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第26回 資料
第26回 2014.02.28 症例から 58歳 男性 54歳 右腎細胞癌で摘出 膀胱癌の既往もあり HBVは(ー) HCVは未検査 脂肪肝(中程度)の所見 S4に低エコーの腫瘤様エコーあり 何が考えられるか • focal spared area • meta • 血管腫を含む肝腫瘤 脂肪肝のspared regionの好発部位 Segmental type focal spared areaの好発部位ではない 右胸水も認める HCC cyst 精査の結果 原発性肝細胞癌 紹介先でCTを施行 原発性肝細胞癌 HCV(+)であった ラジオ波治療を施行 ラジオ波治療後 脂肪肝ベースでは腫瘤の特徴が隠されてしまうので判断に困難な場合が多い 2009年版より膵嚢胞、大量飲酒が追加 膵嚢胞性病変 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN) ・漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN) ・粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN) ・仮性嚢胞(pseudocyst) ・Solid-pseudopapillary tumor(SPN) ・類表皮嚢胞(epidermoid cyst) ・リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst) ・嚢胞変性を呈した膵島腫瘍(islet cell tumor) ・嚢胞変性を来たしやすい充実性腫瘍 :腺扁平上皮癌、退形成性膵管癌、腺房細胞癌 ・微小膵癌からの貯留嚢胞 ・meta/ML 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日]より 膵嚢胞性病変 分類 Ⅰ 仮性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 なし) 外傷性のpancreatic pseudocyst など Ⅱ 真性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 あり) 1.非腫瘤性 2.腫瘤性 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) ・粘液性嚢胞腫瘍(MCN) ・漿液性嚢胞腫瘍(SCN) など Ⅲ 二次性腫瘍 (出血や壊死による嚢胞状変化) solid pseudopapillary tumor(SPT) など pancreas cystic lesion 膵嚢胞性病変 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN) ・漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN) ・粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN) ・仮性嚢胞(pseudocyst) ・Solid-pseudopapillary tumor(SPN) ・類表皮嚢胞(epidermoid cyst) ・リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst) ・嚢胞変性を呈した膵島腫瘍(islet cell tumor) ・嚢胞変性を来たしやすい充実性腫瘍 :腺扁平上皮癌、退形成性膵管癌、腺房細胞癌 ・微小膵癌からの貯留嚢胞 ・meta/ML 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日]より 膵嚢胞性病変 分類 Ⅰ 仮性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 なし) 外傷性のpancreatic pseudocyst など Ⅱ 真性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 あり) 1.非腫瘤性 2.