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ISSN 1348-5350
i〒212-8554
i神奈川県川崎市幸区大宮町1310
iミューザ川崎セントラルタワー
ihttp://www.nedo.go.jp
NEDO 海外レポート
2005.6.1
BIWEEKLY
Ⅰ.特集
欧州の水素エネルギー開発に関する動向調査
(3/3)
(EU)
米国エネルギー法案の現状と行方(米国)
インドネシアの京都議定書と CDM をめぐる動き(第 2 報)(インドネシア)
956
1
9
Ⅱ.エネルギー一般
北米、EU および日本におけるエネルギー消費の比較(国際)
15
0
Ⅲ.環境
カナダ政府の新予算と環境対策(カナダ)
気候変動問題に対する市民の低い理解度(米国)
21
原子レベルの「指紋」で気候変動の実態を観測する新手法(豪州)
23
19
Ⅳ.産業技術
ロボットによる初めての複雑な肝臓手術(米国)
ヴァーチャル・ヴォイス(米国)
環境サンプルの指紋採取新技術(米国)
ミラノのサン・ラッファエーレ病院でトモセラピー治療を開始(イタリア)
ナノテクを利用した画期的デジタルメモリデバイス開発(米国)
10 カラットのダイヤモンドを作り出す新技術(米国)
新たな高解像度の地上望遠鏡の開発(米国)
25
27
31
33
35
37
39
Ⅵ.ニュースフラッシュ
米国―今週の動き: ⅰ新エネ・省エネ ⅱ環境 ⅲ産業技術 ⅳ議会・その他
41
今週の Web Headlines から:ⅰライフサイエンス ⅱ情報技術 ⅲ環境 ⅳ ナノテクノロジー ⅴエネルギー ⅵ政策 44
URL:http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/
《本誌の一層の充実のため、掲載ご希望のテーマ、ご意見、ご要望など下記宛お寄せ下さい。》
NEDO 技術開発機構 情報・システム部
E-mail:[email protected]
Tel.044-520-5150 Fax.044-520-5155
NEDO 技術開発機構は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の新しい略称です。
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
< 新刊目次のメール配信をご希望の方は、http://www.infoc.nedo.go.jp/nedomail/ >
海外レポート956号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/956/
【特集】政策
米国エネルギー法案の現状と行方
NEDO ワシントン事務所
松山貴代子
2005.5.25
ブッシュ大統領が、チェイニー副大統領率いるエネルギータスクフォースの作成した「国家
エネルギー政策(National Energy Policy)
」を発表したのは 2001 年 5 月 17 日。米国の上院
と下院は 2001 年 6 月以来 4 年近くの間、包括エネルギー法案を審議してきたにも拘らず、ガ
ソリン添加物 MTBE(Methyl Tertiary Butyl Ethel)の製造業者を製造物責任法違反の訴訟
から守る条項や北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge:ANWR)の一部
を石油・天然ガス開発に解禁する条項等がネックとなり、膠着状態を打開できぬままに今日に
及んでいる。
米国では、ガソリンの全米平均価格が年初(2005 年 1 月 3 日発表)の 1 ガロンあたり 1.778
ドルからじりじりと上昇し、4 月 11 日には過去最高の 2.280 ドルを記録した。その後の 5 週
間は連続して下降傾向にあるものの、5 月 16 日発表の全米平均価格は 2.163 ドルで、昨年の
同時期よりも約 10 セント高となっている(注 1)。こうしたガソリン価格の高騰、および、その経
済的影響に対する懸念が高まっている今こそが、包括エネルギー法案可決を米国議会に促す最
高の機会であると判断したのか、ブッシュ政権は今年 2 月 2 日の大統領年頭教書演説(注 2)を皮
切りに、記者会見や会合(注 3)の場を利用してエネルギー政策成立の必要性を主張している。
下院エネルギー・商業委員会の Joe Barton 委員長(共和党、テキサス州)は当初、エネル
ギー法案よりもクリーンエア法改定に関心を抱き、エネルギー法案に関しては、上院議会で大
きな進展がない限り、今会期にエネルギー法案を審議する予定はないと語ったと伝えられてい
たが、エネルギー業界ロビイスト等の精力的なロビー活動、ブッシュ大統領の発言、および、
データ出典は、Energy Information Administration の”U.S. Retail Gasoline Historical Prices”
演説の大半は、選挙を終えて新フェーズに入ったイラク戦争と、ブッシュ政権第二期の最優先事
項である社会保障制度改革に割かれたものの、大統領は米国の経済成長施策に触れ、その一策として、
経済成長の持続には手頃な価格の信頼性の高いエネルギー供給が必要であると主張。米国議会に、4 年
近くの審議行詰まりに終止符を打ち、国のエネルギー供給を安定させる法案を可決するように要請した。
(注 3 )
特筆に価するのは、今年 4 月 20 日に首都ワシントンで開催されたヒスパニック商工会の会合に
おけるスピーチと、その一週間後の 4 月 27 日に中小企業庁が主催した会合でのスピーチ。前者の会合
でブッシュ大統領は、議会に対して派閥闘争を乗り越え、今年 8 月までに包括エネルギー法案を可決す
るよう呼びかけ、後者の会合では、テクノロジーこそが我が国のエネルギー自立への切符であると発言
し、新たなエネルギー・イニシアティブとして①原子力発電所新設推進の為に連邦政府リスク保険確立;
②閉鎖軍事基地に石油精製所新設;③連邦エネルギー規制委員会(FERC)に液化天然ガスの新ターミ
ナル立地場所決定権限付与;④クリーンディーゼル車への税額控除拡大;⑤クリーンコール技術、原子
力発電等の国際協力拡大、を提案している。
(注 1 )
(注 2 )
1
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
Dennis Hastert 下院議長(共和党、イリノイ州)の圧力(注 4)等が功を奏し、下院本会議は 4 月
21 日に「2005 年エネルギー政策法案(Energy Policy Act of 2005:下院第 6 号議案)
」を可
決させている。
一方、上院の包括エネルギー法案を超党派で草稿すると約束していた上院エネルギー・天然
資源委員会の Pete Domenici 委員長(共和党、ニューメキシコ州)は、5 月 13 日に委員会審
議のたたき台となるエネルギー法案を公開。上院エネルギー・天然資源委員会では、5 月 17
日からエネルギー法案のマークアップを開始した。ここでは、第 109 議会の第 1 会期におけ
る包括エネルギー法案審議の現状と行方を概説する。
1.下院議会の現状
米国下院は 2005 年 4 月 20 日に、
「2005 年エネルギー政策法案(下院第 6 号議案)
」の下院
本会議審議を開始した。同法案の審議は比較的順調に進んでいたが、審議 2 日目の 4 月 21 日
に Lois Capps 下院議員(民主党、カリフォルニア州)が MTBE 製造業者の免責条項(注 5)を下
院第 6 号議案から削除するという動議を提出し、この審議が認められたことで、下院本会議は
一時立ち往生となった。共和党指導層は、MTBE 地下水汚染問題を地元に抱える共和党議員
等に、エネルギー法案が上下両院協議会に進んだ段階で、MTBE 浄化・修復プログラムを検
討するタクスフォースを両院協議会に設置することを約束。これにより、共和党議員の背反を
かろうじて食い止め、Capps 議員の動議は 213(注 6)対 219 という僅差で阻止された。
下院本会議におけるエネルギー法案審議では 30 本の修正法案が審議され、19 本が可決、11
本が否決されている。可決されたのは、エネルギー省(DOE)次官補職 2 席新設条項をエネ
ルギー法案から削除するという Tom Davis 下院議員(共和党、バージニア州)と Henry
Waxman 下院議員
(民主党、
カリフォルニア州)
の共同提案した修正法案、
及び Nancy Johnson
下院議員(共和党、コネチカット州)が提案した、環境保護庁(EPA)の燃費テスト試験に現
在の運転パターンやコンディションを反映させ、消費者へのより正確な燃費情報提供を義務付
けるという修正法案、等。一方、①ANWR の石油・天然ガス掘削解禁条項をエネルギー法案
から排除するという Edward Markey 下院議員(民主党、マサチューセッツ州)の修正法案;
②下院科学委員会 Sherwood Boehlert 委員長(共和党、ニューヨーク州)が提案した、1 ガロ
ンあたりの自動車燃費基準を 10 年間で現在の 25 マイルから 33 マイルまで引き上げる修正法
Hastert 下院議長は、2003 年に上下両院協議会が合意した「2003 年エネルギー政策法案」と同
内容の包括エネルギー法案をファストトラックで可決するよう圧力をかけていた。
(注 5 )
Capps 下院議員が削除を求めたエネルギー法案の条項は、「(前略)自動車用燃料として使用さ
れた又は使用される予定の、クリーンエア法の第 211 条(o)(1)に定められた再生可能燃料や MTBE、
及び、こうした再生可能燃料や MTBE を含む自動車用燃料は、環境保護庁長官がクリーンエア法第 211
条に基づいて課した規制や禁止条例に違反するものでない限り、こうした再生可能燃料や MTBE である
という事実、又は、それを含むという事実によって、欠陥製品であるとみなされることはない。(中略)
同条項は 2003 年 9 月 5 日に発効し、発効日またはそれ以降に提出された全ての訴訟に関して適用され
る。」というもの。
(注 6 )
MTBE 免責条項の削除に賛成した下院議員の内訳は、民主党議員 187 名、共和党議員 25 名。
(注 4 )
2
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NO.956, 2005. 6. 1
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案;③Waxman 下院議員が提案した、米国内の日間石油需要を 2013 年までに 100 万バレル
削減する為に必要な自主的活動や規制他の施策をとるよう行政府に義務付ける修正法案、等は
否決された。
下院本会議は 4 月 21 日に、全ての修正法案の審議・採決を終了。
「2005 年エネルギー政策
法案(下院第 6 号議案)
」の採決へと移り、同法案を 249(内訳は共和党 208 名+民主党 41 名)
対 183(共和党 22 名+民主党 160 名+無所属 1 名)で可決した。
<下院が可決した 2005 年エネルギー政策法案の概要>
(1) 省エネルギー
・2015 年までに連邦政府ビルのエネルギー消費 20%削減を義務付け、公共ビル対象の省
エネルギー計画に助成金を提供し、連邦政府所有車の燃費基準を強化する。
・Energy Star 計画を拡大する。
・夏時間(注 7)を 2 ヶ月延長する。
(2) 再生可能エネルギー
・ソーラー、風力、地熱、バイオマスに生産税控除を提供する再生可能エネルギー生産イ
ンセンティブを再認可し、インセンティブ対象を拡大して埋立地ガスも含める。
・連邦政府に再生可能エネルギーの利用拡大(2013 年の目標値 7.5%以上)を指示する。
(3) 石油および天然ガス
・戦略石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)を現在の 7 億バレルから 10 億バレルに拡
大することを認可する。
・ANWR の一部を石油・天然ガスの掘削に解禁する。
・LNG ターミナルの立地決定権限を連邦エネルギー規制委員会(FERC)に付与する。
(4) クリーンコール・テクノロジー
・先進石炭発電技術の実証プロジェクトを支援するクリーンコール発電イニシアティブ
(Clean Coal Power Initiative) に実施予算として 18 億ドルを提供する。
・5 件の石油コークスガス化プロジェクトに対する債務保証を認可する。
(5) 原子力
・原子力事故時の賠償を規定したプライス-アンダーソン法を 20 年間更新する。
・原子力発電所退役基金の税規定を改定する。
・DOE の実証用水素コジェネ原子炉への予算を認可する。
(6) 自動車および燃料
・在来型内熱機関をハイブリッド車や電気自動車へ転換する Hybrid Retrofit and Electric
Conversion 計画を開始する。
・州政府・地方政府の代替燃料車・燃料電池車・ハイブリッド車他調達にグラントを提供
する、先進自動車計画に 2 億ドルを認可する。
夏時間は、現行法では 4 月の第 1 日曜日から 10 月の最終土曜日まで。下院法案の条項は、これ
を 3 月の第 1 日曜日から 11 月の最終土曜日までに延長することになる。
(注 7 )
3
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NO.956, 2005. 6. 1
・水素燃料電池技術を実証するため、水素燃料電池バスや水素燃料電池スクールバス計画
を開始する。
(7) 水素
・2020 年までに水素自動車の実用化を目指すと同時に、水素燃料の安全供給に必要なイン
フラを整備する新プログラムを開始する。同プログラムに 5 会計年度で 20 億ドル強の予
算を認可する。
(8) エタノールおよび自動車用燃料
・再生可能燃料使用基準(Renewable Fuels Standard)を 2010 年までに 50 億ガロンと
設定する。
・MTBE の自動車用燃料添加物利用を 2014 年 12 月 31 日以降禁止する。
・MTBE の段階的廃止に伴ない、トウモロコシを原料とするエタノール燃料の使用を 2012
年までに 20%拡大する。
・MTBE の製造業者を製造物責任法から免責する。
(9) 電力関連
・既存の公益事業持株会社法(PUHCA)義務要件を撤回し、代わりに連邦政府や規制担
当者による帳簿や記録の検査を実施することにより、電力部門への投資を促進する。
・オープンアクセスを提供することにより、送電網の信頼性を改善する。
・FERC にインセンティブ・レートの規定策定を指示することによって、送電線のキャパ
シティや効率改善への投資を推進する。
・電力会社の合併に関する FERC の権限を拡大する。
(10) 優遇税制
・石炭、石油、天然ガス、原子力産業を推進するため、約 80 億ドルを認める。
・MTBE の段階的廃止に伴ない、MTBE 製造業者や石油精製業者への補償金として向こ
う 8 年間で 20 億ドルを提供する。
・メキシコ湾岸深海における石油・天然ガス掘削研究を支援するため、石油・天然ガス会
社に 10 年間で 20 億ドルのロイヤリティ免除を認める。
2.上院議会の現状
上院エネルギー・天然資源委員会(注 8)の Pete Domenici 委員長は 2005 年 5 月 13 日に、委員
会で翌週検討する 9 条項を委員会のウェブで発表した。Domenici 委員長が、共和党委員と民
主党委員が概ねで合意している、比較的問題の少ない条項から順次片付けていくという戦略を
採用したこともあり、上院エネルギー・天然資源委員会は 5 月 17 日から 19 日までの 3 日間
のマークアップで、一部の文言(注 9)を除き、9 条項の殆どを承認している。同委員会では引き
続き、5 月 24 日から 26 日までマークアップ会合を開催し、残りの 4 条項(石油と天然ガス、
原子力、再生可能エネルギー、政府支援の研究報告)を検討する予定であったが、ブッシュ大
(注 8 )
(注 9 )
同委員会のメンバー構成は、共和党議員 12 名、民主党議員 10 名。
PUHCA 義務要件を撤回する代わりに、電力事業合併に関する FERC の権限を強化するという文
言。
4
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統領が連邦訴訟院判事に指名しているテキサス州最高裁 Priscilla Owen 裁判官の承認審議・
採決が上院本会議にかけられたため、5 日 24 日の委員会マークアップ会合は延期となった。
上院エネルギー・天然資源委員会は 5 月 25 日にエネルギー法案のマークアップを再開。現在
までに、①2012 年までに年間 80 億ガロンのエタノールをガソリンに混合するよう精製業者に
義務付ける条項;②現行の水力発電ラインセンシング手続きを強化し、州政府・アメリカ先住
民族・環境保護団体に同手続き過程への参加権限を付与する条項;③次世代原子力発電 R&D
に対して 10 年間で 12 億 5,000 万ドルを認可する条項を承認している。
<上院エネルギー・天然資源委員会が先週承認した条項の概要>
マークアップ第一日目(5 月 17 日)
(1) インディアン・エネルギー
・DOE に、アメリカ先住民居住区でのエネルギー資源開発努力を調整する事務局を新設
する。
・省エネ計画、設備調達、送電線や送電施設建設の為の競争グラントに 2006 年度から 11
年間で 2 億ドルを認可する。
(2) エネルギー省のマネジメント
・DOE に、エネルギー長官の科学技術アドバイザー役をはたす、エネルギー・科学担当
次官職を新設する。
・科学局長を科学担当次官補に格上げするほか、原子力問題担当の次官補職を新設する。
(3) 人事およびトレーニング
・ポスドク向けフェローシップ計画に 2006 年度からの 3 年間で 1 億 2,000 万ドルを認可
する。
マークアップ第二日目(5 月 18 日)
(4) 石炭
・大統領のクリーンコール発電イニシアティブに 2006 年度からの 9 年間で 18 億ドルを認
可する。
・認可予算の 80%を石炭ガス化技術プロジェクトに充て、残り 20%で、その他クリーンコ
ール・プロジェクトを支援する。
(5) 自動車および燃料
・連邦政府が調達・所有する dual-fuel 車に代替燃料の使用を可能な限り義務付ける。
・燃料電池自動車調達を奨励する連邦-州政府共同プログラムの設置に 2006 年度からの 3
年間で 1 億 500 万ドルを認可する。
・連邦政府による定置型および移動体用の燃料電池調達に、2006 年度から 5 年間で 3 億
4,500 万ドルを認可する。
(6) 水素
・水素供給技術の研究開発(R&D)に 2006 年度からの 5 年間で 16 億ドルを認可する。
・燃料電池 R&D に同上の 5 会計年度で 8 億 6,000 万ドルを認可する。
5
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NO.956, 2005. 6. 1
・水素供給および燃料電池の実証プログラムに同上の 5 会計年度で 13 億ドルを認可する。
・燃料電池自動車や水素エネルギーシステム、および、定置型燃料電池に関連する安全基
準のタイムリーな開発を支援する。
(7) 研究開発
・DOE 科学部に 2006 年度からの 3 年間で 100 億ドルを認可する。内、11 億ドルは核融
合エネルギーに、2 億 6,500 万ドルは核融合実験炉の建設に充てられる。
・バイオエネルギーや高密度太陽といった再生可能資源 R&D に同上の 3 会計年度で 20
億ドルを認可する。
・原子力 R&D に同上の 3 会計年度で 12 億ドルを認可する。
マークアップ第三日目(5 月 19 日)
(8) 電力事業
・エネルギー市場操作の刑罰を現在の 1 違反あたり 5,000 ドルから 100 万ドルに引き上げ
る。
・送電中断を防ぐため、既存の自主的な電気信頼性規制に代わって、発電所が運営される
べき方法を明記した義務的な新規定を採用する。
(9) エネルギー効率改善
・Energy Star 製品購入者にリベートを提供する州政府のエネルギー使用合理化家電製品
プログラムに、2006 年度からの 5 年間で 2 億 5,000 万ドルを認可する。
・DOE に対し、シーリングファン(天上扇)や冷蔵庫、空調機や小型ヒーター、信号や
自動販売機といった様々な家電製品や機器のエネルギー効率基準をアップデートするよ
う義務付ける。
