Comments
Description
Transcript
(景観審議会次第及び議事録)(PDF:436KB)
平成27年度 景観審議会(第2回景観形成部会) 日時:平成28年3月28日(月)10:00~12:20 場所:神戸市教育会館501号室 平成27年度景観審議会(第2回景観形成部会)において、 「国道9号沿道地域 沿道型広域景観形成地域の指定及び広域景観形成基準の決定」他2件について 諮問した。 -会議次第- 1 開 会 2 あいさつ 3 議 事 (1) 国道9号沿道地域沿道型広域景観形成地域の指定及び広域景観形成 基準の決定について(諮問) (2) 景観形成重要建造物等の指定について(諮問) (3) 景観行政における今後の施策展開の方向性について(諮問) 4 そ の 他 5 閉 会 -出席者について- 委員定数9名中7名の出席があり、定足数に達していることから、部会は 成立した。 -議事録署名委員について- 委員1を指名した。 -議事(要旨)- (1) 国道9号沿道地域沿道型広域景観形成地域の指定及び広域景観形成基準 の決定について ・国道9号沿道地域沿道型広域景観形成地域の指定の案及び広域景観形成 基準の案について、事務局より説明を行い、審議を行った。 (委員2) 資料1-3の4ページで、事前審議における道路内構造物に係る意見に対 1 / 14 する事務局の考え方として、景観条例に規定している「公共施設景観指針」 に基づき設置者や管理者に対して周辺景観との調和を求めていくとある。大 枠はこれで良いと思うが、 「公共施設景観指針」の中にはガードレール等の道 路内構造物について、周辺景観に調和する色の使用等の基準が定められてい るのか。 (事務局) 「公共施設景観指針」では施設別指針として道路に関する指針を定めてい る。道路内構造物の基準で該当するものとしては、 「周辺の自然環境との調和」 として、 「優れた眺望地や山間道路、海岸沿いの道路では透過性の高い防護柵 の設置等により、良好な眺望景観の保全・活用を図る」がある。また、 「周辺 のまちなみとの調和」として、周辺のまちなみや土地利用等の特性に配慮し た舗装や道路付属施設の整備を求めている。 「周辺公共事業との調和」として、 基調となる色や素材等について地域や路線での統一・調和を図り、まとまり のある景観の形成を図ることとしている。以上のとおり、使用する色のマン セル値等、具体的な基準を定めているわけではないが、指針の中で良好な眺 望の保全や沿道景観との調和、色や素材等の統一について求めている。 (委員2) 指針全体としてはそれで良いと思うが、今回のように広域的な景観誘導を 行うにあたっては、景観色の使用を求めるなど一歩踏み込んだ対応を行うこ とが望ましい。地域ごとに色が変わることは広域景観の誘導の観点からは好 ましくないので、国道9号の一体的な景観誘導を図っていくためには、そう いった対応も必要であると考える。 (部会長) 管理者への要望はどのように行っていくのか。 (事務局) 国道9号の管理者は国になるので、広域景観形成基準が確定した後に、国 に対して基準等を説明するとともに、事前審議の際にも意見をいただいた色 彩や素材の統一等の配慮について要望していく予定である。 (部会長) 国が道路内構造物に対して、どのような整備方針をもっているか把握した 上で対応する必要がある。国も景観に対する意識を持っていると思うが、関 係ないという対応になると好ましくない。 (事務局) 国に対して道路内構造物の意匠や形態について指示することはできないが、 国道9号の沿道型広域景観形成地域指定の趣旨や景観基準の考え方などにつ 2 / 14 いて、実際に工事を発注している部署へ丁寧に説明する等により、理解を得 られるよう努力していきたい。 (委員2) その対応で良いと思うが、国への要望の際は、 「マンセル値○○の景観色で お願いします」といった具体性が必要であると考える。配慮してくださいと いうと相手方に判断を任せてしまうことになるので、具体的な要望を行って いくべきであると考える。 (委員3) 実際に工事を発注している部署となると国道事務所になると思うが、さら に近畿地方整備局へ県要望として上げることも検討する必要がある。