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英国のEU 離脱: 税務に関するQ&A

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英国のEU 離脱: 税務に関するQ&A
International Tax Services Newsalert
英国の EU 離脱: 税務に関するQ&A
July 2016
In brief
国民投票の結果、英国のEU離脱が決定して以来、あらゆる面で今後の状況が不透明になっています。
本ニュースレターでは、法人税、間接税の分野における現状分析と今後の方向性について、Q&Aの形式で
まとめています。
In detail
背景
Q. EU離脱は実際にどのように行われるのですか?
A. 二年間の離脱手続きの開始には TEU(欧州連合条約)第 50 条の発動が必要です。英国がこれをいつ行
うかは不明確であり、従って、英国が正式に EU を離脱するのは暫く先のことになる可能性があります。
キャメロン首相が英国の離脱プロセスの舵取りは次期首相の仕事であると明言していることから、発動の時期
は、早くても、保守党党首と首相の指名が完了する 10 月になると思われます。
英国は離脱プロセス開始の発動前に、離脱条件の交渉に入ろうとする可能性もあります。その場合、当然、
実際の離脱はさらに遅れることになります。しかし、残りの加盟国がそれに同意するか、あるいは、英国が実際
に TEU の下での離脱を発動しない限り交渉を拒否するのか、については現時点では明確にはなっておりま
せん。
Q. EU指令は今後どのように適用されるのですか?
A. 国内法として既に施行されている指令は、それらが無効化されるまで引き続き適用されます(合併指令、
親子会社指令、利子・ロイヤリティー指令など)。しかし、意図通りに機能することを確実にするためには、当該
国内法の修正が必要となる場合もあります(下記の EU 法に影響される英国法のセクションを参照)。
国内法化の期限が、英国が正式に EU を離脱する日付の後に設定されているものについては、国内法として
の立法化の義務はなくなります。租税回避防止指令(ATAD)のポジションに関しては、明らかに離脱のタイミ
ングに左右されることになります。しかし、英国は既に主な BEPS 行動計画を実行する段階にあるため、
ATAD の国内法化の義務がなくなっても結果的に大きな影響はないと思われます。
www.pwc.com/jp/tax
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Q. EU 法と関連している英国法は今後どのように変更されるのでしょうか?
A. 欧州共同体法は無効となり、英国における TEU 及び TFEU(欧州連合の機能に関する条約)の直接の適
用も廃止されると考えられます。
その他の法律がどのように変わるかはまだ不明です。無効となる分野もあれば、表現を変えることが必要とな
るものもあると考えられます。
英国の法廷が英国法を適用する際に欧州連合司法裁判所(CJEU)の判例に拘束されることはなくなります。
現在 EU 法に基づいて進行中のクレームがどう扱われるかは興味深いところです。今のところ、英国の離脱
後もこれらのクレームは有効と見られています。しかし、その多大な数を考えると、その一部を無効とするため
に、法律が続発的に導入されるリスクはあるかもしれません(しかし、これは政治的にセンシティブな分野であ
り、数量化は困難です)。
どのような法改定が行われるのかは、ある程度、政治主導で決まることになり、税収増と競争力維持の間の綱
渡りとなりそうです。
BEPS
Q. BEPS 行動計画は今後も採用されるのでしょうか?
A. 背後の原動力となっているのは EU ではなく、OECD であるため、今後も適用が進められていくと思われま
すが、税務政策の今後の行方によっては、行動計画の中には採用のペースが遅れるものが出てくるかもしれ
ません。しかし、ハイブリッドミスマッチ、利子の損金算入に関する規定など、既に発表された改正については
今後も継続されます。
EU 離脱の結果、恒久的施設(PE)ルールや、行動計画6(租税条約濫用)についての勧告に変更が加わる
事は想定されておりません。
日系企業が考慮すべき税務上の検討事項
Q. 源泉税(WHT)は今後どのように適用されますか?
A. 英国の租税条約が引き続き適用されます。英国は EU 親子会社指令の対象外となるため、条約相手国が、
将来の配当の支払いに対して WHT を適用する可能性があります。以下はその例です(但し、この限りではあ
りません)。
条約相手国
源泉税率 (%)
ドイツ
5/10/15
イタリア
5/15
フランス
0/5/15
スペイン
10
ポルトガル
10/15
オランダ
0/5/15
アイルランド
0/5/15
ベルギー
10
スウェーデン
0/5/15
ポーランド
0/10
PwC
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EU 加盟国は第三国(つまり英国)との間でも「資本の自由移動」のルールに拘束されます。このため、当該加
盟国が WHT を課せられるか否かについては、当該加盟国の法人が配当の受領の際に課せられる税金との
比較が必要になるかもしれません。
出国税
出国税をめぐる法制の中で EU に関するものについては、税収増とともに、離脱によって「統治を取り戻す」こ
とを示す機会となることから、これが改正される可能性があります。
資産の海外移転に関する税制も同様の理由から改定される可能性があります。
関税と VAT
最も大きな影響を受けるのは概して関税であると思われます。
交渉が無い場合、関税についての英国の基本的立場は、他の EU 非加盟国と全く同様の関税の対象となる
というものです。しかし、関税の形態については以下のようなオプションが考えられます。




「スイス型」 - 個々のケース毎に二国間協定によって関税を合意する形態
「トルコ型」-トルコは EU と関税同盟を結んでおり、EU への輸出には関税がかかりません。
「ノルウェー型」-英国が EEA の加盟国として単一市場へのアクセスを維持する(但し、EU の規定に対
しては議決権を持たない)
第三国ルール-WTO 加盟国間で合意される関税率((0~30%)
事業活動の場として依然として魅力的な英国
Q. 「ハブとしての英国」にとって何を意味するのでしょうか?
A. 英国の法人税環境は依然として非常に優位性が高く(さらに今後法人税が 17%へと低下し、まもなく
「BEPS に準拠した」課税制度に移行する予定です。)
「基本的な人の移動の自由」へのインパクトによって将来的に外国人の英国への入国が難しくなる可能性は
あるものの、英国は依然としてビジネスにとって重要な人材を送り込むには魅力的なロケーションです。但し、
現在の「人の移動の自由」が直ちに変化することはありません。
上記は、英国における事業コスト上昇の可能性(例えば所得税率の上昇など)に照らした検討が必要となる可
能性もあります。
PwC
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