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﹁ 子 夜 呉 歌 四 十 一
﹁子夜呉歌四十一 一 首 ﹂ ﹁子夜呉歌四十二首﹂は長江以南に国を建てた、東晋 (二二七 i四一九)・劉宋(四二 O i四七九)・斉(四八 O の内容は男が女を思い、女が男を思う艶歌で、その表現 i五O 二)の聞に作られた、南方の民間歌謡である。そ は双関語(掛け詞)や典拠のある語を用いるなど、修辞を 凝らした歌である。これらの歌は東晋の孝武帝の太元年 ろうやよ 問(三七六i三九六)には浪邪(今の山東省南東部)から橡 章(今の江西省南昌)に及ぶ広範囲の地域で、管楽器や絃 楽器に乗せて歌われていたと言う。 子夜とは東晋時代の女性の名と言われるが、この女性 が実在したかどうかは分からず、当時の人たちが子夜と いう女性を設定し、この女性に託して男と女の恋慕の情 を歌ったものかも知れない。 東晋から劉宋を経て斉に至る聞には、﹁子夜呉歌﹂にま (﹁夏歌二十首﹂﹁秋歌十八首﹂﹁冬歌十七首﹂)もあり、こ ねて作られた﹁子夜四時歌七十五首﹂(﹁春歌二十首﹂ 長谷川 成 課題である。 詩と艶歌の関係をどう説明するのか、今後考えてみたい れているが、他方でこうした艶歌が作られており、玄言 東晋の詩の特色は、老荘思想を賛美する玄言詩と言わ れらの歌も﹁子夜呉歌﹂と同じように艶歌である。 滋 芳香は己に路に盈てり 妖艶な姿で耳、ぎわの髪はふさふさし 冶容にして姿者多く した 見つめていると貴女の通るのが見えま 謄嘱すれば子の度るを見る せんしよくあた 日が沈むころ家の表門に出て 落日に前門に出でて 本稿では﹁子夜呉歌四十二首﹂の訳注を試みるもので ある。 落日出前門 謄嘱見子度 冶容多姿髪 芳香己盈路 -87- 訳 注 芳しい香りが路いっぱいでした 冶容は敢て当たらず ﹁芳しい﹂のは香料のせいですし 芳は是れ香の為す所にして ﹁多姿髪﹂ は可憐な女性として当時もてはやされた。 芳是香所為 冶容不敢当 ﹁妖艶﹂な姿とは見当違いよ 天は人の願ひを奪はず 天は私の願いを無視せず われまみ 故より慢をして郎に見えしむ (貴男の)すべてがいとおしいわ しとね 愛する男と一夜を過ごし、後朝の別れを惜しむ女心を 詠む。﹁綜髪﹂が祷を共にした証しだが、﹁宿昔不硫頭﹂ 白粉を落とすと黄色い服に着きます 粉払へば黄衣に生ず 髪はぼさぼさで乱れたまま 頭は乱れて敢て理めず をさ 化粧箱は聞かずじまいなの 査器は了に開かず れんきつひ 貴男とお別れして以来 歓と別れし従自り来のかた きみよ と一コ一口って、はぐらかす所に妙がある。 自従別歓来 査器了不開 頭乱不敢理 粉払生黄衣 ﹁歓﹂は二人称代名詞。特に女が愛する男に対して丑一口 う南方語。愛する貴男。 玉林にて石闘を語れば せきけつ 風や雲を獲てようやく通じ合えたの 始めて風雲を獲て通ぜり 遠く別れて怨みも慕いもしましたが 崎幅相怨慕 崎幅として相怨慕するも 始獲風雲通 玉林語石関 玉のような寝台で石門の碑を語り合う -88- 天不奪人願 故使僕見郎 私を貴男に会わせてくださったのです ﹁僕﹂は一人称代名詞で南方語。﹁郎﹂は女が男を言う 語。ーは男が女に贈り、 2はそれを受けて女が男に答え た、贈答歌。 2の一句目は 1の四句目、二句目は三句目 綜髪は両肩を被へり 夕べ髪をすかなかったので 宿昔頭を硫らざれば に、三・四句目は一・二句目を受けている。 