積極的 に要望しないと聞き置くだけになってしまう可能性がある。国が国道9号の 景観や環境に対してどのような考え方を持っているかという点が重要になっ てくる。 また、資料1-3における事務局の考え方の中で「ガイドライン」という 言葉がよく出てくるが、ガイドラインはどのように作るのか説明して欲しい。 (事務局) ガイドラインは事業者や住民等向けに指定書の内容を詳しく解説したもの であり、施行日までに作成し配布する。広域景観形成基準は文字だけでは分 かりにくいので、どのように周辺景観との調和を図っていくのか、ガイドラ インの中でイラストや写真等を活用して丁寧に説明していく。 (委員4) 事前審議の中で、既存広告物の景観への影響が大きいとの意見が多数出た が、その関係で質問したい。資料1-3の事務局の考え方のところで、今回 の指定により基準に適合しなくなった既存の広告物に対して是正対策を強化 することは難しいとあり、これはそのとおりだと思うが、違反広告物の数に ついては、事前審議後に調査等を行ったのか。 (事務局) 屋外広告物については、景観条例の広域景観形成基準は、今後建て替え等 を行う際に適合してもらう基準であり、 (また、これまでこの地域に景観条例 による基準がなかったことから)景観条例上の違反はない。 屋外広告物条例については、調査を行った結果、国道9号沿道にある約660 の屋外広告物のうち、約4割が屋外広告物条例に違反していることが分かっ た。一方、広域景観形成地域の指定に伴い、屋外広告物条例の基準が強化さ れることにより既存不適格となる広告物は12件と少ない。よって、今後国道 9号の沿道景観を保全していくためには、屋外広告物条例の違反対策をしっ かり行っていく必要があると考えている。 3 / 14 (委員4) 資料1-3の事務局の考え方のかっこ書きにも記載されているが、屋外広 告物条例上は、今回の指定に連動して基準が厳しくなり、さらに上乗せの基 準として、現在議論している景観条例上の広域景観形成基準が加わることに なる。ただし、屋外広告物条例については、現在広告物部会の中で、 (広域景 観形成地域の指定により)第2種禁止地域等になる地域から除外する地域、 つまり基準を緩和する地域を指定しようという議論をしている。今回、広域 景観形成基準として上乗せの基準を定める一方で、屋外広告物条例において 基準を緩和しようとしているが、その考え方についてお伺いしたい。 (事務局) 今の意見の中で「屋外広告物条例の基準を緩和する」という話があったが、 広告物部会では、「基準を緩和する」のではなく、「広域景観形成地域の指定 に連動して自動的に第2種禁止地域等に移行するのではなく、現行の基準を 継続する地域」の指定について審議している。 旧町の中心市街地等で既に店舗や広告物等が相当数立地している地域にお いて、屋外広告物条例に基づく広告物の数や大きさ等の規制を強化すると、 営業や地域の活性化を阻害する恐れがある。 このため、そのような地域については、屋外広告物条例での規制は現行基 準のままとするが、広告物の意匠(色彩や形状等)に関しては景観条例の広 域景観形成基準によって現状より一歩進んだ配慮を求めるという考え方をし ている。 (委員4) 広域景観の規制・誘導においては、基準を作ることも重要だが、どのよう に実現していくかも同じくらい重要である。先ほど国道9号沿道には屋外広 告物条例上の違反広告物が多いという話もあるなかで、県がどこまで本気で 規制・誘導を行っていくのかが問題である。資料1-3の事務局の考え方の かっこ書きには、 「違反広告物に対する指導を強化するよう市町に働きかけて いく」とあるが、働きかけていくだけで実現できるのか。 (事務局) 知事の権限に属する事務に係る事務処理の特例に関する条例の中で、屋外 広告物条例の許可や違反対策等の権限を市町に移譲しているため、 「働きかけ ていく」という表現になっている。しかし、昨年9月の屋外広告物適正化旬 間には、県からも呼びかけ、地元市町が合同で、国道9号沿道において集中 的に屋外広告物の合同違反パトロールを実施した。今後もこのように、市町 が連携して国道9号沿道で一体的に違反対策に取り組んでいけるよう県とし ても取り組んでいく。 