腫瘤性 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) ・粘液性嚢胞腫瘍(MCN) ・漿液性嚢胞腫瘍(SCN) など Ⅲ 二次性腫瘍 (出血や壊死による嚢胞状変化) solid pseudopapillary tumor(SPT) など 共通所見 比較的境界明瞭 SCN(serous cystic neoplasm) IPMN(intraductal papillary mucinous neoplasm) 漿液性嚢胞腫瘍 膵管内乳頭粘液性腫瘍 主膵管型 MCN(mucinous cystic neoplasm)SPT(solid-pseudopapillary tumor) 粘液性嚢胞腫瘍 膵充実性偽乳頭状腫瘍 一定しない 分枝型 好発部位 一定しない 膵頭部 体尾部 男女比 女性優位 男性優位 女性優位 女性優位(男:女=9:1) 壮年から高年 中年 20-40代の女性に好発 主膵管の拡張 なし あり なし なし なし 石灰化 あり なし なし なし なし 造影超音波 染影あり 染影あり 染影なし 部分的染影 部分的染影 特徴的性状 形態により様々に分類される 腫瘍が描出されない場合が あるが、描出されれば ブドウの房 壁に内部に向かう乳頭状結節 嚢胞成分と 夏みかん 充実成分が混在 主膵管内に乳頭状成分 手術適応 無症状であれば経過観察 手術 結節径3mm以上 嚢胞径30mm以上 主膵管7mm以上 手術 手術 SPT :Solid pseudopapillary tumor 膵充実性偽乳頭状腫瘍 (昔はsolid and cystic tumorと呼ばれていた) 膵SPTの一般的事項 ●過去の名称がいろいろあり ・solid and cystic tumor, solid and papillary (epithelial) neoplasm, papillary-cystic neoplasm, ... ●現在は solid-pseudopapillary tumor に統一 ●膵腺房細胞由来と考えられている ●20~30代の若年女性(とくに東洋人・黒人)に多いとされるが,10%程度は男性にも発生,高齢者の報告もあり ・国内報告302例のまとめ*では,男性40例(13.2%) *吉岡正智ら,胆と膵 22: 45-52, 2001. ●大部分は良性だが,転移・再発の報告もあり (solid-pseudopapillary carcinoma: SPC) ●本来は充実性腫瘍だが,時間の経過により出血・壊死・石灰化などの退行性変化が起こる ・嚢胞成分と充実成分との混在が特徴的 ・壁の石灰化の頻度も高い ●症状:腹痛,腹部のしこりなど ●治療:手術が基本,完全摘出で根治が期待 第312回 東京レントゲンカンファレンス 膵SPTの画像所見 ●膵実質から突出する大きな腫瘤 ●被膜を有し,充実成分と嚢胞成分からなる ●嚢胞成分に出血・壊死 ●壁にはしばしば石灰化 ●SPCと良性SPTの鑑別* ・膵管拡張,血管浸潤,転移など ・大きさ,局在,成分,石灰化には有意差なし *Lee et al. Clinical Radiology 63: 1006-1014, 2008. 第312回 東京レントゲンカンファレンス 膵SPTの鑑別疾患 ●嚢胞成分が主体 ・仮性嚢胞 ・粘液性嚢胞性腫瘍(MCT) ・嚢胞性内分泌腫瘍 ●充実成分 が主体 ・腺房細胞癌 ・内分泌腫瘍 ・(小児の場合)膵芽腫 第312回 東京レントゲンカンファレンス 膵SPTの好発部位は一定しない 膵の臨床病理学的特徴と外科的治療. .胆と膵 吉岡正智, ,江上 格, ,前田昭太郎, ,片山博徳, ,松田 健, ,内田英二, ,秋丸琥甫, ,田尻 孝, ,田中宣威, ,恩田昌彦. . 