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平成28年7月25日発行 第32巻第3号 年4回発行(1.4.7.Io月)
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ダイヤモンドカーボンナノチューブ等の基礎研究・応用技術の明日を拓く!
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N E隔たり
第122号 Ⅶ1.32 N。.3
目次
巻頭言
1 パワー半導体デバイスたる匠技術
小出 康夫
科学解説
2 窒化物半導体/ダイヤモンド
平間 一行,谷保 芳孝.嘉数 誠,
ヘテロ構造の成長とその応用
山本 秀樹.熊倉 -英
第29回ダイヤモンドシンポジウム優秀講演賞授賞
11 ダイヤモンドNV中心における
電界によるスピンコヒ-レンス
小林 悟士.森下 弘樹.松崎 雄一郎,
三輪 異聞,鈴木 義茂,水落 憲和
時間の長時間化
技術解説
16 導電性ダイヤモンドパウダの電気化学応用
近藤 剛史
22 カーボンナノチューブの光物性とその応用展開
松田 一成
トピックス
29 ヘテロエピタキシャル成長による 合田 英雄.金 型補.池尻憲次期.
大口径ダイヤモンド自立基板への -川又 友喜.藤尾 大毅.小山 浩司,
挑戦 澤避 厚仁
針谷 達.滝川 浩史
未練(j)ことば
ー
33 CNT複合電着ダイヤモンドワイヤー 小泉 将治.松澤 洋子.木原 秀元
学会だより
36 2016 EMRS SpringMeetlng in Lille
小松 直樹
トライボロジー会議2016春東京
平田 敦
C 陣 伍 、 つ ふ
31水溶性犠牲層を用いたDLC自立膜の作製
寺地 徳之.山口 尚秀
38 NDNC2016
I
New Face Book
単結晶ダイヤモンドマイクロ
40 出会いに感謝
青野 祐子
高温水素雰囲気中でニッケル
マスクを用いた熟化学反応を利
講 座
用し.単結晶ダイヤモンドを剣
41 ダイヤモンドをよく知るために
阿子馬 めぐみ.八木 貴志
◆炭素材料の熱物性(2)
出陣こ加工した.写真は先端経
2LLm.長さ50FLmのダイヤモン
ドニードル.従来加工法では実
児玉 英之
46 書 評
47 浴室用鏡へのDLCコーティング
寺本 篤史
-ナノオーダ薄膜の高速成膜-
岡崎 俊也
49 フォーラムだより
事 務 局
モ
現閤難な超高アスペクト比のダ
イヤモンドニードル彬戊が可能
となった(本文29-30ページ
参照).
48 平成28年度第1回研究会報告
"NEWDIAMOND"
ニードル
リdEdI<
¥ィ廁ヲ儉ノHH,ネ+(栗>
ゴ
裏表紙は BDDP印刷電極の
外観写真(本文16-21ページ
参照).
7辻
ジ参,. 傲b
Vo
トピックス
高強度レ-ザ照射に耐え得るレ-ザ照射耐性が求められる.
水溶性犠牲層を用いた
DLC自立膜の作製
単結晶ダイヤ壬.ンドや高結晶性グラファイトは これらの
要求を満たす優れた薄膜ターゲットとなる可能性をもつが
現時点において膜成長の遅さや膜厚制御の難しさが際立つ.
単結晶ダイヤモンドや高結晶グラファイトとともに,薄
豊橋技術科学大学
膜ターゲットとしての要求事項を満たす材料がDLCであ
る. DLCは薄膜化およびその制御が容易な一方で 自立膜
針谷 達,滝川 浩史
化が難しい. DLC膜はアモルファス膜であり,下地となる
が ン テ 点
得 ド ロ の
基板上に形成する必要があるため,自立膜として用いるに
は 膜の自立化プロセスが必要となる.まだ 膜密度の高
さから,膜には高い内部応力が生じる.下地をもたない自
1.はじめに
立膜状態では, DLC膜自体がその内部応力を支持できず,
ダイヤモンドライクカーボン(DLC : Diamond-Like Caゎon) I)
膜のしわや破れの発生につながる.この内部応力による
と呼ばれる硬質アモルファスカーボンは 低摩擦・低摩耗
DLC膜の自己崩壊がDLC自立膜の最大の懸念事項である.