・大統領に、2,500 万バレルと推定されている 2015 年の日間石油需要を 100 万バレル削
減する方策を策定・実施するよう義務付ける。
3.米国エネルギー法案審議の行方
5 月 25 日から再開された上院エネルギー・天然資源委員会におけるエネルギー法案のマー
クアップ会合では、公益事業持株会社法(PUHCA)を撤回する条項、および、石油・天然ガ
ス海洋掘削に関する州政府の権限を拡大する条項(注 10)等が争点になるものと見られている。し
かしながら、PUHCA に関しては、委員会の両党指導層が昨日、その廃止条項で合意に達した
というニュース(注 11)が伝えられており、委員会が今週中にエネルギー法案を可決する可能性は
かなり高くなったと言えよう。
(注 10 )
産業界は、上院のエネルギー法案に石油・天然ガス海洋掘削モラトリアム(一時中止)を解除す
る条項が盛り込まれることを期待していた。しかしながら、海洋掘削に伴う環境問題に対する国民の懸
念が強いことを考慮し、Lamar Alexander(共和党、テネシー州)、Tim Johnson(民主党、サウスダ
コタ修)、Mary Landrieu(民主党、ルイジアナ州)の 3 上院議員は、モラトリアム解除を求める代わ
りに、海洋掘削プロジェクトに対する州政府権限拡大という条項の追加を試みている。
(注 11 )
CQ Today, “Domenici Says He’s Reached a Deal with Democrats on Electricity Merger
Rules” May 24, 2005
6
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上院エネルギー・天然資源委員会がエネルギー政策法案のマークアップを終了し、これを可
決すると、同法案は上院本会議へと上程される。Domenici 委員長は、マークアップが予定通
り今週中に終了すれば、6 月中旬には上院本会議での審議を開始することが可能であると発言
している。上院本会議における審議では、委員会のエネルギー法案には盛り込まれていない、
①自動車燃費の修正法案(注 12);②国家再生可能エネルギー使用基準(national renewable
portfolio standard)(注 13);③気候変動関連条項(注 14);④海上 LNG ターミナルの立地・建設決
定に関して州政府と FERC に同等の権限を与える条項、等が提出されるものと予想されてい
る。上院本会議ではまた、エタノール条項が争点となる可能性が浮上している。エタノールに
関しては、上院環境・公共事業委員会が年間 60 億ガロン、そして、上院エネルギー・天然資
源委員会が年間 80 億ガロンの使用を義務付ける条項を個別に承認している。環境・公共事業
委員会の James Inhofe 委員長(共和党、オクラホマ州)は、エネルギー・天然資源委員会に
よるエタノール条項の承認は管轄権の侵害であると批判し、これによって、上院本会議におけ
るエネルギー法案の審議は大幅に遅れる可能性があると警告している。
上院でエネルギー法案が可決されると、上院案と下院案の相違点をすり合わせるため、上下
両院協議会が招聘されることになる。上下両院協議会の議長は、上院と下院が交互に務めるこ
とが慣例となっている。2003 年の上下両院協議会では上院の Domenici 委員長が議長を務め
ているので、この慣例に従うと、エネルギー政策法案に関する上下両院協議会が今年開かれた
場合には、下院の Joe Barton 委員長が議長を務めるものと予想される。
上下両院協議会で特に論争を呼ぶことになるであろう条項は、ガソリン添加物 MTBE の製
造業者を製造物責任法から免責する条項と、ANWR の一部を石油・天然ガスの掘削に解禁す
る条項の二つ(注 15)である。下院案に盛り込まれた MTBE 免責条項には、Tom DeLay 下院院内
総務(共和党、テキサス州)という強力な支持者がいるものの、上院には十分な支持票が存在
しないため、同条項は意図的に上院案から外されている。また、下院においても、MTBE の
地下水汚染問題を抱え、同条項を不満とする下院議員が数十名いるため、同条項が争点となる
Dianne Feinstein 上院議員(民主党、カリフォルニア州)の提案した、重量 1 万ポンド以下の
車両(SUV や軽トラック)に乗用車と同様の燃費基準(1 ガロン 27.5 マイル)を義務付けるという修
正法案は、委員会で 7 対 15 で否決されたものの、一部の民主党議員等が何らかの燃費修正法案をエネ
ルギー法案に添付することを画策していると伝えられている。
(注 13 )
上院エネルギー・天然資源委員会が現在審議中の再生可能エネルギー条項には、連邦政府の再生
可能エネルギー使用目標(2007~2009 年で最低 3%、2012 年までに 5%まで拡大、2013 年以降は 7.5%)
が盛り込まれているものの、国家規模での再生可能エネルギー使用基準は含まれていない。
(注 14 )
Bingaman 上院議員は、全米エネルギー政策委員会が昨年 12 月に発表した『エネルギーの膠着
状態の打開:アメリカのエネルギー問題に対処する超党派戦略( Ending the Energy Stalemate)』で
提案された温室効果ガスの cap-and-trade 制度を、修正案としてエネルギー法案に添付することを検討
している。
(注 15 )
この他には、上院案に含まれているが、下院案にはない、①エネルギー省の次官職と次官補職を
追加設置する条項;②日間石油需要を 100 万バレル削減する方策の策定・実施を大統領に義務付ける条
項等があげられる。
(注 12 )
7
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
ことはほぼ間違いないものと見られている。
一方、下院のエネルギー法案に盛り込まれている ANWR 解禁条項は、上院ではエネルギー
法案から切り離されて、2006 年予算決議案に添付された。上院が少数党による議事妨害(フ
ィリバスター)を破るためには 60 票が必要である。ANWR 条項が上院のエネルギー法案に
盛り込まれた場合、民主党による議事妨害は必至であるが、これを破る必要票が存在しないこ
とを認識していた Domenici エネルギー・天然資源委員長は、ANWR からロイヤリティ収入
があがることに着目し、単純多数決で採決される予算決議案に同条項を添付する手段に出たわ
けである。従って、上下両院協議会では、下院の協議会代表者と ANWR 条項可決の難しさを
熟知している上院側代表者が如何に意見を調整するのかが、もう一つの焦点となろう。
ブッシュ大統領は包括エネルギー法案を 8 月までに可決するよう議会に要請している。上院
と下院が数々ある相違点をすり合わせ、夏期休会(8 月 1 日から 9 月 5 日)前にエネルギー法
案を可決することが出来るのかどうか、注目されるところである。
<追記>
上院エネルギー・天然資源委員会は 5 月 26 日にエネルギー法案の全条項の審議・調整を終
了し、これを 21 対 1 で可決した。
以上
8
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【特集】環境
インドネシアの京都議定書と CDM をめぐる動き (第 2 報)
NEDO 技術開発機構 ジャカルタ事務所
山田史子
インドネシア CDM(クリーン開発メカニズム)については、昨秋 10 月と 11 月に
「インドネシアの京都議定書と CDM をめぐる動き」として、NEDO 海外レポートに
報告した (注 1)。
本稿では、京都議定書発効前から 2005 年 5 月中旬までのインドネシア CDM の動
向を概観するとともに、今般 NEDO ジャカルタ事務所が関係団体の協力を得て編纂
した「インドネシア CDM 調査報告書」(注 2) の概要を紹介する。
1.インドネシアの京都議定書批准
上記レポートで紹介済のインドネシアの京都議定書批准の経緯に関し、お詫びと訂
正を兼ね後日談として簡単に報告する。最近になり「京都議定書批准法」(Republic of
Indonesia Law no.17/2004)(注 3) のコピーが関係者に配布され、本法が国会本会議で
同法案が可決された 1 ヵ月後の 2004 年 7 月 28 日に発効していたという事実が明らか
になった。当時、インドネシアの国政選挙による政府関係機関内部の再編とその影響
による政治的空白が生じていたため、「批准法」が発効していた事実は関係者の知る由
もなく、ごく最近までメガワティ前大統領が交代を前にした 2004 年 10 月 17 日に署
名したと考えられていた。
いずれにしても、COP10 直前の“駆け込み”ではあったものの、2004 年 12 月 3
日インドネシアの京都議定書批准が UNFCCC 事務局に正式登録される運びとなった。
2.インドネシアの CDM 審査体制
インドネシア環境省関係者に確認した(注 4)ところによると、環境大臣令として発布
される見込の DNA(注 5) 法 (注 6) 案は、2005 年 5 月現在インドネシア政府の省庁一部
再編および高官レベルを含む大異動の影響で、未だ大臣の署名待ちである。6 月 5 日
の世界環境デーの機を捉え署名、ということになるかもしれない、との希望的観測も
省内に流れている。DNA の機能自体には冒頭レポートで紹介済の内容から大きな変
更はないもようである。ただ、案を詰める段階ではひとつの省であった工業省と商業
省がふたつに分かれたため、CDM 国家委員会および技術チームのメンバーシップに
関し、どのように対応するかを検討中で、一案としては、両方の省にそれぞれにメン
バーシップを認めることが考えられる、とのことであった。
以下に承認見込の最終案における CDM 国家委員会および同委員会の下に設置され
る技術チームの組織体制を示す (注 7)。
9
NO.956, 2005. 6. 1
NEDO海外レポート
委員長 環境省事務次官
委員
委員
委員
委員
委員/事務局兼務
環境省環境保護担当次官
委員
委員
委員
委員
図 1:CDM 国家委員会の構成
CDM 国家委員会は、委員長および事務局兼務各 1 名に以下の 8 名を加えた 10 名か
ら構成される。
(1) エネルギー・鉱物資源省地域・環境担当大臣顧問/筆頭大臣顧問
(2) 森林省森林保護担当大臣顧問
(3) 商工業省商工業研究開発庁長官
(4) 外務省多国間経済・財務・開発総局長
(5) 内務省地域開発総局長
(6) 運輸省環境・エネルギー担当大臣顧問
(7) 農業省農業研究開発庁長官
(8) 国家開発企画庁天然資源・環境管理担当次官
委員長
環境省大気・気候変動担当次官
委員
委員
委員
委員
委員
委員/事務局兼務
エネルギー・鉱物資源省
鉱物資源・石炭技術局長
委員
委員
委員
委員
図 2:技術チーム (注 8) の構成
また、技術チームの委員は委員長および事務局兼務各 1 名に以下の 10 名を加えた
12 名である。
(1) 森林省バイオテクノロジー・森林植物資源研究所長
(2) 森林省環境サービス利用部長商工業省商工業研究開発庁地域人的資源・環境研究
所長
(3) 外務省国連開発・経済・環境局長
10
委員
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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(4) 内務省空間計画・環境局長
(5) 運輸省(職位不明)
(6) 農業省農業水文・農業気候研究所長
(7) 農業省畜産研究開発庁獣医学研究所長
(8) 農業省土壌・農業気候研究開発庁土壌研究所長
(9) 国家開発企画庁天然資源・環境管理局長
(10)WWFインドネシア (注 9)
3.インドネシアの CDM に関する最近の動き
3.1
二国間 CER(注 10) 購入協定(Bilateral CER Purchase Agreement/BCPA)
オランダ政府は、インドネシア政府との間で 1 年以上にわたり CER 購入協定の締
結に向け交渉を進めてきた。拘束力の強い契約条件とより多くの CER 獲得を狙うオ
ランダと拘束をきらいつつも CDM プロジェクト推進にあたり当面の障壁となり得る
資金面の不安解決の手段として協定締結の方向で検討を進めるインドネシア両政府の
思惑が絡みあい、関係者にとっても予想以上の長期交渉となった。当初は 1 千万トン
CO2 とも言われていた契約量は、2004 年 10 月には 500 万トン CO2 にトーンダウン(注
11 )。その後も関係するインドネシア環境省、外務省において検討が続き、2005
年に入
ってオランダ経済大臣がインドネシアを訪問した際に署名が行われるとの観測が流れ
(注 12 )
たが、政府内部での合意に時間がかかり、オランダとの間で BCPA が最終的に
締結されたのは 2 月下旬ヨハネスブルクでの環境大臣会合においてであり、契約購入
量は 200 万トン CO2 となった。
オランダ政府との BCPA の内容については公式に発表されていないが、環境省関係
者によれば上述の契約購入量はインドネシア政府にとり第 1 約束期間中における最低
ラインの達成義務であり、一方オランダ政府は CDM プロジェクトの登録審査および
取引コスト全般をカバーするとともに、当該案件が CDM とならなかった場合インド
ネシア政府に対するペナルティはない。しかしながら、プロジェクト自体の実施コス
ト手当およびその投資者ならびにインドネシア側に対する技術移転が可能な附属書I
国からのパートナー探しはプロジェクト実施者に一任される。BCPA により CDM 手
続関連コストの問題を解決しようとしたインドネシア政府であるが、プロジェクトフ
ァイナンスが目下一番の悩みの種となっているようである。
3.2
デンマークによるキャパシティビルディング
これまで環境省に対するキャパシティビルディングについて、ドイツ技術協力公社
(GTZ)がその中心的な役割を果たしてきた。その結果環境省がローカルコンサルタ
ントであるプランギ (注 13) の協力を得て DNA 法案を策定するに至っている。
デンマークは、インドネシアの隣国マレーシアにおいて CDM 審査機関に対するキ
ャパシティビルディングを展開してきており (注 14)、実施中のフェーズ II 協力におい
ては政府機関のみでなくプロジェクト実施者たり得るプライベートセクターを対象と
11
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
した CDM キャパシティビルディングを開始している。
そのデンマークが、2005 年 7 月から 18 ヶ月間の予定でプロジェクト実施者の PDD
(注 15 )
作成能力向上を主眼に CDM キャパシティビルディングプロジェクトを開始見
込である。詳細は明らかにされていないが、現在の計画によるとエネルギー経済、マ
ネジメント、および技術系の専門家 (注 16) が 3 名程度、プランギの 3~4 名をカウンタ
ーパート(ローカルコンサルタント)としターゲットグループであるプライベートセ
クターを対象にトレーニングを実施する。マレーシアの場合と同様、本プロジェクト
は単に能力向上のために実施されるのではなく、優良 CDM 案件の発掘および情報収
集を狙っていること、またデンマーク政府は 2005 年中にもインドネシア政府との間
で二国間 CER 購入契約(BCPA)を締結する方向で検討中であることを関係者は明ら
かにしている (注 17)。
3.3
CDM ファイナンシング・ラウンドテーブル
1997 年の経済危機からやっと抜け出した感のあるインドネシアで、いかにしてプロ
ジェクトファイナンスを手当するかが他のホスト国以上に問題となり得ることは、あ
る意味自明の事実であったと思われる。しかしながら、批准が議論され始めてから 2
年以上の間数多く実施された CDM 関係のイベントにおいてマルチ・バイのファンド
をどのようにして獲得するかという短期対応的議論はあったものの、自国のファイナ
ンシャルセクターを巻き込んでどのようにしてプロジェクトファイナンスを持続可能
にしていくかという視点で関係者が広汎に議論する機会はあまりなかった (注 18)。
NEDO ジャカルタ事務所はキャパシティビルディングの一環として、プランギとと
もに「CDM ファイナンシング・ラウンドテーブル」を開催 (注 19)。世銀、KfW 銀行 (注
20 )、デンマーク大使館、JCF(注 21 )等マルチ・バイファイナンス機関に加え
BPMIGAS
、インドネシアの一般銀行等の参加も得て、インドネシア CDM を取り巻く現況、
(注 22 )
ファイナンシャルセクターからみた CDM にかかる疑問、考え得る可能性と障壁等に
ついて自由な情報、意見交換が行われた。
3.4
ワンストップ相談所
CDM に関心を持つ企業および組織に事前の相談および情報収集を可能にするワン
ストップ相談所の必要性については「インドネシアの京都議定書と CDM をめぐる動
き」で提起した。これまでローカルコンサルタントとしてキャパシティビルディング
に関わってきた組織が CDM に加え現地事情および言語理解の優位性を生かし CDM
コンサルティング業を本格開始しようとする動きがある。その中で興味深いのは、
KADIN(注 23) が提案する“E-CDM”、つまりインターネット利用のバーチャル・ワン
ストップ相談所である。インドネシア語、英語の両方でコミュニケーション可能な人
材を確保し、案件に関する相談、情報提供を可能にするだけでなくインドネシアの全
企業体が加盟する KADIN のネットワークを生かしビジネスマッチングも目指す、と
言う。KADIN 関係者によれば KADIN 環境委員会では KADIN 内の他組織からのメ
12
NEDO海外レポート
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ンバーも入れたワーキンググループを設置し、CDM に積極的に取り組んでいく考え
とのこと。
持続的運営を可能にする十分な経費と適切な人材の確保等クリアすべき課題はある
が、インドネシアのプライベートセクターを代表する組織の CDM への取り組み姿勢
として一定の評価に値するものと捉えられる。
4.NEDO「インドネシア CDM 報告書」
本報告書は、平成 16 年度「インドネシアにおける CDM 動向調査」の一環として
2005 年 1 月から同 3 月まで実施されたインドネシア CDM の現況調査報告として編纂
されたものである。
ここでは、以下に章立ておよびその概要を示す。
第1章
インドネシア CDM の法的枠組み
インドネシア CDM の背景および審査制度ならびにクライテリアを詳述。
第2章
インドネシア CDM の主要ステークホルダー
インドネシア CDM のステークホルダーを政府機関からプライベートセクタ
ー、マルチ・バイ機関、NGO 等まで各組織の CDM 関連活動とともに紹介。
第3章
インドネシア CDM 関連調査およびキャパシティビルディング
実施中および実施済のキャパシティビルディングプログラム等を紹介。
第4章
インドネシアのエネルギーセクターと CDM
インドネシア CDM を理解する上で必要な情報としてエネルギー事情、主要
政策およびエネルギーセクターが抱える課題を概説。また計画中、調査実施
中/実施済の CDM プロジェクトを紹介するとともに各分野のポテンシャル
と課題を概観。
第5章
まとめ
なお同報告書は、巻頭の用語解説欄および巻末の参考文献欄には関係のウエブを紹
介するなど、関係者への便宜にも配慮するなど関係者の利用に供するものとなってい
る。ぜひご活用願いたい (注 24)。
以上
(注 1)NEDO 海外レポート 941 号 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/941/941-02.pdf
および、同 943 号 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/943/943-01.pdf
(注2)
“CDM Development in Indonesia-Enabling Policies, Institutions and Programmes, Issues and Challenges,”
compiled by “CDM in Indonesia” Editorial Team in cooperation with Pelangi, under the supervision
by NEDO Jakarta.