4 / 14 (委員4) 具体的にはパトロールの回数を増やしていくなどの取り組みは、県が本気 になれば市町も本気になると思う。違反広告物が多い中、今回の強化された 基準や上乗せとなる基準に従った者が損をするという状況がないよう、違反 対策については市町と協力して実施していただきたい。 (部会長) 指定について適当である旨、答申してよろしいか。 →各委員異議なし (部会長) なお、以前、国でも、国道における標識等の意匠を近畿圏で統一しようと いう検討がされており、国にも景観に配慮すべきとの問題意識はあった。現 在の国の整備方針等を把握した上で、道路内構造物の色彩等に関する要望や 連携を検討していただきたい。 また、屋外広告物条例の違反広告物対策に関しても、県と市町で連携して 取り組んでいただきたい。 答申には影響しないが、意見として述べさせていただく。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― (2) 景観形成重要建造物等の指定について(諮問) ・景観形成重要建造物等の指定(第9次指定)案について、事務局より説明 を行い、審議を行った。 (委員2) おおやアート村拠点施設「ビッグラボ」創作棟(旧八鹿高等学校大屋校木 造校舎)について、建築意匠の視点からの意見を述べたい。 事前審議の際、今回諮問を行った物件や過去の指定物件と比較してもこの 建物は指定にそぐわないのではないかと疑問に思った。そこで、県下の他の 木造校舎の状況を調べてもらい、先日、本審議に先立って、事務局より調査 結果の説明を受けた。 その際、まだ指定できる状態ではないと改めて意見を述べたが、事務局と しては指定が可能な物件と考えているとのことだったので、先日、現地へ行 ってきた。 現地を見るかぎり、地元に愛されていないというのが私の第一印象で、そ れが一番問題だと感じた。また、この建物は周辺からほとんど見えないので、 景観形成に寄与しているものではないと感じた。 また、おおやアート村として積極的に使われているというが、現地で運営 している方に話を聞いたところ、中核施設として主に利用しているのはこの 5 / 14 木造校舎ではなく、同じ敷地内の新しい体育館や鉄筋コンクリート造の建物 であり、木造校舎はイベントの時にワークショップの会場として利用してい るとのことであった。よって、地域におけるシンボル性についても希薄であ ると考える。 もう一点、他の指定候補と比較しても同レベルで論じられないと思ったの は、建物の外観である。全体にわたってアルミサッシが取り付けられている。 これらも意匠的に配慮されたものではなく、無造作に取り付けられた印象で ある。外観の特徴が活かされているとはいえず、保全状態も良いとは言えな い。 以上のことから、今回の指定には適さないと考える。なお、養父市は景観 行政団体になるとのことなので、今後、市が適切な修景や管理を行い、良好 な状態になった段階で、指定を受ける方がよいのではないか。 (委員5) 指定を受けた場合、修景工事に関して助成金が出ると思うが、例えば「旧 グンゼ八鹿工場事務所棟」の指定資料において、修景方針にアルミサッシを 木製にすることが望ましいと書いてあることについて、実現性はあるのか。 (事務局) この指定資料は、所有者・管理者に内容を確認してもらった上で提案とし て記載している。 例えば「旧グンゼ八鹿工場事務所棟」について、今後どのような利用をす るかという議論から始め、その後に改修されると思われるので、そのタイミ ングで木製建具に変更してもらうことを期待して提案している。 他の物件も同様で、景観の観点から、修景する場合はこのようにして欲し いという提案を行っている。実現性までは言及していないが、提案の内容に ついては所有者から了承を得ている。 (委員5) 「旧グンゼ八鹿工場事務所棟」は、シンボル性もあり、建築関係者の見学 などもよく受入れているようである。一方、おおやアート村拠点施設「ビッ グラボ」創作棟は、先ほどの委員の意見のように、地域に愛されていないと いうなら非常に残念に感じる。今回、指定候補となったのは、地域の方の推 薦があったからではないのか。 (事務局) 養父市から推薦があった。この建物の運営はNPOが行っているが、養父 市が所有している。 