膵SPT 膵SPT 21歳 女性 膵SPT 膵SPT 膵 Solid and Cystic Toumor 10才女児 久保田 敬 超音波のポイント画像診断 Vol.14 No.7 1994 より 健診にて発見された膵solid-pseudopapillary tumor の1男性例 日消外会誌38(1):86~91,2005年 膵SPT 10代女性 類表皮嚢胞 epidermoid cyst 膵嚢胞性病変 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN) ・漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN) ・粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN) ・仮性嚢胞(pseudocyst) ・Solid-pseudopapillary tumor(SPN) ・類表皮嚢胞(epidermoid cyst) ・リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst) ・嚢胞変性を呈した膵島腫瘍(islet cell tumor) ・嚢胞変性を来たしやすい充実性腫瘍 :腺扁平上皮癌、退形成性膵管癌、腺房細胞癌 ・微小膵癌からの貯留嚢胞 ・meta/ML 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日]より 話は横道へ 異常:Anomaly、 Abnormality 正常範囲からの形態的または機能的な逸脱(奇形または変異) 奇形:Malformation 通常、出生時に存在する(認められるか、または潜在する)形態発生異常 変異:Variation 形態的、機能的発生異常のうち、一定の頻度で観察され、個体の 生存に対して重篤な障害とならないものをさす 人は外見は違っているので各人が区別できるが外見でなく中身まで各々個性があって違うことである 言い換えれば人の体の構造は一律ではなく変異がある ・正常変異(異形):normal variant 特定の遺伝性疾患とは関連しない変異 ・破格 : 普通のきまりからはずれていること 分岐変異 病気ではない 血管の破格 最近経験した 腹腔動脈 破格 通常の腹腔動脈 CHAとSAがAoから直接出ている SA CHA CA Ao SA CHA Ao 平松分類: 腹腔動脈、上腸間膜動脈における解剖学的変異の分類 (参考文献2 平松京一監修:腹部血管のX線解剖図譜) typeⅤ (separate type ) SA CHA Ao replase right hepatic artery 奇形と変形 からだにあらわれた形態異常のうち、 先天性(生まれつき)のものを「奇形」 生後に、病気などによって起こった形態異常であるのが「変形」 奇形の成因 現在はまだ不明確であるが、多くに奇形の中で、次の二つの因子のいずれかによるものが知られている 胚腫の異常 卵子または精子の異常によるもので、一次性奇形あるいは内因性奇形と呼ばれ、遺伝する傾向がある。 胎生期の異常 胎児が体内で発育していく途中で、たとえば感染とか中毒、打撲などの外部からの障害によって生じた も ので、二次性奇形あるいは外因性奇形と呼ばれる。 • 先天性異常:congenital anomaly 生まれつき発生が正常でないことを 「正常の範囲の変異を越えた発生のひずみで、出生前にその出現が方向づけられているもの」 • 先天性奇形:congenital malformation 先天奇形とは、何らかの理由によって臓器や組織の成り立ちに異常が生じて、 生まれたときに肉眼で確認できるような構造上の異常が見られる病気の総称 迷入、迷走、異所 組織、器官あるいはその一部が本来発育すべき部位以外の部位位置する状態 位置異常 器官や組織が正常な位置から逸脱した状態をさす 重複:Double Double、 Double、Duplicated 個体の一部または同一器官が重複して形成された状態をさす 奇形腫 teratoma 奇形腫:teratoma 2胚葉性あるいは3胚葉性成分を有する、すなわち最も高分化な胚細胞性腫瘍 胚細胞性腫瘍 胎児の原始生殖細胞(原始胚細胞)と呼ばれる細胞から卵巣や精巣が作られ、卵子や精子などの胚細胞がつくられます。 卵子や精子になる細胞から発生した腫瘍は胚細胞腫瘍と呼ばれ、良性の奇形腫や悪性の腫瘍があります。 三胚葉とは 外胚葉(皮膚や毛、神経など) 中胚葉(骨や筋肉、血液など) 内胚葉(消化管など) 受精後第3週中に3枚の胚葉が確立する.そして,内胚葉でできた袋(卵黄嚢;yalk sac)から 前腸と後腸という一対の突起が現れ,原始的な腸管として発達していく. 