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平成18年度版 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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平成18年度版 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
P02012
平成18年度実施方針
ナノテクノロジー・材料技術開発部
1.件名:プログラム名
省エネルギー技術開発プログラム
(大項目)低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御技術の開発
2.根拠法
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第15条第1項第2号
3.背景及び目的・目標
自動車の動力伝達部品、ポンプ設備・機器の弁・ポンプ・シリンダ部品、発電所で用いら
れる発電用タービン軸受等の摺動部を対象とした省エネルギー化を達成するための共通基盤
技術として、摩擦摩耗に係る環境・圧力等諸条件に最適な潤滑膜を材料表面に形成すること
で、これらの摩擦損失を大幅に低減する材料表面制御技術を確立することを目的とする。
さらに、これらの知識・技術を体系化・普遍化することによって、材料表面制御技術をコ
アとして機械システム技術も一体となった摩擦摩耗制御技術を確立し、動力伝達機構を有す
るあらゆる設備機器の効率向上、省資源・省エネルギー化の実現ならびに地球環境問題の解
決に資する。
研究開発項目①「潤滑膜の構造・特性及び生成機構の解明のための評価・解析技術に関する研
究」
平成 16 年度の中間目標:
・潤滑膜の生成機構解析、ならびに摺動部材間の接触機構解明のための評価方法の確立
・環境(潤滑油/水等)、材料(表面構造、形態等)、摩擦条件と摩擦摩耗特性との関係を
解析するための評価方法の確立
・潤滑膜の生成機構を統合化した表面構造生成モデルの基礎を提示
平成 18 年度の最終目標:
・潤滑膜の化学構造及び力学特性と摩擦摩耗特性との関係解明
・潤滑膜の生成機構ならびに摺動部材間の接触機構の解明
・摩擦摩耗特性の制御原理の構築
・環境(潤滑油/水等)、材料(表面構造、形態等)、摩擦条件と摩擦摩耗特性との関係を
明確化する評価解析技術の確立
・潤滑膜として具備すべき構造及び特性に関する設計指針の提示
・潤滑膜の生成機構を統合化した表面構造生成モデル構築
研究開発項目②「CVT 動力伝達システムの最適効率化に関する研究」
平成 16 年度の中間目標:
・CVT 実機摺動環境をラボ的に模擬する試験方法の確立
・CVT 模擬環境下における摩擦係数の制御モデルの構築
- 1 -
・CVT 模擬環境下における摩擦係数の 10%向上
平成 18 年度の最終目標:
・サーメット膜・複合膜等の表面構造制御膜、低粘度化潤滑油、ならびに添加剤により生
成される自己潤滑膜の摩擦摩耗特性との関係の解明
・CVT 模擬環境下における摩擦係数の制御原理の解明
・高摩擦係数を発現する表面構造制御材料の創製
・CVT において摩擦係数を安定して高める摩擦摩耗制御技術の確立
・CVT 動力伝達システムとして、ベルト CVT のエレメント/プーリー間動力伝達方向の摩擦
係数の現状 0.11 から 20%向上
研究開発項目③「高効率高耐久性水圧機器システムに関する研究」
平成 16 年度の中間目標:
・弁・ポンプ摺動部構造及びシリンダ構造をラボ的に模擬するための試験方法及び摺動条
件の明確化
・潤滑膜の生成機構解析、ならびに摺動部材間の接触機構解明のための評価方法の確立
・低摩擦損失水圧機器のラボ的模擬試験機で比摩耗量 10 -6 mm 3 /Nm の達成
平成 18 年度の最終目標:
・弁・ポンプ摺動部構造及びシリンダ構造最適な構造と材料の開発、ならびに、最適な潤
滑膜を生成する技術と材料の確立
・高水圧環境において安定した低摩擦係数を達成する摩擦摩耗制御技術の確立
・Si 系化合物及び DLC 膜(ダイヤモンド状炭素膜)等の化合物について、水環境中で低摩
擦係数と高耐摩耗性を発現する表面構造制御材料の創製
・低摩擦損失水圧機器で現行油圧機器と同等の耐摩耗性、つまり比摩耗量 10 -6 ~ 10 -7 mm 3 /Nm
の達成
研究開発項目④「耐高面圧複合軸受システムに関する研究」
平成 16 年度の中間目標:
・発電用タービン軸受の摺動環境をラボ的に模擬するための試験方法及び摺動条件の明確
化
・軸受の回転摺動試験前後の表面性状が摩擦摩耗特性に影響する因子の明確化
・発電用タービン軸受のラボ的模擬試験機で許容最大面圧を 1.5MPa から 30%向上
平成 18 年度の最終目標:
・軸受の表面性状の影響機構とその制御原理の解明
・各種樹脂等を分散添加した複合軸受材の耐面圧特性の解明、ならびに、耐高面圧性を発
現する複合軸受材料の創成
・安定した耐高面圧性を達成する摩擦摩耗制御技術の確立
・ 発電用タービン軸受システムとして、許容最大面圧を現状の 1.5MPa から 50%向上
- 2 -
4.実施内容及び進捗(達成)状況
岩手大学 岩渕明教授をプロジェクトリーダーとし、以下の研究開発を実施している。
研究開発項目①「潤滑膜の構造・特性及び生成機構の解明のための評価・解析技術に関する研
