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牛肉ホモジネートの保存中におけるペプチド および遊離アミノ酸量について
牛肉ホモジネートの保存中におけるペプチド および遊離アミノ酸量について 長尾真理・三上正幸・関川三男・三浦弘之 帯 広 畜 産 大 学 , 生 物 資 源 化 学 科 , 帯 広 市 080 ( 1 9 9 4 .1 .1 8 受理) キーワード:牛肉,熟成,ペプチド,遊離アミノ酸 要 し,経目的にペプチドおよび遊離アミノ酸量がどの 約 ように変化するかについて,比較検討を行なった. 牛肉の胸骨下顎筋,腹鋸筋,胸最長筋,腰最長筋, 大腰筋,大腿二頭筋,半膜様筋の 7部位を, 材料および方法 と殺後 1.供試牛および筋肉部位 2日目に,クエン酸ーリン酸緩衝液でホモジナイズし, l: tlCでと殺後 21日目まで保存し,ペプチド量およ 6ヶ月齢生体 供試牛としてホルスタイン種去勢牛 1 び遊離アミノ酸量の変化について検討した.ペプチ 5 0kgを 5頭用いた.使用筋肉部位には,と殺 重約 6 ド量および遊離アミノ酸量は,筋肉部位により差が 後 2日目の胸骨下顎筋,腹鋸筋,胸最長筋,腰最長 O あり,本実験に用いた 7部位のうちでは,大腿二頭 筋,大腰筋,大腿二頭筋,半膜様筋の 7部位を用い 筋,腰最長筋のペプチドおよび遊離アミノ酸量が多 た く,また増加量も大きいことから,これらの筋肉中 のプロテアーゼ活性は高いものと推察される.これ 2 . 試料の調製 と殺後 2日目の各筋肉より,赤肉を採取し,筋間 に対して,胸骨下顎筋のペプチド量およびその増加 0gに 3倍量の緩衝 脂肪を除いた後,細切し,この 3 量は, 7部位中最も少なかった. 緒 液 ( 0 . 1M NaCl,0.05%NaN3 を含む 30mMクエ ン酸ーリン酸緩衝液, pH5 . 5 ) 9 0mlを加え,ホモジ = i o叩 i x s e rによ ナイザ一 MODELBM-3NISSEIb と殺後一定の熟成期間を経るこ , り,氷水中で約 2分間均質化した.これを 1士lCで とで軟らかくなり,食感が向上し,牛肉の場合,低 ,7 ,1 4,2 1日間保存し,各日数ごとに遠心 と殺後 2 温で 10-14日間は必要とされている.また,この熟 O O X g, 20分間, 分離して(l1, O 一般に畜肉とは, O lC )上澄液を東洋 O 成期間中のペプチド量および遊離アミノ酸量の増加 ろ紙 No.5Cでろ過した.このろ液に等量の 4%TCA は,食肉の呈味性向上に寄与していることも知られ 溶液を加え,撹持し ,3TCで 3 0分間保温し,再度東 ている.この様な熟成に伴うペプチド量や遊離アミ 洋ろ紙 No.5Cでろ過して,得られたろ液を 2%TCA ノ酸量の変化に関する研究は,数多くなされている 可溶性画分とし,ペプチドと遊離アミノ酸の測定に か 、 (GARDNER and STEWART , 1966;FIELD and 供試した. 3 . ペプチド量の測定 9 6 9;FIELD e ta , . l 1 9 7 1;藤巻・沖谷, CHANG,1 1 9 7 5 ),部位の異なる筋肉聞の比較についてはその報 法 (LOWRYe ta , . l1 9 5 1 ) ペプチドの定量は, Lowry 告は少ない.そこで本実験では,牛肉の代表的な 7部 により測定し,標準物質には,牛血清アルブミンを 位を,ホモジネートとしたものを熟成肉のモデルと 用いた. S t u d i e sonP e p t i d eandFreeAminoAcidContentso fBeefHomogenateduringStorage: MariNAGAO, Masayuki MIKAMI,Mituo SEKIKAWA and Hiroyuki MIURA,Laboratory o f Meat Science,Obihiro U n i v e r s i t yo fA g r i c u l t u r eandVeterinaryMedicine,O b i h i r o s h i0 8 0 Qd つム 北畜会報, 3 6 :2 9 3 2 1 9 9 4 長尾真理・三上正幸・関川三男・三浦弘之 園大腿二頭筋 5 0 0 図半膜様筋 図大腰筋 4 0 0 図胸最長筋 固腹鋸筋 qtuqL AUAU AUnu 国胸骨下顎筋 Y OHhE) 酬 Lホト (置制切C 口腰最長筋 1 0 0 。 2 7 1 4 2 1 と殺後の日数 図 1.保存中におけるペプチド量の変化, (数値は 5頭の平均値, T:標準誤差) 園大腿二頭筋 3 0 0 図半膜様筋 図大腰筋 図胸最長筋 区 制 切 o o 2 0 0 、¥ 切 E E 同 歯 ¥ に100 握 掛 。 