表皮 外胚葉 水晶体 内耳 神経冠 大脳、間脳、小脳、延髄 運動性脳神経、脳下垂体後葉 脊髄、運動性脊髄神経 交感神経、感覚性脳神経、感覚性脊髄神経、色素神経 脊索 側板 腎節 体節 心臓、血管内壁、血球、結合組織、平滑筋 腎臓、輸精管、輸卵管、子宮 真皮、筋肉(頭、胴、足) 神経管 中胚葉 内胚葉 汗腺、皮脂腺、乳腺 爪、毛髪 口腔、肛門の内面上皮、歯、脳下垂体前葉 嗅覚上皮 角膜 原腸 消化器の内壁(食道、胃、腸、肝臟、膵臓) 呼吸器の内壁(肺、気管) 中耳、耳管 甲状腺 外胚葉(皮膚や毛、神経など) 三胚葉 中胚葉(骨や筋肉、血液など) 内胚葉(消化管など) 腫瘍には元となる細胞がある 体細胞は通常この三胚葉のどれかひとつの胚葉に属しているため、 腫瘍もどれかひとつの胚葉成分から構成されるのが普通 ただ、奇形腫の場合、赤ちゃんの元の細胞、つまり様々な組織からなる命となる元の細胞 から発生する腫瘍のため、様々な胚葉が混じった腫瘍になるのです 類皮嚢胞、表皮嚢胞、皮様嚢胞 (dermoid cyst) 本題に近づいて来ました 膵嚢胞性病変 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN) ・漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN) ・粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN) ・仮性嚢胞(pseudocyst) ・Solid-pseudopapillary tumor(SPN) ・類表皮嚢胞(epidermoid cyst) ・リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst) ・嚢胞変性を呈した膵島腫瘍(islet cell tumor) ・嚢胞変性を来たしやすい充実性腫瘍 :腺扁平上皮癌、退形成性膵管癌、腺房細胞癌 ・微小膵癌からの貯留嚢胞 ・meta/ML 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日]より 奇形腫 (teratoma) 奇形腫は胚細胞性腫瘍 外胚葉性の皮膚,毛髪,歯,皮脂腺,神経組織,中胚葉性の骨,軟骨, 内胚葉性の気管支,消化管,甲状腺などの多彩な組織所見が無秩序に出現する 脂肪を含む点は類皮腫と共通するが、奇形腫は多房性・不均一で石灰化や軟部組織を含む 類皮腫 (dermoid) 胎生3~4ヶ月での外胚葉の迷入は、汗腺、皮脂腺、毛髪などを含み類皮腫(dermoid)となる 皮膚に似た腫瘍 表皮成分および毛嚢・皮脂腺などの皮膚付属器を含む真皮成分からなる 類上皮腫 (epidermoid) 外胚葉の迷入、ただし表皮成分のみ 脂肪成分は認めない 上皮に似た腫瘍 類上皮腫は嚢胞性変性を呈するため、epidermoid cystとも呼ばれる 類上皮腫は類皮腫の約10倍あるとされる 次は 類皮嚢胞(皮様嚢腫) (dermoid cyst) 類皮嚢胞 (dermoid cyst) 嚢胞壁が皮膚様の組織 (脂肪や毛髪、皮膚、軟骨、骨など)からなるもので、 別名皮様嚢腫とか類皮嚢腫ともいい、字のごとく皮膚に似た組織 (皮膚と皮脂腺による脂肪と毛髪)が良く見られるためこう呼ばれる 類皮嚢胞 (dermoid cyst) 嚢胞壁が皮膚様の組織 (脂肪や毛髪、皮膚、軟骨、骨など)からなるもので、 胎生期外胚葉組織が陥入して発生すると考えられるもの(生殖腺以外から発症した場合は胚細胞= 原始生殖細胞の迷入によって起こる) と 成熟嚢胞性奇形腫のうちで皮膚様の組織のみからなるものとがある dermoid cyst は主に卵巣、精巣(性腺)に発生し,その他,頭蓋,脳,縦隔,大網,後腹膜,膀胱,仙尾骨部 などに発生するが,膵臓での発生は極めてまれである dermoid cyst の鑑別疾患は,MCN,IPMN,仮性囊胞,リンパ上皮性囊胞やepidermoid cyst などが挙げられる dermoid cyst(卵巣成熟嚢胞性奇形腫) 成熟嚢胞性奇形腫のうちで皮膚様の組織のみからなるものとがある ●卵巣腫瘍性病変 dermoid cyst(卵巣成熟嚢胞性奇形腫) 良性腫瘍のほとんどが以下の腫瘍で占められている 1) 漿液性嚢胞腺腫(Serous cystadenoma) 