先ほど委員から現地に行かれたという話があったが、その日は定休日で利 用者がいなかったため、地域から愛されていないという印象を受けられたの かもしれない。しかし、この建物にはカフェが入るなど、地域の人にも利活 6 / 14 用されている。 そもそも、地元で愛されていなければ、養父市が推薦することはないと考 えている。 (委員5) 市として頑張って利活用していこうという意思があるのなら、それに対し て後ろ向きなことは言わない方が良いとは思う。 ただ、県の立場から、市に今後の課題として何らかの意見を付した方がよ いのではないか。 (事務局) 建物の外壁は木造のペンキ塗りであるため、経年変化による劣化がみられ るが、市に確認したところ、定期的な維持管理は行っているとのことである。 また、今すぐ大規模な外観改修工事を行うことはないが、時期が来れば外壁 の塗り直し等は行うと聞いている。 アルミサッシについては、建築基準法上の措置等により、やむを得ず採用 せざるを得ない経緯があったものと考えられる。すぐに対応することは難し いとは思うが、今後の改修工事の際に景観上重要な南側にあるアルミ製排煙 窓や換気扇を木製建具に戻すといったこと等も、指定資料の保存計画の中で 提案している。 (委員6) おおやアート村拠点施設「ビッグラボ」創作棟については、景観条例で位 置づける景観形成重要建造物等の制度の趣旨や、今回の審議会で議論されて いる内容から判断しても、指定に十分な要件を備えていると考える。 また、養父市は、この建物に近い大屋町大杉地区が文化財保護法の「重要 伝統的建造物群保存地区」として文化庁に選定されるよう取り組んでいると ころである。つまり、市全体で地域創生の取り組みを行い、話題を呼んでい るところで、そうした中、この木造校舎についても景観形成重要建造物の指 定を受けて、大屋地域の景観に対する取り組みに拍車をかけたいという思い があるものと思われる。市として景観まちづくりに積極的に取り組もうとい うこれらの背景も汲んでいく必要があると思う。 こうした景観的な要素というのは単体の建物だけで評価しがちではあるが、 市全体の景観施策の中でどう位置づけるのかということまで考慮するべきで ある。 また、戦後の昭和時代の木造校舎というのは、既に稀少になってきている。 さらに、この建物は耐寒性のある石州瓦を活用したり、暖房設備として煉瓦 の煙突を使用するなど、地域の特徴を非常によく示している校舎建築である。 こうした点から、この建物は地域の特徴や時代背景を非常に象徴している 校舎建築であり、景観形成重要建造物の指定に適していると考える。 7 / 14 (部会長) 指定反対の意見と、資料の「指定理由」の間に食い違いがある。 さきほど、この建物は今回の指定に適さないという意見があったが、これ は、今後、この建物がまちづくりの中心拠点として利活用される可能性がな いと考えられるということか。 (委員2) この建物が、今後、まちづくりに貢献するかどうかは、可能性がゼロとは 言えないものの現状では難しいと思う。 平成19年度に景観形成重要建造物に指定した「西脇小学校」と比べると、 維持・保存されてきた状況や、市の意識に差があるように感じる。 また、 「おおやアート村」の運営及び活動の内容に対して、木造校舎が少し 大きすぎる感じがする。維持管理に手が回っていないのが現状ではないか。 ただ、この建物で行われている活動自体は評価されるものであるため、事 前審議の際にも提案したが、兵庫県の「人間サイズのまちづくり賞」のまち づくり活動部門の対象とする方がふさわしいのではないか。 建物に関しては、現状では景観的にそれほど優れた点は見られない。今後、 この建物が地域の景観まちづくりを誘導していくような施設になるとは考え にくいし、周囲からあまり目に付かない状況で利用されている。このまま指 定すると、指定を受けてよかったというだけで終わってしまう可能性もある。 指定を受けたから景観まちづくりに取り組むのではなく、指定を受けるため に、まずは景観的にも優れたまちづくりの拠点となるような建物とすべきで ある。その後、改めて景観形成重要建造物指定について本審議会に諮問をし てもらう方が、手順として良いのではないか。 