2 2 1 1 4 7 と殺後の日数 図2 . 保存中における遊離アミノ酸総量の変化 (数値は 5頭の平均値, T:標準誤差) 4 . 遊離アミノ酸量の測定 結果および考察 日本分光鮒製のアミノ酸分析システム ( New8 0 0 0 1.ペプチド量の変化 シリーズ)で分析した.カラムは A, ApakLi+型 (6X と殺後 2 ,7 ,1 4,2 1日目のペプチド量の変化を図 1 0 0mm) を用い, OPA法により測定した. 1に示した.大腿二頭筋では, と殺後 2日目から生 nu 牛肉のペプチド・遊離アミノ酸量 5 0 園大腿二頭筋 圏半膜様筋 4 0 至 宝 園大腰筋 剖 切 図胸最長筋 口腰最長筋 330 圃腹鋸筋 l ぎ m 副2 0 国胸骨下顎筋 I J I 摺 醤 ト 1 0 。 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~, ~ 図 3. と殺後 2日目の遊離アミノ酸量 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ (数値は 5頭の平均値, T:標準誤差) 5 0 園大腿二頭筋 園半膜様筋 園大腰筋 図胸最長筋 口腰最長筋 E 叫 5 b E O 3 0 圃腹鋸筋 国胸骨下顎筋 l 管 m 園2 0 I J I 書 掛 ト 量 1 0 OAsp S e r ~ GIU ~ Gly ~ Val ~ .~ 図 4. と殺後 2 1日目の遊離アミノ酸量 Met Leu ~ Phe ~ His ~ ~ (数値は 5頭の平均値, T:標準誤差) 肉1 0 0g当たり 1 4 3 . 3mgと高い値を示し, 2 1日目に は,と殺後 2 ,7 ,1 4,2 1日目の全てにおいて,他の 4 3 . 6mgとなった.腰最長筋では,と殺後 2日 は , 4 部位よりも低い値で推移し,と殺後 2 1日目でも, 2 6 4 . 1 目に 1 1 0 . 7mgと 7部位中では中位の値であったが, mgと腰最長筋の約半分の値を示した.これまでの研 保存日数の経過に伴い急増し, と殺後 2 1日目には '究から,食肉中のペプチド成分を含めた非蛋白態窒 4 6 4 . 8mgと最も高い値を示した.一方,胸骨下顎筋 素量は,一般に熟成が進行するに伴い増加すると言 長尾真理・三上正幸・関川三男・三浦弘之 S U Z U K Ie ta , . l1 9 6 7;藤巻・沖谷, 1 9 7 5; われている ( l uのみでは食肉のうま味は発現せず, る.しかし, G , . l1 9 8 8 ) . 本実験では,各部位とも, NISHIMURAe ta Ala,Glyをはじめとする他の遊離アミノ酸による相 保存日数の経過と共に,ペプチド量は増加する傾向 乗作用が重要で、あり,さらに呈味性ペプチドの役割 が認められ,特に腰最長筋,大腿二頭筋における増 も大きい.他の遊離アミノ酸は,保存日数の経過に 加が著しかった.この増加したペプチドは筋肉組織 伴い増加傾向を示した.これらペプチドおよび遊離 に内在するプロテアーゼの作用により生成される. アミノ酸量に差があるのは内因性プロテアーゼ活性 KOOHMARAIEe tal .( 1 9 8 8 ) はと殺後 4 5分で Ca2+ に起因しているものと思われる.筋肉の部位によっ て,内因性プロテアーゼ活性に差が生じる原因につ 依存性のタンパク質分解酵素活性は胸最長筋が最も 高 <,次いで大腿二頭筋,大腰筋の順であったと報 いては明らかではないが,筋肉の運動性や運動量, 告している.本実験の部位間におけるペプチド増加 筋肉型などの要因が考えられる. 量の差もこれらプロテアーゼ活性の違いに起因して 文 献 いるものと考えられる. F I E L D,R .A . andY . CHAr 河G ,( 1 9 6 9 )F r e eamino a c i d si nb o v i n em u s c l e sandt h e i rr e l a t i o n s h i pt o 2 . 遊離アミノ酸量の変化 遊離アミノ酸量の変化を図 2に示した.胸骨下顎 .FoodS c i .,3 4 :3 2 9 3 31 . t e n d e r n e s s .J F I E L D,R .A .,M.L .R I L E YandY .CHANG,( 1 9 7 1 ) F r e eaminoa c i dchangei nd i f f e r e n tagedb o v i n e m u s c l e sandt h e i rr e l a t i o n s h i pt os h e a rv a l u e s . 0 0g当たり 1 5 6 . 