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第3号P7(アウロラと私④ 岡野邦俊氏・46代)

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第3号P7(アウロラと私④ 岡野邦俊氏・46代)
北大アウロラOB会報
第3号
2016年5月
アウロラと私
岡 野 邦俊 氏
(昭和46年法学卒・46代
ベース・千葉県柏市在住)
40数年前のアウロラ部室での春夏
秋冬を思い起こしてみたくなった。
なぜ今になってかというと、今年
(2013年)の5月にHBCテレビで
都ぞ弥生誕生のドラマ「清き國ぞと
あこがれぬ」の放映があったことを
知り、改めて都ぞ弥生の歌詞を見て
いたところ、そこに謳われていた北
海道の春夏秋冬が瞼に浮かび、学生
生活の半分以上を過ごした「アウロ
ラ部室」が懐かしく思われたからだ。
当時の部室は、理学部原生林前、
古河講堂の北横にあった古い木造2
階建てで、1階は交響楽団、2階が
アウロラ部室と、交響楽団との共用
のオケラ練習室。壁には佐藤春夫の
詩「酒、歌、煙草、また女、外に学
びしこともなし」の落書きがあった。
当時の写真が交響楽団OB会HP
に掲載されているが、外壁に「アウ
ロラ」と大きく書かれていた。
2階窓の下に
「アウロラ」
都ぞ弥生の春は4番。「真白の花
影さゆらぎて立つ 今こそ溢れぬ清
和の光」とある。真白の花は、もち
ろん延齢草。アウロラには美しい花
が大勢おられた。好きな歌詞は「清
和の光」だ。
◆
◆
春
◆
夏
◆
夏は足早に過ぎ去る。短いが「今
でしょ」とばかりに青春を謳歌する
季節だ。早朝にはカッコウの声が聴
こえて、清々しい。理学部原生林の
エルムの豊な緑を爽やかな風が吹き
わたる、緑と風が創り出す優しい音
楽が聴こえてくる。中央ローンに寝
ころび、抜けるような青空が心地よ
い時間が過ぎていく。付属植物園で
の楽しい時間。演奏旅行の準備と練
習が佳境に入る。2年生中心の演奏
旅行もあり、道内をあちこち廻った
楽しい思い出がよみがえる。
夏に相応しい曲は「真珠採りのタ
ンゴ」(ビゼー作曲オペラ「真珠採
り」より/アルフレッド・ハウゼ編
曲)だ。
都ぞ弥生の夏は5番。「高鳴る血
潮の迸りもて貴き野心の訓え培い」
とある。季節についての歌詞はその
前にあるが、最後の5番を飾る青春
の高揚を表すに相応しい。一気に謳
いあげる。好きな歌詞は「貴き野心」
だ。
◆
(交響楽団OB会HPより)
多感だった青春時代。仲間と共に過ごした日々。
思い出は代を超えて通じ合うものでもあります。
4
秋
◆
訪れが早い秋。理学部原生林のエ
ルムを爽やかに揺らしていた風が、
急に冷たくなる。木々の葉が色づい
たかと思うと落ち葉が舞い、冬の訪
れを感じさせる雪虫たち。しかし、
部室はいよいよ定期演奏会に向けた
練習が熱を帯びてくる。指揮者の必
死さ、演奏者の真剣なまなざし、オ
ケラが熱気に包まれる。人と音がぶ
つかり合う。
でも、秋に相応しい曲は「雨とコ
スモス」(武井守成)。なんとも可
愛らしいメロディが好きだ。コスモ
ス=秋桜=(花言葉)乙女の純真。
都ぞ弥生の秋は2番。「雄々しく
聳ゆる楡に梢打ち振る野分に破壊の
葉音の さやめく甍に久遠の光 お
ごそかに北極星を仰ぐかな」とある。
まさに秋から冬へと急ぐ理学部原生
林そのものだ。好きな歌詞は「久遠
の光」。
春は突然訪れる。雪解けと土の香
りに蕗の薹。中央ローンの芝も部室
前の理学部原生林のエルムも新緑が
萌え、一気に深さを増してくる心躍
る春。原生林のエルムに4月には花
が咲き、6月には実が成る。部室に
いるとその実(翼果)がサラサラと
落ちていく音が聴こえてくる。部室
いてこそ聴こえる、初夏を感じる天
上の自然の音楽だ。このことはとて
もよく覚えている。
部室には新入部員が訪れ、新3年
◆ 冬 ◆
生による運営により小樽市民会館で
行われる春の演奏会に向けた練習が
半年で3つもの季節が足早に過ぎ
本格化し、楽器の音が賑やかになる。 去ると、とうとう冬がやってくる。
春に相応しい曲は「春のノスタルジ 白く、冷たく、厳しく、長い、それ
ア」(武井守成)だ。
でいて意外に明るい。そう、とても
7
寮歌「都ぞ弥生」の歌碑
(サークル会館へ向かう道端)
輝く瞬間がある。音もなく凍った大
地が明るい日の光に照らされるとき
大気がキラキラ輝くダイヤモンドダ
ストだ。零下10度以下で見られる
ので、そうそうは見られない。
しかし、そんな穏やかな日は少な
く、通常は雪景色を楽しむどころで
はない。都ぞ弥生の3番にあるとお
り「荒る吹雪の逆まくをみよ」とな
る。ところが、冬の部室で思い出す
のは、部室のストーブに石炭をくべ
ながら語り明かした記憶だ。
しかし、一夜明ければ、都ぞ弥生
の「ああその蒼空梢聯ねて 樹氷咲
く壮麗の地をここに見よ」のとおり
となり、部室を出た私は立ち尽くし
た。 冬に相応しい曲は、何といっ
ても「雪の造形」(鈴木静一)だ。
なにせ、西村先輩が書かれていたよ
うに、鈴木静一が第3楽章の曲想を
想いついた現場に我々はいたのだか
ら。
◆
青春の地へ
◆
これでアウロラ部室の四季を廻っ
たが、都ぞ弥生の1番が登場してい
ない。当時の札幌農学校の新学期は
秋に始まるため、2番から秋、冬、
春、夏、の順になっている。1番は、
作詞家である横山芳介が生家の東京
神田で「弥生のころ北への憧れを謳っ
たもの」だからと思われます。いち
ばん好きな歌詞です。
アウロラ部室の春夏秋冬のどれが
いちばん好きか。緑を風が吹きわた
る夏も好き、冬支度を急ぐ木々の葉
が舞う秋も好き、荒る吹雪のあとで
壮麗の地となる冬も好き、でもやは
り「春」がいちばん。一気に気持が
開放され、体も軽くなり、前向きな
気持ちになれる春が好きです。
2016年6月、そんな四季が私
の上に永遠に続くことを当然のこと
として疑いもしなかった青春の地に
立ちたい。
※この原稿は、岡野さんがOB会ホー
ム ペー ジ「 会員 の広 場」 へ2013年に
投 稿 され た原 稿 を加 筆 して い ただ き
ました。
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