宿昔不硫頭 紙髪被両肩 乱れた髪が肩までかかっているの 郎が膝の上に腕伸すれば 貴男の膝辺りにからみ付くと と 腕伸郎膝上 何処不可憐 何れの処か可憐ならざらん 4 5 2 3 「子夜呉歌四十二首J 訳注 悲思両心同 悲思は両心同じ 悲しい思いは二人とも同じなのね ﹁石碑﹂は死者の姓名や官爵を刻んだ石の碑。﹁碑﹂は 両心望如 貴男と知り合いになろうと思った当初 中品 二人の心が一つになればと願っていた 両心一の知くならんことを望む の 綿を埋めんとして残機に入り けてしまい 絡を紡ごうとして壊れた機織り機にか 理綿入残機 娘を見て容娼を喜び 一反も織れぬことに気づかなかったの 何悟不成匹 何ぞ悟らん匹を成さざるを 少女を見てその色っぽさが気に入り 同じ音の﹁悲﹂にかけ、﹁語石閥﹂とは悲しみを語り合う 意 。 見娘喜容娼 きんらん 堅い契りを交わしたく思いました です 願はくは金蘭を結ぶを得んことを 空しく経緯無きを織り ﹁不成匹﹂は夫婦になれなかったことを壬一守つ。﹁紙﹂は 同じ音の﹁思﹂に通じ、﹁残機﹂はだらしない男に喰え 縦糸も横糸もない織物をむなしく織り 匹を求むるも理として自ら難し -89- 願得結金蘭 空織無経緯 求匹理白難 る。この歌の趣意も6の歌と同じで、 6は男が女に贈り、 紙子は己に復た生ず 春に繭を作る蚕は心が変わり易く 春蚕は感化し易く 情を交わしたいと思うの 意は交情を結ばんと欲す 以前の赫は絡まった綿を断ち切り 前総は纏綿を断ち 7は女が男に答えた歌。 前赫断纏綿 意欲結交情 春蚕易感化 綿子己復生 てんめん 一反の布を織ろうとしたが無理でした ﹁金蘭﹂は﹁易﹄繋辞上に﹁子日はく、君子の道は、 或ひは出で或ひは処り、或ひは黙し或ひは語る。二人心 を同じくすれば、其の利きこと金を断つ。心を同じくす かを るの言は、其の臭り蘭の如し﹂とある。﹁経緯﹂は直接に は縦糸と横糸、﹁匹﹂は一反の布地の意だが、﹁経緯﹂に 始めて郎を識らんと欲せし時 できず、夫婦になれなかったことを怨む男の歌。 は交際、﹁匹﹂には匹偶(夫婦)の意をかけている。交際が 始欲識郎時 8 6 7 綜を次から次へと吐き出します ﹁綜﹂には同じ音の﹁思﹂をかけ、﹁春蚕﹂は心変わり する男に喰える。 きみ 今夕己に歓と別れしも 当奈苦心多 いかん 苦い黄葉の木は茂って林と成りました AM 当に苦心の多きを奈すべき 気苦労の多いのはどうにもなりません ﹁黄葉﹂は幹の内皮が黄色く、苦昧があって、薬用・ 染料となる落葉高木。﹁欝成林﹂で苦い木が成長したこと 今夕己歓別 今夜貴男とお別れしましたが 存 三 一 コ 口 事 つ 。 お会いできるのは何時のことでしょう 合会は何れの時にか在らん 高く笠える山に芙蓉の花を植えようと 高山に芙蓉を種ゑんとし 合会在何時 復経黄葉鳴 高山種芙蓉 明灯は空局を照らすも 灯りは駒のない将棋盤を照らしていま すが いくら待ってもお会いできる当てはあ 悠然として未だ期有らず 果得一蓮時 ん 流浪して辛苦を嘗めるに遠いありませ 流離して辛苦に嬰る 思い通り蓮を一つ子にする時は 果たして一蓮を得る時は した また苦い黄葉の木のある土手を通りま 復た黄葉の鳴を経たり し ﹁芙蓉﹂は蓮の花。﹁蓮﹂は同じ音の ﹁憐﹂﹁恋﹂に通 流離嬰辛苦 て 朝に思ひて前門に出で あした じ、﹁得一蓮﹂とは恋することを言う。 朝思出前門 -90- 明灯照空局 悠然未有期 りません ﹁期﹂は同じ音の﹁棋﹂(将棋の駒)にかける。これによ 黄葉は欝として林を成せしも 毎日毎日ため息がでるばかりなの 何れの日か杏嵯せざる 貴男とお別れして以来 郎と別れし白従り来のかた ると、当時は男も女も将棋をし、一緒に将棋ができない 寂しさを詠む。 