(注3)
“Undang-Undang Republik Indonesia Nomor 17 Tahun 2004 tentang Pengesahan Kyoto Protokol to
the United Nations Framework Convention on Climate Change,”
Printed by Ministry of Environment (KLH) and Japan International Cooperation Agency (JICA), 2004.
(注4)私信による。
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NEDO海外レポート
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(注 5)国家指定担当機関(Designated National Authority)
(注 6)
「CDM 国家委員会に関する環境大臣令」
(注7)本最終案は商工業省再編前のものであるため、ここでは「商工業省」としている。
(注 8)最終案において技術チームは「常置技術チーム」と「非常置技術チーム」
(「インドネシアの京都議定書と CDM を
めぐる動き」文中の関係省に設置される各「ワーキンググループ」の代表により構成)に分けられ、後者に関しては
事務局とともにその詳細は委員会の裁量に委ねる、とされている。ここではこの「常置技術チーム」を前稿との関係
で便宜上「技術チーム」とした。
(注 9)1971 年に絶滅の危機にある野生生物保護のために設立され現在は地球全体の自然環境の保全に取り組んでいる
WWF のインドネシア支部。国際組織としてではなく、インドネシアの NGO としての資格で参加。
(注10)認証された排出削減量(Certificated Emission Reduction)
(注11)私信による。
(注 12)私信による。
(注 13)インドネシアの地球温暖化対策を含む環境シンクタンク/NGO。NEDO 海外レポート 943 号参照。
(注 14)
「マレーシアの京都議定書と CDM をめぐる動き」
NEDO 海外レポート 937 号 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/937/937-02.pdf,
同 938 号 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/938/938-02.pdf
(注15)プロジェクト設計書(Project Design Document)
。
当該プロジェクト自体に環境省は直接関与しないものと見られるが、デンマークとの BCPA 締結の話もあることか
ら、CDM フォーカルポイントである環境省およびデンマークとの間で目下調整が行われている。したがってここ
に記した概要はあくまで検討中であって、プロジェクトのコンポーネントには変更の可能性があることをお含みお
き願いたい。
(注 16)マレーシアで CDM キャパビルだけでなくマレーシア政府の資源・エネルギー長期計画策定にも関わっているデン
マークの会社が受託しているもよう。私信による。
(注17)私信による。
(注18)インドネシア政府関係各省において、制度・政策面からのインセンティブが検討されているが、いずれも省ごとの
検討であり、関係省と連携してインセンティブの実現を早めるような動きには至っていない。あるエネルギー・鉱
物資源省関係者は財務省に対する再生可能エネルギーにかかる税インセンティブに関しては「大統領に対しロビー
イングを進めており、その後は大統領経由で財務省に対し働きかける」としている。必ずしも楽観はできないもの
の、このような状況下では場合によってはきっかけさえあれば、急速に事態が展開していく可能性もある。
(注19)http://www.pelangi.or.id/media.php?mid=153
(注20)KfW Bankengruppe.ドイツカーボンファンドを所管するドイツの銀行。
(注21)http://www.jbic.go.jp/autocontents/japanese/news/2004/000105/jcf.pdf
(注 22)石油・地熱上流部門事業庁。国営石油・地熱会社の下で事業実施契約等を担う。
(注23)インドネシア商工会議所(Indonesian Chamber of Commerce)
。日本の経団連的な位置づけ。関連法の下でイン
ドネシアの全企業体に加盟が義務付けられている。
(注24)同NEDO 報告書についての照会先は次のとおり:
NEDO 技術開発機構エネルギー対策推進部温暖化対策グループ吉岡恒(E-mail: [email protected])もしく
は同ジャカルタ事務所山田史子(E-mail: [email protected])
。
14
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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エネルギー一般
北米、EU および日本におけるエネルギー消費の比較 (国際)
北アメリカ(米国、カナダ)、EU および日本のエネルギー消費量について、NEDO
技術開発機構より SRI コンサルティング ビジネスインテリジェンス Inc. (SRIC-BI)
に依頼 した 調査結果を報告する。
表1に対象国・地域の総消費量と一人当たりの使用量を共に最新の値として示す。
掲載数値は、国際エネルギー機関(IEA)から出版された「OECD 諸国のエネルギ
ーバランス:2004 年版」に掲載された 2002 年のデータの他、米国エネルギー省(DOE)
エ ネ ル ギ ー 情 報 局 ( EIA) の 各 国 ・ 地 域 別 エ ネ ル ギ ー 事 情 分 析 概 要 (EIA Country
Analysis Briefs)から引用している
(例:日本のエネルギー概要 http://www.eia.doe.gov/emeu/cabs/japan.html)。
1.エネルギー総消費量
表1に示すとおり、日本における一人当たりのエネルギー消費量は、EU と同じ位
であり、北アメリカのたった 50%である。(注:ここでは、北アメリカの定義からメ
キシコは省かれている。)日本と EU における一人当たりのエネルギー消費量は、エ
ネルギー効率を促進するためのいくつかの要因のため低くなっている。
・日本と EU では税政と流通費のため、エネルギーコストがカナダと米国に比べ高い。
・日本は国内産エネルギー資源が著しく不足しており、多量の原油、天然ガス、原子
力発電用ウラニウム等のエネルギー資源を輸入しなければならない。米国 DOE の
資料によると、2002 年に日本が輸入した化石燃料は一次エネルギー消費量の 80%
以上に達している。
・日本の経済産業省は製品に厳しい省エネルギー基準を課している。この基準により、
自動車や家庭用電気製品などの日本製商品はエネルギー効率の面で外国製商品より
優れている。例えば、冷蔵庫やエアコンなどの電気製品の消費電力はこの 10 年間
で最大 85%削減されている。
・ EU もまた主要のエネルギー輸入国であり、車に関してディーゼルによるエネルギ
ーのより効率化を進めている。EC により出版された報告書「EU の 2020 年までのエ
ネルギー展望」によると、EU で必要となる総エネルギーの 3 分の 2、また需要が急
速に伸びている天然ガスの 75%は 2020 年まで輸入されるとしている。
経済最大国である米国は世界人口の 5%をしめるのに世界全体のエネルギーの 25%
消費している。このエネルギー消費の高い比率は、米国において電化が進んでいるこ
と、GDP が高いこと、国土面積が広大なこと、自動車燃料効率が比較的低いこと等に
よるものである。さらに、全体的に見てエネルギー価格が低いために(一部にはエネ
15
NO.956, 2005. 6. 1
NEDO海外レポート
ルギー税がやすいことによる)、エネルギー効率を高めるための投資に対する経済的な
インセンティブが少ない。
表1
北アメリカ、EU および日本のエネルギー消費量(2002 年)
エネルギー消費量
(石油換算百万ト
ン)
合計
A
B
C
D
E
カナダ・米国
1,748
461
676
539
72
344
カナダ
191
67
53
64
6
42
米国
1,557
394
623
475
65
302
EU
1,057
320
321
386
30
198
日本
359
135
94
119
11
85
A
B
C
D
E
エネルギー消費量
(石油換算トン/人)合計
カナダ・米国
5.48
1.45
2.12
1.69
0.22
1.08
カナダ
6.07
2.13
1.70
2.04
0.20
1.34
米国
5.42
1.37
2.17
1.65
0.23
1.05
EU
2.77
0.84
0.84
1.01
0.08
0.52
日本
2.81
1.06
0.74
0.93
0.08
0.66
A=産業部門
人口(百万人)
B=運輸部門
C=民生/農業部門
カナダ・米国
318.87
D=非エネルギー消費
カナダ
31.41
E=電力(A~Dに含まれているので、合計に
米国
287.46
EU
381.21
日本
127.44
は加えない)
出典:International Energy Agency, Energy Balances of OEDC Countries
2001-2004, 2004 edition.
1.1 産業部門
表 1 に示すとおり、カナダは一人当たりのエネルギー消費量が最も高く、また産業
部門のエネルギー消費量が一番多い国である。カナダの産業部門における一人当たり
の消費量は日本の 2 倍になっている。カナダは豊富なエネルギー資源を持っているの
で、天然資源の採取とプロセッシングを基盤とした燃料集約型経済を発展させている。
石油生産、石油化学製品産業、鉱業、紙・パルプ産業はすべてカナダにおけるエネル
ギー多消費産業となっている。
16
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NO.956, 2005. 6. 1
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米国の産業部門における一人当たりのエネルギー消費量は、日本と比較すると僅か
30%増であり、産業としては多種多様である。石油精製、石油化学製品工業、化学工
業がエネルギーを圧倒的に多く消費する産業であり、他の主な産業としては紙・パル
プ産業、食品産業、機械産業、鉄鋼業、鉱業がある。
EU の産業部門における一人当たりのエネルギー消費量は日本のそれより低い。産
業としては多様であり、主なエネルギー多消費産業は米国と同様である。
1970 年代のオイルショックは日本の重工業産業を合理化し、経済全体を省エネルギ
ーを目指した産業に方向付けた。その結果、日本はエネルギー効率化に関しては世界
のリーダーであり、新しく改正された省エネ法は、一人当たりのエネルギー消費量を
さらにもっと減少することを目指している。
1.2 運輸部門
輸送に使われる石油の量は、米国とカナダでは、日本と EU に比較して多い。これ
は一部には、日本と EU が車の燃料高効率化を進めていることによるものである。例
えば、ディーゼルエンジンをより多く使用したり、車を小型化している。ところが、
米国とカナダはより広大な土地を持ちながら大量輸送システムが十分に開発されてい
ないので、石油をより多く輸送に使わなければならない。
米国全体としては、過去 20 年間車の燃料節約は進展していなかった。燃料節約よ
りも車のサイズ拡大とパワーアップのための新しい技術がアメリカの車に絶え間なく
取り入れられた。現在の乗用車の平均燃費は 24 マイル/ガロンであり、これは 1981
年の値と同じであるが、車の重量は 24%、馬力は 93%増加している。2004 年の原油
価格の上昇に伴い、トヨタのハイブリッドカー(プリウス)等の低燃費車の人気が米
国でどんどん上がっている。しかしながら、大型の乗用車に対する需要も未だ根強い。
2.エネルギー供給源の比較
石油はどの地域においても主要なエネルギー源であるが、表2に示すとおり地域に
よって差が見られる。米国は石炭埋蔵量が多いので、一人当たりを基準にすると、他
の地域に比べて石炭がより重要となっている。
天然ガス火力発電は石炭火力発電に比較して急速にふえているが、米国における発電
の 53%は石炭火力発電によっている。
EU においても天然ガスは石炭に取って代わって最も急激に増えている燃料源であ
る。総エネルギー消費量に対する石炭の割合は 1991 年の 20%から 2002 年の 16%へ
と減少している。石炭の消費が減った大きな理由は環境問題であり、他の大きな要因
としては、アルジェリア、ノルウェイおよびロシアからパイプラインにより送られる
天然ガスとナイジェリアから輸入される液体天然ガス(LNG)が従来より多量に安定
供給されることがある。
日本は比較的高価な LNG を輸入しなければならないので、一人当たりの天然ガス
の供給は最も低い。大部分の LNG は発電あるいは石油化学原料として使用される。
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
北アメリカと EU 地域と異なり、日本の大部分の都市地域には天然ガスの流通システ
ムが無い。
表2
北アメリカ、EU および日本のエネルギー供給量(2002 年)
一次エネルギー供給量
石油・石
(石油換算百万トン) 合計
地熱・太陽エ 再生可能エ
石炭
油製品
天然ガス 原子力 水力
ネルギー他
ネルギー
カナダ・米国
2,540
571
986
612
229
50
11
80
カナダ
252
29
86
75
20
30
0
11
米国
2,289
542
900
537
210
20
11
69
EU
1,485
217
597
349
233
24
8
57
日本
517
100
256
66
77
7
4
7
一次エネルギー供給量
石油・石
地熱・太陽エ 再生可能エ
(石油換算トン/人)
合計
石炭
油製品
天然ガス 原子力 水力
ネルギー他
ネルギー
カナダ・米国
8.00
1.80
3.10
1.90
0.70
0.16
0.03
0.25
カナダ
8.00
0.90
2.70
2.40
0.60
0.96
0.00
0.36
米国
8.00
1.90
3.10
1.90
0.70
0.07
0.04
0.24
EU
3.90
0.60
1.60
0.90
0.60
0.06
0.02
0.15
日本
4.10
0.80
2.00
0.50
0.60
0.06
0.03
0.06
出典:International Energy Agency, Energy Balances of OEDC Countries
2001-2004, 2004 edition
以上
18
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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【環境】
カナダ政府の新予算と環境対策
今年 2 月末にカナダ連邦政府から発表された「Budget2005」では、今後 5 年間、
持続的な環境支援に 50 億ドル(カナダドル:以下同様)のパッケージをグリーンエ
コノミーのために支出することを約束している。
その内訳は、
1.温室効果ガス排出削減と環境技術開発促進
2.効果的で再生可能なエネルギー生産への投資促進のため税制優遇措置の見直し
3.エネルギー有効利用と汚染地域の修復促進のための一般インフラ作りへの投資
4.五大湖、大洋、国立公園などの自然環境保護
の 4 点である。
1.温室効果ガス排出削減と環境技術開発促進
予算の内訳は、
効率のよい温室効果ガス排出の削減プロジェクトに 5 年間でクリーン基金 10 億ド
ル;連邦政府、州、準州間の協力プロジェクトのための協力基金設立に 2 億 5,000 万
ドル;
エネルギー節約の EnerGuide プログラムに 5 年間で家屋改造費補助 2 億 2,500 万ド
ル;
永続的エネルギー科学技術戦略の開発援助として 5 年間で 2 億ドル;
風力発電促進に同じく 2 億ドル;
小規模水力・バイオマス・埋立地ガスなどの利用による新再生可能エネルギー発電促
進に同じく 9,700 万ドルなど、
となっている。
2.効果的で再生可能なエネルギー生産への投資促進のため税制優遇措置の見直し
以下の通り税制優遇措置の見直しを図る。
1)環境に優しいエネルギーのために The Capital Cost Allowance:CCA(資本金控
除制度)(注) の比率を 30%から 50%に引き上げる。
2)このインセンティブを地域エネルギーやバイオガス生産システムにも拡大する。
(注)風力発電、小規模水力発電、地熱エネルギーシステム等の装置・設備など固定
資産にかかる経費を税金の控除対象とする。
3.エネルギー有効利用と汚染地域の修復促進のための一般インフラ作りへの投資
1)持続的環境整備
Green Municipal Funds として 5 年間で 3 億ドル。そのうちの 1 億 5,000 万ドル
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
はコミュニティのクリーンアップと環境汚染地域の再開発支援に利用する。
2) 持続的社会改善
連邦政府ガソリン税収入のうち、5 年以上にわたり 50 億ドルに匹敵する額が交通、
水、コミュニティ・エネルギーシステムなどインフラストラクチャー・プロジェク
トのために地域社会へ還元される。The Canadian Strategic Infrastructure Fund
や The Municipal Rural Infrastructure Fund のようなインフラプログラムを更新
することにより、これら Fund の 50%以上の金額が持続性のあるインフラストラク
チャーのための資金として投資されることになる。
4.五大湖、大洋、国立公園などの自然環境保護
1)国立公園の一般インフラ改善のために 5 年間にわたり 2 億 900 万ドル。
2)国立公園の生態系維持改善に 5 年間にわたり 6,000 万ドル。
3)五大湖の sea lamprey(ヤツメウナギ)のような侵略的異種魚類の危険性を減らす
ために 5 年間にわたり 8,500 万ドル。
4)五大湖生態系改善のために 5 年間にわたり 4,000 万ドル。
5)競争力のある持続的な大洋行動計画(Ocean Action Plan)のために、2 年間にわ
たり 2,800 万ドル。
6)北西大西洋の外国による過剰漁獲を中止させるために、毎年 1,500 万ドル。
7)カナダ国民が毒物に晒される危険性を軽減するための研究と健康上の危険性評価
実施のための 5 年間にわたる 9,000 万ドル。
また連邦政府は、政府保有の石油会社ペトロカナダ(Petro-Canada)の売上金から、
今後 5 年間にわたり環境技術の開発と展開を支援するため、総額 10 億ドルを提供す
ると発表している。(上記予算とは別枠)
その内訳は次のようなものである。
永続的技術の開発
2 億ドル
風力発電インセンティブ
2 億ドル
再生可能発電インセンティブ(6 年間以上)
1億 7,000 万ドル
永続的エネルギー科学と技術戦略
2 億ドル
クリーン基金
2 億 3,000 万ドル
合
10 億ドル
計
以上
(参考資料)
Moving Toward a Green Economy:
http://www.fin.gc.ca/budget05/pamph/pagree.htm
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【環境】
気候変動問題に対する市民の低い理解度 (米国)
-マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査結果-
米国の一般市民は気候変動と地球温暖化の脅威をよく理解しておらず、その影響緩
和の対策もさほど優先順位が高くない-マサチューセッツ工科大学が最近実施した調
査でこのような実態が明らかになった。
米国の気候変動政策は、市民主導で変化を遂げるものではないことがこの結果から
示唆されている。選挙で選ばれる政策立案者達はリーダーシップを発揮しなければな
らないが、困難を覚えるだろう。なぜなら、気候変動につながる温室効果ガスを大幅
に削減するために必要な経済コストは、消費者が許容し得る平均額をかなり上回る場
合もあるからだ。
MIT エネルギー・環境研究所(LFEE)の Howard J. Herzog 主席研究員らは、気
候変動を緩和する一つの手法「CO2 回収貯留技術(CCS:Carbon-dioxide Capture and
Storage)」について 10 年以上に渡り研究してきた。これは、大量に排出されて地球
温暖化の要因となる大量の CO2 を回収し、地層に注入して長期保存を行う技術である。
CCS は技術的にも経済的にも有効だが、一般市民からの支持がネックとなる可能性
がある。そこで、研究チームは特に CCS について、また気候変動や一般的な環境問
題について人々の意識を探ろうという結論に達した。
LFEE の Herzog 主席研究員、ケンブリッジ大学の David M. Reiner 教授と大学院
生 Thomas E. Curry 氏、MIT 政治科学部の Stephen Ansolabehere 教授、Elting R.