2) 粘液性嚢胞腺腫(Mucinous cystadenoma) 3) 成熟嚢胞性奇形腫(Mature cystic teratoma) 髪の毛は数本ではなく大量で、hair ballといって、 お風呂の排水溝に詰まった髪の毛の塊のようになって出てくることも多い dermoid cyst(卵巣成熟嚢胞性奇形腫) dermoid cystは成熟した三胚葉成分から構成される 嚢胞は重曹扁平上皮でできた強靭な嚢胞壁で覆われ、正常卵巣とは明確に区別される 嚢胞の一部は皮脂、毛髪、歯牙、骨、軟骨、神経組織、甲状腺などの組織が結節を 作って嚢胞内に突出する 疫 学 ・ 胚細胞腫瘍は卵巣腫瘍の25%を占め、好発年齢は10~20歳である ・ dermoid cystは胚細胞腫瘍のほとんどを占め、残りは悪性の未分化胚細胞腫である ・ dermoid cystは良性腫瘍で50歳以上の高齢で悪性転化しやすく、悪性転化した場合は 扁平上皮癌が多い 片方だけではなく両方の卵巣に発生することもかなり多い hair ball calc oil fat 約15.7kg dermoid cyst 悪性例 卵巣嚢腫の茎捻転 卵巣腫瘍茎捻転 ・卵巣あるいは付属器全体が卵巣固有索や卵巣堤索などの支持靭帯を軸として捻転するもの。 ・婦人科救急疾患の約3%。 ・生殖可能な若年女性に多く見られる(20代>30代>40代)。閉経後や小児(支持組織が柔軟なため)でも起こる(17%)。 ・通常は一側性に起こる。右:左=2:1。左側に少ない理由は、S状結腸が靭帯の癒着を防いでいるとされる。 ・急性腹症(激烈な腹痛)として発症するが、捻転が徐々に起こり、軽度の下腹部痛が寛解と増悪を繰り返して慢性に経過する例も少なくない。 ・組織型としては、周囲と癒着を生じにくい成熟嚢胞性奇形腫(最多)や機能性嚢胞、嚢胞性卵巣腫瘍に生じやすく、悪性腫瘍は稀。 ・線維腫などの充実性腫瘍は漿膜下筋腫の捻転との鑑別が問題となる。 ・5-10cmのものの捻転の頻度が高い。(小さくても大きすぎてもねじれにくい。 野球ボールぐらいの大きさ(7cm) ・小児では付属器の固定が不十分で可動性に富むため、正常卵巣の捻転が認められることもある。 ・妊娠は捻転のリスクファクター。腫大した子宮により骨盤腔からスペースの広い頭側に押し上げられるとねじれやすくなる。 捻転の10%前後が妊娠に合併したとの報告あり。 ・捻転により、CA125やCA19-9など腫瘍マーカーが上昇しうる。腫瘍の捻転・壊死による炎症の合併および腫瘍細胞内の CA125,CA19-9の放出が原因として推測されている。 ・外科的治療が第一選択 「遠隔画像診断 up to date」より 次は 類表皮嚢胞(表皮嚢胞) (epidermoid cyst) 表皮嚢胞;類表皮嚢胞 (epidermoid cyst) 類皮腫 (dermoid) 胎生3~4ヶ月での外胚葉の迷入は、汗腺、皮脂腺、毛髪などを含み類皮腫(dermoid)となる 皮膚に似た腫瘍 表皮成分および毛嚢・皮脂腺などの皮膚付属器を含む真皮成分からなる 類上皮腫 (epidermoid) 外胚葉の迷入、ただし表皮成分のみ 脂肪成分は認めない 上皮に似た腫瘍 類上皮腫は嚢胞性変性を呈するため、epidermoid cystとも呼ばれる 類上皮腫は類皮腫の約10倍あるとされる dermoid cystとepidermoid cyst dermoid cyst は成熟囊胞性奇形腫に分類される良性腫瘍である. 皮膚付属器を含む表皮に被覆され,囊胞内容として皮脂,角化物,毛髪などが含まれる. epidermoid cyst は皮膚付属器成分を含まない点でdermoid cyst と区別され, 膵臓に発生するものは膵内副脾由来である 本題へ 類表皮嚢胞(epidermoid cyst) 膵内副脾の場合は類上皮性嚢胞を合併することがあり 膵内副脾 嚢胞性腫瘍との鑑別が必要である 膵内副脾の前に副脾についてもう1度 副 脾 accessory spleen 副 脾 ●剖検例を基にした検討では、副脾は10~30%に見られたと報告されている ●径は数mmから2cm大 ●脾腫のある例では、副脾も大きい傾向がある ●脾摘出後副脾が遺残していると、代償性に肥大することがある 副 脾 ●脾臓周囲の脾門部や下極に多く発生することが多く、 