これまでに指定された建造物や、今回候補となっている4件の建造物のレ ベルと比較しても、この建物は指定に適さないものと考える。 (部会長) これまで指定した建造物の中にも、今後、景観形成や景観まちづくりに寄 与する可能性があるという観点から評価し、指定した物件もある。地元や審 議会委員の間でも、ポテンシャルがあることから、今後を期待して指定した らどうかといった趣旨の意見もあった。どう判断したらよろしいか。 (委員2) もう一点追加すると、この建物は周辺から見えない所にある。道路に面し 不特定多数の人から見える場所にあれば指定の可能性もあると思うが、僅か に斜めから見える場所があるものの、日常的に市民や来訪者から見えるもの ではない。やはり、この木造校舎を景観まちづくりの中核となるような施設 にするためには、指定に向けた取り組みを先に進めた方が良いと思う。 8 / 14 (委員6) 景観形成重要建造物等の指定については、過去の審議会で、 「県や市町の指 定文化財の対象とはならないものではあるが、指定以降、地域の景観形成や 景観まちづくり等に資することが期待できるものを選んでいこう」という考 え方が示された。私は、これまでこの考え方のもと、景観形成重要建造物等 の指定に係る審議会に臨んできた。よって、今回もこの建物は景観形成重要 建造物に指定すべきであると考える。 (部会長) この建物以外の建造物と樹木については、景観形成重要建造物等の指定が 妥当と答申することで問題ないか。 (委員2) 問題ないと考える。 (委員5) おおやアート村拠点施設「ビッグラボ」創作棟を指定することで、景観形 成重要建造物等の全体のレベルが下がるのではないかという意見も理解でき るが、このまま指定せずに放置すると、もっと朽ちていくのではないかと思 う。地域の財産として何とかしたいという養父市の思いを汲み取り、景観形 成重要建造物に指定することで、今以上にこの建物を地域内外にアピールで き、活性化に繋がっていく可能性がある。そのポテンシャルにかけた方が良 いのではないか。 (委員2) これは各自治体の体質というか市長の方針もあると思うが、そもそもこの 建物を良くしようということであれば、既に何らかの形で修景等が行われて いるはずである。しかし、現状として修景等は行われていない。今回指定し ても、指定されて良かったとなって、現状のまま変わらないのではないかと 思う。 そうではなく、この建物が指定されるよう、適切な修景を行ってください という意見を伝える方がよいのではないか。 (部会長) 県が指定しないということになれば、市民の関心が薄れていくことが危惧 される。文化的な価値が高いものは残すが、普通のあまり上質ではない建物 は壊していけという風潮が少し強くなっていることからも、今後の可能性を 汲み取って指定してもよいのではないかと個人的には思う。 委員の意見が割れているが、この審議会で指定の可否を決めなければなら ない。審議会規則では、 「出席委員の過半数の賛成で決する」とあるので、他 の建造物と樹木はよいとして、おおやアート村拠点施設「ビッグラボ」創作 9 / 14 棟に関しては決を採ることでよろしいか。 (委員1) 反対意見の理由も理解できる。もし今後を期待して指定したものの、指定 後も現状のまま変わらないということになれば指定を解除することは可能な のか。指定解除の考え方について事務局に伺いたい。 (事務局) 景観形成重要建造物等の所有者・管理者等は、建造物等を適切に維持管理 するよう努めなければならないと条例で定められている。指定を解除するの は、基本的に、建物が除却された場合や指定文化財になった場合等である。 これまで維持管理が適切に行われていないことを理由に指定解除を行った 事例はない。この建物も、所有者である養父市に、今後も維持管理に努める 旨の確認を取った上で、将来的に指定解除の可能性はないと判断し、指定の 候補にあげている。 (委員3) 私も、どちらかといえばポジティブに捉えた方が良いと考えるが、指定に あたり、条件や意見を付すことはあり得るのか。市に対してきちんと維持管 理するよう伝える機会はあるのか。 (事務局) 所有者として指定に同意しており、維持管理に努める義務があることは既 に承知しているため、指定に際して改めて意見を付すことはない。 (委員2) 現状のまま維持管理するのではなく、適切な修景を行っていく必要がある。 賛成・反対で決めるのはどうかと思うので、提案だが、市に修景や利活用 計画等を作成してもらい、その後、審議会に諮問してもらってはどうか。修 景や利活用計画において市の積極的な姿勢を見せてもらえればと思う。 (事務局) 事務局としては、現状での指定が可能と考えている。 (委員2) 現地で確認したところ、ペンキも剥げており、木材が腐っている箇所もあ り、放置するとさらに朽ちていくことは明らかである。内部も改装されてお り、校舎として使われていた当時の状況は残っていない。 この建物が適切に修景され、利活用されていく担保があって初めて、今後 この地域の景観形成や景観まちづくりに貢献していくと言えるが、今の状態 であれば、指定に反対である。これは、景観形成重要建造物等の指定の趣旨 10 / 14 に反すると思う。 (部会長) これまで指定してきた案件についても、指定資料に記載されているような 維持管理と保存の方針に取り組むことについて所有者に了解してもらい、指 定候補として審議会に諮問している。指定時に所有者が了承していることを 疑ってしまうと指定そのものができなくなる。過去の指定物件についても、 指定後の維持管理状況を確認する機能はこの審議会にはなく、所有者が指定 に際して維持管理の方針に沿うことを了承したことをもって指定してきた。 このため、おおやアート村拠点施設「ビッグラボ」創作棟を指定候補とし たことが不十分とするならば、指定資料に書いてあることが不十分であると の判断をしなければならなくなる。 所有者に指定資料の内容について確認し、保存計画等について所有者が了 承しているのであれば、我々はそのことを信用するしかない。 (委員6) 今後こうした建物をどう景観まちづくり等に利活用していくかについて行 政が関与していくためには、景観形成重要建造物等の指定が出発点になる。 指定することによって、所有者は維持管理方針に沿って修理・修景に積極的 に取り組み、県は必要な指導助言や修景助成等によりそのサポートを行うこ とになる。 2004年に条例を改正して、景観形成重要建造物等指定の制度を設けること になった時に検討した制度の趣旨について、私たちは改めて考えなければな らない。 まさしく、指定が出発点であると私は理解している。 (委員2) 今の意見のような考え方も当然あるが、指定を出発点にするにも一定のレ ベルが必要だと思う。そういう意味で、この建物は指定すべきレベルに達し ていないというのが私の意見である。 ただ、時間もないので、決を採っていただいてもよい。 (部会長) 今回の指定候補のうち、おおやアート村拠点施設「ビッグラボ」創作棟に ついて、指定に賛成の委員は挙手をお願いする。 ―(出席委員のうち、部会長を除く6名中、過半数が挙手)― (部会長) 賛成多数である。 よって、当審議会として、他の5件と併せて、本諮問については妥当であ 11 / 14 る旨、答申することとする。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― (3) 景観行政における今後の施策展開の方向性について ・「景観行政における今後の施策展開の方向性について(諮問)」資料につ いて、事務局より説明を行い、今後の審議の観点について意見交換を行 った。 (部会長) 県レベルの景観行政と市町村レベルの景観行政は、取り組み方が異なる。 小さな市町村の中で山並み景観や道路景観などの指定区域を区切っても、狭 い範囲で分断されてしまい、広域的な観点からは問題となる地域も結構ある。 地区の景観を具体的にどうするかは市町村で取り組まなければならないが、 対象地域によっては「広域」ということが大切な視点になる。広域的な地域 は市町村の範囲を超えるので、市町村は自分たちの責任で各行政区域内の景 観行政を行えばよいという考え方ももちろんあるが、「『広域』とは『上から の行政』ではない」という考え方のもと「広域」という視点を捉えなければ ならない。 また、 「景観づくりはまちづくりだ」ということも、いろいろな場面で言わ れている。