Morison 教授等は、環境問題、地球温暖化、気候変動を緩和する技術について 17 の
質問から成る調査票を作成した。また、インターネット・ベースの世論調査に特化し
た Knowledge Network 社の協力を得た。
CCS に限らず、気候変動対策となる他のエネルギー関連技術も調査票に挙げられて
いたが、それらの認知度はかなり低いことが 1,200 名の回答によって証明された。研
究チームにとって CCS の認知度の低さは予想範囲内だった。むしろ、水素燃料自動
車や風力エネルギー、原子力エネルギーについて最近見聞きしたことがないという回
答者が多数いたのは意外な事実であった。
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
更に、最も驚くべきことは、調査票に記載された言葉を過去 1 年間全く見聞きして
いない、という回答者の割合が全体の 17%に上ったことである。
一般市民の理解度の低さを表す質問項目は他にもある。例えば「CCS はどのような
問題を解決する技術でしょうか」との問いに対しては、過半数が「分からない」と答
えた。「地球温暖化を緩和する」という正解を選んだ回答者は全体の 23%、「スモッグ
を減少させる」という不正解を選択した回答者は 29%であった。
更に、環境・気候変動問題は一般市民にとって優先順位が低いことも明らかになっ
た。「現在米国が直面している最も重要な課題は何でしょうか」との質問では 22 の選
択肢が与えられたが、環境問題は 13 位にとどまった。そして、環境問題に限定した
10 項目の選択肢中、地球温暖化は 6 位であり、水質汚染や有毒廃棄物の順位を大きく
下回った。
気候変動問題に関する社会的合意形成を行う上で、この調査結果はどのような意味
を持っているだろうか。研究チームは、一般市民への教育が不可欠との結論に達した。
教育プログラムは基本的な知識の普及から始める必要がある。化石燃料の燃焼と温室
効果ガスの排出、そして起こり得る気候変動とこれらの要素との関連性を人々が容易
に理解できるような内容が求められる。研究チームによれば最も重要なポイントは、
様々な気候変動緩和技術に付随するコストについての討議を教育プログラムに含める
ことである。コストの問題は、人々が技術を選択する際に大きな影響力を持つためで
ある。
CCS の研究を継続する一方で、MIT の研究者はこの調査を 2~3 年かけて実施し、
一般市民の認知度の推移を追跡する予定である。日本、英国、スゥエーデンにおいて
も同様の調査が実施されており、MIT は当面「人間地球圏の存続を求める三大学国際
学術協力(AGS:Alliance for Global Sustainability)」のパートナーと共同で調査結
果の分析を行う。
本調査は、AGS 並びに CO2 貯留技術イニシアチブからの支援を受けている。
以上
翻訳:千葉
(出典:http://web.mit.edu/newsoffice/2005/climate-0316.html
Copyright 2005. Massachusetts Institute of Technology. All rights reserved.
Used with permission)
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朗子
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【環境】
原子レベルの「指紋」で気候変動の実態を観測する新手法 (豪州)
アマゾン全域の降水データを利用した気候変動に関する新しい研究が、本日(訳注:
2005 年 3 月 2 日)豪州原子力科学技術機構(ANSTO)のオンライン誌「Velocity」
に報告された。ごくまれに自然発生するタイプの水同位体によって、森林破壊の状況
と温室効果ガスの影響を正確に測定するという内容で、地球気候モデルの精度につい
て独自の確認方法を世界で初めて提供するものである。
「Velocity」の掲載記事によれば、ANSTO のアン・ヘンダーソン-セラーズ(Ann
Henderson-Sellers)教授とシドニー工科大学のケンダル・マックガフィー(Kendal
McGuffie)博士は、1970~2000 年代にアマゾンのジャングルからアンデス山脈にか
けて収集されたデータから、水の同位体である重水(訳注:質量数の大きい同位体を
含み、通常の水より比重が重い水)2 種の存在比を比較し、アマゾン盆地に及ぼした
人間活動の影響を評価した。
「過去の研究内容を裏付ける成果が出て興奮している。今回は更に踏み込んで、同
位体を手がかりに植物による蒸散作用のフィンガープリンティングを行い、土地利用
の変遷が及ぼす影響に関しての新たな情報を得た」と、ヘンダーソン-セラーズ教授
は述べ、次のように続けた。
「今回の研究では、重水の数が著しく変化していることに気付いた。1970 年代以降
は雨季における重水の出現数がどんどん減少しており、森林破壊が示唆された。」
水循環において、種類の異なる水素と酸素の同位体を含んだ水分子は、蒸発と凝結
の過程で違った動きを見せる。重水は通常の水分子に比べ中性子の数が多く重いので
空気中に蒸発しにくく、凝結の際には(通常の水分子より)先に雨粒となり落下する。
アマゾン川の河口からアンデス山脈へ移動する間に、水は再蒸発を最大 5 回繰り返
すので、その過程で希少な重水は大気中から次第に取り除かれる。しかし、樹木から
水が蒸発する際(これを蒸散作用と呼ぶ)は、重水であっても通常の水分子と同様に
大気中に放出される。従って、樹木を経由して循環した水と、川や湖を経由して循環
した水とではその特徴に差がある。
教授は次のように述べた。「アマゾンのジャングルが人跡未踏の密林状態だった頃
23
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
は、重水も通常の水と同様に大気中に放出される傾向にあった。このように、かつて
重水の再循環効率は非常に高かったが、現在は森林破壊に伴い多くの樹木が失われて
いるので、アンデス山脈へと到達した水蒸気に含まれる重水の比率は明らかに低い。
これは、気候モデルに依存することなく気候変動を検知し、その要因を特定する新し
い手法である。」
「我々は、重水の安定同位体の減少の度合いが森林破壊と地球温暖化の影響に対す
る警鐘になると考えてきたが、今回の成果はその認識を裏付けるものだ。」
「本研究の成功は、この(重水の存在比率による)判定モデルが、豪州を含む世界
の諸地域で適用できることを示唆している。」
この新しい研究成果は「水安定同位体による、アマゾン盆地での地表-大気間の水
循環に及ぼす人間活動と自然環境の影響を特定する方法」という表題で「Journal of
Geophysical Research」誌(2004 年 11 月版)に掲載された。
・更に詳しい情報の問い合わせ先:
ANSTO メディア・アドバイザー、シャロン・ケリー(Sharon Kelly)
電話
(02)9717 9575
または 0400 394 085
・豪州原子力科学技術機構(ANSTO)は原子力分野の国立研究開発機関であり、国
内原子力専門家の中心組織である。国内の核医学分野で使用される放射性同位体の
70%が ANSTO の原子炉で製造されている。
以上
翻訳:千葉
(出典:http://www.ansto.gov.au/info/press/2005/anstomedia005_020305.pdf
Copyright 2004, Australian Nuclear Science and Technology Organisation.
All rights reserved. Used with permission)
アン・ヘンダーソン-セラーズ教授
(写真:ANSTO 提供)
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朗子
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【産業技術】ライフサイエンス
ロボットによる初めての複雑な肝臓手術 (米国)
イリノイ大学シカゴ医療センターの外科医達が、全米初となるロボットを使った複雑な肝臓
手術に成功した。
「このロボットは、従来の腹腔鏡手術用器具では不可能だった 360 度の可動範囲を有する
点で優れている。ロボットを使えば、どのような肝臓の微細構造にも手が届き、繊細な血管を
見ることができるようになる。近い将来、大多数の患者にとって、開腹手術は正しい選択では
なくなるだろう」と、イリノイ大学シカゴ校の外科准教授のジュリアーノ・テスタ博士は述べ
た。
腹腔鏡手術は低侵襲的な手術で、器具を体内に通す部分を切開するだけで、大きく開く必要
はない。ロボットを使用することで、腹腔鏡手術の性能は格段に向上した。外科医は小型カメ
ラで映し出された患部の 3 次元画像を見て、これまで以上に精密に器具を操作できるようにな
ったのである。このロボット・システムは人間の手首を模倣した装置であらゆる動きが可能と
なっている。
エヴァンストン在住 55 歳の女性、リンダ・カーンは手術を受けてからちょうど 48 時間後、
退院する準備をしながらこう言った。
「腹筋運動をしすぎたような感じです。
」
カーンさんは直径約 5 インチ(約 12.7cm)の大きな良性腫瘍による腹痛を起こしていた。
外科医は肝右葉切除を腹腔鏡手術で行い、da Vinci® Surgical System を使用して全体の約
60%の肝臓と腫瘍を除去した。
外科医はカーンさんの腹部 5 ヶ所を 1cm の大きさで切開した。Da Vinci System で切開部
から腹腔鏡とロボット・アームを挿入し、手術用器具をリアルタイムに正確に患者の体内で操
作する。
「私の手術がロボットを使って行われるなんて、本当にすごいことだと思いました。腹腔鏡
手術になる可能性があることは知っていましたが、私の場合、腫瘍が大きすぎるので、開腹手
術が必要なのではないかと心配していました」と、カーンさんは話した。
カーンさんの肝臓は 4~6 週間で再生する。開腹手術を行っていたら、カーンさんには 8 イ
ンチ(約 20cm)の切開痕が残り、回復までの期間は一層長くなっただろう。
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
ロボット手術の利点は、出血が少量、回復が速い、傷口が小さい、手術後の痛みが少ない等
の腹腔鏡手術の利点と一致する。さらに、ロボット技術は外科医の能力を高める。腹腔鏡手術
のような複雑な低侵襲手術であっても、執刀医は開腹手術を行っているように行い易く感じる
だろう。
イリノイ大学シカゴ校では 2000 年にイリノイ州で初のロボット手術を実施した。
それ以降、
胆嚢除去、胃バイパス、肥満治療用ラップバンド、食道修復、腎臓の提供等、500 件以上もの
ロボット手術が行われている。
ロボット手術はいくつかの低侵襲手術方法に幅広く取り入れられているものの、肝切除など
の複雑な手術への使用は一般的ではない。
イリノイ大学シカゴ校はロボット・システムを使用する外科医をトレーニングする全米初の
連邦指定病院である。そのような病院は全国に計三ヶ所ある。
「イリノイ大学シカゴ校では開設当初からロボット手術を行ってきた。私達が行う最新の低
侵襲手術治療を、患者達は評価してくれている」と言うのは、イリノイ大学シカゴ校の低侵襲
手術の指導者サンティアゴ・ホーガン博士。
Da Vinci Surgical System は米食品医薬品局が初めて認可した外科手術用ロボット・システ
ムで、心臓、肺、腎臓、胃腸管、前立腺治療の様々な手術への使用が許されている。
イリノイ大学シカゴ校は、連邦研究助成の中で全米トップ 50 の大学にランクされ、学生 2
万 5 千名、教職員 1 万 2 千名、15 学部と州の主要な公共医療センターを有するシカゴ最大の
大学である。同大学の代表的な活動 Great Cities Commitment を通じて教員・学生・職員は、
世界中の大都市部生活の質向上を目指す何百ものプログラムに、コミュニティ・企業・財団・
政府と共に参加している。
同医療センターについての詳細は www.uillinoismedcenter.org を参照。
以上
翻訳:御原 幸子
(出典:
http://tigger.uic.edu/htbin/cgiwrap/bin/newsbureau/cgi-bin/index.cgi?from=Releases&to=R
elease&id=1097&start=1105503713&end=1113279713&topic=0&dept=0
Copyright 2005, The Board of Trustees of the University of Illinois. All rights reserved.
Used with Permission.)
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【産業技術】ライフサイエンス
ヴァーチャル・ヴォイス (米国)
装着型キャプション・システム
聴覚障害者あるいは難聴者にとって、俳優、教師、スポーツのアナウンサー、牧師
の発する声は大抵の場合音が消えている。
聴覚障害者にとって音声の代わりとなるキャプションは、特別な映画館以外ではあ
まり利用されていないので、聴覚障害者は情報へのアクセスが難しく、コミュニティ
活動への関与が制限されてしまうことが多い。ところが、ジョージア工科研究所
(GTRI)が開発し、最近メトロ・アトランタにある企業がライセンスを獲得した、装
着可能なキャプション・システムが米国の 2800 万人の聴覚障害者あるいは難聴者(人
口の約 10%)のこの状況を変える可能性がある。
携帯式無線技術に基づくシステムで、映画館、博物館、劇場、学校、政府のミーテ
ィング、スポーツ競技場、乗換駅、礼拝所等、あらゆる公共の場所で一般の人々に提
供される音声情報を、利用者は簡単に(キャプションとして)受信できるようになる。
このシステムは多重テキスト・ストリーム伝送で言語翻訳としても使用できるし、ソ
フトウェアは国際的な互換性がある。また、このシステムはスポーツの試合で提供さ
れる関連統計データ等、健聴者も望むような選択的情報を送信することも可能である。
「施設側が利用者へのキャプションを準備する必要はあるが、私達のシステムは受
信装置を個人に合わせてカスタマイズすることで、自分の望むような形でキャプショ
ンを簡単に受信することができる」と、GTRI プロジェクト監督者リーアン・ウェス
ト氏は言う。「現在、キャプション・サービスは主に映画館でしか利用されていない―
しかも映画館の数も限られている―しかし、この装置があれば、あらゆる公共の場所
でキャプション・サービスを提供することができるようになる。」
ジョージア州マリエッタのピーコック・コミュニケーション社はキャプション・シ
ステム・ソフトウェア「COMMplements™」の販売を計画し、ハードウェアや設置に
ついて施設側と話し合っている、と同社 CEO ジャック・ピーコック氏は説明する。ピ
ーコック氏はソフトウェアの機能強化に向けた資金を提供する投資家を探しており、
まず米国で、次いでカナダと西欧でこのソフトウェアを市場に出すつもりである。
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
COMMplements は、施設側の送信機から、キャプションを表示する PDA(個人用
携帯情報端末)等の受信装置へデータを送信するために、標準的な無線技術―802.11b
無線プロトコル―を使用する、とウェスト氏は説明した。802.11b 無線技術は、野球
場、コーヒーショップ、レストラン、更には、都市部のオフィス街等、既に多くの場
所に導入されている。
施設側が送信機を運用し、利用者はその場で貸し出される受信機やディスプレイを
借りるか、自分の受信機を持参することもできる、とウェスト氏。無線機器対応 PDA
やラップトップ・コンピュータが受信器やディスプレイになり、あるいはマイクロ・
ディスプレイを PDA へ接続したり、メガネやヘッドバンドに装着して利用することも
できる。眼の近くにマイクロ・ディスプレイを取り付けても、光学技術で数フィート
先に浮かぶようにスクリーンを現して、見る人の視野に重なるようにテキストを表示
すれば、眼に負担をかけることはない。
表示するキャプションは前もって準備することも、CART(コミュニケーション参
加同時通訳)のような速記タイプ方法でリアルタイムに作成することもできる。音声
認識技術が向上すれば、音声からキャプションを作成することも可能になる、とウェ
スト氏は付け加えた。
プロジェクトを始める前に、新型キャプション・システムのニーズと関心を把握す
るために、ウェスト氏はジョージア州聴覚障害者協議会と話し合った。聴覚障害者の
関心が確かなものであることを踏まえ、ウェスト氏のプロジェクトは GTRI から資金
を調達、ジョージア工科大学無線リハビリテーション工学研究センター(RERC)か
らグラントを獲得した。RERC は米教育省の一部である米国立障害・リハビリテーシ
ョン研究所(NIDRR)からの支援を受けている。
開 発 中 の 初 期 プ ロ ト タ イ プ 受 信 装 置 を 使 っ て 、 Self-Help for Hard of Hearing
People(SHHH)年次総会等の 2 つの異なる機会で GTRI システムが試された。この
試験には年齢 15~75 歳の聴覚障害者あるいは難聴者の有志 63 名が参加した。
「私達は正しい方向に進んでいること、彼らが望んでいる特徴を取り入れているこ
とを確認したかったし、その必要性を感じていた。誰かのために何かを作っても、そ
の人が使いたくなければ何の役にも立たない。そのことを障害者支援技術・福祉機器
の開発者は見落としてしまいがちである」と、ウェスト氏は語った。
試験は、映画館の状況を模倣し、15~90 分のビデオを上映して行われた。被験者は
マイクロ・ディスプレイ付きメガネをかけて参加した。
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参加者の大部分は、ディスプレイに「慣れるのに少し時間がかかる」と報告してい
るが、65%は 10 分以内で読みやすいディスプレイの位置が分った、と述べている。同
じく、65%の参加者がテキストは読みやすいと答えた。
「私達は参加者の意見を聞き、彼らが望む表示上の特徴をいくつか取り入れた。フ
ォント・スタイルを自分で選びたいとする人もいたが、いくつかの理由でフォントは
『Tiresias』を使うことに決めた。このフォントは、視力が低下した人々のために英国
王立盲人援護協会が作ったものである。フォントについては大変好評である」と、ウ
ェスト氏は説明した。
ウェスト氏らはまた、テキストの大きさや色、背景色、ピント調節等もカスタマイ
ズできるようにした。
84%に及ぶ多数の参加者は、公共の場でコミュニケーション支援装置を装着するこ
とに躊躇しないと答えている。参加者はこのシステムを「カッコいい」、「本当にすば
らしい」「試す価値がある」と考えている。「通訳が来ない場合に備えて持ち歩くのに
いい装置だ」と、意見を述べた人もいた。
このキャプション・システムのアイデアが持ち上がったのは、5 年程前、ウェスト
氏が所属する GTRI 研究部門のランチ懇談会の席だった。集まった人々はキャプショ
ン・サービスが不十分な映画館についての訴訟―現在は解決している―について話し
合っていた。キャプションの提供方法、様々な場所でサービスが可能となる方法は、
現状よりも何か他によい方法があるはずだ、というのが一同の一致した意見だった。
現在、映画館で利用できる主要なキャプション・サービス技術は全米アクセシブル・
メディア・センターによって開発された「Rear Window® Captioning System」で、
一部の映画館で利用されている。映画館の後部に備え付けた発光ダイオード(LED)
テキスト・ディスプレイ上に反転キャプションを表示し、聴覚障害・難聴者は座席の
カップ・ホルダーに取り付けた透明なアクリル・パネルにキャプションを映し出し、
スクリーンに重ねて見る。
ウェスト氏によると、GTRI システムは Rear Window システムよりも適応性がある
と言う。GTRI システムは多重テキスト・ストリームを扱うことができ、利用者に合
わせた十分なカスタマイズと配慮がなされ、キャプション・サービスを提供したい公
共の場所はどこでも利用することができる。さらに、利用者自身が購入できる価格の、
持ち運びにも便利な個人用電子機器が使用できる。Rear Window システムでは、利用
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
者は映画館から専用装置を借りる必要がある。
GTRI では現在、ハッキング予防の安全対策を加えてソフトウェアを改良中であり、
最新式の丈夫で安価なマイクロ・ディスプレイに対応するように更新しているところ
である。PDA を持たない利用者に配信する施設用の特注キャプション・システムを作
ることも計画している。
以上
翻訳:御原 幸子
(出典:http://gtresearchnews.gatech.edu/newsrelease/captioning.htm
Copyright 2005, Georgia Institute of Technology. All rights reserved. Used with
Permission.)