究」においては以下の成果が得られた。
(a)摺動部における物理・化学現象評価解析技術に関する研究
1)潤滑膜の力学特性評価解析技術に関する研究
(神鋼)Halling の有効硬さの関係式について、モデル物質として金属薄膜(境界潤滑膜模擬)
とガラス基板の組合せを使用して、種々の膜厚および測定に使用したダイヤモンド圧子の先端
半径を変化させて塑性変形硬度を測定し、関係式の妥当性を検討した。その結果、t/βと有
効硬さの関係は膜厚tの代わりに押込み深さを膜厚で規格化した値を用いることで、押し込み
深さの異なるデータを統一的に扱えることが分かった。
(神鋼)CVT および水環境で形成された境界潤滑膜の塑性変形硬度を数 nm 程度の押込み深さ領
域にて測定を行い、膜単体の塑性変形硬度の測定に成功した。
(岩手大・岩渕研)ガラス、Ni、Si ウエハー等について,フォースカーブ及びフリクショナル
カーブを用いたせん断強さの測定方法を検討した。せん断強さを摩擦力と接触面積から決定す
る際、摩擦力についてはフリクショナルカーブやカンチレバーの形状・物性から求められるこ
とがわかった。真実接触面積については、フォースカーブとカンチレバーの先端形状から算出
したが、その値の妥当性に課題を残した。また、カンチレバーの先端の摩耗に関しては、剣山
状の鋭い突起を有する試験片を測定することによって調べることができることがわかった。更
に摩擦中の圧子の変位から真実接触面積をより正確に求めることができると考えられ、垂直荷
重負荷式のナノインデンターの導入の準備を行った。
(東工大・中原研)境界潤滑膜のせん断強度測定技術のキーポイントは AFM レベルの精度をも
って、しかも接触部先端の曲率半径は粗さ突起半径のオーダーであるので既存の AFM 装置にプ
ローブ先端の曲率半径は粗さ突起半径のオーダーものに変えたが、それに伴ってカンチレバー
の剛性、固有振動数などの仕様が大幅に変化しため、その新しい仕様のカンチレバーを入手す
るのに多くの時間を要した。また、従来の AFM の測定技術では対応できないために未だに測定
技術を習得できていない(像を得ることができない)のが現状である。
2)潤滑膜の生成機構の評価解析技術に関する研究
(岩手大・森研)DLC 皮膜と過塩基性カルシウムスルホネートの組み合わせにより、耐摩耗性
に優れ高摩擦係数の境界膜が生成することを見出した。これをモデル境界膜としてラマン分光
法により構造解析を行い、皮膜成分の三次元的構造解析が可能になった。光干渉法による潤滑
膜厚測定装置を導入し、ナノメータスケールの潤滑油膜厚さ及びその三次元分布の測定が可能
であることを確認した。現在この手法を摩擦面に形成される境界膜の厚さ分布測定に適用し検
討を進めている。更に TOF-SIMS による化学構造解析を加え、摩擦面のより精密な化学情報を
得ることを目指している。またこれらの解析手法を他の潤滑系に適用することも検討していく。
3)潤滑膜の化学構造解析技術に関する研究
(神鋼)CVT 環境で添加剤を変えた潤滑油中で形成された境界潤滑膜に関して TEM、XPS、AES
- 3 -
及び AES-EELS による分析を行い、低μを示す境界潤滑膜中には CaO と考えられる成分が多く
含まれることを見いだした。
(東工大・益子研)ZnDTP トライボフィルムおよび DLC 膜上のトライボフィルムの測定に取り
組んでいる。測定データを解析して被膜厚さ,多層構造などが誘電関数のモデル化と多層膜の
モデル化を適切に行なうことにより、トライボフィルムの層構造を推察できることが明らかと
なった。但しこの解析における誘電関数のモデル化はトライボフィルムの物質が未知であるこ
とから、いかに誘電関数のモデル化および多相膜構造のモデル化を適切に行なうかが重要な因
子の一つであることが明らかとなり、来期に向けて結論を出すべく詳細な検討を重ねている。
また粗さを持つ基盤及びトライボフィルム表面では粗さを考慮した多相膜光学モデルを用
いる必要があることが分かり、これについても併せて検討を進めている。なお平成 17 年度に
潤滑膜厚さや光学定数の精密測定を目的として導入した分光エリプソメーターは測定対象面
積が標準測定で数 mm×数 mm オーダー,集光装置を取り付けても数百μm×数百μm と大きく,
摩擦面の分析を行なうためには摩擦面面積を大きくしなければならないという装置的制約を
克服しなければならないことも明らかとなった。接触面積を大きくする必要が生じあらたな摩
擦試験機を作成する準備を開始した。但し接触面積を大きくすると片当り等の不具合が発生す
るためこの点を克服すべく検討を行っている。
4)潤滑膜の接触機構の評価解析技術に関する研究
(東工大・中原研)平成 16 年度に行ったすべり接触下での真実接触面積の光学的測定結果では
スティックスリップの発生が問題になったので、先ず装置の剛性の向上とそれに伴う荷重測定
系と負荷のかけ方の改良を行った。その改良装置で実験を行った結果,滑りがないときとある
戸貴の真実接触面積の荷重曲線の相違を明確にすることができ、またある荷重点で真実接触面
積の荷重曲線に傾きの変化が現れることを明らかにした。この変化点と従来の中原研究室で提
示した遷移臨界圧力との関係を明らかにするために現在検討中である。この関係が明らかにな
ればすべりの影響を考慮した接触理論に寄与できる。
また焼付きモデルを軸受の高面圧化における焼付き評価に適用することに関しては,平成 16