市町村は「まちづくり」に熱心なため、まちづくり行政と景観行 政を分けて考えられなくなってしまい、表面的にみると景観行政がどんどん 縮小していると捉えられることもある。実際、市町村にアンケートを行うと、 まちづくりには熱心に取り組んでいるが、景観づくりにはあまり取り組んで いないという回答が返ってくることがある。しかし、詳しく調べると、ほと んどのところで景観を活用したまちづくりも行われており、仕分けができて いないだけである。 住民の立場に立てば、 「景観づくり」と「まちづくり」の仕分けはどちらで もよいことだが、行政の評価として、景観づくりへの関心が下がっていると みられてしまうと、表面だけをとらえて、 「もう景観の時代は終わった」と論 評されることもある。 そのような問題もあって、景観行政に取り組むことが難しい面も出てきて おり、懇話会で検討すべき課題はたくさんあるが、景観とは異なる分野でま ちづくりに関わっている人の意見を広く聞いて、県の景観行政に生かせるも のを発見しなければならない。 (委員1) 資料の3-1の2つ目の観点に書かれている「意識の芽を育てる」という 言葉に注目した。景観に対する一般の住民の意識が低いことが、景観まちづ くり活動を中心になって担っている人々の悩みである。 最近、どこの市町でも郷土の歴史を学ぶ機会を設けているが、そこに景観 12 / 14 も入れるべきである。地域や郷土の歴史とあわせて地域の景観についても、 小さい頃から学ぶべきではないかと強く思っている。そういう意味でこの懇 話会は非常によい取り組みであり、大いに議論してほしい。 (委員3) 「観光振興等の関連施策」とあるが、地域性や郷土性、歴史性といったも のが地域の特徴を創出していて、それが景観として観光面で誘客につながる という意見は確かにあると思うが、地域創生は、観光振興だけに絞りこまず、 もっと広い視点で議論することも大切ではないか。 また、ランドスケープの観点から緑をどのように評価するのかという視点 が景観行政において意識されているだろうか。兵庫県として、緑化行政を含 む緑関連施策が景観行政の中にファクターとして出ているようには思えない ので、そういった点も視点として打ち出して検討してほしい。 (部会長) 淡路景観園芸学校を設立した際に、緑を景観の重要な要素にしようという 意気込みが掲げられていたが、実際に緑がどのように活用されているかとい うことも大切なポイントだと思う。 (委員5) ユニバーサルデザインの観点から、まちを美しくしたいという課題を持っ ているので、そういう視点が組み込まれたらいいと思う。現在、歩道は車い すが通りやすくなったり幅が広くなったりしているが、例えば海外では、道 路と歩道の間に水を流すことで、両者の境を明確にしている事例もある。こ のように、例えば自転車道や歩道、緑地帯といったものを組み合わせて、ま ちを美しくしていくということを前向きに検討できたらいいと思う。 (委員2) 一番重要なのは小学生への教育だと思う。小学生の時に美意識、景観に対 する意識を植え付けるということが大切だと思うので、小学校教育の中で景 観の重要性、景観とは何かということを学ぶ機会を組み込むような効果のあ る施策を検討してほしい。 (部会長) 日本の風景を味わうということはどういうことか、そのような教育がなさ れていない。大きな問題だが、学校はそのようなことを行う余裕がなく、大 切なことを排除していく傾向が強いことが残念である。 美しいというのは、文学的な関心を持つということにも関係があるので、 美学や美術など視覚的な美しさだけではなく、歌に詠む、環境を味わうとい うところに出発点があると思う。景観を狭い概念で捉えるのではなく、それ をはみ出して考える方がいいのではないかとも思う。 13 / 14 (委員6) 最近、景観行政団体が増えているが、景観行政団体ではあるが特定行政庁 ではないという行政的な矛盾が生じ、景観行政団体であるにも関わらず、主 体的・積極的な取り組みがまだできていない市町村がある。逆に言えば、特 定行政庁ではないために都道府県が関与できるということもある。 そのような行政の仕組みについても課題として意識してほしい。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 14 / 14