30
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【産業技術】ライフサイエンス
環境サンプルの指紋採取新技術 (米国)
米エネルギー省共同ゲノム研究所(DOE・JGI)が主導した画期的な研究で、特定の環境か
ら採取した陸・水生サンプルの遺伝子が示す固有の特徴から、環境の健康状態を正確に診断で
きることが初めて示された。Science 誌 4 月 22 日号に掲載された本研究の成果は、生医科学
に貢献した DNA 塩基配列解析のように、環境科学の進展の加速に貢献するものとして大規模
ゲノム塩基配列解析を位置付けるものである。
「DNA 配列の(固有の特徴を表す)指紋によって、多様性を極める環境の活力をかなり正
確に評価できる。この指紋は、汚染環境回復で現れる改善の徴候や、ストレス下にある環境に
ついて明らかにする。DNA の指紋を環境状態の指標とすることで、環境生態学は定量的科学
として十分通用するようになるだろう」と言うのは、米エネルギー省科学局長レイモンド・L・
オーバッハ博士。
「環境ゲノムタグ(EGT)
」と名付けられた指標は、特定領域の DNA プロファイルを捉え、
栄養素、汚染物質等の環境的特徴の存在やレベルを反映する。
本研究で採用した EGT アプローチは、ヒトゲノム計画研究といくつかの側面で類似点を持
つ。1990 年代初め、ヒト遺伝子の不完全な断片「発現配列タグ(EST)
」が、ヒト組織から個
人特有の特徴や疾病に対する体質を判断する診断用指紋として使用された。EST によって得
られるデータは情報を豊富に含むため、ヒトゲノム全体の解読を待つことなく、疾病プロセス
で重要な遺伝子についての研究を推し進めることができた。
「EGT の指紋によって、様々な環境に影響する要因についての基本的な知見を得ることが
できるかもしれない」と、本研究チームを指揮した DOE・JGI の責任者エディ・ルビン氏は
語った。
「EGT を使えば、特定環境の生物が必要とする機能を理解するために、完全ゲノムの
ようなデータは実際には不必要になる。むしろ、EGT データが示す遺伝子やその存在量は周
囲の環境の要求を反映しているため、その環境内で生存する微生物を特定することなく、環境
内で何が起こっているのか理解することができる。
」
EGT は、特定場所の DNA プロファイルを捉え、光や温度のような特徴と同じように、栄
養素、汚染物質の存在やレベルを反映する。例えば、植物性物質分解に関わる遺伝子は海水に
は存在しないが、土壌には多く存在する。一方、海水には、海水の主要化学成分であるナトリ
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
ウムの輸送に関わる遺伝子が豊富に存在する。表層水中の微生物の主要エネルギー源は光であ
るため、浅水域から採集したサンプルには光合成に関与する遺伝子が豊富にあった。このよう
に、特定機能に関与する遺伝子の存在量は環境によって異なるため、サンプルを採取した場所
の環境的特徴を表す DNA の手掛かりとなる。サンプルには膨大な数の多種多様な微生物が生
存しているにもかかわらず、DNA の手掛かりは簡単に見つかった点が重要である。
ルビン氏は、所定環境の微生物を実際に特定しなくても、EGT で収集した遺伝子とその相
対的な存在量から環境の複雑な物理的・生化学的詳細情報を得ることができる、と論じている。
ありとあらゆる環境に存在する無数の生物のDNA を一度に一つずつ解析することは大変骨の
折れる作業であるため、この研究成果は自然界の微生物研究にとって極めて重要な意味を持つ。
EGT アプローチで DNA 解析作業が簡易化すると、研究者達は断片的な情報を統合し、複雑
な環境全体の有益な代謝的全体像を描き出すことができるようになる。
本研究はカリフォルニア州サンディエゴの Diversa 社と共同で行われた。ミネソタ州の農場
から採取した土壌サンプルや、何千マイルも離れた太平洋と北極海で回収した鯨数種類の骸骨
サンプル等、様々な環境の DNA を Diversa 社が提供し、DNA 塩基配列の決定・解析は JGI
で行われた。環境によって異なる代謝的特徴が明らかになる一方で、本研究によって環境シス
テム全体を捉える観点も持ち易くなる。それは多くの研究者にとって歓迎するところである、
とルビン氏は語った。
「環境システムは非常に複雑で、1 ヶ所に共存する多様な生物を無数育んでいる。解読した
DNA 断片のコード化情報に焦点を当て、由来する生物を特定しないことで、私達は種の多様
性に関する問題を回避することが出来た」と、ルビン氏。
およそ 99%の微生物は標準的な実験室の条件下では培養が困難であるため、その生態はほ
とんど分っていない。EGT を使用する研究方法は、環境に重大な影響を与える生物圏の重要
部分を簡単に研究することができる点で、際立った有用性を持っている。
Science 誌に掲載された論文の筆頭著者は DOE JGI の博士研究員であるスザンナ・グリー
ン・トリンジ博士である。DOE JGI 研究者以外にも Diversa 社、ドイツ・ハイデルベルクの
欧州分子生物学研究所(EMBL)の研究協力者が本研究に参加した。
以上
翻訳:御原 幸子
(出典:http://www.jgi.doe.gov/News/news_4_21_05.html)
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NO.956, 2005. 6. 1
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海外レポート956号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/956/
【産業技術】ライフサイエンス
ミラノのサン・ラッファエーレ病院でトモセラピー治療を開始(イタリア)
2005 年 3 月 10 日ミラノのサン・ラッファエーレ病院において非常に高い確率によ
って腫瘍を治療する、ヨーロッパで第1番目に使用される、新技術による放射線治療・
トモセラピー機械による治療実験が開始された。
こ の 放 射 線 治 療 新 機 械 は 、 機 械 に 装 備 さ れ て い る TAC ( Tomografia assiale
computerizzata/コンピューター断層撮影装置〔英語名 CT〕)によって腫瘍の場所を
非常に正確に見極めることが出来る。また治療プログラムを立てて患者の周りをらせ
ん状に動いて患部の位置を決め、回転する加速器によって生産される放射線の束を腫
瘍の形、アングルにそって正確に放ち、よって健康な組織を損なうことなく腫瘍の治
療を可能にすると言う医療器具である。
従来の放射線治療機械では、攻撃すべき腫瘍部分への照射が充分に正確でないため
に患者に副作用をもたらす等の大きな弊害があったが、トモセラピーではこれらの副
作用を極端に縮小させる。
保健衛生省の協力によって同病院で開始されたトモセラピー治療は、今のところ基
礎実験段階であり、全ての腫瘍患者に適用される訳ではない。サン・ラッファエーレ
病院の放射線治療科ディレクターのフェルッチォ・ファツィオ医師は、「本セラピーは
革新的で実験的なものであり、目下の所、科学プロトコールをベースにして肺、脳、
首、前立腺、膵臓の腫瘍患者の治療に適用される。
機械の正確性によって放射線照射回数を縮小させることが本プロジェクトの特に重
要な目標の1つになっている。既にトモセラピー治療は開始されているが、従来の治
療では 30~40 回の照射を必要としていたが、本トモセラピーでは 20 回の照射で済む。
我々は、今後更に 10 回以下の照射で治療を終わらせる事が出来るであろうと考えて
いる」と述べた。
正確性を更に改善させるためにサン・ラッファエーレ病院の研究者達は、世界で始
めて実施される“新陳代謝ガイド・トモセラピー”と呼ばれる新しい治療法を実験し
ている。
“新陳代謝ガイド・トモセラピー”とは、トモセラピーと PET/TAC メソードを連
結した治療法である。TAC は、腫瘍質量の形の地図を作り、PET(Tomografia a
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NO.956, 2005. 6. 1
Emissione di Positroni/陽電子放射断層撮影装置)は、腫瘍の生物的、新陳代謝的特
徴を割り出す。つまり放射線束を照射するために、より正確な標的となる新陳代謝活
動細胞を究明する。
サン・ラッファエーレ病院の専門家達は、この治療は2つの大きな長所を持ってい
ると説明する。1つは、腫瘍段階をより詳細に究明、 定めることを可能にする(例え
非常に小さくても周囲に転移していてトモセラピーの効用をもたらさない患者は除
外)。もう1つは、治療が1度開始されると PET は、エネルギーを使って生物活動し、
そのために究明が可能となる腫瘍細胞ゾーンをリアルタイムに示しつつ、“新陳代謝”
のガイド(案内役)を務める。
本実験プロジェクトの総投資額は 1,500 万ユーロで、トモセラピー機械のコストは
300 万ユーロであった。総投資額の 30%は保健衛生省が負担し、70%は、サン・ラッ
ファエーレ機関が出資した。
ミラノ、ローマ、アヴィアーノ、バーリ、ナポリ、ジェノバ市のガン対策協会連盟
は 2005 年 1 月よりサン・ラッファエーレ病院の実験に協力しており、既に 30 名の患
者が治療中、あるいは治療を終了している。来る何ヶ月間において専門家達は治療結
果と不測の副作用等の結果を割り出し、本年末までには更に幅広い適用実施を予定し
ている。
以上
(参考資料)
コッリエーレ・デッラ・セーラ紙、他
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【産業技術】ナノテク
ナノテクを利用した画期的デジタルメモリデバイス開発 (米国)
州 立 カ リ フ ォ ル ニ ア 大 学 ロ ス ア ン ジ ェ ル ス 校 ( UCLA ) の 工 学 部 ( School of
Engineering and Applied Science)の研究チームは、溶解処理を利用したプラスチッ
クを材料とする不揮発性メモリデバイスを開発したと発表。米 Nature Material 誌オ
ンライン版の 11 月 28 日に、この技術についての概要が掲載された。このデバイスは、
金ナノ粒子を含むポリスチレンから作られており、低コストで、高速そして高密度の
メモリストレージの実現が可能となる。
この研究チームのリーダーで、同大学同学部にて材料科学の教鞭をとる Yang Yang
教授は、「今回開発したデバイスは、ナノ粒子により誘発される現象を利用したもので、
ナノサイズの金の粒子が、電荷を保存し、メモリデバイスとして機能する。この開発
の画期的な点は、一般的なポリスチレンというプラスチック材と、ナノ粒子というハ
イテク材料を組み合わせたことである。ポリスチレンを利用した製品は、家庭やオフ
ィスでも非常に一般的に使用されていて、形状も自由になる」と述べる。
Yang 教授は以前から、同様のメモリデバイスの開発を行っていたが、前バージョ
ンは真空槽の中でしか機能しなかったので、さらに簡単なプロセスのメモリデバイス
の開発を試みてきた。ポリスチレンは、一見、メモリデバイスのためのベース材料に
は全くならないようだが、実際には非常に安価で、扱いやすい。
今回成功した溶解処理について、ポリスチレン・ベースは液体として運ばれる。よ
って、スプレー、ペイント、もしくはプリント技術にも応用できる。溶解処理を利用
した方法は、以前の真空槽の方法に比して複雑ではなく、またコストも低く、また高
密度ストレージのために立体配列上につくることもできる。
このデバイスの使用方法は、非常に幅広い範囲で可能性があり、例えば、コンピュ
ータ、デジタルカメラ、そして携帯電話などのデジタルメモリチップなどが挙げられ
る。Yang 教授は、「現在一般に使用されているフラッシュメモリは高価であり、遅い。
今回開発したプラスチック製メモリは、現行の技術よりもより安価で速いため、大き
な需要を生むと思う」とのこと。
同研究チームは、現在このメモリの寿命を長くするための研究に注力しており、そ
のゴールを 100 万サイクルの書き込みと消去が可能で、データの貯蓄を少なくとも 10
年できることとしている。
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NEDO海外レポート
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この技術の研究開発は、空軍科学研究局の補助金を受けている。また、産業界とも
連携することにより、「実務的そして商業的な面にも取り組んでいる」を同教授は述べ
る。
以上
(参考資料)
http://www.newsroom.ucla.edu/page.asp?RelNum=5705
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【産業技術】
10 カラットのダイヤモンドを作り出す新技術 (米国)
- 光学、科学技術応用に好ましい透明ダイヤモンド材料 -
ワシントン D.C.のカーネギー研究所の研究者が、化学蒸着法(CVD)プロセスを使用
して、急速な成長速度(時速 100 マイクロメーター)で 10 カラット、半インチ厚さの単
結晶ダイヤモンドを作り出した。このサイズは、標準の高圧/高温(HPHT)法や他の
CVD 技術によって作られた市販のダイヤモンドのおよそ 5 倍である。
さらに、チームはその CVD プロセスにより、紫外線から赤外線波長まで無色透明
の単結晶ダイヤモンドを作り出した。ほとんどの HPHT 人造ダイヤモンドは黄色で、
また CVD ダイヤモンドはほとんど褐色である。そのためその光学的応用範囲は制限
されている。
無色のダイヤモンドは製造が高価である。したがって、これまでに報告されている
サイズは小さい。これは、光学や科学的研究の宝石として、これらのダイヤモンドの
一般的応用を制限している。
昨年、カーネギーの研究者は、HPHT アニーリングが、ある CVD ダイヤモンドの
光学的性質だけでなく硬さも向上させることを発見した。その後、新しい技術を使用
して、カーネギーの科学者は HPHT アニーリングを使わない CVD 法により、透明な
ダイヤモンドの成長に成功した。
「3 カラットを越える高品質結晶は、従来の方法で製造するのは非常に困難である。
いくつかのグループは、CVD によって単結晶ダイヤモンドの成長を開始した。しかし、
大型で無色、無傷なものは難問のままである。10 カラット、半インチ CVD ダイヤモ
ンドの我々の製造法は、大きななブレークスルーである」とカーネギー研究所でダイ
ヤモンドに取り組む、科学者ラッセル・ヘムリーは語った。
この結果は、第 10 回国際ニュー・ダイヤモンド科学技術会議(2005 年 5 月 12 日、
つくば、日本)で報告され、また応用ダイヤモンド会議(2005 年 5 月 18 日、アルゴン
ヌ、イリノイ州)で報告される。
「大型の単結晶ダイヤモンドの急速合成は科学上の素晴らしい業績で、広範囲の科
学的・商業的応用に影響をもたらす」とこの研究に資金提供した全米科学財団(NSF)
地球科学部門のプログラム責任者であるデービッド・ランベルトは語る。
結晶サイズをさらに増加させるために、カーネギーの研究者は、この CVD プロセ
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スによりダイヤモンド基板の 6 つの面で宝石品質ダイヤモンドを連続して成長させた。
この方法によって、インチ幅の無色単結晶ダイヤモンドの 3 次元成長が達成可能であ
る。最終的に、この CVD 単結晶ブロックを使って、種々の新しい形状が作り上げら
れた。
カーネギー研究所のプロセスの標準的な成長速度は時速 100 マイクロメーターであ
る、しかし、時速 300 マイクロメーターを越える成長速度が達成され、さらに、時速
1 ミリメートルも可能であろう。さらに高速な成長速度と低価格で作製された無色ダ
イヤモンドにより、大量のダイヤモンド塊は様々な応用に利用可能であるに違いない。
ヘムリーは、「ダイヤモンド時代が近づいている」と語っている。
以上
(出典:http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104182&org=olpa&from=news)
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【産業技術】
新たな高解像度の地上望遠鏡の開発 (米国)
現在、世界的に最も注目されている新型地上望遠鏡の製作計画を立てている Large
Synoptic Survey Telescope(LSST)社が、アリゾナ大学ミラー研究所(University of
Arizona Steward Observatory Mirror Lab.)と 230 万ドルの契約を結んだことを、
2005 年 1 月 11 日にサンディエゴで開催されていた米国天文学会にて発表。これによ
り、このユニークな地上望遠鏡の開発プロジェクトが実際の製作に向けて、いよいよ
第一歩を踏み出すことになった。ミラー研究所は、この望遠鏡で使用する、直径 8.4
メートルに及ぶ主ミラーレンズの作製にとりかかる。
社名と同じく、Large Synoptic Survey Telescope(LSST)と名づけられている、この
計画中の大型の地上望遠鏡について、州立カリフォルニア大学デイビス校(UC デイ
ビス校)の物理学の教授であり、LSST 社のディレクターでもある J. Anthony Tyson
物理学教授は、「天体観測のための全く新たな窓を開ける」と述べる。同教授は、この
望遠鏡の製作は、超小型電子技術、ソフトウェア技術、そして大型光学製作技術のそ
れぞれの進化により実現が可能となる大きな飛躍であるという。
この地上望遠鏡は、10 秒ごとにイメージを撮影することができる設計である。これ
により、刻々と変化する物体及び、超新星や地球に接近する小惑星といった高速で移
動する物体の観測にも役立つようになる。また、この望遠鏡が備える予定の 30 億ピ
クセルの高解像度を持つデジタルカメラは、一晩で 30 テラバイトの画像データを作
製する。さらに、この LSST のデータは常に公共のものとし、誰でも利用できるもの
とする計画である。この望遠鏡を使用すれば、全天体を 3 日ごとに撮影、調査できる
ようになる。また、重力によって歪められた、遠く離れた銀河からの光を探索するこ
とも可能で、宇宙の大部分を構成していると考えられているミステリアスなダークマ
ターや暗黒のエネルギーの解明にも役立つと思われており、宇宙の拡大の歴史の理解
も深まると期待されている。
今回の契約は、1,380 万ドルが見込まれている主ミラー作製の一部分として使われ
る。この作製においては、デザイン、キャスト、研磨、そしてミラーの組み立てとい
う 4 工程が経られる。ミラー部の作製については、同ミラー研究所チームが、ミラー
の原料となるホウケイ酸ガラスを溶かし、六角体の箱の型に流し込む。この型により、
強固で軽量の蜂の巣状となるミラーが形作られる。ホウケイ酸ガラスが流し込まれた
この型は、その後キャスティング工程に入り、巨大な加熱炉内を 1 分間に 7 回転をす
る。その時の加熱炉内の最高温度は摂氏 1,180 度まで上昇する。ミラー研究所は、こ
れまでに直径 6.5 メートルのミラー4 つと、直径 8.4 メートルのミラー2 つを同様の技
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
術で、過去 10 年間作製してきている。しかし、これまでの直径 8.4 メートルの望遠鏡
と、今回の LSST のミラー製作で大きく異なる点は、LSST では 3 つの鏡を設計同様
に配置する点であるとされる。
LSST 社は、Research Corporation 社、アリゾナ大学、ワシントン大学、そして米
国立光学天文台そして米国中の 100 人を超える天文学者、物理学者、そしてエンジニ
ア達の参加により設立された。この望遠鏡は早ければ 2012 年には利用ができるよう
になる計画である。
以上
(参考資料)
http://www.lsst.org
http://www.news.ucdavis.edu/search/news_detail.lasso?id=7246
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【ニュースフラッシュ】
米国-今週の動き (05/13/05~05/26/05)
NEDO ワシントン事務所
Ⅰ
新エネ・省エネ
4 月/
22:アイオワ州知事、再生可能エネルギー利用推進を定めた州政令を発令
Tom Vilsack アイオワ州知事(民)が、州内の再生可能エネルギー利用推進を目的とする州知事政令