単発、あるいは多発性にしばしば観察される 副脾の大部分は脾門部近傍に小さな結節として見られるが、20%は その他の部位に見られ、特に膵尾部周囲に多いとされる 脾門部が多いが、腹腔内のどこにでも生じ、 脾外側、脾背側や、大網、後腹膜脾結腸間膜、腸間膜に存在することもある ●膵内副脾として膵尾部にも認められることがある 副脾の存在部位 膵内副脾の場合は類上皮性嚢胞を合併することがあり 膵内副脾 副 脾 概念 先天的な異所性の脾組織で、発生の初期に背側胃管膜内でいくつか の脾原基が完全に瘉合しないために発生する 組織学的には脾組織そのものである 脾と全く連続性がないように見えることもあるが、通常脾間膜によって脾と連続しており、 脾動脈から血流を受け、脾と同様の機能、画像所見、血行動態を示す 副脾は通常は脾門部に好発するが,脾動脈の血流支配領域であればどこにでも存在しうる 副脾は膵内にも体部,尾部を中心に膵内副脾の見られる例がある. この膵内副脾に類表皮嚢胞が発生し,あたかも膵嚢胞性腫瘍類似の所見を呈する 膵嚢胞性病変の超音波画像と臨床病理 一二三倫郎 Jpn J Med Ultrasonics 2009; 36(2): 147-163 副脾と鑑別すべき所見 ① 脾門部にある転移性リンパ節 ② 膵臓の島細胞腫瘍 ③ 副腎腫瘍 ④ 脾門部付近の膵臓などの嚢胞性病変 副脾のエコーレベルは、脾臓と等レベル 典型的な副脾 副脾と腫瘤との鑑別困難例 59歳 女性 sv 話はもう一度横道へ 脾 症(splenosis) 異所性脾 異所性脾は副脾( 副脾(accessory 脾症(splenosis 副脾(accessory spleen) spleen)と脾症( 脾症(splenosis) splenosis)に分類される ☆ 副脾は後胃間膜内で複数の間葉細胞塊の融合不全により生じる 脾臓の細胞塊であり、先天的疾患 先天的疾患 ☆ 脾症は外傷や脾臓摘出の際に脾組織が腹腔内などに散布着床する ことから生じ異所性に成長する後天的疾患 後天的疾患 脾症(splenosis) 外傷や脾摘後に脾組織の一部が播種され、他部位に着床し発育した脾組織 外傷や脾摘後 腸管の漿膜側、大網、腸間膜等に形成されることが多いが、肝や腎等 の実質臓器内にみられることもある 脾症(splenosis) 66歳女性 46歳時交通事故で脾臓摘出術施行 46歳時交通事故で脾臓摘出術施行 Liver 異所性脾(脾症:Splenosis)が疑われた1例 長吉総合病院 超音波診断上興味ある case stdiesより 脾症(splenosis) 外傷性脾破裂で脾摘出 膵臓脾症(pancreatic splenosi) 脾症(splenosis) 68歳男性 49歳時交通事故で脾臓摘出術施行 49歳時交通事故で脾臓摘出術施行 外傷性脾損傷後に直腸膀胱窩に認めた脾症(splenosis)の1例 豊橋市民病院 安藤晴光ほか 日消外会誌 40 (6) :741~745、 2007年より ドックでの症例 36歳 男性 5歳時交通事故にて脾臓摘出 脾症が考えられる症例 類表皮嚢胞(epidermoid cyst) へ戻ってきます 副脾は通常は脾門部に好発するが,脾動脈の血流支配領域であればどこにでも存在しうる 副脾は膵内にも体部,尾部を中心に膵内副脾の見られる例がある. この膵内副脾に類表皮嚢胞が発生し,あたかも膵嚢胞性腫瘍類似の所見を呈する 膵嚢胞性病変の超音波画像と臨床病理 一二三倫郎 Jpn J Med Ultrasonics 2009; 36(2): 147-163 類表皮嚢胞(epidermoid cyst) 膵に発生した類表皮嚢胞は膵に迷⼊した脾組織,副脾より発生する. したがって,嚢胞壁や外周には脾組織が確認される. 嚢胞内容の性状は漿液性,粘稠混濁,ゼラチン様,コレステリン様などさまざまである 膵内副脾を伴うepidermoid cystは、膵尾部に認められることが多く嚢胞性病変と周囲の壁在結節様の 所見を呈することから solid and pseudopapillary tumor、膵嚢胞性腫瘍や壊死を伴った膵内分泌腫瘍などとの鑑別はしばしば 困難であり、術前診断された症例は稀である。 発生頻度は男⼥同等である. 