自従別郎来 何日不次口嵯 黄葉欝成林 1 1 1 2 9 1 0 「子夜呉歌四十二首」訳注 暮思還後渚 語笑向誰道 腹中陰憶汝 朝方には思い慕うて家の表門に出て 暮れに思ひて後渚に還れり 夕暮れには思い慕うて裏の渚に行きま した 語笑するは誰に向かひて道ふや 誰に向かって語りかけ笑えばいいの 投瑳著局上 終日走博子 苦しみに耐えて門内をうろうろします 瑳を投じて局上に著き 美しい玉を将棋盤の上に放り投げ 終日博子を走らす 一日中さいころを転がします この歌は、愛する人を思って食事も喉を通らず、一人 将棋盤に向かって心を紛らわす、女の苦衷を詠んだもの ひそ 腹中陰かに汝を億へり ね (貴男も)関を掛ける気は全くないよう 復た相関の意無し 開いている門には横を掛けませんが 撤門に横を安かざるも り色んかんぬきお 私に背いたのは初めてではないわ 僕に負きしは一事に非ず 貴男を他の人に取られてしまい 郎は傍人に取られ であろうか。 年少当及時 若くても時機を逃してはなりません 年少なるも当に時に及ぶべし とは私に関わる意志がないことを言う。 ﹁横﹂も﹁関﹂も﹁かんぬき﹂の意で、﹁無復相関意﹂ 無復相関意 撤門不安横 負僕非一事 郎為傍人取 心中人知れず貴男が忘れられないの 寒寒として闇裏に歩む けんけんゐり 箸を置いて食べることを止め 筋を駐めて食らふこと能はず 愛し合うのはほんの僅かな時間です 相憐れむは能く幾時ぞ 突然お見えなので喜びは少なく 小喜は唐突多く 貴男がやって来て私と戯れるの 郎来たりて慢に就きて嬉れり 枕を持って北の窓辺に横になると 枕を撃りて北窟に臥せば この歌は女の歌として解したが、男の歌と解すること も可能である。 撃枕北窟臥 郎来就僕嬉 小喜多唐突 相憐能幾時 駐筋不能食 宜定宜定歩闇裏 1 5 1 6 1 3 1 4 Qd 嵯陀日就老 若不信僕語 但看霜下草 嵯践すれば日に老に就く 時期を逃すと日に日に老いて行きます われ 若し慢の語を信ぜずんば 私の言うことが信じられなければ 但だ霜の下の草を看よ 霜の下の草をじっと見つめてみてくだ さい J ﹁霜下草﹂とは時機を逃して日の目を見ない存在を三一口 古 J 歓今果不斉 枯魚就濁水 長与清流手 きみ たが 歓は今果たして斉しからず 貴男は案の定同じ思いではなかったわ 枯魚は濁水に就き 干された魚は濁った川に住みつき 長ヘに清流と説く 永久に清んだ川から離れてしまうので す ﹁枯魚﹂は﹁武意﹂ある男に、﹁濁水﹂は男が心を移す きみわれ 根は別々でも枝が一つで生えているの 根を異にする条を同じくして起てるを ご存じでしょう連理の樹は 見ずや連理の樹 貴男が笑ったら私とて嬉しいの 郎笑へば我は便ち喜ぶ 貴男が愁えたら私も辛く 歓愁へば僕も亦た惨しく 女に、﹁清流﹂は思いを貫く女に喰えている。 歓愁僕亦惨 郎笑我便喜 不見連理樹 異根同条起 を ﹁連理樹﹂は根や幹は別で、枝が続いて一つになって いる樹。夫婦や男女の契りの堅いことに喰える。 -92- 炉︺弘 緑を撹りて題錦に迩め 緑の吊をつまんで題錦に押しこみ 双祐は今復た開く めく 二か所の裳のすそが今また捲れました 己に腰中の帯を許せば 腰にまとった帯はお任せなので 誰と共にか羅衣を解かん 誰と薄絹の着物を脱がしましょう じい土色んばか 二心はないかとずっと心配していまし 常に武意有るを慮りしが 1 9 。 