(第 41 号)を発令。州政府機関に対し、「2010 年までに州政府所有施設のエネルギー消費を 2000
年レベルより平均 15%削減すること」、「州政府機関はライフサイクルコストが最も低い装置を調
達すること」、「州政府のビルについて、2010 年までに電力消費量の 10%を代替エネルギー資源で
賄うこと」、「2010 年までに、調達する普通乗用車及び小型トラックを代替燃料車またはハイブリ
ッド電気自動車とすること」、「購入するディーゼル燃料の再生可能燃料含有率を、2007 年で最低
5%、2008 年で 10%、2010 年までに 20%まで拡大すること」などを指示。(State of Iowa Executive
Order #41)
28:ノースダコタ州知事、多様なエネルギーインセンティブを盛り込んだ包括法案に署名
John Hoeven ノースダコタ州知事(共)は 4 月 22 日、風力エネルギーやバイオ燃料の生産促進、及
び、再生可能エネルギーと在来型エネルギーの双方を市場へ運ぶために必要となる送電基盤の向上
を狙った包括法案に署名し、これを法制化。新法令によって、同州商務省内に再生可能エネルギー
部が新設されることになるほか、再生可能エネルギー部門に利をもたらす風力、エタノール、バイ
オディーゼル、水素関連の新イニシアティブも確立される。 (RenewableEnergyAccess.com)
5 月/
12:Taft オハイオ州知事、燃料電池技術に 5 億ドルの投資を約束
Bob Taft オハイオ州知事(共)がオハイオ州燃料電池同盟第 4 回年次会合の席で、今年 11 月の投票
で雇用創出公債が可決された場合、20 億ドルの公債の内の 5 億ドルを自動車用燃料電池の開発・
商用化に充てる意向と発表。同州知事によると、この投資は、同州が自動車技術開発でリーダーシ
ップを奪還し、雇用を州内に維持するうえで役立つという。一方で、自動車メーカーがガソリンエ
ン ジ ンか ら 燃 料 電 池 へ と 転 換 す る ことに より、同州 は 14.5 万 の 雇用を失うと の推定もある。
(Greenwire; The Cleveland Plain Dealer)
17:海洋エネルギーを電気に変える新型発電ブイ
オレゴン州立大学(OSU)のエンジニア等が海の波エネルギーを利用して発電する永久磁石リニア
発電ブイと呼ばれるブイ試作品を開発。1本のブイが 250kW の発電能力を持ちうる。海洋エネル
ギーは、風力発電より 15~20 年遅れたクリーンエネルギー技術だが、風力よりも予測可能かつ利
用可能であり、エネルギー密度も高い。OSU の Annette von Jouanne 女史と Alan Wallace 氏は、
27 万ドルの全米科学財団(NSF)のグラントを始め、数々のパートナーからのグラント資金を利用し
て、この研究を指導中。両研究者は、オレゴン州ガージナーに建設予定の 500 万ドルの研究センタ
ーで 2 年後にブイ・システムをテストすることを目標に、研究継続のための資金を求めている。
(NSF Discoveries)
20:Alexander 上院議員と Warner 上院議員、風力発電生産税控除に制限を設ける法案を提出
Lamar Alexander 上院議員(共、テネシー州)と John Warner 上院議員(共、バージニア州)が、
「風力発電プロジェクトが利用できる生産税控除に制限を設ける法案(上院第 1034 号議案)」を
提案。同法案は、海上の風力発電プロジェクト全て、また陸上の風力発電プロジェクトの中で軍事
基地・国立公園・景勝地から 20 マイル以内にあるものは、生産税控除の対象から外すというもの。
さらに、法案では、州の境界線から 20 マイル以内の沖合い風力発電プロジェクトについても、地
方自治体が阻止可能になる。風力発電業界や環境保護者等は、風力発電プロジェクトの資金調達の
妨げとなり、汚染の増大や、同産業関連雇用の喪失につながると法案を厳しく批判。(Environment
and Energy Daily)
Ⅱ 環 境
5 月/
9:ゼネラル・エレクトリック社、環境問題に対応する新キャンペーンを発表
ゼネラル・エレクトリック(GE)社は 5 月 9 日に、地球温暖化や水不足等の環境問題を念頭におい
た新たな総合投資計画を発表予定。「クリーンコール発電技術など環境調和型技術への投資倍増
(2010 年までに 15 億ドル)」、「風力タービン、ソーラーパネル等のエコフレンドリー技術の販売
倍増(2010 年までに 200 億ドル)」、「温室効果ガス排出を 2012 年までに 2004 年水準より 1%削減」、
「自社のエネルギー効率の 30%改善」等が内容。GE の約束する 1%の温室効果ガス排出削減は、
京都議定書や、フォード・デュポン・IBM 等の自主削減目標ほど大胆ではないものの、ブッシュ
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NO.956, 2005. 6. 1
政権の地球温暖化政策よりはかなり野心的な目標。(Greenwire; Wall Street Journal)
10:環境保護庁、ナノ材料に関する公開会合を開催予定
環境保護庁(EPA)では 6 月 23 日に公開会合を開催し、ナノレベルの材料に関連する健康上及び環
境上のリスクを自発的に研究・報告するパイロット計画について討議予定。ナノレベル材料は、一
部が新規化学物質として有毒物質規制法(TSCA)下で通達義務が課される一方、一部は既存化学物
質として TSCA 通達義務の対象外とされる。しかしながら、既存化学物質に分類される材料であ
っても、ナノレベルになることで分子構造や特性が異なることがある。このため、EPA ではこう
した材料への暴露に関連する危険から人間や環境を守るため、実施可能な研究・報告方法を摸索中。
現時点では自主的パイロット計画を検討中であり、業界やその他利害関係者に対し、計画の規模・
目的、リスク評価に必要な情報の種類等についてのコメントを求めている。(Federal Register)
12:環境保護庁、燃費実験方法を変更
環境保護庁(EPA)の高官が今週初めに伝えたところによれば、EPA は新車の燃費を計算するテスト
方法に変更を予定。より現実的な走行時の数値を出す目的で、「高速運転テスト(時速最高 80 マイ
ルで走行)」、「極暑テスト(華氏 95 度の赤外線灯の下で、エアコンを最強にして走行)」、「極寒テ
スト(華氏 20 度で走行)」の 3 つの追加テストが勘考されている。これまで EPA 内で行われてき
た研究では、提案されている上記の 3 テストが燃料効率を 12~29%押し下げ、特にハイブリッド
車で下落幅が大きくなるため、自動車メーカーはこの計画に批判的で、これらのテストが極端すぎ、
平均的な走行状況における燃費の正確な測定値を提供するものではないと指摘。(Greenwire; Wall
Street Journal)
14:ブッシュ政策を拒絶し、京都議定書の規定を受容する米国 132 都市の市長
米国 35 州 132 都市の市長が、地方レベルで地球温暖化と闘う超党派同盟に加入し、2012 年まで
に温室効果ガス排出を 1990 年水準の 7%減まで削減するという京都議定書目標の達成を誓った。
今年 2 月の京都議定書発効時に温室効果ガス排出削減を誓約した Greg Nickels シアトル市長 (民)
を中心とするこの同盟では、140 市長の加盟が目標。ブッシュ政権は国家経済への影響を理由に京
都議定書から離脱したが、シアトル市長は、同盟に参加する市長の大半が経済活力への懸念を理由
に加盟していると指摘。加盟都市の多くは、海面上昇を懸念する沿岸州の都市(シアトル、ニュー
ヨーク、ニューオーリンズ、バージニア州アレクサンドリア、マウイ等)。一方、ネブラスカ州ベ
ルビュー市のように、旱魃が農村に及ぼす影響を懸念する内陸部の市長数名もこの同盟に参加。
(New York Times)
Ⅲ 産業技術
5 月/
6:燃料電池に有望とみられる、金属付着のナノチューブ
国立標準規格技術研究所(NIST)の理論家 Taner Yildirim とトルコ人物理学者 Salim Ciraci が、確
立された量子物理学の原理を基に、単層カーボン・ナノチューブの表面にチタニウムその他の遷移
金属を付着させることで、単層カーボン・ナノチューブが効率的水素貯蔵に必要となる以上の水素
分子を捕獲可能であると予測。この予測が実証可能となった場合、FreedomCar 研究パートナーシ
ップの定める最小貯蔵能力要件を上回る量の水素貯蔵や、実用的水素貯蔵になくてはならない可逆
の脱離特性(水素・チタニウム結合の可能性が示されることとなる。(NIST News Release)
6:アルゴンヌ国立研究所、新ナノスケール材料センター建設の起工式を開催
エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所に新設されるナノスケール材料センター(2007 年
開設予定)の起工式に、Samuel Bodman エネルギー長官や Rod Blagojevich イリノイ州知事(民)等
が出席。DOE 科学部では、国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)に貢献するため、ナノス
ケール科学研究センターを 5 ヶ所構築するが、アルゴンヌのセンターはその一つ。施設床面積 8.5
万平方 ft、予想建設費 7,200 万ドルで、DOE とイリノイ州が経費を折半予定。センターの使命は、
ナノスケールのレベルで新たな洞察を与えるような新材料を生み出すための先進計器の基礎研究
と開発の支援。(Argonne News Release)
11:国立標準規格技術研究所、米国の測定能力とインフラの現状調査イニシアティブを開始
国立標準規格技術研究所(NIST)が「強力な技術革新基盤の構築を目指すアメリカの測定ニーズのロ
ードマップ作成」と呼ばれる新たなイニシアティブを発表。目的は、将来の技術革新、米国産業の
競争力、安全保障、生活の質を確保するために、測定能力にどのような進展が必要かを特定するこ
と。現在は、第一段階として情報収集を行っており、ニーズ把握のための業界別・技術別ワークシ
ョップの開催、既刊の技術別ロードマップやワークショップ報告書の収集検討を実施。また NIST
は 2006 年序盤に第一回米国測定サミットを開催予定。同イニシアティブは米国の測定システムの
全貌を明らかにし、全般的健全性を評価する初の試みであり、2007 年年頭に報告書を刊行予定。
(NIST News Release)
13:スペースシャトルとハッブル望遠鏡の予算増額のため、本年度予算を改定する NASA
米航空宇宙局(NASA)の Michael Griffin 新局長が上院歳出委員会商務省・司法省・科学担当小委員
会の公聴会で、スペースシャトルの飛行再開、国際宇宙ステーション建設の完成、 次世代有人宇
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宙船「Crew Exploration Vehicle」開発の促進、という同局の優先プロジェクト向け資金を増額す
るため、今年の歳出計画を改定する計画であると発表。同局長はまた、NASA はスペースシャトル
によるハッブル望遠鏡修理ミッションを継続する意向であり、O’Keefe NASA 前局長による有人
修理ミッション中止決定を再評価していると発言したほか、修理ミッションについては数回のスペ
ースシャトル・テスト飛行の後に、安全性を考慮しながら決定を下すことになると証言。(New York
Times, May 13, 2005)
Ⅳ 議会・その他
4 月/
29:超党派の下院議員 67 名、再生可能エネルギー予算削減に抗議する書簡を送付
Greg Walden (共、オレゴン州)や Mark Udall(民、コロラド州)ら下院議員計 67 名が、エネルギー
省(DOE)の 2006 年度エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)予算の 2005 年度水準での維
持を求める書簡を、下院歳出委員会エネルギー水資源担当小委の David Hobson 下院議長(共、オ
ハイオ州)に送付。下院議員達は同書簡で、ブッシュ政権の水素イニシアティブ投資案への支持を
表明する一方、バイオマス・燃料、地熱・水力発電、太陽光発電等の EERE プログラムの予算削
減に対し、1)エネルギー供給変動に対する脆弱性の深刻化、2)燃料価格の不安定性の深刻化、3)代
替エネルギー技術市場のシェアの損失(対日本や対ドイツ)、といった要因をあげ、懸念を表明。
(RenewableEnergyAccess.com)
5 月/
6:全米科学財団予算増額を要求する書簡、下院で幅広い支持を獲得
Vernon Ehlers 下院議員(共、ミシガン州)と Rush Holt 下院議員(民、ニュージャージー州)が、全
米科学財団(NSF)の 2006 年度予算増額(大統領要求の 56 億ドル→8.8%増の 61 億ドル)を求める
書簡を行政府へ送付すべく準備中。すでに 163 名の下院議員の署名を獲得。下院科学委の共和党メ
ンバー22 名の内、Sherwood Boehlert 科学委員長(共、ニューヨーク州)を始めとする 13 名も署名。
2002 年 12 月制定の NSF 予算倍増 5 ヵ年認可法が 2006 年度予算として認可している 85 億ドルに
は手が届かないものの、2005 年度予算の削減額 (前年度比 1.8 億ドル減) を復活させ、過去の NSF
予算額に準じる増額を計上することが狙い。(Manufacturing & Technology News)
13:Bingaman 上院議員、上院エネルギー法案への環境条項添付を思案中
上院エネルギー・天然資源委員会の民主党リーダーJeff Bingaman 上院議員(民、ニューメキシコ
州)は、昨年 12 月に全米エネルギー政策委員会が発表した報告書「エネルギーの膠着状態の打開:
アメリカのエネルギー問題に対処する超党派戦略」で提案した温室効果ガスの上限設定-取引制度
を、エネルギー法案への修正法案として提案することを検討中。上院エネルギー・天然資源委員会
の Pete Domenici 委員長(共、ニューメキシコ州)がより超党派的なエネルギー法案を目指してい
るため、同法案に気候変動条項を盛り込もうという発想。Bingaman 上院議員がこの修正法案に関
心を抱いた理由は、この計画の方が他の気候変動対策に比べて経済への弊害が少ないというエネル
ギー情報局(EIA)の分析結果にある模様。(Energy & Environment Daily)
13:米国の大学、商務省産業安全保障局の輸出ライセンス規制変更の影響を懸念
商務省産業安全保障局が先頃、輸出管理規制に 2 つの変更を提案。米国内で研究を行う一部の外国
人を対象に、機密性の高い検査機器の使用に制限を課すという内容。具体的には、「許可証の義務
付けに大学での基礎研究が含まれることを明言化」、「みなし輸出ライセンスの許可基準を外国人
の国籍ではなく出生国に適用」というもの。変更案は 3 月 28 日付けの Federal Registrar に発表
され、5 月 27 日まで一般の意見を受け付け中。(Science)
18:全米科学振興協会、ビザ発給プロセスの更なる改正を要求
外国人留学生・学者・研究者へのビザ発給プロセス改正を加速化するよう米国政府に働きかけるた
め、5 月 18 日、全米科学振興協会(AAAS)が 39 の主力学会や科学・技術協会に加わった。グルー
プは過去 1 年間の進展を認めた上で、さらに 6 つの提言として、「海外の学生に加え海外の学者・
科学者について、ビザの保全許可証の有効期間を現行の 2 年から任務の全期間に延長する」、「海外
からの学生、学者、科学者、エンジニアが米国内でビザを更新可能とする」、「中国等主要国とビザ
互恵条約を再交渉し、米国民に対する相手国の政策と同等のものとする」、「学生は学業修了ととも
に母国に帰る意図があることを証明するよう要求している事項を改正する」、「海外の学生、学者、
科学者、エンジニアが米国での高等教育や研究機会を追求するよう奨励する国家戦略を策定する」、
「米国で基礎研究を行う海外の科学者やエンジニアが機密性の高い機器を使用することを制限す
るという輸出許可管理規制の改正案を採択しない」等を提言。(AAAS News Release)
43
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
【ニュースフラッシュ】
956 号
今週の Web Headlines から
NEDO 情報・システム部
Ⅰ
LS: ライフサイエンス
1. 生体物質との連結で移植用プラスチックの潜在能力が向上(2005/05/16)
- テキサス大学オースチン校が、プラスチック(ポリピロール)と連結するペプチド(T59)を発見。ポリピ
ロールは無毒で電気伝導性があるため、組織工学等での生医学的用途に期待が高い合成ポリマー。T59
がポリピロールと神経再生、血管新生等の生体内機能を促進する分子とを結び付け固定することができ
れば、さらに可能性が拡がる。
Engineers Improve Plastic's Potential for Use in Implants by Discovering Way to Link It to
Biological Materials
http://www.engr.utexas.edu/news/articles/20050516815/index.cfm
2. 脂肪コネクション(2005/05/16)
- イスラエルとスウェーデンの研究で過剰な血中脂肪と糖尿病発症の関係が明らかになり、肥満と糖尿
病の関連性が更に強まった。重要な役割を果たすのが膵臓β細胞上の GPR40 受容体で、血中脂肪酸に
反応してインスリン産生を増加する。遺伝子を操作したマウスを使った実験では、GPR40 の過剰発現が
発病を加速する結果となっている。
The Fat Connection
http://www.weizmann-usa.org/site/News2?page=NewsArticle&id=6508
3. 光触媒反応でバクテリアをやっつける(2005/05/13)
- フランスで二酸化チタンを光触媒として使用した空気洗浄装置が開発された。空気を装置に通し、空
気中のバクテリアを二酸化チタンの表面に付着させ、紫外線に当てることで無害な有機体と二酸化炭素・
水分に変換する方法。紫外線でバクテリアを焼殺する方法も実用化されているが、紫外線が人を含め病
原菌以外の生物にも害となる。新装置は低レベルのエネルギーで十分で危険性も低く、病院等人が集ま
る場所での使用が容易になる。
Catalytic Reaction Zaps Bacteria
http://www.nature.com/news/2005/050509/full/050509-14.html
4. Community Sequencing Program の 2006 年度ゲノム解読対象生物が決定(2005/05/12)
- DOE 共同ゲノム研究所が、今年度新たに開始する 40 以上の新しいゲノム解読プロジェクトについて
発表した。モロコシ、ナマズ、クラスタシィアンから極限微生物群に至る生物ゲノム情報は、世界農業、
気候変動、廃棄物浄化、代替エネルギー等の研究に役立つ。
DOE JGI Announces 2006 Community Sequencing Program Portfolio
http://www.jgi.doe.gov/News/news_5_12_05.html
5. 「ロボット・ドクター」で患者の予後を改善(2005/05/11)
- オレゴン健康科学大学ではロボットで行う術後患者の「遠隔回診」に取り組んでいる。In-Touch Health
社製のロボット(RP-6)は、高さ 5 フィート(152cm)のコードレスで、デジタルビデオカメラ、フラット
パネル・スピーカー、マイクロフォンを装備、インターネットを通じて医師と患者は対話できる。
OHSU Studies Whether 'Robo-Doc' Improves Patient Outcomes
http://www.ohsu.edu/ohsuedu/newspub/releases/051105robodoc.cfm
6. 細胞小器官 Vault―生物学的ミステリーからナノテクの主力商品へ?(2005/05/11)
- カリフォルニア大学ロサンゼルス校で、細胞膜を通過できる vault を治療薬や DNA の運搬媒体とす
ることに成功。ナノスケール・マシンの構造成分として注目される。Vault はヒトから粘菌まで共通して
細胞内に存在する中空・樽型の細胞小器官で、その機能は未だに不明。Vault が存在しない場合も生物と
しては何の異常も見られないことが確認されている。
Vaults: From Biological Mystery to Nanotech Workhorse?