年度に提示した「焼付きモデル」により開発中の軸受の耐焼付き性向上の理論的裏付けを与え
ることができた。本件に関しては大同メタルと共同研究であり,その進捗状況の具体的内容に
ついては「高面圧軸受」の項で述べる。
(b)各機関における摺動部の統合モデル化と摩擦摩耗挙動制御技術に関する研究
1)各機器システム模擬環境で生成した潤滑膜の化学構造,力学特性と摩擦摩耗挙動の関係解明
(産総研)プラズマ CVD 法を用いて作製した DLC 膜に対し、水及び空気中(高湿度、低湿度)
環境下での摩擦摩耗実験を行った。水環境下での摩擦挙動は、高湿度空気中よりもむしろ低湿
度空気中でのそれと類似の挙動を示すことなどを見いだした。また移着物のラマン分析から移
着物がないと思われていた領域においても、極薄い(nm オーダー)の潤滑膜の存在することを
TEM 分析によって明らかにした。平成 16 年度に報告した Si 系 DLC 皮膜の摩擦摩耗実験によっ
て見いだされた2層構造の潤滑膜の摩擦特性を明らかにするために、Cr メッキの摩擦材を用い
て Cr の摩擦摩耗へ与える効果を検討した結果、Cr を用いることで摩擦係数の低下および摩耗
量の増加が観測され、Cr が潤滑特性へ影響を与えていることが示唆された。また TOF-SIMS に
よる摩擦面の分析を行い、C、Si の摩擦面の分布より、低摩擦の発現機構を検討した。更に本
- 4 -
年度設備として反応種検出装置の導入を行い、摩擦面からの反応種の検出のための予備実験を
開始した。真空中での DLC 膜の摩擦摩耗による皮膜からの水素の検出に成功し、皮膜内部から
の水素脱離が膜の破壊につながっていることを見いだした。今後水蒸気雰囲気下での摩擦摩耗
によって発生する化学種の検出を行い、摩擦面モデルの構築を行う予定である。
(東工大・益子研)固定化することにより 水潤滑性を有する被膜形成に取り組んでいる。固体
表 面 に は ア ル ギ ン 酸 と 化 学 反 応 を 起 こ す 官 能 基 が 存 在 す る こ と が 必 須 で あ り APTS
(Aminopropyltrialkoxysilane)で表面修飾した Si ウエハーおよびガラスを基板に用いアルギ
ン酸分子内のカルボキシル基と固体表面上のアミノ基との反応による固定化に着手した。水の
接触角、エリプソメーターによる表面分子膜厚さ測定等からアルギン酸の固定化がある程度進
行することが確かめられたが顕著な水潤滑性を有する被膜の完成には至っていない。
(岩手大・岩渕研)接触突起の形状、配置等を定量化することによって、Ra 等の平均値を用い
るパラメータでは評価が難しい不均一・非正規的に分布した突起形状の差異を定量化できる可
能性を示した。
2)摩擦モデルの構築
(東工大・中原研)軟質薄膜に関する Halling の摩擦理論の根幹となる有効硬さの式は実験式
であるため、実験式の有効性を確認するために平成 16 年度に神戸製鋼にて先端半径と銀の膜
厚および押し込み荷重を変えてナノインデンターにより有効硬さを計測した結果、有効硬さに
及ぼす膜厚と先端半径の影響は Halling の実験式によく一致するが、実験式にはない荷重の影
響があることがわかり、有効硬さの式は修正が必要なことがわかった。そこで荷重依存性、す
なわち押し込み深さの影響を配慮した新たな有効硬さの式について検討を行っており、今年度
中に新たな式の提案の見通しが立った。また有機吸着膜や反応膜といった境界膜に適用するた
めには金属膜と異なった境界膜のせん断特性を考慮する必要があり、有機膜のせん断強度の圧
力依存性を考慮した摩擦理論を検討中であり、これを考慮した摩擦理論の提案を今年度中に行
う見通しが立った。
研究開発項目②「CVT 動力伝達システムの最適効率化に関する研究」においては以下の成果が
得られた。
(a)環境因子制御技術に関する研究
(神鋼、岩手大・森研、出光)CVT 模擬しゅう動試験で形成された境界潤滑膜の硬度並びにブ
ロックオンディスク試験機の油種違い(高摩擦油、市販油、低摩擦油)で形成された境界潤滑
膜の硬度をナノインデンターで測定した。その結果、境界潤滑膜の硬さとμとの相関はありそ
うなことがわかった。また、CVT 模擬試験で形成された境界潤滑膜の膜厚について TEM 観察し
た結果、膜厚とμとの明確な相関は見られなかった。これは TEM 観察が極微少領域の観察であ
ることに起因している可能性があり、測定方法の見直しをしていく。TEM-EDX により境界潤滑
膜の組成分析をし、AES で深さ方向の組成分析をした。その結果、境界潤滑膜の最表面の Ca+
の形成を抑制し Fe 系化合物を形成させることが高μ発現と相関がありそうなことがわかった。
更に高μを発現した微細溝加工したテストピースは、境界潤滑膜を介した真実接触面積が増加
していることも明らかになった。なお各種 CVT 油中で形成された境界潤滑膜の EELS 解析に着手
している。
- 5 -
(b)CVT 動力伝達システムの最適化に関する研究
(ジャトコ)平成 16 年度に確立した CVT 実機しゅう動環境をラボ的に模擬する模擬しゅう動試
験機で、各種高μを発現するアイテムについて実機耐久試験相当のしゅう動距離(8000m)後の摩
擦特性を測定した。その結果、ハードターニングによる微細溝加工したプーリーテストピース
は、市販 CVT 油(NS2)環境下でもμ約 10%向上することが確認された。またハードターニングに
