...

マニラ湾でリゾート気分を味わう

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

マニラ湾でリゾート気分を味わう
■ マニラ湾でリゾート気分を味わう ■ ■ ■
何年か前、職場の同僚10人
ほどで、マニラ市ロハス大通
りの遊歩道「ベイウォーク」
に遊びに行ったことがある。
色とりどりの街灯の下を、み
んなでそぞろ歩き、大きなス
クリーンを見ながら食事をし
たり、撮影に来ていたタレン
トと一緒に写真を撮ったりと
海風に当たりながら楽しく過
ごした。マニラ市民のお金の
かからない憩いの場であり観
光スポットにもなっていたベ
イウォークではあったが、そ
の後新しく就任したマニラ市
長の方針で飲食店が廃止され
てしまった。マニラ湾に汚水
をたれ流す問題や、近隣のコ
ンドミニアムやホテルから騒
音苦情が出たことが理由だっ
た。惜しむ声も多かったよう
だ。しかし時を同じくして、
今度はパサイ市の埋め立て地
に建設された巨大モール、
「SMモール・オブ・アジア」(通
称MOA)にある海沿いの遊歩
道に飲食街が誕生した。マニ
ラ湾沿いの新しいベイウォー
クスポットとして人気だと聞
き、再びフィリピン人同僚3
人で仕事帰りに出かけてみ
た。
MOAの正面入り口からマ
ニラ湾に向かってまっすぐ進
み、渡り廊下で道路を横断す
る。そこには背の低い椰子の
木が整然と植えられた広場が
堤防越しにマニラ湾の夕日を
見ることができたはずだが、
すでに日は沈み、夕焼けの名
残りを映した雲だけが海の上
に浮かんでいた。
南エリアには遊歩道に面し
てレストランがびっしりと並
び、その突き当たりにはエア
コン付のトイレがある。遊歩
道には平屋の建物が3棟あり、
各棟に6軒ずつ合計18軒のレ
ストランが入っている。どの
レストランにしようかと迷っ
ていると商売っ気旺盛の「呼
び込み」に取り囲
まれた。その日は
水曜日だったので
客が少ないらし
く、みんな一生懸
命だ。私たちは南
の外れまで歩いて
しつこい呼び込み
から一旦避難した
つもりだったが、
ゲイの呼び込みが
一人ついてきてい
た。
その名前はアビ
ーさん(35)。アビ
ーさんは4回日本
に行ったことがあ
り、埼玉県大宮市
や、東京都北区赤
羽あたりで働いた
という。最後の出
稼ぎのとき、恋人と逃げて不
お腹のすいていた私たち
は、迷わず南エリア方向に向 法滞在をした経験談を話して
かった。延々と続く堤防には くれた。話をしているうちに
たくさんの人が思い思いの格 親しい気持ちになり「あなた
好で座り、暮れかけたマニラ の店に行くよ」と言ったら
湾をながめながら弁当を広げ 「ホントー!」と喜んでくれた。
たりおしゃべりを楽しんでい アビーさんに連れて行かれた
る。堤防の高さは胸くらいま レストランは「Gスクアレド
であり、腰掛けるにはちょっ プルトゥアン」というフィリ
とした腕力と脚力が必要だ。 ピン料理店。3棟のうち南端
の棟の中ほどにある。店の手
堤防の上は平らで幅1mほど
ある。寝そべったり、立ち上 前はオープンスペースの客席
がったりすることは禁止され があり、奥はエアコン席にな
ているらしく、その都度ガー っている。オープン席の方が
広い。店からは海は見えない
ドマンから注意が飛んでく
る。それにしてもここはガー が、磯の香りや海のざわめき
ドマンが多い。堤防から海岸 を聞きながら座ればリゾート
を覗くと波よけのテトラポッ 気分が味わえるのだろう、他
のレストランもほとんど同じ
トがわりの直径1メートル近
くのごろごろした石が海に向 造りになっている。かなり歩
かって並んでいる。もちろん いて汗ばんでいた私たちはエ
アコン席に座った。アビーさ
石の上に降り立つことは厳
