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海外から見た日本、相対的な安定感への見直しも
リサーチ TODAY 2016 年 10 月 20 日 海外から見た日本、相対的な安定感への見直しも 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 アベノミクスが始まった2012年後半から定期的に海外投資家を訪問し意見交換を続けてきたが、最近で は「アベノミクスは死んだ」と言う辛口のコメントが多く聞かれる。先般、英国・米国を訪問した時にもこうした コメントが散見された。下記の図表は、日本株に対する投資主体別売買動向の推移である。2012年以降 2015年前半までは、海外投資家の大幅な買い越しが「アベノミクス・トレード」として、円安・株高というアベノ ミクス好循環を支えた。しかし、2015年後半以降、海外投資家は大幅な売り越しに転じている。筆者の実感 としても、最近アベノミクスが話題になることは大幅に低下した。2016年入り後は、今日に至っても円高が続 くなか、従来のような「アベノミクス・トレード」で海外投資家が買い戻す兆しは今回の欧米出張でも感じられ なかった。ただし、ここにきて売りは一巡しているものの、一段と日本株ウェイトを引き下げるまでには至って おらず、ニュートラルに戻したままのように見えた。2013年以降のアベノミクスへの高揚感が一巡し、海外投 資家の間ではそのポジションを大きく削減するまでに至ったが、改めて世界のなかで相対的に比較した場 合、日本に対する一定の評価も生じていると考えられる。期待水準は低いが安定しているというのが日本の 特徴だ。欧米ではこれまで日本への期待水準の目線が高いままにあったため、日本への評価が低かった が、欧米の視線が次第に低下して現実に対峙するなか日本への見直しも生じうる。こうした評価軸を今回 は主に政治の観点から振り返る。 ■図表:日本株の投資主体別売買動向推移 (千億円) 買 い 越 し 国内金融機関(信託+銀行+生損保) 事業法人 投資信託 個人 外国人 30 20 10 0 売 り 越 し ▲10 ▲20 ▲30 ▲40 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 (年/月) (注)二市場一・二部等 (資料)東京証券取引所より、みずほ総合研究所作成 1 リサーチTODAY 2016 年 10 月 20 日 先述の海外投資家のアベノミクスに対する見方は、概ね「当初の期待に沿わないが、前に比べればいい」 といったものだ。日本株の今日の評価は、バリュエーション上世界のなかで割高ではなく、米国と比べても 割安なレベルになっている。投資の世界ではリスク調整後のリターンを示す指標にシャープレシオ(リター ン/リスク)という概念があるが、日本の場合、収益期待は低いがリスクも低いので、グローバルにみた相対 的地位の向上が生じた可能性がある。大きな期待はできないが売りにくい相場付きというのが、今日の日 本への評価だろう。 ここで政治の安定にも注目する必要がある。下記の図表は戦後歴代首相の在任期間であるが、現在安 倍首相は歴代5位の長期政権となった。2006年から2012年まで毎年首相が変わるというG7のなかで最も 政治が不安定な国であった頃からは大きな転換だ。 ■図表:戦後歴代首相の在任期間 (上位10人、敬称略) 1964.11.9~1972.7.7 (1次~3次) 1 佐藤栄作 2798 1946.5.22~1947.5.24、1948.10.15~1954.12.10 (1次~5次) 2 吉田茂 2616 2001.4.26~2006.9.26(1次~3次) 3 小泉純一郎 1980 1982.11.27~1987.11.6(1次~3次) 4 中曽根康弘 1806 2006.9.26~2007.9.26 2012.12.26~ (1次~) 5 安倍晋三 1960.7.19~1964.11.9(1次~3次) 6 池田勇人 1761 1761 2471 1575 2016年10月20日時点 1957.2.25~1960.7.19(1次~2次) 7 岸信介 2015年9月の自民党総裁選で 再選。任期3年で2018年9月末 まで首相を務めた場合 1241 1996.1.11~1998.7.30(1次~2次) 8 橋本龍太郎 932 1972.7.7~1974.12.9(1次~2次) 9 田中角栄 886 1980.7.17~1982.11.27(1次) 10 鈴木善幸 864 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 (日) (資料)首相官邸ホームページ、各種報道等よりみずほ総合研究所作成 下記の図表はG7各国のトップの支持率比較で、安倍政権の支持率はG7のなかでもトップクラスである。 安倍首相は2018年に自民党の総裁選規定を変更し、2021年までの在任が視野に入っているとの見方が 一般的だが、その場合は戦後最長の政権となる。現時点で、世界の首脳で2020年までを展望できる政権 は数少ない。G7のなかでは少なくとも日本が抜群の安定度だ。こうしたなかでポリティカル・キャピタルを改 革に結び付ける可能性があるとの見方も認識する必要がある。 ■図表:G7各国のトップの支持率比較 米国 カナダ フランス 英国 民主党 自由党 社会党 保守党 任期 オバマ 大統領 2017年1月 トルドー 首相 2020年11月 オランド 大統領 2017年5月 支持率 50% 62% 12% 政権 トップ メイ 首相 2020年5月 ドイツ キリスト教 民主同盟 メルケル 首相 2017年12月 55% 45% イタリア 日本 民主党 自民党 レンツィ 首相 2019年2月 安倍 首相 2018年9月 40% 56% (注)各国の調査時点は以下の通り。2016 年 4 月:ドイツ・イタリア、5 月:カナダ、6 月:フランス、 7 月:米国・英国、9 月:日本。 (資料)米国:Real Clear Politics、カナダ・英国:Ipsos、フランス:TNS Sofres、ドイツ:ARD、イタリア:Le Repubblica、 日本:共同通信社、財務省よりみずほ総合研究所作成 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2