通常は無症状であるが,腹痛などの臨床症状で発見されることもある. また,CA19-9やCEA高値例も多く,嚢胞性腺腫,腺癌などの疾患との鑑別が必要となることがある 膵内副脾由来の類表皮嚢胞 膵嚢胞性病変の超音波画像と臨床病理 一二三倫郎 Jpn J Med Ultrasonics 2009; 36(2): 147-163 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日] 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日] 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日] 本来上皮組織が存在しない皮膚内部に表皮と同様の重層扁平上皮 膵類表皮嚢胞(膵内副脾由来) ・膵に迷入した脾組織、副脾から発生する、良性の真性嚢胞。 ・皮膚付属器を持たない上皮にのみにより形成されたもの。 ・嚢胞壁や嚢胞周囲に脾組織が認められる。 ・内容液:漿液性、粘稠混濁、ゼラチン様、コレステリン様等様々。 ・膵尾部に 膵尾部に好発 膵尾部に好発 (副脾の好発部位) 副脾の好発部位) ・疫学:若年~中高年。男女差はない。 ・症状:ほとんど無症状。ときに腹痛などの症状で発見。 ・血清CA19-9、CEA高値例も多い。 迷入:組織、器官あるいはその一部が本来発育すべき部位以外の部位位置する状態 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日] 膵類表皮嚢胞(膵内副脾由来) 【画像所見】 ・膵尾部に発生。 ・隔壁様構造を持つ境界明瞭な単房性or多房性嚢胞性病変。 ・副脾の成分が多ければ、充実成分や厚い壁構造として認められる。 脾と同様のCT値、MRIの信号強度。 ダイナミックスタディで脾と同様の増強パターン ・SPIO(超常磁性酸化鉄製剤)投与後にT2WI、T2*WIで脾と同様に信号強度の低下が認められる 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日] 腹腔鏡補助下膵部分切除術を施行した膵内副脾 epidermoid cyst の1 例 日消外会誌36(4):278~282,2003年 膵内副脾epidermoid cystの1症例 日外科連会誌33(2):213―217,200 術前診断しえたものの囊胞成分の悪性を否定できず 縮小手術を行った膵内副脾の1 例 epithelial cyst(上皮嚢胞) 帝京大学ちば総合医療センター 樋口 亮太ほか 日消外会誌43(6):647~653,2010 より 人間ドッグでの症例 62歳 男性 人間ドッグにて膵内副脾 epideroid cystが疑える症例 膵類表皮嚢胞疑い 膵尾部に充実成分を伴った嚢胞性病変 嚢胞部分 62歳 男性 膵リンパ上皮性囊胞 Lymphoepithelial cyst 膵嚢胞性病変 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN) ・漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN) ・粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN) ・仮性嚢胞(pseudocyst) ・Solid-pseudopapillary tumor(SPN) ・類表皮嚢胞(epidermoid cyst) ・リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst) ・嚢胞変性を呈した膵島腫瘍(islet cell tumor) ・嚢胞変性を来たしやすい充実性腫瘍 :腺扁平上皮癌、退形成性膵管癌、腺房細胞癌 ・微小膵癌からの貯留嚢胞 ・meta/ML 第 345 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年6月20日]より ・内層:重層扁平上皮 、外層:リンパ組織 ・男性>女性(4:1~9:1)。 ・膵外に突出する形が特徴的。 ・頭部:体部:尾部=1:1:1 ・単房性 or 多房性、境界明瞭。 ・嚢胞壁/隔壁は厚く不整。