8mg 筋では,と殺後 2日目:から生肉 1 と 7部位中最も高い値を示し, 2 1日目においても高 く , 2 1 0 . 7mgとなった.一方,と殺後 2日目で 8 3 . 3 mgと最も低い値を示した腰最長筋は,保存日数の経 1日目には 196.8mgと,他の部位 過に伴い急増し, 2 J .FoodS c i .,3 6 :6 1 1 6 1 2 . 藤巻正生・沖谷明紘. ( 1 9 7 5 )熟成中のプロテオリシ とほぼ同様の高い値を示した.牛肉の熟成に伴う遊 スと肉の風味. 日食工誌, 2 2 :5 5 4 5 6 5 . 離アミノ酸量の変化については,すでに多くの報告 G .A .andD .J .STEWART,( 1 9 6 6 )Change GARDNER, i nf r e eaminoando t h e rn i t r o g e ncompoundsi n がある ( GARDNERandSTEWART,1 9 6 6 ;F I E L Dand CHANG,1 9 6 9 ;F I E L De ta , . l1 9 7 1 ;NISHIMURAe ta , . l 1 9 8 8 ).いずれの報告においても,熟成により多くの .S c i .FoodA g r i c ., 1 7 :4 9 1 s t o r e db e e fm u s c l e .J 4 9 6 . LOWRY,O .H.,N .J .ROSEBROUGH,A .L .FARRand . RANDALL, ( 1 9 5 1 )P r o t e i n measurement R .J 遊離アミノ酸の増加を認めている.本実験において も,各部位において,遊離アミノ酸は保存日数の経 過に伴い増加傾向を示した.特に,大腿二頭筋と腰 最長筋における増加量が多く,ペプチド量の増加傾 w i t ht h ef o l i np h e n o lr e a g e n t .J .B i ol .C hem., 向とほぼ一致していた.また,遊離アミノ酸はアミ 1 9 3 :2 6 5 2 7 5 . K O O H M A R A I E ,M.,S .C .S E I D E M A N,J .E .S C H O L L M E Y E R, T .R .DUTSONandA.S .BABIKER,( 1 9 8 8 )F a c t o r s ノペプチダーゼの作用により生成きれ,各部位聞に おける各遊離アミノ酸の増加量の差は,このアミノ a s s o s i a t e dw i t ht h et e n d e r n e s so ft h r e eb o v i n e .F o o d .S c i .,5 3 :4 0 7 4 1 0 . m u s c l e s .J .RHUE ,A .O K I T A N IandH. NISHIMURA,T.,M.R KATO,( 1 9 8 8 ) Componentsc o n t r i b u t i n gt ot h e improvement o f meat t a s t ed u r i n gs t o r a g e . ペプチダーゼ活性の違いによるものであろう. と殺後 2日目および 2 1日目における各遊離アミノ 酸の変化を図 3 ,4に示した.全体的に A laが高い値 lu ,Leuの順で低くなった. G luは を示し,次いで G 0 0g当たり 胸骨下顎筋において特異的に高<,生肉 1 .C hem.,5 2 :2 3 2 3 2 3 3 0 . A g r i c .B i ol .,M.NAKAZATOandM.F U J I M A K I,( 1 9 6 7 ) S U Z U K I,A S u t d i e sp r o t e o l y s i si ns t o r e dm u s c l e .p a r t1. 4 4 . 1mgと他の部位のほぽ 2倍の値を示し, 2 1日目 lu量は,他 においても高い値を維持した.しかし G の部位では保存日数の経過に伴い増加したのに対し, luが高い であった.この様に胸骨下顎筋において G Changesi nn o n p r o t e i nn i t r o g e n o u scompounds . o fr a b b i tm u s c l ed u r i n gs t o r a g e .A g r i c .B i ol luが牛 値を示した原因については明らかではない.G Chem.,3 1 :9 5 3 9 5 7 . 胸骨下顎筋ではあまり増加せず, 2日目とほぼ同じ値 肉のうま味に強く影響していることを考えると,胸 骨下顎筋は熟成早期の段階でうま味を伴うことにな 司、U ワ ム