層は殆んど欠除していた.内爽膜の厚さは平均 7 . 2 μ 情を示すものとの相反する症状をあらわすものがあると c y s tを形成した以外の P胞は正常のものと 云われる刷)7).いずれも下丞体前葉に於ける性腺刺激ホ 大差な<.大小様々な炉胞がみられ,その P胞では頼粒 ルモンの分泌異常,即ち FSH の過剰か或は LH の 不 であった 2 5 兵町民科大学研究報告 8)や山内 7 足によるものと考えられる. VENZKE ) によれ 第 4巻句i1号 文 献 ば牛の思牡狂では卵胞の穎粒層の発達がよく,卵胞ホル 1 )石橋武彦・中原達雄:兵庫農科大学研究報告, 2( 畜 モンの含量も多くなるが,無発情のものでは頼粒屑が欠 4,1 9 5 6 . 産学篇):6 除し,卵胞ホルモンの含量が少ないと云われる. KRUP- 2 )石橋武彦・中原達雄:兵庫良科大学研究報告, 2( 市 1 0) ,山内 11) 等は卵巣に蓑腫をもった牛 SK19),DELANGE 産学篇):6 7 . 1 9 5 6 . 3 )石橋式彦・中原達雄:兵庫良科大学研究報告, 2( 市 の下垂体は去勢した場合の様に著しく肥大することを報 告し,特に DELANGE は酸好性細胞の増数肥大を, 山 9,1 9 5 6 . 産学篇):6 内は思駈狂の牛に於いて塩基好性細胞の他の細胞に対す 4 )石橋武彦・中原達雄:兵庫農科大学研究報告, 2( 畜 る相対値が約 2倍に増加することを記載している.吾々 産学篇):7 3,1 9 5 6 . の観察した山羊の下垂体前葉では塩基好性細胞の増加は‘ 著明でなかったが胞体内に空胞をもった大型の細胞が若 : :Thephysiology of reproduction 5 ) HAMMOND,J i nt h ecow,1 9 2 7 . 干存在した.山羊に於いては比較的長期間去勢したもの 6 ) SCHUMANN.P . : BEKAMPFUNGder S t e r i l i t a t der i g n e t r i n gc e l l は出来難いことから塩基好 でも仲々 S R inder,Archd .DeutschenLand.7 )より引用. 性細胞に於ける空胞の出現はホルモンの分泌機能に変化 7,1 9 5 4 . 7)山内亮・乾純夫:日本獣医学雑誌, 16:2 が生じたものと解しても差支えないと思う.下垂体前葉 8 ) VENZKE.W.G.:].A mer. V e t .Med.Ass. ,1 1 5: の観察結果が研究者により多少異るのは患畜の種類や年 3 4 7,1 9 4 9 . 齢,更には同じ動物の卵巣蓑腫にも思牡狂と無発情など 9 ) KRUPSKI.A . : Schweiz.Arch.f .T i e r h e i l k .,63: 相反した症状を有するものがあるためであろうと考えら 365,1 9 21 : れる. 1 0 ) DELANGE,M.: O n d e r s t e p o o tよ V e t .S c i .& Ani m .I n d u f . .24:1 2 5,1 9 5 0 . 総 括 1 1 ) 山内亮・芦田浄美・乾純夫:日本獣医学雑誌, 16: 6 5, 1 9 5 4 . J }D 巣裏腹の山羊に於ける下垂体前菜細胞の変化を主と して GOLDBERGandCIIAIKOFF氏の変法ーをもって観察 R白 um岳 し,大体次の様な結果を得た. Thec y t o l o g i c a lchangeso ft h ea n t e r i o rp i t u i t - 1 ) 卵巣蓑腫の山羊に於いても酸好性細胞は非発情期 のものと同様極めて多数存在し, aryc e l l si ntheg o a twithovaraincystwereo b s e r - その割合は 42.0%, vedbyGoldberg& Chaikof f ' smethod. そのうち αー細胞は約 23.0%,εー細胞は約 19.0% であ As c o n t r o li n anoestrus, many a c i d o p h i l e s were った. found i nt h ea n t e r i o r -p i t u i t a r yo ft h egoathaving 2 ) 塩基好性細胞は 3.8%で数に於いては余り多くな .s o p h i l e swereafewbutl a r g e . c y s t i co v a r i e s .Theb3 いが所々に空胞をもった細胞が見受けられた. Larg 巴 v acuoleswereobservedi ntheh y p e r t r o p h i e d (家蔭解訊学講座,昭 3 4 . 8 . 3 1受理〕 b a s o p h i l e s . 2 6