石灰化伴うことも ・CA19-9↑(半数例) 真性嚢胞 仮性嚢胞 膵嚢胞性病変 分類 Ⅰ 仮性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 なし) 外傷性のpancreatic pseudocyst など Ⅱ 真性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 あり) 1.非腫瘤性 2.腫瘤性 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) ・粘液性嚢胞腫瘍(MCN) ・漿液性嚢胞腫瘍(SCN) など Ⅲ 二次性腫瘍 (出血や壊死による嚢胞状変化) solid pseudopapillary tumor(SPT) など 72歳 男性 2011年 膵管の傍に膵嚢胞性病変指摘 2013年も変化なし MRCPにて膵嚢胞と診断 2013年 41歳 女性 膵尾部の膵嚢胞(+debris) 2009年 所見を認めず 2010年 膵尾部の嚢胞性病変を認めるdebrisを伴っている体位変換で移動 精査にて膵嚢胞 2011年、2012年,2013年 著変なし 2009年 2010年 2010年 膵嚢胞出現 debrisを伴っている 2010年 膵嚢胞出現 debrisを伴っている debris 2011年 変化なし 2011年 変化なし debrisは 体位変換で移動する 2011年 2013年 著変なし 膵嚢胞性病変 分類 Ⅰ 仮性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 なし) 外傷性のpancreatic pseudocyst など Ⅱ 真性嚢胞 (嚢胞内腔を被覆する上皮 あり) 1.非腫瘤性 2.腫瘤性 ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) ・粘液性嚢胞腫瘍(MCN) ・漿液性嚢胞腫瘍(SCN) など Ⅲ 二次性腫瘍 (出血や壊死による嚢胞状変化) solid pseudopapillary tumor(SPT) など 仮性嚢胞 52歳 痩身体女性 痩身体女性なので高周波プローブで鮮明に描出 先天性膵嚢胞 膵嚢胞性線維症 von Hippel-Lindau 症候群に見られる膵嚢胞 多発性嚢胞腎の部分症としての膵嚢胞 などのように遺伝的素因が明らかにされているものと,組織発生異常によると考えられるものが含まれる 膵嚢胞性病変の超音波画像と臨床病理 一二三倫郎Jpn J Med Ultrasonics 2009; 36(2): 147-163 先天性嚢胞 von Hipple-Lindau病 フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL) ◇定義(『フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病診療ガイドライン』 「フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau;VHL)病(あるいは症候群)は、 常染色体優性遺伝性の疾患で、複数の臓器に腫瘍性あるいは嚢胞性病変を多発する。 発症病変としては、 網膜血管腫、中枢神経系(小脳、延髄、脊髄)の血管芽腫、膵臓の神経内分泌腫瘍・嚢胞、 副腎褐色細胞腫、腎臓の癌・嚢胞、精巣上体嚢胞腺腫、さらに内耳リンパ嚢の腫瘍や 女性の子宮広間膜の嚢胞腺腫なども報告されている」 Von Hippel Lindau disease フォンヒッペル・リンドウ病 フォンヒッペル・リンドウ病は常染色体優性遺伝性疾患で,網膜や中枢神経の血管芽腫, 腎嚢胞,腎細胞癌,膵嚢胞,褐色細胞腫,精巣上体の乳頭嚢胞腺腫を生じる. 腎嚢胞は通常多発性,両側性でしばしば多発性の充実性腫瘍を合併する. 充実性腫瘍を伴わない場合は本症の腎臓はADPKDのそれに似ている VHL に見られた多発膵嚢胞 US: 膵体部から尾部にかけて無数の単房性嚢胞 が多発している. 造影CT: 膵体部,尾部に無数の嚢胞が認められる. MPR 画像では一層明瞭に描出されている. 巨大な右腎細胞癌も併発している 膵嚢胞性病変の超音波画像と臨床病理 一二三倫郎Jpn J Med Ultrasonics 2009; 36(2): 147-163 von Hipple-Lindau病