よる微細溝加工品と同等の表面テクスチャーを量産レベルで加工できる加工法としてスーパー
フィニッシャーを選定し、設備導入した。しかしスーパーフィニッシャーで加工したプーリー
テストピースと市販油との組み合わせでは高μは発現しなかった。平成 16 年度導入したベルト
フリクション装置により市販油使用時のベルトフリクション測定を終了した。今後、高摩擦油
(A5S)使用時のベルトフリクションを測定し、今年度中に有意差を確認する。
(c)CVT の表面構造制御技術と境界潤滑膜の作用機構に関する研究
1)最適表面組成、組織の抽出
(神鋼)平成 16 年度は鋼―鋼間のしゅう動試験で形成された境界潤滑膜の硬度測定から摩擦係
数を向上する境界潤滑膜として、硫化物(NiS、FeS、MnS、ZnS)を抽出した。平成 17 年度は候補
表面として高硬度 Ni-P 膜、窒化鋼(高 N 鋼)、高 Mn 鋼について検討した。高硬度 Ni-P 膜につ
いては、高面圧下で剥離が発生することがわかり断念した。窒化鋼に関しては、摩擦係数は向
上するが摩耗も増大する結果になったが、添加剤の最適化により高μと耐摩耗性の両立ができ
る可能性がある。
2)表面微細形状の最適化の効果確認
(ジャトコ、東工大・中原研)プーリー表面粗さ(Ra)と、粗さ凹凸の平均間隔(RSm)が摩擦
係数と相関があることを、前年度明らかにしたが、本年度は新たに粗さ突起頂点の曲率半径
(Rsum)、突起頂点密度(Dsum)、突起頂点高さの標準偏差(σsum)という粗さパラメータを導
入して、摩擦係数、摩耗量とこれらパラメータとの相関を調べた。その結果、Rsum が小さく Dsum
が大きいほど摩擦係数が高くなる傾向があることがわかった。ただし、Rsum が小さいほど相手
しゅう動材(エレメント)の摩耗量も増加する傾向があり、最適値があることを示唆している。
なおプーリー表面粗さ(Ra)は小さい程摩擦係数が高くなる傾向があるため、特殊ラッピン
グによる鏡面仕上げ(Ra=0.035)したプーリーテストピースを試作し、市販 CVT 油(NS2)を用
いた模擬しゅう動試験機によるしゅう動試験を行い、しゅう動距離 8000m 後の摩擦係数はハー
ドターニング品と同等レベルで、現行品に比べて約 10%向上することを確認した。今後試験回
数を増し確認をしていく。また量産加工機(スーパーフィニッシャー)で特殊ラッピング品と
等価なテクスチャーを再現させることを試みていく。
3)添加剤の最適化の効果確認
(出光)平成 16 年度の研究で創出した高摩擦油(A5S)と摩擦面生成物の関係を検討するため、
ブロックオンリング試験機で鋼-鋼間の摩擦時に生成する摩擦面生成物について XPS、FIB-TEM、
TOF-SIMS を用いて解析し、境界摩擦特性との関係について考察した。比較検証用として市販油
(NS2)、低摩擦油(基油に過塩基性 Ca スルフォネート配合)についても同様の解析を行った。そ
の結果、高摩擦化には、①白色の非晶質の最表面膜を薄くしてその下の酸化鉄を主成分とする
微細結晶構造の皮膜との2層構造とする。②最表面で低摩擦化する CaO+の生成を抑える。③CaO
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の生成を抑制するにはP系添加剤の配合が有効で皮膜中のリン量を Ca に対して相対的に増加
させると摩擦係数が高くなることがわかった。これらの知見を応用し,テクスチャー,および
鋼材料に対する最適化をはかる。
研究開発項目③「高効率高耐久性水圧機器システムに関する研究」においては以下の成果が得
られた。
(a)水環境制御技術に関する研究
(岩手大・岩渕研)平成 16 年度に高温環境下で DLC 皮膜と SUS630 ステンレス鋼を摺動させた
場合比摩耗量が 1 オーダー増大することに関連し、高温環境下では SUS630 への DLC 皮膜からの
C 移着層の厚さが小さいことが XPS 分析等により明らかになった。また DLC 皮膜と高力黄銅組
み合わせにおいて温度上昇による DLC 皮膜の耐摩耗性の大幅な低下が見られないことがわかっ
た。
(b)耐食性に関する皮膜構造最適化に関する研究
(神鋼)平成 17 年度は作動媒体としての水への微量添加物によるキャビテーション特性への影
響を検討した。微量添加物としては界面活性剤(Tween)および粘度調整剤(ポリビニルアルコ
ール)を選定した。両添加剤共に未添加の水に比較してキャビテーション減量が抑制されるこ
と明らかにした。また実機試験片に関しては現在の耐久試験条件においてはキャビテーション
の発生は認められていない。
(c)水環境適合型炭素系被膜の水圧機器適用研究
(産総研)DLC 膜のはく離特性を詳細に調べた。応力の高い膜が耐はく離特性に優れることか
ら、更に膜厚に注目して検討した結果、同じ膜質でも厚膜がより良い耐はく離能を有すること
を見いだした。また中間層の検討を行い、高耐はく離能を持つ DLC 膜の開発を行った。Si 系中
間層を傾斜組成にすることによりボールオンディスク法による評価で 80N の耐はく離能をもつ
Si 含有 DLC 皮膜を開発した。
(神鋼)水環境中にて摺動試験後の DLC 表面と相手材上の移着物を TEM、XPS および AES-EELS
により構造解析を行った。DLC 表面は TEM レベルでは全く構造変化は観察されなかったが、EELS
では僅かに最表面の sp2 成分が増加していることが示唆され、摺動により sp3→sp2 の変換が生