即j
といった優れた機械的特性を有し,切削工具や金型の機械
3. DLC膜の自立化
的保護コーティング膜として広く利用されてきた さらに,
電気的・化学的特性を生かし,エレクトロニクスからバイ
我々はDLC自立薄膜ターゲットとしての応用を目指し,
-咋肋紺外報か暁舛旺堆
水素フリーな高純度DLC膜の自立化に関する研究を行って
オまで その研究・応用範囲は拡大し続けている.
従来,コーティング膜として応用されてきたDLC膜であ
いる.レ-ザ駆動イオン加速法では,ターゲット膜中に水
るが 近年では下地をもたない自立膜としての用途が注目
素が含まれていると,軽元素である水素原子が優先的に加
を集めている. DLC自立膜の特徴の一つは ナノ膜厚にお
速され,水素原子由来の陽子線が得られる一方で 重粒子
ける機械的な強さであり,電子透過膜2)やろ過フイ)レク3)
(炭素イオン)の加速効率が低減する.
DLC膜の自立化には水溶性犠牲層法を用いた(図2).
としての可能性が示されている.
本稿では 我々が研究を進めているレ-ザ駆動イオン加
水溶性犠牲層法では はじめに下地基板上-水溶性の犠牲
速用薄膜ターゲットとしてのDLC自立膜の可能性と, DLC
層を形成し,その犠牲層上へ目的膜を形成する.基被を水
へ浸潰させることで 犠牲層が溶解し,目的膜は基板から
膜の自立化法について紹介する.
離膜する.離膜した目的膜を多孔基板ですくい上げること
2, DLC自立薄膜ターゲット
で 自立膜が得られる.水溶性の犠牲層には 環境面やプ
レ-ザ駆動イオン加速法とは 超短パルス高強度レ-ザ
ロセスの簡易化・安全性などの点において優位性がある.
を薄膜ターゲットへ照射し,ターゲット由来の加速イオン
一一一bZ 一) 射
技 大 意
を得る方法である(図1)4).シンクロトロンより小型なイ
オン加速法として,将来のがん治療用重粒子線源などへの
応用が期待されている.がん治療用重粒子線は炭素線であ
ることから,自立した炭素薄膜が必要となる.
図2 水溶性犠牲層法による薄膜の自立化
超短パルス高強度レ-ザ
水溶性犠牲層材料には塩化ナトリウム(NaCl)が多く
・集光強度: ∼1022 W/cm2
用いられるが我々は平坦性などの観点からタンパク質のンIIIII)IlJ
付cJ'
4, p.
IJ
elat.
っであるシルクフィブロインを犠牲層材料として用いだ).
スピンコークを使い,シルクフィブロインパウダを精製水
に溶かした溶液をガラス基板上へ塗布した
T字状フィルタードアーク蒸着法6)を用いて,膜厚100
dA.
dA.
目的膜 犠牲層
図1レーザ駆動イオン加速法
mの水素フリーDLC膜を犠牲層上に形成した. DLC成膜
時の基板バイアスは-100Vおよび接地(CND)とした
薄膜ターゲットには 高い膜密度やナノ膜厚(敬一数百
基板バイアス- 100Vは最も密度の高い硬質DLC膜が得ら
m)であること,マクロかつミクロに平坦であることなど
れる条件であり,これに対してGNDは軟質DLC膜となる.
が要求される.密度や膜厚はイオン加速効率に,平坦性は
シルクフィブロイン犠牲層上に成膜したDLC膜の光学顕
得られるイオンビームの安定性に影響を与える.加えて,
ND
\硯.32 No.3 (2016)
微鏡像を図3に示す.内挿図は, DLC成膜後の基板の様子
31
上へすくい上げ自立化したDLC膜を図4に示す.まだ
I
i班
図5は各成膜条件における自立膜の一つを走査型電子顕微
I、 劔冓-塵 劍
鏡で観察したものである.犠牲層上で見られたメッシュパ
ターンはDLC膜の自立化後も観察でき,硬質DLC膜では
:i 劔 剪
メッシュパターンの凸部から破損していることがわかる.