っ ゆ 緑撹迩題錦 双祐今復開 己許腰中帯 誰共解羅衣 常慮有武意 この歌の意味は、特に一旬目・二句目ははっきりしな 1 7 1 8 / ~..:. . . よ 占 < . ' ! ' , . ! : -~ 「子夜呉歌四十二首」訳注 きみいんぎん 初めごろの貴男の優しさには感じ入り 母猿の腹を切り裂いてみると、腸がずたずたに千切れて って船の中に飛び込んだとたん、息絶えて死んだので、 ﹁断腸﹂とは船頭に子猿を捕られた母猿が、子猿を追 ましたが いた、という東晋時代の故事により、離別や失恋の悲し れうらく 子が後の遼落を歎く 何れの時か復た西に帰るを ご存じでしょう東に流れる水は 見ずや東流の水は 真冬を迎えてとうとうお別れなのね 遂に盛寒に致りて違へり 道は近くて数えきれないほどあるのに 道近くして数ふるを得ざるに みが深いことを言う。 みました 金を打ちて砂川唱に側ヘ 遂致盛寒達 道近不得数 後になっての貴男の冷たさには心が傷 感歓初股勤 歓が初めの殿勤に感ぜしも 歎子後遼落 打金側吠唱 金属板を耽唱に最めこんだように えん 外は鑑なるも裏は薄を懐けり 外は美しくも内はお粗末そのものです 不見東流水 何時復西帰 何時になっても西ヘ帰って来ないこと を ﹁東流水﹂には去って行く男を喰え、﹁西﹂に待ち続け 日冥れて戸に当たりて侍れば ト ム 。 腹が減れば誰だって食べるでしょう 誰か能く飢ゑて食らはざる 思い慕えば誰だって歌うでしょう 誰か能く思ひて歌はざる る女の居る所を言う。 誰能思不歌 誰能飢不食 日冥当戸侍 -93- 外鑑裏懐薄 ﹁耽宿﹂は亀の一種で、その篭甲は装飾品として重用 される。﹁薄﹂には薄い金属板(金箔)と薄い情(薄情)とを 主みだ 肝腸は尺寸に断てり 貴男を思い続けると腹の中はただれ 子を思へば腹は廃嫡し びらん 思い慕うと心は悲しみでいっぱいなの 相思へば情は悲しみ満つ れ お別れしてからは涙は止めどもなく流 別れし後は沸は流連し かけ、男の心変わりを嘆く。 別後沸流連 相思情悲満 憶子腹廃嫡 肝腸尺寸断 腸はずたずたに千切れてしまいます 22 23 20 2 1 慨候底不憶 撃褐未結帯 約眉出前窟 羅裳易咽棚田開 小開罵春風 挙酒待相勧 ざっ る と 気が沈んで人を思わずにはいられない るて 祷を撃りて未だ帯を結、ば、ず 裳のすそをつまんで帯はほどけ ぜんさう 眉を約して前歯に出づ 眉は描かずに窓の前に出るの へうやう 羅裳は咽棚田岡し易く 薄絹の裳がさつと風に翻り すこののし 小しく開けば春風を罵る めく 一寸捲れたので春の風を叱りつけまし 酒を挙げて相勧むるを待つも いるが 酒盛りをして勧めてくれるのを待って 酒還れば杯も亦た空し です 心が動けば男と女の情も一つになるの 郎誰か僕が心を明らかにせん すが ひたすらに最高の接待をしたく思いま 徒に傾匿の情を懐くも ます 憂い嘆いていると涙が襟をったい落ち 憂ひ歎けば渇は襟に流る 者工中?とい 夜中に目、が覚めるといろんな思いが付 夜覚むれば百慮纏り この歌は三句目がはっきりしない。 夜覚百慮纏 憂歎沸流襟 徒懐傾箆情 郎誰明慢心 どのお方が私の心中を察してくださる の ﹁傾医情﹂とは東晋の王義之が謝安・謝万を迎えるに 当たり、衣裳箱をひっくり返して身支度を整え、食器棚 の料理を出し尽くしてご馳走した、という故事による。 