じていると推定された。また相手材上の移着層に関しては TEM 観察の結果、移着層は2層構造
であり、基材上には相手材の摩耗粉と DLC の混合物、その上には DLC に由来すると考えられる
C リッチの構造が観察された。この移着層の硬度は 1~2GPa と、DLC の硬度(15GPa)より低い
ことから摺動時には移着層内でせん断が生じているために低摩擦係数を示していると推定され
た。高硬度の DLC は摺動初期に摩擦係数が高く、なじみ距離が長いことから低硬度の移着層を
短時間で形成するためには DLC 最表面に低硬度のなじみ DLC 層を形成することが有効であるこ
とが分かった。
(神鋼)ナブテスコにおける可動鉄心、三菱重工におけるピストンおよびスラストプレートの
実機耐久試験の結果、硬質異物による基材の変形が認められ、変形部からの DLC 剥離が生じて
いることが判明した。可動鉄心については下地に厚膜の CrN を設け、その上に DLC 層を形成す
ることで基材の変形を抑制する皮膜構造を提案し目標の耐久回数をクリアした。スラストプレ
ート、ピストンに関しては基材を現状の SUS630 より高硬度のシリコロイに変更することを検討
- 7 -
中。
(d)水圧機器の実環境下模擬耐久試験
(三菱重工・長崎)平成 16 年度に製作した水圧ポンプ用模擬環境試験装置を用いて抽出した適
用課題に対して、リテーナ等の摺動部構造の改造施工と高硬度 DLC 皮膜を処理する基材の高硬
度化(SUS630→シリコロイ)の対策を行った。水圧ポンプ用模擬環境試験装置を用いて実環境
下での評価試験を実施した結果、DLC 皮膜の剥離、リテーナ固着等の問題が生じないことを確
認した。引き続き当装置の摺動部構造を改造し、バルブプレートの評価試験を実施して摺動部
の健全性を確認した後、最終仕様の水圧ポンプにて耐久性評価を実施する予定。
(ナブテスコ)水圧シリンダにおいてロッドに高硬度 DLC 皮膜を処理した片ロッドシリンダに
て耐久試験を実施し目標とする 500km を達成した。このしゅう動距離におけるバッファーシー
ルの比摩耗量は 10 - 6 mm 3 /Nm 以下であることを確認した。また別仕様機として両ロッドタイプ
のシリンダを製作した。
また水圧バルブにおいて高硬度 DLC 皮膜を可動鉄心とスプールにコーティングした実機電磁
切換弁にて目標とする切換回数 100 万回を達成した。その際の可動鉄心とスプールの比摩耗量
は 10 - 6 mm 3 /Nm 以下であることを確認した。また別仕様として高推力タイプの電磁切換弁を製
作した。
(e)水環境における水中微量成分、反応生成膜および材料の影響評価
(神鋼)走査型プローブ顕微鏡組込みのナノスクラッチ試験機を用いて境界潤滑膜のせん断強
度を測定する方法を検討中。先端半径の異なるダイヤモンド圧子を作製し、境界潤滑膜を模擬
する物質として Au、Pt を選定し、ナノスクラッチ時の弾性変形領域の摩擦力より境界潤滑膜の
せん断強度を推定する手法を検討中。
(岩手大・岩渕研)せん断強さを摩擦力と接触面積から決定する際,摩擦力についてはフリク
ショナルカーブやカンチレバーの形状・物性から求められることがわかった。真実接触面積に
ついてはフォースカーブとカンチレバーの先端形状から算出したが,その値の妥当性に課題を
残した。またカンチレバーの先端の摩耗に関しては,剣山状の鋭い突起を有する試験片を測定
することによって調べることができることがわかった。更に摩擦中の圧子の変位から真実接触
面積をより正確に求めることができると考えられ,垂直荷重負荷式のナノインデンターの導入
の準備を行った。
(神鋼)超高分子量ポリエチレンの摩耗に関しては、DLC 膜表面に成膜時に混入するパーティ
クルの影響が大きいことが分かったことから、パルススパッタリングによるパーティクルの低
減とそれによるポリエチレンの摩耗量低減の効果を調査中。
(岩手大・岩渕研)DLC 皮膜と Cr めっきの UHMPE への攻撃性への影響を Ra 等よりも明確に表
すことができるパラメータとして,接触突起の先端半径や局部圧力を取り上げ,計算方法及び
有効性の検討を行い,非正規分布・不均一な表面の特徴を表すことができるパラメータとして
有効であることを確認した。また摩耗量との相関関係もより明確に表すことができた。
(東工大・益子研)有機水和ゲル層のコーティング層への固定化予備検討として、Ca あるいは
Na 塩を含むアルギン酸およびヒアルロン酸のガラス基板への形成を行い、水環境中におけるト
ライボロジー特性評価を実施。これらの固定化した水和有機ゲル層に関してはトライボ特性の
- 8 -
向上は認められず、より強固に基板への固着をする方法を検討中。また CrN、CrSiN および硬度
の異なる DLC 膜に関して摺動特性の速度依存性を調査した。CrSiN は 0.4m/s 以上の摺動速度
では 0.05 程度の極低摩擦係数が得られたが、それ以下では焼付きが生じることから起動停止な
ど速度変化が予想される実機部品には適していないと予想された。DLC は全速度域にわたり 0.1
付近の安定した摩擦係数を示した。
研究開発項目④「耐高面圧複合軸受システムに関する研究」においては以下の成果が得られた。
(a)表面テクスチャーの検討
(大同メタル)軸受表面の表面テクスチャー制御により更なる軸受特性向上の可能性を検討し
た。