* 劔劔
ヽ
劔
冦
i
∼
劔50曲u
剪
500Ftm
一方で軟質DLC膜は硬質DLC膜ほど膜の破れは見ら
辻
れず,メッシュパターンによる凹凸はあるものの自立膜と
(a)硬質DLC (b)軟質DLC
して薄膜形状を維持していた.軟質DLC膜は,硬質DLC
図3 犠牲層上のDLC膜
膜に比べ膜密度が低く内部応力も低い.この内部応力の
である.犠牲層上のDLC膜は平坦ではなく.メッシュパター
低さが自立化時に膜の破損を防ぎ 自立膜としての形状維
ンを形成していた.このメッシュパターンはDLC膜が犠
持につながったと考えられる.
牲層からはく離し刺犬態を表している. DLC膜のはく離は,
平坦かつ硬質なDLC自立膜を得るにはDLC成膜と自
犠牲層とDLC膜の密着性の低さや成膜時の熱膨張による犠
立化の各プロセスにおいて平坦性を保つことが可能なDLC
牲層の変形などが要因として考えられる.
膜の形成が必要となる.平坦DLC膜の形成には,内部応力
基板から離膜し,ステンレス製の多孔基板(穴径2mm)
一一11-- 劔
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であると考えられる.しかし,膜の低密度化はDLC膜の軟
i議1-ポー
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質化につながるため,必要とする用途とのバランスを考慮
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-K-:.--発着認嚢
する必要がある.
脚∴呈 劔佗V俔ルZ$・F・Bリヲ2
劔F
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4.まとめ
重商〔署欝 :1.--:生∵
T㌔霞玉 劔批営亜∴-H
I/範 囲蘭懸澄欝 i離増,泣 、75- I,_章子
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刄
DLC自立膜の応用として.レ-ザ駆動イオン加速用薄膜
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鍔
ターゲットを取り上げDLC膜の自立化プロセスを紹介し
ェ$ラ(6ィ蛻駛2
た. DLC膜の自立化ではDLC膜形成における応力緩和と
(a)硬質DLC
riSSmSSmSS重SS
6メ
一一㍉÷ 劍ァIwy
∴uSSm"
続nn囲寡
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自立化プロセスに必要な犠牲層の選定が重要となる・今後,
レ-ザ照射試験などから薄膜ターゲットとしてのDLC自立
一
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亦
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:章 一.+、,冨ll
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∼, .\事…醒 剞
一: 鍔
驅H示
膜の可能性を示すとともに,自立膜がDLCの重要な応用の
一つとなるよう研究を進めていきたい.
田圃園田灘
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参 考 文 献
十〇1〃-_/
く一国璃寡
{
聞m 冓
1) ∫. Robenson: Ma宣er. S°i. Eng. 良,37,p. 129 (2002)
(b)軟質DLC
2)上月具挙.縄経典生,苦情:DLC膜のウイルス・リアルタイム観察
用電子顕微鏡ツールへの応用. NEWDIAMOND,117,p・23 (2015)
図4 DLC自立膜
3)藤井義久.佐光真樹、一ノ瀬泉:DLCろ過フィルタ, NEWDIAMOND,
報告醸._「淳 」讃的確
112,p.35 (2014)
4)西内滞美子: ∫.PlasmaFusionRes.,88工p.3 (2012)
5) Y. Miyamoto, Y. Fu両, M・ Yamano, T・ Harigai, Y・ Suda・ H・ Takikawa・ T・
Kawano, M. Nishjuchi, H・ Sakaki and K・ Rondo: Jpn・ J・ Appl・ Phys・・ 55・ p・
07LEO5 (2016)
6) H. Takikawa, K. Izumi, R. Miyano and T. Sakakibara: Surr・ Coatings
Technol.. 163-164, p. 368 (2003)
(b)軟質DLC
図5 DLC自立膜の電子顕微鏡俵
" 抄 出 に 乳 腺 邦 部 航
執筆者連絡先
(a)硬質DLC
32
ィ 加 問 き き 砥 砥 膜 力 度 膜 さ 電 め 組 2
昏
の緩和が重要であり,膜の低密度化や薄膜化が有効な手段
針谷 達(動mHarigai)
豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系
千 441_8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ケ丘1-1
NEW DIAMOND
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