僕年不及時 -94- しん 酒が回ってきた時には杯は空っぽです びしゃう す機ば をず 逃 し て し ま でで 底Z 扉 ぞに 憶す はが 微傷に因りて会はんことを願ふも 作な時及 ↑長子が と沈 僅かな酒で会いたく思いますが 其於作講離 於2 年年 訴はは 離い時 をいに 慨;日 の た 心感ずれば色も亦た同じ f 農 ; : れのの 其私 酒還杯亦空 願因微暢会 心感色亦同 26 2 7 2 4 25 「子夜呉歌四十二首j訳 注 也とふへい ああもう心が通じなくなりました もともと浮草にも及、ばない身で 素不如浮薄 素より浮薄に知かず 僕が肝腸をして苦しましむ 昔なじみの貴男に逢うこともないので 故の歓に栢逢ふこと無ければ もときみ の ごろごろして夜中に太鼓の音を聴いた 転倒して更鼓を聴けり 夜が長くて眠ることができず 夜長くして眠るを得ず 春の風に吹き飛ばされて転がるのです 転勤春風移 転じて春風に動じて移る 夜長不得眠 転側聴更鼓 無故歓相逢 使僕肝腸苦 私の心の内はただ苦しむばかりです きみ 歓は何れの処よりか来たる 貴男はどこからやって来たの 端然たるに憂色有り 礼儀作法は正しいのに心配そうな表情 三たび喚ぶも一たびも応ぜず 有何比松柏 有た何ぞ松柏に比ぶるや ね 松や柏に比べるほどの節操はなさそう ﹁松柏﹂は﹃論週間﹄子宮干に﹁子日はく、歳寒くして然 る後に松柏の凋むに後るるを知るなりと﹂とあり、﹁松 傾倒して惜しむ所無し 愛を思いつめると心は満ち足りず 愛を念へば情は憐憐たり けんけん 柏﹂は常緑樹で、節操の堅いことに喰える。 念愛情僚機 傾側無所惜 深く心を寄せて思い悩むことはないわ 誰か許の厚薄を知らん 簾を何枚も重ねて自ら遮り 重簾持白部 簾を重ねて持って自ら郭ぎり 誰知許厚薄 こんな厚薄を知っている者は誰もいま せん ﹁簾﹂は同じ音の﹁憐﹂﹁恋﹂に通じ、﹁厚薄﹂は﹁簾﹂ の﹁厚薄﹂と﹁憐﹂﹁憐﹂の﹁厚薄﹂にかけている。 気清明月朗 夜与君共嬉 夜夜空気 中は気は に君は清 貴と清く 男共ん明 とにみで月 一嬉主満は 緒 る し 月 朗t に はる 戯 明 く れ る る く の ﹁更鼓﹂ は夜中に時刻を知らせる太鼓。 歓従何処来 端然有憂色 三喚不一応 三度声をかけたのに一度も反応がなく 30 3 1 2 8 29 」三:ミニ3 山 内 色 斗ι Fhu n ﹃υ 郎歌妙意曲 僕亦吐芳詞 驚風急素桐 白日漸微蒙 郎懐幽閏性 驚風素桐に急にせ、ば 大風が枯れ枝に激しく吹きつけると 白日は漸く微蒙たり 太陽は次第におぼろに霞みます ゅうけい 郎は幽閣の性を懐けば 貴男が幽閏で待っている私の性を慕え ギ4 われたの 慢も亦た春容を侍む 私だって若々しい容姿を大事にするわ ﹁幽閤﹂は家の奥深くにある女性用の部屋で、男が 慢亦特春容 だも男は つ亦が妙 てた意意 香芳昧の し詞あ曲 い,をりを 詞ミ吐げ歌 で悼くなへ 話 曲 ば し を か 歌 け う る と わ 想ひ聞けば喚声は散じ 満月は何と明るいことでしょう 明月何ぞ灼灼たる 夜が長くて眠ることができず 夜長くして眠るを得ず ﹁幽閏﹂を訪ねてくれぬ女の恨みを詠んだ歌。 夜長不得眠 明月何灼灼 想聞散喚声 34 3 5 私健主貴郎 慕いつつ聞くと呼ぶ声が散り散りにな 虚応空中諾 人各既時匹 我志独講離 風吹冬簾起 許時寒薄飛 我念歓的的 子行由環情 霧露隠芙蓉 見蓮不分明 ゅうよ 蓮を見れども分明ならず 霧や露は芙蓉の花を隠しているので 霧露は芙蓉を隠せしに 貴男は優柔不断なお方なのね 子は由課の情を行ふ のに 私は貴男は明快なお方だと思っていた 我は歓の的的たるを念ふも きみ この時身に迫る寒さがふっ飛びました 許の時寒さ薄り飛べり せま 風は冬の簾を吹き飛ばし舞い上がり 風は冬の簾を吹きて起こり 私の思いだけは違うわ 我が志は独り講離せり 人はみんな同じ仲間なのに 人は各既に嬬匹なるも の 虚しく空中に響く受諾に応えるだけな 虚しく空中の諾に応ず り 蓮の花を探しても見つかりません -96- 3 2 3 3 「子夜呉歌四十二首j訳 注 ﹁芙蓉﹂は同じ音の ﹁夫容﹂にかけ、﹁蓮﹂は ﹁ 憐 ﹂ 千年も転移すること無し 私は北極星となって 慢は北辰星と作りて ﹁恋﹂にかける。