まず最適な表面テクスチャー施工方法を検討し、加工の自由度からレーザーによる加工に着
手した。そして PEEK の結合エネルギーに着目し、レーザーにも種類が多々ある中から光励起エ
ネルギーの高いエキシマレーザーを選定した。その結果、光励起エネルギーの低い炭酸ガスレ
ーザーでは加工部の端面に大きなリムが発生するのに対し、エキシマレーザーを用いると加工
部にはリムが発生せずシャープなテクスチャーを作ることができた。
次にエキシマレーザーで摺動面に表面テクスチャーを施し、それを平板摺動試験にて摩擦性
評価・焼付性評価を行った。表面テクスチャーを施したサンプルは表面テクスチャーを施して
いないサンプルに対し起動摩擦係数が向上し、また焼付性評価での摩擦力が安定化され表面テ
クスチャーの効果が確認できた。
(b)耐高面圧性の解明
(大同メタル、岩手大・森研、東工大・中原研)焼付性の改善に効果の高い PTFE の粒径を細か
くすることで PEEK 中への分散性を向上させたサンプルは、従来の PTFE 粒径品の焼付面圧 21MPa
から 27MPa と向上した。そこで PTFE の粒径による境界潤滑膜の形成状態の差を確認するため、
TOF-SIMS で試験前・安定状態(6MPa)・焼付前状態(12MPa)・焼付後の相手軸側・軸受側の表
面を調査した。相手軸表面には PTFE 由来のフッ素化合物が生成されていることが確認され、焼
付に近づくと徐々にではあるがその成分が減少していく傾向にある。一方、軸受表面は全体を
覆っていた PTFE 由来の潤滑膜が焼付に近づくにつれその潤滑膜が消費されていく傾向は一緒
だが、PTFE 粒径が細かいと PTFE 由来の潤滑膜が多いことが確認された。その PTFE の潤滑膜と
は逆に相手軸から移着したと思われる鉄の成分が、焼付に近づくにつれ増加していく傾向にあ
ることが判明した。
また PTFE の潤滑膜が残っていると鉄の移着は少ない傾向にある。そのため PTFE 粒径を細か
く分散性を向上させることで表面に存在する PTFE の潤滑膜量を増やし、さらに相手軸側からの
鉄の移着を防ぐことから焼付面圧が向上したと推定される。耐高面圧性を向上させるには PTFE
の添加量制御以外にも PTFE 粒径制御が有効であるとことが確認された。
(c)摩擦摩耗機構の構築
(大同メタル、岩手大・森研、東工大・中原研)焼付きを変形モードの遷移(弾性変形領域→
塑性変形領域)をした概念で考案した焼付きモデルに基づき、焼付きに至るまでの過程で起こ
る事象をフローチャート化した。それぞれの事象に対応する評価項目を設けてホワイトメタル
と PEEK 複合材料の比較を各評価方法で行った。その結果、PEEK 複合材料はホワイトメタルよ
りも硬度や圧縮変形に関して熱依存性が少なく、また塑性変形し難い材料であることが証明さ
- 9 -
れた。一方、境界潤滑膜に関しては、TOF-SIMS 以外にもナノインデンターによりその存在が
明らかになった。
(d)タービン用高面圧軸受開発と実用性評価
(三菱重工・高砂、大同メタル)選定した高面圧軸受材に対応し軸受全体として高面圧化の機
能を発揮するための軸受構造を検討し、平成 16 年度にタービン軸受及び長期信頼性評価軸受試
験機を製作した。軸受材料の実用性見通しを評価するため、最終目標(面圧 50%向上、2.25MPa)
を越える 2.8MPa 下で発電用タービンの運転モードとなる起動後の 3rpm 程度の低回転ターニン
グ運転から定格 3600rpm までの昇速運転⇒ターニング回転数までの降速運転を 1 年運転相当に
対応する 360 回程度繰り返す長期信頼性評価試験を実施した。その結果、軸受には焼付きや異
常磨耗などの損傷は見られず、健全な軸受摺動表面であることを確認でき、最終目標である耐
高面圧:現状 1.5MPa の面圧 50%向上(2.255MPa)を達成した。
(e)機器実用化および他の機器システムへの展開検討
(三菱重工・高砂)タービン軸受への実用化推進のため、ジャーナル軸受で良好な高面圧性を
発揮した軸受材をスラスト軸受にも適用すべく本年度設備としてスラスト軸受試験機を製作し、
平成 18 年度に性能検証を実施する。また他の機器への展開を可能とするため、長期信頼性評価
試験機を用い、軸受面圧や軸回転数を定格条件だけでなくパラメータとしてデータを収集した。
事業規模の推移
石特会計
平成 16 年度
平成 17 年度
470百万円
558百万円
特許出願件数
7件
2件
論文発表数
9報
50報
5.事業内容
(1)評価
NEDO技術開発機構は、技術的及び政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果
の技術的意義並びに将来の産業への波及効果等について、外部有識者による研究開発の事後評
価を平成19年度に実施する。
平成 18 年度事業内容
岩手大学
岩渕
明
教授をプロジェクトリーダーとして以下の研究開発を実施する。
実施体制については別紙を参照のこと
研究開発項目①「潤滑膜の構造・特性及び生成機構の解明のための評価・解析技術に関する研
究」においては以下の研究を行う。
(a)潤滑膜の力学特性評価技術(神鋼、岩手大・岩渕研、東工大・中原研)
(岩手大・岩渕研)走査型プローブ顕微鏡及びナノインデンターを用い,モデル物質として金
属薄膜を用いてせん断強さの測定値の妥当性を検討する.また摩擦によって生成される境界潤
滑膜のせん断強さの値を測定する.