http://www.nsf.gov/discoveries/disc_summ.jsp?cntn_id=104106&org=NSF&from=news
7. ロボット・アームを自分の腕のように使うサル(2005/05/10)
- 脳の信号でロボット・アームを操作するように訓練されたサルは、脳の構造自体に変化が見られると、
デューク大学神経工学センターが報告。サルはロボット・アームと自分の腕を交互に使うことができ、場
合によっては両方同時に別々の用途で使うこともできるようになっていた。人工四肢装置の成功には脳
の変化も重要で、そのために十分な感覚的フィードバックが必要であると研究者は考えている。
Monkeys Adapt Robot Arm as Their Own
http://dukemednews.duke.edu/news/article.php?id=8662
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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海外レポート956号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/956/
8. 金ナノ粒子で癌検知が簡単になる(2005/05/09)
- ジョージア工科大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校では、金ナノ粒子で癌細胞を輝かせ、
顕微鏡でも簡単に検知できるような検査方法を研究中。上皮成長因子受容体(EFGR)は健康な細胞より
も癌細胞表面に多く発現することを利用し、金ナノ粒子と EFGR 抗体を結合させて、癌細胞表面に付着
させる仕組み。
Gold Nanoparticles May Simplify Cancer Detection
http://www.gatech.edu/news-room/release.php?id=561
9. 癌遺伝子を抑制する方法(2005/05/09)
- ユタ大学ハンツマン癌研究所が、ヒト腫瘍の 30%に見られる Ras 遺伝子変異の腫瘍形成能力を抑制す
る方法を発見。Ras は細胞信号伝達等で重要な遺伝子だが、変異すると癌を引き起こすことが知られて
いる。Ras を制御する酵素の一つ DGKιを抑制すると、Ras による癌の発症率が低下することを皮膚癌
のマウスで確認。
Scientists Inhibit Cancer Gene
http://www.hci.utah.edu/publicweb/content/pressreleases/2005_05_09.html
10. 癌の抑制―代謝酵素が腫瘍抑制タンパク質 p53 を使って細胞複製を制御(2005/05/04)
- 代謝酵素 AMPK が細胞複製制御にも関与し、その際 p53 が重要な役割を果たすことが、ペンシルベ
ニア大学医学部のマウス実験で実証された。細胞内のブドウ糖レベルが低下すると AMPK は活性化し
細胞複製を抑止するが、p53 が欠損していると複製は持続。AMPK が細胞内エネルギー環境を感知し、
p53 を通じて細胞の複製を抑制すると考えられる。
(Keeping Cancer in Check: Penn Researchers Demonstrate that a Metabolic Enzyme Works
Through the Tumor-Suppressor Protein p53 to Control Cellular Replication
http://www.uphs.upenn.edu/news/News_Releases/may05/cellrepp53.htm)
11. 移動する細胞の謎を解明する新しいツール(2005/05/03)
- カリフォルニア大学バークレー校が開発した二光子レーザー走査顕微鏡検査。生体組織内を動き回る
細胞の時空間データを初めて定量化、細胞を追跡し記録することができる。このツールで免疫細胞を調
べたところ、ランダムに動き回る未成熟 T 細胞と目標に向かって一直線に動く活性化 T 細胞の違いが明
らかになった。
New Tool Reveals Secrets of Migrating Cells
http://www.berkeley.edu/news/media/releases/2005/05/03_robey.shtml
12. レーザー光線による角膜移植手術(2005/05/03)
- 1 秒間に 1 万 5 千パルスを放射するフェムト秒パルス・レーザーによる角膜移植手術をカリフォルニア
大学アーヴィン校(UCI)の眼科医が考案。外科医が全て手で行う手術法と比べて、抜糸までの期間が 4
分の 1、術部の強度は 10 倍になる。UCI は今年の夏までに臨床試験を開始する見込み。
UCI Eye Doctors Invent Laser-Assisted Cornea-Transplant Surgery
http://today.uci.edu/news/release_detail.asp?key=1310
13. 米国アカデミーが ES 細胞研究ガイドラインを公表(2005/04/26)
- ES 細胞を使用する研究のガイドラインを米国アカデミーの米国学術研究会議と医学研究所が共同で
作成。民間が支援する ES 細胞研究の統合性を強化し、責任を持った研究を推奨することが目的。ガイ
ドライン遵守を監視する監視委員会の設置を全関連機関に勧告している。
Guidelines Released for Embryonic Stem Cell Research
http://www4.nationalacademies.org/news.nsf/isbn/0309096537?OpenDocument
Ⅱ
IT: 情報技術
1. 日本は国際チップランキングで下落(2005/05/14)
- 日本の業界アナリストの iSuppli Japan 社によれば、日本のチップメーカーの国際市場占有率は下落
している。ほとんどの日本の IC メーカーは、2004 年売り上げで評価されたトップ 30 社リストでの順
位を下げた。ルネサステクノロジーは iSuppli 社のランキングで 3 位から 5 位へ、東芝は 5 位から 7 位
へ落ち、NEC エレクトロニクスは 8 位のままである。国際的売り上げは昨年 24 パーセント成長してい
るが、日本の半導体産業全体の成長はわずか 12 パーセントだった。さらに、日本のチップメーカーは、
大部分が国内売り上げに依存し、お互いに市場占有率を競争している。
Japan Falling in Global Chip Rankings
http://www.eetuk.com/mr/news/showArticle.jhtml;jsessionid=1NTHI5VCTCE0CQSNDBCCKH0CJ
UMEKJVN?articleID=163102451
2. NIST は暗号解読のための量子コンピューター利用の重要なステップを実証(2005/05/12)
- 国立標準技術研究所(NIST)の物理学者が、将来の量子コンピューターで今日の最も一般に用いられて
いる暗号化コードを解読する手順の重要なステップを実証した。サイエンス誌の報告のように、NIST
チームはイオンに保存された量子情報の繰り返しパターンを識別することが可能なことを示した。
45
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
NIST Demonstrates Key Step in Use of Quantum Computers for Code-Breaking
http://www.nist.gov/public_affairs/releases/fourier.htm
3. トランジスター動作をより良く記述する新しい数学モデル(2005/05/10)
- ペンシルバニア州立大学とフィリップス社の研究者は、デジタル腕時計のコンピューターから通信シ
ステムまで、多くの電子デバイスで使われている集積回路の幅広いクラスの MOS 型トランジスターの
動作について記述する新しい数学モデルを作成するためにそれぞれの方法の最良の機能を融合させた。
New Mathematical Model Better Describes Transistor Behavior
http://transcoder.usablenet.com/tt/http://www.psu.edu/ur/2005/transistorbehavior.html
4. モトローラがフラットパネル TV 用カーボンナノチューブ放射ディスプレイを発表(2005/05/09)
- モトローラ研究所がカーボンナノチューブ技術に基づいたプロトタイプの 5 インチカラーディスプレ
イを発表。ナノ放射ディスプレイ(NED)と呼ばれるこの技術は、カーボンナノチューブ技術を平面パネ
ルディスプレーに使用するためにモトローラ研究所で行なわれた研究により、ガラス面上に直接カーボ
ンナノチューブを成長させる。40 インチの NED パネルは 400 ドル未満で製造可能と予測されている。
Motorola Unveils Carbon Nanotube Emissive Display for Flat-Panel TVs
http://www.eetimes.com/news/latest/showArticle.jhtml;jsessionid=FKKCQS3LHSTGYQSNDBESK
HA?articleID=162800270
5. 有機分子は半導体表面へどのように結合するのか(2005/05/05)
- ニューヨーク大学の化学者が、有機分子が半導体表面に付着するメカニズムを解明した。半導体産業
に影響を及ぼす発見である。半導体産業は、様々な目的のために付着プロセスを開発する方法を求めて
いる。
NYU Researchers Explain How Organic Molecules Bind to Semiconductor Surfaces
http://www.nyu.edu/public.affairs/releases/detail/646
6. 高温チップを液体金属で冷却(2005/05/05)
- 熱を除去するのにファンの代わりに液体金属を使用して、熱いプロセッサーをより効率的にかつ静か
に冷却することができる。アップルの最新の G5 パワー・マックコンピューターは、そのデュアルマイ
クロプロセッサーの熱除去にヒートシンクとファンと共に冷却水を使用している。現在、テキサスのナ
ノクーラー社は、さらに静かで、かつより効率的であることを約束する液体ガリウム合金による液体金
属冷却デバイスを開発した。
Hot Chips Chilled with Liquid Metal
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7348
7. 個人用スパコンの発売(2005/05/04)
- カリフォルニアのオリオンマルチシステム社は、日常的に計算集約的研究を行なう研究者およびエン
ジニアに向けて、個人用小型スパコン DC-96 を開発、販売した。小さな冷蔵庫の大きさの DC-96 には、
96 個の相互接続した 1.2 ギガヘルツで走る低電圧マイクロプロセッサー・クラスタと 192 ギガバイトの
メモリが組み込まれている。これらのプロセッサーは、230 ギガフロップスのピーク計算能力を提供し、
その価格は 10 万ドルである。世界最高のスパコンであるローレンスリバモア国立研究所(PPPL)の IBM
の BlueGene は、70,720 ギガフロップスのピーク能力を持っている。半年毎に改訂される世界スパコン
500 リストの 500 番目は米国テレコム社 SBC Service 用の 416 プロセッサークラスターで 850 ギガフ
ロップスである。
'Personal Supercomputer' Goes on Sale
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7340
8. 神経形態マイクロチップ(2005/05/01)
- 脳の神経系に基づいたコンパクトで効率的なエレクトロニクスは、ロボットの目や他のインテリジェ
ントセンサーなどと共に、視覚回復のための移植可能なシリコン網膜を産出できるであろう。脳はニュ
ーロン間で 1 秒に比較的遅い数 1000 回の化学信号を送信しあっている、それでは脳はどのようにして
最終的に最も強力なディジタルプロセッサーより素速く効率的にタスクを処理しているのか。秘密は、
脳がその遅い動作の電子部品をどのように組織化するかに存在するように見える。
Neuromorphic Microchips
http://www.sciam.com/article.cfm?chanID=sa006&colID=1&articleID=00028999-1355-1264-8F9683
414B7FFE9F
9. 量ではなく品質のグーグルサーチ(2005/05/01)
- グーグルは、劇的にインターネットニュース検索の結果を改善させる計画である。現在の同社の検索
エンジンは、関連順にあるいは日付によって並べられ、その結果、最も最新かあるいは最も検索キーが
合致したものが、膨大なリストの一番上に現われる。これは次のことを意味する、例えば CNN や BBC
のようなより権威を持った記事は検索結果の最初のページから排除される。これは検索ラインに入力し
たキーワードに対してそれほど最新でもないとか、直接的に関連していないと言う簡単な理由である。
現在、同社は、世界中のすべてのニュースソースの実績および信用を比較し、任意の検索結果のランキ
ングに従って調整するデータベースを構築することを計画してる。
46
NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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海外レポート956号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/956/
Google Searches for Quality Not Quantity
http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn7328
10. 最先端技術の世界を生きる(2005/04/26)
- コンピューター・ディスクドライブは、1 と 0 エンコードするために小さな磁界を検知する必要があ
る。読取りヘッドはこの磁界を抵抗変化で検知する。磁界検知の高感度化で、より大きな容量のドライ
ブが可能となる。4 月 22 日のフィジカルレビューレター誌に、デバイスとしてこれまで非実用的だった
物質の抵抗を劇的に変化するために必要な磁界を著しく低下させた巨大磁気抵抗の結果が東京大学から
報告されている。
Living on the Edge
http://focus.aps.org/story/v15/st15
Ⅲ
EV: 環境
1. 国連の気候変動対策基金への拠出を渋る英国(2005/05/12)
- 独立系シンクタンク「New Economics Foundation」によると、国連が発展途上国の気候変動対策を
支援するために設置した 2 種類の基金について、英国の貢献度は芳しくない。「特別気候変動基金」へ
の初回の拠出は一応 6 月に実施される予定だが、「後発展途上国(LDC)基金」に関しては、政府が出
資の有効性を調査する。国際開発省報道官は、税金を適切に利用するためと説明。
Britain 'Dodges' UN Climate Funds
http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4540107.stm
2. 米国の「2003 年有害化学物質排出インベントリー(TRI)」が公表され、排出量の減少が明らかに
(2005/05/11)
- 米国環境保護庁(EPA)が公表した「2003 年有害化学物質排出インベントリー(TRI)」によれば、
同年、2 万 3 千ヶ所を超える産業施設から排出された有害化学物質の量は 2002 年に比べ 6%減、1998
年以降は合計で 42%減少していることが分かった。
2003 Toxics Release Inventory Shows Continued Decline in Chemical Releases
http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/b1ab9f485b098972852562e7004dc686/4cfaabdabe904d3b
85256ffe0058ba78!OpenDocument
http://www.epa.gov/tri/tridata/tri03/index.htm(2003 年 TRI データ)
3. 国連による気候変動対策への支援呼びかけに財界が応じる(2005/05/10)
- 国連並びに国連環境計画(UNEP)等は投資家を対象に気候変動対策に関するサミットをニューヨー
クで開催し、「2005 年行動計画」を提唱した。参集範囲は欧州の機関投資家、米国各州の財務関連部局、
年金基金、財団等計 400 団体で、運用資産の総額は 3.22 兆ドル。サミットでは環境技術に対し 2006 年
度に 10 億ドルの投資を行うことを検討した。
Global Finance Community Joins UN to Tackle Climate Change
http://www.unep.org/Documents.Multilingual/Default.asp?DocumentID=433&ArticleID=4792&l=en
4. 気候変動評価において、地球の太陽光反射率は未知の効果(2005/05/05)
- 米国ワシントン大学の大気科学者 R.Charlson 氏等の研究内容。地球の太陽光反射率(アルベド)は、
測定方法にばらつきがありデータも不足している。現在、気候変動の研究に際しては温室効果ガスの影
響のみが重視されているが、今後はアルベドと大気中のエアロゾル、雲の相関関係についても調査が必
要である。
Earth's Reflectivity a Great Unknown in Gauging Climate Change Impacts
http://www.uwnews.org/article.asp?articleID=10043
5. 英国政府の統計「2004 年大気汚染指標(最終数値)」が公表される(2005/04/28)
- 英国政府の発表によれば、2004 年に大気の汚染度が「高い」または「通常」と区分された日数は、都
市部では 1 観測地点につき平均で 22 日(2003 年は 50 日)、農村部では 42 日(同 61 日)であった。都
市部では近年、粒子状物質や SO2 が減少傾向にあり大気の質が改善しているが、農村部では主な汚染物
質オゾンの量が気候に左右されるため、年によって大気の質に差がある。
Statistical Release Air Quality Headline Indicator for Sustainable Dvelopment:2004 (Final
Figures)
http://www.defra.gov.uk/news/2005/050428b.htm
6. 地球のエネルギー収支は不均衡(2005/04/28)
- 米航空宇宙局(NASA)等は、衛星データ並びにコンピュータモデルを利用し地球の海洋面における
エネルギー収支を調査した。その結果 1 平方メートルあたり 0.85W(ワット)の不均衡が生じており、
今世紀末までに 0.6℃の水温上昇が見込まれる。温室効果ガスにより地球から宇宙空間への熱放出が妨
げられ、太陽放射の吸収が促進されたため。
Scientists Confirm Earth's Energy Is Out of Balance
http://www.nasa.gov/vision/earth/environment/earth_energy.html
47
NEDO海外レポート
Ⅳ
NO.956, 2005. 6. 1
NT: ナノテクノロジー
1. 10 カラットのダイヤモンドを生産する新技術(2005/05/16)
- カーネギー研究所の研究者が、化学蒸着(CVD)プロセスを使用して、急速な成長速度(時速 100 マイク
ロメートル)で 10 カラットで半インチの厚さの単結晶ダイヤモンドを作りだした。このサイズは、標準
の高圧/高温(HPHT)法や他の CVD 技術によって作られた市販のダイヤモンドのおよそ 5 倍である。さ
らに、チームは紫外線から赤外線波長まで透明無色の単結晶ダイヤモンドも作り出した。
New Technique Produces 10-carat Diamond
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104182&org=olpa&from=news
2. スーパーレンズは光でナノスケールを画像化(2005/05/12)
- UC バークレイ校の物理学者が、銀の薄膜層から光学スーパーレンズを作った。このレンズは負の屈折
率を持っており、光の波長のおよそ 6 分の 1 の解像度で構造を画像化するために使用でき、いわゆる回
析限界を克服した。このレンズには、光でナノ寸法物体を画像化するような多くの応用がある。
Superlens Could Image Nanoscale with Light
http://www.nanotechweb.org/articles/news/4/5/6/1