禁。もう少し時間が早ければ、 んはすぐにまた、呼び込みの
ある。中央には噴水があり、
大手コーヒーショップやレス
トランが見える。広場のつき
あたりに堤防があり、その向
こうがマニラ湾だ。堤防に沿
って南北に約1km、遊歩道が
まっすぐに伸びている。そこ
が人気のベイウォークスポッ
ト「サンミゲル・バイ・ザ・ベイ」
(SMBTB)だ。海に向かって
左側南エリアはシーフードレ
ストラン街、右側北エリアは
レストラン・バー街になって
いる。
仕事に戻っていった。
レストランで私たちを接客
してくれたのは、ウェイトレ
スのノナさん(26)。ノナさん
は各地のチェーン店も含めこ
の店で8年間働いているそう
だ。現在のSMBTB店には開
店した2008年12月に転属さ
れた。そのノナさんがレスト
ランのシステムや料理をてい
ねいに説明してくれた。店の
メニューは普通のフィリピン
料理だが、なぜか安い。だが
喜ぶのは早かった。メニュー
にある値段は、調理の代金と
サービス料だけ。具材の魚介
類は別料金らしい。各棟には
1店舗ずつ小さなウェット・マ
ーケット(シーフードのマーケ
ット)があって、ここで客が魚
やカニを買い求め、レストラ
ンに持ち込んで調理してもら
うシステムだった。こういう
マーケットをフィリピンでは
「ダンパ」と呼んでいるらしい
が、ほとんどの客は具材選び
を店に任せるとノナさんは話
す。
さっそく私たちも店の隣に
あるマーケットをのぞいてみ
た。ロブスター、カニ、エビ、
量だったので特別高い料金で
はない。
「チョプスイ」のよ
うな野菜料理は材料費込みの
値段が表示されていた。料理
の味は酸っぱさも程良く、な
かなかにおいしい。ノナさん
ウェット・マーケットのロブスター
は「各レストランともメニュ
ーはほとんど同じだけど、コ
ックの腕で味が違う。うちは
おいしいでしょ」と得意そ
うに言っていた。勘定伝票
に「20%割引」とあったの
で理由を尋ねると、店が遊
歩道の中心からかなり遠い
位置にあるので客が少ない
ときは遠い分値引くそうだ。
なんと良心的。わざわざ離
れた店を選んだつもりもな
いが、なんとなく得した気
分になった。
ノナさんによると、最も
混雑するのは金曜日の夜だ
そうだ。そういえばMOAで
ラプラプ、肉などが砕いた氷
の上に並べられている。売ら
れている魚やカニは首都圏北
部のマラボン市の卸売市場で
買ったものを小売りしている
とのこと。だから鮮度につい
ては、近くで水揚げされた活
きのいい魚とまではいかない
が、マーケットは全体に清潔
感がある。
人気のパントマイム
私たちが注文したのはタマ
リンドで酸っぱい味を出した
スープ「シニガン ナ ヒポン」
。
ノナさんはスープの中身のエ
ビをそのマーケットで買って
きた。1/2kgで200ペソ、外
にある市場よりちょっと高め
か。メニューの値段表示が
150ペソだったので合わせて
350ペソということになる。
4人でじゅうぶん食べられる 夜になると数カ所で小コンサートが始まる
は毎週金曜日に花火が打ち上 た。私たちのブラブラ散歩は、
げられる。各レストランとも 今日のところこれでおしま
この日は夜12時まで営業時間 い。次回は少し早めに、夕日
を見ることができる時間帯に
を延長する。
満腹した私たちは、また長 北側のレストラン・バー街に入
い遊歩道をブラブラ歩いて戻 ってみようか。
った。ジョギングやウォーキ 小川二美子(会社員)
ングをしている人たち
が次々と追い越してい
く。遊歩道を往復する
無料のシャトルカーが
警笛を鳴らしながら、
人をかき分けるように
のろのろと進んでいく。
あちこちで、バンドが
演奏している。パント
マイムの大道芸人もい
ベイウォークを走る無料シャトルカー
Fly UP