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(東工大・中原研)境界潤滑膜のせん断強度の測定を行い,潤滑膜の等価硬さから求めた等
価せん断強さと比較することにより測定技術の妥当性を検討する。
(神鋼)平成 17 年度に境界潤滑膜模擬物質を使用して検討した基板と境界潤滑膜を合わせた有
効硬さに関する Halling の式について、CVT ならびに水環境中で形成された境界潤滑膜につい
て適用し、有効硬さを導出する。
(b)潤滑膜の化学構造解析(神鋼、岩手大・森研、東工大・益子研)
(岩手大・森研)平成 17 年度に検討したラマン分光法と光干渉法を用いた潤滑状態と境界潤滑
膜膜構造解析に関してさらに応用性を検討する。更にこれまで検討してきた TOF-SIMS による境
界膜構造解析の結果を加えてトライボロジー特性と境界潤滑膜の化学構造/膜厚の関係を 検討
する。
(東工大・益子研)摩擦制御機構解明に関しモデル添加剤を用いて作成したトライボフィルム
の化学分析をオージェ分光分析、FT-IR-RAS 測定等の表面分析からその構成物質を探る。得ら
れた情報から力学モデルの構築に寄与する考察に結びつける。
(神鋼)CVT 環境中で形成された境界潤滑膜に関しては Ca 以外の元素の化学状態を主として
EELS により分析し、化学状態と機械的特性の関係を明らかにする。また水環境中で形成された
境界潤滑膜に関しては、主として相手材が鉄基金属以外(黄銅など)の場合の化学構造解析を
行う。
(c)潤滑膜の接触機構の評価解析技術(東工大・中原研)
(東工大・中原研)すべりの影響を考慮した新たな接触理論の構築を行い、その理論により摩
擦係数を算出し、実機模擬試験と比較し摩擦モデルを検討する。
また、平成 17 年度に行った、高面圧化軸受の耐焼付き性について,平成 16 年度に提示した「焼
付きモデル」定性的適用に対し,18 年度は定性的評価を行い,「焼付きモデル」を定量化し,
理論的な裏付けをより定量的に行う。
(d)各機器システム模擬環境で生成した潤滑膜の化学構造・力学特性と摩擦摩耗挙動との関
係解明(産総研、岩手大・岩渕研、東工大・益子研)
(産総研)DLC 系皮膜の水環境下での低摩擦低摩耗特性の発現機構について潤滑膜の構造から
検討し、摩擦面モデルを提示する。具体的には摩擦面の解析を各種分光分析法(ラマン、X線
解析等)および質量分析法(MS、TOF-SIMS)を用いて行い、摩擦摩耗特性と関連させて検討す
る。また密着性の向上のために中間層および膜質の検討を行い、摩擦摩耗特性との関連も検討
する。
(東工大・益子研)CrSiN、CrN、DLC の各種コーティングの水潤滑下における低摩擦発現機構
を表面生成トライボフィルムの解析(膜厚測定,力学測定,化学分析等々)を通して考察し,
統合力学モデルへの連結を模索する。
(岩手大・岩渕研)CVT、水環境中で形成された実際の境界潤滑膜のせん断強度を測定し、実表
面形状を考慮した接触率計算より摩擦係数を推定し、摺動試験時の摩擦係数と比較する。
(e)摩擦モデルの構築(全機関)
1)力学モデル
測定した境界潤滑膜のせん断強度および Halling の式より導出した有効硬さを使用して、各
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環境下において摩擦係数を記述出来る力学モデルを構築する。また表面の接触に関しては突
起粗さを統計的に扱う方法と実表面の形状から接触率を求める方法を検討する。
2)化学構造モデル
実摺動環境において異なるμを示す境界潤滑膜の化学構造解析から、機械的特性と化学構造
の関係、すなわち化学構造とμの関係を明らかにし、化学構造制御によりμを制御する指針
を提示する。
研究開発項目②「CVT 動力伝達システムの最適効率化に関する研究」においては以下の研究を
行う。(神鋼、出光、ジャトコ、岩手大・森研、東工大・中原研)
・高摩擦係数を発現する表面膜、表面微細加工および最適添加剤について模擬摺動試験機によ
り摩擦係数が 20%以上アップすることを検証する。
・上記高μ発現アイテムを実機ユニットに組込み、効果を確認する。(目標:トルク容量 20%up)
・表面微細加工を量産レベルで実現する加工法の開発を進める。
・高摩擦油の市場投入可能性を検討する。(実機ユニットへ適用時の課題の明確化と改良)
・境界潤滑の摩擦係数の定量評価、軽-重摩耗遷移の概念及び粗さ面接触統計解析を組み合わせ
た解析に基づいて高摩擦係数を発現する境界潤滑膜、テクスチャー等の設計指針を提示する。
・評価解析グループと連携して、高摩擦係数の発現と相関の高い境界潤滑膜の化学構造や力学
特性を明らかにする。
研究開発項目③「高効率高耐久性水圧機器システムに関する研究」においては以下の研究を行
う。
(a)水環境制御技術に関する研究(岩手大・岩渕研)
(岩手大・岩渕研)DLC 皮膜とステンレス鋼,高力黄銅等の組み合わせにおける溶存成分,圧
力,温度の影響を明らかにし,最適水環境を実現するための指針を提示する。
(b)耐食性に関する皮膜構造最適化に関する研究(神鋼)
(神鋼)平成 18 年度は引き続き実機耐久試験において、キャビテーションの発生の有無を調査
する。
(c)水環境適合型炭素系被膜の水圧機器適用研究(神鋼、産総研)
(産総研)開発した DLC 膜の実機試験への適応を試み、さらに実機試験の結果をもとに中間層
および膜質の改良を行って実機への応用を行う。
(神鋼)水圧機器の各部品に関して量産ベースでコーティングが可能となるような成膜方法(搭