﹁芙蓉﹂ は蓮の花。 健作北辰星 千年無転移 千年も同じ所にいるの きみ 歓は白日の心を行ひ 貴男は太陽の心と同じで 朝に東し暮れには西に還る 居を移して郷里と作らん 私の住まいを貴男の古里ヘ移したいの 桐の樹門前に生えなば 桐の樹が家の門の前に生えたら 出入りするに梧子を見る 出入りするたびに桐の実が見られるも の 蓮の実は本物ではありません 蓮子は何ぞ能く実ならんや 金や銅で芙蓉の花を作っても 金銅もて芙蓉を作りしも 行ったきりもはや現れません 往きし自り復た出でず 手紙をやっても貴男は来ないし 信を遺るも歓は来たらず きみ ﹁梧子﹂は桐の実の意昧で、同じ音の﹁五日子﹂にかけ る 。 遣信歓不来 自往復不出 金銅作芙蓉 蓮子何能実 転た薄志の疏なるを覚ゆ 頭全体を櫛に当てると髪は抜け落ち 頭を回らして櫛に批るれば脱け ふぬ その後は日々密接ではなくなりました 其の後は日に如かず 最初は密接な関係でしたが 初めの時は密ならざるに非ざるも ﹁蓮子﹂は同じ音の﹁憐子﹂﹁恋子﹂にかける。 初時非不密 其後日不知 回頭批櫛脱 転覚薄志疏 髪の毛がいよいよ薄くなるのが分かり -97- 歓行白日心 朝東暮還西 朝には東に暮れには西に居るのね ﹁北辰星﹂は﹁論語﹄為政に﹁子日はく、政を為すに 徳を以てするは、警へば北辰の其の所に居て、衆星の之 貴男が私の情を好いてくれるのが嬉し す 歓の情懐を好むを憐み きみ に共ふが知し﹂とある。 憐歓好情懐 移居作郷里 桐樹生門前 出入見梧子 く 38 39 36 37 ました ﹁薄志﹂の用例が管見に入らぬので、﹁志﹂を同じ音の 玉指弄矯弦 を歌い けうげんもてあそ 玉指もて嬬弦を弄ぶ ています きせん 朝日は締銭を照らし 朝の太陽は女のいる綾絹張りの銭格子 を照らし りゃうさいせん 麗らかな風は白い薄絹を動かしていま す 巧笑すれば両犀は語たり 愛らしく笑うと左右の糸切り歯が可愛 り 7レ/¥ F 美目に双蛾を揚ぐ ます 美しい目には左右の眉をつり揚げてい とえたものと言う。 (日本文学科教授) (平成十七年一月三十日) 張ったものを言い、﹁犀﹂は瓜の種で、 これを白い歯にた ﹁縞銭﹂とは窓格子を銭の形に造り、 その上を綾絹で 美目揚双蛾 巧笑葎両犀 光風動納素 光風は紋素を動かす 朝日照締銭 美しい指であでやかな音色の琴を弾い 我が蓮子に称ふもの無し 玉の蓮の根に金の芙蓉の花 玉請に金芙蓉 一緒に座ったり一緒に立ったりします 同に坐し復た倶に起つ とはなく 寝ている時も食べている時も忘れるこ 寝食に相忘れずして っきりしない。 4 2 ﹁赫﹂に通じ、髪の意に解したが、三句目・四句目はは 寝食不相忘 同坐復倶起 玉議金芙蓉 無称我蓮子 わが蓮の実に適うものはいません ﹁ 語 ﹂ は配偶者の﹁偶﹂に、﹁芙蓉﹂は﹁夫容﹂に、﹁蓮 愛を侍みて進まんと欲するが如きも 子﹂は ﹁憐子﹂﹁恋子﹂に通じる。 侍愛如欲進 愛を当てにして進もうとしますが すすがへん 口朱より鑑歌を発し えんか はにかんでよう進みません 含差未肯前 差を含みて未だ前むを肯ぜず 口朱発鑑歌 口紅をさした口元からなまめかしい歌 -98- 40 4 1