3. ハイテクカーの水素貯蔵用金属被膜ナノチューブとバッキーボール(2005/05/10)
- 金属被膜は、無公害なの水素を動力とする車を実現可能にする、大量の水素を貯蔵できる小さなカー
ボン構造に結びつく。炭素原子のサッカーボール形バッキーボールやナノチューブは、チタンやスカン
ジウムのような金属で覆うことにより、水素を重量比で各々8%および 9%を貯蔵することができる。こ
れは多いように聞こえないかもしれないが、これまでの研究は、安全な燃料タンクが水素を重量比で 6%
以上貯蔵できれば、水素動力供給自動車が実現可能になることを示している。
Metal Coated Nanotubes and Buckyballs for Hydrogen Storage in High Tech Cars
http://www.aps.org/media/tips/tips45.cfm
4. ナノ結晶は DNA 変異を明らかに(2005/05/10)
- アリゾナ州立大学の研究者は、遺伝子の突然変異を検知するためにナノ結晶を使用する技術を開発し
た。この方法は、一塩基変異多型(SNP)として知られているポイント変異のバイオ電子的署名を作り出
す。
Nanocrystals Highlight DNA Mutations
http://www.nanotechweb.org/articles/news/4/5/5/1
5. バッキーボールはバクテリア増殖を抑制(2005/05/11)
- 水中に形成されたフラーレン集合体は生態系に影響を及ぼすことがあるというバッキーボールに関す
る警告のニュースである。ジョージア工科大学とライス大学チームからの報告書によれば、0.4ppm も
の低密度の C60 の水溶性ナノ結晶集合体は、2 つのタイプの通常の土壌バクテリアの成長を抑制する。
さらに高密度では、この集合体はバクテリアの呼吸を妨げることが発見された。
Buckyballs Inhibit Bacterial Growth
http://pubs.acs.org/cen/news/83/i20/8320buckyball.html
6. カーネギーメロン大学の化学者が規則的ナノカーボン製作に簡単な鋳造技術を適合(2005/05/06)
- カーネギーメロン大学の科学者は、長い規則的ナノ構造のポリマーフィルムを生産し、それらを容易
に高度に規則的なナノカーボンアレイに変換するために、ゾーン鋳造と呼ばれる実験技術を利用してい
る。この技術は、産業のナノエレクトロニック部品製造法を革新するであろう。
Carnegie Mellon Chemists Adapt Simple Casting Technique To Create Ordered Nanocarbons
http://www.cmu.edu/PR/releases05/050506_nano.html
7. バイオナノシステムのモータ輸送(2005/05/05)
- この分子モーターは、非常に細い棒状のフィラメントに沿って移動するナノスケールエンジンであり、
生物細胞内の膨大な量の分子の積み荷を動かす。モータとフィラメントの両方共に細胞から浮いており、
バイオ模倣輸送システムを構築するために使用できる。積荷の輸送量を増加させるためには、輸送に寄
与するモータの数を増加させることが必要であり、同時に、交通渋滞の増加を回避する必要がある。マ
ックスプランク・コロイド界面研究所およびアムステルダム大学の研究者は、種々の格納室構造やフィ
ラメント配置でのモーター輸送をモデル化し、シミュレーションして、これらのシステムのナノ積荷輸
送のための最適条件を決定した。
Motor Transport in Bio-Nano Systems
http://www.mpg.de/english/illustrationsDocumentation/documentation/pressReleases/2005/pressRe
lease20050503/
8. 金属装飾ナノチューブの燃料電池への可能性(2005/05/05)
- 新しい量子計算とコンピューターモデルが、チタンや他の遷移金属で装飾されたカーボンナノチュー
ブが、効率的な水素貯蔵に必要な数以上の水素分子を固定することができることを明らかにした。ガソ
リンに代わる手頃な無公害の燃料電池を開発する長期的な努力への可能性を持っている。国立標準技術
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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海外レポート956号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/956/
研究所(NIST)の理論家、およびトルコのビルケント大学の物理学者が、この予定外の発見をフィジカル
レビューレター誌オンライン版に報告している。確立した量子物理学の理論を使用して、チタン装飾単
層カーボンナノチューブが重量比 8 パーセント等価量の水素を蓄積できると予測している。
'Metal-Decorated' Nanotubes Hold Promise for Fuel Cells
http://www.nist.gov/public_affairs/techbeat/tb2005_0505.htm#nanotubes
9. ナノ構造がテンプレートで分岐(2005/05/05)
- レンセラー工科大学の研究者は、階層的分岐したナノワイヤーおよびナノチューブを製作するために、
セラミックテンプレートを初めて使用した。チームは、陽極の酸化アルミニウム構造内部にカーボンナ
ノチューブや金属ナノワイヤーを成長させた。
Nanostructures Branch Out with Templates
http://www.nanotechweb.org/articles/news/4/5/3/1
10. ハーバード大学の科学者が高速の統合ナノワイヤー回路を開発(2005/04/28)
- ハーバード大学の化学者およびエンジニアは、低温組み立中てのガラスチップ上でそれ自身が整列す
る、微小ナノワイヤーから強健な回路を作り、高温製造や高価なシリコン無しで、確実な性能を提供で
きる基本電子デバイスを作り出した。
Harvard Scientists Create High-Speed Integrated Nanowire Circuits
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-04/hu-hsc042705.php
11. ナノ操作パウダーが有毒化学物質に取り組む(2005/04/28)
- マグネシウム、チタンおよび酸素からなっている、FAST-ACT という有毒化学物質クリーナーは一目
したところ目立たないが、小缶からスプレーしたり散布された時に、この物質は VX 神経ガスや硫酸の
ような致死物質をつかまえて、すぐにバラバラに破壊する。全米科学財団(NSF)からのサポートで、カ
ンザス州立大学の化学者がナノ工学技術を最初に考案し FAST-ACT の開発に結びつけた。その後、この
物質の新種を作るためにナノスケールマテリアルズ社を設立し、NSF の小企業革新研究プログラム
(SBIR)により商用生産プロセスを立ち上げている。
Nano-Engineered Powders Tackle Toxic Chemicals
http://www.nsf.gov/discoveries/disc_summ.jsp?cntn_id=104102&org=olpa&from=news
Ⅴ
EN: エネルギー
1. G8 プラス 5 ヶ国がクリーンエネルギー分野での協力体制強化(2005/05/13)
- 2005 年 5 月 11~12 日、英国政府の主催で「G8(先進主要 8 ヶ国)エネルギー研究・技術革新ワークシ
ョップ」が開催された。G8 以外にも中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカが参加、クリー
ンエネルギー分野における今後の協力体制強化を目指し、先端技術の実用化に関する課題や、研究プロ
グラム評価ツールの共有方法等を検討した。
Improving Collaboration on Clean Energy
http://www.gnn.gov.uk/environment/detail.asp?ReleaseID=156525&NewsAreaID=2&NavigatedFro
mDepartment=False
http://www.ukerc.ac.uk/content/view/58/69/(参考:ワークショップの概要)
2. ドイツの研究レポート:風力発電による電力を大量に送電網へ供給することは技術的・経済的に実現
可能(2005/05/10)
- ドイツ・エネルギー・エージェンシー(dena)は国内の風力発電に関するレポートを発表。主な内容
は次の通り。1)設備導入容量は現在の約 17GW から 2015 年には 36GW に拡大し、電力消費量の 14%
を賄う可能性がある。2)風力発電の増加に伴い必要となる送電網の整備はそれほど大規模ではなく、
2015 年までに 850km の高圧送電線を新設し、既存の送電線 400km をアップグレードすればよい。
Large Scale Integration of Wind Energy in the Electricity System is Technically and Economically
Feasible, According to German Study
http://www.ewea.org/documents/0510_EWEA_BWE_VDMA_dena_RELEASE.pdf
3. 寿命の長い電池の開発を導くシリコン技術(2005/05/10)
- 米国ロチェスター大学は、水素同位体のトリチウムを燃料とする新型電池「BetaBattery」を開発し
た。特徴は厚さ 0.5mm の多孔性シリコン・ダイオードを採用した点で、トリチウムから放出される電
子を吸収する表面積が広いので、効率よく電流を発生させることができる。耐用年数も数十年と長く、
衛星や気象観測装置等に使用可能。
Silicon Solution Could Lead to a Truly Long-life Battery
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104140&org=NSF&from=news
(2005/05/13
New 'Nuclear Battery' Runs 10 Years, 10 Times More Powerful
http://www.rochester.edu/news/show.php?id=2154)
4. 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授陣が原子力エネルギー計画を提案(2005/05/09)
- 米国政府でエネルギー/国防関係の要職を歴任した MIT の教授陣が、原子力エネルギー開発の実用的
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
な計画を提案。現在ウラン濃縮やプルトニウム再処理を行っている国を「燃料サイクル国」、それ以外の
国を「ユーザー国」と区分し、前者はユーザー国が原子力発電所で使用する燃料を提供し、廃棄・再処
理対象となる使用済み燃料を引き取る。一方、後者は濃縮・再処理技術を導入しないことを確約する。
核兵器拡散の危険性を回避することが目的。
MIT Profs, Colleagues Propose Plan for Nuclear Energy
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-05/miot-mpc050905.php
5. エネルギー新興企業はナノテクノロジーに期待(2005/05/03)
- 太陽電池を生産する既存技術があまりにも高価なままであるので、光発電モジュールの広範囲な導入
を可能にすることができない。しかし操業開始企業の新しい一群は、はるかに低い価格で高性能をもた
らすと約束する、ナノ構造化太陽電池の商業化を開始している。例えば、スイスのローザンヌ工科大学
のスピンオフのグレイトセル社は、現在、オーストラリアの STI と共同で、太陽電池の活性部分が、ガ
ラス基板上の薄膜層に作られた 3-3.2eV の大きなバンドギャップの半導体酸化チタンナノ粒子である、
染料増感太陽電池(DSC)の小規模生産を行っている。。
Energy Start-Ups Bank on Nanotechnology
http://www.nanotechweb.org/articles/news/4/5/2/1
6. 太陽電池から太陽集熱器まで:革新的で環境に優しいビル設計方法の評価と改善(2005/05/02)
- 環境に優しい「グリーン・ビルディング」は、一旦建設されると、その後は性能を公表しないケース
が多い。米国のウッズホール研究所(WHRC)は 2003 年に建設した Ordway ビルディングについて、
内部の電気・熱・空気・温水の流れ等をほぼリアルタイムに下記 URL で開示。この施設は WHRC の従
来のビルに比べエネルギー使用量や排気が少なく電力の 34%を太陽電池で自家発電している。
From Photovoltaics to Solar Thermal Collectors: Evaluating and Improving Innovative Green
Design
http://www.whrc.org/pressroom/press_releases/PR-2005-05-02-building.htm
http://www.whrc.org/building/education/performance.htm (ビルの性能を開示している URL)
7. 再 生可 能エ ネ ルギ ー発電 シ ステ ム購入の経済効果を判定するツール「Clean Power Estimator」
(2005/04/27)
- 米国ノースカロライナ州立大学のソーラーセンターは、国内の消費者が太陽電池(PV)システムを導
入した場合のコストと投資効果を算出するツール「Clean Power Estimator」をウェブ上で提供。居住
地をメニューから選択すると、導入コスト、電気料金、PV で発電可能な電力量、CO2 排出削減量等多
数の項目について試算結果が表示される。
Clean Power Estimator Identifies Consumer Benefits of Purchasing Renewable Energy Systems
http://www.ncsc.ncsu.edu/news/news_story.cfm?ID=202
http://www.clean-power.com/nc/ (「Clean Power Estimator」の URL)
8. 大量の水素を生産し、廃水処理を行う微生物燃料電池(2005/04/22)
- 米国ペンシルバニア州立大学は「BEAMR」と呼ばれる新しい微生物燃料電池を開発した。バイオマ
スから嫌気性発酵により水素を生産する仕組みであるが、0.25V という微量の電圧を加えることにより、
従来の微生物燃料電池に比べ水素の生産量は 4 倍である。同時に廃水の浄化処理も行うことができる。
Microbial Fuel Cell: High Yield Hydrogen Source and Wastewater Cleaner
http://live.psu.edu/story/11709
http://www.psu.edu/ur/2005/hydrogensource.html
(2005/04/25 Waste Not, Want Not
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104098&org=olpa&from=news)
Ⅵ
PL: 政策
1. EC、ヒト組織工学を用いた先端治療に必要な規制について一般の意見を求める(2005/5/19)
- EC は現在、生体組織を用いたヒト組織工学の明確な規制枠組み草案を準備中である。今年後半に予定
されている草案審議に先駆け、6 月 20 日まで公示期間を設け、広く一般の意見を募集中。
Tissue engineering: Commission Consults Public on How to Regulate Advanced Therapies
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/05/575&format=HTML&aged=0&la
nguage=EN&guiLanguage=en
2. 米国産業界の大物、ブッシュ政権の気候ビジョンプログラムに参画(2005/5/11)
- 北米産業鉱物協会(IMA-NA)はブッシュ政権の気候ビジョンプログラム(Climate VISION Program)
への参加を表明した。同プログラムは 2012 年までに温室効果ガス排出 18%削減を目標に掲げており、
全米のソーダ灰生産の 80%、硼酸塩の 100%、商用ケイ酸ナトリウム生産の 60%を占める業界の指導団
体である IMA-NA の支援は目標達成への強力な後押しと期待される。IMA-NA は政府に対し、2000 年
と 2012 年の間に製品生産 1 トンあたりに要する燃料の燃焼につき、温室効果ガス排出を 4.2% 削減さ
せる公約をした。
New Industry Partner Accepted Into the Climate VISION Program
http://www.doe.gov/engine/content.do?PUBLIC_ID=17916&BT_CODE=PR_PRESSRELEASES&TT
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NEDO海外レポート
NO.956, 2005. 6. 1
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海外レポート956号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/956/
_CODE=PRESSRELEASE
3. 中国政府、今後 15 年間で進める科学技術計画案を策定(2005/5/11)
- 中国の温家宝首相は 4 月 11 日に会議を招集し、2003 年 6 月以来、国務院科学技術部他の専門家 2000
人を中心に進めてきた、今後 15 年間で実施する国家科学技術計画の草案について議論を行った。草案
は基本的な承認を得たが、今後も各セクターから更なる意見を聞きだし反映させることで合意した。
China Maps Out S&T Plan for the Next 15 Years
http://english.cas.ac.cn/eng2003/news/detailnewsb.asp?InfoNo=25486
4. サービス部門研究開発の計量技術の研究(2005/05/05)
- 国立標準技術研究所(NIST)および全米科学財団(NSF)の新しい共同研究プロジェクトは、サービス部
門の革新を奨励する研究開発を分類することが次第により困難になったことを発見した。生産とサービ
ス部門の相違はますます不鮮明になっており、R&D 活動報告に関して大きな影響をもたらしている。
Study Examines Measurement of Service Sector R&D
http://www.nist.gov/public_affairs/techbeat/tb2005_0505.htm#r&d
5. IEA 理事会で加盟国代表による所信表明(2005/05/03)
- 5 月 3 日の IEA 理事会において、エネルギーの持続可能で保証された未来社会を実現するため、地球
規模でのエネルギー保証、エネルギー市場、クリーンエネルギー制度の確立に向けた一層の努力をする
旨確認がなされた。特に、中国との国際エネルギー市場での一層の関係強化の必要性を強調し、ポーラ
ンドとスロバキアの IEA 加盟に向けた取り組みを評価した。
Meeting of the Governing Board at Ministerial Level
http://library.iea.org/Textbase/press/pressdetail.asp?PRESS_REL_ID=147
6. EU 市民、環境問題に経済・社会発展と同等の重きを置いた政策を求める(2005/04/29)
- 昨年末に EU 市民 1,000 人を対象に 2 回に分けて実施した EU の調査報告の数値を見ると、例えば回
答者の 88%が各国政府に、経済や雇用に関する政策を策定する際も環境問題への配慮を求めるなど、行
政の環境問題への取り組みに対して、経済的・社会的発展と同等の重きを置いていることが伺える。
Europeans Want Policy Makers to Consider the Environment as Important as Economic and Social
Policies
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/05/513&format=HTML&aged=0&la
nguage=EN&guiLanguage=en
http://europa.eu.int/comm/environment/barometer/index.htm
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