載方法)あるいは治具、さらには部品形状について検討をする(神鋼)。
(産総研、神鋼)平成 18 年度に DLC 膜の実機への適用における問題点の抽出を行い、平成 17
年度に明らかにしたメカニズムを元に DLC 膜の膜質、膜構造の最適化を図り、実機へ適用する。
(d)水圧機器の実環境下模擬耐久試験(三菱重工長崎、ナブテスコ)
平成 17 年度に引き続き、有望な皮膜および機器構造を適用したポンプ、バルブ、シリンダの実
機使用条件下の性能評価を継続する。また市場への適用拡大をはかるため、これらの機器を組
み合わせた水圧システムでの性能評価を行い、実用化検証を実施する。こうした実環境下模擬
耐久試験において最終目標である比摩耗量 10 -6 ~10 -7 mm 3 /Nm
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を達成する。
(e)水環境における水中微量成分、反応生成膜及び材料の影響評価(岩手大、神鋼、益子研)
(神鋼)平成 17 年度に検討した境界潤滑膜の①単体の塑性変形硬度、②基材を含めた有効硬さ
の測定方法を用いて水環境中にて形成された境界潤滑膜(DLC の場合は移着層)の測定を実施
する。
(岩手大・岩渕研、神鋼)水環境中において形成された潤滑膜の分布状態とトライボ特性の評
価技術を確立し、各種表面の境界潤滑膜の測定を実施する。
(東工大・益子研)平成 17 年度に検討した有機水和ゲル層の CrN、CrSiN、DLC などの実際のコ
ーティング皮膜への固定化の検討を行い,これらのトライボロジー特性を評価し最適皮膜の選
定と潤滑機構の調査を継続する。
(岩手大・岩渕研)摩擦モデルの構築に必要な表面形状の定量化パラメータの評価を行う。
研究開発項目④「耐高面圧複合軸受システムに関する研究」においては以下の研究を行う。
(大
同メタル、三菱重工・高砂、岩手大・森研)
・ホワイトメタルと PEEK 複合材料の使用限界の位置付けを平板摺動試験を用いて明確にする。
・摺動試験後表面の分析を引き続き行い、PTFE 量と PTFE 粒径の制御効果の比較を行う。
・境界潤滑膜の評価を進め、摩擦モデルの検証を行う。
・開発する耐高面圧軸受材をスラスト軸受へ適用し、性能評価試験を実施し実用化の
確認をする。
・他の回転機械を対象に、面圧・周速・潤滑条件等を考慮して開発軸受材の適用可能
性を検討する。
(1) 平成 18 年度事業規模
①石特会計
:450 百万円(継続)
(注)事業規模については、多少の変動があり得る。
6.その他重要事項
(1)評価
NEDO技術開発機構は、技術的及び政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成
果の技術的意義並びに将来の産業への波及効果等について、外部有識者による研究開発の事
後評価を平成19年度に実施する。
(2)運営・管理
研究開発はプロジェクト基本計画及び本実施方針に基づき運営・管理を行う。
省エネルギー技術開発プログラムにおけるプロジェクトとしてその他のプロジェクトと
の連携を図る。
(組織マネージメントの強化)
基本コンセプトの構築および機器システム研究開発への反映のため各研究開発グル-プ間
の連携および大学と企業の連携を密にする他、成果の応用範囲を広げるための他分野との
連携などの可能性について検討する。
(広報、情報活動)
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成果の発信および普及のため金属系材料研究開発センタ-を中心として学会、国際会議、
およびマスコミ等において広報、情報活動を実施する。
(3)年間スケジュール
平成18年
2月23日・・・部長会附議
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(別紙)事業実施体制の全体図
「省エネルギー技術開発プログラム
低摩擦損失高効率駆動機器のための材料表面制御技術の開発」実施体制
NEDO
プロジェクトリーダー
○所属 岩手大学工学部
○役職名 教授
○氏名 岩渕 明
技術開発機構
指示・協議
委託
連名契約方式
独立行政法人産
業技術総合研究
所
ナノカーボン研
究開発センター
代表委託先
研究実施場所:
つくばセンター
研究開発項
目:①
財団法人金属
系材料研究開
発センター
株式会社
神戸製鋼所
研究開発項
目:①、②、
③
出光興産
研究開発項
目:①、②
ジヤトコ株式
会社
研究開発項
目:①、②
研究開発項目:
①、③
共同研究
岩手大学 2研究室
研究実施場所:岩
手大学工学部
研究開発項目:①、
②、③、④
三菱重工業
長崎研究所
研究開発項
目:①、③
ナブテスコ
株式会社
大同メタル
工業株式会
社
三菱重工業
株式会社
高砂研究所
研究開発項
目:①、③
研究開発項
目:①、④
研究開発項
目:①、④
共同研究
東京工業大学
2研究室
研究実施場所:東
京工業大学大学
院理工学研究科
研究開発項目:
①、②、③
研究開発項目①「潤滑膜の構造・特性及び生成機構の解明のための評価・解析技術に
関する研究」
研究開発項目②「CVT動力伝達システムの最適効率化に関する研究」
研究開発項目③「高効率高耐久性水圧機器システムに関する研究」
研究開発項目④「耐高面圧複合軸受システムに関する研究」
※委託先候補が公益法人である場合、第三者分配型補助金等でないことの確認:24/440 =5.5 % ≦ 50 %
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